●伝承 小生、黒いビキニがいいなぁ。 ――――『黒い太陽』ウィルモフ・ペリーシュ ●既視感(デ・ジャ・ビュ) 「――なんて事を実際に言ってたかどうかはさて置いて」 「思い切り風評被害だろうが!」 時を越えてかつて繰り広げたやり取りをなぞる――悪ふざけもここに極まる『塔の魔女』アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア(nBNE001000)に勢い良く突っ込んだリベリスタは激しい頭痛を禁じ得なかった。 「へぅー」 「何が『へぅー』だ。暫定三百歳」 あざといリアクションで応えたアシュレイの『捏造』が遥か海を隔てた先に居る大魔道の耳に入ったならばそれはそれで愉快な状況になりそうである。何より至極悪辣なる彼(シリアス)は『地獄耳』を自称しているのだからして……余談であるが。 「……それより何よりこの導入って事は、だ」 ごくりと息を呑んだリベリスタはアシュレイの漫才そのものよりも、『その漫才が意味する大いなる事実』の方に目を向けていた。 「はい――」 長い睫を伏せ、悲痛に頷いた魔女は―― 「――出ました! 十二月のえっちっち! ジャンジャンバリバリえっちっち!」 「うわあああああああああああああ!!!」 ――先刻承知のその一言に絶叫するリベリスタ。 えっちっち。それはある種の性質を持つアザーバイドでありエリューションの総称である。過去にも複数回観測されたそれ等はその都度奇妙奇天烈なる能力を大いに発揮し、リベリスタ達の心身に深い傷を刻み、苦しめ(?)てきた存在だ。 ……要するに名は体を力一杯表す『彼等』はまぁ『そういう事』である。 「今度も理不尽な感じに凄いですよ!」 「……聞きたくないんだけど、どうか」 「聞きたくなくても言いますよ!」 「いぇあ!」と拳を突き上げたアシュレイは実に楽しそうである。 「エネミー識別名『えっちっち(十二月のパライソ)』! 一応アザーバイドで何か適当に穴通って来ました! 初見の方の為に解説するならこの個体、男性からの攻撃が無効化されます! つまり男なんて居た所で刺身のツマにもなりません! しかも、男に加えられる攻撃の精度は世界樹エクスィスを上回る事でしょう! ちなみに全員男だったら大失敗します!!!」 「……辞めろよ、そういうぶっちゃけは!」 「『えっちっち(十二月のパライソ)』はとってもシャイでナイーヴな性質なんですよ!」 力一杯喋るアシュレイは当然の如くリベリスタの話を聞いていない。 「シャイでナイーヴな奴はえっちっちとかならない!」 「なんとこの個体、本質は触手の生えたスラ(ry)なのですが、比較的知性が高く、平時は気体化しておりその補足が不可能なのです! 大変ですね! 困りました!」 「どうしろと……」 げんなりしながら相槌を打ったリベリスタにアシュレイは『くわっ』と目を見開いた。 「――えっちな水着です!!!」 「……おーい、もしもーし」 「或いは水着! えっちっち(十二月のパライソ)はリベリスタの皆さんが『えっちな水着』ないしは『水着』それに類する物を身につけて現場に向かえば実体化してくれる事でしょう! どちらでも良いですがお値段に配慮してみました! なので『えっちな水着』だと特に高得点ですよ!」 「得点って何だよ!」 綺麗に突っ込んだリベリスタはふとある事実に思い当たる。 「……男が参加した場合は?」 「はい。その場合も『えっちな水着』等を身につけて下さい。尚、この場合『えっちっち(十二月のパライソ)』の嗜虐はかの『黒い太陽』ウィルモフ・ペリーシュ様に匹敵します」 「だからその取り返しのつかない解説やめろよ!」 やらせといて本気出すとか大人気ないにも程がある! 「寒いだろ!」 「冬とか皆さん厚着で寂しいじゃないですか!!!」 「そういやお前は薄着だな!」 「私だって美少女といちゃいちゃしたいんですよ!!!」 