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月見をしよう

●9月19日は九条さんの誕生日です。
「というわけで皆で月見に行きませんか?」
 そんな事を言う『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)の姿はいつものARK職員服ではなく、浴衣だった。この前の福利厚生で着ていたものだ。
「少し歩いたところに高台があります。街の光に邪魔されることなく、月と星を一望できますよ」
 和泉は『月見のしおり』と題されたパンフレットを集まった皆に渡していく。曰く、ゴミは各自で回収だとか、飛行して他の人の月見を邪魔しちゃダメとかそういった一般常識が書かれていた。
「この日は三日月になるそうです。中秋の名月には少し早いですが、こっちはこっちで風情がありますよ」
 戦いばかりでは気が滅入ってしまう。こういう息抜きも必要だろう。
「……ところで、肝心の九条は? もしかしてサプライズ?」
 その問いかけに和泉はなんともいえない苦笑を浮かべた。
「いえ、むしろ今回の誕生日会は九条さんが自分で計画しました。『いーじゃねーか。酒を飲む理由と思えば』……ということだそうです。
 九条さんは少し遅れてくるそうです。開会には間に合わせるといっていました」
 ? 疑問符を浮かべるリベリスタ達。まぁ、来るというのなら問題ない。
「福利厚生のときの浴衣をまだしまってなければ、着ていくのもいいと思いますよ」
 静かに過ごすもよし、楽しく騒ぐもよし。

 秋の夜長を、あなたはどう過ごしますか?


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:どくどく  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月28日(金)23:27
 どくどくです。
 19日には少し早いですが、九条・徹の誕生日シナリオとなります。

 このシナリオは同日公開の『喧嘩をしよう』とほぼ同時期に起きています。
 ですが、参加制限はありません。同時に参加した人は、上記シナリオが終わったら終わったら高台に走っていくことになります。もちろん九条も。

◆場所情報
 三高平の高台。駐車場と休憩所がある広場です。
 時刻は夜。空は三日月。秋の星座が夜空に浮かんでいます。
 周りに人はいませんのでどれだけ騒いでも苦情はきませんが、マナーは守りましょう。常識に照らし合わせてよろしくない行為を行なえば、九条にすっ飛ばされます。ご注意を。

  行動としては、
【1】料理やお酒を入れながら騒いだり、たのしんだり。(未成年者の飲酒禁煙は禁止です)
【2】静かに月を鑑賞したり、浸ったり。
【3】三日月に照らされて、二人で語り合う。

 九条は【1】でお酒を飲んでいます。ですが、あくまで予定。皆様に引っ張られればその限りではありません。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(このタグでくくっている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前でOKです。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
参加NPC
九条・徹 (nBNE000200)
 
参加NPC
天原 和泉 (nBNE000024)


■メイン参加者 35人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
インヤンマスター
宵咲 瑠琵(BNE000129)
ナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
デュランダル
東雲 未明(BNE000340)
スターサジタリー
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ソードミラージュ
絢堂・霧香(BNE000618)
プロアデプト
オーウェン・ロザイク(BNE000638)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
クロスイージス
ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)

遠野 御龍(BNE000865)
ソードミラージュ
富永・喜平(BNE000939)
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
覇界闘士
阿部・高和(BNE002103)
ホーリーメイガス
翡翠 あひる(BNE002166)

エリス・トワイニング(BNE002382)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
ソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
クリミナルスタア
関 狄龍(BNE002760)
デュランダル
結城・宗一(BNE002873)
プロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
クロスイージス
日野原 M 祥子(BNE003389)
ホーリーメイガス
綿谷 光介(BNE003658)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
ソードミラージュ
エルヴィン・シュレディンガー(BNE003922)
   


