●絶叫の闇 「うわアアアアアアッ――!」 悲鳴が走る。 とある施設の中、フィクサード達は闇の中を駆け抜けていた。 否。正確に言えば“逃げていた”というのが正しいだろう。 深夜の光無き通路を、息を切らして駆けているのだから。 「く、くそう! なんだ、なんなんだアイツは!?」 「いいから早く扉を閉めろ! バリケードを築くんだ――!!」 男達は一室に逃げ込み、内から鍵を掛ける。 そうして即座に部屋の中にある大きな物を探せば、扉の前へと運んでバリケード。障害物と成す。 が、 「穿て――」 扉の前で声が聞こえた。 野太い声だ。あるいは逞しい声、とでも言おうか。いずれでも構わないが、直後、 扉がバリケード諸共吹き飛んだ。 「な、なんだとおおおおお!?」 フィクサード達の目に映るのは棒だ。 太く、長い、鉄の棒。それが扉を突き破っている。 やがてゆっくりと引き戻されていくが、フィクサード達の顔には絶望しか残っていなかった。もはや扉は扉としての役目を成さず、もう一度バリケードを築く様な時間も無い。 故に、 「――」 来る。 破られた扉の破砕個所から顔を覗かせるは、異形の顔だ。 一言で言うなら牛。だが、その胴体は牛では無い。人だ。 牛の顔に人の体を持つ。そんな異形の者を、何と言うか。この国でも有名だろう。 「ミ……ミノタウロス……!」 奥歯が鳴る。恐怖に脳が震え、体が上手く動かない。 しかし奴は止まらない。バリケードの残骸を踏み躙り、フィクサード達へとゆっくり近付いて。 そして、 言った。 「や ら な い か ?」 イヤァアッ――! ●いまからいくよ 「そう言う敵が現れた。そして諸君らはその生贄に選ばれたのだ」 「お前は何を言っているんだ」 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達へと『ムッツリ・ヤクモッコリ』睦蔵・八雲(nBNE000203)が言葉を紡ぐ。その内容はとあるアザーバイドの事であり、 「ホモタウロス……あぁ外見はいわゆる神話上のミノタウロスを想像すれば宜しい。 とにかく、それがフィクサード所有の施設で暴れ回っていてな……」 「なら放っておけばいいじゃないか。フィクサードだろ被害を受けてるのは」 「今はな。放っておけば街へと行く可能性が否めん。 どうしても、どうしても放っておくことはできんのだ……」 いきなり顔を覆って嘆いているが、なんだ。どうした。どういう事だ。 「……こいつはな、己にとって有利な空間を作り出す能力を有しているのだ。 本物のミノタウロスよろしく迷宮……いや定義的には迷路だが、そこに囚われると著しく“男”は不利になる。あとは奴の名前から連想しろ。どういう奴なのか……」 何故言葉を濁した。おい。おい?! 「まぁ異空間とは言っても、一人脱出出来れば自動的に解除される欠陥品だ。 だから、色んな意味で生き残りたくば脱出に専念した方が良いぞ。――男は」 瞬間。未来の想像に耐えきれなくなったのか男性陣が一斉にブリーフィングルームの出口へと駆ける。 しかし予測済みだ。逃がさん、とばかりに八雲が出口をロック。閉じ込める。 「だ、出せ――!!」 「断るッ! 何故か私は有無を言わさずの強制同行なんだぞ! 同じ生贄同士、死地へと道連れだ!」 「知るかぁ――!!」 出口に殺到するリベリスタと止める一名。 幾度もの死地を乗り越えた者であろうと、この死地は嫌だと必死である。気持ちは分かる。 しかしもう駄目だ。もう決まっているのだ。 かの地にいるホモタウロスを倒さねばならぬのだと―― ●うぇるかぁむ…… 「フッ――ここの男共は旨かったな……」 どことなく満足げな顔で呟くはホモタウロスだ。 