● 一人の人が愛せないならいっそ×んじゃえ! そんなことを言いながら本日も飲み干したジュースの空き缶を公園のごみ箱へと華麗なるダストシューーーッ……あれ? 嗚呼、莫迦。此処で外すだなんて、莫迦じゃないの! 莫迦、私の莫迦! 「私、頑張ったのにィィ!」 殺す事が趣味なのよ? ハハハ、お茶目だね☆ とか笑ってたのは誰よ! そうよね、文字通り殺したい位愛しちゃっても良いって笑ってくれたよね。殺すの我慢したんだよ。 私が! この私が! 最悪だ、だまされた気持でいっぱいだ。 夢見・早愛。14歳。失恋の後その心の穴を埋めてくれるように現れた××さんに振られました。 理由は『さあいちゃんちょっと、過激すぎるよ! 人殺し、駄目、ゼッタイ!』とかそんなので。ラブを上回る殺意を感じました。 どうせ男はそんな物なんですね! ――殺すしかないじゃない。 御機嫌よう、『らぶりー☆さあいちゃん』です。私のマジックスティッキ(という名のバールのようなもの)も血に飢えてるわ! ● 「――という事なんだけど」 「あ、ああ、はい……」 モニターに流れた映像を一部始終げんなりした顔で見つめていたリベリスタは同じく遠い目をしている『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)へと視線を送った。 「甘酸っぱい青春の一幕、そんなの幻想よ! と言う訳で、相手は『裏野部』の美少……、いえ微少女」 視線を逸らしながら言うフォーチュナの顔は青ざめている。何処か遠い目をしてる彼女はぼそぼそと『恋愛って素敵なものよね?』なんて最近手に取った恋愛小説へと思いを馳せていた。 「あ、嗚呼……彼女の名前は夢見・早愛。まだまだうら若き乙女。趣味は人殺し。好みのタイプは死んでも死にきれなさそうな人。夏休みの終わり際に失恋して、その心を埋めてくれる素敵な人に出会ったそうよ」 「いい話じゃないか」 「そして、振られました」 なんて短いスパンで振られているんだこの女。常なれば愛だ恋だと詩的に謳うフォーチュナは『恋愛暴走列車』には付いていけないのか、相変わらず焦点の合わぬ桃色の瞳で宙を眺めている。 「二回目の恋だったらしいわ。永遠の恋だと思ったそうなの……。安直ね。 う、うん、まあ、振られた悲しみに大虐殺大会とかそんなのする、みたいね……」 まあ、趣味は人殺しとか豪語してるから、殺しにかかるでしょうね、なんてさらりと告げる。裏野部の性質上殺さずには居られないのだろうが、恋に破れて殺しまくりましたなど堪ったものではない。 早愛が振られた理由は単純に言えば『彼が二股していてどっちを選ぶか問い詰めたら相手を選ばれちゃった』と言う物だった。早愛が恨む理由も解るが、彼も殺される程の事じゃないだろう。彼のついでに周りも殺すなんて、以ての外だ。 「さあ、悪い夢を醒まして頂戴。嗚呼、早愛を振った彼の方もぶん殴ってきたらいいわ。是非に。是非に」 愛のご指導を宜しく、とフォーチュナは手を振った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月26日(金)00:02 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 『まじかる☆さあい』夢見・早愛は夏の終わりに『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)と敵対した事が合った。 ――今回限りで、落ち着いて頂ければ。 ネイルの剥がれた爪先に視線を送りながら早愛は笑っていた。ずりずりとマジックステッキ――バールのような物を引き摺って無理難題だという様に。 「前回限りで落ち着けと……」 そうは言っていたけれど、再会を臨んでいたのもまた事実だった。再会出来たのだ、この機会に全てを告げてしまおう。この胸に溢れる思いを、全て、彼女へ―― 夕暮れの公園は水色の澄み切った空が橙色に溶かされて、夜の顔を見せようとしていた。