● だって。 そこに板があったら飛び乗りたくなるじゃない。 ● 「ハマってるの」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、無表情だが、肩が若干震えている。 「猫が……古井戸にはまっている……」 下を向いて肩を震わせている。 表情をなんとかニュートラルに保とうとしている。 モニターに映し出される光景は、なかなかインパクトのある映像だった。 井戸だ。 中から髪の長い女が這い出てきそうな古井戸だ。 その井戸から何かが二本付き出している。 変死体の足ではない。 もふもふのにゃんこのおてて。 ただ、太さが丸太くらいある。 さらに近づく支店。 井戸のまんまるいっぱいに、涙目の途方にくれたにゃんこが。 にゃんこの顔が詰まっている。 「大きな猫型アザーバイドがこっちで遊んで帰る途中で、フルイドの蓋を踏み抜きそのまま詰まった。今回のお仕事は巨大な猫のおててをうんうん引っ張って、緯度から引っ張り出すお仕事」 うわぁ~。 ねこのおてて引っ張るだなんて、そんなかわいそうなこと……。 「すごく大きい。HPもすごく多い。まあ、痛いだろうけど、放置すると、崩界がっ住んで討伐しなくちゃいけなくなるから。ちょっとくらい肩脱臼しても仕方ない」 そっかあ。 「引っかき殺されないように気をつけてね」 なんだと? 「体長3~4メートル。今、おててばんざーいの状況だから……」 と言って、イヴ無表情でばんざーい。 「5メートル超えるくらい?」 うわぁお。 「見えるのは、お顔と両の前足かなあ。お耳も折れ曲がって詰まってるから、よく聞こえないみたい。事情の説明は無理。動物会話、タワー・オブ・バベル、ハイテレパスも先行隊が試してみたけどだめだった」 つまり。 「引っ張ったら、当然暴れる。猫パンチされる。範囲は限られるけど、当たったら痛いね。うっとりしちゃうかも。仲間に牙むく可能性もある」 リベリスタが呼ばれるという事は、それなりに危ない仕事なんですね。分かります。 「でも、もふもふだから」 喜んで行ってまいります。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月11日(火)23:11 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● アーサー・レオンハート(BNE004077)は、考えていた。 (古井戸にはまったにゃんこ……想像するとちょっと可愛いかもしれん) ちなみに、アーサーが今年フィフティイヤーズオールドの苦みばしった着流し野郎であることと、猫を「にゃんこ」とナチュラルに呼んでいることのギャップに言及してはいけない。 (だが、にゃんことしては辛いだろうし、何より時間をかけ過ぎれば討伐しなければならなくなる) くわっ。 鋭い眼光が井戸を凝視し、お助けグッズが入ったコンビニ袋があまりに強く握り締めたため、ガサガサ音を立てる。 (それだけは……それだけは何としてでも防がなければならん!) アーサーの背後に、背後に砕ける波濤を想像してください。 「うおおおなんだこのねこ! やべえぞ! やべえ! やべえだろーっ!」 『炸裂』手榴弾・はまち(BNE003687)の第一声が店主孤児院全員の第一声だと思っていただいていいんじゃないかな。 「あ、あたしが一番に触……」 先走る十五歳。 井戸の奥に向かって手を伸ばすが、みんなの視線が痛い。 というか、天守孤児院の義妹たちの目が痛いよ。 「い、いや、まずは出さないことにはな、うん。今すぐ出してやるからなこの猫野郎!」 君、愛が暴言の人ですか。 「おのれ卑怯なり、ねこ……」 ワナワナと手を震わせる『無音リグレット』柳・梨音(BNE003551)は、えっちな水着にマントという今宵ときめいちゃう魅惑コスチューム。 