現地にてフィクサードを色んな意味で壊滅させた彼は、待つ。 「さぁ来い人間……我はここにいるぞ。全力を、賭そうではないか」 右手に持つは棒。いや、槍だ。 それは上位世界――ホモタウロス世界で造られた聖遺物。 男を捉える為に、男を穿つ為に、男を突く為に生まれたソレの名は。 「――漢槍ロンケヌスッ! これを持ちだした以上、我に敗北無し! さぁ来い人間! ていうかオス! オス来いオスゥ! メスとか知るかァアアア!!」 欲望全開のまま、ホモタウロスは異空間を展開。 待ち受ける準備を、整えていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月23日(金)23:23 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●生き残れッ 迷路だ。 どこまでも続いているかの様な、迷路が目の前に存在している。 逃げねばならない。 主に捕まっては成らない。 悪夢が待ち受けているから。 だと言うのに―― 「リアル合体現場……リアル合体現場はどこ……!?」 『インフィ二ティ・ビート』桔梗・エルム・十文字(BNE001542)に、 「はいよー! いくですよ、はいぱー馬です号! “ふ”の道を駆け抜けるのです!」 馬で駆ける『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)に、 「撮影撮影――!! さぁ時間がないよ! だから探すよ――ホモタウロスを!」 『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)の三名が各地にて捜索する……出口じゃなくてホモタウロスを。現場を。男性にとっては凄惨なる現場を! いかん! 女性陣が出口探す気が無――いッ!! 「ハッ……分かってたさ。いつかまた、お前と再開する日が来るんじゃないかって事くらいな……」 言うは『塵喰憎器』救慈 冥真(BNE002380)だ。 彼は夢見ていた。悪夢的な意味で。むしろ二度と見たくない的な意味で。 しかしそれでも邂逅してしまったのなら覚悟を決めざるを得ない。奴を、こちら――具体的に言うと尻――を狙ってくる悪鬼、いや、悪牛から逃げねばならないのだ。でなくば自分が生き残れない。なんか敵っぽいのが味方の方にも居る気がするが、まぁいい。そんなことより、 「逃げるんだよおおお!! あんなん相手にしてられるかボケェッ!!」 全力疾走で迷路を走る。どこまで行っても同じ様な光景が続くが、知らん。 “逃げる”覚悟は当の昔に決めている。凄まじく後ろ向きな決意だが、果たし通して無事なら良いのだ。良いのだ! 「そうだぜ、舐めんなよ? 舐めてんじゃねぇぞ牛如きがよぉ…… テメェなんざ牧場の檻の中で人間様に飼われてりゃ良いんだよ……!」 そして駆けるは冥真だけではない。『下っ端リベリスタ』三下 次郎(BNE003585)も同様に、警戒しながら着実に歩を進める。先を注意し、確かな安全を確かめた後に一気に足を進める様子は、流石苗字が“さんした”だけの事は、 「だ・か・らッ! オレの苗字は“み つ し た”だっつってんだろうがァ――! ッ、たく! 間違えてんじゃねぇよどいつもこいつも!!」 余程間違われる経験でもあるのだろうか。そう、彼の苗字の読みは“さんした”ではなく“みつした”である。どう考えても間違えそうな苗字である。ビジュアル的にも。 と、その時。次郎の耳に、少々遠い方から声が聞こえた。 野太い声色。聞いた事のある、嫌でも耳から離れない――ラヴリンス、主の声色だった。 ●Oh…… 『なんでも屋』城島 譲治(BNE004037)は焦っていた。 口に咥えた煙草の煙が呑気に揺れて天へと向かう。その視線の先に、居るのは―― 「フッ……まさかこうも早く人間のオスと遭遇するとはな……!」 ――ホモタウロスだ。 間違いない。奴だ。運悪く、自付を掛けた直後にいきなり出会ってしまったらしい。 故に思考する。この場をどうするべきか、内心は焦りながらも表面上は冷静に、 ……ば、馬鹿な……まさか、こんな至近距離に……どうする。逃げるか? いや無理だ。あのロンケヌスからは逃げられない。距離が近すぎる。では、どうする。どうするべきだ? 何をここで成すべきだろうか―― 高速の思考は己の限界にまで挑戦。されど思いつかぬ打開策。視線の先にては牛が動こうとしている。 だからこそ決断する。迷っている暇は無しとばかりに、“打開策”は無かれども、 「“対抗策”は……あるッ!」 地を蹴る。男性に対してのみ驚異的な能力を誇るロンケヌス。それが振るわれる前に、懐へと飛び込むのだ。 「ヌゥ――ンッ!」 牛が唸り、ロンケヌスを即座に掲げる。 されど譲治の方が速い。潜り込み、ナイフ片手に狙うは右手首。 「一流って奴の条件を教えてやる」 ナイフの柄を力強く握りしめ、再度地を蹴り、直上への勢いと成せば、 叫ぶ。 「どんな依頼だろうが――きっちり最後までこなし切る奴さッ!」 刃を抉りこませた肉先。神聖の力と共に手首を砕かんとせん勢いで抉る。 舞う血が視界に、動きの鈍る牛。さらにもう一撃叩き込まんと譲治は動いて、 瞬間。 「――」 服の胸倉を牛に掴まれた。 傷付いた手とは逆。逆手だ。掴まれるなり強引に引っ張り上げられる力が働き、体が浮く。 直後。衝撃が来た。壁に叩きつけられたのだ。背筋から全身へと“意外なほど”ダメージが通る。受身すら取れなかった。まさか、これは、 「ここでは我が主、我がルール! 故にある程度の運気は我に向いてるのよ――と言う訳で、いただきます!」 「ち、畜生ォ――!! 誰か、せめて誰か味方は居ないのかぁ――!?」 ラヴリンスの能力が牛に味方したか。絶体絶命の譲治。そこへ、 「ヘイッ! 待チナッ!」 陽気な声と共に現れたのは『森の妖精』ビリー ヘリントン(BNE003777)。 人間だ。ホモタウロスでは無い! つまり、味方―― 「パンツレスリング ノ タイム ダゼ ボーイッ!」 「ウホッ! この人間、ノリが良いッ……!」 敵だった。 ●【全年齢タイム】中 「いやぁ、遠くから良い声が聞こえてくるなぁ……」 耳に届くは何の声か。『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)は聞いていた。 なにやら「Oh! YesYes!!」と聞こえてくる。何してんだ。本来なら分かりたくもないが、彼にとっては別の話。なぜなら彼は“どっちでもイケル”からだ。何が? ナニが。 「なぁお前もそう思わないか――冥真」 「いやいいからこっち来るなって。こっち来るなって。こっち来るなって!」 吹雪が声を向けた先。少し前方を往くは冥真だ。 先程たまたま合流した訳だが、なにやら吹雪の視線が怪しい。 「そうか……だがな、俺は思うんだよ。二・三人なら誤射もあり得るだろってな」 なんの話だ、と思った矢先。吹雪の足音の間隔が変わったのを冥真は感じた。 リズムが速くなる。これは、走る予兆だ。何故走るのだ。誤射とはどういう事だ。考えが纏まるよりも早く――体は逃げるように自然と動いていた。走る。走る。走り抜ける! 「怖がるんじゃねぇ。むしろこう言う依頼は、楽しむもんだろうが!」 「どういう意味でだぁああ――!?」 いかん。味方の筈の味方に襲われる。何故だ。