●平凡な男 俺は何処にでもいる男だった。 勉強の成績は中の上あたり。運動音痴ではないけど活躍できるほど上手くもない。 特に部活動もせず夕暮れの帰り道にアイスを買ってアタリが出ただけで今日一日がハッピーだったと思えるくらいに平凡だ。 そんな普通の日常と些細な幸せに満足していたんだ。 「それがどうしてこうなった」 ある日目が覚めたら犬歯が有り得ないほど尖っていた。どれくらいかというと誤って自分の指をぶっ刺してしまったほどに。マジ痛い。何故かすぐに治ったけど。 お袋の手鏡をちょっと拝借して自室で確認しているが……あれだ。どこの吸血鬼ですかって尖りっぷりだ。 因みに体のどこにも噛み跡はなかったし、さっきからカーテン全開の窓から清々しいまでの朝日が差し込んでるのに俺の体が灰になってないから吸血鬼になったわけではないっぽい。 それから生活する内に色々な変化に気づいた。 力が有り得ん程に上がってるし――スチール缶潰せたことには感動した。 何故か夜目が利くようにようになってるし――全然使い道分からんけど。 ぼーっとしてたら教室どころか廊下の話の内容までバッチリ聞こえた――佐藤、お前の彼女浮気してるぞ。 そして何よりも勘が鋭くなった。これが一番困る。ヤバイ困る。勘と言ってもあれだ、第六感的な奴で分かるんだよ。なんか居るって。 なるべくその感覚にしたがって避けてたけどついに遭遇しちまった。 つい腹が減って深夜にコンビニに行った帰り道。肉まんうめーとか言って横断歩道が青になるの待ってたら着やがった。 夜目が聞く所為で現れた瞬間にバッチリ見えた。頭には何叉にも分かれた角が二本、四足歩行のその足には冗談みたいにデカイ蹄。てか、そもそも体がでかすぎ。ワンボックスカーくらいあるだろ。 そして今更になって俺の第六感が騒ぎ始めた。意味は単純明快に一言。 「逃げろぉっ!?」 荷物を放り出し、財布とケータイだけは上着のポケットに入れて死守してから俺は一目散に逃げたした。 俺ってこんな足速かったのな。明らかにチャリンコで全力だすより早いスピードに俺自身も吃驚だ。これならあの牛も……。 そう思って振り返ったが後ろについてきてた。寧ろどんどん近づいて着てやがる。 「な、何なんだよちくしょー!?」 ●超常の存在 アーク本部のブリーフィングルームで大型スクリーンに映像が映し出される。 茶黒い体をした牛のような化け物。それがどこかの学校で暴れ周り廃墟へと変えていく映像だ。 「これが今回の相手。エリューションのレベルは戦士級……フェーズ2よ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)はその白細い指でパネルを叩きリベリスタ達の端末へ情報を送る。 鋭く尖った角は鉄筋コンクリートの壁を容易く突き破り、その巨体でそのままに粉砕。踏みつければその蹄によって地面は大きく陥没し衝撃でさらに罅割れる。 と、その時に映像に一つの影が動く。よく見ればそれはまだ歳若い青年のようだった。 「この人も革醒してる。でも今までただの一般人だった」 所謂野良の革醒者。フェイトを得ることでノーフェイスに変異することもなく、その力を手にしてからも変わらずに日常を過ごす者も稀にいる。しかし、今回の青年のようにまるで引き合うように超常と出会ってしまいコチラ側へと招かれる。 今まで普通の日常を送っていた青年がコチラ側へと巻き込まれることにリベリスタ達は何を思うか思わないか。ただ黙っている。 「この人がこの後どの道を行くかは彼次第。ただその前に、選ばせてあげる為にも助けてあげて」 イヴの言葉にリベリスタ達は頷き、ブリーフィングルームを後にした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:たくと | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月22日(水)23:35 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●非日常の扉 「やばいだろぉ!」 