下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






秋風のリタルダンド

●ある、晴れた日に
 秋というのは不思議な季節だなと思う。
 落ち着いていて、穏やかで……けれど、どこかちょっと……寂しくて。

 夏から時を経て、冬が、年の瀬が近付いてくると、その感じはいっそう強くなる。
 虫たちの鳴き声は消えて、夜はずいぶんと静かになって。
 どこか透き通った雰囲気は、昼も変わらない。
 空気は澄み渡っていて、空は高く、遠くて……陽の光は、オレンジというよりは黄色に近い感じ。
 車や人の立てる音は変わらないけど、自然の立てる音は……少なくなった、鳥たちのさえずりくらいだろうか?

 彼方を、空を眺めていると……想いは遠くまで駆けるけど。
 目線を降ろせば、日常が戻ってくる。
 私は本部近くにある100円の自販機にコインを入れて、ホットココアのボタンを押した。
 ゴトンと音がして缶が出てくるのと同時に、音楽が鳴って金額が表示されていたところに3ケタの数字が現れ、ルーレットみたく変化し始める。
 1桁目と2桁目はそろった……けど、3桁目は残念ながら違っていた。
「まあ、いつも通りかな」
 呟きながらココアの缶を取る。
 熱い缶を両手でしばらく包んでから、ほふっとほほに当てて。
 温かさがしみこんでくるみたいな感覚に、もうすぐ冬だな~と感じたりしながら……
(けど口紅とか付けるようになると……とか聞くなぁ)
 私も缶の飲み物とか買わなくなるのかな?
「……ま、人それぞれだよね?」
 誰にいうでもなく呟きながら、私は本部の自動ドアを開けた。

 そんな……秋から冬へと移り変わってゆく、とある一日。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年12月10日(月)22:30
●このシナリオはイベントシナリオになります。
イベントシナリオについては本部利用マニュアルなどを御参照下さい。


オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回は皆さんに日常を過ごしてもらうというシナリオになります。
三高平市内の各所で依頼等の任務に参加していない時のリベリスタたちの過ごし方を描写する、という感じのリプレイになると思います。
平日ですと学校のある方も多いと思いますので、週末という設定で。
皆さんが普段(或いは偶々その日)、どのように過ごそうとしていたか。
知人友人と会う、買物、散歩、勉強、特訓、等々。皆さんが日常を感じる一助になればと思います。
マルガレーテ他、三高平市に住んでいる人々も普段通りの生活を送っています。
(参加した皆さんとの接点等がなければ登場は致しません)
イメージ等が難しいという場合、宜しければ自分のシナリオ『Into the Intermission』等を御参照下さい。


●備考
・多数の方が参加された場合、内容を絞ったプレイングをかける事をお勧めします。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。
・グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。
(タグで括っている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)


それでは、興味を持って頂けましたら。
どうぞ宜しくお願いします。

参加NPC
マルガレーテ・マクスウェル (nBNE000216)
 


■メイン参加者 33人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ホーリーメイガス
七布施・三千(BNE000346)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ナイトクリーク
源 カイ(BNE000446)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
クロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
ソードミラージュ
富永・喜平(BNE000939)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
覇界闘士
陽渡・守夜(BNE001348)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)

エリス・トワイニング(BNE002382)
ホーリーメイガス
レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)
デュランダル
蜂須賀 冴(BNE002536)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
スターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
マグメイガス
風見 七花(BNE003013)

高木・京一(BNE003179)
プロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
ダークナイト
フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
ナイトクリーク
ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)
ソードミラージュ
七月・風(BNE004135)
ダークナイト
紅涙・いりす(BNE004136)
ナイトクリーク
夜行 鵺(BNE004163)
クロスイージス
夜行 犀(BNE004164)
インヤンマスター
夜行 彊屍(BNE004165)
   


