●予期せぬ事態 人里を少しばかり離れると意外と自然はあるもので。今、目の前にも鬱蒼と木々の生い茂る小高い山が聳えている。 アークの調査団の一員はその山を登り一つの山小屋へと訪れていた。 そこでは一つの凄惨な事件が起きた。とある登山客のグループが行方不明となり捜索の結果この山小屋で発見されたのた。物言わぬ骸となって。 調査の結果、その登山者グループは天候が悪くなった為にこの山小屋を利用して一晩を過ごすことにしたのだがそこでナニモノかにより襲われ殺害される。 遺体は損壊が激しくその傷跡や、山小屋の床や壁その周辺に残された痕跡から獣の類に襲われたと判断されていた。 「正確にはエリューション・ビーストですね」 調査団の中で唯一の未成年の少女がぽつりとそう呟く。ツインテールに結んだ薄金色の髪を揺らし、惨劇の跡が色濃く残る小屋の中を歩きながら時に壁を、時に机をとそっとその白い手で触れる。 彼女はアークに所属するフォーチュナの一人であり今回この小屋の調査を行う為に動向してきたのだ。 とは言っても、その問題のエリューションも既にリベリスタ達に討たれおり今回は事後調査ということで訪れていた。 「獣型、恐らく狼です。サイズは大型犬、特別な能力は見られず……フェーズ1と判断します」 サイコメトリー、物や場所はたまた生物が持つ記憶の残滓を読み取り過去を知る能力だ。 淡々と少女の告げる言葉を調査員の一人がキーボードを叩き記録を行う。 この調子ならば程なくして事後調査も終わるであろう。調査員一同も、そしてフォーチュナの少女もそう思いながら作業を進めていた。 程なくしてその身を襲う狂気と絶望の牙が迫っているとも知らずに。 ●緊急出動 突然召集されたリベリスタ達は説明も碌に受けられぬままに輸送車両へと押し込まれた。 車両は急発進し明らかに法定最高速度を超えて突っ走る。 「急に呼び出してこんな扱いですまないね。緊急事態なんだ」 車両に備え付けられたモニターに現れた『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は謝罪も挨拶も短く終えて状況の説明に入る。 リベリスタ達のそれぞれの端末にとあるエリューション事件の報告書が表示される。言ってしまえばありきたりな討伐依頼でありつい先日に解決した事件であった。 「そう、だからこそ調査に行かせたんだけどね」 続いてリベリスタ達の端末に映るのは数名の人物の写真と簡易プロフィール。アークの派遣した調査団のメンバーだった。 「ん、この女の子って……」 「そう彼女はフォーチュナだ。まだ卵の殻を破ったばかりの殻付きのひよっこさ」 その中には薄金色の髪の少女も含まれていた。 今回はアークの仕事を知って貰う為の研修と経験値稼ぎがてらの簡単な仕事だった。そう、そのはずだったのだ。 「万華鏡(カレイド・システム)を使った予知で調査団一員がエリューションに襲われることが分かったんだ」 端末に表示されるのはその事件の概要。ビースト・エリューションに襲われ調査団は全滅するという未来が映し出されている。 情報を見る限りで今回のエリューションは前回討伐されたはずのモノとかなり酷似、いや全く同じものにしか見えない。 リベリスタがモニターの先の伸暁へ視線を向けるが、伸暁は静かに首を横に振る。 「討ち洩らしがあったはずはない。けど現にこうして襲撃があるのは確かだね」 この襲撃が偶然かそれとも別の何かがあるのかは分からない。ただやるべきことだけは決まっている。 車両は既に山道へと入り舗装が甘い道路にたまに車体を揺らしながら暗闇を走り抜けていく。 「今回は調査団のメンバーの救助が第一だ。