● ふわり、ひらり。艶やかに頬を染めた紅葉の中、山道を彩る赤と黄色の『絵具』が零されたそんな場所。 舞い散る花弁は季節を狂わすかのように、時計の針が指す方向すらも惑わす様に、ゆっくりと散りゆく。 ――狂い咲いた訳ではない、ただ、その姿を見せただけ。 ぼんやりと薄明かりに照らされた道で淡く、色づいた『桜』の花。 自身の葉を落とし、小さな花を揺らして落ちる。 時空で迷子になった感覚であった。 ● モニターに映し出されたのは狂い咲きではない、秋にも花開くという『シキザクラ』の映像だ。 三高平から少し離れた場所にあるというソレは少しずつではあるが花を咲かせ、ゆっくりとその花弁を散らしているらしい。 「桜って、お嫌いかしら」 ぽつり。晩秋には似つかわしくない『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)の言葉がリベリスタの耳に滑り込んだ。 「シキザクラ。春と秋に二度咲くのよ。紅葉の中で咲く桜は、まるで雪の様ね。季節を、忘れる気持ちになるわ」 舞い散る花弁は頬に触れる。 春の様に、艶やかに。冬の様に、淑やかに。 花弁は雪の様に舞い落ちる。 ふわり、ひらり。 「静かに見つめるのも風流よね。この辺り、紅葉に混じって桜が咲いてる所があるから少し探検してみてはいかがかしら?」 静かな山奥であるから何をしてもよい、とフォーチュナは笑う。 肌寒い頃ではあるが、紅葉と桜を見ながらのピクニックも中々なものであるだろうし、ぼんやりと眺めるのも良い、勿論デートをする事や遊び回る事も良いだろう。何をしても十分に楽しめるのではないかと世恋は楽しげに語った。。 「偶には、のんびりしましょう?」 こてんと首を傾げて、彼女は微笑んだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月29日(月)22:20 |
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● はらり、ひらり。 秋の肌寒さを頬に感じながらも、見据える風景はまるで春が如く桜が舞う。そして、冬が如く雪の様に。 降り積もる花弁は雪化粧の様にも感じられた。 「先日の夜の紅葉は楽しかったな」 勿論、このシキザクラも共に楽しもうと雷音は義父である虎鐡と共にのんびりと彩られる道を歩む。 楽しもう、そう誘ってくれた愛しい子に頬が緩む虎鐡は目の前を彩る紅と薄桃に年甲斐もなく目を輝かせる。 「雷音、雷音! 真っ赤で綺麗でござるよ!」 子供の様にはしゃぐ彼にどちらが子供なんだか、と雷音は首を振る。其れでも騒がしい義父に緩む頬を隠しきれずに。 宙の蒼を彩る紅と黄のコントラストが、鮮やかで。櫻が奏でる薄桃が其処に挿し色として違った表情を見せる。嗚呼、なんて贅沢だ。その翡翠の瞳に映しては、胸に刻み込む。 「雷音の麗しい姿が美しすぎてござふぅでござる……」 「っ、ぼ、ボクじゃない! 紅葉を見ろ!」 むっと唇を尖らした雷音の隣にリスの親子がてこてこと歩いている。慌てて虎鐡へと向き直り、し、と指を立てて命じる。ステイ、シャラップ、サイレント。逃げてしまっては、嫌だから。 じっと見つめるリスの姿が自分たちの様で、雷音は小さく笑う。 「可愛らしいな。ま、まあ、ボクは可愛い物が好きな訳ではないが! 虎鐡が好きだと思ってな!」 お前が見たいと思ってなのだ、と慌てて言う愛娘。緩む頬を押さえきれずに笑みを漏らして虎鐡は雷音に合わせて笑う。 「ほいほい、拙者はかわいいのが好きでござるよーござるよー」 「っ、笑うな! リスが逃げてしまうだろう!」 視界一杯に広がる可愛い娘の姿。この可愛い姿を暫し此処に留めれます様にと。桜が、舞った。 きょろきょろと周囲を見回して、開けた場所にレジャーシートを広げる。吹く秋風からシートを守る様に端に抑えを置いて、レンは準備を完了した。 「久しぶりのお出かけ……だから、ちょっと、頑張って、お弁当作ったの」 ずっと練習してきたお料理の披露だと広げたお弁当箱の中身は色鮮やか。同居人以外にお弁当を作って貰った事がなかったレンは那雪の顔を見て、その嬉しさに笑みを浮かべる。 「ええと、おにぎりは……おかか、梅干し……、あと、お花見だから、鮭フレーク混ぜたご飯を」 「あ、これ、桜か」 うん、と笑う。