「ねこというだけでかわいいのに、はまりねこ……しかもうっかり戸板を踏み抜くとかかわいさ倍増ではないか……人間ではとても太刀打ち出来ぬかわいさ……」 ワナワナワナワナ。 「早急に救出せねば、私達もかわいさ負けしてしまう……」 なにぃ!? 猫とロリは可愛さで争うライバルだというのですか、このロリは!? 「おーけー……れっつ脱出ゲーム……絶対に助ける……」 それは、ライバルの萌え属性を削っていくってことですか!? 井戸の端にぶら下がるように中を覗き込んでいるのが、『嘘つきピーターパン』冷泉・咲夜(BNE003164)だ。 年齢詐称71歳の爺様だ。 (ぬこ依頼、また引き受けてしまったのじゃよ。仕方ないのぅ、これはぬこの罠じゃ、呪いじゃ……) と言いつつ、顔はにこにこほくほくだ。 (紳士らしくさりげなくもふもふしつつ、討伐などという悲しい結果にはせぬように、全力で引っ張るのじゃよ) 井戸の途中に突っかかっている猫に、大丈夫じゃと言う。 のおぉ。と、声を上げる猫。 (おおきいぬこは、癒しじゃ) 「うわぁ~、ハミてる」 『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)、笑いが禁じえない。 ほっぺたの余った肉がもにゅっと真ん中によっている状態だ。 「肉が寄ってちょっと困ったような表情、かわいいなぁ。いや、実際すごく困ってるんだろうけど」 写メ撮りたい。でも我慢。 「もう少し井戸が大きいか、猫ちゃんがスリムだったらこんなにちょうどよくはまらなかったのかなあ……?」 『本屋』六・七(BNE003009)も、井戸を覗き込む。 (この光景はそれはそれで和むけど、困ってるのを放ってはおけない……) にゃんこのめめには涙が盛り上がっている訳だからして。 「今は苦しいだろうけど、待っててね……!」 『小石の塔』朝町 美伊奈(BNE003548)の手には、ハンカチがあった。 そのまま井戸にダイビング。 ひとひとと溢れそうな涙を拭いてやる。 井戸の縁では、美伊奈の足先がじたばたと動いている。 猫の前足と合わせて、ちょっとシンクロナイズトスイミング風味。 「そういえば、うちの猫もお風呂の蓋から浴槽に落ちてたな……落ち易い動物なの……?」 七が小首をかしげる。 ――わりと? ● (こころあたたまるねこいらい。アークのおにいさんおねえさんといっしょにがんばりますよー!) あどけないひらがなはつおんなのに。 口にしているのはロリババアではない、真正幼女なのに。 違和感を感じるのは、『磔刑バリアント』エリエリ・L・裁谷(BNE003177) が、粉砕する邪悪ロリであるからだ、光あれ。 コンビニ袋がガサゴソ音を立てる。 手にしたペットポトルの中身がたぷんと揺れる。 サラダ油1リットル。 「必要最低限な! ぬこの毛がベショベショに……いや、俺たちの手について、ぬこをしっかり掴めなくなったら困るからな!」 アウラールがじたばたしている。 「あくまで滑りをよくするためなのです。これで猫さんが怒り出したら元も子もありません」 「慎重にいこう」 梨音は、不本意ながらストールと防御用マントにも油を塗る。 「ね」 (――こをもふもふするのは任せろ!) 七は、本音をかろうじて心中に押しとどめた。 「片方だけだとバランス悪いし、猫ちゃんも余計痛いだろうから、皆と協力して両手をいっせーので同じ方向に引っ張った方が良いよね」 お任せ下さい! と、エリエリ。 「姉妹いちのパワーをみせてやるのです!」 君、力の二号か。 「とはいえわたしはプロアデプト。多角的に状況を把握し空中にいるみいちゃんの報告を元に――」 そんなみいちゃんは、井戸の約二m上を飛行中。ふよふよ。 アーサーも、ふよふよ。 だって、フライエンジェだもん。ふよふよ。 おっちゃんだろうとなんだろうと、フライエンジェには翼があり、行使する権利がある。ふよふよ。 更に言うなら、癒し系なんだもん。 今回ちらとでも体力回復のこと考えてるの、アーサーさんだけだもん。 