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<剣林>The Blade With The Dead


「みんなー! 強敵と、戦いたいか―!?」
 ブレザー姿の少女は眼下に並ぶ戦士達に向かって叫ぶ。年の頃は10代半ばといった所であろうか?
 少女の叫びに対して、戦士達は武器を振り上げることで応える。
「罰ゲームは怖くないかー!」
 古いテレビ番組のような叫びを上げる少女に、戦士達は再び武器を振り上げて応える。
 鬨の声を上げないのは当然。
 戦士達はいずれも肉の削げ落ちた屍人。古びた鎧に身を包み、錆び付いた武器を身に着け、骨だけになった異形の戦士達だ。
 そして、少女はそんな彼らに対して、長年の友のように気さくに話しかける。
「オーケィ、良い返事よ。それじゃあ、作戦を説明するわね。これからあたし達は先ほど渡した地図1に書いてある場所に向かいます。そして、警備員を速やかに無力化。然る後に、地図2で丸を入れた場所にあるものを奪います。その後、撤収! 大体こんな感じよ。何か質問は?」
 少女はプリントを片手に何やら骨達に向かって、説明をしている。返事があるわけではないので、どこと無く滑稽だ。
 そんな中、骨の戦士の1人(?)が手を挙げる。
「はい、そこのあなたね。ふんふん、ごもっともな質問ね。そう、あなた達が来てくれたのは、強敵と戦うためだものね。この作戦は単純過ぎて穴が多いし、そもそも強敵なんかいるように思えないのは当然よ」
 まるで骨達と会話が成立しているかのように話す少女。案外、本当に何か聞こえているのかもしれない。
「でも、これで問題無いわ。こういう時に、その『強敵』たちは来てくれるから。それに彼ら相手に凝った作戦を用意したって無駄。だったらいっそ、真正面からぶち当たった方が確実ってものよ。あたしとしては、『達磨』のおじさんから言われたものを手に入れるのが大事だしね」
 自信満々の笑みを浮かべる少女。
 その勢いに押されたのか、骨達も頷く。どうやら、意思疎通は成立しているようだ。
 そして、少女が質問を促すと別の骨が挙手する。
「あ、そっか。そう言えば、長々話していたけど、それを話すの忘れていたわね」
 少女は骨達に向かって、顔に太陽のような笑顔を浮かべ、指をまっすぐ向けて答えた。
「剣林派が一、武蔵トモエ(たけくら・―)。今は剣林百虎の弟子を目指し、いずれは彼を超えるもの。覚えておきなさい」


 まだまだ残暑の厳しい9月の半ば。リベリスタ達はアーク本部のブリーフィングルームに集まっていた。そして、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は、メンバーが揃っていることを確認すると、依頼の説明を始めた。
「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。あんたらにお願いしたいのは、某地質学研究所にあるアーティファクトの保護だ。ただ、相手は主流7派の1つ、剣林。簡単に行く仕事じゃない。充分に気をつけてくれ」
 『剣林』は主流7派の中でも武闘派で知られ、その実力は折り紙つきだ。個々の戦闘力は随一とされ、真っ向から戦って無事で済む相手ではない。無意味な殺生を好むタイプでないのは救いだが、それでも話し合いで穏便に付き合える連中でもない。
「連中が狙っているのは、『凍てつく荒野の縞瑪瑙』と呼ばれるアーティファクト。Dホールが生まれやすい状況を作ったり、既にあるDホールを拡大する力を持つらしい。単純な能力だが、応用範囲は広いし、何に使われるか分かったもんじゃない」
 スクリーンに表示される姿を見る限りでは、縞状に白と黒の模様がついた石に見える。おそらくは何らかの偶然で、普通の石と間違われて紛れ込んでしまったのだろう。現在、時村財閥を通じて回収を行おうとしているが、剣林の襲撃はそれよりも速い。
「それで、襲撃に来る奴らなんだが、ちょっと変わった構成だ。率いているのは武蔵トモエというフィクサード。以前にアークと交戦した経験もある奴で、若い割に実力者だ。そして、それに連れられているのは、Eアンデッドの集団になる」
 首を傾げるリベリスタ達。たしかに、フィクサードがエリューションを連れる状況というのも珍しい事態ではないが、なんとなく不釣り合いな気がする。
「連れているEアンデッドは、割りと古い時代の出身みたいだ。当時の武芸者風でな、強敵と戦いたいという強い願いを持っている。その辺で協力関係にあるのか、とも思うけど、こいつらの出自はよく分からない。その辺はすまないな」
 素直に詫びる守生。本当に申し訳無さそうだ。
「説明はこんな所だ。資料も纏めてあるので目を通しておいてくれ」
 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。
「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 9人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月29日(土)23:10
皆さん、こんばんは。
「剣林」を初見で何と読みましたか? KSK(けー・えす・けー)です。
今回は剣林派フィクサードと戦っていただきます。

