●ぱんぱかぱーん VTS――訓練用に用いられる仮想世界の体験装置。 さて、と『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が視線をリベリスタ達へと移した。 「本日の皆々様の任務はズバリ、トレーニングでございますぞ!」 何故なら一周年とか報告書100本達成とかそういうのの記念だ。こまけぇこたぁ気にするな。 そんなこんなでメルクリィが卓上にドスンと多くの報告書を置く。 「選択出来るエネミーデータはこの報告書内から選んで下さいませ。選べるのは一人一体までですぞ。勿論チーム戦もOK! その場合は其々が選んだ複数エネミーVSチームでも、エネミー一体VSチームでも構いませんぞ。 それからあくまでも仮想世界における疑似戦闘なのでフェイトが減ったり重傷になったりしませんぞ、ご安心を」 ニコリ、機械男は微笑む。 「己の限界に挑むもよし、気楽に肩慣らしをするもよし、取り敢えず戦いを楽しむもよし。 もう一度戦いたいアイツ、戦ってみたかったアイツ、これから戦うかもしれないアイツ――さて、皆々様のお相手はどなたですか?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月29日(月)22:04 |
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●さぁ始めようボスラッシュ ――VTS、システム起動。 ●アナスタシアVS蝮原咬兵! 対峙した事はあるが、直接戦った事は無い相手。然し、その強さはこの目でしっかり見たつもりだ。 「だから、『あの時の咬兵殿』と『今のあたし』でどんな勝負がつくのか試させて貰うよぅ!」 大きく間合いを詰めて伸ばした手。だがその手は掴んだのは空、そして背後に感じた殺気。振り返る、と同時に咽元にヒヤリと。殺意。刹那。掻き切られる。 「まだまだぁ!」 肘鉄で押しのけ取る間合い。咳き込みながらも森羅行。反射の防御陣で咬兵の手は傷付いていた。 搗ち合う視線。放たれる弾丸を防ぎながら集中を重ね、アナスタシアは咬兵を見る。刹那でもその戦い方を覚える為に。脳だけではなく体でも。 「いっくよぉーぅ!」 再度踏み込んだ。この手は未だ届かないかもしれない。 それでも、最初から諦めるつもりなんてない! ●ぐるぐVS旧城・エドナ! 舞台は再び、血生臭い商店街。 「さぁさ、ディープデートといきましょ」 ぐるぐの二色の目が見遣る先には裏野部フィクサードが、その散弾銃が、彼女を見詰め返していて。銃声。縦横無尽の弾丸が襲い掛かる。 駄目だ。こんなんじゃない。ぐるぐが求めているものは。ならば引っ張り出すだけだ――ディアボロブレス・ラウンド。 誘う様に強く踏み入る。直後。竜が火を噴くような一撃が炸裂した。 「……まだまだ、へばってないよ!」 あの頃に比べたら、自分も随分タフになったのだ。仕事も人命も気にせずひたすら観察出来るなんてそうそう無い。仮想世界でラーニングが出来るかは不明だが、やらないよかマシだ。何十、何百でもその技、前兆、些細な仕草をも視て、見て、観る。 「次に会ったらびっくりさせたいもんね。その為なら努力は惜しまないよ!」 自分が攻撃をやり返す時、それは彼女の技を盗んだ時だけだ! ●創太VSトラトラウキ! そこは世界樹が狂う前の完全世界の荒野だった。 「よぉ、トラ野郎。……こんな場での一番望みの決闘なんざ、癪だけどよ」 真向相対。創太が構える剣の切っ先の延長線上には、もう生きてはいないだろうバイデンの戦士が。 リミットオフ。体の制限を外した創太に向けて鋭い矢が放たれる。突き刺さる。だが攻撃を喰らったって構わない。喰らってでも喰らい付く。前へ。矢の疾風を突っ切って、創太は刃を振り上げる。 「血反吐が出て出て出尽くすまで――真っ向勝負だバイデン野郎ォ!!」 応える様に、トラトラウキが咆哮を上げる。熾烈な攻撃。だがお互いに一歩も退かない。力の限り、闘争を。 「こっからは意地と意地とのぶつかり合いだ!」 策も、邪魔も、思惑も、何も入らない。 届かなくっても構わない。 今はただ、この殴り合いに興じられれば。 それで。それだけで、十分だ。 「ぐっ、」 胸に深々と矢が突き刺さる。一瞬だけ顔を顰め、然し創太はニッと笑った。 「やっぱ強ぇな、お前達。絶対、忘れねーぞ」 その言葉に。 トラトラウキが、仮面の奥で笑った気がした。嬉しそうに。 ●喜平VS蝮原咬兵! 「随分振りだな、こうしてアンタと相対するのも」 はは、と乾いた笑み。何の感傷を抱いてるんだか。打撃系散弾銃「SUICIDAL/echo」を咬兵に向ける。だが彼は単なる0と1の塊、あの日出会った男とは別物。 それでも、あの日。僅かも届かなかった男の一端だ。 「行くぞ、『相模の蝮』」 極限にまでギアを高めた身体から繰り出すのは飛び散る光の様な猛攻撃。小細工は無用。持てる速力と火力、これまでの戦闘経験全てを糧に。 何かが変わるか、何かを得らえるか、それは分からない。 「っ!」 攻撃を耐えた咬兵の拳が腹にめり込む。重い拳だ。それでも退かず繰り出すのは、無数の乱打と至近射撃を織り交ぜた渾身の一撃。 唯一つ確かなのは、自身を計る相手としたらこれ以上無いという事。 挑みかかる。何度でも。