「わたしは回復の対象からは外してくれる様にお願いして置きます」 うふ。と、微笑む小学生のみいちゃん。 なんと。と、アーサー、びっくり。 体力黄色信号になったら、回復してあげようと思ってたのに。 「だって、私の引っ張りは神秘の引っ張り……! 自らの痛みをおぞましき呪いに変え対象一体を引っ張るの……!」 ほんわかな外見なのに、言うことが黒のトレンチコート着たぼさ髪系だ! (……などと意味不明な供述をしておりますが、要するにペインキラーで引っ張るという意味の模様です) う、うん。それ、大きな声で言おうか。 おじちゃんの誤解を招くから。 そんなみいちゃんのアンヨから、これまたふよふよした猫じゃらし。 {引っ張るときは、猫さんから猫じゃらしが揺れてるのが見えるようにして置きます。これで少しでも痛みから気が紛れると良いな……」 何この子、天使? でも、心に黒コートぼさ髪系が住んでる。 「微調整はりっちゃんの速度で、大きく引くときははまち姉さんのノックバックで、引っかかりがひどいときは私のパワーで! みいちゃんは神秘でサポートを」 いえ~い、天守孤児院の連携まじ頼りになりそう。 「――引っかかってる部位から最適な力の向きを分析、その方向に前脚をぐいぐいするのです!」 おお、なんか頭良さそげだ。 「これが、わたしのぱーへくとぷらん!」 いちごパフェが、いちごぱへになるお年頃です。ロリロリ。 掛け声かけつつタイミングを合わせて頑張るのだ。 「こ、攻撃が最初に当る位置に立とうかな」 アウラールが、そそそっと立ち位置をずらす。 「え?」 「俺が手の近所にいれば、他のメンバーに当る時は勢いが殺されたおててになってるはず。それに俺、絶対者だし。魅了されないしっ!」 「――じゃ、あたしもそうしようか、な」 七も、そそそっと立ち位置をずらす。 ちっちゃい子、多いもんね~。おじいちゃんもちっちゃいもんね、アーサーさんは飛んでるし~。などと、もっともらしいことを言っていますが。 (振り回した手が当たっても気にしないというか寧ろお願いします。我々の業界ではご褒美です) もふもふ好きの性です。 もぎゅ。 (ああ、おててふかふかだし、肉球もおおきい……!) ほわん。 顔面の筋肉が緩むのは、どうかお許しいただきたい。 だって、肉球が、ばぶにゅうって沈むんだもん。 あああ、終点はどこ。どこまで沈んでくのこの指。 ● 「オーエス」 「オーエス」 以前、押し込む依頼で、間の抜けた掛け声を提案して、リベリスタが能天気さのあまり脱力する事態が発生したが、今回はそんなことはなかったぜ。 リベリスタ、成長してる。 カラスをタクシーがわりに使うのは、境港あたり出身の片目の小僧だが。 カラスをクレーン替わりにしているのは咲夜である。 「よしよし、すこし痛いかもしれぬが……もうしばし我慢するのじゃ」 式神をほかの連中とタイミングを合わせつつ、空へ、空へ、空へ、イントゥーザスカイ。 (早く、ぬこをもふもふしつつ、窮屈なところから出してやらねばのぅ) おじいちゃま。それって両立するんですか。 ばべち。 猫の抵抗。 おててが肩から抜けたら痛いでしょー。 とっぱじめの猫パンチ・コークスクリューブロー風味をまともに浴びたアウラールは、その痛みに、しばし無言だった。 言っておくがもふもふを味わったわけでも、肉球の感触を反芻している訳ではない。 「ああーごめんなあ痛いよなあかわいいなあぁ……なんかもう殴られたり引っかかれたりしても幸せな気分になれる気がするぜ、こりゃあ」 井戸に頭を突っ込んで猫にわびをいれるはまち。 そのはまちに、アウラールは重々しく頷いた。 うん、俺、今幸せです。 (直撃さえされなければ、ふにゃーんにはならないはずなので頑張ってよける) 梨音は、助け出したあとのきゃっきゃうふふ肉球モニモニタイムの思いを馳せる 「ふ……私は魅了する担当……じゃあくロリに魅了などちゃんちゃらおかしい……」 梨音、かのLKK団執事派をかしずかせていた真正サドロリ。 