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<兇姫遊戯>倫敦の蜘蛛の糸

●The Watcher
『パーティ』には賓客がつきものである。
 その様が盛大であればある程に、参加する人間も特別な人間となるだろう。
 それが『招かれた客』なのか『招かれざる客』なのか『密やかに参加している期待通りの客』なのかはこの際、問題にはならないだろう。
「紫杏女史への挨拶は良いのですか? 大佐」
「『教授』曰く、試験とは抜き打ちで行われるから意味があるものだ、との事」
「カレッジで教授に教わる学生の悲鳴が聞こえるようですよ」
 混乱に咽ぶ通りの状況を遠くビルの屋上から確認する五人程の一行は流暢な英語で冗句めいたやり取りを繰り返していた。酷く冷静な面々なのである。眼窩の光景は地獄である。六道紫杏――兇姫による狂気の遊戯はまさに特別な盛り上がりを見せているのだが――
「しかし、大したものではありませんか」
「うむ」
「これ程短期で『戦闘力を獲得する為の技術』を確立するとは」
「コスト問題と制御面の不安がクリアしたなら実に有益な研究だ。
 これだけの戦力を比較的簡易に用意出来るならば……教授が入れ込む理由が分かる。
 あの方の知的好奇心と、悪への探求は未だ留まる事を知らぬのだからな」
 倫敦の闇に座する『教授』の特別な弟子の研究は、彼の『目』とされる『大佐』さえも概ね満足させるだけの成果を伴っていた。逸脱した六道の執念は正道を行く誰もが追いすがれる領域には無いのだ。
 程度の差こそあれ、逸脱は『歪夜の騎士団』と変わらない。後宮シンヤが『伝説の殺人鬼』に魅せられたのと同じように、六道紫杏は『犯罪界のナポレオン』の後を追っている。
「教授に報告を?」
「うむ。ミス六道は『この後』の計画を練っているようだ。
 倫敦の本部にはそのプランの詳細と、必要な支援の要請が既に届いている。
 その意義があるか。どれ程のものか。『直接確認』しておこうかと思ったが……
 それも要らない杞憂だったようだ」
 暴れに暴れる『エリューション・キマイラ』。
 六道紫杏を創造の母とする神秘の忌み子は唯、賞賛と祝福を浴びて咆哮する――


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 10人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2012年11月19日(月)23:22
 YAMIDEITEIっす。
 十月五本目。十月ボスです。
 以下詳細。

●任務達成条件
 ・エリューション・キマイラ『マンイーター』の撃破

●大通り
 道幅の広い昼間の大通り。まだ付近に一般人は残っています。
 六道のフィクサードが解き放ったエリューション・キマイラにより周辺の人間に既にかなりの被害が出ており、パニック状態です。

●エリューション・キマイラ『マンイーター』
 六道紫杏の研究が作り出したエリューション・キマイラ。
 本体と言うべき上部球体は直径三メートル程もあり、人間をグズグズに溶かして無理矢理に塗り固めたような状態となっています。あちこちに犠牲者の『パーツ』が散見される『雑な肉団子』のようです。
 上部を支える下部には無数の肉蔦が生えており、移動や攻撃を行います。
 又、上部球体からも肉蔦を伸ばす事が出来るようです。
 以下攻撃能力他詳細。

・マンイーターをブロックするには最低三人の人間が必要である。
・マンイーターは三回行動を行う事が出来る。(但し移動は通常通り)
・超再生能力(毎ターンHPEP回復)
・溶解液(神遠域・毒・猛毒・死毒・致命)
・肉蔦(物遠複・HE回復)
・肉蔦縛り(物近単・物防無・ショック・呪縛・HE回復大)
・EX 捕食