甘い卵焼きにからあげと甘辛ダレ風豚肉の野菜巻き。秋の風味の南瓜のゴマ団子も入って、見目も美しい。 「すごいな、色とりどり、どれもおいしそうだ」 その言葉に、お口に合うかなと心配そうに那雪はレンの表情を伺った。手を合わせていただきますとおかかのおにぎりを口に含む。綻ぶ表情にほっと胸を撫でおろす。 次は、卵焼き。甘いものだから、好みに合うかなと緊張が那雪の胸を支配する。 「……うん、甘くておいしい。那雪は料理が上手だな」 「……卵焼き……やっぱり、甘い方が好きかなって……」 微笑んだレンの笑顔にホッとして、那雪も箸をつける。一生懸命に作ったものを嬉しそうに食べてくれるだなんて、なんて幸せ。 「朝早くから大変だっただろう。ありがとう」 有難うの言葉に心がほわっと穏やかになる。ああ、その言葉だけでも幸せ。その言葉だけでも嬉しくて。 「うん、また作ってくれると嬉しい」 「今度はもっと美味しいの、作るから……、また、食べてくれると嬉しいの」 笑い合って、お弁当を頬張る。綺麗な景色の中で、こんなにもおいしい物が食べれるなんて、なんて幸せなんだろう。 売店で購入した弁当と酒を手に和人はゆっくりと道を行く。舞う桜と散る紅葉を見つめながら和人は小さくため息をつく。 嗚呼、来年こそは一人じゃなければいいな、と。 我武者羅になって生きてきて、辿りついたアークという場所がこんなにものんびりできるというのはいいことだとほっと息を吐く。 「あとは一緒に来てくれる女でもいりゃあいいんだが」 一人でのんびりと紅葉や桜を眺める、赤と、黄色と、白と。混ざりこんだその景色はなんと面白い事か。 自身の故郷の事を思い出す。雁字搦めで苦しいその場所だったけれど、景色は嫌いではなかった。 想いを呑み込むように、買ってきた酒を飲みほした。 暖かな陽光がシエルの頬を撫でる。 隣に座る親戚である沙希の横顔を眺めつつ。常ならば『他人のフリ』をしている二人はぼんやりと座って景色を眺めている。 『たまには紫外線を一緒に浴びるのも良いかもね』 脳内に響く声にシエルは応える事もなく。会話をするといってもこれといった話題が浮かばないままにぼんやりと風景を眺める。 スケッチブックに色鉛筆を走らせる沙希は「題材、枯れた木とか?」と一人、笑う。 『お腹空いたのだけど、何かある?』 ふと、シエルの脳内に響く声。沙希の問い掛けだと彼女は気付きツナと卵のサンドイッチを用意したと差し出した。親戚だ、好物は十分に把握できている。 『飲み物は……』 「コーヒーに炭酸が入った清涼飲料水でよろしければ」 微笑みと共に差し出される其れに、嗚呼、この親戚は不思議飲料水マスターだったと額を押さえる。二人、隣に並びながらゆっくりと昼食へと洒落こんで。 「そういえば、私、恋人ができました」 さらりと漏らされた言葉に沙希は特に何か言う事もなく、おめでとう、と脳内へと響かせる。 『私? 特に何もないわ。美味しい天麩羅のお店を見つけた位よ』 それでも世間話としては十分で、二人の目の前をひらひらと紅葉が舞った。 食事を終えてから二人、のんびりとシキザクラを見つめた。ベンチに腰掛けて、眺める桜はリルには初めて見る物だから、とても面白い。 「春でも秋でも桜が散る様子は綺麗で幽玄ですが寂しい感じがしますよね」 その言葉にも頷いて。季節について一つ一つ問いかける。どんな事でも知れればとっても嬉しいから。 リルの差し出したあったかいココアのぬくもりを両手に感じながら凛子は優しく微笑みかける。 「リルさんの好きなものを色々教えてもらえれば、と思ってますよ」 「そうッスね。リルは好きなものはあまりないんスよね。舞踏とか、お菓子作りくらいッスか」 何気ない会話を、淡々と繰り返す。舞う桜と彩る紅葉の中で二人、のんびりと陽光を浴びながら。 肌寒さだって、一緒に居れば感じなくて、心がほわりと暖かくなる。 うとうととしているリルに膝を貸して頬を優しく撫でる凛子の表情も優しげだ。ゆっくりと沢山の事を優しく告げて、握られた手を優しく掴み返す。 ふと、リルが瞼をあげれば、うとうとと夢に落ちる凛子の姿。尻尾で頬をそっと撫でては珍しい物を見たなあとちょっとした幸福に胸が一杯になる。 くすぐったさに瞼を上げて、リルの丸い瞳と克ち合った。嗚呼、寝ていたのか、と瞬時に思い当って頬を掻く。 「さすがに、寝てる姿を見られると、恥ずかしいものですね」 はにかむ凛子にリルは笑う。