「私とか言うな、ねこたん下ろすな!!!」 「いぇー! 冬もピンク、冬でもピンク色ー♪」 ――gdgdである。オールウェイズ、今日も世界は残酷だった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月19日(水)22:58 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●十二月半ばに差し掛かり君は水着 「うわーなんておそろしいてきだー」 理不尽な事は山程ある。 「せかいのへいわはうちがまもるキリッ」 その賛美するべき立派な覚悟と棒読みの口調が似合わぬ『呪印彫刻士』志賀倉 はぜり(BNE002609)の調子の通り幾らでもある。 大凡理不尽ばかりで出来ているのかと錯覚しそうな人生は――時に万難の試練の如く、時に余りに馬鹿馬鹿しい方向性に誰かの覚悟を試さんとするものだ。十二月も半ばに差し掛からんとする今日この頃、気温もめっきり下がり、そろそろ道行く人は着込んだ厚手のコートの前をきゅっと締め、暖房器具の活躍も顕著になってきた今日この頃である。冷たく乾いた一陣の木枯らし吹き抜ける閑散とした原っぱに『薄着の』少女達ばかり十人も揃ったのは――果たしてそのどちらと表現するのが適当妥当であろうか? 「この寒い時期に何故水着……」 年寄り(笑)にはいよいよ骨身に染みる冷たい風にも負ける事無く、恥ずかしがりの割に実に律儀に――恥ずかしがりの割に実に自重しない胸を若干ばかり狭苦しく黒いビキニに包んだ『雪暮れ兎』卜部 冬路(BNE000992)がしみじみと呟いた。 「アシュレイさんが最初にに言ったウィルモフさんの言葉はきっと何かのヒントに違いないです!」 「ううむ、嘘か本当か知らんが、黒が良いと聞くからそうしたが……」 『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)は『おこたから出ると死んじゃう』割には相当のやる気を見せていた。しかし、当然と言おうか誰が何と言おうが十二月の気温は一桁台に絶賛突入中である。 「ウワーッハッハッハ! ……アッ……結構寒かった……」 テンションだけは幾らやたらに高くても「水着は開放感あるけど寒いのはどうしようもないかぁ~」と零した『怪力乱神』霧島・神那(BNE000009)が時折歯根をカチカチと鳴らしているのは、紐に近いビキニから零れんばかりの褐色の肌に鳥肌が立っているのは否めない。 「我が身、御国に捧げたり。心頭滅却すれば火も又……涼しいのはちょっと……こう……」 「うぅー、そう言われたら寒くなってきたんだよ…… ていうか、ちょ、ちょっとどころじゃなく寒いよ、これ。寒い!」 冬路は見事なまでにしっとり柔らかそうな我侭ボディをあられなく包むビキニ、ティセは生命力弾けんばかりに発育のいい少女の瑞々しい肢体をピッタリと包むマイクロビキニ。欧州大魔道の薫陶を受け、何れも黒。 「でも! 普段から着てるちゃんと強化してる水着と迷ったけど、せっかくだから高得点な方を選んだよ!」 ティセの露骨に不自然な台詞を聞けば――否。 彼女等の様を見れば事実は全く正しく世界に表明されているのである。『薄着』と言えば日和っているように聞こえはいいが、その実、今日この現場に派遣されたリベリスタ達に求められたのは唯の『薄着』では無い。 ・皆が水着を着てきてくれないとシャイなので出てきません。えっちな水着が居れば少しの他人のフォローは出来ます。 そう、事実をより正しく表現するならば強いられたのは『薄着』ではなく『水着』である。 それも出来れば『えっちな水着』で参加してね等と――GPにも大変優しくない実に酷い提案であった。 『塔の魔女』アシュレイがブリーフィングで告げた言葉は全くもって悲痛な――神の意志だったに違いない。 