● なんだろう。この胸の激しい動悸は。 なんだか顔も熱い。 ちなみに心臓発作ではない。 ユランユランと揺れるつり橋の上。 こちらに来るあなたを見たときから、僕らは互いの瞳に運命を見た。 「僕とお付き合いしてください!」 「はいっ、よろこんでっ!」 小学五年生A君と、調査に駆り出されたアーク職員狭山さんの馴れ初め。 30秒後に破局。 関係、手を繋ぐまで。 ● 「――まあ、吊り橋から正しい方に降りれば、恋も終わるんだけどね?」 狭山さんは、通報されてません。 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)にそんな浮いた噂が出る日は来るのだろうか。 天才の方が、泣きそうだ。 「E・ゴーレム。正確に言うと、この橋はまだエリューションじゃない。元々縁結びの噂があって、ここの欄干に錠前をつけると結ばれるって言うのがどんどん広がったのね」 実際映像には欄干にびっしりついた大小さまざまな南京錠。 「その中の錠前の一つがエリューション。なるべく早く見つけて破壊。橋を破壊することになると、近隣住民に迷惑がかかる。大事な生活道路だし」 えっと。どんな目に遭うんですか? 「吊り橋効果。の激しいの。この橋の上に乗ると恋に落ちる」 レッツ・フォーリン・ラヴ。 「落ちるから、気持ちのいいくらい、スットーンと」 じゃ、意中のあの子を誘って行っちゃったりなんかして。やだぁ。 「――で、言いにくいけど。相手は、近接範囲。ランダム」 なんだと? 「性差、年齢差、種族差、全て乗り越えて、カップル成立。片想いなし」 ひゃっほう。 「さっきも言ったけど、有効期間、橋から降りるまで」 そんじゃ、速攻橋から降りるわ。 「橋、かなり揺れる。そして、山側と谷側があるんだけど、効果を打ち消す方と効果続行が、しょっちゅう変わる」 つまり、橋から降りる瞬間、効果続行じゃないほうから降りると行動が無駄になるということか。 「ターンを費やすほどラヴに身が入るから。それから、恐ろしいことにブレイクフィアー・ブレイクイービルは効かない」 なぜ!? 「恋慕は、別に心身に悪影響を及ぼすものではない」 あー。 「錠前、ステルス使うから。まあ、がんばって。みんなの彼女とか彼氏とかには、万が一の時にはアークから潔白証明書出してあげるから」 それって、なんか効力あるのか。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月23日(金)00:29 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● ここにドキドキポイントがある。 25mという短い距離ながら、高低差3m。 下は断崖絶壁、落ちたら死ぬ。 幅三mという絶妙な狭さ。 更に、時折激しく吹く谷風。 さながら、調子に乗った小学生が漕ぐブランコのごとくゆよんゆよんと揺れる橋。 ぎしっぎしっと言うワイヤーロープの効果音付き。 高鳴る鼓動、うかぶ汗。 恋愛成就祈願とお礼参りの錠前ジャラジャラ。 そして、そのうちの一個がエリューション。 橋を壊さないで鍵を壊す。 それがリベリスタに与えられた使命だった。 「恋の花火は人情の見せる夢幻――」 『似非侠客』高藤 奈々子(BNE003304)、年女。 辰年生まれは、情が深い。 そして、生まれの星はさそり座。 直感に従って、全身全霊をかける激しい恋の定め、十二支×十二星座が言っている。 「錠前風情が見せれるものなら魅せてみよ!」 もみじの錦、神のまにまに。 心の錦、君のまにまに。 咲かせてみせます、恋紅蓮! 僕らのイヴたん(女子高生)は、確かに伴侶の心の安定のため、潔白証明書を出すと言ったが。 恋人同士で参加しているこの二人にはどういう対応をすればいいのだろうか。 『覇界闘士-アンブレイカブル-』御厨・夏栖斗(BNE000004)は、誰はばかることなく清らかである。 「よし、知ってる知ってる。