● 三体の獣が、竹林の中を歩いていた。 体の大きさは違えど、いずれも劣らぬ戦士ばかり。 並みの獣では、相手にすらなるまい。 堂々と地を踏みしめ、歩を進める彼らは、ただひたすらに“敵”を探していた。 自分達が、全力で闘り合える相手を求めて――獣たちの彷徨は続く。 ● 「集まったな。それじゃ、説明始めるぞ」 アーク本部のブリーフィングルームで、リベリスタ達を前にした『どうしようもない男』奥地 数史(nBNE000224)は、そう言って手の中のファイルを開いた。 「今回の任務はE・ビースト三体の撃破。もともとは熊だと推測されるが…… まあ、見てもらった方がわかりやすいな」 微妙におぼつかない手つきで端末を操作し、正面モニターに画像を表示させる。 リベリスタ達が視線を向けると、そこには竹林の中に佇む三体のパンダが映し出されていた。 大きいの、中くらいの、小さいの、いずれも二本の後足でしっかり地に立っている。 頭が大きく、ずんぐりした体形。白黒の毛皮はふかふかもふもふと柔らかそうで―― まあ、何というか『巨大なパンダの縫いぐるみ』に見えなくもない。 「……とりあえず、面倒だからパンダって呼ぶぞ。この際、熊でもパンダでも大して変わらんし」 いたって適当にパンダ認定を下した後、黒髪黒翼のフォーチュナは説明を続ける。 「こんなナリをしてはいるが、三体のパンダは結構強い。 しかも闘る気満々で、まず敵に後ろを見せるような真似はしない。 逃げられる心配とかは、考えなくても大丈夫だろうな」 可愛らしい外見に反して、割と男気(ひょっとしたらメスかもしれないが)に溢れた連中らしい。 「元が動物なんで高度な知性は持たないが、格闘技にも似た動きで攻撃を仕掛けてくる。 油断してると足元をすくわれかねないから、そこは注意してくれ」 現場は、人里離れた竹林の奥。 一般人はまず足を踏み入れない場所のため、今すぐに犠牲者が出る心配はない。 「ただ、増殖性革醒現象を引き起こす以上はそう長く放置できないけどな」 数史はファイルを閉じると、顔を上げてリベリスタ達を見た。 「今のうちに、パンダ退治をよろしく頼む。――どうか気をつけて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:宮橋輝 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月26日(水)23:53 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 目に映るのは、鮮やかな青竹の色。 水墨画を彩ったような竹林の風景を見渡し、『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)が目を輝かせる。 「チャイナなパンダが出てきそうな雰囲気で、ドキドキするわね……!」 前を歩く『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)の鋭敏な聴覚が、ゆっくりと近付く獣の足音を捉えた。 竹林の奥から、三頭のパンダが姿を現す。 「ヒャッハー! パンダー!」 それを認めた『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)が声を上げると、『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)も「大熊猫ー!」と後に続いた。 「ママパンダ(中)、パパンダ(大)、コパンダ(小)!」 横一列で前進するパンダたちを順に指して、終が言う。親子かどうかは定かではないが、大きさの違いがはっきりしているため個体の見分けには苦労しない。 「随分と変わったパンダさんたちですね」 パンダたちを眺め、小鳥遊・茉莉(BNE002647)が首を傾げる。 まあ、厳密に言えば『パンダっぽく変異した熊のE・ビースト』な訳だが。