何度地面に叩き付けられようとも。 ●アンジェリカVSドジっこメイド! 嵐に佇む洋館、アンジェリカはその中に居た。ふんと腕を組んで、睨む先にはドジっこメイド。 「前に戦った時はいつの間にか外に飛び出してたけど、今度はそうはいかないよ! 巨乳滅ぶべし……!」 巨乳滅びろ。柳眉を吊り上げたまま、アンジェリカは窓枠に指を滑らして。 「ここ! 埃が溜まってるよ! 早く掃除して!」 「は、はい今すぐ……きゃあ!」 早速スッ転ぶメイド。それを冷ややかな眼差しで睨み、 「ドジ! 愚図! ノロマ! 胸ばっかり大きくて本当に役に立たないんだから!」 言いたい放題罵詈雑言。更にあれやこれや命令しまくり、そしてメイドがドジをする度激しい叱責、前回の鬱憤を晴らすべく。 (神父様、今日だけボクは悪い子になります。お許し下さい) そんなこんなで気も済んだら。精神無効でもうファンブルなんて怖くない。面接着で天井に立ち、ライアークラウンで強襲。更に落下しながらの勢いでブラックジャック。そしてトドメはハイアンドロウでどかーんだ! 「スッキリした!」 いい笑顔でした。 ●御龍VSアンドラスフォース! 紅い月が見下ろすのは、真・月龍丸を担いだ御龍と悪魔の欠片。 「なつかしいなぁ。あん時はタイマンじゃぁなかったよねぇ。やぁー思えば遠くに来たもんだぁ……ってわけでぇ全力でぶっ潰す」 戦気を漲らせる鬼神に、襲い掛かるは狼の牙と鋭い剣。噛み付かれ、切り裂かれても彼女は悠々と銜え煙草の紫煙を吐き出し。 「ソロモンさんと遊べる機会なんてないよねぇくくく。あのころとは違う。アークの暴龍っぷりをみせてやるぜぇ!」 振り上げた凶器。叩き付けるは狂気。攻める。攻める。怒涛の勢いで。 兎角、兎角、攻撃を!刹那でも多く斬撃を! 「あのころとは違うぞ! ハハハッ……存分に遊ぼうぞ!!」 痛覚遮断。破壊の一撃。交わった剣、交差する視線。 剣戟の音が紅い月へと吼え続ける。 ●ツァインVS蝮原咬兵! 「いやね、トロットの旦那と九条のアニさんとも喧嘩したし、蝮の旦那ともやっとかねぇとなぁって思ってさ。 ……ごめんテキトーこいた、何も無くても来てたっ」 はは、と苦笑。完全なる防御の姿勢を取りながら、ツァインは咬兵を見澄ました。 「そんじゃ旦那の決まり文句が出る前におっ始めるとしますかねぇ!」 自己付与を行った咬兵が踏み込み始めると同時、ツァインも強く地を蹴った。瞬間。視界の咬兵が、消える。 「!」 この技は。とっさに回避行動に出た彼の咽を浅く切ったのは、背後に回り込んだ咬兵のナイアガラバックスタブだ。あと紙一重、回避が遅れていたら。 ふぅっと息を吐いて改めて気を引き締める。防御重視。攻撃を盾で凌ぎつつ、着実に。反撃の防御陣で少しずつ相手を削りながら機を狙う。直後、暴れ大蛇が防御ごとツァインを薙ぎ払った。重い、重い衝撃。 (怖ぇのはこっからだ……退くなよ、篭るなよ……! いくぜ、いくぜぇ……!) そのまま退く事は無く。敢えて強気に大きく前へ、出た。 (知ってる、アンタにはもう一つ上がある! 全部だ、全部で頼むぜぇ!) 相打ちなんて端から上等。自分の全部をごり押しで――掲げる刃。一点の曇りも許さぬ輝き。 やってやる。やってやる、やってやる! 「ゴオオオオォォォァァアアアアッ!!!」 全身全霊、自分の全てを叩き付けた。 手応えは、あった。 だが『相模の蝮』の二つ名は伊達ではなく。 ごん、と衝撃。顔面を思いっきり殴られたのだと、知った時には大の字で倒れていて。 「くぅぅ~~……チクショウ強ぇなぁ……!」 ●阪上竜一VS雷さん! 「YA! 最高にHIGH VOLTAGEってやつだー!」 WRYYYYっとコメカミぐりぐり、竜一が指差すは雷さん。 「KAMINARIギタリストの名にかけて、俺はこのエリューションと戦わねばならないのSA!」 ギョーンと掻き鳴らすThunderbolt。彼の相棒。 「さぁライブの始まりだ! ROCK’N ROLL!!」 振り上げるエレキギター、ありったけのソウルを込めてギガ級の電撃、雷光、轟く音が鳴り響く。 エリューションが返すのもまた激しい雷だった。 「感電無効? だからどうした。この俺の熱いMUSICは魂となって伝わるって信じてるZE!」 バリバリバチバチゴロゴロピシャーン。ステージは音に溢れている。瞬いた光。電光が竜一を焼く。強烈だ。思わず片膝を突く。 「ELECTRIFYING! 大したもんだZE、アンタ!」 だが――ニヤッと笑って、ギタリストは立つ。 「俺だって痺れる男だZE?」 ライブはまだまだ終わらない。アンコールも幾らだって受けてやるともSA! ●クルトVS戊・己! 「またやりあいたいと思ってたんだ」 どっさいどっさい。『土砕会会長』戊・己。彼のEXどっさいは強かった。とは言え、相手はフィクサード故に気軽に会える存在ではなく。嗚呼VTS様様。念願のタイマン。 「擬似とは言え……存分に、自由に、やらせて貰うよ」 流水の構えをとるクルト。先手は己、繰り出す技は当然土砕掌だ。クルトはそれを流す様に防御し、反撃として同じく土砕掌を繰り出した。だが、手ではなく脚で。あの時某氏が見せた足どっさいにも慣れておきたいから。 土砕掌。 土砕掌。 ただ只管に、どっさいさいさいさいさいさいさいさい。 おそるべし土砕掌空間。 これが『覇界闘士』だ、なんて。 ●烏VS蝮原咬兵! 敵の視線からは拝む事が出来ない――相模の蝮の敵意。設定で敢えて高確率使用とした荒覇吐。その恐ろしい火力が、烏を襲う。 「さて、どこまでやれますかね」 小細工無しの至近距離、如何にして捌ききるか。殴られ撃たれメタメタにされ、それでも辛うじて身を捻り、銃把で防御し、カウンターの如く猛射撃を。 捌ききれぬとて如何に致命傷を避けるか。 現状の実力で何処までの事が出来るのか。 絶好の機会だ。かれこれ何度咬兵に殴られたか。現実世界ならとっくに意識を失っているだろう、それでも烏は何度でも何度でも試みる。 (それに、この荒覇吐) 銃での攻撃にも生かせる手段は無いのか、じっくりと研究。身を以て。 (近遠距離での荒覇吐ってのも相手には怖いだろうしな) 嗚呼また殴られた。本当、鬼の様に強い。蛇だけれども。 「よし、もう一回だ」 さて時間が赦す限りは無限ループ。 ●リリ&ロアンVSフレッド・エマージ! 「名古屋様、いつも有難うございます」 「僕もリリも世話になってる、有り難う」 「こちらこそ、いつもお疲れ様ですぞ!」 予報士が兄妹に笑みを返す。どなたと戦うのですか、そんな問いに二人は声を合わせて言った。 「「『悪夢蛆』フレッド・エマージを」」 撃ちに。殴りに。 「六道滅ぼすべし、必ずやこの手で。例え我が身に代えようと」 「まぁ、六道って気持ち悪いよね」 教義上の理由から瞳に殺意を宿すリリ、ロアンは教義等どうでも良いのだが妹に合わせて信じているフリを。だが、それを抜きにしても……放った言葉は本音。 斯くして兄妹は夜の路地に立つ。 (忘れもしない、初めての戦い……) あの時は逃がしてしまったが、次に会った時こそは。必ず殺す。その時の為に。 再戦に燃えるリリは二丁拳銃「十戒」「Dies irae」を、妹を護る様に立つロアンはクレッセント手に持って。自己強化を行いながら敵を睨む。 一体自分達はどれだけ戦う力が付いたのか。 「懺悔しなよ。この蛆虫が」 「さあ、『お祈り』を始めましょう」 二人に赤い蛆虫達が襲い掛かる。フレッドが体から心臓マゼンタを溢れさせ飛び掛ってくる。叩きつける一撃を、前に出て防ぐのはロアン。鈍い音。 「……リリには近付けさせないよ」 「兄様、有難うございます」 互いに戦いを間近で見るのは初めてだ。兄の前で、妹の前で、無様な姿など晒せない。 「滅せよ!」 あの日脚を撃ち抜いた手応えを思い出す――リリが放つのは呪いの魔弾。新しく得た力で、更なる高みへ。力の限り。 「僕の死の刻印は高くつくよ!」 ロアンは告死の印と吸血を繰り返してフレッドに喰らい付く。引き千切ってでも噛み付いてやる。 激しい攻防。刹那、大きな衝撃波が兄妹の体を打ち据えた。くぐもった悲鳴。衝撃。 「お気を確かに!」 然しそれを直ちに払拭するのはリリのブレイクフィアーだ。銃を構える。 ――この身は邪悪を滅する神の魔弾。 あらゆる敵の心の臓を貫き穿つまで決して止まる事のない弾丸なのだ。 仮想空間とてそれは同じだと、ただ前を見澄ますリリ。そんな彼女をロアンは常に気遣って。 (バーチャルとはいえ、妹が傷つく所はずっと見せられてきて、もう見たくないからな……!) 実際戦う時が来たら、妹が受けた傷のお返しに。 「……ズタズタにブチ殺してやろう」 鋭く、放つ。 ●虎鐵VS咬兵! 「さて、咬兵……いざ、尋常に勝負でござるよ!」 身体の制限を外し、居合いで抜き放つは真打・鬼影兼久。飛ばす疾風は回避され、フィンガーバレットのアーティファクト『蝮の尾』で武装された咬兵の拳が虎鐵を捉える。重く堅い一撃だ、こりゃ一瞬も気が抜けない。だが。 (友達と言えども今はヴァーチャルな相手でござるからな……) 咬兵の必殺技、荒覇吐――それを使わせる事が虎鐵の目標だ。 頭部をヘッドショットキルが掠める。嗚呼やはり、相模の蝮の名は伊達じゃない。咬兵は強い。だが虎鐵とて攻撃力には自信があった。攻撃は最大の防御。 「なんと言うか……」 されど激しい攻防の最中、ポツリと呟く言葉。 「色々とあったでござるな……飲みに連れていってもらったりとか……」 データだからこそ、敢えて言おう。 「いつも迷惑かけてすまねぇな……何時も仲良くしてもらって……感謝してる」 薄く笑んで、最後に一発。居合いの型でのメガクラッシュを叩き込んだ。防御した咬兵が威力に圧されて跳び下がる。虎鐵の目を見た。 「……ありがとよ、鬼蔭」 「えっ!?」 まさかデータの再現じゃなくって本人……そう思った刹那、「ギルティドライブ」という言葉と衝撃が視界を直撃して―― ●ヘルマンVSスタンリー・マツダ! 怖いけど、目を逸らしちゃいけない。 震えても、逃げたりしちゃいけない。 「……」 眼鏡をかけた暗い目が、ヘルマンをじっと見ている。それを真っ直ぐに、見返して。瞬間、踏み込んだスタンリーのブラックジャックがヘルマンの頭部を打ち据えた。重い一撃。揺れる視界。 それでも彼は尚も集中を重ね、目を凝らしてスタンリーの動きを見る――僅かでも隙がないか、相手の動きをほんの少しでも読めないか――痛くたって怖くたって、耐えられなくちゃ何も始まらない。 「スタンリーさん。……前回、わたくしはかなわないと素直に思いました。 わたくしはとても弱くて、あなたはとても強かった。