●ある日の、始まりに
 ふらりとアークに来たら見かけた少女の姿。
 この場所で会う機会は多いけど、休日に会うことは珍しく。
 だから……こういう縁は大切にしたい。
 ホットココアを買うと、亘は早足気味にマルガレーテを追いかけた。
「こんにちはマルさん。なんだか想いにふけていましたが何かありましたか?」
「あ、どうも。亘先輩」
 声を掛ければ少女は丁寧にお辞儀を返す。
 話題は特別なものではなく、ちょっとした世間話。
「実はこの前お祭りで撮った写真で渾身の一枚があるんですよ」
(彼女がどんな反応をするか楽しみ……と思う自分はいじわるかな?)
 ちょっと冗談めかして口にすると、亘は秋祭りの時に撮った彼女の写真を差し出した。

●アーク本部にて
 七花はアーク本部の資料室で魔術の勉強をしていた。
 魔道書や過去の魔道に関わる報告書、研究資料等が彼女の参考書である。
 七花の生まれは普通の家庭だ。
 スタート地点で遅れている、そう思うから。
 魔術の知識を深め、先達に置いて行かれないように。
 少しでも差を縮めるために。
 彼女は勉強する。
 ジャーナリストになるという夢、同じかそれ以上の夢……過去の偉大な魔道師に劣らぬ魔道師になる為にも。
(日々勉強です)
 七花は次の資料へと手を伸ばす。

(おそらく、本部で仕事中でしょう……何か差し入れをしますか)
 ケーキを幾つか見繕うと、カイはアーク本部へと足を向けた。
 受付で所在を確認し、フォーチュナの少女を訪ねる。
 ちょっと悪戯心を出して、顔を合わせた時に真剣な表情で。
「実は折り入ってお話があるのですが……」

 デートに行きませんか?

 言った瞬間、少女は凄い勢いで噴いた。
 何も飲んでなくて良かったという勢いで。
「……というのは嘘です」
 はい、差し入れです、と。さらりと言ってケーキを差し出せば、マルガレーテは何か噎せつつお礼を言う。
 良ければヤミィさんにと付け加えてから、カイはもう1つ包みを手渡した。
「こっちはシロの分です」
 たくさん食べるでしょうからと笑顔で言えば、調子を取り戻した少女も笑顔で頷いてみせた。


●その日のとある、森の中
 撃って撃って撃ちまくるのも大好きだけど。
「今回は拳を鍛えるわ、せっかくメタルフレームの拳なんだからね」
 山に籠ったハガルは、特訓の為に大木に向かっていた。
 拳で殴る! ひたすら殴る! 抉りこむように殴る!
 理想のフォームは、桃子様の腹パン。
(あの神業を身に付けるために打つべし打つべし!)
 沙織ん(さおりん)の顔面を思い浮かべて。
 クリミナルスタアの技術と桃子様への信仰を合わせた神・必殺技を開発中♪
「逝くよ、必殺デスペラーッド・ピィィィッチ!!」
 気合の籠った声と共に、大木が大きな音を立てる。
 ふうっと息を吐いてから、彼女は呟いた。
「はぁ、あのフィクサードの大先生さえいれば」
(私の身体をもっと凶悪に改造してくれるだろうに……)