 吸い込まれそうになる夜空に浮かぶのは、秋の星座と三日月。山の上の広場は、それを一望できる。さながら夜のスクリーンだ。 
「ふむ、九条も今年で四十四なのじゃな」
 御年八十二歳。徹の倍近くの歳を重ねた瑠琵が、御猪口片手に祝いの言葉を――
「かたぐるまするのじゃー!」
 言う前に器用に徹の身体に飛び乗って、肩までよじ登る。
「つか人を集めておいて遅刻とは良い身分じゃのぅ」
「悪ぃな。別の楽しみがあったんだよ」
 ぺちぺちと頭を叩く瑠琵に、諦めたようにため息をつく徹。見た目は幼子を肩車する親父だが、その実情はロリババアにいいようにされる元ヤクザである。
「まぁ、良い。んで、誕生日プレゼントは見合い写真で良いかぇ? 我が一族の年頃な娘から年頃でない娘まで集めてみたのじゃ」
「いやダメだろ、年頃でない方は。俺はなんかそういう疑惑でもあるのか?」
「ぶっちゃけ、アークの裏で宵咲の勢力拡大を図ってる訳じゃが」
 酒が入っているためわいのわいのと騒ぐ瑠琵をそのままにして、徹は既に宴会場と化した広場に足を運ぶ。
「ア、ヨイヨイっと」
 聞こえてくるのは某大国の特殊部隊だった時は過去。いまやすっかり日本に帰化し、民謡を歌詞無しで歌えるほどになったベルカの声である。
「さても眩しき満月よ。せっかくなので大人っぽく『杯を舐める』と言う飲み方をしてみんとす!」
 ベルカは杯を手に徹のほうを見る。
「同志九条……アークに協力する者の中でも1,2を争う和テイストの持ち主である。
 ひとつ酒の飲み方をじっくり見て盗んでやるとしよう!」
「美しいものを酒の水面に写して、その景観を楽しむんだ。それから目を離さない様に杯を唇までもっていって軽くなめるんだ」
「ふむふむ、さすが同志九条! 酒と同時に景色を楽しむのでありますな。参考になりました!」
「うほっ、九条じゃねぇか! 久しぶりだなぁ! 元気にしてたか?」
 声をかけてきたのはいい男で有名な高和である。
「おぅ。久しぶり。見ての通り元気だぜ」
「人情あふれるところといい、男が好きなところといい。俺達似てると思うんだ」
「待て、特に二番目。俺はなんかそういう疑惑でもあるのか?」
 そんな言葉をスルーして高和は酒瓶とコップを手にする。
「お前と酒を飲むのは楽しくてしょうがねえからな。いける口だろ? 飲もうぜ!」
「そいつを言われると断れねぇな。一杯行くか」
 カン、とグラスをつき合わせて酒を飲み始める高和と徹。互いに水のようにアルコール度数の高い酒を嚥下する。
「相変わらず酒豪だな」
 その様子を見て宴に加わるウラジミールを始めとした【望杯】のメンバー。エナーシア、快も酒瓶を手に輪に加わる。
「九条さんの季節の催しに出るのも、裏さん新田さんとお酒飲むのも恒例になってきたわねぇ」
 エナーシアは空に浮かぶ三日月を見ながら徹の杯に酒を注ぐ。
「楽しんできたかしら? まずは……駆けつけ三杯?」
「ああ、楽しんできたぜ。美人の酌だと酒が進むぜ」
「世辞の上手さも酒が回った証拠かしら。それともいい喧嘩をしてきたから?」
 徹とエナーシアのそんなやり取りの中、快が和泉を酒宴に誘う。
「和泉さんも良かったらこっち、どう? 飲めるようになったんだから、日本酒にも付き合ってよ」
「まぁ。いいんですか。それでは一杯」
 そして乾杯の音頭が取られる。それぞれのペースで酒を飲みながら、話が進む。
「秋に月を見ながら酒を呑む。こういう事を楽しめるほどに日本に慣れてきているということか」
「ウラジミールの旦那の所には四季がないからなぁ。年中雪見酒ってのも悪くはないんだろうけど」
「そういえば九条さんは出身はどこなの? 次の機会には郷里の酒を持ってくるのも一興かと思ってさ」
「ああ、京都だぜ。この辺」
「うわ、ここか。酒蔵多いんだよなぁ」
「場所で判るぐらいに多いのね。九条さんは生まれながら酒に縁があるみたい。
 そうそう。いつもどおりの酒宴になる前に言っておかないと。お誕生日おめでとうだわ、九条さん」
 エナーシアが九条に向き直り、誕生を祝う。
「そうだ。芒、探してきた。これで菊に盃で月見酒だね」
 快が花札の役にあやかってススキを持ち出す。風流だね、と笑う徹。冷おろしを注ぎ、笑顔で祝杯する。戦いの中で得るものがあった。守りたいものができた。この一瞬も、その一つだ。
「九条殿とこれからの未来に乾杯。お互いに、来年も……かね?」
 ウラジミールが郷里の火酒を手に祝杯する。これからも、将来のあるもののために戦おう。どのような未来であれ若い者たちの幸せになるものを見る事ができるなら自分の仕事も無駄ではなかったのだ。
「存分に愉しむとしましょう。こんなにも月が綺麗なのだから」
 エナーシアの言葉と共に酒が進む。
「お誕生日おめでとうでござるよ!」
「あー、誕生日ってこの歳で祝うのとか気恥ずかしいかもだけど。おめでとう」
 盛り上がる宴をさらに盛り上げるのは虎鐵と夏栖斗の親子。血縁関係こそないが二人の絆は親子――
「なんかうるさい養父とかいるかもだけど無視無視!」
「酷いでござるよ、夏栖斗! 拙者の何処がうるさいのでござるかー!」
「あいつらとの喧嘩どうだった? アークのやつら、血気盛んだもんなあ」
「ガン無視とか酷いでござるよ!?」
 ……まぁ、親子のじゃれ合いなんだろう。これも。
「って、徹は喧嘩してきたのでござるか?」
「ああ、ちょいとVTS使ってな。本物の殴り合いじゃないから痛みとかないけど」
「はー。疑似体験でござるか。
 そういえば徹は今一番喧嘩してみたいのは誰なのでござるか?」
 話の流れとともに興味が湧いて、虎鐵が聞いてみる。効かれた徹はあー、と一瞬思案して、
「一番て言うのはねぇな。この瞬間でいいなら虎鐵ともしてみてぇぜ」
 何度か共闘したがゆえに知っている刀捌き。鬼気迫る虎鐵と打ち合ってみたいとは思った。
「僕とは?」
「夏栖斗とやりあうのも悪くねぇな」
「うは。そん時は全力でな!」
 徹の応えに笑顔で応える夏栖斗。そのまま空に浮かぶ三日月を見上げる。
「強くなりてぇな。全部まるごと守れるような強さが欲しいって最近すげー思うようになった」
 欠けた月を見た気分がそうさせたのか、不意に心情を吐露する。その言葉にあるのは、守れなかったものへの懺悔か。
「強くなったら普通とは外れちゃうんだろうけどさ」
「力があるから守れるんじゃねぇよ。守りたいと思う心があるから守れるんだ」
「でも、力がなければ守れないこともあるぜ」
「そうだな。現実は理不尽で、届かないこともある。そいつに打ちのめされて泣きたくなることなんてしょっちゅうだ。心が折れて戦いをやめる奴だっている。
 だからこそ、心が大切なんだ。失敗しない奴なんていない。失敗しても折れない心。非情な現実に屈しない心があるから、誰かを守れるんだぜ」
 それは多くの失敗を経て、今アークにいる元フィクサードの言葉。
「叶わないなぁ。なんつーか、僕も九条くらいの年になったら落ち着くかな?」
「さてな。未来を決めるのは、いつだって自分だぜ」
 徹は夏栖斗のコップにジュースを注ぐ。
「今彼女がいないときぐらいは、宴に付き合え。ゆっくり楽しんでくれや」