天岩戸に閉じ篭った天照大神を表に出そうとするならば、その渾身も少しは報われるというものなのだが……何が悲しくて十二月の寒空にうら若き乙女達がえっちな水着でピンクのスライムを誘わねばならぬというのだろうか? 「いつだったか似たようなのと戦った気がする。 いつか遠い日に似たようなのにアレな目に遭わされたような気がする……」 現実は自身もえっちな水着に身を包み茫と呟いた『月光花』イルゼ・ユングフラウ(BNE002261)の口にした通りである。 『ある種の究極的拘り』を微塵も隠さないエリューションやアザーバイドをアークは幸か不幸か一つのカテゴリに纏め上げている。『えっちっち』の総称でカテゴライズされるそれは名が体を表すという意味ではこの上なくその通り分かり易い産物ながら、その対処に確実な『犠牲』を強いる者共でもあった。 閑話休題、果たして状況は魔女の言の通りに進んでいた。 生贄……もとい運命を捻じ伏せ呑み喰らう為に今日戦いに赴いた戦士達は十人の内十人が(見た目は)少女。 十人の内、実に九人はえっちな水着を装着し、内一人も水着を装備している状況である。 「うん、ボクねこの依頼のために、なけなしのお小遣いはたいて『えっちな水着』を買ったんだよ! えっへん。 そんで何種類かデザイン有るうちで、一番ボクにふさわしいのってどんなの?って聞いて見たら、『スク水旧タイプ』って奴なんだって。おまけで胸の所に名札もつけてもらったんだ~♪」 「うんうん、うちも灰色の日常にお嬢ちゃんらのおっぱいってのは結構な事と思うよ。何かされてもうちとしちゃ全然おっけー」 あれ……? 『へっぽこぷー』メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)さん、はぜりさん、何だかとっても楽しそう……? 「タコさんとかイカさんとかぬるぬるしたヨロイとかぬるぬるしょくしゅとは戦ったとこはあるけどえっちっちは初めてだねー。 うわさにはよく聞くけど、どんな攻撃をしてくるんだろー? 楽しみだね!」 赤いスリングショットの『ものまね大好きっ娘』ティオ・ココナ(BNE002829)に到っては、ハッキリそう仰いました! 「恥ずかしがり屋で水着を着ていないと現れないなんて変わってるねぇ。変態紳士さんなのかな?」 ……好き好んで彼女等が予約に行列を作ったという事実はこの際他所にほっぽっておく事にする! 「男性がいないのが救いかしら? まあ、あられもない姿を見られるわけにもいかないし……重傷のせいかちょっと色々過敏なのよね……」 「……今までは何だかんだ男の人も少数いたけど今回は――シャイなえっちっちの神通力? それともリベリスタが物好きなだけ?」 「言っておくけど、好き好んでは居ないからね。恥ずかしいんだからね。でも仕事だから、どうしてえっちな水着なのよ……」 溜息を吐き体を大きな白い羽で隠そうとする来栖・小夜香(BNE000038)とそれに応えたイルゼの言葉の真偽は知れぬが、何だかんだで期待している――じゃなくて、献身に溢れるリベリスタ達は『邪悪な背後霊共にそそのかされ、来てしまった以上は』覚悟完了の趣であった。フヒヒ、サーセン! 「で、えっちっちを呼び出すためにはこうすればいいのか?」 「皆の水着が拝めて面白いから少しの寒さは許しちゃおう。さあさあ皆も思い切りアピールして、アークの話題の的になろうぜぇ~!」 『ヤク中サキュバス』アリシア・ミスティ・リターナ(BNE004031)の呼びかけに応えた神那が実に生き生きと実に嬉しそうに楽しそうに、二人揃って上半身を前に突き出し。両手を組んで両腕で豊か過ぎる胸を押し出すような『ポーズ』を取って見せた。 「少し古いが、こんなのもお約束だろう」 と、アリシア曰く若干の隔世の感も否めないアレであるが、多分平成生まれは良く分からないと思うのだが。 何はともあれ、流行語大賞も取った馬力の成せる業は確かである。