ひよっこ達のこと頼んだぜ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:たくと | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月14日(火)21:42 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●闇夜を駆ける 黒に塗りつぶされた森は僅かな月明かりによってその形をぼんやりと見せている。そこに何条かの光が射し闇を払って緑の葉や茶色の幹をしっかりと認識させた。 「フォーチュナの卵、ね。無事になんとか助けねえとな……っと、こっちだ」 『蒼き炎』葛木 猛(ID:BNE002455)はその中で先導して前を走る。彼の目にはこの暗闇の中でも明かりを頼ることなく森の全容がハッキリと捉えていた。 それを活かし仲間達を立ち止まらせることなく最適な道順へと導く。 「弱き命を脅かす外道者! 父の弓で射抜きます!」 猛のすぐ後ろについて行く『ミス・パーフェクト』立花・英美(ID:BNE002207)は気合十分とぐっと拳を握りその意気を示す。 「でも討伐したはずなのに復活したかもってお話も面白そうだわ」 アーク調査団の救助も然ることながら今回の不可解なエリューションの出現に『プラグマティック』本条 沙由理(ID:BNE000078)は興味を示す。とは言ってもやはりまずは救助を優先するべく気を引き締める。 その時、皆のほぼ中央を走っていた『クレセントムーン』蜜花 天火(ID:BNE002058)はぴくんと帽子からあふれ出た大きなロップイヤーの耳に触れる。 「見つけたです。やっぱり山小屋は黒狼に取り囲まれちゃってるです」 移動してくる際に使役した野鳥を飛ばし偵察としていた天火は今しがた送られてきた五感の一つ視覚を持ってその光景を確認する。 小さな山小屋を囲う幾つかの影。それが小屋への体当たりや威嚇を行いその中の獲物を狩ろうとしているのが分かる。 「こっちにはどうやら来てないみたいよ」 「では急ぐとしよう。地球が泣いている」 周囲の熱を読み取って奇襲の警戒をしていた『存在しない月』ウーニャ・タランテラ(ID:BNE000010)はそう促す。 そのウーニャの言葉を受け『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(ID:BNE002315)は逸早く現場へと到着するように速度を上げる。 彼にとってフォーチュナとは地球の涙を止めるための重要な役割を担う存在なのだ。 そんな皆が意気込む様子を最後尾にて眺めている少女――『原罪の羊』ルカルカ・アンダーテイカー(ID:BNE002495)はそれに同調するわけでもなく、また冷めた目をするわけでもなく。少しだけ楽しげに口元に笑みを浮かべる。 「戦うついでに人助け。そういうのはきらいじゃないよ」 そろそろ山道を抜け山小屋が見えてくるはず。リベリスタ達は各々の幻想纏い(アクセス・ファンタズム)から破界器(アーティファクト)を顕現させそれぞれに戦闘態勢に移行する。 その仲間達の頭上にて一人、黒い翼をはためかせる『天眼の魔女』柩木 アヤ(ID:BNE001225)は徐に一枚のタロットカードをその手に召喚する。 そのカードは『塔』の正位置。それを見てアヤは表情を変えることなくそのカードを空気に溶かすようにして幻想纏いへと仕舞い込む。 「さて、この結末はどうなるかしらね」 ●獣の狩猟 森を抜けてリベリスタ達がまず目にしたのは山小屋の入り口へと群がる何匹もの黒狼達の姿であった。距離にして五十メートルほど。沙由理は救援の到着を知らせる為に大声で小屋へ向けて伝える。 「助けに来たわ。こちらから指示するまで、扉を開けないで閉じこもっていて」 小屋からの反応がある前にその声に黒狼達は新たな存在の出現に気づき、リベリスタ達へと向き直って唸り声を上げる。 