 さて、この宴は徹の誕生日でもあるのだが、同時期に誕生日を迎えた祥子とエルヴィンの誕生日もここで祝われていた。
「さ~飲みましょうアニさーん! 九条さん、それと日野原とエルヴィンは二十歳おめでとー!
 さぁいい飲みっぷりを見せてくれ! かんぱーい!」
 ツァイン率いる【MGK】のメンバーである。ツァインは少し前にVTSで徹と喧嘩をしてきたこともあるのか、妙にテンションが高かった。
 祥子は苺のホールケーキにローソク立てて、誕生日を祝ったあとで、
「じゃあ行くわよー。って九条さんも参加して」
「俺もかよ。こういうのは久しぶりだな」
 二人で息を吹きかけてローソクの火を全部消した。沸きあがる拍手。
「とりあえず、徹は誕生日おめでとう、そして、祥子は二十歳おめでとうだ」
 白い仮面をつけたエルヴィンが祝辞の言葉を述べる。彼らのテンションには些かついていけないところはあるが、まんざらでもないと思っていた。
「シュレディンガーもだ。日野原とシュレディンガー、それに九条は誕生日をおめでとうであるな」
「祥子と白びんはそういや二十歳になったんだもんなぁ、おめでとう」
 優希と翔太が誕生日を祝う。
 二十歳。それはお酒解禁の年齢。そんなわけで本日お酒デビューの祥子。最初は甘いお酒で慣れながら、挑戦とばかりに徹の推選する酒を口にした。
「んー。おいしい。ねぇ、白ディンさんも飲んでる……って? え? 今どうやって飲んでたの?」
「酒か、あまり飲めないのだがな……飲めるようにはなりたいのだが……」
 あまり酒に強くない白ディンことエルヴィンは、マスクをつけたままストローで酒を口に運んでいた。祥子はその瞬間を見逃してしまったのだが。
 酒が入ったエルヴィンは少しフラフラとぐらつき、目つきも悪くなっている。
「エルヴィン! 大丈夫かー! メディーック!」
「やだーなんでそんなにテンション高いの? それノンアルコールでしょ?」
 テンションの高いツァインに祥子が笑いながら絡む。お酒の飲めないツァインと優希と翔太は、ノンアルコールビールを口にしながら酒の感覚を楽しんでいた。
「んー、どうもビールは苦く感じるってとこかな? ワインとカクテルは普通にいける」
 次々と翔太はノンアルコール系を口にする。味が馴染まないのか、ビールを口にした時にわずかに顔をしかめた。
「俺の感想としては……辛味が少々足らんな、物足りん」
 優希はジュースを飲んでいる感覚なのだろう。フルーティな感覚が気に召さない。かといってビールは何かが違うようだ。
「辛さ? 日本酒とかいいんじゃないか?
 ワインとかカクテルは結構いける。やっぱ軽くて甘めの方が飲み易いな」
 この辺は翔太と同じだな、ツァインが頷く。
「たくさん笑って月をぼんやり眺めていたら少し眠たくなってきたわ……」
「ああ、今日はいい月だ。なんだか月が三つに見えるぜ」
「月が三つだと? おいおい、未成年は飲酒禁止だぞ。こっそり飲んだのではないのか?」
「この世界の空はいつまでも平和であってほしいものだ」
「今日は大いに盛り上がっていこうぜ!」
【MGK】の月下の宴は続く。

