●襲撃・道場 「う、うわああ!」 「つ、強い……強すぎる……!」 死屍累々――さて、そう言えばいいのか。 ここは相撲の道場。将来の横綱を目指し、多くの若人が練習に精を出していたが、その数多の男達がいずれも地に倒れ伏していた。それを見下ろすは四つの影。一つは細身だが、他三つはいずれも力士というに相応しい恰幅の良い男三人。 その影の内の一つ、細身の女性の声が響く。 「フフフ……他愛も無いわね。ま、相手が一般人ならこんな物でしょ」 「テ、テメエら何者だ……!? 何が目的でウチに襲撃を……道場破りか!?」 と、その時。地面に倒れている一人が顔を上げ、女性を見据える。 どうやらこの道場の師範格のようで、自身も力士なのだろう。まわしを締めており、体格も実に“力士らしい”様子だ。 もっとも今はその貫禄無く、地に倒れ伏しているにすぎないが。 「あらまだ生きてたの。中々しぶといわねぇ」 「いや姫さん。殺してませんからね? しぶといとか以前に殺してませんからね? ていうか相撲しただけですからね?」 「分かってるわよ。冗談だってば、冗談。……さて、私達の目的だったわね?」 姫、と呼ばれた女性が仲間の男に返事を返せば、師範格の男に近付く。 相も変わらず見下ろした体勢のまま言葉を紡げば、 「そんなの決まってるじゃない。私がわざわざこんな所にまで来た理由それは――」 一息。 「――ちゃんこ鍋よ」 「成程ちゃんこ鍋……はっ?」 「鶏ガラでダシをとったちゃんこ鍋よちゃんこ鍋! あの美味しさを求めて道場に襲撃かけてるに決まってるじゃない――当然でしょ!」 「何を言ってるんだお前はぁ――!!」 と、師範格の男性が女性の言動に思わず噛みついた――と同時、女性の手が伸びて師範格の男の首を掴む。 そのまま軽く絞める勢いを保ちながら、顔は笑顔を作り出し。 「フフフ。さぁ出しなさいちゃんこ鍋を。全てのちゃんこ鍋を私の物にするまでっ! 私は全国の道場を襲撃し続けるのよ!」 「な、なんてハタ迷惑な! え、本当にそのためだけにウチを襲撃したのかぁ――!?」 「当然でしょ!」 「いや全力で何が!? 何が当然なの!?」 昼時の時間に響く声。なんというか実に……アホらしい会話である。主に女性の所為で。 襲撃犯の一人の男はそんな様子を横目に、ふと思う。 ……普通に頼み込めば良かったんじゃないか――と。 ●迎撃・ちゃんこ鍋 「という事件が起こっててだな――て、ちょっと待てストップ! お前ら帰るな! まだ早いっ!」 「いやそんな事言われても……色んな意味で平和じゃん!」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が珍しく慌てた様子で部屋から出ていこうとするリベリスタ達を諌める。 「言いたい事は分からないでもないが……これも一応フィクサード事件なんだよ。潔く諦めろ」 溜息と共に吐きだされた言葉はリベリスタに向けられた物か、それとも自分に向けた物か。あるいは両方か。 ともあれ、一度首を振り伸暁は気持ちを抑える。そしてリベリスタ達へと振り返れば、説明を再開した。 「さて、そんじゃあ要点だけ説明するぜ? 近頃各地の相撲道場を四人組のフィクサード集団が襲撃している。目的は……ちゃんこ鍋だそうだ」 「よし分かった。帰るわ」 「はいストップストップ。そう簡単には逃がさない……!」 伸暁にリベリスタの前に回り込む。ここはブリーフィングルーム。出口さえ押さえればリベリスタ達は逃げられないのだ。 「続けるぞ? この集団だが普通に相撲を挑むみたいだ。まぁ最終的には余裕勝ちでちゃんこ鍋奪っていくらしいが……計画立ててる主犯格は女。林園・姫(はやしぞの・ひめ)と言う奴で、実行犯はGO兄弟と言われているらしい」 「GO兄弟?」 「本名は分からなかった。本人達はそう名乗っているみたいなんでな」 モニターに注目すれば、確かに三人組の男が映っている。いずれも“力士”という事が一目で分かる恰好をしていた。