● あなたが来ると、雨が降らなくなるから。 そう言われて、おとなしくしていたけど。 たまには、お外に出たいわ。 「だって。さみしくなったんだもん」 ● 「逃亡プリンセスに罪はない」 ほほう。 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)さんは、逃走譚とかお好きなタイプ? 「そういう話じゃなくて。この地点。ここに急速に発達したごくごく小規模ながら非常に勢力の強い高気圧のE・エレメントが居座っている。識別名『バツ様』」 模式図は、赤い連獅子のような髪をした女の子の形をしたエネルギー体。 「このエレメントの現れたところは、旱魃に襲われる。ぶっちゃけ、日照り神」 本来の天気図、モニターにドン。 「久しぶりに出てきてみたら、町の様子がすっかり変わってバツ様ご満悦。それに比例して勢力倍増しドン、ますます近づけない悪循環……」 お姫様、ジェラードなめてる状態ですね。 「皆には皮膚を焼く熱風吹きすさぶ街中を突っ切り、バツ様のいるところまで言って呪文を唱えてもらう」 自然災害、マジ怖い。 「ちなみに呪文は、「バツ様、北へお帰り下さい」 そういうと、自分の身の上を思い出して、すぐ元いた所に戻るから」 元々お姫様だから、いい子なの。と、イヴ。 「発生場所は、市内。よって、人目を気にすることはない。周辺には避難指示発令済み。ガツンとね。ガツンと」 イヴさん、なんか語気荒くないですか? 「かつて、この世界を守るためにがんばった力の集合体。力の制御が出来なくなって封印されてるけど。がんばった誰かを邪険にはできない。絶対」 がんばってる誰かの味方の女子高生、マジエンジェル。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月30日(日)22:24 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「力が使いこなせないから、封印」 『幻狼』砦ヶ崎 玖子(BNE000957)の声が、灼熱の空気の中で蒸発する。 (ずっと一人で寂しかったんだね。たった数十年しか生きていないけど、誰もいない寂しさは、分かる) 少女のまま変わらない体は、玖子がどこかに落ち着くことの妨げになった。 (感覚は違うかもしれないけど、一人は、怖い) 世界の一点を居場所と定められた者と。 世界のどこにでもいけるが、どこにも居場所がない者と。 それでも共通項は、どちらも一人ということ。 陽炎揺らめく道の向こう。 ここからでは、言葉は揺らぐ熱気に邪魔されて、彼女の所には届かない。 彼女に会わねばならない。届けなくてはならない。 だから。 「神秘業界は偶に訳の判らない物が出現しますね。旱魃だけに天災的な神秘事象だと言えます」 『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)は、騎士である。 お姫様を助けるのが仕事と言って間違いない。 「技術がどれ程進歩しても自然には叶わんという事ですかのう……」 『三高平のモーセ』毛瀬・小五郎(BNE003953)は、麦藁帽子だった。 更に言えばUVカット素材の露出を抑えた衣装にサングラス。 足元は、重たい安全靴。 なんかの拍子で、小五郎が三途の川にエントリーしそうなお天気だ。 「雨に悩む地方なら暫しの旱魃位はむしろ感謝されそうですね。まぁ、所詮人間視点の話で全体環境から言えばやはりマイナスになるのでしょうけれど」 いや、感謝はされないんじゃないかなぁ。 だって、閉じてる口の中が干上がる暑さだ。 「ふむ、バツと言う名の日照り神は黄帝の娘だったかのぅ?」 さすがは宵崎一族宗家御当主『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)様。 