たまには、二人一緒に夢に落ちよう。ふわりと舞う桜が膝に転んだままのリルの額へと落ちた。 降り積もる落ち葉の上を歩きながら、隣を歩く悠月の横顔を眺める。 「秋に咲く桜か……そんな物は、無いと思っていたが」 「四季桜が咲くのは四月と十月……丁度、半年毎に二度」 紅葉に混じる、葉の落ちた淡い紅の花を眺める悠月は口元に手を当てて、小さく笑みを浮かべる。 「他にもそういう桜があるみたいですね。冬に咲く品種もあるとか」 瞬きを繰り返す拓真に悠月は小さく笑う。さく、さくと落ち葉を踏みながら小さく笑って、二人で寄り添って。桜と紅葉をその目に同時に移せる贅沢に心穏やかになる。 「君とこうして、出歩くのも……何度目になるか」 「そうですね、初めて行った時から、まだ二年と経ってません」 短い間に、多くを重ねてきたからこそ、まだ二年という短い年月であってもこんなにも長く感じる。その軌跡が確かに全てその胸の中に在るから。 ――嗚呼、なんて、幸せだろう。 「俺が、リベリスタでなければ、フェイトを得ていなければ――君に、出逢う事はなかったのだろうか」 零された言葉に、瞳を瞬かせて、少しだけ黙りこむ。舞う桜が髪に絡むと同時にそっと指先を絡ました。 「黒扉の向こう側で出逢う事は、無かったでしょうね……」 舞う桜が、散る紅葉がただ静かに二人の間に時を流す。何処かで出逢ったとして、そしたら関係はどうなっていたのか。 悠月と小さく呼ばれて、仰ぎ見る。腰を引き寄せて抱きしめられたその身を任せて。 「君を、愛してる。この先、何度でも――」 言葉が、囁かれる。そっと目を細めて、其の侭目を伏せる。 「――愛してます」 応答と共に唇が重なった。 ――君を幸せにする。 ――仮定ではなく、現実に出逢えた廻り合せに。感謝を。 ふわり、ひらり。日本の四季は不思議なものだ、とリリは一人で道を行く。 舞う落ち葉も、散る花弁もどれも可憐で、手を伸ばす。指先に触れた花弁を掴む事が出来ずに蒼い瞳を少し細める。 「……月鍵様?」 シスター服の裾を揺らし、リリはぼんやりと桜を眺めていた予見者へと声を掛ける。普段ならばブリーフィングルームで見かける彼女にそっと近寄り、リリは微笑む。 「お誕生日、なのですね。おめでとうございます」 「ええ、有難う。もう24になってしまうのね」 何だか実感がないわ、と桃色の瞳を細める予見者の姿をじっと見つめて、リリは目を瞬かせる。 24歳?と首を傾げて、外見はそれより10は下に見える予見者を見つめた。 「てっきり中学生ぐらいだと……」 神秘界隈ではよくある話しだけれど、と自身のまだ年若く見られる外見の事を眉を下げて告げる。年相応に見られる事は如何してか難しくて。 何処か親近感を覚えたのか、世恋は小さく笑った。 「きっと、何時か、若い方が良いって思えるのよ」 微笑んだ彼女の瞳が、何時か手に取ったローズクォーツのドロップペンダントを思い出させる。夢見る様な恋の色――ピンク色に透き通る予見者の様な石だな、とリリは一人思い出して微笑んだ。 ● 舞う桜に、散る紅葉に、のんびりと過ごす事を提案していた予見者の目の前でミリィは高らかに宣言する。 \だが、私は鬼ごっこを選ぶぜッ!/ ――嗚呼、何処かで聞いたことがある様な高らかな宣言。ミリィに続きフラウも同じような宣言を行った。 正に開会宣言。アーク鬼ごっこ協会とかでも設立して遣りたい程度には鬼ごっこだ。 「何と、鬼ごっこをするのです!」 ミリィの言葉に何故か元気いっぱい、やる気十分なリベリスタ。 さて、最初の鬼は誰になるか―― 「突撃★どっかーん! ぴゃー! 私が鬼なのー!」 てれってーん! 効果音と共に現れたルアはふわふわのワンピースの裾を揺らして全力で走り出す。 「おにさんこちら! 手のなる方へ! なんと! 逃げるのです!」 いくですよ、とはいぱー馬です号の手綱を引いて。因みに乗ると卑怯なのだ。なんたって彼女は勇者だから。『あほの子』だから! \うまー!/ ぱから、ぱから。 逃げるイーリス達を追いかけて。花飾りがふわふわと揺れる、彼女の長い髪だって動きに合わせてさらさらと揺れた。 舞う桜が、ひらひらと。綺麗だな、と視線を移している隙に全力で逃げる快の背中が遠くなる。 「大丈夫なの! すぐ追いつくの! ふわふわふわ~っ♪」 るんるん気分で速度に命を掛けるルアは笑顔で突進していく――が、華麗に躓き顔面から三回転。