こういうのってさ、どうなるのか」 笑顔がさわやかだ。 「お前! まじで彼女といちゃつくためにきて、あと任せればいいんだ」 よ、このリア充! 爆発しろ! 「――って、思ってたんだぜ!」 しかしそれが今、『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)によって風前の灯だ。 「私はホモを見に来たのよ」 夏栖斗の目にぶわあっと熱い何かが浮かんだ。 「繰り返すわ。『私は、ホモを、見に来たのよ』 」 厳かに発せられるその言葉に、魂は縛られ、もうどうしたらいいのかわからないの。 腐女子が使えるEX・絶対腐敗領域。 彼氏を生贄にして、その親友を召喚! 薔薇色のバトルフィールドへ! ――ていうか、せめてこじりさん、BLにしとこうよ。 いくら『この世は不条理と、不平等と、不公平で埋め尽くされている』からって、不条理にも程があるだろ。 「掛け算しに」という隠語を聞いた夏栖斗がいつまでもピュアなハートを大事にしてくれるといいなと思う。 「アンブレイカブル」が「打破し難い憂鬱(アンブレイカブルー)」にならないことを切に祈る。 『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は、気がつくとここにいた。 (本部をふらふらして、たまたま入った部屋がブリーフィングルームで、なし崩し的にこの仕事に参加することになって……) 「これ、『簡単なお仕事』と同じパターンじゃないですかー! やだー!」 ヤダーヤダーヤダーヤダー――。 断崖絶壁に快の叫びがこだまする。 やだなあ、それは「ひっどい仕事」の方だよ。 君は今回とある腐女子の召喚術式に引っかかったんだよ。 でなきゃ、大学と店とアークのバイトでクソ忙しい君がふらふらしてる訳無いだろう。 明日はどっちだ、というか、明後日の方向に飛んでいってしまっている。 「腐女子どもめ、そうは問屋が卸さないぞ!」 小売店なめんな! 「恋とはどんなものかしら」と言ったら歌劇だが。 こんなところで習得するもんじゃない。喜劇になる。 聞いてますか、『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)さん。 あなたのことを言ってるんですよ!? 「たのしみー♪」 とか言ってる場合じゃなりませんよ!? (本気で他人を好きになった事がなくて、そういう気持ちってどんな感じなのかなと思って。僕でも…他人を好きになれるのかな? 神秘とやらで) ――って、あんたも同じ穴のムジナか、『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963) ! そういうのは、まず神秘によらずに内なる自然の発露から! 「でも、男はやだな……」 こじりさん、露骨な舌打ちやめて! (……壱和くんと旭ちゃんは誰とラブラブするんだろう。いつも仲良くして貰ってる分、ちょっと気になる……) ロアンの視線の先。 「恋ってよく分からないですけど、誰かを好きって言えるのは素敵だと想います」 『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)は、今回唯一のグレーゾーンだが、こんなに可愛けりゃ、どっちでもよくね? 「でも、それを強制するのはダメですよね。高い所は苦手ですけど、頑張ります」 おっきな番長服に埋もれるように敬語笑顔とか、萌え殺す気ですね。 わかります。 とにかく、錠前を探さないことには話が始まらない。 山側、谷側に分かれて捜索。 夏栖斗、快、ロアン、壱和のBLっていいのよ、山側組と――。 「おう、よろしくな美女達。嬉しいぜ、恵まれた環境だ。意図しなくて美女に囲まれるたァ、俺様のラッキーは今日も冴えてるな」 『LUCKY TRIGGER』ジルベルト・ディ・ヴィスコンティ(BNE003227)は、正しくイタリア男である。 ――こじり、菜々子、ヴィスコント、旭のハーレム、谷側組。 