●目的
 アーティファクト「凍てつく荒野の縞瑪瑙」を守る

●戦場
 某所にある地質学研究所(非神秘)です。
 守生の指示に従って、駐車場にて剣林の襲撃を迎え撃ちます。
 足場や明かりに不自由はありません。

●フィクサード
 ・武蔵トモエ
 剣林派に属するヴァンパイアのデュランダルです。
 バトル好きな性格をしています。
 デュランダルの中級スキルまでを使い、BSに対しての耐性は高いようです。
 アークのリベリスタと比べて、実力は勝ります。
 拙作「<剣林>Living on the edge」にも登場しておりますが、読んでいなくても問題ありません。

●E・アンデッド
 いずれも過去の時代の武芸者等の死体がエリューション化したものです。
 「強敵と戦いたい」という妄執が体を動かしています。
 いずれもフェイズ1。
 ・武芸者タイプ
  攻撃力に優れたタイプが2体、防御力に優れたタイプが2体います。
  能力は下記。
  1.上段振り下ろし 物近単 ショック
  2.怨念の瘴気 物遠複 ショック

 ・弓術家タイプ
  弓を使った遠距離攻撃を行います。2体います。
  能力は下記。
  1.早撃ち 物遠単 連
  2.怨念の矢 神遠複

 ・法力使いタイプ
  念を使った遠距離攻撃を行います。2体います。
  能力は下記。
  1.業炎の弾丸 神遠単 業炎
  2.毒霧召喚 神遠複 猛毒

●アーティファクト
 ・凍てつく荒野の縞瑪瑙
縞状に白と黒の模様が付いた玉髄のような形状をしている。小指サイズ。起動することで周辺の空間を歪めてDホールが発生しやす状態を作る。また、既に存在するDホールを拡大する効果も持つ。
参加NPC
 


■メイン参加者 9人■
インヤンマスター
四条・理央(BNE000319)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
覇界闘士
鈴宮・慧架(BNE000666)

レナ・フォルトゥス(BNE000991)
ソードミラージュ
紅涙・りりす(BNE001018)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
デュランダル
宵咲 美散(BNE002324)
スターサジタリー
アイリ・クレンス(BNE003000)
覇界闘士
斬原 龍雨(BNE003879)
   


 死者の群れを引き連れて、少女は夜の道を歩いていた。
 とは言え、この表現から想起されるような、おぞましい雰囲気は一切伝わってこない。和気藹々と、まるで遠足へと向かうかのような気配だ。
 しかし、それ故に。
 あまりにも噛み合わないその情景は、一周回ってある種の狂気を感じさせた。
 そして、郊外にある研究施設を前に彼らは歩を止める。
 目の前に彼らの進行を止めるものが姿を現わしたからだ。
 そして、邪魔者が現れたことを知り、少女は微笑みを浮かべた。