グラスを傾けた様に混ざりくる暗闇に目を細め、『鋼鉄の戦巫女』村上 真琴(BNE002654)は小さく息を吐く。 「振られた悲しみに大虐殺、だなんて……」 フィクサードらしいと言ってしまえばらしい。けれど、と周囲に居るカップルを見回してそんな事をさせないと決意を固める。 「腹いせで一々殺されたら、それこそ、毎日どこかで殺人事件が起こりまくりですから」 そうは言うけれど、真琴が知らないだけで、毎日世界では神秘によらない殺人は起こっている。無情にも、人は死んでいく。いとも容易く簡単に人は死ぬのだ。 茶色い瞳に湛えたのは殺意にも似た憎悪。フィクサード、嗚呼、その響きだけでも『逆襲者』カルラ・シュトロゼック(BNE003655)の胸の内は荒れ狂う。 「断言しよう。世の中には死んだ方が世の為だ、ってヤツが確実にいる」 彼のその身を危険にさらした者も、私利私欲の為にこの世界を動きまわるフィクサードも。 「くだらん憂さ晴らし程度で虐殺始めるヤツとか」 確実に、死んだ方が世の為だと、カルラは螺旋暴君【鮮血旋渦】を握りしめた。 コツ、コツ、アスファルトで塗装された道を派手な魔法少女の様な服に身を包んだ少女が歩いてくる。デコレーションされたバールの様なものを手に少女は首を傾げて笑った。 「あら、それって私の事? リベリスタ」 未だ年若い少女であった彼女はバールを振るう。近くに居た男の身体が拉げる。彼に寄り添う女が、叫び声を挙げた。殺戮、死を与えよう。唇を歪ませて、楽しげに目を細め。 「あたしのこと、忘れたなんて言わせないわよッ」 ぎっと睨みあげた芝原・花梨(BNE003998)に早愛は首を傾げてみせる。嗚呼、知っている気がするけれど――こんなに、殺意を漲らせる子だったかしら、と。 「今回は、絶対に逃がさないッ」 正義を全うするために少女は鉄槌を握る。これ以上の悪さができない様に。徹底的に、全てを潰してやる。眼鏡の奥で、花梨の瞳は強い正義感を溢れさせていた。 ● 愛の為に殺戮する。趣味が人殺し? 好みのタイプは死んでも死にきれなさそうな人? 「僕は、こういう面白い子は嫌いじゃないけど」 『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)は無銘の太刀を振り被る。その速度に目を見開いた早愛の事も構わずに、りりすは笑った。 赤い瞳が血を望む様に爛々と輝く。愛に飢え渇く鮫の肌を自身の指先でなぞり上げ笑った。 「己を偽って、手に入れる愛もまた偽物さ。そう思わない? 早愛お嬢さん」 尻もちをついた早愛はりりすを見つめて思う。嗚呼、この人は何処か私と似ているのかしら―― フリルとレースをあしらったふわふわの衣装、魔法のステッキ。どれも少女である『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)の中ではファンタジー的な可愛らしい物品であった筈だった。 「ファンシーでリリカル……じ、時代は変わったのですね」 張り巡らせた強結界の中、杖を握りしめて息を吸う。深いため息をつく様に吐き出したのは尤も、視線を集められるであろう、一言。 「御機嫌よう、裏野部の皆さん。毎度おなじみかどうかよくわかりませんが、アークですよ」 『箱舟』は誘う。不安げに瞳を細めて、金の髪を靡かせる少女の方へと早愛の『おともだち』は剣を握りしめ振り被る。杖を握りしめて決意に満ち溢れる瞳を細めた、瞬間、周囲を焼き払う閃光が放たれる。 ヘビーボウガンがきりり、と音を立てた。『無何有』ジョン・ドー(BNE002836)はモノクルの奥で理知的な瞳に好奇心の色を浮かべて早愛を見つめる。 厄介なものだ。『恋』とは何か、生き物ではないか。その手で捕まえたと思ってもするりと逃げていく。この理知的な瞳をしたジョンであれど理解できない事象の一つ。『心』とは本当に奥が深い。 