●9月19日は九条さんの誕生日です。 「てなわけで、こういうことをしたいんだけどいいか?」 「何言ってるんですか。危険すぎますよ!?」 「じゃあ、VTSを使って」 「アーク最新の技術をなんだと思ってるんですか……」 「戦闘訓練の一環とか申請すればいいだろ? ダメ元でやってみろよ。こんどいい吟醸酒持ってくるから」 「それで怒られるのは私なんですよ。全く……」 「つーわけで、おまえ等。俺と一丁喧嘩してみないか?」 『菊に杯』九条・徹(nBNE000200)はブリーフィングルームに集まったリベリスタ相手に喧嘩を売った。いや、本当にそうとしかいえなかった。 「いやなぁ。もうすぐ俺の誕生日でなんかほしいものあるかって考えると、おまえ達と殴り合いとかいいよなぁ、って思ったんだよ」 これだから元フィクサードは。 「まー、さすがにガチの喧嘩は止められたのでVTSを使っての擬似戦闘だ。それでも実戦さながらだぜ。 好きな場所でタイマンとか、興味ねぇか? 気の済むまで殴り合おうぜ」 呵呵大笑しながら、『喧嘩のしおり』と題されたパンフレットを集まった皆に渡していく。曰く、基本タイマンだとか、フェイト使用禁止だとか、そんなレギュレーションが書かれていた。何をやっているのやら。 「ま、無理にとはいわねぇ。気が向いたら参加してくれ」 集まったリベリスタ達は顔を見合わせ、どうするか思案するのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月27日(木)22:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 徹とアークが最初にぶつかった美術館。ツァイン・ウォーレス(BNE001520)が戦場として選んだ場所はここだった。 「ここがアークとアニさんが最初に戦った場所かー。くぅ~、俺も行きたかったぜー」 「そいつは残念だったな。ま、時の運だ。今は今を楽しもうや」 棍を構え、半身を前に出す『菊に杯』九条・徹(nBNE000200)。それに呼応するようにツァインも剣と盾を構えた。盾を前面に出す防御的な戦い方は、父から教わったものをアレンジしたもの。 「電子の世界にも魂ありき。乗るか乗らぬか大喧嘩。拳で咲かせる花もある! 『菊に杯』九条・徹! 今宵の酒は喧嘩酒。拳に酔わせてみせましょう!」 「よっ! その口上待ってましたッ! いぶし銀!」 徹が見せる菊の刺青に、俺も何か考えようかと思いながらツァインは一歩踏み出した。 ホタル舞う幻想的な夜の河原。 「とてもいい案ですね……ハッピバースデー、九条さん。素敵な誕生日プレゼントになるように全力でお相手します」 『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)はホタルの光を見ながら、一礼する。自分の身長以上の剣を抜き、徹のほうを見る。 「おう。いい案だろ? 楽しんでくれや」 「はい。負けるつもりはありませんけど」 きっぱりと言い放つリンシード。その言葉に笑みを浮かべる徹。 「ルールはどちらかが倒れるまで、殴りあうってことで。 あと一つ、ルールを……私が勝ったら、九条さんの、好みのタイプを教えてください……」 「修学旅行の夜みたいな賭け事だな」 のった、とばかりに構えを取る徹。リンシードはその身軽さを生かし、疾駆する。 中華料理店。周りには料理を載せたテーブルがあり、遠く離れたところでチャイナ服を着たウェイトレスが戦いを囃し立てていた。 「どーだ、旦那。俺の方の衣装に合わせて貰ったぜ!」 『錆天大聖』関 狄龍(BNE002760)は自らの衣装を指差しながら、笑みを浮かべる。吸っていたタバコを灰皿に入れて、破界器を構えた。 「いいねぇ。喧嘩の前に一杯頂きたくなるぜ」 老酒の味を思い出しながら、徹は拳を握る。 