「……武蔵トモエだな。リベリスタ、新城拓真──悪いが、此処から先は通さん」
 打ち刀と小型拳銃を携えて、道を塞ぐように立つのは『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)。
 その言葉にトモエと死者の集団は足を止める。
 この場に集まったリベリスタ達の並々ならない気配を察知したのだろう。そんなフィクサードと死者の集団に向かって、『硝子色の幻想』アイリ・クレンス(BNE003000)は挑発気味に笑う。
「随分と華のない構成ではないか? 一輪の花を引き立たせるにしても、程度があろう」
「あたしはどっちかって言うと水先案内人、かな。もちろん、せっかく来てもらった以上、戦うけどね」
 トモエはスラリと刀を抜く。銘刀、と言うほどのものではないが、丹念に手入れをしている様子だ。
 そして、彼女の動きに合わせて背後にいる死者達も各々武器を構える。
(Dホール生成&拡大能力って異世界からの召喚向きだよね。今回の相手、剣林の他にも六道、黄泉ヶ辻と同じ目的で動いてるようだし、今回もその一環かな?)
 リベリスタとフィクサード、それぞれの陣営が互いの武器に気を集中する中で、四条・理央(BNE000319)は自分達が守るべき磁界器のことを考えていた。
 いくつもの単語が頭の中で踊る。
 召喚。
 剣林派フィクサード『達磨』。
 そして、セリエバ。
 それらの言葉が集まる先で、考えられる結論――剣林の目的――は1つだ。
 だが、この場で起きようとしている戦いを止める役には立たないことも、何となく理解していた。
「たしかに、剣林は武闘派の組織と聞くが、アンデッドを引き連れているとは不思議な組み合わせだな」
 『リグレット・レイン』斬原・龍雨(BNE003879)がトモエに水を向ける。言葉とは裏腹に、相手の構成に対して疑問を持っている風ではない。朱塗りの籠手に包んだ拳を閉じたり開いたりして、具合を確かめている。
「その辺の事情は様々だろうが、倒すべき相手には違いない。例え何者だろうと、この拳で打ち負かすだけだ」
 軽く拳で空を打つ。
 その際見せた拳の切れを見た死者達の様子は、何処となく嬉しそうだ。
「ひたすら強さを求めるなら一生山に引き籠もって修行してればいいものを」
 闘志を見せる死者達を見て、『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)はやれやれと肩を竦める。裏野部や黄泉ヶ辻に属するような変態シリアルキラーに比べれば幾分マシに見えるが、彼女に言わせればドングリの背比べ、五十歩百歩。むしろ真っ当に見える分、始末に負えない。
「脳筋同士で通じ合ってるのか知らないが纏めて墓地に戻って貰おうか?」
「強くなるだけだったら、あたしも彼らもそれで十分。でも、やりたいことがあれば山奥にも墓の中にもいられない、要はそういうことだよ」
「だったら自重しろ、非常識どもめ」
 場に剣呑な空気が流れる。
 その時、そこへ古武術の正装に身を包んだ『大雪崩霧姫』鈴宮・慧架(BNE000666)がスッと割り込む。
「お久しぶりですトモエさん、では再び合間見えさせていただきます」
 以前戦った経験があるだけに、慧架は慎重だ。相手の力量はよく分かっている。少なくとも相手が『武闘派剣林』の名に恥じないだけの腕前を持つことを知っている。