そこを差し引いても、どこか漫画的というか、ぬいぐるみを思わせる外見だ。 そのくせ、纏う雰囲気は戦士のそれであるから、ますますシュールである。 「もふもふで確かに見た目はカワイイのダ。だガ倒ス。至極単純。珍しく悩まない依頼なのダ」 とは、『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)の言。 ここにパンダ好きで有名なあの人でも居たら、ややこしい事態になっていたかもしれないが……。 「戦士って言ってもパンダじゃねーっすか。 連中がどんな訓練の果てにビースト化したとか、男気を手に入れたとかは知らないっすけど、 外見パンダ相手に負けたくはないっすね」 そう言って、『LowGear』フラウ・リード(BNE003909)が二丁のナイフを強く握る。仲間達の視線を感じたのか、フラウは振り返りつつビシッと指を突きつけた。 「ソコっ! パンダ相手に何言ってんだとか残念なヤツを見るような目を向けない! 油断してると暗殺パンダ拳の餌食になるっすよ!」 暗殺パンダ拳はさておき、『格闘技に似た動き』を見せるという三頭のパンダが(見た目に似合わぬ)強敵であることは確かだ。 「仲良し武道家親子を倒すのは心苦しいけど、武の道は獣道……。険しいね……」 腕を組み、うんうんと頷く終。だから親子とは限らない……って、まあいいや、親子で。 「パンダ、ねえ」 葉巻に火を点け、『チープクォート』ジェイド・I・キタムラ(BNE000838)が呟く。 僅かな沈黙の後、彼は一度も吸わずに葉巻の火を消した。 「――パンダ? あのパンダ?」 何か思い出した彼の隣で、『Scratched hero』ユート・ノーマン(BNE000829)が口を開く。 「……あァ、うん。見た事ァあるんだ」 二人の脳裏に、どこかで観たような映画のシーンが浮かぶ。 具体的には、ワイヤーアクションとか派手な効果音とか、そういう系統のアレだ。 「悪い冗談かよ。元が熊じゃなかったら色々危ういじゃねえか!」 「エリューションいい加減にしろよ!?」 そんな一幕を挟みつつ、リベリスタ達は戦闘態勢を整える。発見が早かったおかげで、事前に力を高める余裕はありそうだ。 「パンダといえば笹を食べつつのんびりしているイメージがありますが……」 風見 七花(BNE003013)の言葉に、動体視力を強化したユウが答える。 「よくよく見ると意外に鋭い目をしてますよね。 要するにツートンカラーの熊なんだもんなー。こわいこわい」 岬が、“大火(アンタレス)”の名を冠する黒きハルバードを軽々と担ぎ上げた。 「パンダでも『俺より強い奴に……』ってノリなら、格ゲーマーとして叩き潰してやらないとねー」 彼女の声に応えるように、パンダたちは一斉に距離を詰めにかかった。 ジェイドとユートも、気を取り直してそれぞれの武器を手にする。 「――仕事に集中だ集中! 奴らを黙らすぞ!」 「ああ、了解だよオッサン」 リベリスタとパンダの死闘が、ここに幕を開けた! ● 「ヘイ、パンダ。うち等と楽しく勝負しないっすか?」 反応速度を極限まで高めたフラウが、常識外れのスピードで小パンダの正面に立ち塞がる。 パンダたちが目を見張る間もなく、音速を纏う双刃が閃いた。その隙に、身体能力のギアを上げた終が大パンダに迫る。 「オレはソードミラージュの終だよ☆ いざ尋常に勝負……!!」 彼が名乗ると同時に、凍てつく冷気を孕んだ二刀がパンダの巨体を捉えた。柔らかな毛皮を、たちまち氷が覆い尽くしていく。 「冷やしパンダ始めました☆」 その直後、中パンダが終に飛びかかった。ずんぐりとした体形にそぐわぬ俊敏さで無数の残像を生み出し、華麗なる一撃で彼を惑わせる。駆けつけたユートが、中パンダの前方に自分の体を割り込ませた。 「そいつを俺以外に使われッと面倒なンでな」 攻撃に備えて集中を高めながら、大盾を翳して視界を遮る。