「そんじゃ、早速始めようか。ガチの殴りあいだ!」 「おいおい、その銃は飾りか? 使ってもいいんだぜ」 「言われるまでもなく――使わせてもらうさ!」 一気に距離を開くために狄龍が動く。早抜きの動作で銃口を徹にむけ―― 「どうも、始めましてよね、九条さん。……呼び捨てでいい? さん付けとか苦手なのよね」 「あいよ。好きによびな」 『雇われ遊撃少女』宮代・久嶺(BNE002940)の挨拶に、軽く手を上げて承諾する徹。その言葉に肩の力を抜いて、砕けた口調になる。 「九条は同じクリミナルスタアだけど、全然アタシと戦い方が違うわね。 正直羨ましいわ。アタシもお姉様を護るためにそういう戦い方したかったんだけど」 射撃タイプの久嶺は、愛する姉を守るために白兵タイプになりたかったのだが、相性の問題で諦めたという。 「護る、っていう手段は一つだけじゃねぇよ。その気持ちが折れないことが重要なのさ」 「言うわね。そうよ、アタシはお姉さまを護る。その心だけは折れないわ」 「上等。じゃま、始めますか」 徹の言葉と同時に場所が変わる。夜には歪んだ紅い月。何時かの三ツ池公園を思い出させる。 「アタシの名前は宮代久嶺! 喧嘩、楽しませて貰うわよ!」 場所は落日の寺。その庭に、 「……蓋を開けてみたら手も足も出ないんですけど。何これ」 『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)はズタボロになって地面に転がっていた。 相手の得物に対する策を講じ、多少のダメージを受けても進み得意の間合いで責める算段だったのだが……。 「何で取り回しと握りの移動だけでこんな自在になるんだ棒術ってのは……!」 「そりゃ、そう攻めてくる相手のために培われた格闘術だからな」 「近付けば棒を離して拳が来るとか何それ! 有効な間合い何て無いし!」 「ま、そういうもんだ」 「挙句どんだけ斬ってもちーとも怯まん! それ所かえらい楽しそうじゃねーかこっちは必死だってのに……」 五体を伸ばし、地面に倒れるうさぎ。それを見て、徹はうさぎに問いかける。 「これで終いにするか?」 それもいいか、と思いながら息を吐く。ゆっくりと意識を沈めていく……。 ● 三ツ池公園内にある満開の桜の木。『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)が選んだ場所はそこだった。 「どう? 素敵だと思わない、この桜」 「いいねぇ。秋に桜ってのも風流だ」 風流であることもあるが、悠里がここを選んだ理由はもう一つあった。ここは彼にとって大切な場所のひとつでもある。その気持ちを心に秘めて、拳を握った。 「それで、提案なんだけど折角の機会なんだから素手ゴロってのはどうかな?」 「へぇ。いいのか?」 スキルも破界器もなし。ただ何も考えない殴り合い。 「普通の依頼じゃできそうにないからね。たまには革醒前のような戦い方もしてみたい」 「そんじゃ、お付き合いしますか」 カラン、と棍を手放し徹は拳を握る。 「ステゴロ最強」 拳を握って『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)は徹に向き合う。いつも持っている二刀を仕舞い、笑みを浮かべた。 「武器やら何やら取っ払って、頼るモノは己が五体。それでどう?」 「おまえさんとは美術館のリターンマッチってのも悪くなかったんだがな」 「あん時は、ハンデ戦だったからな。アレで僕に負けたと思ってもらったら困るんだよ」 そんなのは僕のなけなしのプライドが許さない、と切り伏せる。なるほどそういうヤツだった、と徹は改めて笑みを浮かべた。 場所は夕日の河原。互いに武器もなく、静かに近づいていく。 動いたのはどちらが先か。互いの拳が交差する。 