膝を擦りむいて、あう、と涙を浮かべたルアへとイーリスははいぱー馬です号を伴って近寄る。 「はい、たーっち! つっかまえたー♪」 \突然の捕獲/ 瞬いたイーリスは突如ばりあ!と叫ぶ。両手の人差し指と中指でまるを作ってばりあ、ばりあと仕切りに宣言。ローカルルールである事など知っているけれど、何故かバリアに驚きを隠せないルアにイーリスも余裕の表情。 「でも、ばりあは無しよ?」 「うぐぐ……、ならば! 私も今から鬼となるのです!」 目的:世恋をラストランナーにすること。 二人の少女の談合の後、その二人が狙ったのはフツだ。彼の目の前に迫りくるふわふわ少女と馬(と勇者)。ふわふわ少女からさらりとすり抜けても馬(と勇者)は避けれまい。 なんと乗れてしまうからだ。 ――フツは唇を歪めた。徳が高い彼が手にしたのは口に噛んで使うゴムで出来た牙。 徳の高さが何処かにいった。どっちかっていうと地獄だった。 「ふっふっふ…… こんな事もあろうかと、これを用意しておいた!」 「「お、鬼……」」\うまー/ 馬と少女二人が驚きを隠せない中、鬼――フツは両手を広げた。 「オレは人間をやめるぞ、ショギョー!」 ちなみに諸行無常の意味らしい。嗚呼、やるせない。 桜が舞って紅葉が散るそんな広場の騒がしさ。ラグビーの練習にも取り入れているんだぜ、と豆知識を披露していた快に竜一は成程、と頷いた。 鬼が量産されている中、何故か一つにまとまっていた鬼ごっこ参加者達。そこに突如影が掛かる。鬼と、馬と、少女だ。 ラガーマン的にちょっとした本気を見せる快を追いかける、馬。 馬と守護神の鬼ごっこ――シュールでしかなかった。 全力で走った後に急にステップを踏む快。ついていけない鬼――否、馬。うまーと鳴いて蹄を鳴らすはいぱー馬です号(と勇者)に快は爽やかステップを見せる。 同時に、じりじりとフラウやミリィに迫るフツの影。 「女子は俺が護る!」 キリッとした竜一は積極的に世恋を庇って好感度アップ作戦。 なんとなくだけど仲良くなれたのかしら、と首を傾げる予見者の目の前で両手を広げて、彼は鬼から女子を庇っていた。 ――だが、其処に飛びかかろうとするルア。通りかかった快へと何故だかスライディングを決めて、笑みを漏らす。 「くくく……! 戦いは非情さ……!」 生き残る為には誰かを犠牲にする。そういうのが世の中なのだ!――悲しいけど。男だし。 爽やかに躓いた快へと飛びかかるルアとイーリス。こうして、鬼が一人増えた。 現在の鬼:ルア、イーリス、フツ、快、馬。 「超鬼ごっこッスよ! あ、月鍵世恋さんは誕生日超おめでとうっす!」 ひゅーはぴばすでー! どんどんぱふぱふー! 迫る鬼から逃げるイーシェは鎧の姿であちらこちら。イマイチ鬼ごっこって何なのか解っていない彼女は何をすればいいんスかねえ、と鎧のままで首を傾げる。 鬼ごっこ? 鬼退治? 戦いじゃなくて鬼ごっこよ、と告げる羽衣にこの装備邪魔じゃないかな、と視線を逸らす。 「世恋さんが鬼だったら丁度良いハンデになるんスけど」 追いかけてあげましょうか、と送られる目線からウフフフと笑みを浮かべてイーシェ逃亡。 秋の山林を、桜と紅葉の彩りを全力疾走する鎧。 「オホホ、捕まえてごらんなさーいッス!」 但し、背後にいるのは、鬼と馬だった―― 「世恋、世恋! 羽衣と逃げましょう!」 隙をついて手を握りしめて、大丈夫よと、励まし掛ける。世恋の手を握りしめ、二人一緒に羽を揺らして羽衣は走り出す。 桜が綺麗だから、疲れたら桜の木に隠れてしまおう。花弁が、二人を隠す様に。 悪戯っ子のような笑みを浮かべて、世恋の小指と指先を絡める。 「大丈夫、世恋が捕まってしまいそうな時は戦闘並みの勢いで庇うわ」 ――ブリーフィングルームで見せた事のない様な『どうしよう、やばい、私死ぬの?』といった表情を零す世恋に対して、羽衣はにんまりと笑う。 「ふふ……リソースは大事にするものなのよ」 リソース(フェイト)大事にする羽衣だけれど、心意気はフェイトを燃やしている。あくまで心意気だけだ、なんたってリソースは大事だから。こんな局面では使わない。 「鬼ごっこだぞ、がおー!」 結局捕まってしまっていた虎柄レスラーパンツ(本日はセクハラ少なめにお送りしています)の竜一が現れる。 リソースを大事にする羽衣は「ここはわたしに任せて先に行け」と背中で語っていた。 ――羽衣の大切なリソースが何かアレでコレでソレな中、 「UYYYYYYYY!!!」 有為転変の意で雄叫びを挙げてエルヴィンへと襲いかかるフツ。桜を眺めてのんびり、と思っていたら突然始まっていた鬼ごっこ。これに対してはエルヴィンお兄さんだって、全力で楽しんでしまう。 スピードには自信があるけれど、速度勝負はあくまで一般人を逸脱しない範疇でだ。 ――目の前の鬼に関しては予想外。思わず驚いて、鬼になったエルヴィンは其の侭鬼になってしまう。 「ふふふっ、鬼ごっこって言ったら、うちが参加しない訳にはいかないっすよね!」 にんまりと笑みを浮かべていたフラウは唇をかみしめる。嗚呼、特技を生かせないなんて! 速度を生かして追いかけ回す前に追いかけられているフラウは全力で鬼ごっこを選んでいた。 「くっ……このまま、朽ち果てろってことっすか!?」 走るフラウを追う鬼達。鬼の多さにフラウも驚いた。突然の鬼増殖だ。 流石はリベリスタ。神秘界隈の鬼ごっこは恐ろしすぎる。飛びかかる影を交わしきれずにフラウも見事に鬼の仲間入り。 ――だが、ここからが本気だ。 「さあ、鬼を増やすッスよ」 鬼ごっこに対する殺意が、恐ろしい範囲だった。 「こりゃ思ったより疲れるな……! よう、楽しんでるか?」 木陰でしゃがみ込んでいた世恋に笑いかけ、それでもタッチをせずにエルヴィンは笑う。 「誕生日おめでとう、世恋。これからもよろしくな?」 さあ、逃げろと目を見開いて、幸せそうに笑う予見者の背中を見送り、彼は携帯電話を開いた。 カシャリ、シャッターを下ろす。 舞うシキザクラにエルヴィンは目を細めて。鬼ごっこする友人達の様子も一緒に添付する。 なにやってんだ、と笑ってくれれば良いな、と送り先は小さな友人。何故だか、もう少ししたら会える予感が、胸を過ぎった。 出逢わなければ捕まることなんてない、ミリィは胸を高鳴らせ、近くで走っていた予見者の手を取った。 疲労が溜まれば逃げ切れないかもしれないとスニーキングを優先する。流石は軍師と言うところか。 「世恋さん、お誕生日おめでとうございますっ!」 お祝いの言葉を重ねながら二人で逃げれば、予見者はやや照れたように微笑んだ。頑張って守りますね、の言葉にリソースを想いだして、世恋の表情は、やや固まった。 しましまパンツの竜一が世恋たん!と飛び出す。山吹色の山々を見つめていたフツだって、その色と同じ髪の少女を見つけて、捕まえようと、走り寄る。 「くっ……私は此処までみたいです。世恋さん、どうか貴女は最後まで生き残って……!」 ――ウソでしょ……、私、逃げるの? 世恋の表情が微妙に絶望の色を湛えた。気付いたら周りが鬼だらけであったからだ。 自分を体を張って逃がしてくれた大事な友人の言葉だ、涙を浮かべて、世恋は走り出した――気がした。 秋に咲く桜は狂い咲きじゃないけれど、その珍しさに妖しさを感じていたベルカは一句詠んでみようかと考えた。 だが、これは鬼ごっこだ。 「吹けよ風! 呼べよ嵐!」 子細工などなしだ、野生の力で野を駆け廻り、季節外れの桜の中で全力疾走。逃げ切って見せると走る彼女の目の前に紅葉がバサァッ!――イーリスが紅葉の滝を作ったのだろう。 「くっ……あの鬼超怖いよ!」 あっちを見てもこっちを見てもアークの猛者が速度を生かして鬼ごっこの真っただ中。小回りなら自分の方がきくけれど、逃げ切れる気がしないと終は周囲を見回した。 それでも、久しぶりの鬼ごっこは楽しくて。腕が鳴るなあ、と少し笑みを浮かべ――ぼきぃっ。 「えっ、ぼ、ぼきぃとかぐしゃあ……??」 鳴っちゃいけない部位が鳴った気がした。自分の脚が恋に落ちる音がしたとでも思っておきたい位の勢いだ。 視線を逸らして、走り寄る鬼から一生懸命に終は逃げた。――が、鬼の数が多過ぎる。背後から突然迫ってきた鎧にがしりと掴まれて敢え無く脱落。 残るはただ、1人となっていた。勿論、これは最後の一人にするというイーリスの策略だった。 「ふふ……なかなかやるッスね、月鍵世恋」 じりじりとイーシェは距離を詰める。何故か残らされていた予見者は鎧と向き合っていた。緊張の一瞬だ。 「いつか、アンタとはこうなる気はしてたッス。ほぼ初対面ッスけど」 「わ、私はしてなかった……」 桜と紅葉が舞う。鬼たるイーシェは高らかに叫んだ。 「こい、世恋! 必殺のイーシェ緊急脱出!」 