＜相撲の腹＞審議……アウトぉ！
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●国外退去してください 二月に一度の定期戦も終わり、次回は地方で開催されるので、ここが人で溢れるのは四ヵ月後。 人気の無い、とある競技場施設の植え込みの影。 はじめは白い煙状だったものが、徐々に形をとり始める。 顕現したものは、全うな日本人なら、塩撒いて、黒船につめて、太平洋の向こうに追い返すような代物だった。 頭は花魁的兵庫島田。 銀のかんざし、鼈甲の笄を山と差し、 顔は白塗り、赤い隈取。 足はぽっくり、刀は二本差し。 つんつるてんの浴衣の上から、花嫁御寮的色内掛けを腰に巻き、 もろ肌脱いだ背中に、唐獅子牡丹。 右の腕には、「十両」の文字 左の腕には、「我欲位千両」の文字。 首に注連縄を下げて、手に縁起物の熊手を持っている。 そして、体形は、ボディビルディング的に体脂肪率１桁。 「ワタシハ、ニホンノ、サムライリキシレスラーデース！」 ●遠いお空へに飛んでいけ 「どこから突っ込んでいいのか分からない。間違った日本満載」 『リンク・カレイド』真白イヴ（nBNE000001）は、首を横に振る。 「エリューション・フォース。外国人観光客の間違った力士の認識がここにふきだまっている」 実際に大相撲を見て、抜け落ちた誤認識が形をとったらしい。 「これを浄化して欲しい。正しい国際相互理解のため」 こんなのがうろうろしてたら大変だ。 リベリスタ達は、討伐の意を新たにする。 「その方法なんだけど、間違っている所を指摘しながら戦闘して」 ツッコミ攻撃ですか。 リベリスタ達は、合点が行かないと首をかしげた。 「そうしないと、相手は『リキシレスラー、チジョーサイキョーデス！』だから。わざわざ日本に相撲見に来る程の日本びいきの夢と妄想と誤解の集合体。強さにおいてもまたしかり」 イヴは至極まじめな顔をする。 「他の場所ならまだしも、ここは聖地。この地で力士が負けることはありえない。例えそれが間違ったリキシレスラーでも」 モニターに、予想されるリキシレスラーの戦闘能力が表示される。 「大概の攻撃ははじかれる。カウンターで張り手を食らうことになる。まさに無双状態」 ちなみに強さは、『チャンピオン・ヨコヅーナ』級らしい。 「『力士』は神の依り代だから、神秘にも強い。張り手はビーム砲。空の彼方まで吹っ飛ばされるから」 なんで部分的に合ってて、全速力で間違った方向に。 「ツッコメば、「リキシレスラーじゃないニセモノ」として一部弱体化する。それを積み重ねれば、最終的には霧散する。」 リベリスタ達は、ツッコミどころを指折り数え始めた。 「いろいろな意味で放置する訳には行かない。気をつけてね。ツッコみ忘れのない様に」 |
| ■シナリオの詳細■ | ||||
| ■ストーリーテラー：田奈アガサ | ||||
| ■難易度：EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
| ■参加人数制限： 8人 | ■サポーター参加人数制限： 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月15日(水)22:55 |
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| ■メイン参加者 8人■ | |||||
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| ■サポート参加者 4人■ | |||||
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●あですがた。 エリューション・フォースが、徐々に実体化してくる。 リベリスタ達は、今や遅しと身構えていた。 「妄想って怖えぇな……っ！！」 体を二つに折って大笑いしているのは、『三高平のトリックスター』呉実 陣牙（BNE000393）だ。 『空舞いクジラ』アニーバル・イサナ・オチ（BNE000812）は、具現化しつつある格好にちょっとワクワクしている。 「リキシレスラー超カッコいいじゃねえか！！ カブキって言えば納得なのになぁ」 それ今度、歌舞伎座辺りにおかしなものがたまるから、勘弁してください。 