●六道派フィクサード
 距離を置いて五人程のフィクサードが状況を観察しています。
 手を出すかどうかは任意ですが、弱い訳ではありません。

●『大佐』及び部下
 付近のビルの屋上から状況を観察しています。数は六道派と同じく五人程です。
 手を出すかどうかは任意ですが、とても危険な相手になるでしょう。

●Danger
 当シナリオはフェイト残量に拠らない死亡判定の可能性があります。
 予め御了承の上、御参加下さるようにお願いいたします。

 手強いし、グロいので注意して下さい><;
 宜しければご参加下さいませませ。
参加NPC
 


■メイン参加者 10人■
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
レイザータクト
四門 零二(BNE001044)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
クロスイージス
カイ・ル・リース(BNE002059)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
スターサジタリー
劉・星龍(BNE002481)
クリミナルスタア
晦 烏(BNE002858)
デュランダル
ノエル・ファイニング(BNE003301)
ダークナイト
一条・玄弥(BNE003422)
ダークナイト
熾喜多 葬識(BNE003492)
■サポート参加者 4人■
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ダークナイト
シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(BNE003405)
ホーリーメイガス
石動 麻衣(BNE003692)

●地獄に降りる蜘蛛の糸
 彼等が見たのは真昼の大通りの姿では無い。
 彼等が見たのは忙しい人々が行き交い、十一月の寒さと自身のちょっとした不遇や幸福に気をやる人間の世界では無い。
「こんなもの――」
『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)の見た世界は、まるで地獄のような風景だった。
「――こんなもの、作り出すのに、どれだけの犠牲を払ったってんだ……!」
 改めて見回すまでも無く、確認する必要さえ無く。その場所には悲痛な惨劇が溢れていた。
 約束された当然の平和と平穏を謳歌していた日常の世界は数分前までのその姿を完全に喪失している。
 恐怖のあまり駆け出した女が伸びた死の手にバラバラに引き裂かれた。
 恐慌して意味不明な叫び声を上げた男がその場でアスファルトの染みになる。
「こぼれ落ちた命の行く先は輪廻の淵か化物か――でも、不幸は突然訪れるものだよね」
 何処か虚無的に『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)の口元が歪んでいる。
「殺し方が雑なんだよ。ちょっと、気に入らない☆」
 泣き叫ぶ子供も、腰を抜かした老人も、誰も彼も。唯一つの例外さえ無く『地獄』には痛ましい死が溢れていた。克明に記録する事も叶わぬ最期。原型さえ留めぬ形で――突然降って沸いた、出会ってはいけない災厄に呑まれた数、既に多数。
 ジャック・ザ・リッパーに折りしも来日したかの『楽団』では無いが――

