●おっぱい宣言~じーくおっぱい~ 「諸君、君達はおっぱいが好きか」 厳かな口調で問うのは台座に座る一人の中年。その眼は澄み渡っておりある種の威厳すら感じられる。 周囲を取り囲む無数の同胞達は応じて声を上げる。おっぱいが好きだ!おっぱい万歳! 「諸君、君達はおっぱいを愛しているか」 再度問う。問い返しては周囲を睥睨し、我が意を得たりと力強く笑む。返答は変わらない。これこそが真理。 口々に轟くおっぱいの讃歌。多種多様であったそれらは徐々に一つの声へと収束して行く。 「おっぱい万歳!」「じーくおっぱい!」 しかして彼が手を上げるとその声は急激に成りを潜める。大きく首肯する。 然り。おっぱいは素晴らしい。大も小も無い、それぞれにそれぞれの良さがある。 彼は想う。ただおっぱいこそが世界を救うのだと。おっぱいこそがこの世の真実であると。 言語の壁、人種の壁、運命の壁すら乗り越えて人々の心を一つに結び付ける物。それこそがおっぱいであると。 「諸君、私はおっぱいが好きだ。愛している。その艶やかな膨らみにはこの世の奇跡が詰まっている。 有るか無いかと言う慎ましさの中には風情と趣があり、巨大なる実りには母なる地球へ感謝の念をこそ喚起される。 適度な膨らみには青々とした草原を駆ける風の様な清々しさと共に青春の苦さを思い出し、 発育過程の今まさに育ち行く微妙な天秤に、日々の営みの大切さを、そして人の持つ個性の輝きを知る。 かつて原始、女は太陽であり男は大地であった。思い出せ同志諸君。その胸の奥に眠る衝動を。 この何もかもが信じられない、闇に閉ざされた世界に在って、それでも太陽は輝き続ける。 止まぬ雨はなく、明けない夜も無い。明日は来る。振り仰げ、さらば救われん。真実こそがおっぱい也!」 真実こそがおっぱいなり! 唱和は僅かな躊躇いも淀みもなく繰り返される。異様な熱がそこには在った。 再度頷く。良くぞここまで、と。この1ヶ月の活動で遂に組織は軌道に乗った。 「良いか諸君、故にこれは聖戦である。我々は戦い、勝利せねばならない。 何者とか、即ちおっぱいを弾圧する現政府、そして何より我々に宣戦を布告して来た反おっぱい組織。 内に数多くの素晴らしきおっぱいを内包しながらも我らの同志を狩る、憎きアークとである! しかして、おっぱいは死なず、例え揺らごうともおっぱいである! 故に我らは勝利する!」 これが始まりである。開戦を告げる号砲が聞こえる。おっぱいの灯は燎原の火の如く燃え広がるだろう。 大きく呼吸を整える。親愛なる同志達へ向けて、鬨の声を上げるは彼の仕事だ。彼にしか出来ない。 「勝利万歳。じ―――くおっぱいっっっ!!!」 「じーくおっぱい!」「じーくおっぱい!」「じーくおっぱい!」「じーくおっぱい!」 彼こそは僅か数ヶ月でこの一大組織を築き上げた往年のフィクサード。 秘密結社おっぱいがいっぱい団代表である。 ●イヴさんの主張~そう言う問題じゃない~ 「……本当、男って馬鹿」 率直過ぎる感想は勿論『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)による物である。 流石に頷かざるを得ない。集まるも集まった物だと思う、小ホールを埋め尽くすおっぱいがいっぱい団。 その集会の光景はもう駄目だこの国。との念をただひたすらに刺激する。早く何とかしないと。 「でも……どんなに馬鹿でもフィクサードを放置は出来ない。 とりあえず、三高平市内に四人のおっぱいがいっぱい団のエージェントが入り込んでる。 最低一人を捕縛、あとは処理して」 ざっくりである。冴え冴えとした瞳には残酷なまでに冷徹な光が宿る。 「……主張は馬鹿でもアークと敵対するフィクサード組織。しかも相手のトップは元リベリスタ。 多分、あんまり余裕無いと思う。でも、一人でも残ればそこから相手の本拠地を逆算出来る」 以前集会に乗り込んだ時の駆け出しとは訳が違う。まず数が多い。 そして何よりエージェントと言うからにはそれなりの実力者だと見た方が良いだろう。 けれどこれ以上規模を拡大されたらそれこそ大問題である。放置することなど出来ない。 「タイミングがずれたお陰で蝮と関係が無い事が分かったのが不幸中の幸い ……今の内に何とかしないと、もっと厄介な事になりかねない」 唯でさえ日本中のフィクサード組織が最近活発化してきているのだ。 