「突っ込みどころが多すぎて、どこから突っ込めばいいのかなあ……」 『聖盾』高崎・千尋（BNE002491）は、用意周到。 （ちゃんと【論破メモ】を持ってきたんだから、読みながら突っ込みをすればいいもんね） 「兵庫とか笄とか、ぽっくりとかあまつさえ色打掛とか……女の子の夢をあんな……許さない……！」『臆病ワンコ』金原・文（BNE000833）は、プルプル怒りに打ち震えながら、ＡＦからいつでも布団六点セットが取り出せるように調整している。 「だって購買部に座布団売ってなかったんだもん！」 （本来なら投げるのは座布団なのですが、ぱちもんリキシには、ぱちもん座布団！） 力士と違うところに憤ってます。だって、大和撫子だもん。 かぽん。 特徴的な下駄の音がリベリスタの背後でする。  今実体化しかけているリキシレスラーと寸分たがわず。 ただし、むっちりアンコ型、身長低めで、豊満ボディ。 「体型は違うけど、アタシの方がらしいんじゃないかね？」 『三高平の肝っ玉母さん』丸田 富子（BNE001946）、颯爽と登場って……。寸分変わらぬいでたちって……ッ！？ アーク別動班は迅速だった。 富子さんをぐるぐるっとバスタオルで巻くと、移動バンの中に放り込み、そのまま車を出してしまった。 許してくれ、富子さん！ だが、この聖地で、女を『力士として』戦いの舞台に上げるわけにはいかねえ。 でねえと、この場の『正しい相撲』概念に狂いが生じ、パチモンリキシレスラーを増長させちまうことになるからだ。 富子さんの雄姿を忘れない。問題のある辺りには謎の霧を掛ける事にする！ ●正しい国際相互理解 具現化が完了した当のリキシレスラーは、上機嫌でＨＡＨＡＨＡとか笑っている。 「ワターシ、サムライリキシレスラーチャンピオーン・ヨコヅーナ。チジョーサイキョーデ－ス！」 カポーンカポーンと小気味よく鳴る筋肉。 「ええっ、そうなんですかっ！！」 日本のことよくわからない外国人一号・『ロンサムブラッド』アリシア・ガーランド（BNE000595）は、条件反射で驚く。 「ちょっ、やる気あるのかソレ？」 日本のことよくわからない外国人二号・『むしろぴよこが本体？』アウラール・オーバル（BNE001406）が、けたけた笑いながら、リキシレスラーに向かって行く。 （んー……なんて言うか、こう、くのうするレベルだぜ？） 「えーい、勝負だ！」 大丈夫。クロスイージスだから。硬いから。精神的廃棄物の固まりには負けないから！ 「リキシノハリテハ、アラシヲヨブゼーッ！！」 どっかーんっ！！ 悲鳴を上げる暇もなく、アウラールはお空の彼方に消えていった。 ぷっしゅうううううぅぅ……。 リキシレスラーの掌から、水蒸気のようなものが立ち上がっている。 これが、ツッコミなしの威力……。 リベリスタの手にある軍配を見て、鼻で笑う。 「ワターシ、ヨコヅーナ！ ワタシノトリクミ、スペシャル・カンヌシ・スモウレフェリー・タテギョージダケガシキルコトユルサレマース。キムラショノスケ、シキモリイノスーケ！ サンヤクイカノギョージ、オトトイキヤガーレデース！」 なんで部分的に合ってて、最悪の方向にそれてんのかな。 でも、パワーだけなら横綱かも。 横綱審議委員会は認めないだろうけど。 「威力あるのは分かったわ」 ネイティブには聞き分けられるエセ関西弁。 「せやけどな……いくら俺がイタリア人でも相撲がどんなモンかくらいわかるわ。ナメとんのか、このエリューションは」 『Ｌａｓｔ Ｓｍｉｌｅ』ケイマ Ｆ レステリオール（BNE001605）は、準備万端。 脅威の集中力。もう、リキシレスラーしか見えません。 「この、ニセリキシーッ！ かんざしは力士のアクセサリーじゃない！」 黒い影がリキシレスラーの頭部めがけて伸びて行く。 吹っ飛ぶかんざし、割れる笄。悲鳴を上げる文。 「笄とか立合のとき危なすぎ！ ていうか笄が壊れるーっ！」 鼈甲だからね、衝撃に弱いよね。 というか、普段おどおど文ちゃんがツッコむなんてただ事じゃないよ。 投げてんのが、座布団代わりの掛け布団で全然痛くなさそうだけど。 「ＺＡＢＵＴＯＮは最大の弱点を付く武器でもある……」 捏造設定で、リキシレスラーの更なる弱体化をもくろむ陣牙がトンデモ解説で、文の掛け布団に変な属性つけた。 「シュリケンの様に投げて、決着！」 べそん。予想外の神秘な衝撃。リキシレスラー、のけぞった。 確かに場内でぶつけられる座布団は、横綱に精神的ダメージ誘発するけどさ。 