● 「前回までのー」 「あーらーすーじーぃッス!」 どんぱふどんぱふ。 狐耳に狐尻尾の東屋あいと、狸耳に狸の尻尾の東屋まい。なにやら二人の革醒者が手に手を取って二人組み体操的な何か。 「で、ッスね。あいちゃん」 「はいはい、まいちゃん?」 「結局、今どないなってるんでしたっけ?」 二人が会話をしているこの場所は、とある学舎。 彼女らが幼少時代を学び、笑い、泣き、そして卒業していったその学び舎は、長い年月の末に晴れてその役目を終えた。 もはや訪れる者のないその学校は、このままただ静かに朽ちていくのを待つのみ。そのはず、だったが…… 「ていうか、そもそも私達はどしてこんな廃校に何度も何度も足を運ぶ羽目になってるのか覚えてますか、その辺」 「あー……うん、ええ」 正座。 はじめての人にも優しい状況作りを、彼女達は信条としているのだ。 「現状を簡潔に説明しなさいな」 「ええ……まず、ッスね。ことのはじまりは、ボクがこの学校の調査をしようと言い出したことに端を発するッス」 「うんうん」 「それというのも、この近くで過去に開いたことのあるD・ホールの影響を調べるという名目で……この校舎におわかれをしたかったっていうわけなんスけど」 「ええ、なるほど」 「そいで、双子の姉であるあいちゃんとリベリスタの皆様方を巻き込んで夜の学校に忍び込んで……」 「よくある陳腐な展開ですね」 「ところがこれ、不用意に入り込んだおかげで眠っていた小学校の怪異を再び呼び起こしてしまったようで」 「責任問題ですね」 「それも、リベリスタの皆様の思念が現実に実体化する形で。おかげで、この学校……」 「訴訟問題ですね」 「あいちゃん!!」 「はいはいごめんなさいまいちゃん。茶化すのはやめましょ。で、どうなったんですって?」 「学校、総結界化!!」 「いえー」 「いえーい!!」 やけっぱちのテンション。 深く考えたら負けだと、思い始めているのである。 「でもッスね。でもッスね! これはチャンスッスよ!」 「なにが?」 「予定とは少し違うッスけど、これもひとつの思い出作り! 去り行く校舎に、ボク達の手で引導を渡すんスよ!」 「またもう、あなたは」 「あいちゃん! 勿論手伝ってくれるッスよね?!」 「何にも反省してませんね」 「勿論みなさんも!!」 言うなり、ぺふんと一歩、敷地内に踏み込む。 「あいちゃんまいちゃん、おはよー」 「おはよッスー」 「おはようございます」 「みんなも、おはよ!」 言うなりてってってと走っていく少女。 草木も眠る丑三つ時だったはずなのに、残暑もまだやや厳しい山間の昼間に一瞬で変わっていた。 こほん、と一息入れる。 「……んん? えーと、前回のミッションをこなして……今回この結界、どこが変わったんスかね?」 「……ええ、それは……」 きつねの耳をひくりと動かして、周囲を見渡す。 「ひらたく言うと、彼らの一つ一つに個性……独自性が生まれています」 「……ふぇ?」 「まあ、この結界の内側という限定付きですし、結界が消えれば消える陽炎のようなものですが……彼ら一人ひとりに、個性が生まれているようで」 「それは……でも、それって」 それは、つまり。 結界を消すと言うことは即ち……。 まあ。 「難しいことは考えないことにしましょう。ええ、君子は危うきに近寄らぬのです」 「いーんスかねえ」 「おだまりっ」 こほんこほん。 少し重くなりかけた空気を咳払いで払うと、改めて双子の少女はリベリスタ達に向き直った。 「さて。これからボク達は、七不思議にひとつひとつ引導を渡していかなければならないんス」 「数は文字通り七つ……で、済めばいいんですけどねえ」 「四番目の怪談は……“音楽室の小人”の話ッス」 「誰もいない音楽室にお菓子を置いておくと……小人が現れるっていう話ッスね。んでんで、ピアノを弾く……とか。