つまり、まわしを付けている状態である。 「で、だ。今度こいつらが襲撃する相撲道場が判明した。お前達はそこに向かって奴らを倒してほしい――相撲で」 「なんで相撲なんだよっ!」 「いや実はな、一回お前達とは別のリベリスタ派遣したはいいんだけど、戦闘しようとすると逃げるんだよ連中……しかもあの体格で逃げ足速くてね……」 伸暁が頭を抱え始めた。本当に、どうすればいいんだと言わんばかりの表情だ。 「ま、その代わりなのか逃げる時に『相撲で負けたら負けを認める!』とか変な事言ってたし、それならこっちも相撲班送ればいいんじゃないと考えてね。で、お前達を集めた訳だ」 「まさか……え、嘘だよな?」 「嘘な訳ないだろ? ――じゃ、頑張ってくれ健闘を祈るよ。相撲的な意味で」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月18日(土)22:38 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ちゃんこ! さて時刻は昼を少し過ぎた辺り。良い天気の下に一つの相撲道場があった。 道場の中からは女性の声が聞こえる。随分と調子の良い声の様で、 「ふふ、ここでも勝ったわ! さぁ私のちゃんこはどこかしら!?」 上機嫌で目的の物、ちゃんこ鍋があるであろう食事場へと歩を向ける。 が、その時だった。 「ちょっと待て道場破り共――今度は俺達が相手だっ!」 道場の扉が勢いよく開かれ、『狡猾リコリス』霧島 俊介(BNE000082)がその場に姿を現す。上半身の服を勢いよく脱ぎながらその場に立った彼の目にまず映ったのは、道場の力士達の無残な状況だった。 まるで死体の様に気絶している無数の力士達。……中々お目にかかれない光景である。見たいと思う人が居るのかはさておき。 「ん、あんた達……アークの人? まぁ相撲勝負するってんなら受けて立つわよ!」 「そいつは有難い。でも、美しくも可愛らしい姫君にお願いがあるんだ」 『イケメンヴァンパイア』御厨・夏栖斗(BNE000004)がこちらを向いた姫に対して声を紡ぐ。彼は視線を、後方にいる女性陣へとも向けながら、 「僕たちは全員相撲を知らない。で女子もほら、3人もいる。1VS1じゃきついからこっちはチームにさせてほしい」 「プロの力士は相当強いらしいしな。なら、チームを組むぐらい問題無いだろう? ま、お仲間の実力に自信が無いなら――それでも構わないが」 夏栖斗の交渉に言葉を乗せたのは『ウィンドウィーバー』玖珂・駆(BNE002126)。少しばかり挑発する言葉を混ぜながら交渉を一歩進ませる。 「玄人と素人……むしろ、これくらいのハンデは当然よね? ああそれとも、その如何にも力士ですっていう格好は伊達なのかしら?」 「む、言うじゃない。ならそれで行きましょう!」 『ロストフォーチュナ』空音・ボカロアッシュ・ツンデレンコ(BNE002067)の言葉が止めとなったのか、姫はあっさりと了承。チーム戦、決定である。 「話は纏まったみたいだね。なら、試合前にちょっとお昼ご飯と行かない? お弁当があるんだけど」 そう言って『食堂の看板娘』衛守 凪沙(BNE001545)がどこからともなく、姫達の分も含めた数の弁当を取りだす。試合をして士気が高いGO兄弟の気を殺ぐつもりだが、果たして姫達は敵の出した物を正直に食べ、 「いいわね! お腹空いてたし頂くわ――有難うね!」 た。一瞬の迷いも無く、姫を始めとしてGO兄弟も受け取っていく。三郎だけは姫に何か言いたそうだったが、やがて諦めたようだ。 「さてさてどうなる事やら、だな」 「ええ……本当に……ですね」 その様子を横目に見ながら、『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)と『蒼鱗小龍』四鏡 ケイ(BNE000068)が呟いた。 何はともあれ目的通り士気低下は成功し、小休止と言った所か。