悲鳴を上げ走り抜ける青年――普久原 通正は自分を追う脅威から逃げ回っている内に自分の学び舎へと足を向けていた。 「だ、誰か助けてくれー!」 果たして、その言葉は聞き届けられることとなった。校舎脇に差し掛かったところで通正の正面に現れた二つの人影。 「通正さんですね。助けにきました。こちらに仲間がいますのでもう少し頑張って!」 『闇猫』レイチェル・ガーネット(ID:BNE002439)は校庭を指してそう声を上げる。 通正は何で名前を知っているのとか、そもそもその頭と背中の方に見える猫の耳と尻尾は何なのかと突っ込む余裕もなく指示に従ってそのまま二人の下へと走る。 そして通正と並走して走り出す二人。レイチェルはそのまま懐中電灯で正面を照らし校庭までのナビゲートを行う。 困惑顔を浮かべる通正の隣に『ガンナーアイドル』襲・ハル(ID:BNE001977)は近寄ってその肩を叩く。そして口元に指を引っ掛けてソレを見せた。通常ではありえない程に発達し尖った牙を。 「あ、あんたもまさか……」 「そう、貴方の『仲間』よ。少しは安心した?」 通正はこくこくと何度も頷いた。と、その時突然に背後から強烈なプレッシャーを感じる。暗がりの向こう側に浮かび上がる赤い二つの光点。獣の唸りがその場の音を支配する。 僅かに見えたその姿にレイチェルは敵の実力を測るが、それが分かった瞬間に知らず内に冷や汗を流す。 「私達だけでは敵いません。急ぎましょう」 三人は速度を上げて校庭を目指す。校舎の角を抜け、見えてきた広い何もない空間にはまた幾つかの人影。 「こ、こっちです。早く、早く」 白糸の髪の少女、依子・アルジフ・ルッチェラント(ID:BNE000816)が走ってくる三人に手を振る。おどおどとした態度だが、走りこんできた通正を気遣う優しさを見せる。 「お疲れさん。よー頑張ったな」 にこやかな笑みを浮かべながら肩を叩いて労う『Last Smile』ケイマ F レステリオール(ID:BNE001605)に通正は曖昧な笑みを返す。 通正にとってはあの雄牛も、そしてリベリスタ達の存在も知らずなぜこうやって集ったのか全く分かっていない。リベリスタ達もそれに気付くが今はそれを懇切丁寧に教えてあげている暇はない。 「後で絶対に説明するわ。だから今は私達の事を信じて」 「うん、頑張って助けてあげるから任せてね!」 『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(ID:BNE002166)はその翼を広げ自分が如何なる存在かを示し、『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(ID:BNE000360)はそう言ってぽんっと胸を叩いてみせる。 正直何が分かったでもないが、全てはここを乗り越えてから。それを察した通正は震えそうになる脚に再度力を入れた。 「……現れたわね」 校舎側に視線を送っていた『大食淑女』ニニギア・ドオレ(ID:BNE001291)の言葉通りにのっそりと校庭に現れる雄牛。 先ほどまで走って追いかけて来ていたがリベリスタ達の存在に気付いたのか校庭の入り口で立ち止まり、そこにいる九人の一人一人に視線をぶつける。 ――ブモ゛オオオォォォォン! そして咆哮をあげる。蹄を掻き鳴らし、地面を削って突進を開始した。 ●暴れ牛 その勢いは想像以上のものだった。巨体に見合わぬ加速力。百メートル近く離れて居た距離は瞬く間に縮められる。 「きよったな。