ここでこんな冗談の様な組織に何らかの成果などを出された日にはアークの尊厳に関わる。 イヴはまっすぐにリベリスタ達を見つめるとこう締めくくった。 「……馬鹿だからって油断しないで。頭の中身と戦闘能力は別問題。 市内だからある程度の無茶は効く。ここで出鼻を挫いておこう」 ところでイヴさん、馬鹿って四回も言いましたよ? 年頃の女の子の前であからさまなおっぱいトークは禁物である。 ●おっぱい四天王襲来~五人目は居ません~ 「――ったく、おっさんも無茶言うよな。四人で偵察とかよ」 「そう怒らないで下さいよ焔さん。信頼の証でしょう。あ、ブラ茶でも如何です?」 「静貴さん、ブラジャーからお茶を搾るのは流石に止めた方が良いと思うんだけど……」 「ハッハッハ、今日も良いおっぱいウォッチング日和ですなあ。私の心の紳士がいきり立ちますぞ」 繁華街を歩くのは四人の影。長身、普通、小柄、巨漢と身長もまちまち。 パンク、フォーマル、カジュアル、半裸と格好もまちまちで風景からは酷く浮いて……いや浮いてる所ではない。 最後に至っては完全に、一般の公序良俗に反する変態であった。 肉体こそが最上の鎧とでも言うつもりか、汗を弾く筋肉が眩しい。年齢も一番上っぽいのに何やってるのか。 「いきり立つなよ、枯れるぜ」 「ええ、バロンは少々格好も目立つんですから。あ、ブラ茶でも如何です?」 「……僕は一人で潜入したかった……」 「何を仰います御歴々、古来より四天王と言うのは四人で五人分以上の力を発揮すると決まっているのですぞ?」 「知らねえよそんなセオリー」 彼らは行く。道行く人々のブラを掠め取りポケットに詰めながら往路を悠々と歩む。 その自然過ぎる諸行に気付く物は無く、幻視が真実を一般社会から覆い隠す。しかし逢えて言うならば。 ……そこに居たのは四名の立派な変態であった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:弓月 蒼 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月14日(火)21:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●愛と平和~らぶ&おっぱい~ 世界は2つに分類する事が出来る。即ち、おっぱいと、それ以外である ――おっぱいがいっぱい団代表 じーくおっぱい。 思いも掛けずそう口ずさんでしまっていたのは、『イケメンヴァンパイア』御厨・夏栖斗(BNE000004)15歳。 如何にもおっぱいが最も輝いて見えるお年頃である。人これをして青春と呼ぶ。 一方その台詞を耳聡く聞き止めた『神斬りゼノサイド』神楽坂・斬乃(BNE000072)は殺気を込めた眼で睨む。 「まったく、困った変態どもだね……思い知らせてやらないと!」 意気込む彼女の傍ら、2人の男。否、漢達がとある談義に花を咲かせていた。 「おっぱいという響きには永遠を感じる。やわらかく、全てを包み込むような響き、おっぱい。 すべてのおっぱいを貴賎なく愛するのが心意気であるならば素晴らしい。 だが、おっぱいとは、誰のおっぱいであるかも重要ではないだろうか、そう例えば――」 「確かにその意見には一理在る。だが考えてもみて欲しい。 この場合個人の持つおっぱいと言う観点以外に、おっぱいと言う概念的価値も考慮するべきではないだろうか。 即ちおっぱいと言う語句から連想される各個人のおっぱい像が人々の心に与える安らぎを――」 「しかし、それらはやはりあくまで愛しいおっぱいがあればこそ「だが人は生まれながらにしておっぱいの」 「……敵にも味方にもおっぱいスキ、多いなぁ……」 熱く語る『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)、そして『常識を持った変態』西條・晃司(BNE001881)を、 横目で見た『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)が遠くを見つめる。 外でも内でもおっぱいおっぱい、時は正におっぱい世紀末である。 