あなたは恐怖そのものだった」 拳をギュッと握り締め、深呼吸一つ―― 「……もっと強くなりたい。あなたをぶっとばして、それからちゃんと話がしたい!」 リミットオフ。せめて一撃。腹に道化のカードが突き刺さるのを歯を食い縛って耐え、繰り出したのは集中に集中を重ねた斬風脚。集中までの間、刻みに刻まれたダメージを代価にしたとっておきの攻撃は極限にまで研ぎ澄まされ、懐刀の体を深く切り裂いた。 「――!」 思わぬ反撃を食らったスタンリーが跳び下がる。目が合った。暗い光を湛えた赤い目と、怯えながらも真っ直ぐ見返す紫の目。 「……スタンリーさん、またあなたと話がしたい」 それまでにきっと、強くなるから。 ●恵梨香&快VS蝮原咬兵! 「今日は蝮原さん、大忙しだな」 「あぁ、仮想世界じゃなきゃ過労死してるところだ」 快の言葉にデータの再現ではない『本人』が薄い苦笑を浮かべる。 「リベンジマッチです」 初対面で戦って負けた相手。恵梨香は瞳の奥に戦意を燃やす。それじゃ始めようかと砂蛇のナイフを構えた快は完全な防御の構えを取った――さて、『日本代表』級の咬兵に、自分の力がどこまで通じるか。 恵梨香の火力を信じ、前衛の快は防衛と妨害の為に咬兵に肉薄する。 快の打たれ強さを信じ、後衛の恵梨香は魔曲の呪文を唱え始める。 二人の猛攻を、されど無頼は掻い潜っては攻勢に転じた。B-SS。前衛の快も後衛の恵梨香も狙える、この状況下では取らない手は無い一手。だが、命中したのは一人だけ。恵梨香を快が庇ったからだ。 「地獄の焔よ!」 刹那、恵梨香が召喚したゲヘナの火が炸裂する。火の海。その中を突っ切り、間合いを詰める咬兵が拳を振り被る――暴れ大蛇か、恵梨香は超幻視で相良雪花の姿を取り隙を生み出そうとしたが、それしきで狼狽する相模の蝮ではない。 迫る殺意が快を真っ向から叩き据える。歴戦の拳。『重い』拳だ。だが、護り手として、後衛の仲間への攻撃は絶対に阻止してみせる。粘ってやる、100%の力を超えてでも。 「おぉおおおッ!!」 振り下ろすは曇りを許さぬ『法の刃』。その攻撃の勢いのまま前へ、咬兵の腕を掴んだ。上等だ、と快の心意気に口角を擡げた咬兵は拳を以て『歓迎』する。現実世界なら今頃血の混じった胃酸を撒き散らしているんだろうな、そんな事を脳の隅でチラと思いながら、然し手は離さずに守護神と呼ばれる男は声を張り上げる。 「俺ごとやれ!」 「――了解」 恵梨香が頷いたのと、魔術構築が完了したのは同時。再度放たれる、地獄の火柱。快は火炎無効の技能を持つからこそ、身を捨ててでも咬兵の回避を妨害したのだ。『勝つ為・任務遂行の為にはどんな手段でも』と思う恵梨香は一切の容赦を行わない。強くなって一人前の戦士として認められる為に。 「……相模の蝮。越えさせてもらう!」 「やってみな、いつまでも待ってやる」 炎の中で蛇が笑む。そして銃口が向けられた―― ●舞姫VS紅薔薇の扉姫! 「そういえば、手合わせ出来なかったのは、貴女だけですね。わたしも成長したとはいえ、些か荷が重いかもしれませんが……」 痛みの塔と歪みの王――その一派のアザーバイド、大きな扉と一体化している薔薇の中に眠る少女。 文字通りの『茨の道』を進む必要が無くって良かった、等と思いながら黒曜を抜き放ち、身体のギアをトップに高める。その頃には表情は凛と戦姫の如く、強い意志を湛えた隻眼が敵を見据える。 「いざ――尋常に勝負!」 地面を蹴るは言下、茨が脚を切り裂くも厭わず走り出す。封殺されるだけじゃ面白くない、全力防御の構え。荊の鞭を、拘束せんとうねる一撃を無駄の無い動作で鮮やかに回避し、直走る。 「はァッ!」 裂帛と共に光速の刺突、舞う戦姫に扉姫が返すのは乱舞する紅蓮の花弁。鋭い動作で舞姫は飛び下がる。動けない巨体に対して、小回りの効く事が最大の利点だ。そして小回りの利く事こそが自分の長所。 高いバランス能力で扉姫の死角から死角へ、細やかに動き回りながら隙を突くように攻撃を繰り出す。文字通り、蝶の様に舞い蜂の様に刺すが如く。 あとはもう、刀折れ矢尽きるまで唯只管に前に進むのみ。持てる全てを駆使して技を叩き込むのみ。 全力で、最大火力で、最後の一刀まで。 「……届けッ!」 閃く一閃が、赤い花弁を切り裂いた。 ●零二VS歪みの王! 「さぁ、いけるところまでいくのみさ」 体のギアを高めた零二は刃を抜き放ち、殺気をも超えたオーラを湛える『あるアザーバイドの王』を見上げた。生み出された3体の兵隊が彼に襲い掛かる。それに応えるのは大量の零二の残像、兵隊達を撹乱しながら前へ。王へ。 刹那、王の放つ荊の黒槍が二つ、零二を強力に傷つけた。手痛く、悍ましく、容赦の無い一撃。だが、諦めない。足を止めず、己が剣の射程に王を収めて。 「南無三……!」 繰り出す刃は音速の猛撃。切り裂く。切り裂く。その背後から兵隊が突撃してくる。目前では王が、茨で出来た剣を大きく振り被る。 仮想世界だからこそ、思考した――然しこれだけの大物に勝てたのだから、人の絆の力とは、やはり凄いものだと。 「……それを思い知るには丁度良い機会だったね」 フフ、と笑んだ。 ●オーウェン&拓真VS阮高同! 「お前さんと共に、気兼ねなく誰かと戦えるのも……久しぶりではあるな」 「仕方ないさ……いざ戦いとなれば、柵も多い。俺達にはまだ出来ない事の方が多すぎる」 と、拓真はオーウェンに笑みを返した。 