 ――神秘、これ慎重に秘匿するべし――

 ――歴史の『例外』足る異能者達が守り抜いてきた鉄則さえ彼女を六道紫杏を制御する事は叶わない。
(街中でこんなもの解き放つとハ、六道の奴ら一体何を考えているのダ!)
 激する『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)が視線をやった彼方には醜悪なる『肉の集合体』が存在している。
 全く作り手の心根を表すかのようなその姿は人間のパーツというパーツをグズグズに溶かして大きな球に塗り固めたようである。
「……しばらく肉団子食べられないのダ」
 流石のカイもその姿には些か辟易せずにはいられない。
 生物が生物である以上、人間が人間である以上――本能に訴えかける絶対的な忌避は『必要なもの』なのである。
 精神構造上の痛覚とも言えるそれは『人間が人間である為に必要不可欠なパーツ』である。
「六道のキマイラ……ここまで強大化するとは。やはり『根源』から断たねばなりませんね」
 神秘探求同盟における大アルカナ――第二十位『審判』を拝した『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)の声は全く、その存在に相応しく何処までも冷徹で何処までも単純な一つの指標(ギルティ)を示していた。
「まずは……この醜悪なるモノを。然る後、やがてはこの悪夢を産み落とすその『母』も」
 道を踏み外し、狂う事さえ『最早何とも思わない』存在は人間であって人間ではない。
 紫杏なる『逸脱者』は人の形を――可憐なお姫様の形をした悪魔に過ぎまい。
「テロだ! 爆発物を使用する可能性もある! この場から退避せよ!」
「あっちに逃げて下さい! 子供と逸れない様に親御さんは気ぃ付けて!」
 目前の化け物、異形を前にした『闇狩人』四門 零二(BNE001044)の呼び掛けは全く陳腐なものになった。声を張り、誰かを救おうと動く『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)の担保出来る『量』等たかが知れていたに違いあるまい。さりとて、警官の紛争をした彼等が混乱の場に楔を打ったなら、非常識に我を忘れた人々は暗い海に浮かぶ板切れを掴もうとするように『常識の世界の守護者』へと身と心を寄せるのだ。
「どうする……それでも避難には時間が掛かる」
「言うまでもない。食い止めるのみ」
 短く応えた零二に「そーだな」と頷いた猛は両手の魔力鉄甲を気合にガチンと打ち鳴らした。
「真昼間から派手に大暴れとか、勘弁して欲しいけどよ。
 ……ああ、来賓客も居る様だしな、厄介極まりねぇのは確かだが……
 シンプルに言えば、あんな化け物ぶっ潰す――!」
 そう。集まった十四人のリベリスタが今日の任務で為すべきは今更言うまでもない一つであった。
「六道のお姫様の研究もついに完成の域まで高められたのでしょうか?
 この事件の頻発は誇示でしょうか? さながら研究成果の発表会とばかりに」
『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)にも狂人の思惑を完全に推し量る事は不可能だったが、結論は分かり易く『砕く』のみ。
 白昼の大通りに出現した異形をアークは識別名『マンイーター』と呼んだ。国内主流七派が六道の『兇姫』六道紫杏の研究によって産み落とされたエリューション『キマイラ』は、神秘界の謂わば『新種』である。紫杏の遊びの為に放たれたそれは見事な惨劇を引き起こし、リベリスタ達をこの現場へと急行させたのだ。
 遭遇戦を強いられた状況は容易くないが、リベリスタ達は全員が『分かって』ここにある。
 短いやり取りの間にも彼等は状況を補足する為の戦線を目まぐるしく構築している。
「裏でなにやら六道やら大佐やらが怪しい感じに蠢いてやすなぁ」
「犯罪のナポレオンの懐刀がお出ましとは、兇姫様のお遊戯会もきな臭くなってきやがった」
 此方は飄々と何時もの露悪的な調子を崩していない。『√3』一条・玄弥(BNE003422)の呟きに、背後に『居る』者を推察した『足らずの』晦 烏(BNE002858)が応えた。
「ま、しやかてあっしは実際どっちでも宜しい。
 争い事に面倒事、おぜぜの種で大変結構でさ。何時も通りに殺っておしまいってねぇ」
「引き付けます。その間に退避と戦闘準備を――」
 急行、即戦闘の現場に悠長な時間は無い。
 パーティの手が遅れる程に被害は広まり、勝利の確率はその掌から滑り落ちよう。
 お喋りの時間も一杯で――
 ワン・オブ・サウザンド――千の内の一丁を素早く構えた星龍が間合いに呪弾の線を引いた。
「挨拶代わりってな。せめて――鈍っとけ!」
 後衛ながらここは距離を詰め中衛に当たる位置に収まり、鮮烈な神気による衝撃を与えんとするのは烏である。
(まただ。僕達はいつも後手に回って犠牲を出すことになる……
 こいつを倒せば『これ以上』の犠牲は止まるけど、『この前に』犠牲になった人は返ってこないのに!)
 二つの直撃の隙を縫い、『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)が異形目掛けて真っ直ぐに駆けていく。
 戦いながら、立ち回りながら理想形を作る動きには躊躇もミスも許されない。
 それを分かっているが故に竜一は迷わず前に出て、悠里は圧倒的な存在感の前に踏み込み強く拳を握り締めた。
「おうおう! 設楽悠里の参上だ! 外道めが、滅びられずに居られるか!?」
「茶化すなよ――」
 自身を一般人の盾にせんとする竜一に言葉程の軽妙さは無い。
「――僕は唯、お前達を叩き潰す! 六道ッ――!」
 刹那、言葉を切った悠里は迸るような気合の一声と共に疾風迅雷の武技武闘を繰り出した。

 おおおおおおおお――!