カイが神の光を輝かせ、終の魅了を解いた。 「熊ってエリューションになりやすいのかなー? 会うの五回目位だよー」 終と連携して大パンダを抑えにかかる岬が、素朴な疑問を口にしつつ“アンタレス”を振るう。生じた真空の刃が大パンダの脇を抜け、先の一撃で麻痺を免れた小パンダを切り裂いた。 「見た目とかに惑わされて油断しないようにしないとです」 敵を挟撃すべく側面に回り込んだ七花が、黒き魔力の大鎌を召喚する。収穫の呪いが刻まれた刃が、頭上から小パンダを襲った。 流血にも怯むことなく、小パンダが身を沈めてフラウの懐に潜り込む。短い四肢を駆使して組み付くと、小パンダはくるりと反転してフラウを投げ捨てた。 「も、もふもふ……かっ、可愛い…!」 思わず声を上げてしまった後、あひるは慌てて気を引き締める。 ぬいぐるみのようなパンダが手足をちょこまかと動かしている様は可愛らしいが、攻撃の切れと威力は本物だ。 活性化させたマナを循環させ、静かに詠唱を響かせる。癒しの福音がリベリスタ達を包み、その傷を塞いだ。 自力で氷を砕いた大パンダを、終が凍てつく二刀で再び封じる。中パンダが眼前のユートに幻惑の一撃を繰り出すも、魅了への耐性を持つ彼には通用しなかった。 中パンダは即座に攻撃方法を切り替え、鋭利な爪で脇腹を抉る。身を蝕む致命の呪いに小さく舌打ちすると、ユートは“The RedFlash Ⅱ”の真っ赤な刀身を鮮烈に輝かせた。感覚を研ぎ澄ませ、お返しとばかりに破邪の斬撃を浴びせる。 彼らが敵を抑える間に、残るメンバーは小パンダに攻撃を集中した。 「相手を『狩る』心持ちで臨みましょうか」 強化された視力でパンダたちの動きを余すところなく捉えるユウが、改造小銃“Missionary&Doggy”を構えて天を撃つ。 燃え盛る火矢が降り注ぐ中、小パンダが自らの視界内に冷気の弾丸を放った。 複数人の動きを同時に縛る厄介極まりない攻撃だが、予め散開していた上に、状態異常の回復を担うメンバーの半数が敵や味方を盾に射線を遮っていたため、ごく軽い被害に留まる。 小パンダの死角に立って攻撃を逃れたジェイドが、ショットガンのトリガーを絞った。 「豆鉄砲もいいとこだがな……」 自嘲とともに吐き出された散弾が、小パンダの前足を正確に穿つ。自らの血を媒介に黒鎖を生み出した茉莉が、鎖の濁流で三頭のパンダを纏めて呑み込んだ。 軽やかなフットワークで小パンダの周囲を跳ね回るフラウが、眼前の敵を不敵に睨む。 「パンダ風情がうちの速さについて来れるっすか?」 フラウは瞬時に集中力を高めて狙いをつけると、両手に構えた音速の刃を立て続けに振るった。淀みなき連撃が、目にも留まらぬ速さで毛皮を裂く。 双刃がようやく動きを止めた時、小パンダは力尽きて地に崩れ落ちた。 ● 仲間(子供?)を倒されて怒ったのか、二頭のパンダが猛る。 強き意志の賜物か、状態異常もそう長くは保たないようだ。終はまたも魔氷の二刀で大パンダを縛ろうとしたが、今度は前足でガードされてしまった。 その技は既に見切った――などとパンダが言うはずもないが、並外れた反射神経と野性の勘で攻撃に対抗しつつあるのは確かだろう。 氷結を免れた大パンダが、強烈な正拳突きを終に見舞う。爆発を伴う衝撃が、両者の全身を強く揺らした。イメージ的に中国拳法(に似た技)を使ってくるものと予想して対策を組んでいたが、大パンダに関しては少々勝手が異なるようだ。 「正拳突き使うってことは空手かー」 得物のリーチを活かして大パンダを牽制する岬が、動きを見て呟く。 「熊で空手はどうよー? パンダだけど―」 所詮はパンダ模様の熊なんで、熊で間違ってないんですけどね。この場合。 それはそれとして、岬がぼやくのも無理はない。どこかの小説でも言われていた通り、本来は格闘技など用いずとも熊が人間に負ける道理はないのだ。ある意味反則である。 ユートと相対する中パンダが、貫手の構えを取った。