●おじいちゃんの逆襲 ええいどういうつもりだだぶるくりっくだのどらっぐあんどどろっぷだのわけがわからんことをいわずともにかいおせもってうごけでよいだろうだいたいまうすをうごかせといわれたところでいみがわからんぼたんをおしたらうごくもういちどおしたらきれるそれでいいじゃないかまったくわけがわからないこんなものしごとでなければだれがかうものかたかいしちゃちそうでかたいものでぶったらすぐにこわれてしまいそうでああはらがたつはらがたつびじゅつかんのかたろぐいっさつていどのおおきさしかないくせにこれでまごのげっきゅうひとつきぶんもするというのだからなおのことはらがたつかみとぺんでじゅうぶんだろうだいたいまったくいらぬものなのだ、パソコンなんて! ●急募:リベリスタ(年齢不問) 「と、いうことだから頑張って」 「いやいやいやいやいや」 思わずリベリスタたちが入れた突っ込みに、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はむう、と口をとがらせた。 「確認したいことは?」 「まずこいつはなんだ」 「コンピューターおじいちゃん。略してCO。 パソコンに対する高齢者の思いがエリューション化したものよ」 「OK、順を追っていこう。 こいつの目的はなんだ」 「全てのパソコンの破壊」 「モニターの、こいつが立っている場所はどこだ」 「T県のゲートボール場。雨が降ってるのは梅雨だから仕方ない」 「こいつの大きさは」 「全長4メートルと推測」 「攻撃方法は」 「拳による打撃。電気を帯びてるのか、感電する恐れがある。 大きさと雨のせいで、固まっていたら2~3人同時に攻撃を受けてしまう可能性がある。 あとは怒るとゲートボール場全体に回避不能の雷を呼ぶみたい」 「で、どうしてこいつの外見が、おれたちの知ってる誰かさんそっくりなんだ?」 「多分偶然」 モニターの中心で電子社会への怨嗟を叫ぶE・フォース。 その顔は何故か『研究開発室長』真白智親(ID:nBNE000501)に酷似していた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ももんが | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月13日(月)21:06 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●現地集合 「やれやれ、厄介な敵じゃ。何も梅雨の時期に現れんでも良かろうに」 丑三つ時を過ぎた暗い夜空をうっとうしそうに見上げて『伯爵家の桜姫』恋乃本 桜姫 鬼子(BNE001972)が呟く。小袿を無理矢理つぼ折りにした壺装束にし、足に履くのは緒太の草履。物忌の証である赤い平織りの掛け帯に所謂貴重品入れである掛け護り。さらには麻で作られた薄い垂れ布の付いた市女笠まで被った完全装備の旅装状態である。どこに行く気だ。 「人の技術は日進月歩。段々と便利になってゆく生活の中で、置いて行かれそうな不安を感じるのもまた事実……さりとて放って置くわけにも参りませんか」 穏やかな声で、予言された敵への理解を示しつつ足元にランプを置いているのは『永御前』一条・永(BNE000821)。 十数本の鉄筋が、そのランプを中心に影の林を作り上げる。数時間前までは平凡なゲートボール場だったこの場所に、自分よりも背の高い鉄筋を植えたのは『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)である。鉄筋はそれぞれ距離を取って埋められているため、普通に移動する分には支障はない。 「あの室長の姿のエリューションを倒す機会など、まず他にあるまい。 たまにはこういう趣向も面白い」 缶コーヒーを片手に『燻る灰』御津代 鉅(BNE001657)は懐中時計を確認する。 もうすぐ午前3時。 「智親室長そっくりのE・フォースとはね。 やりづらいけど任務だもの。私情を挟まずにキッチリ退治しないとね」 鉅の時計を覗き込みながら『ガンナーアイドル』襲・ハル(BNE001977)が頷く。 「ふぇっくしょい! ずびい!」 