「どうもお久しぶりです、そちらとしてあまり会いたくはありませんでしたか」 紫月は魔弓を握りしめて、真っ直ぐに早愛を見つめる。業火を帯びた矢が降り注ぐ、彼女のその胸の内に溢れだす思いを乗せて、鋭く戦場全てを射る。 「風宮紫月」 自身の名前を紡ぐ、りりすの背中越しに早愛との視線が交わった。明るい紫の瞳が、早愛の恋情に浮かされる瞳と交わって細められる。 「私の名前です。覚えろ、とは言いません」 ――だって、今から忘れなくして差し上げます。 巫女服を揺らして、長い髪を靡かせる。彼女の瞳に孕むのは、恋情に似た熱望。縁を手繰り、弓から打ち出す赤い炎が全てへと降り注ぐ。 とん、と地面をけり上げて早愛の『おともだち』たるクリミナルスタァは『必要悪』ヤマ・ヤガ(BNE003943)へと接近する。彼女の気糸が捕えていたマグメイガスが唇をかみしめる。 だが、一人でも動きを止められているのは行幸なのだろうか、彼女の頬へと打ちこまれた拳に、ぐらつく足で立つ。 生業が、告げるのだ。人殺しとは罪として重すぎて、罰としては過酷過ぎると。それ故に早愛の様子を深く観察する。したいに特段拘る様子はない、惨状を楽しむ気配は有り。 趣味が人殺しなれば、殺人が好き。他は副産物。――逸脱を好み、普通でない究極としての殺人に惹かれる。そう分析しても彼女は肩を竦める。其処までは、考えてはないだろう、と。 その目はただ、真っ直ぐに早愛を見つめている。横から放たれる聖なる閃光はジョンと同じ技。全てを焼き払い、その身を焦がす。 体制を整えた早愛へと放つデッドオアアライブ。だが、其れを庇う様にクリミナルスタアが立ち塞がる。その、殺傷力を込めた攻撃がクリミナルスタアの体を深く抉る。りりすの愛情が、飢え渇く愛が、何かを求める様に抉りこんだ。 「君ってさ、死んでも死にきれないっていうか。殺しても死なない人が欲しいんじゃないの?」 きょとんとした早愛は『笑った』。 「貴女は、死なないでくれるの?」 彼女の言葉に応えることなくりりすは笑った。真琴は悪しきものから仲間達を解き放つ。殺すべき一般人の姿が消えた事に詰まらなさを感じながら、早愛は首を傾げた。 「殺し愛ましょうか」 皆が相手なのよね、と簡単なゲームをする様に彼女は嗤う。 彼女のそばについていたフィクサード達が其々にリベリスタへと襲いかかる。真琴へと放たれた四色の光が、彼女のその身を苛んだ。 ふと、花梨が目をとめたのは一度は出逢ったフィクサード。砂を踏みしめて、デュランダルへと鉄槌を向ける。 「ねえ、あんたのその手に持ってる物は玩具かしら?」 挑発する。花梨の瞳は燃え上る。嗚呼、憎らしい――悔しさが、悪あがきに変わった。 「弱い奴を相手にすることしか出来ないあんた達と違って、傷ついても、倒れても、あたしらは強くて悪い奴らと戦ってきたのよ」 彼女の首筋に剣が、ひたりと当てられる。速度は、彼女の方が――遅い。 す、と引かれた其れに首筋から血が噴き出した。目を見開く。一度燃やした運命に、もう一度とドラマに手を伸ばす、だが、其れには足りない。庇いてたるマグメイガスに当たった彼女の疾風居合い切り。 「あんた達だけは絶対ぼこぼこにしないと、あたしの気が、すまないのよッ!」 そう言って、流れ出す血にも構うことなく、彼女はデュランダルを恨みを込めて見つめる。デュランダルの切っ先が彼女を切り裂いて、抉る。 「私は、絶対にあんたを赦さないんだからッ」 お嬢さんと笑った目の前の敵に向かって彼女が振り下ろす、鉄槌が。デュランダルのその身を一閃する。 ちかちかと、目の前が眩む。諦めたくないと唇を噛み締める。正義の為だ、と彼女の振るった鉄槌は――届かない。 ぐらりと身体が揺れる。花梨のその背の向こう、走り寄るカルラが螺旋暴君【鮮血旋渦】をホーリーメイガスへと振るう。回復手であるホーリーメイガスは謳い続ける。自身の庇い愛の相手である夢見・早愛を援護するように。 戦場に前衛も後衛もなかった。