 敵の出現を何と受け止めているのだろう。
 哀れな生物はそれを果たして敵と認識しているのだろうか。それとも唯の餌としか見ていないのか。
 キマイラならぬリベリスタ達に異形の思考は知れなかったが――その声が絶望的な怨嗟を帯びた代物である事は明白であった。
「……一体誰が被害者なんだか」
 六道以外の誰が加害者と呼べようかと――烏は小さく嘯いて咥えた煙草からゆらり紫煙を揺らめかせた。
 戦いが始まる。開幕のベルを待たぬ内、戦いは確かに始まったのだ。

●インターミッション
『戦い慣れている』

 焦れて歯噛みしている六道の研究者達の一方で、リベリスタ達を観察し冷静にそんな評価を下したのは――離れたビルの屋上から戦況を見つめるもう一組の『The Watcher』セバスチャン・モラン大佐とその一行であった。
「……予想以上の戦闘力ですね」
「個々の戦闘力は想定の範囲だ。我々の脅威足り得るレベルではない」
 携帯端末を操作しながら言った部下の一人にモラン大佐は短く応えた。
「だが、動き方が――やはり『戦い慣れている』。
『教授』に言わせればこれは単純な足し算にはなるまい。
 もっと数学的で、より高度な『技術的戦闘』と言えるだろう」
「確かに……」
 キーボードを叩く手を止め、部下は呟いた。
「純戦闘力数値においてエリューションキマイラ『マンイーター』はリベリスタの総計を上回っていますね。
『モリアーティの方程式』から我々が叩き出したキマイラ側の勝率は64%。
 状況はとてもそう見えないのが事実です」
「データが正しくなかった、という事だ。我々はアークのリベリスタの戦闘力を純数値以上に把握してない」
「勿論」
 最も完全なる頭脳を持つ一人である『教授』の計算が狂う事はほぼ有り得ない。
 つまる所、不完全なデータでは不完全な結果しか導き出せないという事である。
 尤も、あくまで可能性を測る計算では――例外の発生を常に排除する事は出来得まいが。元より誰も考えては居なかった。誰一人その可能性を予期しては居なかったのだ。『あのジャック・ザ・リッパーが極東に沈む』等という事態は!
「何れにせよ、そう油断出来る相手ではないという事でしょう」
「唯の確認に過ぎんがな」
 モラン大佐は奮闘を繰り広げるリベリスタを見て口元を歪めた。
 遥か遠く『此方』を見るカイと、葬識と目が合ったのだ。

 ――気に入ってもらえる戦いが、できるかな?