●夜行三昧
「はいはい、二人ともちゃんと聞いてねえ。今日はなんとー、うーん、なにしよー?」
 取り敢えず引っ越しは終わったから……と、鵺が考え込む。
「……何も決まってないのネ?」
 彊屍が犀のズボンを掴んだまま、今日は姉らしい鵺を見て首を傾げれば。
「引越しの挨拶も兼ねて、ついでにこのへん見て回ろうつったじゃねえか」
「あ、そう! 流石は犀くんしっかりもの~」
 取り敢えず三高平を見て回ろうって言ってたよなと、鵺は頷いた。
「はー流石はにーちゅあんなのネー」
 ほくほくと彊屍も感心した様子で口にする。
「おらさっさと準備しろボケナスどもバカの癖に風邪引きてえのか」
「バカはおめーだよ覚えとけカス。彊ちゃん、にーちゃんについてくるんだぞ」
「アイヤー 棺に布団押し込むアルネ」
 そんなやりとりの後、3人は公園へとやってきて、はぐれて……
「やっと見つけた……」
 何とか合流した犀は、腹ごしらえにと鯛焼きを購入した。
「はーッ! たい焼きネ! ぬぇーちゅあんぬぇーちゅあーん! あたしも食べルー!」
 受け取った彊屍は笑顔でお礼を言って、さっそくもくもくと食べ始める。
「はー 甘くて暖かくて……甘いナ!」
 そう言いながら食べながら、だんだん瞼が閉じ始め……
「鵺、おめーそれ俺の分じゃねえか」
「うるせー黙れカス俺は一番燃費悪いんだから二個食うんだよハゲきょーちんは食いながら寝てんな」
「ハゲじゃねえよ彊ちゃん寝ながら食べたら喉詰まるぞ起きろ」
 言いながら鵺はさっさと食べ終えると、寝ている彊屍ごと棺を持ち上げて。
「くそおお結局買ってやったのに俺だけ食えなかった……って、あれ?」
 犀が気付いた時には棺は放流されたというか流されながら沈んでゆく最中。
「あっはーン!? ちべたイ! けどまー良いかナー寝たい寝るネ」
「うわああ彊ちゃぁあん! 鵺なにしてんだ! にーちゃんが今助けるからなああ!!」
 慌てて川に入っていく犀に向かって、鵺が笑いながら声をかけた。
「夕飯までには帰って来なさいねふふふ」
「ほぁーイ 了解しボブ ごぼごぽ アブー」

●雨、降って……
「なんだこれ、予報でも言ってなかったしスゲェ局地的な雨か!?」
(うう、寒いし風邪引きそうだ……)
 びしょびしょの木蓮が身を震わせながら暖房を付ける。
(雲行きを見るに、嫌な予感はしていたのだ)
「しかし、まさかここまで激しく降るとは……」
 そんな彼女を少し心配気に見ながら、龍治は呟いた。
 寒気はすぐに和らいでゆく。
「ふう、ちょっとした散歩のつもりが大変な目に遭ったぜ……」
 ほっと一息ついてから、木蓮は水を吸って重くなったカーディガンを脱いだ。
「全くだ、この寒さでは風邪を引きかねんな」
 彼女の様子に龍治も安堵しながら濡れた服を脱ぐ。
「んっ、タオル使うか?」
「ん、使う」
 頷きタオルを受け取ろうとして……赤面した龍治は、慌てて顔を逸らした。
「……? って、何をそんな赤くなって……Σ(///)!?」
 そこで木蓮も濡れたシャツが透けているのに気付く。
「みっみ見るなよ!? ああいや、龍治なら別に良いんだが、こう、えっと……!  見るなていいよ!?」
「み、見てなどいない、取りあえず落ち着け……!」
 顔を逸らしたままの龍治も実際、落ち着けてはいない。
(うぐぐ、龍治に見られるのは慣れてんのに妙に恥ずかしい……)
 真っ赤な木蓮に劣らぬくらい赤くなって。
(木蓮の姿など見慣れているはず、なのだが)
「全く、堪らない」
 何かを振り払うかのように龍治は頭をふる。
「ほ、ほらっ、ちゃっちゃと風呂入って着替えるぞ!」
 その言葉に頷いて。
「湯が溜まるまでは、これで」
 そう言って龍治は、毛布を一枚取り出した。


●冬への風景
「あ、おばーちゃん。ちゃんと膝掛けかけてね☆」
 最近寒いからね~と言いながら、終は車椅子を押す。
 通り雨は、もう上がったようだ。
 今日は久々のボランティア参加☆
 老人ホームのお年寄り達を車椅子に乗せてのお散歩☆