防ぐでぇ!」 ケイマの言葉に他のリベリスタ達も瞬時に幻想纏いより己の破界器を顕現させて構える。 「まずはわたしから行くよっ」 ウェスティアは魔方陣を汲み上げ高めた魔力を一気に流し込んで術式を開放させる。召還された魔炎は進路を塞ぐ柱となる。 しかし、雄牛はそのままに炎の中に飛び込み、そのまま走り抜けて姿を現す。その身から僅かな煙を上げるが勢いは衰えさせない。 そして雄牛は前衛に迫る。雄牛の鋭い角にそれぞれの武器を打ち付けてその威力を削ぐがその巨体と突進力、何より雄牛の圧倒的な力に5メートル近く靴底で地面を削りながら後方へと押し込まれる。 「っ……正に怒涛の如く。おにーさん何かしたの?」 両手に携えた爪で角を受け止める『みす・いーたー』心刃 シキ(ID:BNE001730)は通正に視線を向ける。当然覚えのない通正は首を大きく横に振った。 雄牛はそのまま角を振り回して自分を抑え付ける障害を弾き飛ばす。その瞳が次に捉えたのは十字架を構えるニニギアだ。雄牛は躊躇いなく前足を上げ、その蹄でニニギアを叩き潰そうとする。 「光よ。闇を祓う破邪の力を示せ!」 その瞬間、辺り一面に閃光が走る。光を諸に浴びた雄牛は目を焼かれ目測を誤ってそのまま蹄を地面に叩きつける。 光を放った主、レイチェルはかざしている手に浮かぶ光の紋章を消すと周囲に構える味方に視線を走らせる。放たれる幾重もの魔弾。各方向から撃ちつけられる衝撃に雄牛の体が揺れる。 だが、焼かれていた目に視力が戻った途端に雄牛はその攻撃を物ともせず前足を跳ね上げ二足で立ち上がり、勢いのままに二つの巨大な鈍器を地面に叩きつけた。轟音と共にその衝撃に地面は罅割れ辺りに粉塵交じりの風を起こす。 「ちょっと! 冗談きついわねっ」 ハルの二丁拳銃による弾幕も角で弾き、それを掻い潜っても分厚い皮膚に守られたその体では痛みに怯む様子すらない。 「あっ、何かこっち見てる」 と、通正がそんな声を上げる。その通りに雄牛はその赤い目で通正を捉えると角を振り上げて興奮のままに鼻息を荒くする。それと同時に輝き始める雄牛の角。僅かな光から徐々に明滅し強い光を放ち始める。 そして吼えると共にその角を正面へと振り降ろす。放たれた衝撃波は前衛のリベリスタ達を吹き飛ばし、後ろに構えていた数名も巻き込んでその体に破壊の力を叩き込む。 「み、皆さん。だ、大丈夫ですか」 側面に居て難を逃れた依子は慌てて倒れている仲間の下へと走ってすぐさま治癒の魔法を持って治療にあたる。 同じく側面に居たあひるも空に手をかざし、遥かなる存在に呼びかけて癒しの神秘を引き寄せる。 「おにーさん、生きてる?」 「な、何とか……って、お前こそ大丈夫か?」 シキは遠くの地面に転がっている通正の体を叩いて確認する。ギリギリで射程外だったが余波を受けて後ろに転がっていたのだ。 一方でシキは衝撃波の放たれる寸前に離脱を試みたが間一髪のところで間に合わず、その右腕から僅かずつ赤い水が流れ落ちている。 だがシキはそれを何でもないように振る舞いそのまま広い校庭を指差す。 「校庭走って、10週くらい。終わる前には倒すから」 仲間達の回復が終わるまでの時間稼ぎ、そして防御の構えでは駄目だと判断して次の流れへと移る為に。 「……本当だな?」 「……約束」 シキの返事を聞いた瞬間に通正は素早く起き上がり校庭の外周を回るように走り始めた。雄牛はそれを目に留めて回りに目もくれずに追いかけ始める。 一方で癒しの術で回復を終えたレイチェルは頭を振って意識をハッキリさせる。 「どうやらあの衝撃波は力を溜めている間に角に強い衝撃を与えれば解除できるかもしれません」 あの僅かの間に視えた情報を皆に知らせる。先ほどの雄牛が力を溜め衝撃波を放つまでの時間は約10秒ほど。果たしてそれが可能かは分からないが一つの突破口は見えた。 