「バンビーナたちは世界の宝。そんな子たちに愛されるつり橋なんて、いいモンじゃねェか。革醒の力だろうが、その想いは大事なモンだぜ」 気障なセリフを舌に乗せてこその、ダンディ。 「んじゃま、やるとしますか」 リベリスタは、吊り橋に一歩足を踏み出した。 ● 問題の錠前はステルスがかかっている。 それを看破する能力がなければ、発見は極めて困難だ。 がちゃがちゃがちゃがちゃ。 旭が、端からピッキングマンで「普通の錠前」を外していく。 「ごめんね、あとからちゃんと付け直すから!」 神秘の錠前は、神秘の鍵開けの指を拒む。 ならば、拒んだ錠前がビンゴだ。 だから、それを引くまでは。 実際に、犠牲者が出るまではどのあたりにあるかよくわかんないんだよね。 じり。じりじりじりじり。 山側と谷側の距離が徐々に縮まっていく。 口紅や蛍光ペンでチェックされた錠前。 リベリスタの心臓は、常より心拍数上がってるのに、いつアーティファクトが発動するのか、のドキドキも交えて、ティーンエイジは顔は紅潮、耳まで真っ赤状態だ。 おまたせしました。山側、谷側。 半径三m。 同一近接範囲に入りました。 こっから先は、恋愛バトルロイヤル。 ああ、この緊張に、もはや耐えられません。 「――こじりいいいいいいいい!!!」 裏切ったな、チームプレイを裏切ったな。 夏栖斗は、かなり距離を置いていたこじりに全てを投げ打ち全力疾走。 「ほら、もし全員が恋に落ちたら大変でしょう?」 危険分散は大事だね。そういう理由だよね。ほかに意味はないよね。 とにかく夏栖斗は彼の女神様に向けて、ダッシュ。 (鍵? OKOK。後でなんとかするっていうか、不沈艦がなんとかしてくれる) 相方に依存しすぎだ。 「僕の恋心はこじり以外に向けるわけにいかない。っていうか僕の五行想は快のものだけど、恋心だけは譲れない!」 君の五行想って具体的には何を指してるのかな。そんな素朴な疑問。 ちなみに、五行想って、「開眼記念の称号」なんだよね。 開眼。くす。 その頃、快は、ヨークシャーテリア、じゃない、壱和の瞳に運命を見ていた。 ぽーっと上気した桃のような頬。潤んだ瞳。 ハの字の眉毛が可愛らしい。 もうこの際どっちでもいい。 だが、しかし。 「朴念仁を発揮し『いい人止まり』でフラグを折り続け、それなりに年頃の男子らしく諸々興味はあるもののヘタレなので耐え忍ぶ」 と、かの塔の魔女に市内放送されちゃった快に過ちなど起こせるはずもない。 麻痺無効に精神無効って。 ときとして、頭の回路麻痺させねば、恋愛なんてやってられない。 君の相方を見たまえ。 「お兄ちゃんって呼んでいいですか?」 ぶんぶんではなく、あくまでプンプンと振られる長めのおしっぽの誘惑も、 「構わないよ?」 軽やかな好青年フラグブレイクによって破壊される。 そんな堅物にアッパーユアハート! 橋の向こうのこじりは、橋を壊さない程度の勢いで、ダムっと橋を強く踏みつける。 うぉるるるるるっっと波打つ橋。 喉元までせり上がる心拍数。 ああ、これが恋ではないというの。え、そんな、嘘っ。 「いけません。橋の外に行かなくては、新田さん……」 うっきゅるるぅん。 このままもっと深く恋に落ちちゃう。 ちったあ、恋に溺れる感覚を覚えろ。 酒にばっか溺れてんじゃないぞ、彼女持ち! ● 「あ、おちたわ」 こじりがまっすぐ前を見据えて言った。 「こじりぃ、僕のこじりぃ!」 ああ、僕を抱きしめて。 「僕はとっくの昔にこじりにフォーリンラヴってんだよ!」 恋人よ、わが胸に還れ。 「アナタ、カチューシャが曲がっているわよ。みっともないから早く直しなさい」 こじりの親密度レベル1は、暴言を吐くである。 で、吐かれたのは。 「おねえさま素敵、カッコいい……! どこまでもついてくの!」 瞳を潤ませている旭。 そっちかよぉっ!? (あ、れ……? あれ、な、なんか。なにこれ顔あついかも……っ……や、ちょっとまってだめ…! すっごいはずかし……) お嬢さん。