頭上に投げられた兜。それに気を取られている間に背後から迫りくる一つの影。 「世恋さん、捕まえたあああああああ!!」 薄桃色の羽を揺らして、振り返った予見者の瞳が見開かれる。飛びかからん勢いで腕を掴んだ快。 これにて『第一回全アーク鬼ごっこ協会:鬼ごっこ』は終了した。 「そうそう、世恋さんは誕生日おめでとう! 今年一年も素敵な年であります様に」 快の言葉に瞬いて、周囲を囲む仲間達を見回せば、馬――イーリスがひょこりと顔を出して満面の笑みを浮かべる。 「なんと! 普通に祝うのです! おめでとうです!」 「セレンちゃん、お誕生日おめでとうなの~!」 むぎゅ、と抱きしめてくるルアの暖かな掌に、世恋の桃色の瞳が揺らぐ。 「疲れたけど楽しかったね☆ 世恋さん、お誕生日おめでとう☆」 差し出したのは紅葉と桜を模した和菓子。嬉しそうに目を細めて、泣き出しそうな程に瞳を揺らして。 桜と紅葉が綺麗なのに何をやっているんだろうねと微笑む終に笑いかける。 「世恋たんはちょっと早いけど誕生日おめ! けれども、それはそれ、これはこれだ」 ――第二回戦の気配に予見者の頬がひきつった。 モノマが高台からぼんやりと眺めるのは友人たちが行っている鬼ごっこだ。 頬を撫でる風も、降り注ぐ暖かな陽光の中では丁度良い。 「あいつら、元気だなぁ」 小さく欠伸を漏らして伸びをする。折角の羽伸ばしの機会だ。鬼ごっこはまたの機会にしてのんびりごろごろとしよう。 草むらから、動物が出て来ないかなあ、とぼんやりと眺める。 手ごろなもふもふが現れればいいのに。犬でも、猫でも、タヌキでも、兎でも。 嗚呼、でも頭は睡眠を欲している様で。暖かい日の中では、瞼がそろそろと降りてきてしまう。 ――もふりたい。眠い。 もふ、もふ。 繰り返してはかくかくと頭が揺れる。モノマが意識を失ったその隣、兎が首を傾げて彼を見守っていた。 ふらりと秋色を散歩して。シキザクラの樹の下で光介は文庫本を広げる。 「秋空の下で読書……ふふ、いいかんじなのです」 ブックカフェの店番をしていて、いつも本に囲まれているけれど、秋の風情と読書。これは格別だ。 ふわりと舞う桜の下で、頁を捲くる。 遠くから聞こえる鬼ごっこの声も、ピクニックを行う声も、どれも楽しげで、羨ましく思うけれど。 ――でも、今は一人でいよう。 自分がのうのうと生きていることをまだ赦しきれないから。運命の寵愛を受けて、事故から一人助かってしまった事が、まだ、この胸を痛めるから。 こうして人の輪から外れたくなる。嗚呼、厄介だなと思うけれど、それでも胸を締め上げるから。 ぺらり、頁を捲くる。 それでも、1人は寂しくて、人恋しいのは確かだから。そっとカメラで遊ぶ仲間達の様子を一枚。そして、この景色も一枚。 心のカメラも、この手にしたインスタントカメラも。どちらにも収めて。 この一枚を、何時までも思い出に――栞として読みかけの頁に挟んでおこう。 ● 桜と紅葉が混じり降る。ひらひら、ふわふわと。幻想的な夜の道に降り注ぐ月の光はよりその場所を不思議な舞台装置の様に魅せた。 頬を撫でた冷たい空気に亘は目を細める。美しいその景色を心にも刻み込んで。 1人も悪くないな、と思うけれど。 「こんばんは、月鍵さん。ふふ、偶然か運命か。何しろ折角会えました。良ければご一緒に」 道の向こう、ぼんやりと桜を眺めていた予見者へと彼は笑いかける。答えは勿論OKだ。近くで購入した温かい飲み物を掌で包んで、ちょっとした雑談を交えよう。 言葉を交わす事で、仲良しになれるのではないか。 「この景色を如何思われますか?」 瞬きを繰り返し、世恋は小さく微笑む。 「綺麗――というより、不思議ね。まるで御伽噺の世界のよう」 真剣な表情で世恋の言葉に耳を傾ける亘へと、貴方は、と静かに問う。 「儚く可憐な……そう、今の貴女の様な、感じです」 その言葉に少し驚きながら、不思議な方、と予見者は返した。嘘偽りない言葉は、月明かりに溶かされた。 ぎゅ、と握った手の暖かさに三千は眼を伏せる。散る紅葉も、舞うシキザクラもとても綺麗で愛らしい。 「紅葉やシキザクラの花弁が落ちるのが綺麗ですね」 「うん、ここだけ世界から隔絶されてるみたい……誰かが此処にいてあげないといけない気がして……」 二人だけの世界で、手のぬくもりが、優しくて。嗚呼、なんて美しくて、そして儚いのか。 