「慧架さん、久しぶり。一応言っておくと、友達だけどこの場で手加減するつもりはないからね」
「えぇ、分かってます」
 分かっているのは力量だけではなく、その性情もだ。こう見えて、トモエは戦いと感情をはっきり切り離せるタイプ。それを知るからこそ、慧架も覚悟を決めている。
「私にも意地も意思もあります、だから絶対に倒れるわけにはいきません」
 凛と構えを取る慧架。
 そこへ水を差すような気だるげな声を上げるのは『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)。
「『お嬢さん』、人生の先達として一つ忠告するならば。真に相手を超えるつもりなら「いずれ」なんてヌルい言葉は使うな」
「え? どういうこと?」
 りりすの言葉に戸惑うトモエ。
「賢しいヤツほど『いずれ』だとか『いつか』とか言うんだ。簡単に。己に言い聞かせるみたいに。言い訳するみたいに」
 りりすには珍しく教え諭すような優しい言葉。トモエのことを「お嬢さん」などと呼んでいる時点で、まともに「敵」扱いしていないのだろう。その上でこのように語るのは、戯れか。それとも、自分が喰らうべき「敵」として育つことを望んでいるのか。
「だからな。そういう時は、こう言うんだ」
 ようやくりりすも周りに合わせて刃を抜く。
 刃を死者の群れに向け、謳うように自分の「食欲」を語る。
「人間失格・紅涙りりす。暴虐にして暴食のリベリスタ。剣林白虎を喰うモノだ。さぁ、ヤろうぜ。腹が減った。『死んでも戦いたい』ってのを地で行くヤツらがコレだけいるんだ」
「オーケィ、望むところ! ただ、ちょっとタンマ。今のメモるから」
 りりすの言葉を聞いて、トモエはノートを取り出すと、すぐさまそれを書きつける。そんな様子を見て、『戦闘狂』宵咲・美散(BNE002324)は軽い時間潰しに言葉を交わす。
「六道からはセリエバ、黄泉ヶ辻からはW00と、きな臭い話ばかり聴こえて来るが剣林は如何だ。治療費や恩義と言っているが戦いたいだけだろう?」
「まぁ、そういうことになるのかもね。正直安心してるんだ、この場に来てくれたみんなが『事情によっては協力する』とか、そういうことを言ってくるタイプじゃなくて。こういうのは潜入して奪う簡単な話よりも、強敵を倒して奪う試練じゃないとね」
 ノートに走り書きしながら、返事をするトモエ。先ほどまでとは明らかに様子が変わっている。彼女の闘気もそろそろ抑えが利かなくなっているのだ。その様子を見た美散は今度こそ口元に獰猛な笑みを浮かべた。
「ああ、俺もだ。お前達は判り易くて実に良い。欲しければ俺達を打ち倒して持って行けば良い。さぁ、武蔵トモエよ。戦いの為の戦いを始めよう」
 美散の言葉が合図となる。
 ノートを片手に刀をリベリスタへと向けるトモエ。
 美散は槍を構えると死者の群れへと突っ込んでいく。
 そして、痺れを切らせたのは美散だけではない。
 アイリの握る銀の刃が月光を受けて踊り始める。
 死者の刃が強敵を求めて唸り声を上げる。
 拓真は古の武芸者に対して咆哮で返す。
「強敵と言われるほどの腕があるかといえば、私には自信はないが……相手が欲しいというならば、いくらでも踊ってやろう。さあ剣を取れ、矛を構えよ。矢を番え、呪言を紡げ! アークのリベリスタが相手をしよう!」
「己が武力、誇り持つ者が居るならば前に出よ。その剛剣で俺を倒して見せろ!」