しかし、フラグ立てちゃいけねえよな。 「こんなことで」 もふもふ。白い前足。 「このりっちゃんが」 もふもふ。赤毛のブチ。 「正気を失うとでも」 もふもふ。黒毛のブチ。 「はああああ、かわいい……」 もふもふもふもふ。ミケだよー。三毛にゃんこだよー。 攻めロリがオチル瞬間ってたまんねえよな! そんな姉妹の様子に、エリエリの頬に邪悪な笑が浮かぶ。 「みんなメロメロですねーにやにや」 あえて、「にやにや」を発音するところがあざとい。 「だがこの邪悪ロリにかわいさなど通用しない!」 だが、ちょっと待って欲しい。 本当にそうだろうか。 ロリの可愛らしさというものは、可愛いものへの共感――「こんなに可愛いものが好きな可愛い私」によって増幅されるものではないだろうか。 邪悪ロリならば、積極的にそこを利用するべきではないだろうか。 邪悪なんだから! 「かわいさなど」 お嬢ちゃん、かわいいは正義だよ。 「かわ」 さ、、言っちゃいなよ。楽になれるよ。今のままじゃ、もどかしいだろう? 「かわいいよ、ううわあああん! もふもふ!」 ホントに、強気ロリが落ちる瞬間は筆舌尽くしがたいよな! (はっ、姉妹の視線がいたい……だって……かわいいし……) そして、そのあと我に変わって、もにょるのも最高。 「しっかりしろ!このままじゃ、ぶさかわを討伐しなきゃならなくなるぞ!」 凶事払いの光を放ちながら、アウラールが叱咤する。 「そんなの考えただけでゾッとするだろ? 頑張れ」 ロリには紳士。 おぬこさま至上主義。 「……はっ……おのれ……これが人を超えたかわいさか……」 梨音も我に返った。 「通りづらそうなところはもみもみして少しでも隙間を作る努力をするよ」 七が、みちみちのところに手を伸ばす。 猫の皮は、割と移動する。 たるんでいるところを引っ張れば隙間もできようというもの。 猫の毛並みがべたべたになっているのが、七には切ない。 「ごめんね、通り抜け次第拭いてあげるからね……」 猫に声をかけるのに、なんとなくあたりをうかがってしまう。 言葉も通じないし、そもそもお耳が折れているので聞こえるかどうかも微妙と言われていたではないか。 「言葉が通じないのは分かってるけど、声をかけずにはいられない……」 誰とは言わず、言い訳めいた言葉が漏れる。 「ぬこがどんな抗議をしてこようが、心を鬼にして耐えてる」 アウラールは、本当に胸が痛むと辛そうな顔をした。 「……何言ってるかわかるのかって? わかるよなぁ? 皆」 非戦スキル? そんなの必要ないでしょ? え? え。 えー……。 審議中。 ● 「おーえす!」 「おーえす! 右肩抜けたぞ!」 「もう一息!」 「おーえす!」 にゅる。 とすん。 両の前足が、地面についた。 のるるるるるるるるうっ! 油でしとしとになった肩から下が、一気に出てくる。 「うにゃ」 油でベットベトの三毛猫は、助けてもらったのは分かるのか、ずり、ずりとリベリスタたちにカラダをすり寄せ、甘えてくる。 「「「「ばんざーい!」」」 やった! 討伐しなくて済む! それも確かにリベリスタの喜びだったが。 もうひとつ、やらねばならぬことがある! なんか懐かれてるし。 懐かれてるし! いえ~い、もふ好きの三高平のみんな、みてる~!? これから、でっかいミケにゃんこ、全力でもふりま~す! ● 「アザーバイドだから口に合うか分からないけど……でも……その体で、ずっと動けなかったんだから……きっと御腹減ってるでしょう?」 美伊奈がそっと差し出された、紙皿の上のカリカリを、ぺろりと平らげる。 お腹……減ってたんだねー……。 「そうじゃのぅ……油とかですべりをよくしてしまったので、せっかくの毛並みがべたべたじゃ」 咲夜おじいちゃま、しょんぼり。 あまり年寄りをがっかりさせてはいけない。 