色々おかしい。 牛に襲われるのは当然の如く勘弁して欲しいものだが、だからと言って人間だったら良い訳ではない。故に逃げる。射程から逃れる為に角を曲がり、曲がり、常に視界から逃げ続ける。そうしていると、 「うぇるかぁむ」 ――眼の前に牛が居た。 前門の牛。肛門の薔薇とはよく言ったもの、え、そんな言葉無い? 知らぬ。 だが状況としてはまさしく“ソレ”である。ここもまた瞬時の判断の求められる場。 最善手は一体どこにあるのか――思案すれば、 「え? だって~……いや、なんでもないっ! わたしが危なくなったら秘伝のムッツリーニシールド使って尚且つ八雲さんのかわいい姿をカメラに納められるなんて一棒二尻、じゃない、一石二鳥じゃないとか思ってても絶対言わないんだからー! 絶対だよ! 絶対だからね!」 「声! 声に出てるぞ壱也! クッ、離せ! その手を離せ! 私はここから逃げるんだ!」 脇道より『ムッツリ・ヤクモッコリ』睦蔵・八雲(nBNE000203)と、その八雲の首根っこを掴んだ壱也が現れた。 止まる。状況の確認に、各々の動きが僅かに止まり、そして、 「やくもっこr、八雲さん早速出番だよ! 良かったね!」 「ケツ向けて逝って来い! 尊い犠牲は三秒間だけ忘れねーから!」 「君達今度こそ絶対許さなアッ――!」 壱也が八雲を突き飛ばし、その動きに合わせて冥真が殴って勢いを付ける。 吸い込まれる様に牛へと往く八雲。これで良い。少なくとも牛の方はこれで少しは時間が稼げるだろう。 しかし、 「大丈夫。大丈夫だって! 誤射! 誤射だから! なっ!」 「なっ じゃねーよッ!!」 吹雪が追いついた。 同時。否定される返事も余所に、吹雪は平然と“大丈夫”と言い放つ。何が大丈夫なのか不思議である。というか確信済みの誤射は果たして誤射なのか。 「誤射なんだよ! 狙ってるだけで誤射だから!」 誤射だそうだ。なら仕方ない。 「そうだぜ……全ては、仕方の無い事なのさ……」 その時、来た。 彼は望んで来たのだ。まかり間違っても偶然などではありはしない。 ここに。ココに。此処に。彼は、来たのだ。 「この快楽と言う名の聖地:ラヴリンスに、捕まっちまったんだからな」 ――『いい男♂』阿部・高和(BNE002103)は。 脇には何故か抵抗する次郎が抱えられていて、 「ま、待て高和! 話せば分かる! 話せば分かるから離せッ――!!」 「ああ。大丈夫だ……話さなくても俺は分かっている。だから布団を敷こう。なッ!」 「話を聞けやぁ――!!」 駄目だ本当に敵しかいない。どうしてこうなった。朝の占いでは一位だった筈だ。なのに、何故だ。死亡フラグだったとでも言うのか? これは、逃げる依頼では無かったのか。次郎の目に絶望が宿る。 味方。味方はいないのかと視界を巡らせば八雲が映って、 「なぁ八雲……この状況で信頼できるのはお前だけだ。なぁ仲間だろう? 俺達さ、親友だろう!?」 だから、 「俺の代わりに盾になって死んでくれよおおおお! 忘れねぇ! お前の事は忘れねぇから!」 「貴様ぁあああ! こっちも現在進行形でピンチだあああ!」 身代わりの擦り付け合いである。仲間割れとは本当にどうしてこうなった。 刹那。高和と牛。双方の熱い、視線と視線が交わる。 千の時より濃密に、万の言葉よりも激しく、たった一つ。熱意の視線だけを持って通じ合うのだ。 故に。 「や ら な い か ?」 「も ろ ち ん さ !」 ●【諸事情により一部ダイジェストでお送りします】 「んほおぉおぉぉおおおぉぉぉお八雲ォォッ! ん゛ぎっも゛ぢぃぃぃぃぃぃ!! おほっおおぉぉぉぉぉっォォォ!! いいいいいっ――――ぃぃぃぃっ!!! ぶほぉっ!!」 