恋とは羞恥で出来ている。 (恋がこんなはずかしーなんてきーてないよう……!) うん、恥ずかしいから、誰も大きな声では言わないんだよ。 「あの……え、えっと、け、けっこんしてください!」 結婚を前提に清らかなお付き合いを! ぷろぽぉずする旭に、 「結果を急ぎ過ぎよ、なんて余裕がないの。がっついてるんじゃないわ」 レベル2、心を抉るに入りました。 「こじりが他の奴にフォーリンラブされるのなんて絶対に許さない!」 夏栖斗、涙目で、それ以上の旭の言葉を遮る。 この罵詈雑言からこじりのラブを汲み取るとは、既に調教済みですね、わかります。 もう、式場に殴り込むしかない、そんな白昼夢。 君に誓いの言葉を迫る神父が……。 「泣かないで、恋しい人」 神父様? 静けさの中に恋の懊悩を秘めた白銀の人が立っていた。 「今まで結構遊んできたけど、君は、君に対してだけは、しっかり目を合わせられない……僕のロクでもない部分を見透かされてしまいそうで」 こぼれ落ちそうな少年の涙を、ロアンの白皙の指が拭う。 「え? その、なんていうかこんな気持ちはじめてで……」 夏栖斗の胸は、早鐘のように脈打つ。 ジッと見つめるこじり。 今日は、ホモを見に来た。 「こんな気持ち初めてだな。これが恋、って気持ちなのか。なるほど、苦しいものなんだね……ああ、でも素敵な気持ちだな。今まで知らなかった」 気合だけではどうにもならない恋の訪れ。 君の涙を拭うこの指の慄きが、君の頬に伝わりますか。 「ねえ、もっと近くに行っていいかな? ねえ、良かったら……抱きしめていいかな? 僕が触れたら、汚してしまうかな。それでも……ごめん、抑えられないんだ」 理性がなくなった訳ではない。 「少しだけ、今だけは」 裁定者は、少年本人ではない。 お腐れ様、いかがなさいます。 ● 「ここには俺様とお前がいる、それだけで始まるモンがあるだろ?」 (相手をリード。それが紳士ってモンだろ?) 任侠の心を持つ女の心につきこんでくる、イタリアンマフィアのボス。 手を取られ、引き寄せられて、腰を抱かれて。 もう、逃げられない。 見つめ合う瞳と瞳。 でもそらしてしまうのは、奈々子の方。 だって、ジルベルトは群れのα。 最も強いオスに、狼の女は皆従順なの。 「元々見えてないって?なんだ可愛いやつだな。お前にそんな事言われて黙ってられるやつなんていねェよ?」 背筋を沸き立たせるような甘い戦慄。 (あぁ、これが依頼で無ければ……貴方と離れたくないけれど、これもまた運命なのね) もたげてくる野生の衝動、発動。 「ほほほ、捕まえてご覧なさ~い!!」 捕まえられたら、何をしてもいい。 軽やかに走り出す奈々子。 吊り橋の幅は三メートル。 そこをキラキラ振りまきながら、追いかけっこしたら。 答え。盛大に揺れます。 世界は揺らめいている。 「お前の前では全てが霞むぜ。お前の全てを溶かしつくしてやる、覚悟しな!」 ジルベルトさん、任務を思い出して。お願い。 乗り物酔いのひどいので、世界がメルトダウンしかけています。 「俺様に愛されると幸せになれる。これは確定だぜ」 イタリアは、恋と歌と美食の国。 「こいよ」 稀代の賭博師は、威風堂々と恋のチップを積み上げる。 もう一歩足を踏み進めれば、この恋は幻と消える。 この胸のたかなりは霧散する。 せり上がってくる熱いものの意味を忘れてしまう。 「悔しいっ」 今なら、まだ引き返せる。 奈々子はリベリスタだから、任務のことを考えると恋に溺れてばかりもいられないの。 だから、橋から一歩降りた。 ● 徐々に範囲が狭められていく。 リベリスタ達は右往左往している。 確信に近づくほどに、ランダム対象で恋に落ちていく。 橋の中央からでは、通常移動で橋から降りられない。 正気を奮い立たせて橋から降りても、ときめきが止まらないばあい、さらに2ターンかけて全力疾走で反対側に走らなければならないのだ。 そのあいだに、走る気が失せたら。 早くしないと、本気で様々な意味でエチケット袋の世話にならなければならなくなる。 