 徹が遅れた理由は、VTSによる喧嘩である。それに付き合っていたリベリスタもこの場にいた。
「誕生日おめでとう御座います。これは私からです」
 妙に手馴れた手つきで徹の御猪口に日本酒を注ぐうさぎ。家族に大呑みがいたらしい。
「はは、すまねぇな。息が荒いが大丈夫か?」
「いやその、ここに来るのに全力ダッシュしたもので……同じ様にダッシュした筈の九条さんは平気そーですけども」
「疲れなんざ、酒を飲めば吹き飛ぶってもんよ」
「どー言う理屈ですか。それは」
 深呼吸ついでにため息をついて、徹を見る。ハゲ頭、酒飲み、大笑い。外面だけ見れば酒屋にいそうなおっさんである。
(豪放磊落。明朗闊達。気さくで、それでいて芯は巌の様。こちとら余計な事考えちゃって中々そこまで突き抜けれないと言いますのに……)
 数刻前の喧嘩を思い出しながらうさぎは思う。見た目は確かに酒屋にいそうなおっさんだが、触れればそれだけではないことは判る。羨ましいものだ。
「徹さんもすっかりアークの一員って感じだねー。こっち来て一年ぐらいだったっけ?」
「大体そんなもんか。あの時はお互い大変だったからなぁ」
 悠里の問いに、笑いながら徹が答える。一年前は急成長するアークを危険視していたのに、
「今となっちゃ、お前らの成長を見るのが楽しいってもんさ」
「こんな風にずっとみんなで楽しく過ごせたらいいよね」
「まあな」
 徹が曖昧に濁す理由を、悠里は理解できる。神秘の戦いに身を置いている以上。命の保障なんてない。明日危険に巻き込まれて命を失うこともあるのだ。
 春に徹と一緒に飲んだときから半年。あれから多くの仲間がなくなった。ずっと一緒だって思ってたのに。その姿を見ることは、永遠にないのだ。
「徹さん言ってくれたよね。僕達次第だって」
 掌を開いて悠里は言う。この手で何がつかめるのかなんてまだわからない。戦いだって怖いけど。
「もっともっと、強くならないとって思えるようになったんだ。ありがとう、徹さん」
「答えを出したのはおまえだ。ならそのまま、突っ走りな」
 半年前の酒盛りのように、二人は拳をつき合わせた。
「よう、旦那。さっきは楽しかったなァ!」
「ああ、許可が下りればもう一回ぐらいはやりたいもんだぜ」
 手を上げて近づいてくる狄龍に、徹が応じる。
「やっぱり喧嘩はいいよなー。シミュレーションとは言え、傷も何も残って無いのが嘘みたいだぜ」
「逆に何も残らないのが、俺は惜しいんだよな。余韻が残らないって言うか」
「あははははは。そういわれるとそうだ!」
 白兵型と射撃型とはいえ、徹と狄龍は同じクリミナルスタア。気が合うころがあるのだろう。
「そうそう、さっき言いそびれちまったからさ。
 誕生日、おめっとうな! じゃ、また面白そうな事があったら呼べよな!」
「おう。いつだって歓迎だ!」
 カツン、とグラスを合わせて徹と狄龍は乾杯する。
「お酒、美味しいですか……?」
 静かに問いかけるのはリンシードだ。彼女は未成年の為、お茶を飲んで月を眺めていた。
「せっかくの誕生日なんですから……九条さん、私がお酌してあげます……」
「ありがたいね。可愛い娘の酌だと、思わず飲みすぎてしまいそうだ」
「嬉しいです……。早く私も大人になりたいです……。
 私が大人になったら、一緒に飲みましょうね……それまでは、お互い元気でいられるといいですね……」
「そうだな。お互い元気に、か」
 リンシードが成人するまであと九年ほど。それを長いととるか短いとるかは様々だろう。密度が濃い毎日ゆえに九年は短く、密度が濃いゆえに九年後互いに生きているかどうかは判らない。
 だが――
「また、一個将来の楽しみが増えた、かも……? 最近は、もう少し頑張って生きてみるのも、悪くないかなーって、思ったり……」
 戦いに明け暮れる幼い戦士が明日への楽しみを得られたのなら、たとえ悲劇が待っていようとも前を向いて歩いていける。
「あ、ご、ごめんなさい、。なんか変な話になってしまいました」
「いいんだよ。大人になったら、一緒に呑もうか。それまで、待ってるぜ」
 徹の酒の入った御猪口とリンシードのお茶のコップがカツンと音とを立てる。約束ははるか未来の話。そのときまで生きて、約束を果たそう。