「ぐあああああ貴様、貴様ぁあああああ!!」 「そう暴れなさんな……それよりもどうよホモタウロス。 俺の、溜めに溜めたソニックエッジからのアレのアレをアレしてる力はッ!」 「フフ! 後ろから襲撃せずとも我は初めから準備万端であると言うのに……! アッ――!」 「冥真と同じラビリンスに入ってるまま突かれるなんて頭の中フットーしそうだよおっっ! 冥真、ああ! 冥真、冥真冥真クラマアッ――! KURAMAッッッ――!!」 「止めろォオオオ! 俺の名前を叫ぶんじゃねぇ阿部さぁああああん!」 「お、俺は諦めねぇ! 諦めねぇぞ!! 妹が、(脳内)妹が俺を待ってんだよおお! 俺は負けねぇからなああああ! (脳内)妹の為にもぉおお!!」 「四つん這いからのもーいっちょ――! もいっちょ――! さぁ来いよおおおおお!」 酷い。これは酷い。 そもそも何故殆どのメンバーが集合しているのだろうか。おかしい。本来なれば少なからずバラバラに出口を捜索。その過程で牛に見つかるのが恐らく普通の筈である。何故だ。しかも、 「こ、これがリアル結合合体……! あっ、す、すごくガチムチなホモタウロスが今度は逆に吹雪を組み伏せて伸し掛かって……お、おおっ! 吹雪があっというまにぼろきれに……あ、あと数ミリで……ランスが、エクスカリバアッーが……イった――!!」 「なんという非生産的な……でも高和さん、良い絵が撮れてる(現在進行形)のです……!」 「ウェヒヒ! いいねいいね! かわいいよさんしたくん……! こっち向いてこっち向いて――!」 女性陣。助ける気ゼロ、流石である! 桔梗は廊下の角からチラチラとガン視しつつ、イーリスに壱也はカメラをガン回す。響く悲鳴と真逆たる歓喜の声が心地よい。ついでに写真も連続して納めればご満悦の様子。口の端からは涎が垂れている。あかん。 と、瞬間。イーリスの目に、助けを求めるかの様に手を伸ばす一部男性陣の様子が映る。 震えている。必死感が、しっかりと伝わってくる。故にイーリスは、 「まさか……こんな広い迷路で皆さんと会うとは思ってなかったです……」 でも。 「出口は一人がみつければ、それでいいのです! だからそのまま殿、お任せするのです! はいぱー馬です号も見守ってるから大丈夫なのです! まる!」 助けて! 助けて! と言う声が聞こえてきたが、きっと照れ隠しだろう。分かってるから大丈夫である、とばかりに親指立てて笑顔で見守れば再度悲鳴が聞こえてきた。 ……そういえばはいぱー馬です号の性別ってどっちでしたっけ? 思考と共にちらりと見る。オスかメスか。オスだったら襲われるのだろうか。どうなんだろう。 「うふ、うふふふふ! これが普段虐げられている腐女子の力よ! まさか一人一人ずつの総ナメどころか、6【ピッ――!】撮影だなんて思わなかったけどね! おっと鼻血が……」 そして壱也は相変わらずの末期。 まばたきも殆どせずに目に焼き付けんと見る。見る。見る。らめぇ。 「ッ、壱也ちゃんアレ――!」 桔梗の声が飛ぶ。 「こ……これはまさか。ランスとホーンを同時に“使う”というの……!! そんな無茶な事出来る筈が――!」 「いや、出来る筈だよ! 彼なら、ホモタウロスなら!」 期待を向けた眼差し。視界の奥にて繰り広げられるはなんなのか。 牛が高和を背後から両脇を掴み、持ち上げ駆ける。そのまま他の者を踏み台に、天高く舞い上がれば、往く。角を尻に、さらにソコを支点として体を回転。牛の股間付近が高和の顔面付近へと行き――【全年齢タイム】。 「す、すごい! ホモタウロスの角がね。どどーんと高和を背後から襲い掛かって、そのまま深々パイルバンカーされたんだよ。