●熱愛世界にこうべ垂る 「相変わらず、この世界は寒いのであり〼な」 まったくもって、忌々しい。口ぶりからはそう取れるのだが、顔には笑みが張り付いている。否、口元にだけは笑みが張り付いている。張り付いている。仮面のように、張り付いている。 秋も深まり、夜ともなれば肌寒さを感じる程度にはなっているものの。男のそれは、季節に向けた情緒とはまた違った風だった。 まるで極寒の中にでも居るかのように、吐息は白く。白く。染まっている。 「そんなことよりも早く話を進めて欲しいのだけど」 急かし反応したのは、正面に立つ女だった。彼女も同じように、白い吐息を履き続けている。 奇妙な格好だ。眼帯をつけて、看護服には似合わないピンヒールブーツ。片腕には柱とも言える大きな注射器を抱きかかえている。コミックスの中からでも飛び出してきたかのような、現実味のない見かけをしていた。 「なに、難しいことではないのであり〼よ。要は反抗勢力を叩いて頂きたい、えるまりお」 えるまりお。そう呼ばれた女は眉をしかめた。男のそれと違い、彼女の顔は読みやすい。つまるところ、不可解。 「私ひとりで底国人の組織を潰せと? 八人そこらでぜるうぇいんを打倒するのでしょう?」 「ええ、ええ。まさかそこまでとは。要は威嚇であり〼な。兵を割く被害よりも、事が治まるまで静観すべし。そう思わせればよいのであり〼」 「……なるほど、ね。でも、どうやって?」 「簡単なことであり〼よ。彼奴らは底国の―――時にここだ。来ねば殺す。全て殺す。なあ、小娘?」 何を、と。その視線から読み取ったのだろう。なんでもないのだと男は返すのだが、どうにも。白々しい。 「……まあ、いいわ。あららる・ぱを手伝えというのが勅命だもの。従うしかない。だけれども、ねえ」 どうして、自分でやらないの。 その質問に、男は答えなかった。 ●憂鬱世界にかいま見る 「あららる・ぱの関係と思われるアザーバイドが現れるわ。討伐に向かって欲しいの」 人名と思われる奇妙な単語と共に、予言の少女は簡潔に内容を伝えた。 あららる・ぱ。夏の頃に、人を食らう化物を町中で放したアザーバイドの名前である。直接の戦闘を交わしたわけではないのだが、強力なアザーバイドを従えていたあたり。実力者であるのは確かなのだろう。 目的はわからないが、あれは人を殺して回っていた。どのような理由であれ、アークとしては放置できない人物だ。 と。モニターに映像が流れ始めた。ひとりは男、あららる・ぱ。正面に立つのは、女だろうか。 「リベリスタを寄越せ、さもなくば殺して回る。人質、というより挑発ね」 挑発。挑発。誘われている。だが、それがわかっていたところで。それを理解していたところで。飛び込むしかない。その交換条件は、けして冗談ではないのだろうから。 「よって、この女型アザーバイド。えるまりおの討伐をお願いするわ。安い喧嘩を売ったこと、後悔させてあげて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月01日(木)23:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●殉教世界になにを見る 実のところ、あれから一度も故国には帰っていない。当然だ。任務を全うしていない以上、私の仕事は終わってなどいないのだから。ただ、少々事情が違ってもきているのだ。何度となく咒士共は進捗をせっついてはくるものの、奴らは理解をしていない。最早、話の中心が自分達にはないのだということを。あのまほうつかい共は分かっていないのだ。 看護師。その呼び名が変更されたのはいつのことだっただろう。詳細は知らないが、それに対し何を意見するわけでもない。変わったなら変わったまま、まあそれはそれ。呼び方など、今回の件には関係しない。