「では、行くか」 「うむ」 久しぶりの友との共闘。さぁ楽しもう、存分に。互いの拳を合わせ、見遣ったのはデータのフィクサード。電球頭の阮高同。繰り出された気糸を散開しながら回避し、戦闘開始。 自分と同じプロアデプト、故にオーウェンには同の手の内は大体察しが付く。故に自己強化は敢えてせず、挟撃の形で位置取ってはパーフェクトプランによる猛攻に打って出た。拓真もデッドオアアライブを仕掛ける。というのも、同は『横を向いて』二人を同時にターゲットにする手に出たからだ。 二人の一撃を耐え凌いだ同は思考の衝撃波を放った。吹き飛ばされぬよう足を踏ん張って耐え、拓真は刃を振り上げる。 「我が太刀、存分に受けるが良い……!」 自分が多少傷付いても、頼れる『教授』が何とかしてくれるだろう。ただ目の前の敵に全力の攻撃を撃ち込むのみ。それが拓真の役目だ。 「合わせていくぞ、拓真」 「あぁ。……勝たせて貰うぞ、フィクサード!」 例え仮想敵であろうとも、負ける心算は無い。知力を膂力をすべて武力に変えて、彼らは立ち向かう。 ●火車VSHS! 「一年前ってトコかねぇ……」 ふーっと息を吐いた火車は青々と茂る竹林の中に居た。その視線の先には、虎の毛皮を被った屈強な男――HN、覇界闘士モドキノーフェイスが。 「悪かったな。あの頃のオレはクソ弱くてよ、タイマン張ってやれんかったからな」 尤も自己満足に過ぎねぇが。自嘲の言葉と竦める肩。「まぁ」と続けて曰く、約束前の準備運動みたいなもんだと――突き出す拳。 「よぉ 相変わらずコレ一本だ」 その言葉と、拳に宿る炎に答えるかの様に。HNもまた拳を構え、そこに炎を纏わせる。 両者の間に一陣の風が吹いた、刹那。吶喊。地面を強く蹴り、真正面。至極単純だ、『真っ直ぐ往ってぶっ飛ばす』。 「ぜってぇ負けてやんねぇからなぁ!!」 鬼暴に熱が篭り『爆』と成る。ぶつかり合う拳。或いは相手をぶん殴る拳。互いに出す技は一つ、業炎撃だけ。何があっても。避けたり退いたり躊躇なんて一切しない、前しか向かない目を切らない遠慮も要らない喧嘩意地。 「そうだ……コレで良い! こうじゃなきゃあ……なぁ!? 楽しいよな! そうだろ? 大将!」 燃え盛る業炎の中、火車は確かに見た。嗚呼なんて楽しそうに人を殴るのか、コイツは。思わず腹の底から笑いがこみ上げる。堪えようも無く、堪える気も無く。それは口唇をこじ開け、漏れ出だした。 「ハ……ッ! ハーッハッハァッ! 最近生き死にに関して少々思う所もあってなぁ?」 消えない火。消せない炎。瓦解した世界。出口の無い感情。乾いた笑い。赤い炎。 「弔いって訳でもねぇんだが……テメェを燃やす事で線香代わりとする!」 起死回生、全身全霊。最大火力の炎を拳に、猛然たる右の一撃がHNの顔面をぶん殴った。殴り飛ばした。 静寂。長い、溜息。大の字に伸びたHNを見、火車はその場に胡坐をかいて。 「ま……そっち行ったらまた戦ろうや」 それがいつになるかは、自分にも分からないけれど。 ●終VSDN! 「お久しぶりです……DNさん」 手合わせお願いします、と終はペコリと頭を下げた。枯れたススキが靡く夜。振り返ったのは、大剣を手にした武人:デュランダルモドキノーフェイス。 データだと分かっていても自然と敬意を払ってしまうのは、彼の生き様を――フェイトを失ってもリベリスタとしての魂を失わなかった強さも、フェイトを失うと分かっていても誰かを救いたいと魔の誘惑に手を伸ばしたその弱さも――知っているが故。 (オレは乗り越えていけるだろうか? 彼の強さと弱さを……) 一陣の風の中、地面を蹴って間合いを詰めながら。 「先手必勝!」 疾風の如く音速の猛撃を繰り出し、同時に自身のギアを高める。構えた刃で防御したDNは、鋭い速度で一閃。巻き起こる風が終を切り裂く。 あの時と変わらぬ強さ――だが、自分はあの時よりも強くなった。と、思う。 あの時と同じ様に全力で。 あの時より速い速度で攻撃を。 抗った。あの時と同じ様に。 そして、落雷の様な一撃が遂に終を捉える。嗚呼やっぱり強いなぁ。思いながら。仮想世界だからこそ、本来ならフェイトを使うなりしている場面で何の代価も無く立ち上がれる。彼に頭を下げる事が出来る。 「ありがとうございました……!」 今は亡き武人に、最大の敬意を。 ●エナーシア&レイチェルVSデス谷さん かつてと同じ、彼のフィールド。悪趣味な空間。折角だからと再戦の可能性がある相手。仕留め損ねた彼を、今度こそぶち殺す為に。彼がこれから問題を起こさないなど有り得ないのだから。 「本物だとVTS自体のジャックをしかねないのだけど、何処まで再現出来るのかしら?」 なんて、呟きながらもエナーシアが構える銃。彼女の背後ではレイチェルが、ガラクタ山の頂上で笑う気狂いを睨み据える。瞬間。輝いたのは敵を遍く焼き払う聖なる閃光、超直観を利用し操られた機械類も纏めて焼き払う。 「往って下さい」 「合点承知よ」 部分遮蔽。襲い来るガラクタ共を掻い潜り、エナーシアは駆ける。向ける銃。デス谷さんを、周囲で煩いモニターを、それ以外の機械全てを、撃てるモノ全てを狙って、引き金を引いた。邪魔なモノ、邪魔になるだろうモノを悉く破壊する。 幾つもの銃弾。それと共に幾つもの気糸。二人の精密な射撃が、デス谷さんと彼のアンテナを執拗に狙い撃つ。 