これだけだと何をしたいのかいまいち判らない怪異ですねえ」 「んだけどコレ、やっぱりこう、お約束のように目撃者がいないんスよねえ」 「……なのにうわさは広まってると? 何かおかしな話ですねえ。うわさが広まるからには見た人がいるはずなんですけど」 「一匹見たら三十匹?」 「根っこからどげんかせんといかんのですかねえ」 「今から頭が痛いッスが……」 「では皆さん、今回も宜しくお願いしますね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕陽 紅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年11月18日(日)23:18 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● ――はじめは? C? 次はF? いいかんじ? 次は? E! マイナー? メジャーのようで。 それで? F、A、C、F。 いい感じですな? では次は。 左手のことも考えなくては。 こーどは? えふ、めいじゃー! ところで、こーどって何? ……さあ? 「お年は?」 「べるか! 6さい! いちねんせい!」 東屋 あい、問う。『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(ID:BNE003829)、答える。かわいい。 「がんばればきっと、てるせんせーがほめてくれる! たんいくれる!」 やっぱりかわいくない。 ともあれ、音楽室。先を行く仲間に追いすがるうち、いつの間にかはぐれていた彼女は仕方なく元から思っていた調査場所に付いていたのだ。 置いていかれた彼女は、かと言って寂しい気持ちはあまりなかった。物理的なことはさして問題ではないのだ。気持ちの話。 思えばベルカは、大変なお姉ちゃん子だったのだ。 彼女にとってのコミュニティにおいて末の子の彼女にとって、小走りはさして珍しいものではなかった。年上に並び立ちたい。だから、焦るし悔しがる。今そういう気持ちが湧いてこないと言うのは (つまり、私はもう自分で歩いているということなのだな) などと。 感慨に耽りながら、昼休みの薄暗い室内を漁りにかかっている。 「例えるならそう、思い立ったら山くらい超えてトンモコロシ抱えて病院とか」 「おっとそこまでよ!」 どーんと『Trompe-l'œil』歪 ぐるぐ(ID:BNE000001)がおしりでアタックした。弾みで羽根が漏れそうになるので慎重に隠す。ちんまりさでは彼女も負けてはいないが、実は服装以外見た目はそんなに変わっていなかったりする。 小人さんってどんな子達だろう。お菓子は何が好きなのかな? 首を傾げて隙間だのピアノの中だのを覗いてみる。最早ちょっとした冒険気分。怪盗ぐるぐさん、あちらこちらを覗いちゃいるのだが、昼間の学校に何か芳しい痕跡がそうそうあることもなく。 「小人さーん小人さーん……」 好きなお菓子はあるのかな? 嫌いなお菓子は? おもちゃとかだと反応しない? 別のとこでも試してみよう。本人が意識してかしないでか。彼女の試行は、何か一つの様子を思い起こさせた。 例えば、クラス替え。 知らないひとと、はじめまして。 あの子は何が好きなのかしら? 何をしたら仲良くなれるかしら? それは、恋に似ていた。 「いやしかし、見事にふつーの音楽室ですねえ……」 「うむむ……あ、ちょっとそこなひと」 はてな、と首をかしげるあいに眉間に皺を寄せて考えるベルカ。とそこで、扉を開けて入ってきた子供に声をかける。 「なに?」 子供の装いは黒髪のおさげ。全く以って正統派の真面目系女子スタイル。 「こびとのはなしって、きいたことあるか?」 「え、うん。ベルカちゃん知らなかったの?」 「ん……みたことは?」 