 リベリスタの攻撃が始まると、拓真の言葉に応じるかのように、死せる戦士達はその怨念を解放する。
 激しい剣戟が支配する空間を、たちまち怨念のオーラが覆っていく。
 そこから感じられるのは戦いたいという執念、戦えなかったという未練。
 エリューション化の力を呼び寄せたのは、この想いなのではないか。そう思わせる程に、彼らが抱えている想いは深い。
 しかし、そんな攻撃を受け流して、冷ややかな視線でユーヌは戦場を眺める。
 先ほど呪印で束縛した死者を前に、迫る攻撃をマントでいなしている。
「腕が鈍っているのか? それとも無様を晒しに這い出てきたのか? 小娘一人切り伏せられずに武芸者の名が泣いてるぞ?」
 むしろ、逆に挑発すらする余裕すら見せている。エリューションも一斉に反撃をするが、怒りで隙だらけの攻撃ではユーヌにとってはカモでしかない。そして、その隙を突いてアイリが武芸者に肉薄する。
「華やいだ舞台が好みではあるが……降りるというわけにもいくまい!」
 敵の真っ只中に立ったアイリが、青みを帯びた銀色の刃を手に舞い踊る。
 瞬間、怨念に満ちた戦場は、絢爛な劇場へと姿を変える。演じるのはアイリ。相手をするエリューションすらも、舞台に巻き込み華麗な、息もつかせぬ斬撃を繰り広げる。
 さらに、その隙間を縫うようにりりすはエリューションの背後を取ると、無造作に首を掻っ切る。
「あぁ、そう言えばさ」
 戦場の中で隙だらけにりりすは棒立ちになって、トモエに話しかける。
「『お嬢さん』、達磨君は相変わらず、しけたツラしてンのかね? 『アークの人喰い鮫』が泣いていたと伝えてくれよ」
 そこに死者が矢を放つも、りりすは難なく避ける。
「でも、邪魔はするんだけどよ」
「邪魔があるのは百も承知! だったら、力で押し切るまで!」
 裂帛の気合を刀に込めるトモエ。
「だったらトモエさん、あなたの気持ちを知った上で私も言わせてもらいます」
 全てを打ち砕くような荒々しい闘気を前に、慧架は心を平静とし、凛然と立ち塞がる。
「破!」
「力で振るうだけが強さじゃない」
 空気が一点に集束し、破壊の力が解放される。
 そして、慧架はサイドステップで一歩引いて、破壊の気をそらそうとする。相手は予想以上の攻撃力、それだけで殺し切れる威力ではない。かすっただけで重たい衝撃が走った。だけど、隙を生み出すためならそれで十分。
(チャンスはこれ限り……!)
 トモエの手を引っ張り、防御の動きを封じるとフリーになった頭に掌底を叩き込み、そのまま大地に捻じ伏せる。
「慧架君、気を付けて。まだ動きを止めた訳じゃない」
 理央は癒しの符で素早く慧架の傷を癒す。出鱈目な破壊力の相手を抑えなくてはいけないのだ。この位の備えが無いと立っているのは困難だろう。そして、その備えを行った甲斐は十分にあった。
 慧架と理央が時間を稼いでいる間に、エリューションとリベリスタの激しい攻防に決着が付きつつあった。
「そろそろ終わりにさせてもらいますわ!」
 傷ついた体を引きずりつつも、『森羅万象爆裂魔人』レナ・フォルトゥス(BNE000991)の手から解放された雷が戦場を焼き尽くす。死者も矜持を見せて、立ち上がろうとする。
「武を競う者として、名程度は知りたかったが、それは叶わぬか……」
 しかし、それを許す程、拓真も甘くない。
「手加減は無粋の極み。我が全力を浴びせよう……この弾丸の境界、踏み越えれるか!」
 雷が止んだ戦場を、今度は容赦無く弾丸が埋め尽くす。この物量の前には、如何な執念を抱えた屍人たちと言えど、ひとたまりもない。
 立っているのは比較的丈夫な武芸者が残ったのみだ。
 そして、最後に残った彼らに引導を渡すべく、2人のリベリスタが迫る。
「宵咲が一刀、宵咲美散。いざ、参る!」
「一気に決着をつけさせてもらう」
 美散は真紅の槍へ、龍雨は黒い刃へ、それぞれ闘気を込める。
 屍人もそれを受けて散ろうといった風情ではない。むしろ、それを耐えて逆転の一打を浴びせてやろうという気迫に満ちている。
 もし、時代が違えば彼らとも生身でやり合うことが出来たのだろうか、と一瞬思う。
 いや、何事にも「もし」は無い。だからこそ、目の前の戦いに全力を尽くすだけだ。
「お前達の妄執、充たしてやる。篤と味わえ!」
「戦いに満足したなら地に還るが良い」
 美散の槍が貫き、龍雨はエリューションを大地に叩きつける。
「はは、さすがはアークだね」
 肩で息をしながらトモエは周囲を見渡す。気が付けば彼女と共にいた屍人達は姿を消していた。彼女もさりげなく隙を見て、アーティファクト奪取に動こうとはしていたが、リベリスタ達は戦いに溺れる事無く、ブロックをしていた。こうあってはさすがに、彼女も目的を諦めざるを得ない。
 と、その時、拓真が何処となく感慨深げに口を開く。
「世界とはなんと広く、面白い物か……俺よりも強い者が何人と居る」
 今までアークの目に見えていた世界は小さかった。
 だが、国内にも多くの実力者がひしめき、世界に目を向ければ百家争鳴。
 そして、異世界にも強者がいることは既に知れている。
 神秘の世界において、強さとはどこまでも深いことか。
「己を高める上で自身を最も早く高める方法はなんだと思う。……俺は、己自身より強い強者と戦う事だと思っている」
「それはわたしも同感、かな」
 拓真はトモエに刃を向ける。
「武蔵トモエ、一手交えろ。俺は剣林百虎よりも強くなる、そして……お前が剣林百虎すら超えるというならお前を越える!」
「だったら、あたしも。アークが『伝説』ジャックを倒したなら、それを打ち破ってあたしはもっと強くなる!」
 この場にトモエが来たのは、剣林が関わる陰謀のため。
 だが、この場においてはそれはもはや些末なことに過ぎなかった。
 今、大事なことは目の前にいる相手を倒すこと。
 すっかり冷たくなった風が戦場に流れる。
 そして、互いに最後の刃が振り抜かれた。