 そんな宴の輪から少し離れて、竜一は月を見上げて団子を食べていた。
 たまには一人で月を見るのもいいものだ。暗闇の中、淡く輝く月を見ていると、いろいろと思うことがある。楽しいこと、悲しいこと、許せないこと、あと明日のこと。
「俺は所詮は小市民だからね」
 膝を抱えて、団子を口に放りこむ竜一。今日は恋人や妹もつれずに、静かに月を見上げていた。
 リベリスタとして生きるのは、ツライ所もある。思いの丈を表にぶっ放す人間も居れば、内に抱え込む人間もいてもいい。その解決策は千差万別だ。
 大丈夫。また立ち上がれる。
「なぜなら俺は、封印されし力に悩み悲しみを抱えて戦うクールなダークヒーローなのだから!」
「一人で何やってるんだ?」
「あ、九条誕生日おめ」
 起き上がって徹の頭をぺしぺしと叩く竜一。徹も抵抗するでもなくはたくままにさせている。
「こうやって月の下で杯を鳴らすのも三回目ですね」
 亘が自分用の甘酒を手に近づいてくる。
「初日の出に花見に。まぁ、俺が催しをするのは大抵酒がはいるがな」
「改めてですが誕生日おめでとうございます九条さん」
 徹の新しい一年を祝して、徹のお猪口に持ってきた日本酒を注ぐ亘。杯を突合せて、互いの杯に入っている物を口にする。
「ふふ,自分も出来るならVTSで貴方と戦ってみたかったんですけどね」
「はは。まぁ機会があればな」
「ええ。今はゆっくり三日月を肴に飲みましょう」
 空に三日月。秋の星座が夜のキャンバスに描かれていた。その美しさは酒の肴には充分なもの。
 静かに杯を傾け、注がれたものを嚥下した。