伝承における魃はその通りだ。 今回はそれに準ずる存在なので、この識別名が割り振られた。 「力を制御出来るようになれば再び頑張って貰えそうじゃが、暑過ぎるから今日のところは早々にお帰り願いたいのじゃ」 「おー、旱魃だけにバツ様なんですね~悪意は無いようなのですが、ちょ~っと被害が大きすぎるので、ぜひぜひ説得して帰っていただきましょう~」 独学インヤンマスター『飛刀三幻色』桜場・モレノ(BNE001915)、こういうところで知識の均一化を図るといいと思う。 うむと鷹揚に頷く瑠琵。 サングラスとツバの広い帽子、クーラーボックスには昨今流行の糖分と塩分が一気に取れる清涼飲料水。 UVカットの化粧品を肌の露出部分に丹念に塗ってらっしゃる。 しわは、紫外線が原因。 たとえ、幼女態とはいえ、後にしみそばかすしわになる。 予防しておくに越したことはない。 「どれ、皆の者。塗って進ぜよう」 指先に貯められる、さっぱり塗り心地のUVカットローション。 今回の瑠琵のパートナーは、『永久なる咎人』カイン・トバルト・アーノルド(BNE000230) 。 容姿から男女の判別は非常に困難、かつ外部に性別はもらされていない。 顔はあくまで中性的。 どっちかわからん。 なんだろう、この手負いの猫のような反応。 『子供だから、どっちでもノーカン』なんてハンパなことをしたら、この29歳はきっと傷つく。 ならば、あえて。 「……女子限定でな」 瑠琵は、そう言った。 厳かに頷くカイン。 にわかに、UVローション塗りあいっこ女子会開催。 「ここぞとばかりにあちこち触ってぷにぷにするがのぅ」 語尾が軽やかですが、これは百合ハラですか、審議中。 ちなみに、いくらかわいくても、高校生男子モレノ(やや色黒)は放置である。 後当主様には節度があるのです。オトコノコだから、ないちゃだめ。 「イヴの言う通り、この、人?」 『絶対鉄壁のヘクス』ヘクス・ピヨン(BNE002689) ただいま脳内審議中。 でも、このE・フォースとかいいにくいし。まあ、人でもいいか? 「――には罪がなさそうですね。それでもヘクスのルールなので言わせていただきますね。砕いて見せて下さい。ねじ伏せて見せて下さい。この絶対鉄壁を……!」 ルールと決め台詞は大事です。というか、バングシーンがないなんて許されません! でっかい鉄製の盾を構えてですね。 「――あつい!」 地面に叩きつけたぜ、輻射熱! ごわんごわんと、開かずの鉄扉――ヘクスのアイデンティティともいえる大盾が銅鑼のごとくの大音声だ。 熱いんだよ。 暑いんじゃないんだよ、熱いんだよ。マジこんなん持ってたら火傷するぜ! 「スポーツドリンクとかを持てるだけ持って行きましょう。絶対にぬるくなってると思いますが、のちのちの事を考えると仕方ない事かなと……」 汗で眼鏡が曇るんです。 ● 「しかし、天候現象がプリンセス…性別とかあるものなのですか。古くは天より雷を落とす神々も現象を擬人化した物と聞きますが、今回のような事例が根拠だったりした事もあったのかもしれませんね――」 アラストールは、守る者だ。 そのために体を鍛えている。 彼の者さえ、うっかり語尾がへたってしまう昨今。 リベリスタ諸君、生きてますか。 リベリスタ達は、最短ルートを押し切る算段をした。 久しぶりの下界の眺め満喫中のバツ様まで直線距離で500メートル。 例の盾の為に動きがゆっくりのヘクスに合わせても、2分もあったら余裕余裕。 ――そういう風に考えていた時期もありました。 コースは市街地、コンクリートジャングル。 この夏の炎天で熱を蓄積し、溜め込んだ熱は離さない。 そんな建物ばっかりだから、気分は石焼オーブンの中をで回るベイクドチキン。 ゴールに着く頃にはこんがり焼けてしまいます。 マスタードを塗ってお召し上がりください。 UVカットの化粧品で紫外線は防げても、遠赤外線は防げない。 