なんて背徳的なファイティングシーン!! ていうかアレひょっとして」 それ以上いけない。 桔梗、ハイテンションで実況中である。どうしたの一体。 しかしまだまだ事態は収束しない。ここからさらに、 「皆! 一応出口見つけ――わぁ何この状況。素敵! ボクも抱いてッ!」 『ナルシス天使』平等 愛(BNE003951)が混ざって阿鼻叫喚。7【ピッ――!】である。更に酷くなった。 女性陣大歓喜。そろそろ、そろそろ誰か止めませんか。ねぇ! 「もしも……」 もし仲間が本当に危険だったら。 貞操などではなく、本当に命が危険だったら。 「助けるのです。死ぬのは、駄目なのです」 そう思う。イーリスは、本当に。心の底からそう思う。 思う、が、 「でも別に命の危険は無さそうなので、ビデオカメラ全力で回すのです! これぞ“ゆーしゃのせきむ”ってやつなのです! わたし、ゆーしゃですから!」 「そんな勇者、初めて聞いたわ俺」 背後で声。誰だ、と振り向けば――譲治だ。 「あれ? 途中でホモタウロスに襲われたと思ったのに無事だったの――」 「聞くな」 譲治は、言う。 遠くを見据えた目で、どことなく悲壮感を醸し出しながら…… 「何も、聞くんじゃあない……」 「えー? じゃあ話変わるんだけど、牛さんどうだった?」 「話変わってねーよ!」 嘆く。嘆きの声が、天をも突く。 あぁ止めろ止めろ触れるなと、嘆きに嘆いて―― そして終わりを桔梗は、 「何……!? 全員がドッキングして……ま、まさか、あれは――」 見た。 「――伝説の、七段お団子!?」 詳しい描写は【全年齢タイム】により省かれました。 ●一時間後 そうして闘いは終わった。 愛は出口を見つけ次第、その方向へと矢印を書き込んで居た為、出るのはスムーズだった。オープンザドアー。そして異空間より脱出した直後はリンチ、もとい攻撃の嵐。特に激しい一撃を叩き込んでいるのは、 「こいつは俺の分! 次のこれも俺の分! 次の次のこいつも俺の分だァッ!」 「右手に溜める、ノンケの波紋! 震え、燃え尽きるまで刻むぞノンケのビートッ! 正常色の波紋疾走(Normal -Color Overdrive)ッ!」 真っ先に被害にあった譲治と、マジックアローを全力で放ち続ける冥真だ。 パインサラダが待っている。もう何も怖くない。全力。全力である。 しかし一部男性陣にはまだ問題が残っている。何かと言えば。 「データぁ? んなもん残させてたまるかよ! ここで破壊させてもらうぜ!」 そう、女性陣が撮りまくったデータ集である。 次郎がカメラをボッシュートしようと叫びながら接近。破壊を試みて。 「妹がなぁ……囁いてくれてんだよ(脳内で)! “おにいちゃんあきらめないで”ってなぁ(脳内で)! この声が(脳内で)聞こえる限り、俺は諦めねぇ! 絶対に、絶対にだ!」 「何言ってるのよ! 配布する予定が詰まってるんだから今更破壊なんてさせないよ! 永久保存さ!」 「そうであります! 同士に分け与える必要があるのです! です!」 しかし次郎も大概である気がする。気のせいだろうか。 というか配布までするつもりか女性陣。 「よぉし! これから八雲の家で二次会やるぞ二次会! ここで付き合、突き合ったのも何かの縁だしな!」 何故言い直した高和。 どういう意味を含んだ。そしてどういう意味の“二次会”だ。 まぁ何はともあれこれで牛事件は解決。ボトムに再び平和が訪れた。多分。 終ッ! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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