混戦状態になって居たソコではただの殺し愛が、庇い愛が、愛が交錯し合い、少女が笑う。 「面白くもなんともねぇフィクサード殺しだ」 反吐が出る、と吐き出した言葉を込めて、その槍はホーリーメイガスを貫く。 嗚呼、それでもホーリーメイガスの膝はもはや立ってはいられなかった。がくがくと揺れる膝。謳い続けるその咽喉へ向けて放たれる真琴のジャスティスキャノン、ヤマの気糸が捕えたホーリーメイガスは動く事も出来ずに身体を痙攣させた。 「のお、早愛。趣味を改めるのと、人生を縮めるのはどちらが好みかの?」 「人って、変れないのよ」 生き死にに関わるような選択を幼い少女にするなんて、勿体ないとヤマは想う。出来れば、殺したくなんてない。心がけるというならば、殺さないと彼女はそう口にする。 庇い手であった彼女の体が其の侭土の中へと倒れていく。マグメイガスが放つ魔術の魔光が仕返しとばかりにヤマを狙う。幸せそうに、嬉しそうに早愛がころころと笑った。 「素敵ッ! これって、恋かしら?」 仲間達の傷が魔法少女たる彼女へと力を与える。マジックステッキ――バールの様なものを彼女は一気にりりすへと振り被る。その衝撃は真っ直ぐに全てを貫かんとする。虚空を切り裂いて飛翔し貫通する蹴り。早愛を支える彼女の『オトモダチ』に向けたりりすの生死をも超越する与える攻撃が、リッパーズエッジに乗せられて放たれる。 りりすが放つ攻撃は生か死か――そんな物全て関係ない。何よりも愛を。其処に深く抉りこむ愛を乗せて放たれる。 「僕のが年上だからね、正面から受け止めてやるよ」 殺したい、分かる、どうしてそうなるのか。殺したい、けれど殺したくない。自分の傍にいて、死なない人が欲しいのか。自分が変わるのは難しいから、相手に代わって欲しい。 なんて――寂しがり。 敵に対して貪欲にただ、無銘の太刀を振るい続けたりりすは敵対するフィクサード達の攻撃を喰らってもなお、運命を燃やして、笑った。 ● 均衡状態を脱していた――と言っても、その身を狙われる事もなかった前衛のクリミナルスタアやマグメイガスは未だリベリスタへと戦意を燃やしている。 一般人の死体を蹴り、こてんと首を傾げた早愛は小さく笑う。 「しあわせだわ」 ――まるで、恋の様だわ、と。 彼女の蹴撃は真っ直ぐに怒りを与えるミリィへと放たれる。前方に立っていたカルラの運命を削り取り、其の侭にミリィをも裂こうと放たれる。 その攻撃すらも恋だというのか、とジョンは眉根に皺を寄せた。 「恋とは、難しいものなのですね」 『乙女』の技を模倣するとそう願った紫月の願いの手伝いをとジョンは身構える。その身にマグメイガスの齎す災厄が振りかかる。傷を負いながらも真琴はソレを癒した。 「本当の恋を知らないのでしょう。良い恋をして『彼』を見返せばよいではないですか」 其れでこそが女の子の粋でしょう、そう笑う。 真琴のシールドにぶちあたったクリミナルスタアの早撃ちに彼女は目を細める。ミリィは叫ぶ。その咽喉が枯れてしまっても、気にしないという様に、挑発し彼女が引き寄せる敵を仲間達が攻撃する。 ――だが、彼女の庇い手は存在していない。集中攻撃を受けても、少女は諦めない。 「ねえ、早愛さん、飽きてしまいましたか? まだ、早いですよ」 飽きればすぐにぐしゃぐしゃにして捨てられるような恋なのか。そうじゃないですよね、なんて彼女は笑う。挑発的な笑みに、誘われる様に剣を振るうデュランダルの体をカルラが貫いた。 分かる。ミリィはまだ年若い少女だけれど。 幼い愛はマシュマロの様に甘くて、大人になればほろ苦くて甘くなる。ビターチョコの様に、変化していく。きっと、彼女は幼すぎて、まだ、何も分かっていないだけ。 「新たな恋を目指すのは如何ですか」 そうね、と笑った早愛はM少女のお約束を振るう。倒れた仲間達のその傷全てを攻撃に乗せて、虚空を切り裂く。ヤマのその身がぐらりと揺れる。 新しい恋、その言葉に紫月がそっと前に出る。