ほっくりホコホコ焼けてしまうわ! そもそも、やばくなったらコース方針を変えようとと言ってはいたものの、どういう基準か決めてなかった。 変更を口にするのもはばかられるチキンレースというか我慢大会。 『やばくなったら』 どのくらいが「やばい」のか分かりません。 『じゃ、誰か倒れたら?』 誰か倒れるまでこのまま前進あるのみです。 ギリギリ倒れる寸前で、少しでも快適にしたり、傷治したり。 ふっと顔に落ちる影は、瑠琵様お差し向けの式神がそっと差しかけている日傘だったりする。 そもそも一番蒸発しそうなおじいちゃんが。 「進むんじゃぁ、身を低くして進むんじゃあ」 と、所信表明しているのだ。 どうして、先に倒れられようか!? アラストールの献身が――本人は否定しているが、老人介護の域に達しているというかターミナルケアになったら大変! でも、実は一番動きが軽やかなおじいちゃんの白目が白濁、口から38グラムの見えない何かが出ようとしてる。 「大丈夫か~? 皆、あと少しじゃ、頑張れ!」 かく言うカインの目もぐるんぐるんだ。 ぐるぐるを凌駕する、ぐるんぐるんだ。 もういいよ。そこでゴールして。と、幻想がささやいたりしない訳ではないが、美女が待っているという純然たる事実が待っているのである。 リタイアは頭にない。 すでに自分を守る至高の防御加護は起動している。 自分の体から出るキラキラ防御オーラで紫外線を拡散し、ダメージからお肌を守ります。 赤外線も何とかするから、ちょっとだけ涼しいおまけつき。 「は~い、なんかもうヤバすぎるぐらいにヤバくてももはやチョヤバって感じですね~」 モレノはへクスにべっとり張り付いていた。 あくまで比喩だ。 女子小学生にへばりつく高校男子なんて、通報されても仕方ない。 ちゃんと節度あるパーソナルゾーンが確保されていることを明記しておきます。 「#778899。灰白の戟陣」 そんな二人の周囲には、無数の刀が浮いている。 照り返しが目に染みる。 「きっちりカバーです。任せてくださいね。傷は俺がきっちり回復させますからね!」 熱風が水分が足りなくなったお肌をビチビチはぜさせ、水ぶくれから裂傷に到達する。 (メチャクチャ硬いヘクスさんとコンビなので、きっとヘクスさんにかばっていただいて俺が回復が最も効率よし?) 実際、ヘクスの鉄壁は、紫外線や熱風にも「鉄壁」である。 しかし、最短ルートなんて大焦熱地獄にわざわざ落ちたりすると、さすがのヘクスにもしゃれにならない傷がつく。 「#ffffff、癒しの灼光!」 それぞれ原色の房をつけた投げナイフを駆使して、癒しの符を純白の閃光に変えるモレノに、ヘクスは言った。 「熱い!」 もう光ってるだけで熱いと錯覚できる。 これ以上、灼いてどうする! たしーん! グワングワングワン……。 スポーツドリンクを喉に流し込みながら、ヘクスは小さく息をつく。 「急に涼しい風や風がやんだら注意ですかね」 様々な敵から放たれた攻撃を受け止めてきたヘクスの経験則。 ああ、と合点が言った顔をするモレノに、ヘクスはうなづいた。 「カマイタチがくるかもしれませんので」 えてして、彼女の言うとおりになった。 金に彩られた『愛』の文字を掲げる大盾。派手な色彩で人目を集めるのに長けている。 『愛の一文字』一万吉・愛音(BNE003975)、盾にこめられた心意気である。 全体に満遍なく照射される熱線にだって微妙に効いている。塗装塗り重ねの厚みの分。 「玖子殿、ご無事でございますか。今度は愛音がお守りするのでございます。怒涛のLOVEは旱魃も走破するのでございます!」 「愛ですかぁ……。では、これは気持ちです」 そう言って、玖子は自動治癒の加護を愛音に施す。 孫か曾孫ほどの愛音に手を引かれ、玖子は小さく呟く。 「一歩ずつ確実に、だね。