「来年もまた、ミュゼーヌさんと一緒に見たいです」 頷いて、何度だってと三千へとミュゼーヌは笑う。儚い笑みを浮かべては、その脳裏に過ぎる『完全世界』の豊かな森。 瞬きを繰り返して、蒼い瞳を細めて三千は握る手の力が強くなった掌を、あやす様に握り返す。 「大丈夫ですよ、生まれ変わったのですから」 「それでも、世界は人の常識では計れない」 心揺さぶる景観も、途方もない大地の力も、今この二人が目にする美しさも儚さも。世界の一端でしかないのでしょう、と俯く。 三千だって、あの日の戦いを、異世界へ足を踏み入れた出来事を思い出しては恐怖を感じる。自然を愛しく思うけれど、自然は其れと共にとても怖くて。 「自然は大きな力ですけれど、同時に怖い力でもあるんですね。だからこそ、皆で協力して、護れた」 ミュゼーヌを見つめる。彼女の瞳と克ち合った視線が、ゆっくりと細められる。 同じく細められるミュゼーヌの目が優しげな笑みを浮かべる。 「だからこそ、この世界も守れる気がするの。皆さんと……そして、貴方と一緒なら。 握りしめた掌が、その存在が其処に在る事を教えてくれるから。愛おしくて、そして幸せで。 ぼんやりと薄明かりに照らされて、散りゆくシキザクラを静謐を湛える銀色の瞳で見つめたレイニードは自身が選んだ場所へとレジャーシートを敷いた。 「ここに、するかな……。紅葉も桜も、月も見えるし」 揺れる葉の間から覗く薄明かりに目を細めてレイニードはほっと息をつく。 月も、桜も、紅葉も全てを一人占めできるような場所に、見かけた予見者を手招いた。 花見と紅葉狩りと月光浴を一度に出来るなんて贅沢じゃなかろうか。そう笑えば予見者も頷く。 ただ、ぼんやりと静かに存在すら知らなかった『秋の桜』に見惚れる。故郷では見る事の適わなかった桜と紅葉のコントラストが月の光に溶かされて、幻想的だ。 隣に座り、じっと風景を見つめる予見者の横顔に、何か胸につっかえる物がある。 嗚呼、そう言えば―― 「世恋誕生日オメデトウ。……ちゃんとした物じゃなくて悪ぃが……」 慌てた様に告げるレイニードに世恋は小さく微笑む。有難う、と差し出された林檎酒を傾けて。 これからの一年が幸せになれば、とそう祈る。 傾けた杯の向こうで月が湛えた静謐は彼の瞳の様で。胸中に過ぎる故郷の風景と林檎の香に暫し酔いしれて。 人気のない開いた場所に桜がひらりと舞い踊る。月明かりの下で、眼鏡取ったオーウェンはその理知的な瞳に好戦的な色を灯して笑った。 「……気晴らしにはこれに越した事はない。……如何かね?」 月に照らされた友人の横顔に火車はにんまりと笑みを浮かべた。月明かりの下の『運動』。軽い手合わせ。それは簡単な気晴らしだ。ルールは二人とも理解している。 「悪かねぇなぁ。んじゃま、一手ご教授頂けますか……ってなモンか?」 目線が、交わった。ふわり、舞うシキザクラの花弁が地面についたと同時に地面を踏み込む。桜と共に砂が舞い上がって、瞬時に動く。舞う桜も、散る紅葉も気にせずに、ぐるんと火車の視界が廻る。 「おぉっ!? 面白ぇ動きすんじゃねぇの!」 ずざ、と靴底を減らして、間合いを詰める。回避せずに打点をずらしたオーウェンが体を回転させて投げに持ち込む体制へ入った所へ火車は小さく舌打ちをし、その姿勢をも有利に持ち込まんと両足に重心を乗せた。 「ッ一発位当たっとけや!」 ぐらり、二人の体が揺れる。ふわりと舞う桜の中に倒れ込み、肩で息をしながら月明かりを全身に受ける。 「友よ。付き合って貰って、感謝である」 「あ~……構わん構わん。それなりに楽しめた」 頬に桜の花びらが、触れる。背に感じる砂の感触も、紅葉の感触も全てがこの一瞬が酷く尊い様にも感じた。幾度も死地に赴いてきたからこそ、遊びを含んで全力で楽しめる機会なんてめったにない。 「お互いに、命を失わぬよう、祈るとしよう」 「ハッ……祈る両手は勝ち獲る為に空けておけよ」 拳を撃ちあわせて、小さく笑みを浮かべる。吐き出した息と共に、勿論だという呟きは飲み込んだ。 休憩所に腰を落ち着けて、持参したワインを傾ける。丁度このワインに合う物を、と用意したチーズやおつまみを並べて、エーデルワイスはグラスを傾けた。 「うふふ、綺麗な紅よね~」 周囲を取り巻く環境は殺伐としていて、とても穏やかな気持ちになれる場面などはなかった。 月明かりの下で、うっすらとルージュを引いた様な唇を三日月に歪めてエーデルワイスは独り笑う。 