「四天王 相手にとって 不足なし」 5・7・5で拳を握り締めたのは『夕暮の海鳥』レイ・マクガイア(BNE001078) 眼前には人通り激しい繁華街と、四人の変態達が居る。悠々とブラを掠め取るそれを見ても、 彼女の内にこれと言った情動は湧き上がらない。ただクールにストイックに、敵は殲滅するのみ。 「こっちの男子をくみこんでおっぱい七英雄とかなんないよねー?」 『キーボードクラッシャー』小崎・岬(BNE002119)がぽつりと呟く。背後から聞こえる無数のおっぱい。 時代と場所が異なれば七英雄だったかもしれない味方のおっぱいコールに不安が隠せない。 とは言え、彼女の“希少価値”はこの戦いの趨勢を決める貴重な物である。 それを自覚すればこそ、油断なく果断なく、変態達と自分達の間に視線が通るのを待つ。 「今回は何としても作戦を成功させますよ!」 並々ならぬ決意をたわわに実ったおっぱいに込めて『鉄壁の乙女』大石・きなこ(BNE001812)がそう口にしたその時だった。 これを運命と言うべきか。まるで約束の地への道を拓いたモーゼの如く、偶然人混みが途切れる。 交錯する視線と視線。間髪居れず、動いたのは――斬乃。 髪をかき上げた仕草で胸元を強調し、あくまでナチュラルに胸を揺らす。ぐぬぬ、とか聞こえない。 「ん、おう何かすげえ良い女が居るじゃねえか」 四天王、焔が己を誘うおっぱいを嗅ぎ分けふらふらとそちらへ進路を取る。 余りにも自然過ぎて違和感を覚える余地もない。全く仕方ないなあ、と追従する響と渚。 だが、その先が妙に人気の少ない裏路地と気付けば話は別。嫌な予感を覚え足を止める。 「焔さん、ちょっと……何かおかしいですよ」 響が口にするが早いか、後ろに控えていたレイが大声を上げる。 「変態です! 近付かないで下さい! 皆さん、離れて下さい!」 雑踏を歩く人々がざわめく。誰が変態なのかと交互に見やるが、幻視に誤魔化され分からない。 しかし恐らくこれだろう。と一般市民の皆様が総じて距離を取った相手こそ、何を隠そうグラン・バロンである。 例え如何に風体を隠そうと、カイゼル髭のマッシヴガイは繁華街では、浮く。 「ここで戦えばこの近くに居るおっぱい達も巻き込む恐れがある。向こうで、やらないか」 そこに駄目押しで言葉を重ねる晃司。確かに周囲は男女混合。そこには紛れも無いおっぱいが在る。 ここで断る様ではおっぱい四天王は名乗れまい。代表してか、距離を取られたバロンが笑う。 「なるほど、確かに無辜のおっぱいを巻き込んではジェントルメン失格でしょうな。 宜しい、そのお誘い受けましょうぞ!」 見事な挑発に賞賛すら返し、おっぱい四天王が路地へと駆け込む。 無辜の市民はそのおっぱい故に救われたのである。じーくおっぱい。 ●おっぱい路地の死闘~アピールがいっぱい~ 「お前ら! 僕らが誇るおっぱいさんたちを見てみろ!」 「「「「「任せとけ!」」」」」 明らかに4人より多いですよね。あれおかしいな?的な答えが返る裏路地、男性陣の心は既に一つである。 しかしその熱気に退かず、先ずはレイが進み出る。両手を頭の後ろに回しグラビアポーズ。 張り出される巨乳が必要以上に存在感を示す。実に大きい。アームストロング砲もびっくりである。 「そのおっぱい、俺への挑戦と受け取ったァ!」 大艦巨砲主義、焔が無駄に燃え上がる。だが、そこに手を置く男在り。何を隠そうグラン・バロンである。 「ここは私が請負いましょうぞ。貴方にはより適した相手が居る様ですからな」 指差した相手は全身に力を漲らせ、凛とした眼差しで焔を見る。 ヤル気満々と言った斬乃の視線に男女の垣根を越えた戦意を感じ、思わず焔の頬に笑みが浮かぶ。 「ちっ、仕方ねえ。そっちは――」 任せたぜ、と言い掛けて目線が向くはアナスタシア。何やら切なげに自身の胸に触れ呟いている。 「あたし、ホントはある程度小さい方が良かったなぁ」 ナ ン ダ ト 「手前ェふっざけんじゃねえ―――!!」 焔が吼え猛る。小さい方が良いだと、世の女共が何で胸を大きくしたがると思ってやがる! だったら大きい胸の良さ、もっと語って欲しいな! 良い度胸だ覚悟しやがれ! ああでもないこうでもないと言い合いを始める辺りは所詮おっぱい四天王。焔、停止。 一方これらに全く興味をそそられない響の下には、見事に男ばかりが集まっていた。 