若い子には、経験でも負けてるけど、おばあちゃんのがんばりどころ」 そうやって、玖子は世界を巡り、アークにたどり着いたのだ。 (気丈に。涼しげに。前に立つ。お姫様のために、絶対に倒れない) 髪の間から汗が湧いて、滴り落ちようとも。 サングラスをかけてなお、太陽が目を射抜こうとも。 (砦が先は、通さない) 「でも紫外線! 紫外線だけは勘弁でございます!」 日焼けは乙女の敵ですよ!? 滴り落ちる汗がUVカットローションを洗い流し、アスファルトの上で蒸発させる。 体の水分が蒸発していく。 からっからに干乾びる。 雑巾絞りされて、体の水分根こそぎ持っていかれるような感覚だ。 持参のペットボトルのふたをねじ切り、口に運ぶが、胃に到達する前で食道で蒸発できる錯覚にさえ陥る。 「おお、お茶も蒸発していきますのう……」 爺ちゃん、見てないで飲んで! それでも、リベリスタは。 互いをかばいかばわれしつつ、ダメージの均等化を試み、手遅れになるまでに対処していた為に。 足をもつれさせ、当初の予定から遥かに遅れながらも、結局全員火砕流的ハイペースで踏破に成功してしまったのである。 ● アラストールは、バツ様にたずねたかった。 『世界を守るための力の集合体とはなんぞや?』 答えは、無数だ。 無数に起きた世界の危機。 その時に、そこに居合わせた者が、ぎりぎりの選択をした。 一か八かで使った力。 作用と反作用。 大きすぎる力は、使った後にひずみを残す。 かつて、世界を救いながら、暴走して潰えていった沢山の事象事物の残滓が、圧倒的な熱になって、焚き上げられている。 世界を維持するひずみとゆがみの浄化作用の一つ。 畏れられながらも、感謝され。 その安らかにあってほしいの望む人々の願いの象徴。 だから、「バツ様」が時折姿を見せるのを、人々がそれでも受け入れるのは。 そうなったのは、自分達のためだからと分かるから。 緋色の裳裾、紅蓮の簪、色さえ失う劫火の華。 リベリスタを見た彼女は、自分のしでかしたことに気づいて、一つ小さく息を呑んだ。 リベリスタ達はボロボロだった。 傷は治せても、疲弊しきった様子は隠せない。 びっしょりと汗みずくになり、急激な日焼けで皮膚を真っ赤に腫らした集団を見て、バツ様は、今までもこんなことがあったことを思い出す。 『バツ様、北へお帰りください』 そういう人達は、皆、いつも温かい笑みを浮かべていた。 その時々、その土地の異能の者達が、そのたびにバツ様に言う。 北になら、と。 いてもいいと、誰かに言って欲しくて。 長い長い年月、そこにいすぎて、そこにいろと言われたことが有効かどうかも疑わしくて、新たに契約を結びたくて姿を現す。 ごめんなさい。まだ、いなくなれなくてごめんなさい。 (バツ様にたどり着いたら、名前を聞いて、ぎゅっと抱きしめてあげたい) 玖子はそんな思いを抱いて、ここまで歩いてきていた。 けれど。 バツ様はあまりに熱すぎて、その周囲では空気が炎を吹き上げる。 それでも近寄ろうとするリベリスタに、「バツ様」は首を横に振った。 これ以上は危険なので近寄っては生命の保証をしてやれないので近寄ってくれるな。という内容を、非常に分かりにくく回りくどい口調で言った。 (ずっと一人で頑張っていたんだものね。偉い子) 「おお、ここまで来た甲斐があったのう~」 喉はからから、まともにつばも飲めなくなっていたカインが、念願成就の喜びに復活する。 「なんじゃ? その顔はっ!皆で会いにきたのに、そんな申し訳なさそう顔するでないわ~美人が台無しだぞ」 と、カインは暑さを堪えて笑い飛ばす。 「皆さん、まだ大丈夫ですか」 ヘクスは汗で曇った眼鏡を拭き直しながら言った。 「寂しくて来たんですし、時間が無くても写真の一枚位とっても罰は当たらないと思いますしね。少しお話していきませんか」 小五郎が苦しい息の下から言った。 