「血と鉄と炎の加護にかんぱーい♪ お疲れさまでした、私」 一人でグラスを傾けて、仰ぐ。嗚呼、できれば次も星空の下、ワインをこの咽喉に通せます様に。 これからの自身の行く末が安穏であります事を祈って。 「世恋さん、お誕生日おめでとう。壱和くんと一緒にお弁当を作ったんだ」 まだ料理になれない壱和にロアンが丁寧に指導して完成させたというお弁当。二人で作ったお弁当の中身はどれも食欲をそそる物だった。 ロアンの作った白身魚のトマトソースやきのこのワインソテー、自家製のピクルスもレストランで出される様なものばかりで世恋は素敵ね、と目を輝かせる。 壱和の作ったサンドイッチとタコさんウィンナーだって、可愛らしくて、とても素敵で。 「ロアンさんの手料理、すごいです。いつでも、お嫁さんに行けそうですね」 「……お嫁さんには、いけないかなあ。性別的に」 小さく微笑んだロアンに合わせて壱和と予見者も笑みを浮かべる。そうだ、と思い出したようにロアンが作るのはピンクエンジェル。 「世恋さんは、お酒飲めるのですね。大人の女性は、ちょっぴりうらやましいです」 「壱和さんだって、いつか飲める様になるわ」 カクテルを作るロアンの様子に見とれつつ、壱和が告げる言葉へと優しく微笑みかける。時間は何時でも均等に過ぎ去るから、焦らなくたって、何時かその時が来るのだから。 「世恋さんっぽいと思って、どうだろう」 甘いけれど、度数もあるんだ、と壱和用も兼ねてノンアルコールの柘榴グレープフルーツも用意する。 まるで妹の様な二人の前ではりきっているロアンに笑みを浮かべて、有難うとカクテルを手に取った。 花も、月も、葉も、その景色全てが愛おしくて。 改めて、目を配り、祝いと共に乾杯を。 ほっとけなくて、つい構いたくなる二人だから、ロアンは目を伏せて、笑った。 「これからもよろしくね」 「はい、ずっと、一緒にいられたらいいです」 ひらり、花弁が舞った。 ふわりと舞うシキザクラは紅葉の中で艶やかに淑やかに咲いていて。 「わぁ」 思わず感嘆の息を漏らしたスペードは隣を歩く愛音と世恋へと視線を配る。 この桜はまるで世恋のようだ、と素直な感想を漏らせば、照れたように予見者は目を伏せた。 「昼間は一杯遊べたでございまするか?」 「はい、鬼ごっこなんて久しぶりで。子供の頃に帰ったようでした」 昼間に行われていた鬼ごっこに混ざって。楽しんでいたスペードはハッピーバースデーの歌を歌いましたと愛音へと日中の出来事を告げた。 「愛音はずっとハウスでこれを作っていたのでございまする」 にこりと笑って愛音が取り出したのはふわふわのマドレーヌ。スペードもシクザクラを押し花にして作ったしおりを差し出した。 「世恋殿をイメージしたものでございますれば、大好きなお友達に――happy birthday! LOVE!」 「お誕生日、おめでとうございます」 「――あ、有難う、嬉しいっ」 大切なお友達だから、と差し出されるマドレーヌは美味しそうで。スペードは目を細める。 素敵な一年に為ります様にと差し出された桜の押し花は、丁寧に細工されており、スペードの優しい性格が伺えた。 「ほら、皆で食べるのでございまする。これはデコペンで描いた世恋殿の似顔絵でございます」 こっちはスペード殿、と差し出されるマドレーヌ。笑顔のスペードと世恋が描かれており、其れにつられて二人は微笑む。 「愛音は、皆の笑顔を視るのが大好きなのでございますよ」 スペードと愛音と。楽しくて、幸せで。ずっと共に在れたらと。 笑顔を見られたらいい。これまでも、これからも。そうできたなら、きっと。 「笑っていられる幸せが訪れます様に」 そうお祈りするわ、と予見者も小さく笑った。 紅葉、桜、月明かり、世界は鮮やかな色に満ちていて。だからこそ、一つずつ彩る物を知っていきたい。愛音が知りたい愛の彩りを。 嗚呼、それって、どんな色なのかしら。 埋め尽くそう、白と、赤と、桃色で。 沢山の色の中、揺らいで紡がれるコントラストをその眸に映して。 君の想い出の1ページに添える色になりますよう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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