「え、そのチャラチャラした格好でボランティアとか似合わないって?」
 酷い! (><)偏見よ!(><)

 ちなみに終、小学校の頃から活動しているベテランである。
 御老人から他のスタッフまで、凄く可愛がって貰ったのだ。
 それが、今の終の一部を形作っている。
「今日は顔色いいね☆ お化粧して貰ったの??」
 孫たちが来たのだと老婦人が嬉しそうに話すと、終も笑顔で良かったねと応えて。
「ほら、あれ見て! 桜紅葉が綺麗だよ☆」
 青年の指さす先には、終わりを告げる秋が彩付く。

「……少し肌寒くなってきたが、子供は元気だな」
 公園でベンチに座りながら……拓真は呟いた。
 足元に転がってくるサッカーボール。
 手を振る子供に笑みを浮かべ、それを蹴って返して……
(あれくらいの頃、自分は何をしていたのだろうか?)
 答えは直ぐに、出る。
(俺はあの人にくっ付いて回っていた)
「……いや、それは今でも変わらないか」
 自分勝手に継いだ意志。
 それが祖父の様になれる近道だと信じ、我武者羅に走り続けた。
「だが、俺はあの人自身には為れない」
どれだけ模倣しようと、どれだけ近づこうとしても……
(俺は俺自身以外にはなれない事に気づいたのは、ずっと後)
「……俺自身があの人を越える、か」
 一体、何時になるのやら。
 誰に言うでもなく、青年は呟く。

「こんな寒いのに、一人でどうしたの?」
 ロアンはそう言って公園のベンチに座った少女、リンシードに話しかけた。
 ノープラン作戦で公園を歩いていたら、少し寒そうに震えている彼女を見かけたのである。
 とりあえず自販機で暖かいココアを2本。
 1本は、リンシードに。
「あ、ありがとうございます……えと、何かお礼を……」
「お礼? いいのいいの、気にしないで」
 ロアンは笑顔で首を振るものの、それではリンシードの気が済まない。
「えと、確か、ロアンさんは……ヴァンパイア、ですよね……血、とか、いります……?」
「いや、血とかは何か別の飲んでれば平気だし、君のありがとうで、充分貰ったから……」
 それでもリンシードに、何かお礼をさせて下さい! と……すがりつかれて。
「そうだな……どうしてもっていうなら、笑ってみせて?」
「笑う……笑う、ですか……」
 言われて少女は、うむむむ……と、困ったような表情を浮かべた。
「……その、急に、笑えといわれても……それに、私……笑っても、不気味、って、言われますし……?」
「不気味? そんなのあり得ないよ。何でかって……うーん、僕の勘なんだけどね」
 きっと、笑顔が似合う子だと思うから。
「いきなりが難しいなら、そのうち、いつか見せてくれたらいいよ」
「え、えっと……じゃあ、必ず……笑顔になって、お返しができるように、がんばります……!」
 約束だね、との言葉に真剣な顔で頷いてから。
(……でもどうして笑顔がお返しなんでしょう……?)
 少女は不思議そうに、小首を傾げてみせた。


●今までと、これからと
「こんにちは、研究ははかどっているかな?」
「研究はかどってるです?」
「……あ! こん」
 大きな声を出しそうになって、休憩と称して少女は席を移す。
「もう三高平に来て丸二年がすぎたのだな」
「もう2年もたったですか」
「私は1年ちょっとですね」
 水筒に入れてきた暖かい紅茶を雷音が渡せば、ヤミィは両手で受け取り礼をいう。
 そあらはお茶菓子にと(´・ω・`)の顔のクッキーや大福、タルトを広げて。
 昔話に、花が咲く。
 ARKに来たばかりの頃の事、そあらが雷音のお店でアルバイトを始めた頃の事、2人がヤミィと初めて会った時の事。
「色々思い出すのです」
「2人や皆さん来なかったら、私、爆死してたんですよね~」
 紅茶に口を付けながら、しみじみとした口調でヤミィが呟く。
「素敵なさおりんとも出会えたですし……」
 やだ恥ずかしいと、そあらが頬に手を当てる。