「行きましょう。彼には絶対に助かって貰わないといけないんだから」 ニニギアは背中の翼をはためかせて舞い上がり、戦場へと向かう。その視線の先で必死になって生きようとしている青年に自分の道を、できれば共に歩む道を選んで貰う為に。 それに他のリベリスタ達も続き、戦場は防衛から追走劇へと形を変える。 ●砕けるはどちらか ケイマの放つ何本ものダガーが雄牛の体に傷をつくる。それを煩わしく思ったか雄牛は振り上げた前脚の蹄でケイマを叩き潰そうとする。ケイマはそれを側面に転がって避け、攻撃の手で動きの止まった雄牛に魔弾の雨が殺到する。 「この牛さん本当にタフすぎだよっ」 四色の魔光を従えて何度もぶつけ続けているウェスティアがそう溢す。雄牛を見ればあちこちに傷を作り、血も流している。ダメージは確実に蓄積しているはずだが……。 「だからこっちに来るのは禁止だって言ってるでしょ!」 ハルが引き金を引くと銃口から弾ける様に幾つもの光弾が走り雄牛の前面に着弾して勢いを鈍らせる。しかし鈍るだけであってその動きを止めることはできない。 更なる突進にハルは通正の腕を掴んで思いっきり横に飛ぶ。突進の勢いに煽られて地面を転がり、それでも五体満足であることを確認すると、すぐさま立ち上がってまた走り始める。 「ナナシさん、力を貸してっ」 ハルと通正の傷は依子の力ですぐに塞がれる。 このようなサイクルが既に何度も行われている。正しく根競べ、先にどちらが力尽きるかの互いを削りあう戦い。 「角が光った……来る」 シキの声にリベリスタ達は一斉にばらけて距離を取る。一瞬の間の後に激しい破壊の奔流が雄牛の角のかざす方向へと駆け巡る。 衝撃を背中に受けて地面に転がる通正。だが何度も食らっている内に慣れたのか転がった勢いで前転の後に共に立ち上がって痛みを我慢しながら走り抜ける。 「通正くん、大丈夫かしら?」 「まだ大丈夫ですけど、そろそろ駄目かもしれませんっ」 通正の方はよっぽど精一杯なのか後ろを振り返ることもせず一心不乱に後ろから迫る雄牛から逃げる。 っと、ニニギアは素早く下降すると通正の手を掴みそのまま素早く空へと上昇する。いきなり引っ張りあげられた通正は慌てるが、その宙に浮いた足元を激しい音と共に駆け抜けていく雄牛を見てぶるっと体を震わせる。 「ここは一旦……皆に、空を飛ぶ翼を!」 あひるが胸元で合わせた手を開くと、リベリスタ達と通正の背中へと小さな光が飛びそこにあひるの翼をデフォルメ化した小さな翼が現れる。 「えっ、嘘。マジで飛んでる!」 その恩恵を受けた通正も勝手に浮かび上がる自分の体に驚きつつこんな状況ながら嬉しげな声をあげる。 一方で通正が空へと上がったことで目標を見失った雄牛は未だに地面にいる数名のリベリスタに目をつける。 突進の体勢に入る雄牛の足に突き刺さる衝撃。レイチェルは前脚をあげさせぬとばかりに気糸を撃ち込むが、その瞬間に雄牛に変化が現れる。その目に宿るのは、怒り。 ――う゛も゛おぉぉぉぉぉ! 雄牛の咆哮は大気を震わせ、角を乱雑に振り回して後ろ足で地面を掻き上げる。レイチェルは己の危険を感じすぐさま空への離脱を行おうとするが間に合わない。 ケイマとシキの攻撃を掻い潜った暴れ牛はその鋭い角をレイチェルに深々と突き立てた。肩、胸、腹、足と突き刺さった角にどろりと血液が零れ出す。 「――う、ぁ……」 雄牛は首を立てに振るい、レイチェルを地面へと投げ落とすと前脚の蹄を上げ追撃の踏みつけを――。 「させへんでぇ」 「これ以上は意地でも通さないわ」 そのに飛び込んだのはニニギアとケイマ。振り下ろされる蹄を横殴りにして軌道を反らす。 「れ、レイチェルさん!」 その隙に依子はレイチェルを助け出し、すぐさま治癒魔法を施す。だが傷を塞ぐ速度よりも失われる生命の量が勝っている。 