その目は、笑ってはいなかった。 「貴女の命は誰にも渡しません」 たとえ、他の誰であっても。負けると言うなれば、この手で負かす。死ぬというならば、この手で殺す。 誰にだって、渡さない。 ――なんて、其れはきっと早愛からすれば愛の告白にもほど近い、恋心の死の宣告。ぞわりと背筋が震える。嗚呼、貴女、とても素敵ね、と。 「私、貴女がリベリスタじゃなくて私が裏野部じゃなかったら良いお友達になれたかもしれないわ」 「さあ、どうでしょう」 唇に乗せた音は乾き切る。魔弓を構えて、紫月は名前を呼んだ。早愛、と。 「だから、殺し愛ましょう? 私が、誰よりも貴女を愛してあげます――」 歪み切ったその恋情も、澱み切ったその心も、溢れだした力も、全て全て見せて。魅せて? まるで恋に浮かされた少女のように紫月は紡ぐ。 魅せて、と願われたその願いのままに口を開く。甘い匂いを漂わせて彼女が使用したマシュマロ・ラバーズ。恋に恋する少女の願い。 「殺し愛に庇い愛。そういうの好きなんだろ」 肩で息をする。血濡れた掌で螺旋暴君【鮮血旋渦】を握りしめて、整った顔に笑みを浮かべる。其れは恋情による魅了に近いのだろうか。『愛情』に愛情で返す。 「なあ、あんた、ドリルで抉られても平気な方か? 俺はバールくらいなら何ともねぇぜ」 その言葉に唇を歪めて早愛は笑う。其れは、痛そうね、と。 早愛の目の前に立っているクリミナルスタアが、彼女の傷つくその身を庇う。癒し手は居ない。庇いきれない傷に早愛の膝が揺れる。 「貴女を、頂きます。……夢見・早愛っ!」 けれど、その言葉は届かない。ひゅ、と息を吸い込んで。 「お姉さん――紫月。殺戮を、私を愛するなら、未練だって愛に変わるのよ」 一度口にした言葉。後味だって悪いけれど、其れも甘い蜜のようにその身を、その胸を焦がすかもしれない。何度だって、何度だって手を伸ばして、試す。掴む為には貪欲になる。 早愛を庇うクリミナルスタアの体が揺れる。ぼろぼろになったネイル。結いあげた髪だって、リボンだって解けた。アーティファクトを握りしめて、振り被る。カルラの運命を燃やしながら、走る。 彼女の往く手を遮る物が無くなる。それはリベリスタらも同義。逃がさない様にと、その背を狙ったのは紫月。 「私が誰よりも貴女を愛してあげますから――!」 穿つ。炎の弓を引く。愛を燃え滾らせる様に――けれど、その身を庇ったマグメイガスの血濡れた鎖が身体を抑え込む。早愛は怯えの色を瞳に浮かべて走る。嗚呼、なんてことかしら――なんて、恐ろしい。 愛してくれると、そう言った。私を欲しいと、そう求められた。 けれど、自身の『おともだち』が沢山倒れたこの場所はとても『怖かった』。 「ねえ、君は僕が好きになっても死なない人? それとも、僕を殺してくれる人だったの?」 ぴたり、早愛はその足を止める。 何故、と問うた瞳はまだ純真な中学生のもの。恍惚世界ニルヴァーナを纏ったその背中を丸め、りりすの瞳は、ただ、歪められた。 今まで自身が好きになったヤツは大抵死んだ。誰もりりすを殺しはしない。君はどうなのか。殺しながら、殺したい。殺されながら、殺したい。一人で生きるのも、一人で死ぬのも寂しいから。 炎を纏う弓が、生と死をも其れすらをも超える衝撃が、少女の柔らかい体に放たれる。早愛の瞳が、揺れる。膝が折れる。彼女へ放たれた焔が、其の侭、少女の運命を燃やした。 「私、とっても良い女でしょう」 紫月と、りりすへと向けられた瞳。倒れ込んだ早愛の隣へと歩み寄り、『M少女のお約束』をミリィは握りしめる。 「元カレさんには、グーパンですよ」 さあ、今日の殺戮劇場は終わり。 ――二度目の恋ってなんて、重たいのかしら。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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