ようはつまり、それが敵だということだけだ。 性懲りもなく。それはそれとして。意外と、服飾文化の近いものだ。それは戦装束と呼べるものではないのだが。ユーヌ・プロメース(BNE001086)は思うものの、リベリスタに言えた話ではない。滑稽で、馬鹿馬鹿しい。売り女には二束三文でも足が出る。押し売るなら場所を選ぶべきだ。場末の酒場すら釣り合わず、弁えないというのならば仕方がない。手間賃は不要。渡し舟に六文銭。きっかり丁度にくれてやろうか。 それが、なにもしないというのなら。自分達を自分達だけで完結してくれるというのなら。取り立てて目くじらを立てるわけでもないのだけれど。なのだけど、誰かを殺すというのなら。こちらに害となるのなら。行くしかないのだろう。立ち向かい、討ち滅ぼすしかないのだろう。何を企んでいるかは知らないが、蘭・羽音(BNE001477)のすることはひとつである。ただそれを。異世界異人の彼女のことを、止めるのみ。 アザーバイド同士で手を貸したり、命令された上下関係が存在する。虎 牙緑(BNE002333)には思っても見なかったことである。今回の手合いもそうであるらしい。えるまりお。勅命で動く。それを、それらを。次々と、続々と倒していけば。倒してさえしまえば、件の軍人。あららる・ぱにもその内行き着くだろう。だから難しいことなど考えない。目の前に立ち塞がる看護師もどき。そいつをぶっ飛ばしてみるだけだ。 エルヴィン・ガーネット(BNE002792)は悩む。異界のナース。素敵な響だ。魅力的と言ってもいい。蠱惑的で甘美だ、それ自体は素晴らしい。ただ、加虐趣味というのが頂けない。どうにも、頂けない。残念なことに、自分に虐められて悦ぶ趣味はないのだ。話を合わせることができない。お近づきになれたとしても、互いの主張は混ざるまい。実に惜しいことだが、敵は敵。縁がなかったのだと諦めて、お引取り願おうか。 えるまりお。確かそんな名前だったと、晦 烏(BNE002858)は記憶していた。異世界。アザーバイド。虐待看護師。えるまりお。情景から察するに、向こうは酷く暑い世界なのだろうか。秋も暮れて来たとはいえ、まだまだ極寒を感じるには早い季節だ。それはつまり、こちら側と向こう側との環境の違いであるのだろう。しかし、まだまだ秋。秋なのだ。この国は、これからまだまだ寒くなる。このままのお帰りを、お薦めするが。 「何度も来るあたり……いかにも怪しいですね」 綿谷 光介(BNE003658)は訝しむ。以前の報告は聴いている。犬を放ち、大量殺人を目論んだ憲兵。あららる・ぱなる人物。飼い犬を下してからは音沙汰のなかったものの、それに関しての目的は不明。今回姿を見せたそれ、自分達を挑発する行動の理由も。何も。分かってはいない。ただ、それに乗らねば人命が危ういことは理解している。まずは、目前の戦いに集中を。 「そちらにも事情はあるようですが、この世界の防人として、こちらも見過ごすわけには行きませんので」 前回、ぜるうぇいんなる猛犬が暴れたそれ。あの事件のように被害者が出ていない、死傷者が出ていないだけ、水無瀬・佳恋(BNE003740)はマシなレベルだと受け入れる。だが、それで。この看護師が安全という保証には全くならない。殺すというならば、するのだろう。どちらにせよ、放置していいものではない。 前回の事件。異界の犬。ぜるうぇいん。その討伐結果における報告書には、鹿毛・E・ロウ(BNE004035)も目を通していた。異界。似て、全く非なる世界。その帝より勅命を賜り、縊る。縊る。憲兵。正体不明。あららる・ぱ。あららる・ぱ、縊いて参れ。帝が絶対なのだろう。君主に頭を垂れる異界のそれ。きっと、世界の底である自分達の死など毛ほども良心は痛むまい。しかしまあ、白いのは良い。趣味は、合いそうだ。 ●待機世界にゆめを見る それでもあくまで、表向きの行動は咒士共のぎしき幇助である。しばらくはこちらに身を置く必要が出てきた以上、その体裁は保たねばならない。それを繕う必要はあるのだが、しかし優先すべきは勅命である。言外の裏。その正しくを読み、それに従うのも我々の役割だ。桜帝はお優しい。ならば厳格さは、下々が持ちうるべき業である。 そこに辿り着く過程。それを探し出す順序。それら一切を割愛しよう。あの異人は場所を時間を行動を指定しているのであり、そこに行き着くルートは物語において蛇足でしかない。つまりは、リベリスタらがそこに足を踏み入れ。そのずっと前から女はそこで待ちぼうけていた。 彼らを見るなり。まるで積年の恋心が叶ったかのように。妖しく、艶やかに。彼女は笑ったのだ。 えるまりお。それが開戦の合図である。 ●熱愛世界にだれを見る そういえば、あれがおかしなことを言っていた。何故私が戦わぬのかと。馬鹿馬鹿しい。この期に及んで、その意味を理解していないとは。自分のおかれた状況を把握できていないとは。まったくもって、呆れたものだ。私が戦って、この行動にどんな意味がある。なんの遂行になる。勅命の犬。されど、知を巡らせねば。どちらにしても同じ事か。 痛みの感じないことは、相手に優越感を与えないということだ。そして、失われていく己を実感できないということだ。 余裕。その態度を見せようとしたのは、正しいのかもしれない。苦痛を快楽とするならば、それを叶わぬのだと思わせれば良い。そうした牙緑の判断は、確かにその異人へと違和感を与えてはいた。 ただ、蝕む様は。痺れは、重圧は、気怠さは。それを誤魔化せない。痛みを伴わぬ虚栄も、身体を侵す毒には逆らえないでいた。だから。笑う。 看護師は笑う。愉悦だと笑う。笑いながら恐ろしいものになる。もっともっと、恐ろしいものになる。より速く、より力強く。その刺突に特化した細く長い針の先が、気づけば牙緑の胸へと潜り込んでいた。 痛みはない。ただ金属が自分を貫いている感触。冷たい。冷たさは、痛みだったろうか。何かを。巡らせた頭から出てきたものは問い。 「なんであららる・ぱを手伝うように命令されたと思う?」 「……さあ、知らないわ」 口から何かを吐いた。それは赤く、赤い。それでもまだ痛みは脳を刺さず。ただ冷たい。冷たい。 烏の放った粒弾が、えるまりおの持つ大きな注射器に命中した。たたらを踏み、刹那停止する彼女。それを前衛の仲間は見逃さず、強襲していく。だが、狙っていた効果は得られなかった。 注射器。大きな、得物。刺突は元より、恐ろしいのは事前情報として受け取っていたその性質である。二種の混合毒を使い分けるその大器。せめて崩せればとは模索したものの。やはり武器。武器。そう名乗る以上、そうである以上。容易く打ち砕けるものではないのだろう。 それでも、攻撃だ。思う意味は叶わずとも、最終目的には続いている。攻撃は、攻撃なのだから。 意識を研ぎ澄ませた。音。音。声は、呼気は、衣擦れは。ないだろうか。自分達以外の。あららる・ぱ。あの男を警戒する。どこかで、見ているのだろうか。何にしても、いずれ倒さねばならないやもしれぬ相手だ。ここで手の内を全て見せるわけにもいくまい。 銃弾。剣戟。怒号。愉悦。足音。足音。喧騒。喧騒、喧騒喧騒喧騒喧騒喧騒喧騒含み笑い。 「品がないな。失敬、世界が違うか。ならそちらの流行りか」 ユーヌの言葉は辛辣だ。元より、敵愾心しかない相手と談話してやる信心など誰も持ちあわせてはいないのだが。 「あら、似合ってない?」 目前に繰り出された大針を、ナイフの横腹にぶつけて逸らせた。重量感。外見通りの大振りさ。しかし、見た目ほどの鈍重さもないようだ。 いなし、かわし。地に突き立つ注射針。それを引き抜く間。聞くものに理解の及ばない詠唱。詠唱。詠唱。意味するは纏わりつく呪い。