「ちょ、何で僕の方ばっかり!?」 「「無個性だからだ!」」 「酷い!?」 夏栖斗の土砕掌が子供の体躯を吹き飛ばし、晃司の研ぎ澄まされた鉄球がこれを追う。 「我がおっぱいハンマーを受けてみろ!」 何でもおっぱいと付ければその丸みに意味がある様に見えて来る不思議。 「おっと、そうはさせません」 これを阻むは風の四天王、渚。如何にも優男然とスマートに鉄球を叩き落とすと、 がっちりガードを固めて来る。この連携は極めて厄介。だが、リベリスタ達には切り札が居た。 「制服は投げ捨てるものー、下はサラシだから恥ずかしく無いし!」 潔くもドヤ顔で上着を脱ぎ捨てた岬の姿に、渚のポケットからブラジャーが……落ちる。 「天使、だと言うのですか……」 大地に降り立ったエンジェルを前に人間に出来る事など何も無い。 ふらふらと渚と晃司がこの場で唯一のぺたん、岬の元へ引き寄せられる。嗚呼、哀しいかなロリコンの業。 「ナイスおっぱい!」 いや、2人じゃなく3人でした。親指立てて竜一がデジカメを回す。兄ちゃん、なんで皆すぐロリコンなってしまうん。 「ねえ、何か真面目に戦ってるの僕だけくない?」 「が、頑張って下さい!」 きなこの守護結界が全く生かされないまま何か時間が過ぎて行く。何でこうなった。 「ふはははは、そのおっぱい頂いていきますぞー!」 しかし何だかまったりしていたのはここまでである。バロンの斬風脚がレイに直撃すると空気は一変する。 変態とは言え仮にも四天王最強、その一撃は重く、激しい。 「待て! 確かに我らアークは君達と敵対している! だがアークにも君達と同じ想いの同志は居るのだ! 見るが良いこの素晴らしきおっぱい達を! 我々は分かり合える!」 晃司が叫ぶ。彼我を結ぶおっぱいと言う共通語で以って。しかし―― 「では、貴方達はおっぱいがいっぱい団を認めると?」 響の問いは鋭い。そう、彼らアークがフィクサードを認可しない限り、 おっぱいがいっぱい団とは相争う宿命。今は戦うしかないと残酷な現実が告げている。 「どっちが大艦巨砲か、教えてあげる!」 一方そう言って大胆にも胸元のボタンを外した斬乃の視界には焔一人しか写ってはいない。 普段より開放的になったおっぱいを揺らして距離を詰める頬には朱が上る。 まあ何だ、覚悟していても恥ずかしいのは恥ずかしい乙女心である。 「良いぜえ、そのおっぱいに免じて相手してやらあ!」 であればそこまでさせて眼を逸らしては男が廃る。焔が獲物である大剣が、斬乃のチェーンソーと交差する。 そんな中響はと言うと、一応陰陽・氷雨で応戦するも、やる気が足りない、情熱が足りない。 ストライクおっぱいの不在は彼から戦意を奪っていた。 「ターゲット捕捉、殲滅に移ります」 レイはその隙を見逃さない。渾身の斬風脚が響の体躯を抉る。痛みに顔を顰め退路を探す様に背後を振り仰ぐ水の四天王。 しかしてそこに焔との対談を切り上げたアナスタシアが風の刃を蹴り上げる。互いの連携が見事に噛み合う。 「これで1人撃墜だねぃ!」 走り抜けるかまいたち。切り裂かれた響が宙を舞う。予定通りに運んでいたのだ、ここまでは。 ●最強の変態~その名はグラン・バロン~ 「おっぱいを庇うのはいい男の証明だからな!」 「はっはっは、良いおっぱいエージェントに育つが良いですぞ少年!」 拳と拳、蹴りと蹴りが交差する。 アークでもトップクラスの耐久力を持つ夏栖斗が足止めしなければ、 彼らは既に敗北を突き付けられていたかもしれない。それは眼前に立ちはだかる脅威であった。 彼らにとって最大の盲点は、一言に尽きるだろう。最強の変態を余りに自由にし過ぎた事である。 先ず陥落したのは、最初に狙われたレイだった。数度の斬風脚はきなこの天使の息を悠に上回る。 アナスタシアが岬を庇っていた事も影響した。守りに回る人間が多過ぎたのだ。 岬が渚、斬乃が焔、それぞれに張り付いている状況で、自由に攻撃に移れるのは男性陣のみ。 そしてバロンはおっぱいを優先的に狙う。狙われたのは既にアピールを終えていた自由なるおっぱい。 ――アナスタシアである。 「夏栖斗殿、大丈夫!?」 「イケメンは、おっさんには負けないからね!」 軽口を叩くもお世辞にも状況は良くない。 夏栖斗がアナスタシアを、アナスタシアが岬を庇っている為に攻め手が止まってしまっている。 