「いやー、あたしは、戦闘とか殺し合いだとかは、ぶっちゃけ苦手なんスよねー」 『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)はけらけらと笑いながら手を叩く。その手にはいつも装備している小刀はない。 「だからさー。アタシと、ステゴロでやろうぜ」 「いいのか? 術を展開しての戦いの方が、まだ勝ち目あるぜ?」 「いいですよー。どっちにしろ、アンタ相手じゃ、アタシは武装しようと大差ねえ。 拳を直接ぶつけ合う。原始のコミュニケーションだ。文字通り、拳で語り合おうぜ」 「ま、それもそれでありだな。すぐに終わってくれるなよ?」 徹は棍を棄てて拳を握る。相手が殴りあいにむかないと知っても、その心意気ゆえに加減はしない。 「姓は九曜、名は計都。渾名は、まだ無え! さあ、やろうぜ、『菊に杯』!」 ● 盾で受け止めて、剣で攻める。銃が台頭するまで紀元前から受け継がれる騎士の戦い方だ。 ねじる様に突き出される棍を盾で受け止める。そのまま盾で払うようにして隙を生み出し、剣を繰り出す。攻撃すれば隙が生まれる。その隙をつく。 もちろん全ての攻撃を盾で防げるわけではない。それでもツァインには鎧と並大抵のダメージでは沈まない体力がある。 「ウハハ。つ、疲れたらギブアップしてもいいんすよ……!」 「確かに疲れるな。並の相手ならここまで攻めれば沈んでる――」 棍が下段を払うように動いたかと思うと、徹の体自体を捻るようにして棍を振るい、大上段から叩き付ける。 「――ぜ!」 その一撃を盾を真上に構えて受け止めるツァイン。受け止めた腕が痺れる。痛みの中、瞳が捉える徹の隙。剣を持つ腕はまだ動く。動く、動く、動け動け動けェ! 意地と気合。ほぼ無意識に体を動かしてブロードソードを徹の胸部に突き立てる。徹はニヤリ、と笑って崩れ落ちた。 「汗臭ぇ泥仕合になっちまったが……勝ちは勝ちですぜ、アニさん!」 こちらも疲労で倒れこむツァイン。 「汗とか泥とか喧嘩にゃ付き物だ。楽しい喧嘩だったなぁ」 互いに床に背中をつけながら、二人の男は笑っていた。 リンシードの動きは素早い。それは肉体的に脚力があるという意味ではなく、 「こっち……です」 瞬発的に加速することで相手の視界から逃る動き。その動きから繰り出される剣技が徹の体を傷つけていく。 もちろん、徹の攻撃も当たらないわけではない。だが決定打には遠い。 「知ってはいたが、目の当たりにすると驚きだぜ。まるで鏡の世界の人形を追っている気分だ」 「鏡操り人形って……そーいう意味なのです」 「じゃあ、その人形を引っ張り出すとするか」 普通に殴って当たらなければ、相手をよく見て殴ればいい。腰を低く構え、五感を研ぎ澄ます。 「さすがに、素じゃ当たらないですか……?」 リンシードは高速で動き、光の残滓を使って徹を惑わす。集中を乱し、狙いを甘くする為に。 「ああ、素じゃ当たらなかったな。お互い様だが、付与を許したのは誤りだったぜ」 ――戦いの前に、リンシードと徹は協議の上で準備を許していた。リンシードは速度の加護を。徹は―― 「『仁義上等』……あ」 見得を切って運命を引き寄せる加護。それは不調を跳ね除ける力もあがったはず。 「わりぃな。俺にはその手の攻撃は効きにくいんだ」 光のスクリーンを徹の棍が貫く。視界は充分ではないが、棍から伝わる感覚は充分だった。 「……さすが、です」 地面に倒れるリンシードは、それだけ言って力尽きた。 「オラオラァ! どうした旦那、こっちだぜ!」 狄龍の戦い方は、銃撃である。そのため、最初は距離をとり【明天】と【昨天】と呼ばれるフィンガーバレッドでありったけの弾丸を放っていた。 「ああ、見えてるぜ。そのツラに一発叩き込んでやるよ しかし、すぐに追いつかれる。それも予測済みだ。ここからはガチの殴り合い。繰り出される棍を掻い潜って懐にもぐりこみ、徹の顔を殴打する狄龍。