「大丈夫……ちゃんと癒してみせるから……」 そこにあひるも着き二人同士に治癒を行う。失われかける力は瀬戸際に繋ぎとめられる。 だが、これにより戦況は一気に転がる。 「ぐっ、ま……負け、へんで」 踏み潰しを受けそれを耐えるケイマ。だが圧倒的重量に膝は折れ徐々に地面に向けて潰されていく。 と、そこでシキが付与された翼を揺らし宙に舞い上がると雄牛の背中に降り立つ。 雄牛は背中の存在に気づき、ケイマを潰すのを止めて背中のシキを振り落とそうと身を大きく揺らす。だがシキはその背中に鉄の爪を突き立ててそれに抵抗する。 と、そこでシキは何かを思いつき、暴れる牛の背で片手の爪を突きたてたままもう片方の手で何度も同じ箇所に鋭い刃で抉る。時期に皮はズタズタになり、どぷりと赤黒い血液が溢れる。 「……牛、丸齧り」 シキは牙をその血の溢れる傷口に向けて突き立てた。鉄錆びた味とは違う別の何かがシキの中で変換されてその嗜好を満たす。そして雄牛は自分から奪われる何かに、獣故かその捕食される感覚に一層に跳ね回る。 そして暴れるうちにまた角に光が点りだす。治療中のレイチェル達はまだ動けずそちらに向けられたらただでは済まない。 「レイチェルさんの言葉を信じて、皆で角を狙いましょう」 「それしかなさそうやな」 ニニギアは自身の内側で魔力を循環し、ケイマも集中してその角の狙うべき場所に目をつける。 暴れる雄牛の角は明滅を繰り返し、最高潮にまで高まった瞬間――。 「奏でるは魔界へ誘う四つの音色! いっけぇ!」 ウェスティアの魔光に始まり一斉に雄牛の角に攻撃が集中する。角を振り下ろせず衝撃波を放てない雄牛は角に連続で襲う衝撃に首をあちらこちらへと振り動かされる。 「もう一つおまけよっ」 ハルの放った銃弾が何叉にも枝分かれた角の網を掻い潜りその根元へと叩き込まれる。その瞬間、鈍い音と共に雄牛の角がへし折れた。そして明滅していた角は跳ね上げられて宙を舞い雄牛の頭に向けて落ちる。 ――ウ゛モ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォォォ―― 溜め込まれた力が開放された。片角だけとはいえその衝撃は凄まじく前方にいたリベリスタ達を十数メートル後方に弾き飛ばす。 そして、へし折れた角から溢れた衝撃波は雄牛の頭の右半分を吹き飛ばしていた。 ●平凡男は…… 「いやー、難儀やったね。ちゃんと手足繋がってる?」 「ナイスダッシュだったよ」 ケイマは冗談交じりに通正の肩を叩きその労をねぎらう。ウェスティアもその反対側の肩を面白げにバシバシ叩いた。 通正も簡単にだが己の存在とアークという組織を説明され、ソレに対する理解とついていけない感情に曖昧な表情を浮かべる。 「今すぐじゃなくていいのです。0か100かって決断をする必要もないですからね」 治療を終えて意識を取り戻したレイチェル。通正はその血に汚れたその服を見て痛々しげに表情を曇らせる。 「あ、あの。困ったことがあれば、来て、ね」 本で顔を隠しながら依子も通正に声をかける。その後ろにいるニニギアとあひるも同じ気持ちなのか正道に優しい笑みを向ける。 「選べるなんて。おにーさんは、幸運」 後ろでぽつりと呟いたシキの言葉に正道は肩を震わせた。 皆から向けられる言葉と心に正道は暫く目を閉じて考え込む。そして再び目を開けると、いつの間にか立っていたハルがニコリと軽快な笑みを向ける。 「何をするにも君の自由。でも、もし私達と共に歩んでくれるなら歓迎するわよ」 そして差し出される片手。通正はその手にゆっくりと自分の手を伸ばした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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