●炎は溢れて どんな電車も通り過ぎていく、忘れられた地下鉄の駅。都会にありながら、ポッカリと穴が開いたように人気がないこの駅は、閉鎖されて久しい。一日中、地下鉄のライトに照らされ、何も残っていない構内が見えるだけの場所。 それでも、ごく偶には人がやって来る日もある。その日は、ちょうど定期点検の作業員が入っていた。 点検、とはいっても簡単なチェック項目を確かめるだけであり、作業員の表情には余裕が浮かんでいる。言ってしまえば見回りと何ら変わりない仕事であり、楽な仕事であった。ここは普段閉鎖されているので、不審者だっているハズもない。 汗が流れる。 「今日は、やけに暑いな」 作業員は額を腕でぬぐう。べっとりとした感覚が腕に伝わり、ひどい量の汗が出ていることを伝える。本格的な夏はまだ先なので、異常気象なのかと作業員は思った。 「……さっさと終わらせるか」 そう言った表情には、先ほどまでの余裕はない。早く終わらせて、サウナのようになっているこの空間から早く逃げ出したいと思うばかりだ。そう思うのも当然だろう。この部屋は今も温度と湿度が上昇中であり、やる気がみるみるうちに削がれていくのだから。 仕事は若干やっつけ気味になってしまった。 「よし、最後の部屋だ」 元々が単純な仕事であったし、それほど多くの仕事や細かい仕事はない。チェック項目が書かれた紙を見下ろしながら、作業員は最後の部屋のチェック項目を確かめた。開発途中で破棄された地下商店街のパトロール、と書かれている。 「まぁ……扉を開けて見ればいいか」 全身に疲れを覚えながら、そこに通じる扉を作業員は開けた。やる気はもはや完全に消沈しており、扉の奥に何があるのか興味すら湧かない。 しかし、そこには赤い海があった。 不自然に燃え上がっている炎が、そこを包んでいた。間違いない、大火災だ。その炎に当てられて、異様な熱気に汗が噴き出ては体中を濡らしていく。間違いない、暑さと湿気の原因はここで噴き上がっているこれだ。 全身が逃げ出せと悲鳴を上げるが、疲れ切った作業員の体はショッキングな光景を前に動けない。足元まで火の玉が来て、ようやく逃げた方がいいと気付く。 背を向けたその時、背後に何かが居るのに感付いた。……人の形をした、マグマが居る。 それは顔の輪郭を歪ませて、ドロドロの炎をまるで水を切るように振り、作業員に炎を飛ばした。 炎は作業員が悲鳴を上げる間もなく燃え広がり、作業員はあっという間に絶命してしまう。 人の形をしたマグマは大手を上げて、地上を目指して動き始めた。すると、地下商店街に溜まっていた炎は付き従い、轟々と燃え広がり始めた。 地上の街が、この炎に焼き尽されるのに、そう時間はかからないだろう。 ●マグマの化身 その映像を見ながら、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は小さく首を横に振った。 「もう彼の命は失われてしまっている。だから、私たちにできるのはこの炎を止めることだけだよ」 小さな体を震わせながら、真白イヴは地下鉄駅構内の地図をモニターに表示させる。小さな体に強い心を持っているのだと、リベリスタたちは改めて思う。だからこそ、力になってあげたくなる。 「入口は作業員が開けた場所からそのまま入れる。だけど、入って少し進むともう炎が見えてきちゃう」 通路をモニターで表示する。そこには、意志を持っているような炎が、勢い良く燃え広がり始めていた。こんな炎が地上に発生したら大変なことになる。 真白イヴは不安を顔に表す。 「敵はエリューション・エレメント。アークではマグマの化身と呼んでいるけど、好きに呼んでいい。これを撃破すれば、炎は止められる」 だけど、炎を使っての範囲攻撃を得意としている。と補足が入る。一筋縄では行かない敵のようだ。 「……」 だからか、真白イヴの表情もいつもより暗い。既に犠牲者が出てしまっていること、これから犠牲者を多く生む予定の災厄を見てしまったこと。色々なものを背負っている、という感じがする。 リベリスタのうちひとりが、そんな真白イヴの頭を軽く叩いて、笑う。 その笑顔は、炎にも負けない明るさを持って、真白イヴの顔を笑みに変える。まさに、魔法の笑顔であった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月15日(水)22:37 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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