「バツ様が寂しかったでけだと言う事は知っておりますじゃ……そう長くは難しいですが、少しなら話相手をする事もできますじゃ……」 心遣いはなんともかたじけないがとどまればとどまるだけ迷惑がかかる。ゆえになるたけ早くこの地を去りたい。去らねばならぬ。どうぞ、帰る為の言葉を言って欲しい。言葉なしに帰っては、またすぐ戻ってきてしまうかもしれないから。 ――そんな内容をひどく分かりづらく回りくどい言い回しで、バツ様はリベリスタに告げた。 「では、せめてもの思い出に手品を。じじぃのやる事ですじゃ……失敗しても笑わないで下され……」 AFから放水車を取りだし、計算して放水ですじゃ。 「太陽の位置はあちらじゃから、こっちかのう……?」 微妙におぼつかない小五郎に、瑠琵とモレノが手を貸した。 インヤンマスターなれば、天体の計算などお手の物だ。 「とりゃ……!」 心強い味方の助けを得て、小五郎は狙いの方角に散水することに成功した。 空気の熱さに蒸発していくのに、せっせと飲み残したスポーツ飲料やら胃ちゃやらが注ぎ込まれる。 (上手くいけば虹を見せる事が出来る筈ですじゃ。雨を知らないバツ様には珍しい光景かと思いましてのう……) そして、空にかかる七色の光の帯。 バツ様は、空にかかる虹に指を伸ばし、いとおしげに撫でる素振りをした。 「次は予告でもせい。そしたら茶会でも皆できっとできるように支度できるさ?」 炎には触れられないが、カインは握手でもするように手を掲げ小指をゆびきりを示すように小さく動かした。 「なぁに、またすぐに会えるさ! 孤独が耐えられぬなら私のシーシャにでも宿るといい」 にぱっと笑って、ご愛用の水タバコ道具を揺らして見せるカインは、次に会う為の楽しみにしようじゃないかと笑う。 炎の揺らめきの中、バツ様は小さくうなづいた。 「もう少しだけ、待ってて」 玖子は言う。 (祀って、祈れば、少しずつでも彼女のためになるのかな。寂しい想いはさせたくないけれど。今の私は、何も出来ない) だからせめて、彼女の友達を。 クマのヌイグルミをプレゼント。 ヘクスも撮った写真を投げ入れる。 供えられたぬいぐるみと写真は炎に巻かれ、供物としてバツ様の胸に抱かれた。 「姫様。もし、この子だけじゃ寂しくなったら、呼んで。私達なら、きっと遊んであげられる。お友達になりましょう?」 (さみしくなったら愛音を呼んで。頑張った貴女は愛音を呼んで) 「――愛音も、バツ殿とゆっくりとお話したいのでございます」 万感の思いを胸に抱き、愛音は全ての思いをその言葉に込めた。 バツ様はリベリスタ達を促す。 もう、これ以上はいけない。 「バツ様」 バツ様は、リベリスタの思いを抱いて帰る。 「北へ」 リベリスタの心遣いを覚えている限り、彼女が再び姿を現すことはない。 「お帰りください」 おそらく、リベリスタ達の寿命が尽きるとも、彼女はきっと忘れない。 いつか、お茶を頂きましょう。 そんな簡単な一言を、ひどく分かりにくく回りくどい言い回しで口にして、バツ様は元の場所に「帰って」いった。 「……うおっ、慣れないことをしたせいで……」 うめく声に、少なくとも肉体年齢は若いリベリスタは青ざめる。 そこには崩れ落ちる小五郎の姿が。 「小五郎さん!お気を確かに!」 小五郎さんには、いつでもリベリスタであることとは全く関係ない、生命体として避けようのない大往生の危険性があります。 「ぎ――」 「ぎ?」 「ぎっくり腰じゃあぁぁぁ……」 おおっと、それは一大事。 生命の危険はないにしても。 ふと、空を仰ぐ。 炎天は過ぎ去った。 風が、つめたい。 かまいたちの気配ではなく、秋がそこまで来ていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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