「……ないよ」 「あー、あるある……らしいよ」 「ほう、その辺くわしく」 『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(ID:BNE000189)がずいと顔を突き出して訊く。 「あ、うん……おれも友達に聞いたくらいなんだけどさ」 「友達?」 漏れ出た少年の言葉は、戸惑いに満ちていた。が、不信感は抱いていない。刺激に飢えているのは誰も変わらず。ということか。風見 七花(ID:BNE003013)が、その引っかかりに食いついた。 「その彼は、今どこに?」 「あー、そこ」 あっさりと。 幾多の疑いの網を、それはもうあっさりと掻い潜って、少年は教室の隅を指差した。書生じみたおかっぱ風の、艶やかな髪を目にかけて本を読んでいる、少年は教室に必ず一人はいるタイプの子だ。ありがと、と謝辞を言い渡すと、二人は駆け寄る。足音を聞くと、少年はぱたりと本を閉じた。半目に近いのは、不審ではなく単にこういう性格なのだろう。 「聞いてましたよ、話」 「ならば話は早い」 きらりんと煌く虚ろなうさぎの目。 「ピアノ、聴いたんですよね」 「あぁ、はい」 こくりと少年は頷いた。 「お菓子、持ち込んでたんですか?」 「いえ。僕は外から聞いてただけで……その、僕もそういうの、興味ありましたし。僕が中にいた時は出てきてくれなかったので」 七花の問い。少年は少し頬を赤らめて頷く。申し訳ないと思いながらリーディング。ちょっと早めの自立志向。そういう性格でありながらあっさり認めるという点で、ずいぶん大人びた子だが。だからこそ、何かがある気がしたのだ。 「じゃ、聞いたんですか? 彼らのピアノ」 「えぇ、まぁ」 ……ならば。 「それは、適当な音でしたか? それとも」 「いえ。酷く拙くて不恰好でしたが……何か、楽譜を追おうとしている気はしました」 「何て曲で?」 「えー……ちょっとわからないです。僕、クラシックとかよく知らないし。ただ、音はこうだったかな」 そう言うと、少年は音を口ずさみ始める。 テンポも何もなく、それは曲の体を成しているとは言い難い。だが、音感は確からしい。ひとつ、ひとつ、音は四分音符一拍分の時間をかけて進む。それは、確か―― 「ふぅん?」 はて、と『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(ID:BNE003405)は首を傾げた。これは何? AFで連絡を取り合う彼らは、各々の情報を定期的に交換し合う。だから、どこかで起こったことはそう間を置かずに耳に入るわけで。 色々な人の話を聞くにつれ、これは何か、自分の思っていたほど難しい話ではないような気がする。そしてだからこそ、ことの本質には程よく近づけない感じもある。 「あっさり、音を聞いた人は出てくるんですね」 そのあたりは『親不知』秋月・仁身(ID:BNE004092)が考えるのと大差なかった。 「しかし、とすればどうして目撃者はいないんスかね」 まいの疑問。 「理由付けは結局、何の根拠もありませんしね。確かめたいなら検証するしかない」 「でも……ねぇ?」 シャルロット、そして仁身の推測、あくまでその域を出ない。彼ら自身情報を集めながら、しかし積極的な思考も持たない。情報を集積するだけではノートとさして変わらず。 ともあれ、集めるべきは情報である。 合唱部に籍を置く少女は、齢も十代の半ばを過ぎていた。それが、見た目では十歳とまではいかないが、それに近いくらい下の少年少女達に見つめられて首を傾げている。 「えー、と?」 「つまりですね」 『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(ID:BNE001084)が勢い込んで身を乗り出した。 「あなたは、合唱部の伴奏者だと聞いて来たのですが……」 「あぁうん、そうそう。よく知ってるねえ? ここにたどり着くのは随分早かったわけだ……」 それはもちろん。 