冬枯れの風景をかくも鮮やかな極彩色に染める生命力の塊がこれだけ集まるならば俺……じゃねぇえっちっち(十二月のパライソ)もスライム冥利に尽きるというものであろう。空間は適当に引き歪み、程無くそれは面々の視界の中に現われた! 「……これがアーク名物えっちっちか。成る程、モザイクをかけたくなる位卑猥だな……」 「折角だから記録残しておこ。綺麗に撮れたら褒めて貰えるかな?」 「……っ!」 素で呟くアリシア。十歳(あんぜんけん)からカメラを構えるメイ、息を呑んだのは『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)である。 ピンク色に蠢く不定形の巨大スライムの見た目のインパクトは小さくは無い。そのおどろおどろしい外見は全く多感な時期の少女には何とも言えず何とも言わぬ複雑な感情を余儀なくされるもので――そう。えっちなリンシードさんの場合それは言うに及ばず…… 「誰がえっちですか!」 欧羅巴の人形のような美貌を――白磁のようなその肌をうっすらとピンク色に染めた彼女は御丁寧にも透け易い白いスクール水着を装着し、虚ろに向けてブツブツと『決して届かない(確定)』抗議を始めていた。 「おかしい……こんな事は許されない……まるで吸い込まれるようにこの依頼に…… 言っておきますけど私、えっちじゃないですからね…… 全ては貴方が会場でえっちと呼んだせい……誰が『極めてえっちなリンシード・フラックスさん』ですか…… 私はただ、ストイックに回避力を求めているだけなんです……回避は……万難を避ける為のもの……」 ――でも、えっちっちは避けられなかったね? 「これから避けますもん!」 ――最近、人形キャラ壊れてない? 「キィ!」 ●史上最も酷い引用をしつつ、んじゃまあそろそろ始めましょう かくて此の世の平衡を守らんとするリベリスタ達とえっちっち(十二月のパライソ)との激闘は始まった。 どれ程の痛みを払っても、どれ程の苦難があろうとも。 想いを、先に。歴史を、先に。 時間が先に繋がるならば、戦う事で愛する誰かの未来を紡ぐ事が出来るとするならば。 犠牲も、全ては―― ・霧島神那&アリシア・ミスティ・リターナの場合 「おうおう、何でこんな胸が大きいんや?ほれほれ、チェックさせてみーや」 「……ちょっ、んんっ、首噛まないで霧島ぁっ……」 始まる前からクライマックスであった。 「霧島! メイ! 奴に渚の小悪魔ラヴリィ~夏色ビキニの3人娘アタックをかけるぞ! 作戦名? 適当に今付けた!」 アリシアの声に「応」と声を上げる神那、メイはと言えばじーっとレンズ越しに駄目な大人の風景を記録するばかりである。 えっちっちがえっちっちでえっちっちしてそれなりに長いがコラボとか始めたのはこいつ等が始めてである。 えっちっちはえっちっちだからしてどうあれえっちっちになるのだが、これ程清々しく自爆する連中も中々居ない。 「鬼の道に横道無しぞってね! フハハ! 行くぞ!」 「私を踏み台にしたぁっ!?」 芸人共の丁々発止のやり取りはさて置いて、他の依頼ならばいざ知らずこれはえっちっちである。 従って何をどう頑張った所で第一に帰結するのは…… 「いやーん、今日は水着だから感染力高しゅぎるー!」 こんな神那で、 「ひにゃぁぁふみゃぁぁぁ! 触手しゅごいぃ、溺れちゃうのぉぉ!」 そんなアリシアである。 桃色の霧が濃度を増している。 あれやこれやと理由と理屈を持ってきた所で――『やる事全てやり尽くすまでは何時も無敵』がえっちっちのモットーです! 「えっちっちさんに包まれると……冬の水着も悪くないかもぉ~……」 何か捕まった神那がそろそろキマってる。 (あ、肩コリとか取れてくみたい……) アリシアの胸の重みに意外な効能もあったみたい。 ・来栖小夜香の場合 元来。 元来、男性的な欲望とはある意味において――『征服』という要素を重視するものである。 少なくともねこたんはそれを強く重視し、それを強く願っている。 