というか。 「い、言わないぞ。『俺の不沈艦はお前だけのものなんだ』 なんて言わないんだからな!」 ちなみに、「不沈艦」とは、「鉄壁の守りを持つ」称号です。 「やめろよ、僕の気持ちくらい分かってるだろ? 僕の五行想はお前のものだって……」 潜在意識に何かあるのか、なんとなく互いの間合いに入ろうとするから。 左右問題で、審議が必要な事態に陥っていた。 「だめだ。これ以上は。ここから飛び降りなくてはいけなくなる」 お互い心に愛しい女性を持つ身。 それと恋は別だなんて、不誠実なことは言えない。 「快。僕はこじりがここから飛び降りるなら、迷わず飛び降りる。でも――」 揺れる吊り橋、きしむワイヤーロープ。 「飛び降りるのがお前だって同じことだ! よりにもよって僕の目の前で独りで逝くなっ――」 相棒だもの。 「夏栖斗――。大丈夫、痛くない」 二人なら。 奈々子は、ケタケタ笑いながら橋の上をのたうち回り、それでもカメラのシャッターを切ることを忘れない。 とはいえ、笑ってばかりもいられない。 このままではホモ心中になってしまう。 リベリスタの錠前をより分けチェックする指先がさらに加速する。 約一名の手が完全に止まっているが、誰だか言及するのは避ける。 一個だけ、不自然な、鍵穴のない錠前があった。 なんの変哲もないように見えるけど、怪しさ大爆発。 「――開けられない」 旭が宣言する。 誰のというわけでもなく、笑いが漏れる。 「あら、万感の怒りを込めて鍵穴に接着剤注入しようと思ってたのに」 狼の唸りを内包した奈々子の低い声が怖い。 「大丈夫、錠前が壊れても恋は終わらねェよ。解き放たれて新しく始まるんだぜ」 ジルベルトの銃弾が、錠前を穿つ。 新たな、接着剤流し込まれるための、鍵穴が開くまで。 ● 「どしよ、まだ顔あついかも……びっくり、したぁ……」 旭は、ちょっと思い出しては、はぷはぷしながら、外した錠前を元通り付け直していく。 「鍵の数だけ、想いがあるのですね。番長さんと初めて出会った頃の気持ちを思い出しました」 壱和の胸に、幼い日、喧嘩を教えてくれた番長さんの面影が去来する。 「恥ずかしいですけど、温かいですね」 本当の恋が訪れるのは、いつの日か。 今日。 二人は、恋とは、とても恥ずかしいものだということを知りました。 だから、遮られた大事な言葉は、本当に好きになった人にだけ。 「……証明書を、妹宛で出してもらおう。妹よ、キミの兄は、道を踏み外したりしていません……」 ロアンは、虚ろな目で、付けたマーキングのペンやら口紅を拭き取っている。 「これは住民にも観光客にも愛されてる大事な橋だ。それを汚すのは、ここに想いを寄せたバンビーナ達を汚す事と同じだかンな」 せっせと清掃活動に勤しむジルベルト。 なに、このイタリアマフィア、きっと地域に愛されてる。 「俺様もこの橋みてェに愛されるボスにならねェとな。ありがとよ」 一方、快の周囲は、どんよりとしている。 「……こっちは散々心の錠前をぶっ壊されたけど」 気がついたら、全てが終わっていました。 錠前に邪を焼き尽くす一刃を振るおうと思っていたのに。 でも、間違いは起きなかった。 大丈夫。君は清廉だよ。何もやましいことは起きなかったよ。 ちょっと相棒と仲がいいところを再確認しただけだってば。 な、新田! 「こじり! せっかくだから、僕たちも錠前つけてこう!」 よぉし、安定のリア充。爆発しろ。 「そうね」 かっちゃん。 金属音がしましたよ? というか、肌に振動が伝わりましたよ? 「え?」 「此処に鍵を付けた子達も、こうすれば早いのにね」 愛あふれる頬笑みを浮かべるこじり。 夏栖斗の首には錠前付きの首輪。 調教済みですね、わかります。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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