「月見ながら、団子とか芋とか枝豆とか食うんだよな?」
「ああ。あとフェザーはノンアルコールな」
「わかってますよー」
 プレインフェザーと喜平は二人、宴会の輪から離れて月を眺めていた。
「満月じゃないのは少し残念だけど……悪くねえじゃん、ちゃんと綺麗」
「ああ、こういうのが戦いの狂気に向かう足を踏み止まらせてくれるよね」
 神秘の戦いは、心が歪むほどの狂気と対面することもある。
「明日も明後日もっと……なんか花見の席でも似た様な事を口走ったな」
 喜平は言ってプレインフェザーが用意してくれたつまみを口にする。甘党の喜平のために作ってくれたプリンに舌鼓を打ちながら、他愛のない雑談を続ける。
「春に花見した時……覚えてっかな。あの時、これからもずっと傍に居てやる、って言われたみたいで、すげえ嬉しかったんだぜ」
 あのときの言葉を思い出す。やさしく抱き寄せられた腕と、優しい言葉。
「あの時もう、あんたの事……好きだったからさ。富永はあたしの事……『特別』だった?」
 今日が満月でなくてよかった。もしそうなら照れた顔を喜平に見られていたから。三日月に感謝して、いつもより喜平の司馬に近づく。
「フェザー」
 花見のときは酔っ払いのフリをして誤魔化した喜平。そのための酒をベンチにおいて、プレインフェザーの顔に指を添える。伝えたいことはある。だけどそれは言葉だけじゃ伝え足りない。
 指はブレインフェザーの顎先に回る。そのまま自分のほうを向かせて、言葉では伝えきれない感謝の気持ちを示すために喜平は顔を近づけていく――

「綺麗な月だね、宗一君」
「……ああ、とても綺麗だ」
 霧香の言葉に答える宗一。
 二人手を結び、人気のない場所を歩いていた。
(なんだかドキドキする……でも、もうこのドキドキを隠す必要ないんだよね。あたし達は両想いで……こ、恋人、なんだし!)
 握った手を意識しながら霧香は胸の鼓動を感じていた。好きという気持ち。愛しているという感情。それがこんなにも強く暖かいものだなんて初めて知った。
「そういや。浴衣、似合ってるぜ」
「えへ、ありがと」
「こうして、二人で心穏やかにすごせる時間が来るなんて思いもしなかったな」
 宗一は掴んでいた手を離して霧香の肩を抱き寄せる。突然の行動に顔を紅くする霧香だが、そのまま抱き寄せられる。
 二人とも戦いに身を置くものだ。今日が無事でも明日が無事でないという保障なんてない。リアリストの宗一はそれを理解しながら、それでも告げる。そうあってほしいという希望と、その希望をまもるという二重の意味を込めて。
「いつまでも、ずっと一緒だぜ」
「宗一君……」
 たった一言にこめられた様々な意味。剣士として、リベリスタとして、一人の女性として霧香はその言葉に答える。
「ずっと、ずっと一緒に居ようね。いつまでも……いつまでも」
 顔を寄せる二人。三日月が重なる二人の影を地面に写していた。

 拓真と悠月は休憩所に座り、空に浮かぶ三日月を見上げていた。
「月見の団子も良いが、互いに飲める歳にはなった。今日はこれで、一献と行こう」
 拓真が持ってきたのは杯と日本酒。共に二十歳を超えて、お酒が飲める年齢になっていた。
「ありがとうございます……ふふ、初めてですね」
「そう強い酒じゃない。まぁ、気分は味わえる」
 悠月に杯を渡し、酌をする拓真。そして自分の杯に酒を注ぎ、
「これからの互いの未来に、乾杯」
「乾杯。御月見で、月を見ながら御酒を一献……月見酒」
 最初は舐めるように。そして少しずつ多く口に含んでいく。
「なぁ、悠月。……月が綺麗だな」
 空に浮かぶ三日月を見る。欠けた月だが、満月に美しさが劣るわけではない。月を見たまま悠月の体を抱き寄せる。
「ええ、とても綺麗ですね。拓真さん」
 悠月は拓真に抱き寄せられて、そのまま唇を重ねた。互いの体温をゆっくりと感じ、そして唇を離して微笑みあう。
「……また来年も、来るか」
「そうですね…また来ましょう」
 生きて、来年にまた――