読者諸氏がその性癖の傾向をどう評価するかは知れないが――少なくとも一部の皆さんには賛同頂ける事と確信している。 「それと――」 白い肌がそれを隠そうとする羽から否応なく覗く。 「――私のこの状況と、一体何が関係するのよ――!」 抗議じみた小夜香の天と地が逆転した。 『後方からの支援メイン』と書かれたプレイングを無視……じゃなく裏切る現況はまさに戦いのあやが作り出した想定外の状況だった。細い足首に絡みついた触手が宙に小夜香を引っ張り上げた。自由な動きを失った彼女はまさにまな板の鯉である。 「……っ、この……っ……!」 咄嗟に悪態を吐きかけた彼女の全身に伸びたピンク色のにょろにょろが一斉に絡みつく。 「やだっ、やっ、べたべたするっ……」 生理的な嫌悪感に――背筋を寒気が走り抜けた。思わず瞳を潤ませ身を捩った彼女だったが、肌が幾らか赤らんでいるのはえっちっちが念入りに散布した毒気がきちんと効能を発揮している証左であった。 「こ、んな程度じゃ効かないわね……」 歪めた口元から濡れた息を漏らしながら、それでも小夜香は虚勢を張る。 「……案、外、んんっ……っ、大した事ないのね。ま、だまだ耐えれるわよ……?」 その肌を這い回る濡れてべとついた感触に瘧のように体を震わせ、 「支え、護り切ると言うこの意思っ、少々の事で揺るぎはしない……っ!」 それでも彼女は言い切った。 でも。 「あんっ! や、今のは別に、そんな、んっ、何もないわ、ちょっと声が出ただけ、っ……や、やあああっ……」 こんなんで。 「あっ、そ、そこはっ! や、やら、やらぁ! ごめん、もうっ……限界、んっ! んんン――ッ」 こんなんで。 「――悔しい、でも感じ(ry」 やっぱり触手には勝てなかったよ! ダブルピース。ダブルピース。 ・ティセ・パルミエの場合 「……う、やっぱこれって激しく動いたら脱げちゃいそうだね……」 無駄な贅肉の無い十五歳の身体にピッタリと張り付くマイクロビキニ。 ティセのセレクトした水着と、覇界闘士たる彼女の『戦い方』は全く見事に美しい和音を奏でていた。 元々『あまり気にしない』少女である。 「えっちっちってもう一年半振り――あの時は何も抵抗できないままヤられちゃったけど、前回のあたしとは違うところを見せてあげます!」 真っ直ぐ素早く飛び出した彼女は宣言通りの一本気でピンクのスライムに鋭さを増した壱式迅雷を叩き込む。 しかして彼女の一撃は重いには重く、鋭いには鋭かったが―― (べ、別に、最初に行けば長い間触れていられると思ったからじゃ、ないよ?) ――武道における心・技・体の心が欠けていたのは否めない。 ティセはえっちっちの経験者であり、実はそれがあんまり嫌で無かったというか…… ハッキリ言ってしまえばそれなりに楽しんでしまった経緯の持ち主であった。 (み、水着は寒いのに、なんだか熱くなってきたかも……このトキメキはあの時にも感じたのと同じ……?) 桃色のスライムに近付けばそれが発する毒気も強くなる、これは必然である。 むしろパブロフの犬のように何か条件反射的なプラシーボがくっついているのも否めないが、ともあれティセの胸は高鳴りを抑え切れない。相手はスライムで、現場は冬の原っぱで、彼女はえっちな水着なのだがそんなあれこれはさて置いて。 「ヤ、ヤダ、これじゃ、また前と同じじゃないですかぁ……」 『猫の爪』が堪えないスライムの一部に絡め取られた。ふるふると小さく首を振るティセの顔は困惑に染まり、目は赤くなっている。 「ん……、にゃー……ぁん、にゃああん……んにゃぁぁぁぁぁ……」 その身を包む生暖かい感触に深く息を吐くティセは胡乱としていく頭の片隅で考えた。 (またヤられちゃった……でも、もしかしたらあたしも本当はそれを望んでいたのかも……?) ・卜部冬路の場合 「例えそれがアザーバイドであったとしても! 高い知性を持つと言うならば、哀しい戦いの前にまず対話を行うべきなのじゃ!」 