「このっ! 死ねロリコーン!」 「いいえ、私は無垢な魂に忠実なだけです!」 その分岬が渚を繰り返し殴っている物の、相手の回避の高さが災いして決定打まで届かない。 「良いよ岬たん、ナイスアングル!」 「あのっ、まともに戦って下さい結城さん!」 「え、いや俺ちゃんと戦ってるよ!?」 先入観は怖いと言うべきか、ダメージの深刻な夏栖斗を天使の息で癒したきなこの檄が飛ぶ。 が、この膠着状態に在って実は奇しくも最も輝いていたのが第五の変態、竜一である。 異なる二本の刃を器用に操り着実にダメージを重ねて行く。デジカメもビデオカメラも着実に回り続ける。 変態は強し。自己再生ときなこによるフォローの相乗効果で渚の残影剣の只中に在ってほぼ無傷。 しかし時間を重ねた事でかかった負荷は別の場所で軋みを上げる。 「どうしたそんなもんかお前のおっぱいはよぉ!」 「こ、のっ……好き勝手言って……!」 元より1対1では分が悪く、癒し手が1人と言う状況。ギガクラッシュの反動は地味に響いていた。 その上でギガクラッシュの放ち合い。よく保ったと言って良い。 だが地力の差は如何ともし難い。攻めに特化した焔の一撃に遂に斬乃が膝を付く。 「次はどいつだ」 焔の目線が捉えるのはやはりアナスタシア、さもありなん。 この場に巨乳は2人居れど、アピールしたのは彼女のみ。自然系おっぱい大人気である。 「くっ、仕方ない。貴様はこのおっぱい教教祖、西條晃司が相手をしよう!」 「な、おっぱい教……だ……と!?」 流石にバロンと焔、2人の相手は厳しいと見たか。 畳み掛けられる寸前、牽制に出た晃司のピンポイントが焔を射抜く。これが意外な化学反応を齎した。 「上等だ! おっぱい教ってこたあ異教徒ってことだよなあ!」 何か突然焔が怒り出したのである。ナイスアシストと言わざるを得ない。 しかし勿論と言うべきか、晃司を庇う余力など誰にも無い。男を庇う意志も、無い。 そして相手は火力に優れるデュランダルである。決死の交戦、運命の祝福を削りながら稼いだ時間約二十秒。 おっぱい教教祖、見事轟沈。 だが、このぽっかりと空いた時間が遂に勝機を引き寄せる。 「ボクに、触るなぁ――!!!」 ずん、っと振り下ろされたハルバード。これが決定打。風の渚がゆっくりと倒れて行く。 ――さらしを解いて。 「悪くない、人生でした……」 「わっ、きゃ――!?」 ロリコンの執念恐るべし。岬が全力の悲鳴を上げる。他方焔もまた、連戦を重ね満身創痍。 「あたしのおっぱいに触って良いのは、一人だけだよぅ!」 「これだけの、巨艦を前にして……がはっ!」 岬を庇う必要の無くなった、アナスタシアの魔氷拳が焔を貫く。この痛打で戦況はほぼ確定した。 水は毀れ、風は凪ぎ、炎もまた潰える。残るは一人。何一つ隠れないグラン・バロンである。 「ふむ、これは私も覚悟を決めなくてはなりませんかな」 無傷の巨漢が身構える。後に待つのは徹底的な消耗戦である。彼は耐え、彼は癒し、彼は闘った。 その猛攻は超合金並の硬さを誇る夏栖斗をすら追い詰めた程に。 「お前未来の僕見てるみたいでなんかいやなんだよおおおおお!!」 「先人から学ぶ事も必要ですぞおおおお!!」 若き変態予備軍と、最強の変態が拳を交わす。熱く、鋭く、猛々しく。 「あ、そういうの良いから」 なのに何故かトドメを刺したのが竜一であったのは運命の皮肉であろうか。五人目の四天王がここに居た。 「にしても……全員残っちゃったねぃ」 戦闘不能になったバロンを縛りつつ、アナスタシアが周囲を見回す。 誰も殺す気でかからなかった弊害か、四天王全員生存。これは連れて帰るしかない。 「何だか、とんでもない事になってしまった気がします……」 きなこが虚ろにぽつりと呟く。変態達を引き連れて、リベリスタ達はアーク本部へと進路を取る。 どうか纏めて仲間になったりしません様に。主に女性陣の胸中を、そんな思いで満たしながら。 ところでカメラはどうなったのか。それは竜一にしか分からない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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