「そこからどいて貰うわよ!」 逸早く動いたウーニャがその手に魔力で作り出されたカードを投げつける。飛来するカードに集まっていた狼達は一気に散開する。 小屋の正面に横に並ぶようにして黒狼達はリベリスタ達と対峙する。その数は六匹、情報よりやや少ない。 「数が足りねえな。やっぱり反対側か」 「うんっ、裏手にも何匹かいるみたいです」 猛の言葉に天火が使役した野鳥の情報を視て頷く。 「それならこちらは任せて何名かは裏の方へとお急ぎ下さい」 英美は長い金髪を揺らし、手にした強弓の籐頭と弦の中仕掛に光を灯らせる。矢を番えぬまま光球宿る弦を引き、それを放つと籐頭の光とぶつかり合って無数の光弾となり影狼達へと降り注ぐ。 影狼達が怯んだ隙にリベリスタ達は一気に距離を詰める。半分は正面に残り、もう半分は小屋の裏手へと。 「まずは入り口を確保しなければ。少女達よ着いてきなさい」 盾を打ち鳴らしガガーリンは盾をかざしたまま小屋の入り口へ向けて突撃を開始する。沙由理や英美もその意図を解してその背を追う。 体勢を立て直した影狼達は迫りくるガガーリン、いや壁のような存在に果敢にもその身を全力でぶつける。中型犬ほどの大きさの獣としては考えられない重さが盾越しに伝わる。 ガガーリンが一瞬速度を落とした隙に二匹の影狼が回り込みその牙を剥く。 「させるものですか!」 飛び掛る寸前だった影狼の一匹に沙由理の放ったダガーが前脚へ刺さりその動きを止める。しかし二投目に入る前に飛び掛ったもう一匹の影狼はガガーリンの右腕に喰らい付いた。 「なんのこれしきのことで!」 ガガーリンは両手持ちの盾から喰らい付かれた手を一度離し、そのまま影狼ごと地面へと叩きつける。強かに大地に打ちつけられた影狼は牙を離し転がるようにして逃げ出した。 だが、その隙に別の狼達はまた小屋への突入を開始する。一匹の影狼が壊れた扉に体当たりをする度に木々のへし折れる音が響く。 「させないよ」 ぽつりと一つ言葉を残し、それを置き去りにする速度でルカルカが飛び出す。周りの影狼達が反応をする前に一直線に駆け、扉の前の影狼の背中を取る。 影狼が月明かりに影が差し、ナニかが居ることに気づいた時にはもう遅い。振り上げた無骨な鉄塊が振り下ろされる。 「いただきます……キミはもうご馳走様かな?」 ルカルカはぴくりともしない黒狼を一瞥し、黒い粘質な液体を零す鉄球を持ち上げた。 一方で裏手に回ったリベリスタ達もまた影狼達と交戦していた。 「あっ、こら。駄目です!」 窓を突き破りその上半身を小屋の中へと入り込ませていた影狼を天火が強引に外へと蹴り飛ばす。 影狼の数は四。表の数とあわせれば情報にある通りだった。 アヤはマナを循環させ、それを破壊の力へと変換し魔弾を上空より撃ち込む。しかし影狼達は巧みに物陰や木の裏に隠れてそれをやり過ごす。 「アークから派遣されてきたわ。中の三人は無事かしら?」 割れた窓を背にしてアヤは問いかける。すると一人の少女がその窓の前へと立った。薄金色の髪の少女、新人フォーチュナの月河 瑪瑙だった。 「私ともう一人の方は無事です。しかし一人が腕を噛まれてしまい重傷です」 瑪瑙は淡々とした口調で告げる。アヤが視線を移せばアーク本部の制服に身を包んでいる瑪瑙の体にはあちこちに赤い染みが広がっていた。 「つまりは早いところ片付けないと拙いって訳か」 その声を聞いていた猛は手甲を鳴らし影狼達を一瞥する。 「そういう訳だ。さっさと狩らせて貰うぜ、狼さんよ!」 猛は森の闇に紛れようとする影狼を捕らえ接近する。彼の目には幾ら闇へ潜もうと見抜く目がある。寧ろそうして攻めの姿勢を崩した相手は格好の獲物だった。 炎を纏わせた腕を振るい、闇から炙り出した影狼の腹を鉄の拳が抉る。