何と尊い心だろう。 何と美しい決意だろう。 我が身に差し迫る危険さえ厭わず――この冬路という女は名も知らぬ、理も知らぬアザーバイドにまずは救いの手を差し伸べんとしていたのだ。 「幸いに私はバベル持ち。えっちっち(十二月のパライソ)殿の心の音を聞く事が――」 ――いいから脱げや! 「――駄目じゃ、知性が高かろうと低かろうとこれは駄目じゃ! 何だか色々駄目な子じゃった!?」 さもありなん。今まさに読者諸氏の心の音を代弁するえっちっちさんはエロゲ界の貴公子である。BNEは全年齢なので関係ないですけども! 「駄目じゃったら、戦うしかないのう……切先を向ける事を許せよ!」 うわー、かっこいい! でも尺がアレだから疾風怒濤の展開に何だか色々中略して! 「待て!?」 兎に角、突っ込みの間にも桃色の霧を深呼吸した冬路さん。 「あっ……いかん、身体が……息を整えるのじゃ……! ぜえぜえ……これは……更に吸い込んで、意識が……これは……拙い……」 くらりと傾ぐ冬路さん。 …… …………… ……………………。 「ふ、ふふ……ふふふふふ。うふふふふふ」 ハイライトの無い目で艶然と笑い、 「詮無き想いを受け取るのも『儂』の務め。 異種なれども重ねを求めるのであれば、応えようぞ。ほうれ、余す事無くこの身体を愉しむが良い」 態々、ダブルキャストを活性化した容疑者は―― 「さあ、お主の全てを受け入れ、赦そう……んっ…… そうじゃ、もっと激しく……ふふ、こんな気持ちになるのも久方ぶりじゃな…… いいんじゃよ……お主の好きにするといい…… そう、そうじゃ……愛し子よ……共に、満たされようぞ……!」 ――『私』リベリスタとしてのここ数年の人格。『儂』フィクサードとしての過去の人格。故にえろくてもいいのです。 そう、供述しておりました。 ・イルゼ・ユングフラウの場合 「とりあえず意味はないと思うけど守護結界。どうにもならなかったとしてもどうにかしようとした事だけは忘れずにいたいから」 オリンピックも参加する事に意義があると言うし、恐らくは抵抗する事に意義はあるのだろう。 いやはや、全く。子猫の甘噛みのような抵抗を捻じ伏せる事こそ、楽しみと言えましょうや。実に全く。 「そういう意味じゃないわ」 イルゼの冷淡な突っ込みも虚しく、中盤を過ぎいよいよ盛り上がってきたえっちっちは彼女を浸食せんと襲い掛かった。 「……っ、そう何度も……っ!」 せめて意識がしっかりしている内は攻撃――と。 式符・鴉の『怒りのリスク』は取り敢えず忘れて奮戦するイルゼ。 伸びてきた触手に身を竦ませながらも、腕で胸を掻き抱き、脚はしっかり閉じてガードする。 でも、まぁ、その、そう。 「……っんく、……この霧……ほん、ほんと、厄介っ……」 戦いが続く程にその身を侵す毒香は堅いイルゼのガードも少しずつ崩していく。 そしてダムの決壊には蟻の一穴があれば十分なのは誰もが知る事実であった。 暫し後―― 「……あっ、あっ、あっ、あっ……」 しろくてあつくてべとべとしている―― 短く早い浅い呼吸を繰り返し、痙攣するようにその身を震わせる彼女に当初の防御姿勢は無い。 (何故かしら、急に触手が愛おしく、気持ち良くしてくれるものに見え、てきたような……) それは敵。間違いなく敵なのに、歪められた認識がその『ずれ』ばかりを大きくしていた。 うっとりと蕩けた目で自身を戒めるそれに頬擦りして、吸血にあらず軽くちぅと甘噛みする。 「いいのよ……どっちも好きな方から、ぬるぬるのべとべとに、して?」 はい、素晴らしい。今回『も』採用可能の中で素晴らしい艶技でした。おめでとう。 ・志賀倉はぜりの場合 (請け負った仕事はこなすけど、それなりにいい目は見せて貰いたいしね――) はぜりのような『割と自分の危機はどうでも良く役得をまず第一に考える系女子』とは、割合えっちっち界隈ではよく見るパターンの一つである。