だって調べて来たし。 などといった内面などわからないまま、話を続ける。どうやら、少女は単純に“うわさ”に興味を持った低学年の児童らだと判断したようだ。これ幸いと、『骸喰らい』遊佐・司朗(ID:BNE004072)が畳み掛ける。 「たどり着くのは?」 「早晩、君達は私のところに来ていただろうからね。興味がある人なら、絶対に。小人について聞きたいんだろう?」 「あなたが噂の元ってわけ?」 「厳密には違う」 司朗の言うことに、少女は肩を竦めた。 「自然発生の噂に、出発点はあっても根源なんてあるわけない。何せ根も葉もあれば火が起こって煙が立ってすらいるんだからね。樹形図なんて出来るわけがないさ。あくまでそれは並列なんだよ」 「……うに。でもじゃあ、何故……」 小さい子供にするにしては随分大人びた言葉の羅列。これくらい理解して当たり前だとと言っているようでもあった。その違和感には一先ず目を瞑る。 見た人はいないし、被害もない。 だのに噂が広まっているっていうのは。 「誰かの嘘、とかではないのですか?」 「何故?」 「誰も見たことがない、って」 「裏を取ったのかい? 嘘を言っている可能性は? それとも自覚していないだけかも知れないよ」 黙り込む。 「なんてね……まあ、誰かの作為がない、と断言する何かもないし、本当に誰も目撃者がいないのかも知れないけどね。私に教えられるのは、“彼ら”に会うための手段だけさ」 後ろ手に組んで、挑戦的に笑う少女の目は弦月だった。 君ならどうする? 目がそう聞いている。 「一つ忠告しておくけど、会えなくても気落ちしないでね。気まぐれだからさ、彼らは」 ● 「というわけで」 あいがぱしんと手を叩く。 「皆さん、準備はよろしいですね。まあ、よくないと言っても済ませてしまわなければいけないわけですが、これ」 夜半の学校。 既にこの学校に大なり小なり関わっている人間には見慣れた風景ではあるが、人気もない山間の夜というのは、これで中々怖い。 虫の声だけがしじまに鳴り響いて、月光は柔らかく窓明かりを生んでいた。 既にリベリスタ達は菓子を置いている。後は出るのを待つだけ。 ひっそりと息を潜める。 彼らの姿を、見られるのかどうか。 息を詰める。 ――C。 ピアノを習ったことがある者なら、いの一番に押すだろう音が響いた。リベリスタ達は、弾かれるようにピアノに目を向ける。 姿は…… ――F。 見えなかった。 何もない。ただ、ピアノの鍵盤が沈み込んで単音を月明かりの差す教室に薄く滲ませている。 やはり、難しいことだったのか。 落胆の空気の中、つ、と一人、進み出る影があった。 「違う、そうじゃない」 きっと彼らは、それがわかっていないだけ。 話を聞いて、その確信があった。 少女は/うさぎは、白い鍵盤に指を伸ばす。別に心得があるわけではないけれど、リズムを取ることくらいは出来る。 旋律は、四分音符のC、そして二分音符からスラーで繋がれた八分音符。EFACFF。模られたメロディ。 突然ぴん、と八十八の鍵盤の一番上が鳴った。驚いてうさぎが鍵盤から手を離す。そこから次々に――あり得ざることに、月の光が鍵盤を舐める。従うように、グリッサンド。浮き上がる鍵盤から、飛び跳ねるように小さな人影が飛び出してきた。 「やー!」 「それ、その曲」 「弾けるんだ?」 「おせーて!」 「僕ら、あんまりその辺センスないから」 「あー……えと」 困惑するリベリスタ。 思ったよりフレンドリーだった。 「音符って言うか……音そのもの?」 頭の上に乗っかった小さいヒトガタを指でつついてベルカが首をかしげた。悲鳴を上げながら小人がころげ落ちる。 見ていると、音が鳴るたびに生まれる小人は、部屋を埋め尽くすほどに増えはしない。一定の数を保っている。余韻が次第に薄れ行くように、気付いたら居なくなる。 「音符って言うほどはっきりしたものでもなかったわけだね。