不運にして不吉にして不楽にして不天の大網。その厄災は目に見えぬ。ただ、一言。天に、見放されるのだ。 針は偶然にも繋ぎ目に突き刺さり、足は泥濘を押さえ、確率が彼女に牙をむく。それを見下すユーヌの視線は、あくまでも冷ややかだ。 「大凶か。鬼門だな、この世界は貴様達の」 季節に不釣り合いな、白い吐息。相も変わらず寒がりで。この異境。この異郷。季節外れの桜のように、散って果て去るか。 その一撃は、その無残は。ひどく、喧しい。 強襲した羽音の斬撃を、えるまりおはその得物で受け止めた。シリンダーと鋸歯がぶつかり合う。切り裂けはせず、非現実的な火花。夜が刹那だけ明るさを取り戻す。 「のんびり、戦うつもりはないよ……」 がなりたてるエンジン音。ばるばるばるばると。ばるばるばるばるばるばるばるばると。電鋸の騒音が秋の静空を引き裂いていく。切っ先も剣線も急所も考えず、ただ吐瀉物のように振り回す。 振り上げるごとに、振り下ろすごとに。筋肉が悲鳴をあげる。骨格が軋みにゆがむ。自分を壊してしまうほど、その一撃は、その連撃は、破壊に特化している。 痛みは知らない。神経の慟哭に耳を傾けない。それを忘れて、ここに立っている。だから。 だから、これも知らない。わからない。腹部に突き刺さり、そのまま自分の後ろへと突き抜けた大針を感じない。唇の端から血が垂れた。代わりに、その何倍もを吹き出させるよう。異人を斜めに切り裂いた。 光介が探る限り、わかったことをいくつかまとめておく。 ひとつに、あのおよそ戦闘兵器とは思えない大きな注射器。それのリーチは見た目通りであるようで、おそらくは後衛に位置する自分までは届くまい。 ふたつに、こちらを刺したあれが悦に浸るときに起きる性能性の向上。その範囲。おどろくべきことに、生命力と精神力を除いた全てであった。何もかも。何もかもだ。膂力を。速度を。抵抗を。防御を。そこから得られる答えはひとつだ。 一刻も早く。 一刻も早く、倒してしまわねばならない。優越に浸からせていてはならない。快楽に浸らせていてはならない。手を拱いていればそれほど、それこそ。手の付けられない化物になってしまう。だから。だからそこで索敵を終え、自分の役割を全うすべきと判断した。判断を下していた。 「術式、迷える羊の博愛!」 治癒術。仲間の傷が癒え、正しい姿を取り戻していく。傷ついたら、治してしまえばいい。だから、一刻も早く。 その癒し手を邪魔と見たのか、看護師の視線が向きを変えたのを見るや否や。佳恋はその間へと身体を潜り込ませていた。 戦闘経験。それに類する範疇に身を置いたことは、一度や二度ではない。斬られたこと。殴られたこと。撃たれたこと。魔を放たれたこと。それらの数など覚えてはいない。リベリスタとなった以上、血みどろのそれらに身を費やす結果は当然である。だがそれでも、注射針に身を刺し貫かれた経験はと問われれば。日常のどれにも当てはまらなかった。 痛い。痛い。痛い。痛い。だが、それを表には出さない。加虐趣味の看護師に、見せてなどやらない。痩せ我慢でいい。神経が焼き切れる程痛くても。がんがんに頭痛が警鐘を鳴らしていても。不敵であれ。自分にそう命じてあれ。 「この程度、苦痛のうちに入りません。私達を甘く見ないでください」 きっとバレている。それでもいい。虚をつけ。そしてかざしたそれを叩きつけるのだ。月光は剣を照らし。猛撃が牙を剥く。 今回の一件。鹿毛には疑問があった。 この看護師、えるまりおにではない。その背後、背景。そこに立っているであろうあの憲兵。あららる・ぱにである。 予告。宣言。挑発。それをするからにはわかっていたはずだ。自分達は数千名ある中の八名前後で事件を打倒する。であるならば、それが威嚇にも威勢にもなっていないことなど理解しているはずだ。例えそれを把握していなかったところで、下手すればこの一個勢力に数百名が押し寄せることもありえたのである。 