 そんな光景に、少し目を細めて。
「ここにきてボクは色々なことを知ったのだ」
 雷音は呟いた。
 悲しいこと、辛いことも知った。
 けど、それだけではない。
「そあらとヤミィ、君たちみたいな素敵な友達ができた」
 楽しいことも、あると知った。
「世界は言うほどまでに非情ではないと思えるようになったのだ」
 だから、少しでも優しい世界になるために。
「これからもずっと頑張ろう」
 ボクたちはリベリスタとして、ヤミィは研究者として。
「……それと、ずっと友達でいてほしい」
 ふたりの腕を、ぎゅっ、と……抱きよせる。
(らいよんちゃんが目指す優しい世界の為に、戦いも必要だったりするですけれど……)
「いつかそういうのがない平和な世界になるといいですねぇ」
 そあらは微笑んだ。
「そうすればヤミィさんもおちついて研究できるですよ」
 そしてあたしはさおりんの素敵な奥さんになるのです。
 ぐぐっと握りこぶしを作るそあらに、くすりとしてから。
 ヤミィは笑顔で、真剣に口にした。
「約束します。たとえ世界が敵に回ったとしても……私は、らいよんちゃんの味方ですから」


●アールグレイの、ひと時
 正午から、時が流れ始めた頃。
 ミュゼーヌの足元にはシャルトリューのメスが、のんびりと寝そべっていた。
 クールで気品ある女猫のことを、ミュゼーヌはラト呼んでいる。
 執事姿で二人分の紅茶を淹れている少年、三千は名をそのまま……ラトゥールと呼んでいた。
 二人と一匹が佇むのは、ミュゼーヌの家である。
 ミュゼーヌは椅子に腰掛け、三千が食後の紅茶を淹れてくれている間のひと時をラトと過ごしていた。
 そこへ三千が姿を現す。
 今日は、アールグレイ。
 三千はそれに青い矢車菊の花びらを加えていた。
 香りが気に入っているからというのもあるけれど……
 花びらの色が、僕達が飼っている猫のラトゥールさんに少し似ているから。
(誰に気づかれるわけでもない、僕のひそかなこだわりです)
 まずはミュゼーヌさんに。
 差し出されたカップを受け取って、少女は優雅に香りを楽しみ……
 アールグレイの中にかすかに混じった花の香に気が付き、ふと首を傾げた。
 決して嫌な気はしない。
「ん……美味しい」
 お世辞でも何でもなく、心からの感想とこぼれる微笑み。
 それに応えるように三千も微笑む。
(この瞬間が、一番緊張しますけれど、一番好きな時間ですよ)
 少年も、少女の隣に腰を降ろして。
「いただきますっ。えへへ、おいしいですねっ」
「ふふ、うん。流石は三千さん、お茶もお手の物ね」
 共に微笑み、語り合う……穏やかな、何より大切な時間を、三千とミュゼーヌは共有し合う。


●ショッピング
「マルガレーテさんと個人的にお会いするのは初めてですね。本日はよろしくお願いします」
「あ、いえ。こちらこそ宜しくお願いします」
「二人ともローテンションだからね、俺が引っ張らないと! よーし、お兄ちゃんが二人にお洋服かっちゃうぞー!」
「竜一さんはたまに私を誘ってどこかに出かける事がありますが、未だに目的は測りかねますね」
「……それは何と言いますか……誘う事が目的と言うか、誘う事にかこつけてと言いますか」
「とは言え、特に危害を加えられるわけではないので問題はありません」
 噛み合っているような、噛み合っていないような……絶妙の雰囲気を醸し出す、竜一、冴、マルガレーテの3人。