やったと思った一秒後には、腹部に下駄の蹴りを食らって吹き飛んでいる。 一進一退。だが、狄龍その動きは虎視眈々と機会を探る獣のようでもあった。 「何か狙ってるな、狄龍」 「カッ! ばれてりゃしょうがねぇ。一気にいくぜ!」 弾丸を足元に放って徹の隙を生み出す。ねじるような動きで棍の攻撃を避けて、徹の瞳を強く睨む。 「旦那ァ、その命頂ますぜ!」 眼光で射抜き、徹の動きを一瞬封じる。圧倒された隙をついて、高速で動いた狄龍が、徹の胸を割いて寒いを赤く染めた。 「やった……!」 「いい眼光だ。だがなぁ、やるならここまでやりなぁ!」 震えを止めた徹が狄龍の瞳をそのまま睨み返す。恐怖が狄龍の体を硬直させる。その硬直で止まった動きを、徹の棍が正確に突いた。 「はは。俺ってば半端者だからなァ。ここまでか」 「いや、気合入った睨みだったぜ。あれで半端なら将来が恐ろしいぜ」 「かなわねぇなぁ。でもま、俺的な勝利は、得たぜ」 『視線で徹を圧倒させる』……その目的は、充分に果たした。狄龍は満足して気を失った。 実は久嶺には必殺の策があった。 翼で空に飛び射撃すれば、近接攻撃しか持たない徹はそれだけで手も足もでないのである。 だが今日は勝ちに来たのではない。喧嘩をしにきたのだ。 「私の弾丸をくらいなさい!」 正確な抜き打ち。しっかり狙い、引き金を引く。何度も何度も繰り返した努力の果て。それゆえの命中精度。狙い外さず徹に弾丸が叩き込まれる。 「さすがだね。そんじゃこっちもいきますか!」 棍が軽く揺れた――かと思うと久嶺は棍に吹き飛ばされていた。予想はしていたが、その予想以上の速さと正確さ。見て避けるなんてとてもできそうにない。 (そんなことは判っている。だから――) 「さぁ、避けられるものなら避けてみなさい。アタシのとっておき、耐えられるかしら!?」 久嶺が放つ弾丸は断罪の弾丸。自らが受けた傷を罪として、相手に罰を与える魔弾。久嶺自身すら傷つけて、正確無比に弾丸は徹に飛ぶ。 「いい一撃だが、まだ倒れてやれねぇぜ」 倒れそうになる足を踏ん張りながら、徹は戦意を向ける。落ちる沈黙。次の一撃を先に叩き込んだほうが勝ち、その一撃を避けられれば、負ける。 が攻撃を外すなんて考えられない。ならできるだけ早く、正確に、撃つだけ) なぜか久嶺の心は落ち着いていた。思うと同時に体は動き、引き金を引いていた。 「……流石、だな」 カラン、と棍が地面に落ちる。徹の体がふらりと揺れて、地面に伏した。紙一重の勝利。 「うふふ、どうだったかしら、アタシの銃弾。中々の火力でしょう?」 強きで笑みを浮かべて久嶺は勝利の言葉を告げた。 (このまま倒れて……) 「って アホか。楽しみに来て必死になってどーする……馬鹿め」 うさぎは頭を掻きながら起き上がる。自分の愚考に顔を赤くしながら、拳を握り締めた。 「『喧嘩は一番楽しんだ奴の勝ち』でしたね。危うく忘れる所だ」 「そういうこった」 「OK、今から取り返す」 言って徹の懐に飛び込むうさぎ。棍の一撃をうさぎは布越しに左手で受け止めた。仮想現実とは思えないほどの骨の痛み。折れたかな、と思いながら右手を動かし、 「いッッッてえじゃねえかハゲ!」 そのまま右ストレート。そして服を掴んで頭突き。そのまま組み付いて噛み付いた。 「うぉぉぉおおあああああありゃああ!」 「吹っ切ったか。まぁこういうのも悪かねぇ!」 もはやそれは理性あるものの喧嘩ではない。ルール無用の獣の戦い。力任せに暴れまわり、後先を考えない戦い方。 もはや泥試合以上にはならないだろう戦いに、しかしそれをやっている二人はとても楽しそうだった。 ――最終的には二人横たわり、 「俺の方が一秒だけ長く立ってたぜ」 「気のせいです満月ハゲ。わたしの方が三秒は長く立ってました」 疲労で体が動かない為、口で喧嘩をしていた。 それはどう聞いても子供の罵りあい以上にはなりそうにない。