彼女等は往々に百合っ気を持っていたり奔放だったりして『堪えない』タイプなのは確かなのだが。 「えっちな水着じゃないから、マイクロって程じゃない紅い和柄のビキニ。 でも、水着ってのはただ布地を減らしゃいいってモンじゃないと思うんだ。 申し訳程度に膨らんだ胸とか、ぽっこりしたお腹とか、食い込んで水着にやや乗ったお肉とか、うちはどっちかって言えばそーいうトコにエロスを感じるんだけど、そこんトコどーよ妖精s……あーいや、えっちっち」 そうですね。そう思います。布地の面積が決定的な戦力差じゃないって事を教えてやりますよ! 「そうだよねー。うんうん、全くそうだよね」 ええ、そうですとも。何かこの局面においても余裕ですね? はぜりさん。 再三今回語っている通り、そこに山があれば登るのが男なのである。 城とは落ちなければ落ちない程美しく、難攻不落の要害から臨む風景とはまさに達成感の塊である。 分かりますか、はぜりさん。君が余裕であれば余裕な程、僕は君をどうにかしなければと思うのです。 我思う、故に我あり! 「デカルトに謝った方が良くない?」 謝らない! ――いただきまーす! フェーズ1。 「……なる、ほど……何となく『ああ』なった理由が分かるかも……」 頬が上記し、吐息は熱を帯び始めています。 フェーズ2。 「や、やぁ……んぁ、すご、あつっ……」 躰が火照り、多少の事にも敏感に反応を示し始めていますね。 フェーズ3。 「も、もちょっと……いいから、んっ……そ、そう……おねが……ああっ……ん……ッ……」 積極的に求め出した模様です。 フェーズ4。 「ちょ、まっ……まって……あっ、ぁ、んやぁ……っ! やぁ! お、おか、おかしくなる、なるぅっ!」 想像を超えた状況に許容量(キャパシティ)がオーバーしたようです。もう余裕はありません。 フェーズ5。 「にひゃっ、にゃ、あ……っ! あっ、あっ、ああああああああっ!」 人間相手では味わった事のない超常識的感覚に、最早戦いどころではない様子です。 フェーズ6。 「~~~~~~~っ!」 フォールダウン。あらゆる理性は蕩け墜ち――全年齢だから以下略です。 志賀倉はぜり陥落完了。 「ま、まだ……」 ん? 「まだ、終わりじゃない……でしょ?」 舌をぺろりと。上目遣いで、おお、えろい。 ・ティオ・ココナの場合 気をつけろ。汝、深淵を覗く時、深淵も又汝を覗き返しているのだ。 ――フリードリヒ・ニーチェ 「何を考えているか覗いてみようかな」 黒ビキニ好きの何ちゃっておされポエムならぬ本当の名言を残して下さったニーチェさんもまさかこんな所で自身の言葉が引用されるとは思っても居なかっただろうが。ともあれ、何故かえっちっちの嗜好を知る事を望みリーディングを敢行したのはティオであった。 「ふむふむ」 難しい顔で溢れてくる情報を掬い取る彼女である。 「ふむふむ。おー、成る程……」 リビドー等というものは人の数だけ存在して、まさにそれは深淵なるアレでソレで…… 「つまり、(ピー)が(ガガガー!)で(ピシャドーン!)な訳だね!」 ……あの、すみません。僕の性癖白日の下に開示するのは辞めて頂けますかね! 閑話休題。 性癖の話は置いといても、一回は捕まらなければ話が始まらないのがえっちっちなのだ! 増してやティオの場合、大して嫌がっても居ないというか……別に気にしても居ないのだから尚更である! 「ぬるぬるには慣れてるもんねー! ちょっとやそっとじゃやられないよ!」 基本的には『やられるがまま』だった面々に比べてこのコケティッシュロリは攻撃性に満ちていた。 耐性はともあれ、その体を伸びた触手に擦り付ける姿はそれはそれでエロいものがある。(身も蓋も無い) 「んっ、んん……ッ! にゅ、にゅふふ、ガマン比べだね! えっちっちなんかに負けないよ~!」 うむ。これはこれで悪くないぞ。 「おー……」 「……ああああああ……」 それぞれ紺と白のスクール水着を着込むメイとリンシードを傍目に戦いは熾烈を極めていた。 