「さあさ、着替えて! さあさあ! さあさ! はああああん! もう二人とも、かーわーうぃーうぃーよぉー!」
 ゆるふわもて系森ガール路線とかどうだろう!
 次はストリート系でポップに。
 次はフェミニン系でキュートに!
 次はきれいめガーリー系で!
 なでなですりすりもふもふむぎゅむぎゅ激写。
「はい、激写禁止。っていうか他のも……冴先輩?」
「私にはこういったものの良し悪しはわかりませんので自分で選ぶ事は難しいです」
 冴は竜一に言われるまま、様々な服を順次着ていく。
(え、これ私がおかしいの!? 2人が普通なの?)
「ふぅ。どれが気に入った? お兄ちゃんが買ってあげるよ!」
 マルガレーテと対象的に、竜一は一仕事終えたかのように満足気。
 動き易かった物を選んで自分でお金を出そうとしたものの、結局は竜一が支払う事になって……冴は丁寧に礼を言った。
「せっかく買って頂いたものですので、長持ちするように使うようにします」

●それぞれの休日
「戦士の基本は食べる事に在り!」
 ベルカは特盛食べ歩きという戦場に赴いていた。
 野菜炒めにスパゲティ、お好み焼きに特大パフェ。
「未だ見ぬカロリーの大海原が私を待っている!」
 次々と大海戦に挑み、勝利し、そして次の戦場へ……連戦となれば、相手(料理)に被った部分が出てくる訳で。
(うーむ、牛丼とカレーライスでご飯が被ってしまった……)
「こうなればジョ(合体)進化!」
 ごはん丼 爆 誕 !!
「米うめー!」
 白星をまた1つ加え、彼女は次の戦場へと赴く。

 依頼のない休みの日、守夜は本屋を巡っていた。
 移動手段は自転車と徒歩。
 交通ルールやマナーをキチンと守って移動し、駐輪する。
 本屋では、ライトノベルやTRPG、ホビー関連の書籍をチェックしたり、購入して。
 アークの仲間に会えば挨拶はするものの、様子を見て邪魔等はしないように……空気を読むようにと自身に言い聞かす。
 用事がすんだら、帰宅。
 何事もない、普通の休日。
 けれど、この平和が大事なのではないだろうか?
 そんな風に守夜は感じていた。
 バロックナイツや七派やらが事件を起こし、陰謀を巡らせている……そんな時勢だからこそ、だろうか?

(うぅ……大分冷えてきたねー)
「マフラーと手袋着けてきてよかった」
 色々と店を回っている最中、冷たい風に肩を竦める様にして……フランシスカは呟いた。
 お仕事もなく、お休みの日。
 買物にでもと考えた彼女は、出る前にしっかりと寒さ対策を整えてきたのである。
「……そっか、もうそんな季節なんだね」
 街路樹の中に真っ赤に染まった葉を見つけ、少女は呟き物想いに耽る。
「三高平に来てかなり経ったなぁ……色々あったよね」
(これからも色々あるだろうけど……)
 できるなら、来年もこうしていたい。
「……あ、そうだ」
(お買い物、お買い物!)
 買物の最中だった事を思い出し、少女は次の目的地へと駆けだした。