雨が近づく肌寒い空気に『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)が大きなくしゃみをした。 「私もぱそこんとか苦手なのです! そんなもの! 吹き戻しやせみの抜け殻で十分なのですっ!」 「パソコンってあれじゃろ、文字書いたり絵描いたりできるやっちゃろ? 電源消すんがめんどかった覚えがあるのぅ~、ぶちっと消したらめっさ怒られたぜよ、なんかいちいちショットガンせなあかんのじゃっけ? よう分からんから電源そのまま消してもええ用にすればええのになんで(略)」 イーリスの後からぶちぶちと坂東・仁太(BNE002354)がぼやく。ショットガンで撃ったらパソコン壊れますって。シャットダウン、シャットダウン。 「パソコンとか、便利とルカはおもうんだけどね。 でも、そういうの、ルカ生まれた時からPCとかあったからそう思えるのかもだね」 待ち焦がれるような目で空を見上げた『原罪の羊』ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)が、仁太の言葉に少し考え込んで呟く。 やがて、ぽつり、ぽつりと雨粒が振り出した。 「雨は放熱が楽だけど……湿気は金属を傷ませる……」 紫の髪をなでつけながら『インフィ二ティ・ビート』桔梗・エルム・十文字(BNE001542)はCOの名付け親はきっと『戦略司令室長』(BNE000500)時村 沙織に違いない、とか考えている。 あっという間に強くなっていく雨に打たれながら、メイド服の上にフードに耳がついた、カエルのように見えるレインコートと長靴を付けたエリス・トワイニング(BNE002382)が強結界を張り巡らせる。 それからゲートボール場の中心を指し示し、小首を傾げた。 「なんか……見覚えのある……顔だけれど……思いっきり倒して良いの?」 「ルカは雨の日好き。雨の日に戦えるなんて最高」 どこか嬉しそうなルカルカの呟き。 そこには4メートルの白衣姿が、ゆっくりと像を結び始めていた。 ●名刺とノート 「一条永と申します。本日のお手合わせ、よろしくお願い致します」 最初に戦場に響いたのは、怨嗟でも怒号でもなく。 御前と付くその称号に相応しい、上品で楚々とした永の挨拶であった。 巨大エリューションの動きがぴたりと制止し、挨拶してきた相手を見返す。 COが何かを狙っているのかと、鉅は警戒を強めて息を詰めた。 「……こちらこそ、どうぞよろしくおねがいします」 ぺこり。 その巨体が丁寧に腰を折り挨拶を返す。 あまつさえ名刺を探そうとして見つからず、ばつの悪そうな顔をする。 リベリスタたちの多くは、呆気にとられそうになった。 よくよく考えればこのE・フォースは、嫌々ながらパソコンを使わざる得ない年配者の怨念の塊だ。礼儀と挨拶は企業戦士の嗜み。例え定年間近であろうと社命であれば不条理と意味不明の塊である通信機能付き機械箱の扱いすら覚えなくてはならない。かつて世界にカロウシを知らしめた社畜大国日本の生み出した、ワーカーホリックの呪縛に囚われし哀しきじゃぱにーず・さらりめんの姿がそこにあった。 ただし全長4メートル。 「正に時代が生んだ怪物、何と言う悲しい姿! ……パソコン恐るべし」 喜平が呻く。 「知っている御仁を攻撃するのは気が重いが、倒させて貰うぞぇ」 その微妙な空気を切り裂くように鬼子が声をあげた。 市女笠を外そうとして、雨水を吸って重くなった垂れ布が鬼子の天冠にひっかかったりしたが、とりあえずCOへと投げつける。 巨大なエリューション相手では目眩ましにもならないが、そこは一つの様式美。 戦況は概ね順調と言えた。 身体能力のギアを上げていたルカルカが鉄球を素早く振るい、その幻惑の武技が着実な打撃を与える。COは常に帯電しているようだが普段はピリッとする程度。特に注意するほどでは無いようだった。 そのさまに、安心して業炎撃を放てると見た鬼子の拳がCOの脛を焦がす。 己の影を従者に付けた喜平は植えた鉄筋を足がかりに跳びながらエリューションの胸元を射ち、仁太とハルの硬貨すら打ち抜く精密射撃が次々と射ちこまれる。 「安心せぇ! ひゃっぱつひゃくちゅうじゃけぇ!」 仁太の放ったクロスボウの矢は、その言葉にたがわず右目を刺し貫き、ハルの銃弾はCOの右肘を撃ち砕く。 