だが二人は必死になって自分の勝ちを主張していた。 ● 悠里は殴ったり殴られたりすることは、実は嫌いである。 だけどこれは違う。仮想現実ということもあるけど、この殴り合いは戦闘とは違う。 徹の顔を殴る。その腕を引っ張られて膝蹴りを食らう。起き上がり様に頭突きをすれば、その頭めがけて拳を叩き込まれる。 「楽しいね、徹さん!」 服を掴んで、投げ飛ばされる悠里。下駄で踏まれそうになるところを転がって避け、起き上がり様に飛びついて全体重を乗せて徹を地面に押し倒す。 マウントポジションを取っての拳の殴打。何度目かのパンチを受け止められて、指の関節を痛めつけられる。ひるんだ隙に悠里の下から脱出する徹。 「卑怯なんていうなよ」 「当然さ!」 全身泥だらけ血だらけ。それでも笑いながら悠里は拳を振るう。 「いくよ、徹さん!」 「おうよ!」 互いに限界間際。最後の力を振り絞っての全力の一撃。腕が交差するように拳は互いの顔に突き当たり、二人はもんどりうって倒れこむ。 「忘れてた。四十四歳の誕生日おめでとう、徹さん!」 「そういえばそんな名目だったなぁ、これ」 互いに忘れていたことに気付き、倒れながら大笑いしていた。 「行くぜ。イくぜ。征くぜぇ!」 りりすはただ真っ直ぐに徹に向かい拳を振るっていた。 りりすの戦いの主軸はスピードである。回避と素早さを武器としたソードミラージュの拳は、 「コイツでどうだぁ!」 徹の拳よりも、軽い。それはスピード系とパワー系の違いといえよう。 故にりりすは数を当てる必要がある。フットワークを生かして、足を使って相手をかく乱死する必要が。だが、 「僕は『受ける』とか『避ける』とかは、あんまり好きじゃないんだ」 「へぇ。じゃあ何が好きなんだ?」 「決まってるだろう。ただ前に進むだけの戦いさ!」 殴るなら殴る。避けるなら避ける。小手先の技など無く。最大威力の一撃を最速で叩き込む。 「いいねぇ。最後まで殴り合おうか!」 「はっ! 燃えてきた。まだまだまだまだまだまだ! 僕はこんなもんじゃ満足出来ねぇよ!」 互いに一歩もひかず、ただ拳だけを振るっている。避けることなんてしない。ただ気の済むまで殴り続けていた。 「そして勝つ!」 りりすの拳が徹の顔に突き刺さる。その顔が、笑みに変わった。 「勝つのは、俺だぁ!」 単純なタフネスの差か。りりすの一撃に耐えた徹が拳を振るい、りりすの体を地面に倒す。頃ん、と仰向けになって徹と顔をあわせ、りりすは口を開いた。 「参ったなぁ。またヤろうや。次はリアルでな」 「ああ、いつでも待ってるぜ」 「くー、効くな! 頭がクラクラしやがんぜ」 計都は顔面に拳を食らい、嬉しそうに頭を振った。事実、効いたし頭が揺れる。しかしその感触こそが素晴らしい。 足をしっかり踏ん張って拳を繰り出す。徹の頬骨を殴った感触。まだ倒れてやれねぇぞ、とお返しの拳が飛んでくる。 「ぶっ倒れて立てなくなるまで、思いっきり殴り合おうぜ!」 「粋がいいねぇ。だが俺とスデゴロするにゃ、ちーっとパワーが足りないみたいだな!」 「チマチマやんのは、性にあわねえ。最高の一撃をプレゼントしてやんよ!」 言って徹の動きを見切るために集中する計都。それにあわせるように、腕を回しながら集中する徹。 「いーち、」 「にーの、」 「「さんっ!」」 集中に集中を重ねた拳が交差し、 「あはははははっ! 楽しいなあ!」 計都は背中から倒れこみ……それでも喧嘩の余韻を楽しんでいた。 ● 「そら急げ。皆待ってるぞ!」 月見の舞台に向かって走り出すリベリスタ達。 思いっきり殴りあった為、その顔はとても晴れやかだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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