『為虎添翼』藍坂 久遠 (BNE000269)も、さっきまで眉間に指当ててうめいてたけど、首締め糸片手に突進！ （終わったら、凄く精神的意味で疲れそうな予感がヒシヒシと……。まあ、今からそんな事考えても無駄だけどな！） 「気合入れてくぞ！」 やけ気味で連携だ！ 前の攻撃は布団だけど！ 「髪型も相撲と関係ねぇ！ 花魁だ、それは！」 黒い光が、リキシレスラーの頭部に直撃。 「ね、なんでかんざしなの？ オシャレ？」 『原罪の羊』ルカルカ・アンダーテイカー（BNE002495）は、本気で不思議そうだ。 右から左から、ねえねえとリキシレスラーにざくざく。 「その髪型は女性用だ、テメエはオカマか！？」 アニーバルも小ぶりな槍を振り回し、頭めがけてドカンと大技を重ね、 「頭に余計なものがいっぱいだよ？ かんざしつけたりとかはしない」 千尋も、かんざしの最後の一本まで跳ね飛ばす。 兵庫島田も黒い影がざっくんざっくん刺さったから、ぼっさぼさの大崩壊だ。 とりあえず、もはや奴の頭はリキシレスラーですらない。弱体化には成功しているようだ。 今の雰囲気だと、星は１３勝２敗って感じ？ ●いえすすっぴん、のーめいく！ 『パティシエ修行中』新堂 愁平（BNE002430）は、突貫した。 「とゆーわけで、新堂愁平、初陣、参るっ！ ……なんちって♪」 体内のギアはトップ。速度はアゲアゲ。 「お相撲さんお顔は、白くないよっ！」 （なんで白いんだろ……なまはげでも目指したのかな？） いや、なまはげは、赤かったり青かったりするから。白くないから。 「顔は歌舞伎だし！」 「そう！ 白塗り隈取は歌舞伎！ 力士じゃない！ ていうか汗で流れる！」 「せやせや！ そのけったいな化粧はなんや！ 力士はすっぴんやで！」 畳み掛けるよ。もう、口から怒涛のツッパリのごとき突っ込みいれながら、ぼこってぼこるよ。 「知りませんでした！」 と、正しい日本文化を学び、リキシレスラーにダメージを与える合いの手外国人、アリシア。 その相槌イエスだね！ 関脇レベルまで落ちてきたね。角番二場所連続負け越しな感じ。 それでも三役級リキシレスラー舐めんな、突っ張りーッ！ 『湿気知らずの肺』救慈 冥真（BNE002380）さんの生身のハラワタは煮えくり返っていた。 彼は奇数月中旬から、二週間の国営放送中継を欠かさない種類の人間である。 「SUMOUが何であるか、どうあるべきか、日本人として骨の髄まで教育してやるよ！」 がしぃっ！ がっぷり四つで受けた足が高速で石畳を削る。 靴底が摩擦で火を噴き、ゴムが溶けて穴が開き、かかとの肉が削れても、彼は運命をかけて耐え切った。土俵を割ったりしなかった。 「足の裏以外、その鞘のひとつでも地面に付けてみやがれ！ その時点で横綱失格だ！」 普段の無口クールキャラをかなぐり捨てて吼える程度に国技を愛する男、救慈 冥真。 「横綱名乗るなら摺り足で音速超えてきやがれ！」 しっかりっ！ 力士は常人ではないけれど、夢見すぎよっ！ そんなスピードで摺り足したら、瞬きする前に土俵割っちゃうわっ！ というより、＠技館が大バーストよ！ ……いや、正味な話、そんな存在になられたら、マジ困りますよ？ 「浅ェんだよ踏み込みが！ こんなんじゃ幕下以下だ、テメェの大銀杏は何色だ？」 つうか、大銀杏結えてません。 あ、だめだ。リキシレスラーの頭の周りにはてなマークがいっぱい浮いてる。 技術面のツッコみに、全リキシレスラーが泣いた。 外国人知識に、摺り足とかなかったか。わかんなかったか。 そっか。できないのか。じゃ、力士じゃないね。 へこんだ。リキシレスラー、すごくへこんだ。 小結通り越して、前頭七枚目くらいまでへこんだ。 ●肉体改造失敗 「体脂肪率1桁の力士とか力士じゃない！ ちゃんこ食えっ！！！」 愁平は、これを突っ込まずに入られるかとレイピアをふるう。 「相撲っつったらポーンと腹でとるのが普通や！ そんな引き締まった筋肉いらんわ！」 ケイマがしつこく頭を黒光でどつく。 「力士の体とボディビルディングは違う！ 重さがなきゃすぐ押し出される！」 全ての布団を投げ終わった文も、新たな黒光で追い打ちをかける。 びたびたびたびた。 ブラックジャック百烈張り手状態。 「おすもうさんは筋肉の上に脂肪をしっかりつけた躰なんだ。じゃないと、ぶちかましとかできないもんねぇ。ぼでぃびるの人みたいなのはめー」 ノンビリした口調で貯めつつ、千尋が叩きつける衝撃はリキシレスラーの割れた腹筋を更に断ち割る。 