同時に噴出す火炎を持ってその身を焦がしその影すらも取り払う。 しかし、一匹に気を取られている隙にその背中に迫るもう一匹の影狼に気づかなかった。その鋭い爪が猛の背中を引き裂こうとする瞬間、その影狼はビクンと体を跳ねさせ攻撃を突然に躊躇う。 「もう、先走りは良くないわよ?」 本日二度目のカードを投げたウーニャが自分の口元に指を当てて猛を諌める。ウーニャはさらに短剣を持つ手から紺色の闇に溶ける色の気糸を周囲に流し、こちらへと唸る影狼への牽制とする。 一進一退。守り続ければ負けはしない。だが、重傷者がいるとなってはあまり悠長なことは言っていられない。 「なんとか。なんとかしないとです」 天火もこちらの様子を伺う影狼達を観察して突破口を開こうとするがそれが叶いそうな穴は見えない。 闇に隠れ影狼は吠える。山に響く獣の声は木霊して、獲物へと剥いた牙はまだ隠そうとはしない。 ●全ては闇に消えて 正面を守る四人の戦いぶりは順調と言って良かった。既に影狼は数を二つ減らし残りは四匹。このまま守りきることも、時間をかければ倒すことも難しいことではない。 しかし、そこである情報が耳に入ってくる。正面側に回った瑪瑙が扉越しに怪我人がいることを伝えたのだ。 「困ったわね。治癒ができる人は確か……」 沙由理の言うとおり今回のリベリスタ達に回復スキルを持っている者は誰もいない。 「ふむ、少女達よ。少しばかりこの場を任せても宜しいか?」 話を聞いていたガガーリンは突進してきた影狼に盾を叩きつけて逆に弾き飛ばしそう問う。何か手があるのか、他の三名はそれに是と答えるとガガーリンは盾をこじ開け小屋の中に入り、盾を扉代わりに固定して奥へと消える。 これで現状は三対四。盾役が居なくなったのは痛いがまだどうにかできるはず。 「その牙に誰の命も奪わせません! 父の弓は……パーフェクトです!」 英美は目に神経を集中させ影狼達の動きを見切る。用意する矢は八本、それを四つの標的に対して瞬く間に射る。放たれた矢は散会していた影狼達を確実に捉え深々と突き刺さる。 動きが止まった影狼の一匹にルカルカは鉄球を腰の高さに構えたまま接近。影狼は矢が刺さったままの体で牙を剥き、ルカルカに喰らいつく。しかし、ルカルカの姿は霞のように消えた。 「ねえ、羊に狩られる狼のきもちってどんなのかな?」 狼の真横に移動していたルカルカは鉄球を下から振り上げるようにして影狼の腹を叩き、そのまま宙へと浮かせる。身動きの取れない影狼は空中で回り暴れながら月に近づき、そして重力に捕まり地に落ちる。 「羊にもこんな戦える爪があるんだよ。理不尽、だね」 影狼が地面に落ちると同時に背負う構えからの振り下ろし。地面を陥没させ、羊はまた一匹狼を喰らった。 「まぁ、皆強いわね。わたしも負けていられないわ」 その時、回り込むようにして側面に走りこんできた影狼が沙由理に飛び掛かる。だが、影狼はその牙が届く寸前にその動きを封じられる。飛び掛かる体勢で宙に縫い付けられた影狼。その体には幾重にも絡みつく赤い糸。 そちらを見ることなく沙由理は影狼の顔に向けて手をかざし軽く握りこむ。赤い残影が走り、狼の頭はズタズタに引き裂かれた。 正面が果敢に戦っている中で裏手でも早期に戦いを終わらせる為に攻勢に出ていた。 猛の拳をかわした影狼がその脇を抜け小屋へと向かおうとする。だが、その後ろには天火が待ち構えていた。 「行かせないです!」 炎を纏った脚甲で蹴り上げ、体を起こしたところに胴を捻っての回し蹴り。影狼の胸に靴跡の陥没を残しそのまま木に叩きつける。 さらに追い討ちをかける様に地面に落ちた影狼の回りに広がる炎の魔方陣。天を衝く火柱が肉も骨も全てを焼き尽くす。 「これで二匹目。フェーズ1の割にはタフね」 アヤの視界にはいないが残り二匹の影狼はまだ戦意喪失もせずに闇と森に紛れ唸り声を上げる。 