「その尽くを、撃ち抜いてやります……!」 「Bless You! 仮想世界にもあの世はあるのかしら」 反撃を許さぬ猛攻。1年前とは違うのだ。弾丸と気糸がデス谷さんの頭部を破壊する。 (でも、きっと今は、これよりもずっと手強くなっているはず) 息を吐いて、仮想世界の月を仰ぐ。 「……まあ、良い練習にはなったかな」 ●優希&零児VS蝮原咬兵! 「飛鳥と組むのは久しぶりであるな」 「あぁ、信頼してるぞ焔。勝ちに行くぞ!」 燃える炎二つ。得物を構え見遣る先には咬兵、彼の構える銃の睥睨。 「俺達はまだまだ強くならなくてはならん。一気呵成に撃ち貫く!」 倒し切る心算、全力で挑む。優希は交差した腕で弾丸を防ぎながら突進し、咬兵との間合いを詰める。その胸倉を掴む。大雪崩落――されど空中で体勢を立て直した無頼は、着地と同時にテラーテロールを優希に突き刺した。 その最中、優希が作り出した時間で零児は体の制限を外した。長所である火力を限界まで高める。 零児にとって、咬兵は心強い味方の姿でしか知らない。『相模の蝮』、その一流の力を体感してみたい。彼の死角を狙って走り出した。挟撃の心算――が、バレていた。胸倉を掴み返された優希が零児めがけて投げ付けられる。 「焔、大丈夫か?」 「平気だ」 戦いは熱く、思考は冷静に。森羅行で優希が傷を癒している間に、零児は常に死角を取るよう意識しながら剣と思しき鉄塊を叩き下ろす。 (強い……!) だが、だからこそ、ガムシャラに食らいつくだけ。優希も咬兵の前に躍り出て、猛攻を仕掛ける。 「飛鳥、必殺の一撃をくれてやれ!」 「あぁ――喰らえ蝮、必殺の一撃を!」 振り下ろしたデッドオアアライブ。どうだ。いや、まだ。向けられた銃口。ギルティドライブ。痛烈な一撃。 「まだまだ……!」 立ち上がる。護る様に立つ。タッグだからこそ、お互いをフォロー。こうして共に戦っていると、あの紅い月の夜を思い出す―― 「確実に倒してくれる!」 「一歩ずつ強くならないとな……!」 また勝利を積み重ねるべく、二人は戦う。 ●瀬恋VSバイオロボライオン! (ぶん殴ってやりたい奴は腐る程いるんだけど、どうすっかね) 咬兵とは本人とやる方が楽しいし、黒白鏡面にスタンリーは直接ぶん殴りたいし――さて。 「あんときゃ結局直接やりあう機会はなかったし、何度も煮え湯飲まされてるからいい加減に借りを返さねえといけねえからな」 と。言葉を放った瀬恋は炎の中に居た。機械的な咆哮が響く。六つの目が彼女を睨む。 「さーーて、ちょいと調整もかましたし、慣らし運転も兼ねていきますか」 仁義上等、ってな。立つは獅子の真正面、最悪な災厄で武装した拳を構えて地面を蹴る。 「ぶっ殺す!」 弾幕と砲撃の中、一歩も退かずに拳を唸らせぶん殴る。前へ、前へ、只管前へ。故に蓄積ダメージはみるみる増える。だが、効率なんて糞食らえだ! 「ビビって戦って勝てる喧嘩なんざあるか!」 咆哮。銃指の砲身がガコンと迫り出す。刻まれた痛みを代償に、撃ち放つのは断罪の魔弾。必殺の一撃。出し惜しみせず、反動に恐れず連射する。 「絶対ぇ……絶ッ対ぇぶっ潰してやるからな!!」 三度目――次こそは。次こそは。 ●結城竜一VSかじかみテリー! 「やつだけは倒す。この俺が! 俺の意思で! 俺の力で!」 氷点下のフィールド。超速で躍りかかってくるのはかじかみテリー、ハイスピードアタックが竜一を襲う。だが竜一は華麗にスェーで躱し、カウンターの要領で破壊的な一撃を繰り出した! ※ここで言う破壊的な一撃とはデッドオアアライブ(デッドラの略称で親しまれる)の事であり、つまり腹パンです。 「真っ直ぐいってぶっとばす! デッドオアアライブでぶっとばす!」 デッドラとアルシャンの凄まじい応酬。なんか向こうまでアルシャン=腹パンになってきた。腹パン戦争。 「たとえ、セ●ールに邪魔をされても! いつか、やつらの邪魔を出来る日を信じて! 俺は、俺を鍛え上げるのみだ!」 最適な握り! 最適な角度! 最適な踏み込み! 最適な捻り! 最適な力加減! 最速にして最適、そして最高にして最強! 「イメージは出来ている! 桃子の腹パン! あれを、俺は目指し、越える!」 燃えろ、俺の右拳!音速を超えろ、我が鉄拳! 「それでこそ、リア充を撲滅出来るのだああああああ!」 でも竜一くん彼女居るよね(真理) ●レイライン&かじかみテリーVSバイオロボライオン! 「のうテリー、一緒にリベンジといかんかえ? ……護ってくれると言うのは嬉しいが、共に肩を並べて戦うというのも乙なもんじゃて」 「お、お前となら何とだって戦ってやるよ」 なんて甘い空間をそこはかとなく。 されど直後に二人の眼前に広がったのは、あの日の炎の中だった。 咆哮が響く。バイオロボライオン。忘れられない相手。 二人同時にトップスピード。超速の極地。同時に鋭く飛び出した、二人に降り注ぐのは暴力的な砲撃の嵐。だが、遅い。捉えられはしない。地を這う様に奔り、掻い潜り、間合いを詰めて。 「往くぜレイライン!」 「任せよ、テリー!」 左右に展開、レイラインとテリー、そしてその残像が圧倒的な速度を以て襲い掛かる。速さが火力、ソードミラージュ代表の技能。ソニックエッジ。 それらを薙ぎ払う様に爪と兵器の猛撃。飛び退き躱して、弾幕を掻い潜りながら再度の隙を狙う。 