「す、すごいよ……な、何がすごいかは良く分からないけど……」 レンズ越しにあられもない大人達のしょうもない駄目駄目な姿を見るメイの顔は紅潮していた。 「なんだろ? この季節に水着だから寒いのに体の奥からぽっぽとしてきた……かゆいようなくすぐったいような」 十二歳以下には決して不埒を働かない――鉄の倫理を持つえっちっち。彼女等二人がその苛烈な毒牙に晒される事が無かった事は俺の……もとい彼の名誉とBNEの平和の為に断言するが、ショッキングピンクの光景が少女達の情操教育に良いかどうかは別物である。 メイはメイで支援とか何とかしているのだが、えっちっちに戦闘プレイングは暖簾に腕押しなのである! 「じーっ」 どっちかって言えば食い入るように撮影に勤しむメイのそっちの方が重要であろう! 「……ごくり……」 えっちなリンシードさんが息を呑む。 何とも居辛い場所に女の子の濡れた声達が見事なまでにサラウンドしていた。 「……はっ、見入っている場合ではありませんでした! 私!」 元よりえっちっちに対して『対象年齢』の女子達が(勿論男子もだが今回は居ないのでアレである)役に立たないのは知れていた。自分で自分に言い聞かせるように声を発したリンシードは魔力剣を握り締め、地面を蹴った。 「私が、最後の砦……負ける訳にはいきません……!」 気を吐くリンシード。 その接近に気付き向き直るえっちっち! 「まさか……BNE倫の限界に挑戦しようとでも、言うんですか……? いいでしょう……かかってきて下さい…… この白いスクール水着で鍛えた回避力で全て避け……BNE倫を護ってみせます! 誰がなんと言おうと白いスクール水着です……!」 ぶつかり合う気迫と気迫。 リンシードが勝負を賭けたその瞬間。 ピュウ―― 吹いた木枯らしに彼女は大きなくしゃみをした。 「しまった――!?」 痛恨の不覚に覚悟を決めたリンシードにえっちっちは優しい視線(?)を注いでいるばかりだった。 「シュゴシン!?」 「ああ、全く偶然通りかかった特に何の罪も無い通行人のリベリスタさんがやられたよ!?」 何か痛ましい声とメイの実況が重なった。 えっちっちは適当に伸ばした触手でリベリスタ(男・23)から洋服を剥ぎ取って器用に寒そうなリンシードにかける。 「くっ……離してください……やめて……変なモノかけないでください……! む、無駄、です、からね……そんなものをかけた所で、私は水着を辞めたりしませんし…… ここで屈してしまっては……えっちな子呼ばわりの恨みが……まだ、戦えます……!」 彼女はそこまで言ってから、 「何ですか、この展開は! しかも全く想定外の形で微妙にプレイングを生かしているのがアレなんですけど!?」 実に面白い声を上げた。 「私には、私には、糾華おねーさまという人が……」 えっちっちは触手の先を「ち、ち、ち」と振って超ド級に主張した。 ――何処から用意したのか分からん看板をひょいと出し。『百合にはパンチが足りない!』と。 いいか。百合は百合でいいんだ。 いいんだが、それは少女と少女と恋愛未満位の触れ合いが俺の趣味でな。 百合をえっちっち的な観点で主菜に据えようとするとこう、いまいち迫力が無いように思えるんだよ。 別に他人の趣味に口を出す気は無いんだ。 無いんだが、昨今の百合ブームに俺は一石を投じるべきだと切に、切に…… 「……何が何だか分からないよ……」 悲痛に呟くメイ。嬌声を上げる少女達。地団駄を踏む極めてえっちなリンシードさん。 しょうもない冬の日のしょうもない午後は温くゆるゆるに過ぎていく―― ※えっちっちはスタッフが美味しく退治しました。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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