もちろんCOも黙ってやられているわけではないが、最初の永の挨拶が功を奏したのか出現時より比較的機嫌が良いと見え(当社比)、振るうは今の所ガンコオヤジの如き拳のみ。対するリベリスタたちは複数人が一度に攻撃を受けることを警戒し、固まらず巨体を囲むように心がけている。 もうひとつの警戒すべき対象――イヴが言っていた広範囲の雷の予兆。それを見る必要は今のところなさそうだと鉅は判断し、影の従者とともに真正面に立つ。 「……見る必要がなさそうだからと、下がっている訳にもいくまい。 女ばかり攻撃の矢面に立たせるのは趣味に合わん」 攻撃を誘いつつも冷静に拳の軌道を観察し、雨を吸ったコートを重く翻らせながら拳の直撃をすんでのところでかわす。このカミナリオヤジの鉄拳を受けたところで、体内の魔力を強力に循環させたエリスの詠唱が癒しの風を呼べば、すぐに持ち直すことができそうだ。 「……ん。みんなの 健康状態 良好」 エリスはかわした鉅を見てひとつ頷くと、魔力の矢を呼ぶ魔方陣を展開させた。 少し離れた位置から永が無銘の薙刀から生み出した真空刃で切りつける。 桔梗が体内の無限機関から送られてくるエネルギーを機械の腕からバスターソードに送りこみ、一閃させる。闘気を漲らせたイーリスのオーラが雷気となり、彼女が天獅子と呼ぶ細身のハルバードから放たれる。 だが、当然。リベリスタたちが順調に攻め込む分、食らい続ける側の怒りのボルテージは見る見るうちに上昇していく。 「じゃまをっ、するなぁあ!」 攻防の中でエリューションの色濃い怒りの表情を見て取り、動いたのは喜平だ。 「御前が本当に怒りを叩き付けたいのは……コイツだ! さぁ存分に叩け!」 彼が地面を滑らせるように投げつけたのは、アクセスファンタズムから出したノートパソコンだった。それは丁度エリューションの前、その拳を叩き付けるのに最適な位置で止まる。COはそれに目を止め、ゆっくりと向きなおり。 「んぶるるぁぁぁああああ!!」 凄まじい怒りの咆哮(?)を上げた。 「逆効果か! いかん、来るぞ!」 鉅の警告が戦場に響き渡る。 パソコンが憎くて現れたエリューションだ。 一台を破壊して怒りが少しでも収まるものならば。 ――全てのパソコンの破壊を目的とはしないだろう。 「それのっ! どこがっ!! ノートじゃぁぁぁああああ!!!」 ●泥仕合 被害は大きかった。 大きな拳を恐れて散開していたためそれぞれの距離が遠く、庇いに行く事が出来なかったのだ。 雷が雨に濡れる早朝のゲートボール場を雷が舐め尽くし、戦況は一変した。 「やはり、通常の雷とは根本から別物か……」 拾い上げた己の携帯電話が破壊されていない事を確認し、鉅が呻く。 怒りの雷撃が迸る直線、彼は既知であり回復手でもある桔梗の頭上にこれを投げていたのだ。それが正常な物理法則に則った電流であれば雷はそちらに向かうはずだと考えたのだが。 「誰も私を砕けない。雷も、わたしの回路をオーバーロードさせるには足りない」 感電に蝕まれた仲間のため邪気を退ける神々しい光を振りまく彼女の傷は、浅くない。当人の意気が折れていないのが幸いだが、カエルコートの耳は折れている。 「じゃあ、避雷針も意味なしかぁ。眠いの我慢して作業したのに……」 COの視界からノートパソコンを早急に隠した喜平が恨みがましい声を上げる。 「右目潰した言うのに、視界も狭うなっとる風に見えんしなあ。 人に見えるんは形だけ、言う事か……」 エリューションと言う存在の不条理を前にし、仁太も忌々しそうに呟く。 彼はとっさに防ぐことができたために雷の被害が少なかった。狙い易い所に目標を切り替えクロスボウを引き絞る。ハルも彼に倣って関節狙いを止めた。 「泡沫の手のひらで踊ろう」 「諸行無常が刻に在り。怒りもじきに治まるでしょう。……今すぐではなくとも」 ルカルカが呟き、COの怒りが未だ治まらぬのを見た永が傷を押して立ち上がり薙刀を構える。鬼子が傷癒の符に念を込め、エリスが福音を響かせて全員を治癒しようとするが、これが続けば明らかに不味い。 再び戦場を覆った雷撃に、他者の回復を優先していた鬼子が、体力の低いルカルカが、倒れた。幾人かの頭を絶望的な思いがかすめる。 その時だった。 「わたしみたいに! パソコンが使えない若人もいるのです!」 イーリスが朗々と声を張り上げる。 