もっとも、弁当を食べ終われば直ぐにでも闘いは始まるのだが。 まぁやるのは相撲だけどね! ●ちゃんこっこ! 「御馳走様でした。美味しかったわ有難う! さてそっちは誰を出すのかしら? こっちは次郎を出すわよ! 次郎を!」 弁当を食べ終え、凪沙に礼を告げる姫。そのまま矢継ぎ早にGO兄弟の一人を指名した。 GO次郎。汗っかきな体質を持つ力士である。このGO次郎を相手にするリベリスタは。 「ああ、まずは俺達だな!」 武蔵・吾郎(BNE002461)が腕を組み、鎮座していた。その隣には義弘と俊介の二人も居る。まずはこの三人が出る様だ。 相手である次郎。その塩を撒いている姿を見て、俊介が言葉を洩らす。 「次郎か。ぬるぬるしてんのが厄介だな……」 「まぁ俺が盾になるさ。だから、決めは頼むぞ」 まわしを付けての正統スタイルで土俵に上がるのは義弘。 盾になる、とは彼の言だ。防御面において彼は自信がある。反対に攻撃面で優れているのが俊介。故にこそ、適材適所と言えるだろう。 「ああ、先程は言いそびれたが……お前らが負けたらアークに連行するが、構わねぇか?」 「アーク? 良いわよ別に。負けたら、ね」 「大した自信じゃねぇか。燃えてきたぜ!」 吾郎の言葉に、姫は軽く返す。 どうも負けるとは思っていないようだ。それは自信か、あるいは傲慢か。 「じゃあ行くわよ。はっけよーい――」 一息。 「のこった!」 試合の開始を告げる声が道場に響いた時、最初に動いたのは義弘だ。 狙いは次郎のまわし。両手で力強く掴み、次郎と密着する形を取った。 「こうすりゃあ、動けまい!」 義弘の狙いは次郎の行動制限。他の者に攻撃が向かないようにするためだ。 次いで、素早く動く影がある。 「横っ腹がガラ空きだ……!」 次郎の右側へと回り込んだ吾郎の平手が真っすぐ飛ぶ。所謂、突っ張りだ。 連打する勢いで次郎の横腹に叩きこまれていく。が、 「無駄ですぞ、そんな攻撃!」 次郎が初めて言葉を紡ぐ。彼の自信。それは、汗。 全身から発汗している次郎の体は滑りやすくなっている。そのため、若干だが平手のダメージが落ちているのだ。 「くっ、なんて面倒な……うぉ!?」 次郎を押さえていた義弘が驚いた声を。 滑ってしまったのだ。脚では無く手が、だ。まわしにも汗が垂れていたようで、 「隙ありぃ!」 ここぞとばかりに次郎が攻める。 少し体勢が崩れている目の前の義弘に平手の連撃を繰り出し、一方的な攻めの姿勢だ。道場内に平手の音が大きく響き渡る。 ――故にこそ、誰も気付かなかった。 「――♪」 後方に位置していた俊介の紡ぐ詠唱に。 突っ張りを受け続けている義弘の背中に微風が流れれば、耐えれる。数多の攻撃が来ようとも、 「そんな攻撃、無駄だGO次郎――!」 お返しとばかりに次郎の顔面に突っ張りを。小気味良い音と共に命中すれば、次郎は焦る。 「ぬぅ?! な、なぜあれだけ受けて倒れない……?!」 「余所見はあぶねぇぞ? こんな風にな!」 今度は次郎の背中に衝撃が。 吾郎だ。姫の視線外に回り、幻影を伴った平手を放ち続けている。 「ぐ、ぅ、こうなれば一人だけでもぉ!」 窮地に陥った次郎が目に付けたのは、後方で様子を窺っていた俊介。 体勢を整え、前傾姿勢を保ちながら俊介へと突進する。いわゆる、 「ぶちかましか……だが!」 見切った! という言葉と共に俊介は横にステップを踏み、回避する。 そして間髪入れずに己も体勢を整えた。次郎と同じ、前傾姿勢に成りながら―― 「これが俺のぶちかましだぁ――!」 「ふっ、俺も行くぜ!」 俊介と吾郎が、ほぼ同時に次郎へとぶちかましを行う。偶然だろうが、見事な連携だ。 つい先程攻撃を終えて完全に隙だらけの次郎へと二方向から力が加われば、耐えれる物では無い。次郎の体が、土俵圏外へと傾いていく。 「じ、次郎――!」 姫の声が飛ぶがもう遅い。次郎はたった今土俵の外へと、その巨体を運ばされたのだった。 ●ちゃんこぉ! 「ま、まさか次郎が負けるなんて……仕方ないわね。一郎! 