二人ならきっと大丈夫。 「二人分の残像……見切れるもんなら見切ってみるのじゃ!」 「ぶっかますぜぇ!」 息を合わせて、最大火力。ありったけの速度。 二人の邪魔は誰にもさせない。二人の前に敵は居ない。 ●リルVS阮高同! ダワーと輝く電球頭。 「同さんとは共闘したことはあるッスけど、真っ向からぶつかってないんスよね」 『発光脳髄』阮高同――次に会う時はきっと敵だろうけど、思い切り楽しく喧嘩できるように。強くなりたい、自分だって。 だから、前に進む。 「ここは仮想世界ッスけど……一緒に死ぬまで踊ろうッス!」 地面を強く蹴って跳び出した。使う技はただ一つ、ハイ・バー・チュン。 自分の持てる技術、力、全てを込めて全力で叩き込む。それだけだ。 リルの分身、同の分身、激しくぶつかり合って互いを強襲する。武器のぶつかり合う音。或いは、同の振るった金属バットがリルを打つ。 「っ……!」 流石だ。だが。今はまだ偽物でも、いつか必ず、本物を超える。超えてみせる。足りないものが一杯ある事は分かっている。それでも――偽物が本物を凌駕するってのも面白い。 だってこれは、『革命の必殺拳』なのだから。 「必殺革命ッ Hai Bà Trưng!」 さぁ、舞い踊って魅せよう。遥かなる死の果てまで。 ●モノマVSメルクリィ! 「私ですか!?」 「そうだ、お前だ」 はわはわするメルクリィへ、モノマは屈伸運動をしながら声をかける。 「安心しろって。そのままのデータじゃ勝負になんねーしな、俺の基本能力データをメルクリィと同一にしてもらってる」 しかも両肩には真空管! そう、このガチバトルは相手の真空管を2つ割った方が勝者なのである! その名も『ワクワクドキドキ叩いて殴ってパリーン勝負!』 「さぁ、やろうぜ名古屋っ! ぶっ潰してやるぜっ!」 「が、頑張りますぞ!」 詰まる間合い。モノマの察する通り、メルクリィの腕は長い。跳び下がって躱したが、体は常の様に動かない。重い。堅い。鈍い。これが非戦闘員スペックか、と思いながら再度振るわれた手刀を掴み、それを支えに真空管めがけてとび蹴りを叩き込んだ。 *<|;´w`|>∩ <痛み機能解除してて良かった! 「まだ終わりじゃねぇぜっ!」 続けざまにモノマはフォーチュナスペックながらも鋭い動作で彼の背中に面接着で張り付いて、掲げる拳。 「これでも喰らいやがれっ!」 *<|;´w`|>* <完敗だー! 俗に言う瞬殺でした! ●ベルカVS∩<|´w`|>∩! 同志ティバストロフの肩のアレをパリンとやっちゃっても! 「しかしすっごく痛いらしいからな……仮想とは言え、気の毒だなー」 ベルカはうーんと考え込む。その視界に胡乱な影が映りこむ! 「おや?」 そこには煌く757の文字。 「あ、あれは! 何故か偶然にも某フォーチュナにクリソツだった、謎のアザーバイド『757番』ではないか!」 未知との遭遇。ならばもう遠慮する事などあるまいて!урааа! 「ハッ……ただ、まさかとは思うが、録音ボタンかと思ったらビーチクだったとかそんな事は無いだろうな……」 なんて思いとどまっている間にもですぞ~っと襲い掛かってくる。躊躇している暇は無い。 「えーいっ! ままよ! とりゃー!」 ぱりーん *<|;´w`|>∩ <ウッギャアアアアア 「こ、この感触……クセになる……! ふははは、もっと割れるがいいや!」 これから毎日アレを割ろうぜ? 割るの好きかい?うん、大好きさ! 「ああいけない! こんな事してたんじゃいけない! このままでは仮想だけでなく現実にも割ってしまいそうだ」 もうやめとこ。そう思った頃にはもう、757の真空管は見るも無残な常態でした。 ●陸駆VSメルクリィ! 「天才たるもの、相手のベースに合わせるものだ」 うむ、と頷く陸駆の前にはメルクリィ。 「案ずるな、神秘の力はつかわない。我が身一つだ」 彼の顔が最初は怖かったけれど、その心の優しさを少年は知っている。むん、と身構え。 「貴様のちからみせるのだ!」 やーっと飛び掛るなり、53万のIQを駆使してぽかぽかぽか。 「み、鳩尾は! 鳩尾はダメですぞ!」 「うむ、天才だから素手でも強いだろう」 「くっ……斯くなる上は! ドリャアー」 「うわ! 持ち上げるのはずるいぞ!」 「フォーチュナハリケーン!」 「うわぁーっ」 高い高い状態から回る回るぐるんぐるん。 ――見渡す世界は高くて、真っ白な空間だけれども。 「ぐふっ……回るの疲れました」 「お疲れ様だ。なあ、目線を合わせてくれ」 「合点承知ですぞ」 高い高いから抱っこの状態。メルクリィの視点。彼の見える世界を確かめる。 「いつか僕も貴様と同じ目線になれるかな?」 「えぇ、きっと……なれるでしょうとも」 「なあ、名古屋・T・メルクリィ。 僕は貴様が好きだと思う。記憶に引っ張られたからではない、個人として貴様の優しさに触れた」 それはとても好ましかった、とやや見開かれた機械の目を覗き込む。 「友達になってほしい。この神葬陸駆と友達になってくれ」 真っ直ぐな言葉。それにメルクリィは柔らかい笑みを浮かべて。 「勿論ですぞ! 私も陸駆様が――『神葬陸駆』が、好きですから」 ぎゅっと抱き締め、機械の手で少年の頭を優しく撫でた。 ●エーデルワイスVSガンヒルト・グンマ! 