ならば、なぜ。その高難度な勅命とやらに当の憲兵本人は関わってこない。戦闘開始から、もうどれだけ経ったことか。何故未だ、あれは姿を現そうとしないのか。 どうにも、時間稼ぎか何かのように思えてならないのだ。そうだとしたら、彼女は。 「貴女、ひょっとして使い捨てられちゃったんじゃないですか?」 「……知らないわ。勅命なのだから、それを疑ってはいけないのよ」 答えは得られない。得られそうもない。 大局的なところ。この戦闘においてえるまりおは自身の性能を半分も発揮できてはいない。その原因が何かと問われれば、彼のことへと行き着くだろう。エルヴィン・ガーネットである。 彼女がその得物に仕込んだ毒、吸い出すことでの性能奪取。それに付随する妖艶さからのテンプテーション。それらが、リベリスタに通じなかったわけではない。彼らも、それに悩まされ。苦痛に悶え。本分を忘れもした。 ただ、それを。それらを。苦痛が飲み込んでしまう前に片端から治してしまえば、無いに等しい。結果、えるまりおはことこれに関し、自己強化のみを技能として戦わざるを得なくなっていた。 エルヴィンの感想として。正直なところ、その豊満さには見惚れるものがある。だが、女好きの彼であっても。その漂う血臭の強さには。鼻が曲がる思いであった。 加虐趣味。人を傷つけることが、好き。そんなタイプは、そんなカテゴリは。女性であってもお断りだ。どうにも、守備範囲外。 そういえば、尋ねておきたいことがあった。戦いは優勢。もう間もなく、このアザーバイドはこの世を去るだろう。その前に、問いて置きたかった。 「何をしにこの世界を訪れている……?」 期待はしていない。彼女のこれまでの口ぶりからも、重要なことを知っているとは思えなかった。知っていたとして。その忠誠心。帝とやらに関するどれをも、話してくれなどしないだろう。 返答は予想通り。無言。沈黙。何よりも雄弁な、拒否の解答。 それを受け取ったのと。仲間の剣が、彼女を切り裂いたのは。計らずとも、確かに同じであったのだ。 ●調停世界にはな落ちる ひとつ、仕事が終わったようだ。今回の件を端的に言えば。つまりはアレの始末である。性格。嗜好。思想。それらから以前より考えられていたことではあるのだが、倫理的・法的な観念からこちらで手を下すわけにもいかなかったのでる。だから、彼らを利用したというわけだ。アレが討たれれば問題なし。逆であれば、少なくとも大義名分は成り立つのだから。 その柏手が聞こえた時、そろそろなのではないかとも考えていた。 予想通りというべきか、姿を表したのは白い憲兵。あららる・ぱである。 加勢するでもなく、逃亡させるでもなく。えるまりおが倒れ、動かなくなった後に。見計らったかのよう。否、実際そうなのだろう。ともかくも、それはこの場に姿を現した。 「否々、見事なものであり〼な」 戦闘の意志は見て取れない。だが、警戒なしに立てる相手でもなかった。何の目的で。どれほどの強さ。逃げるべきか戦うべきか。いくつもの算段が脳裏で回る。 「何、小生は剣を抜くつもりはないのであり〼よ。ご安心頂きたいのであり〼な」 えるまりおの死骸。それを担ぎあげると、彼はあっさりと背中を見せた。回収目的。きっと、本当に、それだけなのだろう。それだけのために、控えていたのだろう。 「双方の目的も叶い、万々歳であり〼な。嗚呼、ご安心を」 顔だけを半分、振り向かせて。表情に変化はない。ただ、背骨を掴まれているような。粘泥の敵意だけが首をもたげていた。 「次はちゃんと、殺す」 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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