真っ直ぐに繰り出された鋭い爪が、彼の鳩尾を深々と抉る。防御を無視する“絶対命中(クリティカル)”の一撃から間髪を容れず、喉を狙った二撃目が飛んだ。 「……こりゃやべェな」 運命を削って踏み止まったユートが、大盾を構えてガードを固める。防御に徹すれば、回復までの時間は稼ぐことが出来るだろう。 背の翼で低空を舞うユウが、空から炎の矢を落として二頭のパンダを狙い撃つ。ジェイドは傷ついたユートを一瞥すると、躊躇うことなくショットガンの銃口を中パンダに向けた。 ユートとは顔馴染みであり、その実力も知っている。自分の助けがなくても、あの少年なら切り抜けてみせるだろう。 (むしろ、心配するのは失礼ってもんだ――) 散弾が中パンダの顔面に炸裂し、その視界を狭める。直後、大パンダの咆哮が地を揺るがした。 何とかプレッシャーに耐えた七花が、怒り狂った仲間をブレイクフィアーで引き戻す。精神系の状態異常を無効化するユートが中パンダをブロックしている以上、怒りで陣形が瓦解する危険は無きに等しい。 大切な“みにくいアヒルの子”の絵本を開いたあひるが、天使の歌を奏でて仲間達を癒した。 「倒れるにはまだ早いっすよ?」 ユートの救援に駆けつけたフラウが、中パンダに音速の連撃を浴びせて注意を惹く。咄嗟に身を捻って直撃をかわした中パンダが、勢いよく地を蹴った。 丸々とした体が宙を舞い、神速の蹴りを立て続けに放つ。虚空を裂く蹴撃が、直線上の竹を薙ぎ倒しながらリベリスタ達を襲った。 「これもまた面白い動きをする……」 不可視の刃が己のすぐ近くを通り過ぎていくのを肌で感じつつ、ユウが呟く。あの身軽さは、何となく香港のアクション俳優を連想させた。 体勢を立て直して攻撃に転じるユウの隣で、ジェイドが彼女の守りにつく。 もともと知らぬ仲ではないし、別の依頼で負った怪我が癒えていない女を放っておくのも落ち着かない。火力に優れるものの、防御面に難がある彼女が狙われては戦力的に都合が悪い、という判断もある。 猛攻を受け止めるリベリスタを厚い回復で支え続けるあひるが、パンダたちを悲しげに見た。 (もふもふ、まんまるで……倒すの、辛い……) しかし、ここで彼らを倒さない限り、犠牲になる生き物は増加の一途を辿るだろう。 「これ以上、この子達のような動物を増やすのは……絶対に、止めなくっちゃ」 決意を胸に、あひるは絵本を抱える手に力を込める。攻撃を跳ね返す防御のオーラを纏ったカイが、全身の膂力をもって中パンダに渾身の打撃を叩き込んだ。 敵が揺らいだ隙を見逃すことなく、七花が錬金術師の剣を模した“アゾット剣”を構える。 ちょっとモフモフしてみたい――という欲求が頭をもたげたのは、ほんの一瞬のこと。 「……そんな余裕は、ありませんから」 そう自分に言い聞かせ、黒き大鎌を呼ぶ。呪いを秘めた斬撃が、中パンダに止めを刺した。 ● あとは、大パンダ一頭を残すのみ。 「今までのダメージと合わせて、一気に行きましょうか」 天を貫くユウの弾丸が、無数の火矢となって大パンダを炎に包んだ。すかさずユートが距離を詰め、破邪の輝きを帯びた“真っ赤なスピードスター二号”を一閃させる。 胸を横一文字に切り裂かれた大パンダが、雄叫びとともに両の前足を上げた。紅蓮の炎を巻き起こし、自分を囲む前衛たちを纏めて薙ぎ払う。浅からぬ傷を負った岬が、ユートにブロックを任せて後退した。 「攻めには守りも必要だぜー」 範囲攻撃の射程外、かつ、すぐに接敵できる距離を測り、防御を固めて回復を待つ。状況を見て回復役のフォローに加わった七花が、癒しの微風を岬の背に届けた。 ジェイドの散弾が、大パンダの右前足を撃ち貫く。仮にこれが通用しないようなら、危険を冒してでも接近するしかない。 (やるんなら相打ち覚悟、身を張るしかねえんだよな……いや、情けねえ話だぜ) 忸怩たる思いで、眉間に皺を寄せる。 五感をフルに働かせて大パンダの動きを観察していた終が、タイミングを計って二刀のナイフを繰り出した。 