行ってちょうだい!」 次郎が負け、次いで姫が指名したのはGO一郎。単純な力だけで言えば兄弟の中で最強なのは間違いない。 「奴が相手か……だが、流れに乗ってみせる!」 そう言いながら駆が上半身の服を脱ぐ。流れはリベリスタ達にあるのだ。相手が誰であろうと、勝つ気概が見て取れた。 ……のだが、 「……あ、そうか。男は脱がないといけないんでしたね……よっ、と……」 「わっ、ちょ、ケイさん何してるの!」 徐に脱ぎだそうとしたのを、駆が咄嗟に制止した。ケイは服を臍の上辺りにまで引き上げた状態で――まぁ詰まる所、駆はケイの性別を知らないのだ。 服を脱ごうとしている途中で静止しているケイ。見られ続けることは恥ずかしいのか、少し顔が赤くなっている。そんな時に丁度良く、 「何してるの早くしなさいよー!?」 リベリスタ達に姫の声が飛んだ。時間が無い。だから、 「とりあえずケイはもう服着たまま行ったら? 時間無いし」 「えっ……あ、はい。そうですね分かりました……」 空音に促され、そのまま行く事に決定。全員が土俵入りを果たす。 「塩撒いたわね? 二回目行くわよ――のこったぁ!」 はっけよい、をすっ飛ばして開始の宣言をする姫。それにいち早く反応したのは、 「どすこいっ!」 一郎だ。地を蹴り、向かう先は空音へと。早速ぶちかましの体勢と言う事は一人ずつ潰して行くのが目的だろうか。 「やらせねぇ!」 横から駆が飛びだし一郎に横から衝撃を加えて妨害を行う。 が、強引に一郎は前に進もうと。 「流石の力ね……でも」 空音が構える。姿勢を低くし、一郎の突進に備える気だ。 「巫女を舐めるな!」 叫び、そして――止めた。駆の邪魔も功を奏し、一郎のぶちかましを見事に止めたのだ。 僅かに生じる、隙。 「今ですね……!」 ケイはそれを見逃さなかった。駆の後ろから前面に出たケイは、一郎の視覚外からぶちかましを行う。完全に虚を突いた形だった。 「ど、どすこいっ!」 だが倒れない。咄嗟に片足に力を集め、ふんばり、耐えたのだ。 そして体勢を立て直し平手の構えを。 「う、ぉぉお!」 次郎の勢いを超える突っ張りが最前面にいた駆に向かって振るわれる。咄嗟に腕を畳んで駆は防御するが、衝撃が予想以上に強烈だ。 一郎を油断させるためある程度の演技を入れているが、このままでは本当に危ない。 「駆さん……大丈夫です、か……?!」 「大丈夫、行ける!」 ケイの声に、駆は奮起。男の俺が頑張らねば――と、一郎の攻撃を掻い潜り、こちらも平手を放つ。 止まらない。いや、止めない。流れるように平手の連撃を一郎の腹に押し当てる。 その時だった。 空音が気付く。一郎の脚が僅かに浮き上がったのを。 「皆危ない! 足払いが来るわよ!」 一歩後退する行動を素早く行う。ケイもそれに続く――が、 「御免、二人とも!」 駆が足払いをまともに受けてしまい、脱落してしまった。 さらに攻勢は続く。一郎は腕を振りあげ、平手をケイに対して向けたのだ。 「……くっ、まずい……です……あっ!」 思わず膝をついてしまったケイ。普通の戦闘なら何も問題ないが、これは相撲。 膝をついてしまったのは致命的だった。 「状況は絶望的、ね。でも――」 空音はケイを倒した一郎を見据える。 こちらへと、前傾姿勢を取りつつある様子が窺えた。再びぶちかましをする気だろう。 「諦める訳にはいかないのよ!」 空音が構える。全力で防御するつもりだ。上手くいけば使用後の隙を狙えるだろう。 一郎が駆ける。空音が待ち構える。その結果は―― ●ちゃこここーん! 「これでイーブンね! さぁ三郎、行け!」 「……なんか私の指名が雑じゃありません?」 三郎が土俵へと上がる。一郎戦は残念ながら、敗退してしまったようだ。 「んじゃ、凪沙。次は僕達だけど準備はOK?」 「OKだよ。頑張っていこうか!」 そしてリベリスタ側から土俵へと上がるのは凪沙と夏栖斗。 「頑張れー! 負けたらちゃんこの具にすっぞ――!」 土俵外で応援……の声を飛ばすのは俊介だ。 