ますます謎生物……」 「僕ら、音とか食べて生きてますので」 「……あぁそう」 司朗が肩を竦めて嘆息する。広い世界のアザーバイド、今更突っ込みもしない。そういう概念の世界があったところで何ら不思議ではない。 「でも、それなら何故お菓子」 「甘いものも、概ね好きだし」 「あぁ……それで」 音、と言うのもまだ正確ではないのだ。 七花は、話を聞いた少年にリーディングを使ったときのことを思い出す。 喜の感情、楽の感情。おそらく、これらの原動力はそれだ。 しかし、それならば。 「なんで見えなかったんだろう。あなたたち、何かわかります?」 誰かの嘘や冗談だと、ななせはそう思っていたのに。 「あー……」 「僕ら、ほら」 「上位の存在?」 「ていうか魔力の塊?」 「ひとの目には見えぬー」 「でもたまに見える人とかいます」 「あなたがたみたいなの時々」 そういう話ならこの結界と、それによって生み出された生徒たちも似たようなものだろうと、ななせは思ったのだが。ふと思いなおす。 「個性があるなら、尚更ですか」 彼らは神秘とは蚊帳の外の存在……少なくとも、そういう設定ではあるわけだ。 誰もの目に見えてしまっては、そこには矛盾が生じる。閉じた箱庭にとって、矛盾は軋みを生み出すのだ。 一方彼方、ピアノの周りではぐるぐとうさぎと小人たちが戯れている。特に怪盗ピンクの周囲にはわらわらと。 「おもちゃとかはどう?」 「お?」 「何か好みかもしれません」 「素敵!」 「あ、アイス溶けてますが……」 でろりとした食感になってしまったアイスを見て小人はがっくりと来ているが 「まーまー、これはこれで乙なものよー?」 とろりクリーム状のを指で掬ってぐるぐが差し出す。舐め取って幸せそうな小人。うん、何の問題もない。それを見て、慎重に観察しようと思っていたうさぎは思った以上の馴染みように拍子抜けた感じを受けていた。 「まあ……良いですか。仲良くできるならそれが一番です」 ピアノの中をさりげなく横目には止めながらきょろりと目を動かす。 「ほら、あなた達。さっきの曲はこれが楽譜です。これなら弾けますね?」 「…………」 「何か望むこと、ほかにありますか?」 「……ご一緒?」 上目遣いのおそるおそるの問いに、すちゃりとリコーダーを取り出して応える。 演奏するのは、彼女が正体を突き止めたその曲。それを聞きながら、仁身が得心いったとばかりに頷いた。 「ゲートを開く切欠かどうかはわからないけど、この選曲はなるほどね、って感じだ。何か、すごく、この結界らしい」 少し哀愁と寂寥感が漂う音色。楽譜を与えられてみれば、小人達の演奏――飛び降りて鍵盤を踏み、空中で姿勢制御して音色まで繊細に表現する。たとえ何人現れようと、鍵盤の上にいるのは最大でも10人だ。 「――そういえば、ピアノに使うのも10本だよね」 だからどうだと言うことは、あるのかどうか。 夜の学校、月光に照らされて、リベリスタとアザーバイドの小さなさざめき。 「で、君らはいつ帰るの」 「朝には?」 仁身が、呆れたように小さく笑った。 満足するまで付き合え、ということらしい。 寂しげな曲は、“その記憶”を持つリベリスタ達の心を否応なしにくすぐった。もう戻ってこない時間を思い返すように、あるいはかつて得られなかった時間を必死に追いかけるように。 ゆったりとアルペジオ。 あるいはこの光景こそ、その曲の表題そのものであるのかも知れなかった。恐らく数時間後には、帰っていった小人の通る穴をうさぎが塞いで、それで終わりの一夜の夢。 子供の情景。 トロイメライ。 どうでもいいけど、あんまり怪談って感じじゃなかったよな。 司朗が最後にそう呟いたが、まあそういうものだろう。 ひとつくらい、こういうのがあっても良いじゃないか。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|