 葬識の唇の動きを読んだモラン大佐は楽しそうに笑っている。

●怒涛の日
「恐ろしイ男なのダ……」
 十分な距離に隔絶されて尚、自身等の動向に気付いていた『その男』にカイの表情が少し強張った。
「そう? 面白いじゃん?」
「外見はちゃんと覚えておいたのダ。後、我輩の美しい姿もアピールしておいたのダ」
「此方に仕掛ける心算が無いというのは救いですがね」
「高みの見物をしてる奴らは、殴り飛ばしてえがな。今は、そん時じゃねえ……クソが」
「俺様ちゃん達が彼にとってのホームズになれるといいね。スコットランドヤードのように無能じゃないってトコを見せとこうか」
 葬識とカイ、猛、感情探査で探りを入れた星龍のやり取りは彼方の敵を見つめてのものである。
 目前の危険から注意を逸らさずに嘯いた、そんな一瞬のやり取りも響き渡った異形の奇声に中断される。
 戦いはその激しさを増していた。六道が口惜しく悔しがり、モラン大佐が興味を示したリベリスタの戦いはこの日、まさに絶好調といった風であった。
「良い趣味だな? 制作者の捻れが透けて見えるが――まだ真っ当か。意味が分かる」
 口の端に嘲笑を張り付けた『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)の小さな身体が宙に踊る。
 開いた翼をはばたかせ、低空を飛んだ彼女の手にした銀の煌きが敵影を指し示せば――その周囲を覆った呪縛の陰陽は敵の巨体さえ、封印の中へと閉じ込めるのだ。如何な膂力をもってしても簡単に破れはせぬその網は『口の悪い普通の少女』と同じ程度には喰えない手強い状況を作り出している。
「皆で帰らなきゃダメだよ……一人でも多くね」
 魔弓より放たれた『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(BNE003405)の黒い閃光が深く異形に突き刺さる。
 リベリスタ達の攻勢と戦略が奏功した結果、既に周囲の一般人は殆ど避難を終えていた。
「近付き過ぎるな! 距離を保て、状況を堅持すれば問題は無い!」
 人々を避難させるに尽力したこの零二も戦線に合流し、前に立つ事で敵の脅威を食い止めている。
(このままならば……)
 敵の能力を見極める零二の眼力とその様子を見逃さぬ超直観は戦況の優位を確信していた。
 鈍重な外見とは裏腹に予想外に素早く、予想外に動きの軽いマンイーターだが、現時点までにおいてはその脅威は存分に発揮されては居なかった。論理戦闘の一つの形として『徹底』が挙げられるのは言うに及ぶまい。
(『経験を積んだ複数リベリスタを凌駕する強さ』を容易に、人為的に作り出す……か)
 肌を突き刺すプレッシャーにも敵を自身に引き付けんとする零二は何ら怯まない。
「危険過ぎる……だが、やらせん相手が、誰だろうとも……!」
 究極極限の状況下において何事も『不徹底』はナンセンスな結果を生み出す事が多い。それも事実である。そういう意味において――そういう観点において今日のリベリスタ達の思考は、戦闘動作は実に冴えていた。全くもって見事なまでに冴えに冴えていた。
 ユーヌのみならず、シャルロッテのみならずである。
「血に塗れ、臓腑に塗れようと、やる事をやるだけだ。
 犠牲者達よ、存分に血肉とともに俺を君らの憎悪に塗れさせろ。
 いつかその憎悪で、六道の道を断つために……!」
「我が運命は世界の為に。我が槍は世界の敵に。丁度、これ以上の的は無い――」
「――くけけっ、殺ったるでぇ!」
「醜悪」
 肉体のリミットを鑑みる事無く、まさに破滅的な『二閃』を繰り出す竜一然り、重戦車の如く他者の追随を許さぬ破壊力を誇るノエル然り、漆黒を纏い闘争に身を震わせ『実に合法的に何かを切り刻む』今日に爛々と目を輝かせる玄弥然り、饒舌な――良く回るその口に酷薄な一言だけを張り付けた葬識然り。
「は――!」
「あぁ、クソ、正気度削られそうだが……四の五の言ってられねぇぜ! 邪魔なら、障害はブッ叩く! それだけだ!」
 気を吐いて雷光纏うガントレットを振るう悠里然り、噛み付くように怒鳴って強かに叩く猛然り。
「一気に、攻めましょう」
 状況に魔弾で楔を打つ星龍然りである。
「ま、一気に押し切る以上の方法は無いわな――」
 二四式・改に次々と轟音を吐き出させながら、烏が言った。
 無限の再生能力を持つマンイーターにリベリスタ達が加えた集中攻撃は実に見事なものだった。
 素晴らしい速力と技量を併せ持つユーヌは八面六臂の動きでマンイーターを呪縛の無間地獄へ叩き込む。シャルロッテ、玄弥の魔閃光は多少なりとも異形の力を殺ぎ、悠里、猛の電撃は傷んだ肉体を焼く。烏の放つ神気閃光はマンイーターを鈍らせ、B-SSは激しくその体を破壊する。まさにこの敵には好相性を発揮する竜一、ノエルのデッドオアアライブ、葬識、状況に応じてこれまた玄弥等の奪命剣は無限の活力を持つ敵の再生能力を阻んだ。まさに状態異常のフルコースとも呼ぶべき連携攻撃は『動き出せば容易に危険たる敵を相当割合で完封する』という見事な戦いの譜を作り出していた。
「……しかし、見た目通りの化け物だな。こりゃ」
 それでも、マンイーターの異常なまでのタフネスは圧倒的優位に立つパーティさえ焦れさせるに十分であった。
 アーク最強レベルと呼べるリベリスタ達の理想的総攻撃を受けながらも崩れ落ちる様子は無いのである。肉はひしゃげ弾けて飛び散り何とも知れぬ汚液はアスファルトを爛れさせタールを溶かし黒い染みを作り出している。それでも、マンイーターは倒れなかったのである。
「――しまった――!」
 長く続く戦闘の先に、ユーヌが術を外される。
 本能とも呼ぶべき驚異的な化け物の意志力で星龍の呪いごと呪縛を、致命を、それ以外をも弾き飛ばしたマンイーターはユーヌの呪印封縛を掻い潜るとまさに強烈としか表現しようのない猛攻をリベリスタ達に叩き込んだ。
「く――ッ!」
 身を捩る悠里を肉蔦が追う。
 ぶくぶくと泡立つ肉球より複数這い出たそれは一気にリベリスタ達に襲い掛かり、傷付けた分だけ自身の体力を賦活した。
 信じられない程のタフネスに異常としか呼びようのない再生能力。肝胆寒からしめる現実はどれ程パーティが尽力しようとも埋められぬ『地力の差』を意味している。
 唯一瞬、封印を外された事から生み出された事態はパーティを一気に傷ませ、戦況を黄色信号へと叩き込んでいる。
 しかし。
「――ここは、絶対に抜かせなイのダ!」
「ありがとです! さおりん、あたしがんばるです!」
 パーティの生命線、回復支援担当の『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)の前には堂々とカイが立ち塞がる。
 異能者とて縛り付ける肉蔦の呪縛も絶対者たる『おとなこども』石動 麻衣(BNE003692)を阻むには至らない。
 聖神の奇跡が多重に降り注ぐ。
「時間を掛ければ危険なのダ! このまま――一気に叩くのダ!」
 暴れに暴れる異形を今度こそ一気呵成に押し切らんとカイの声に応えたリベリスタ達が地面を蹴った。
 肉を裂き、悪意を解体(バラ)し、抱く無明を焼き尽くす――
 きばのないけもの――リベリスタ達の戦いは壮絶に生まれてはいけなかった命を呑み喰らい、千切り滅ぼしていく。
 止まらない。止まる気は無い。そして、止められない。
「落ちろ――ッ!」
 咆哮し、肉球本体の中央に大洞を開けるマンイーターに吠えた悠里が挑みかかる――!