堂々とした態度の割に自慢にならない気がするその宣言に、COの注意が向く。 「わたしたちが、ぱそこんにたよりすぎないしゃかいを築きあげるのです! わたしっ! ゆーしゃなのですっ! ゆーしゃをしんじて、安心するのです!」 続く言葉は、説得力と、何よりも真摯な力強さに満ちている。 リベリスタたちはCOの目に、何か温かい物が過ぎったのを見た。それは未来ある若人、或いは孫を見守る父性の光。もちろん、それはすぐさま怨嗟と怒りに塗り潰されるのだが、しかしリベリスタに手ごたえを感じさせるには充分だった。 「パソコンなんぞ、パソコンなんぞぉ……!」 身に纏う雷光が激しく光る。その怨嗟に、ハッキリと頷いて見せたのは桔梗だ。 今はこの、ある意味悲しき想念の塊をなだめることが肝要だと判断したのだ。 「うん、そうだね室チョ……じゃなくておじいちゃん」 率直な同意の言葉をかけられたCOの動きが、また少しブレる。 「現代社会では便利だけど、なくても生きていけるよねPC」 桔梗の言葉に深く頷くCOが力強く拳を振り下ろし、仁太が倒れた。 「その通りじゃああああああ!!」 同意しながら殴る様は、どう見ても怒りではなく八つ当たりだった。あるいはそこに、時代に置いて行かれる焦燥と寂しさもあるのかもしれない。 全ての若人がイーリスの様な希望に満ちた前向きな(?)言葉を持つ訳ではない。桔梗の様に理解を示してくれる訳でもない。便利であることが絶対の正義だと思われがちな今の世、古い物は淘汰され、省みられることもない。 そうはなるまいと必死にかじりつく苦痛と苦労、そうして募った怨念。 それが篭った拳を受け止めたのは、深手を負った鬼子達を気遣い前に出た永の薙刀だった。 「思い出してください。初めて家にテレビが来た日のことを」 感電の余波にも怯まず、セーラー服の淑女は言葉を紡ぐ。 「家族が集まる中、悪戦苦闘しながらも番組が映ったとき。 誇らしげな気分になった――そのような経験がございませんでしたか?」 五十三年も前の事。己の伴侶はそんな様子だったと。 それは外見はともかく実年齢は智親+30歳の永の、亡き夫との思い出だった。 「テレビでも電話でも自動車でも、パソコンでも。 新しいものに人は恐れを抱き、同時に夢を抱く……。 わからなければ、孫に教えてもらってもよいではありませんか」 柔和に微笑んで紡ぐ彼女の言葉に、COの拳と電流が僅かに、だが確かに緩んだ。 「力が減衰した……か」 その隙を、常に相手の状態に注意を払っていた鉅が逃す訳もない。 エリューション・フォースの巨体を鉅の全身から放たれた気糸が幾重にも縛り上げ、動きの鈍った背中に喜平が迫る。鉄筋の林を高速で跳躍し強襲した彼が構えた、スーサイダルエコーと名付けられたショットガンの散弾が叩きつけられる。 「いくですよっ! ヒンメルン・レーヴェッ!」 COの正面に堂々と立ち斧槍を構えるのはイーリスだ。先ほどの名乗りを証明するかの如く、ここまでの怪我に怯むことなく堂々とした少女の姿は、怨嗟から生まれたエリューション・フォースの目にどう映ったのか。勇者と呼ぶにはあほの子だけど。 「くらうです! いーりすらっしゅっ!」 ついに膝をつき、雲散して行く巨大エリューションの表情は、モデルとなった彼らの上司もめったに見せないほどの穏やかな表情だった。 ……ような気がした。 ●直行直帰 「おじいちゃんたちの……想いは……こんなことで……無くなるとは……思えないけれど……八つ当たりは……程々に」 どこから持ってきたのか、エリスが古いパソコンをゲートボール場の隅に置き、そんなことを言う。どうやら慰霊碑のつもりらしい。 「この調子だと次は録画予約が出来ない怨嗟が……いやいやいや、それは無いと思いたい」 自分の想像を、首を振って打ち消しにかかる喜平。 「よくわからないものに対して苛立つのは当然……でも、根こそぎ破壊はやりすぎ」 桔梗は頷きながら、次は沙織型なのかな、とか考えている。 なお、一夜にして鉄筋の林ができたゲートボール場の噂は、まあ、噂である。 <了> |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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