●心の、往く先
「だぁら! いつも言ってんだろ? オメェは……」
「いや、そうは言うけどさ。僕だって……とマルガレーテちゃん、こんにちは!」
「お? マルガレーテ」
「あ、どうも。先輩方」
 火車と悠里は、何かの帰り道らしい少女に挨拶した。
「ちょっと聞いてくれよ悠里のスカタンがよぉ?」
 アホ眼鏡がさぁ? オレの言う事理解せんのよ!
「コイツいつも戦闘中よぉ!」
「だからー! 理解してない訳じゃないって言ってるじゃない! ていうか戦闘は関係ないでしょ!?」
「ど、どうしたんです?」
「おっと」
(怖がらせちゃったかな?)
「ちょっと落ち着こう」
「あ あ~熱くなってたか?」
 悠里が切り出し、火車もすまんすまんと謝罪する。
「コイツさぁ、なんか彼女に締め出し受けてんだと」
「……カルナ先輩にですか?」
「そ。男の癖に情け無いと思わん?」
 少女の問いに火車は頷いた。
「まぁこんな仕事してんじゃん? だから男らしくガーッと、なぁ?」
「いや、情けないってのは否定できないけどさ……」
 火車の言う事はわかる……つもりだ。悠里としては。
 火のように生きたあの子の事を思えば、そうなるのは当然だと思う。
「カルナは、僕の事を心配してそうしてるから。僕も結構無茶するからね」
 部屋には入れないけど、会わないとかそういう訳じゃないし心配しなくても大丈夫だよ。
「でも、気には止めておくよ」
「ん……いやー……」
(心配とかじゃねぇよボケつーか……)
「至って余計なお世話だと思うけどな」
 自分で分かっているのだ。
 それでも火車は……口にせずにはいられない。
「一緒に居れる時間なんざ解ったもんじゃねぇんだから、いれる内いた方が良いだろ?」

 そんな2人の姿を見てマルガレーテは……ちょっと羨ましいな、と思ったりしないでもない。
 けれど……分かる、なんて言い方は……おこがましいと思うけれど……不安になるのも、事実なのだ。
 時は……とても優しくて、残酷だから。


●ふたりの時間
「お値段張るけど、かなり美味しいお店っ。楽しみ♪」
「抹茶なんとかとか付いてるとテンション上がりますね」
 そんな言葉を交わして、レイチェルと風は今に至る。

「あたしは何を頼もうかな~。どれも美味しそうで目移りしちゃうっ」
 風の隣、肩が少し触れるくらいの距離に座ったレイチェルは、一緒に1つのメニューを見ながら思案顔。
 風の方は、ちょっと近い距離にどきどきしたものの……うんまあいいやと抹茶パフェを注文。
(お高いものはそれなりの理由があるのです)
 かくして2人の前に抹茶のモンブランとパフェが到着する。
「んーっ、美味しいっ♪」
 一口味わったのち、レイチェルは自分のをスプーンですくって風に差し出した。
「はい、あーん」
「……あ、あーん……?」
「定番だし。ほら」
 驚きつつも、ほお張って。
「えへへ。美味しいでしょ」
「きゅ、急にびっくりしました……しかしそちらも美味しいですね」
 では、ボクもお返しにと風もスプーンで一口すくう。
「ギブアンドテイクですよ」
「ありがと♪」
 あーんとレイチェルもほお張って。
「……うんっ、これも甘くって美味しい♪」
「美味しいお店に連れて来て下さって有難うございます」
 笑顔のレイチェルに、風も笑顔でお礼を言った。
「このご恩は必ず!」
「恩は大げさだけどさっ」
 また一緒にどこかいこうかと、少女は笑顔で提案した。
 きっとすごく楽しい。そう思うのだ。


●冬の味わい
 紺色の着物姿が、義弘の休日の制服である。
 アークの仕事が無い日には、彼は近くの甘味処で働いていた。
 あまり大きくない店は、働いてるのも店長の女性と彼以外にバイトが数人くらい。
 結果、義弘は接客、給仕、盛り付け、皿洗いと割りと何でもやっている。
 もっとも、接客や給仕に行くと驚かれる事も多い。
「いい加減普通の反応をして欲しいものだ」
 呟きつつ、義弘は来店したアークの少女たちにメニューを色々説明した。
 店長が自分で厳選してきた小豆や白玉を、さっぱりとした甘みで。
「宣伝っぽいが味わってほしい。甘味好きとしてはホントにそう思うな」
 この時期は白玉ぜんざいも温まるのでと勧めてから。
「まあ、常連さんの為の裏メニューもあるんだが……」
 そう言いつつ青年は、どこかのマウンテンなメニューを取り出してみせる。