そう。痩せ型力士いわゆるソップ型でも、脂肪はついている。 過酷な稽古と、日に二度のどか食いと昼寝で培われる脅威の肉体芸術なのだ。 鳥のささみとプロテインで出来てるような筋肉オンリーボディでは、強い力士にはなれないのだ。 脂肪は質量武器にして鎧なのだから！ 「ボディビルダーなら黒く塗ればいいのに。キレテマスヨ。って、ああ、武器で切れてますってこと？」 いやぁん、ルカルカちゃん、ブラックゥ。 そろそろ幕下まで落ちてきたね。十両かな。 大関経験者なら、あれを考えなきゃいけない頃合だよ。 ●玉のお肌が力士の醍醐味 草葉じゃなくて、植え込みの影からこんにちは。 ヨコヅーナに張り飛ばされたアウラール、生きてます。 こっそりと自己回復の祝福を女子優先でに掛け捲っていた。 その心配り、イエスだよ！ 「普通相撲取りは刺青入れないし！ 腕の文字も訳分からん！ 相撲の位に千両はねぇよ！」 「ジュウリョウの次はヒャクリョウ、センリョウデース。 オキュウリョウイッパイデース。カエリザキデース」 「十両と千両は違う！ 十両は番付！」 「チャンピオンって証拠はどこや？ トロフィーは？ ほうら、言うてみ？」 「ワ、ワタシ、イマデモボチボチツヨイデース……」 「口答えすなぁ！ 力士は黙ってどすこーいって言わんかい！」 「力士の会話は9割「どすこい」だ、馬ァタレ！」 「ドスコーイ」 「本気度が足りねえよ、もっと腹の底から！」 「それにそんなカタコトで喋るおすもうさんはいないよぉ。外国人さんでも、ちゃんと日本語だもん」 「ていうか自分の番付と四股名言ってみろー！」 「はっはっは。そんなおまえに四股名をつけてやろう！」 リベリスタの熱いツッコミが、不意に途切れた。 え？陣牙さん、このタイミングでまさかの裏切り？ 「『ラッシュモア山』……ん～イマイチ。もっとグローバルに『ＯＨ！宇宙に浮かぶオアシス、グレートアース山』で！」 「スバラシイデース！ ナイスナシコナデース！ テッペントレマース！」 仮にも四股名をもらったリキシレスラー、ますますわけ分からん存在にパワーアーップ！ しかし、リベリスタにも絶好のツッコミポイント発生。 あえて、敵に塩を送って攻めどころを作るとは。 やるな、アークのリベリスタ！ 「「「そんな四股名の力士がいるかああああーっっ！！！」」」 カタカナはともかく、四股名は、姓＋名まで決めてね。 名前、ないの？じゃあ、だめだ。 ぼこぼこぼこぼこぼこぼこぼこぼこ。 「その他諸々、皆の突っ込み所も合わせてリキシレスラーは除名処分決定！」 行司アニーバルの判定により、リキシレスラー、存在失格！ 立行司じゃないだと？ 今のリキシレスラーは、草相撲以前のパチモンと証明済みだから、問題なし！ 名前と属性を否定された存在は、消えるのが世界の定め。 実体を持たないものならば、なおのこと。 もはや、リベリスタの攻撃は空を切るのみ。 間違った知識の念積体は、完全に消滅したのだから。 ●相撲、最強！ 「はぁ……なんかツッコミしすぎて疲れたー」 「うー……スッゴイ叫んだから喉痛いし……、誰か飴持ってないか？」 「飴さん欲しいなぁ」 ケイマと久遠と千尋がぐったりしながら、口をパクパクさせている。 三人とも、最前線でずっとツッコミ続けていたから、のどががらがらだ。 「日本にはまだ侍が生きていると信じる人間がいる……そういった誤解を無くしていくこともリベリスタの仕事なのかもしれないな！」 きりっと陣牙が前を見据える。 「恐るべき日本文化だったぜ……。にしても、最強はニンジャだって聞いたことがあるんだけど……」 はっはっは。なに言ってんだ、アニーバル。忍者なんていないんだぜ。 いいな、絶対探すなよ！？ 明日の太陽拝みたいだろ！？ 「色打掛を着て格闘するとか、ありえない。女の子の夢への侮辱だよ」 でも、女の子の夢を打ち砕く輩をやっつけたよ。やったね、文ちゃん。 「ふぅ～ごっつぁんです！！」 うん、愁平クン、今の『ごっつぁんです』はイエスだね！ 「ところでＳＵＭＯＵって本当は最強なんだろ？」 うん、本当に最強だよ！ |
| ■シナリオ結果■ | |||
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| ■あとがき■ | |||
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