「――決まったな」

 リサーチは十分だ。
 戦場には決して届かぬ小さな声が灰色の空が見下ろす兇姫の遊戯場を見極めた。
『アークの戦い』は予想以上に重要な情報を彼と『倫敦の蜘蛛の巣』にもたらした。
 その意味を戦場に立つ勇者達は知らなかったけれど。
 やがては、何れは――この日本に『蜘蛛』は、来る――

■シナリオ結果■
大成功
■あとがき■
 YAMIDEITEIです。

 大変良かったです。
 プレイングも筆のノリも個人的には文句なし。
 劇中でモラン大佐一行が触れている通り、マンイーターはボス敵なので能力は相当かなりえげつないのですが、相性やプレイング、能力作戦等見た時にこれはどうしようもないので完勝です。むしろこれで(こっち側が)どうにか出来る場合、オープニングが騙しだと思うので完封です。
 やみは相当無茶苦茶な悪夢能力をHard以上の敵に与えますが、それは書いてある通りなのできちんとどうにかすればどうにかなるものです。
 被害些少、戦闘完封。大成功という事で報いようと思います。お見事。
 代わりに『倫敦の蜘蛛の巣』のアーク評が向上した気もしますが、まぁ些事でしょう。えへ。

 ところで、今回はダイジェストの繋ぎ方等カットの仕方に凝ってみました。
 視点変化というかインターミッションのアプローチ、萌えません?

 シナリオ、お疲れ様でした。