 トモエは肩口を抑えて、刀を杖代わりにして歩く。さすがに、血を流し過ぎた。
 そんなトモエを美散が呼び止める。
「聞けば『達磨』の娘の治療の為の資金集めらしいな」
「大体そんな所かな、あたしも把握しているのは彼女……友達の命を救うために、こういったアーティファクトを集める必要があるってこと位」
 トモエの言葉を聞いて、理央の顔が曇る。嫌な予感が的中した。
 『達磨』の異名で知られる剣林のフィクサードが、自分の娘を救うために動いているということ。与えられた情報は少ないが、それでも推測出来てしまうことはある。だから、理央はやり切れない。
「何、ちょっとした興味本位でな。その娘を治療している医者がW00とか言うフィクサードなら止めておけ……誰かの言いなりで戦うお前達と戦うのは不本意だ」
「うん、気を付けておく。そうだね、あたしもそう思った」
 美散なりの警告を行う。まだ何処に黒幕がいるかも明らかになってはいないが、それでも危険な奴が紛れ込んでいるのは明らかだ。そして、そんな奴に純粋な戦いを汚されたくないのはお互いにとって同じこと。
「それじゃ、これ持って行ってください」
 去って行こうとするトモエに慧架は魔法瓶を渡す。中に入っているのは紅茶だ。
「そう言えば、まだ前にもらってたの、返してなかったね。うん、美味しかったよ」
 後で洗って返すから、と言って改めてトモエは帰路につく。無理に追うことも無い、と判断したからだ。
 そんなトモエの背中を見て、りりすは想う。
 面倒だ。
 考えていることは概ね美散と変わらない。
 何で美味しそうな戦いがあるのに、それを不味くするようなことばかり世の中にあるのか。わずらわしくてたまらない。
「あぁ、面倒だ。面倒だ。とかく人の世は住みにくい」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『<剣林>The Blade With The Dead』にご参加いただきありがとうございました。
大きな陰謀の中での一幕の戦い、如何だったでしょうか?

ちなみに余談ですが、数日後に慧架へは魔法瓶が2つ、宅急便で返却されたことをお伝えします。

それでは、今後もご縁がありましたら、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!