「マルガレーテさんにヤミーさん、良かったらクリスマス向けの新商品、試飲していってくれないか?」
 新田酒店、営業中。
 どこかからの帰り道という様子の2人を、快はそう言って呼びとめた。
「ワインじゃなくて葡萄ジュースだけど」
 とはいえ使った葡萄はワイン用だし、砂糖や水、防腐剤も一切使用していない。
 低温殺菌したものにクローブ、シナモン、オレンジ一切を入れ弱火で温め、30分ほど置いてから温め直す。
 深いガーネット色のノンアルコールグリューワインの完成だ。
「温かいのが良いですよね」
「薫りも何か、大人な感じです」
 おっかなびっくり、でも好奇心を刺激される。そんな様子の2人に。
「風味と身体が温まる感じは本物にも引けをとらない自信作なんだけど、どうかな?」
 快は早速、感想を尋ねてみた。


●秋の終わり
「えらく広いんだよ。この街」
 いりすはぶらぶらと街を見て回りながら呟いた。
 コレから忙しくなりそうだし、一度は、行っとかないといけない場所がある。
 そんな訳で、とある墓を訪れる。
 と言っても何をするわけでもない。
 言いたい事、思う事があるわけでもない。
「まぁ、何時か自分も、おくられる側になるのかもしれないし」
 自分が入る事になるかもしれない墓は見ておきたい。
 そんなトコだろうか?
(まぁ、何にせよ。これから面白くなるとイイな)
「そんじゃ、さよなら」
 残していったモノは、適当に貰っておくから。あの世でもイイもの集めておいてくれ?
 そう言って話を終えると、いりすは白い息を吐いてから呟いた。
「やれやれ。秋は小生をせんちめんたるにさせる」


●温もり、そして
「車出して貰えて助かったぜ、荷物気にしないで済む」
 そう言ってプレインフェザーはカートに色々なものを放り込んでゆく。
 日用品を買う為に、彼女は喜平と大きなスーパーマーケットに訪れていた。
「食いモンは勿論……シャンプーも無いし……」
 考えたり話したりするプレインフェザーの傍らに、喜平は荷物持ちとして寄り添う。
 彼に取ってそれは、世界秩序の維持と同等程度には重要な仕事であり任務なのだ。
 だからこそ、久しく埃を被っていた車をブイブイ言わせ買い物に来たのである。
 膨れあがる荷物もなんのそのと右腕に抱えこみ、あーでもないこーでもないと買い物を楽しむ。
(俺が護りたいモノはこういう何でもない一瞬で)
 そんな日常を、大事な人と過ごせるだけで。
「他に、何もな」
 誰に言うでもなく、小さく呟く。
「付き合ってくれたお礼に、何か甘い菓子でも奢ってやるよ」
 プレインフェザーは言ってから、時間的にメシの方が良いかなと付け加えた。
「材料買って、家で作っても良いけど。味は保証しないぜ?」
 ふと、夫婦ってこんな感じなのかな……等と思ってしまうと、途端に照れくささが込み上げる。
 小さい方の荷物は自分で持って。
 彼は大きな方の荷物を片手で持って。左手は常にあけておく。
 彼女は、片手は空けとけよと言おうと思ったけれど。
 ふたつの手は、常にあけて……在る。

 理由は……手を取り、握る為かな。
 そうじゃないと……こうできねえだろうが。

 軽く触れてから、少女はその手を取って……指を絡める。
 この何気ない日常を、離すまいとするかのように。
 同じように、日常を感じながら。
「手が、温かいなと」
 その温もりを感じながら、喜平は静かに呟いた。


 今、確かに此処にある……日常。温もり。
 それを感じながら……確かに、存在させながら。
 時は、移り変わってゆく。

 秋から、冬へと。



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
秋から冬へと変わる季節の中に、存在した一日。
その中に生きる皆さまを描写させて頂きました。
参加して良かったと少しでも思って頂ければ、嬉しいです。

御参加、ありがとうございました。
それではまた、何処かで御縁ありましたら。