森から飛び出してくる影狼、猛と天火の拳と脚がその動きを奪い。トドメにとアヤはまた魔力を高める。しかし、突然に横合いから飛び出してくるもう一匹の影狼。集中に入っていた為にアヤは肩に焼ける暑さを感じながら勢いのままに倒れこむ。 痛みを堪えアヤが目を開けばそこには口を開けぬめる口内を見せ付ける影狼。咄嗟に杖を自身と影狼の間に構え噛み付きを防ぐ。影狼の咬噛力に杖は嫌な音を立て始める。 影狼が一度口を離しさらにもう一度噛み付こうとしたその時、アヤの視界から影狼が横にスライドするようにフェードアウトする。 「それ以上はさせないよ!」 ウーニャはすぐに立ち上がり飛び掛かってくる影狼の牙をわざと短剣に喰らいつかせ後ろに倒れこむ。そしてそのままもう片方の手で影狼の喉元にナイフを突き立てる。刃を抜き黒い血が噴出してその体を染めるのも気にせずもう一度、さらに深々と突き刺す。 「ありがと。助かったわ」 「どういたしましてよ」 影狼の死骸をどかし、アヤの差し出す手を握って立ち上がったアーニャは顔についた血を拭いながら軽い笑みを返した。 「よぉ、大丈夫だったか?」 「わわっ、ウーニャさん真っ黒になっちゃってます!」 ウーニャが影狼を倒している間にもう一匹を退治し終えた猛と天火も近寄ってくる。 さらに小屋の影から二つの影。 「あら、もう終わっちゃったみたいね」 「食べそこねた。残念」 正面で戦っていた沙由理とルカルカだった。 「こちらに来たってことは正面も終わったのかしら」 問いでなく確認。アヤの言葉に沙由理は頷き残り一匹になったところでその影狼は森の中へと逃げていったことを告げる。 最後に一匹だけ逃走したことは気になるが何にしても脅威は去った。また何かある前に撤退しようという考えに至る。 と、その時に裏手の扉が鈍い音を立てそれからゆっくりと開く。そちらを見ていればガガーリンとそして瑪瑙が一緒に外に出てきた。 「中の怪我人はもう大丈夫だ。地球の愛に感謝しなくてはな」 ガガーリンの力によって治癒はできなかったが出血を止め一命を取り留めることはできた。それを聞きリベリスタ達は一安心と胸を撫で下ろす。 と、瑪瑙は徐に影狼の死体へと近づきそっと手で触れる。サイコメトリーによる情報の吸い出し。その光景を始めてみるリベリスタ達は声を出さずにそれを見守る。 瑪瑙は死体から手を離すとリベリスタ達に向き直るが、沈黙を守ったまま特に喋りだす様子が無い。 「何か分かったことはないの?」 沙由理の言葉に瑪瑙は少し首を傾げ暫くしてから口を開く。 「前にここを襲撃したエリューションと全く同じ。それ以上の事は情報不足です」 瑪瑙は無表情に淡々とそう告げた。リベリスタ達は言いようのない漠然とした不安を感じた。しかし、今回の仕事は彼女達の救助でありそれ以上のことは必要ない。 リベリスタ達は手早く準備を整えて山小屋を後にする。特に何の障害もなく輸送車両まで辿り着きそのままアーク本部まで帰路へと着くことになった。 瑪瑙もリベリスタ達と同じ車両に乗り、天火から貰った飴玉を口の中でころころ転がしている。相変わらず表情に変化がないが。 その中で一人、輸送車両の窓から流れる木々を見つつ英美は呟く。 「これで本当に終わりなの……?」 その隣に座っているアヤは徐にタロットカードを一枚だけその手に取った。カードは『運命の輪』の正位置。 「たとえ終わりでなくても運命はきっと貴女に味方するわ」 遠くに聞こえる獣の声を聴き、リベリスタ達は闇に染まる森を後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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