「……もふもふだ、とか思ったりしてないんだからね!」 一撃目を囮にして、大パンダが避けた方向に二撃目を放つ。凍てつく氷の刃が、毛皮に覆われた巨体の動きを止めた。 「オレ知ってるもん。パンダは実はお肉も食べるって……」 まあ、そもそも熊だし。 茉莉の操る黒鎖が、大パンダの全身に絡みつく。氷結と呪縛、敵が二重の枷に縛られている隙に、リベリスタ達は潤沢な癒しの技で態勢を整え、攻撃に転じていった。 ここまで回復に徹してきたあひるが、詠唱で魔方陣を展開する。 「あひるとも、お手合わせお願いするわ……! 正々堂々、勝負よ……っ!」 飛び出した魔力の矢が、大パンダの肩口を抉った。背後に回り込んだフラウが、淀みなく繰り出される音速の双刃で巨体を追い詰めていく。 仲間の支援で力を取り戻した岬が、禍々しく邪悪な外見のハルバードを掲げるように構えた。炎の如く揺らめく刃の中央で、巨大な瞳が敵を睨む。 「当たるブッパはブッパじゃねー、散華させてやろうぜーアンタレス!」 高らかに叫ぶと同時に、岬は全力で武器を振り下ろした。 全てを断ち割らんとする特大の真空刃が、唸りを上げて大パンダに迫る。 もはや避けきれぬと悟ったか――大パンダは仁王立ちのまま、その一撃を真っ向から受け止め。 鮮血の飛沫を散らしながら、ゆっくりと大の字に倒れていった。 ● 大パンダが倒れた瞬間、重々しい声がリベリスタ達の耳朶を打った。 『見事だ、リベリスタ諸君……だが、忘れるな。 我々を倒しても、第二第三のパンダが現れるだろう……!』 実はこのパンダ喋れたんだぜ――というトンデモなオチではなく、終のお茶目なアフレコである。 というか、不吉なこと言わんといてください。 力尽きた大パンダを見下ろし、フラウが何気なく呟く。 「確か熊って食べれたっすよね?」 ぎょっとした何人かが慌てて視線を向けると、フラウは「イヤっすねー」と軽く肩を竦めた。 「流石に冗談。立派に戦った相手にそんな仕打ちはしないっすよ?」 とはいえ、色々な意味で不自然極まりないE・ビーストの死骸を放置するわけにもいかない。 「パンダだし竹林に埋めてあげよー」 岬の提案で、パンダたちはこの場に葬られることになった。 手分けして穴を掘り、三頭を順番に埋めていく。作業の傍ら、七花がパンダの柔らかな毛並みを優しく撫でた。 最後に残った小パンダを、あひるがぎゅっと抱き締める。 「パンダさん、すっごく強くてカッコ良かった。 次はきっと、こんなことにはならない……楽しくて、素晴らしい運命が待ってるよ」 彼女は小パンダを穴の底に横たえると、そっと土を被せていった。真新しい土饅頭に笹の葉と花を供え、天国に行けるように祈る。 岬もまた、「南無ー」と両手を合わせた。 埋葬を終えた後、ジェイドが溜め息を漏らす。 「……しかしまあ、力不足を痛感するぜ。身体張るんならイージスの方が得手だしよ」 肩を落とす彼を見て、ユートが「ああ、なんだオッサン景気悪ィ面だな」と声をかけた。 「出来る事がハッキリしねェってのは、自由に動けるって事じゃねェの? 年の功の見せ所じゃねェか。しゃっきりしろッて」 なおも難しい表情を崩さないジェイドの顔を、ユウがひょいと覗き込む。 「うんうん、今日も剃り残し無し! 男前ですねー♪」 綺麗に髭をあたった顎をまじまじと見て、彼女は愛嬌のある笑みを浮かべた。 「盾になってくださる事もありますし、信頼してますよ。ありがとうございます」 仲間同士のそんなやり取りを耳にしつつ、あひるが立ち上がる。 「もふもふパンダさん……生まれ変わったらいつか、あひるとお友達になりましょうね」 バイバイ またね――。 小さく手を振るあひるの前で、供えた花が風に揺れた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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