「じゃ、早速行くわよ。はっけよい、のこったぁ!」 「先手必勝っ!」 三郎の声。先手を取るために、即座に行動を起こした。しかし、 「先手は俺が取るっ!」 ほぼ同時に夏栖斗も動いていた。 平手を構え、互いに前進する二人。そして射程圏内に入り、互いに張り手を行う。 その瞬間、夏栖斗の張り手から炎が生じた。 「あ、熱っ!? な、なんだそれは?!」 「いやー空気摩擦って凄いっすねー」 「空気摩擦なら仕方ないわね!」 先手の取り合い。まずそれに勝ったのは夏栖斗だった。炎出たけど。 姫の判定はセーフ。空気摩擦なら仕方ないね! 三郎は何か言いたそうだが。 「だ、だがこの程度で私はまだ――」 「夏栖斗さん! そいつ、右脇腹が弱点みたいだよ!」 「分かった! でやぁ、突っ張りぃ!」 後方で三郎の弱点を探っていた凪沙が、夏栖斗へと指示を出す。 右脇腹が弱点、それを知るや否や夏栖斗の狙いはそこだ。平手を素早く叩きこめば、 「ぐうぅ?!」 三郎の顔が歪む。弱点を突かれた事もあるが、その上で夏栖斗はまたやっていた。 手を伝い、三郎の内部へと破壊的な気を送り込んだのだ。これでは姫も気付けない。 「いやー僕の突っ張りマジぱねっす」 「くそぉ! なら後ろから潰す!」 的確なタイミングで様々な事をする夏栖斗の邪魔に思ったのか、三郎は狙いを変更。 凪沙へと視線を向ける。が、 「必殺・灼熱突っ張りぃ!」 「ちょ、灼熱って言ったぁ――!?」 向けた瞬間に顔面へと凪沙が炎を伴った突っ張りを放つ。ツッコミ入れたのは、三郎。 二回目の炎である。さしもの姫も少々疑惑の目を向けた。 「空気摩擦! 空気摩擦!」 ――ものの、土俵外にいるメンバーの支援によってなんとか事無きを得る。 いや空気摩擦まじやばいっす。とはいえ、 「そんな何度も空気摩擦なんて出るかぁ――!」 と言う、三郎の的確なツッコミが入った。やばい、的確すぎる。 そして彼は凪沙へと向けて再びぶちかましの体勢を取り、駆ける。 「そうはいくか! とぅ!」 夏栖斗が掛け声と共に脚を払う。と、何と言う事だろうか。鋭い風が発生したではないか! リベリスタの足払いぱねっす。 「当たるかぁ!」 しかし三郎は予測していたのか、やや体勢を崩しながらも回避を成功。 再びぶちかまし体勢へと入る。 ――それこそが、 「狙い目、だね!」 凪沙だ。先程の足払いによって一瞬止まった三郎の動き。 その隙を見逃さず、足払いを放つ――また炎を乗せて! 「う、ぁああ!?」 三郎の悲鳴が響く。三郎の体勢は足払いによって崩れ、その左半身を土俵の土へと接触させた―― ●ちゃんこ 「ま、まさか負けるなんて……!」 悔しそうに姫が叫ぶ。兄弟の相撲には恐らく自信があったのだろう。 「んじゃアークに連行するが……ま、その前にちゃんこでも喰いに行くか?」 「いいねそれ。皆で食べれば美味しいよね!」 「俺ちゃんこ店の地図持ってるぜ! あ、これ姫にやるよ。今度からはちゃんとした方法で喰えよな?」 吾郎の提案に頷く凪沙。一方で駆は姫へとちゃんこの店が網羅された地図を渡す。 「腹減ってきたしなぁ。ケイちゃんも行こうぜー」 「そ、そうですね行きます……べ、別にボクも食べたい訳じゃないですよ……し、仕方なくですよ……!」 と、微妙にツンデレっぽい発言をしながらケイも俊介に続く。 その背後では、空音が姫を勧誘していた。 「姫、アークで働かない? フォーチュナは貴重だから、仕事はあるわよ?」 「アークね……うん、考えておくわ。有難う!」 笑顔で返答し、外へと行く皆の後に続く。 そして暫くの後、近くのちゃんこ店へ大挙する一同の姿があったとか――いずれにせよ、全国の相撲道場が襲われる事は、この日を境に無くなったようである。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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