広げられた鋼鉄の翼。最も羨ましかった相手だ。理想の姿だ。 「早く私の身体もあんな感じに改造したいなぁ」なんて呟きを一つ、弾幕から逃げる様に走り出す。 「さぁ、今日も血と鉄と火薬の宴の始まりなのDEATH!」 胸の前で切るは十字、血の掟を刻み込む。向ける銃口。圧倒的な弾幕の中、エーデルワイスは抗う様に猛射撃を繰り出した。狙うはガンヒルトの砲門、着弾の炎が瞬く。 「ガンヒルト、今一度貴方の姿を焼き付けさせてもらうわね」 銃声は止まない。立て続けに発射されたガンヒルトの弾丸に、脚が、腹が、胸が、貫かれる。嗚呼、強いなぁ。なんて。 「ジョーカーを切るわ」 不敵な笑みと、敵を睨む銃口。 「断罪の魔弾よ。我が憎しみを糧に、咎人をぶち殺せ!」 ギルティドライブ――罪を穿つ必殺の弾丸。 視界一杯に襲い来る弾幕の中、一直線に飛んでいった。 ●仁太VSガンヒルト・グンマ! 暴君戦車と名付けられた巨銃が、互いに睨み合っていた。 (わしが乗り越えないかん相手……) 廃墟の遊園地。二人きり。仁太の視線の先に居たのはパンツァーテュランの持ち主だった者。一生忘れられないだろう相手。 「久しぶりやな……初めて会うた時から1年近くになるんやな。 あの頃と比べてわしも大分強うなったで。1対1でもええ勝負になるんやないかな?」 データの彼女が何かを言ったりはしない。だが、分かる。楽しそうだ。戦いが好きなのだ。 そんな所が、好きだった。 「さぁ来いやガンヒルト、撃ち合おうや!」 向ける銃二つ。一方は凄まじい早撃ちを、一方は超精密な弾丸を。着弾の爆発。そして爆風を劈いたのは、暴君達が謳う暴力的なプロパガンダだ。戦と云う名の独裁政治。放たれる鉄の雨。 然し仁太は目を細める。懐かしそうに。寂しそうに。 「できればこうやって本物のお前とずっとやりあいたかったな」 けれど、それはもう二度と叶わない。 嗚呼、だが、いつまでも過去に囚われる訳にはいかないのだ。 「前に、未来に進むために、ここでケリをつけるぜよ!」 弾幕の中、己の運を信じて走り出す。間合いを詰める。零の距離、パンツァーテュランの銃口が触れ合った。接吻の様に。 「お前のこの技で、」 恐ろしい悪夢の様な、黒。お互いに。 「越えて見せるぜよ!」 ミッドナイトマッドカノン。 混ざり合う黒――そして開ける視界。片膝を突いたガンヒルトが仁太を見ていた。そして、 「やるなぁ」 笑った。 ●雷音&悠里&亘VS歯の生えた胃袋! Ω番スクリーン。回るドラマに照らされて、立つ影3つ。それを笑いながら見詰めているのは、かつて彼等が戦った凶悪なアザーバイド、運命を喰らい不幸を呼び続けた『胃袋』。 「誰かの、フェイトが失われるのは嫌だ」 またフェイトを食う何かが現れようとしている――もう一度、その気持ちを強くする為に少女は凛と前を見る。 「もう二度と、グンマさんや先輩リベリスタ達のような悲しい運命を繰り返さない為にも!」 悠里はGauntlet of Borderline 参式の拳を搗ち合わせた。あの戦いをもう一度。あの時共に戦った雷音と、初めて共闘する亘と共に。 嗚呼、と亘はAuraを握り締める手に力を込める。閉幕した物語に、自分はまだ未練がましく想ってる。だからせめて仮想世界で。前を向く。不敵に笑った。 「ふふ、行きましょう悠里さん、雷音さん!」 「雷音ちゃん、亘くん、よろしくね!」 「うむ」 先陣を切ったのは亘だった。全速力で突っ走り、叩き付けるソニックエッジ。仲間と共に全力で。自身に決着をつける為。一度当たれば効き難くなる事を知っていても、己を貫き、仲間を信じ、燃え尽きるまで刃を振るう。自分がこいつが倒れるまで全速で穿つ! 「五行の拳士の全てで、お前を打倒する!」 悠里の戦法はあの時と同じだった。持てる技を全て叩き込む。業炎撃を、斬風脚を、土砕掌を、魔氷拳を、吸血を! 「ボクも強くなったはずだ、絶対に逃がさない」 猛攻を展開する二人を戦闘指揮と謳う祝詞で強力に支えるのは雷音、少しでも彼等が戦い易いようにフォローを。 改造模倣された土砕掌が悠里と亘に突き刺さる。痛烈な、一撃だ。蹌踉めく二人を、されど雷音の声が支える。 「アークの覇界闘士とアークのソードミラージュの力をみせるときだ! ここで倒せなければ男がすたるぞ」 信じている。彼等なら絶対に倒してくれると。 信じている。自分達には仲間がいる。だから絶対に負けないと。 信じている。負けるなんて微塵も感じない。絶対に勝ってみせると。 「危うい状況を招く為に使いませんでしたが」 握り直す刃。広げる翼。 「残すものは何もない――魅せてやりましょう、とっておきを」 「これで最後だ!」 ありったけの力を振り絞って飛び出した。止まる事を知らぬ弾丸の様に。 アル・シャンパーニュ。壱式迅雷。それぞれの『必殺技』。 前へ。 前へ。 勝利の為に、ただ前へ! 「おぉおおおおおおおおおおッッ!!」 凄まじい轟音、閃光――白に染まる視界。 ●お疲れ様です 激闘の果てに、一体何を掴んだか。 「VTS、終了」そんな電子音声と共に、リベリスタ達は目を開いた。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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