ストレスで、余命が削れる。 「できるならシャンプー使って洗うとか。それがダメであれば、せめて軽く拭くとか。その後にブラッシングをしてあげたいのぅ」 出てくる出てくる、コンビニ袋は魔法の袋。 油吸うぜ~、マジ吸うぜ~なキッチンペーパーさん登場。 「ついでにブラッシングしとくです。助けるためとはいえ、べちゃべちゃのままはヤですよね」 エリエリが手際よく、猫の毛並みを拭き上げていく。 孤児院ではお姉ちゃん的立ち位置だ。 「どれ、手伝おう」 アーサーも、タオルを取り出して、エリエリの届きにくい場所をフォロー。 孫と爺様の風情。ちなみに咲夜はひい爺様でも問題ないお年頃だ。 「美猫は身だしなみにも気をつけんといかんのじゃよ」 咲夜は嬉しそうに目を細めている猫の油のついていない顎やらをもふもふなでなでしてあげる。 「うむ、ぬこは癒しなのじゃ……」 「ゲートは……もうしばらくは大丈夫そうだな」 大人の分別として、場所と残り時間を確認すると、アーサーは見せられないよ的に相好を崩した。 (もふもふタイム!) 道を歩けば侠客と間違われるアーサーが、でっかいにゃんこを撫でたり、抱きしめたり、頬ずりしたり……。 ハメを外したおじさんって、――いうまでもありませんよね。 梨音は、ハメを外していた。 お猫様の背中によじ登っていた。 どエスたる者、上に乗ってなんぼ。 ――かどうか、審議中。 本人は、もっふもっふと無事な毛並みを満喫している。 (このあとは、肉球ぷにぷに……) 大丈夫。足は全部で四本あるから。 「しあわせ……今日は仕方がないので魅了されてやる……」 デレたァ! LKK団執事派垂涎の一言! 「モフる! あご! 尻尾! 腹! 耳!」 はまちは、アグレッシブだった。 「特にあごには気合を入れるぜ。たぷたぷしまくる」 君は短毛種おでぶりんにゃんこの顎のタプタプを堪能したことはあるか。 あれは、いいものだ。 たるんと伸びた革の手ぷてぷかんに柔らかく生え揃った毛並みの手触りがブリリアントアンドデンジャラス。 うっかりすると、日が暮れている恐ろしさだ。 「ふああー、快感!」 (せっかくだからねこが気持ちよくなれるような触り方をして仲良くなりたいよな! 撫でる!) そんなもみくちゃも長くは続かない。 楽しい時間はあまりに短い。 サヨナラを言う時間が来た。 ● 「ちゃんと元の世界に返してあげないとねぇ……」 名残惜しそうな七の手が、上下に動いているのは、エアたぷたぷです。 さっき、顎たぷたぷしていた感触を思い出しているのです。 本人は無意識なので、そっとしておいてあげてください。 アウラールは、ぼそりとつぶやいた。 「最悪、井戸を壊して、ぬこの腹肉たくし上げるつもりでいたからなぁ。痛い思いさせずに済んでよかったぁ」 はらにくを、たくしあげる? パンク兄ちゃん、至ってマジだ。 ぬこ関連でふざけたりしない。常にマジだ。 「……じゃあな、ジュリアン……」 勝手につけた名前をおみやげにと、はまちは、くくうっと喉を鳴らす。 「もうはまってはダメだよ……!」 ゲート前では涙の別れ。 さよなら、三毛おでぶりんじゃない、識別名「キャットフロント」――いや、ジュリアン(はまち命名)。 黒い穴の中に吸い込まれていく、君のデップンとしたお尻と、ぽっちりささやかなボブテイルを忘れない。 「「「それでは」」」 誰ともなく、ゲートに手を添えた。 なんとなく声を揃えてしまうのは、このゲートを塞ぐ悲しみを分散させるためだ。 「かわいかった」 「最後、振り返ってった」 「喜んでくれてたよね」 「――いくぞ」 ブレイクゲート。 もう君と会うことはないだろうけど。 どうか、君の世界で幸せに。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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