「この丸い月は、団円を意味し……親しい者、家族が集まるため、と言う意味合いもある」
「ああ、中国ではお月見の時期は一族が集まるって聞いたけど、そういう理由だったの」 オーウェンの説明に「なら、今夜誘ったのは間違いじゃなかったかしらね」と未明は言葉を続ける。互いにこの三高平で縁の深い相手は目の前の者なのだから。
 オーウェンは未明が作ってきた団子を手にとって……作ってきた未明に握らせる。そのまま自分の口を指差した。
「え? 何……? って、何であたしが口移しで食べさせる流れになってるの。ちょっと待って、こら」
 その意図を察した未明は顔を赤くして講義する。が、オーウェンは動くことなくポーズを維持していた。
「………ああもう。分かったから、ちょっと目を瞑ってよ。早く!」
 根負けしたのは未明のほう、瞳を閉じたオーウェンの口に、団子を運んでいく。なんと言うか恥ずかしい。
「ふむ。月と言う物は誘惑の魔力もあると聞く。どうやら、今日はその影響を受けているらしいな」
「うるさい。この、このっ」
 ぽかぽかとオーウェンを叩く未明。じゃれあいながら、二人は月見を楽しんでいた。

「今日はめでたい席ですね、本当に」
「九条様の誕生日に三日月……今日は良き日でございますね……」
 遠くで盛り上がる宴席を見てから光介とシエルは月を見上げる。お団子とススキ、そしてお神酒。そして光介の正面には浴衣姿のシエル。
(すごく大人っぽくて……ど、どきどきしてしまうのです!)
 思わず見とれてしまい、すぐに目をそらす光介。三日月を見ながら、しかしシエルの姿のほうも気になっている。
(この浴衣、光介様はどう思っておられるのでしょうか……?)
 シエルのほうもちらちらと光介のほうを見ながら、彼の言葉を待っている。
 二人はそのまま赤面しながら月見の準備を行い、言及することなく月見が始まっていた。
「あ。シエルさん。す、少し赤くなってますよ?」
 シエルに酌をしながら光介は心配そうに尋ねる。
「どうやら私……月明かりに酔ったみたいです……お恥ずかしい」
「えええっ!?」
「ふふ。酌のお返しに御団子をあーんして差し上げとうございます」
「ええええええええっ!? ……………………あーん」
 団子を掴むシエルの指を意識しながら、光介は口を開いて団子を食べる。
(私は月明りに酔ったのですから……少し位大胆に行動してもよろしいですわね)
(うぅ、いろいろ参りました。今日のシエルさんは色っぽくて敵いません)
 酔ったのは月でもお酒でもなく、目の前の人。
 三日月はそんな二人を淡く照らしていた。

「リセリアは、向こうに居た時は月を眺める様な事はよくあったりしたのか?」
 猛は三日月を眺めながら、隣にいるリセリアに問いかけた。
「欧羅巴では、月は狂気の象徴として不吉なものとされてます。全く無い訳ではないけれど、こんな風に見上げた事はなかったで」
 リセリアも猛と同じように月を見上げていた。月の魔力は人を狂わせるという。だがしかし、
「確かに、こうして見る月は綺麗なものですね」
 その美しさは、確かに理解できる。二人並んで月を見るだけで、こんなにも心が満ちるなんて思いもしなかった。
「月は何処からでも俺達を照らしてる。なら、居る場所は違っても同じ月を眺めた時があったかも知れないな」
 似合わねぇセリフだなぁ、と自分でも思いながら猛はリセリアの顔を見た。月光に照らされる顔は、柔らかな笑みを浮かべる。
「もしかしたら、そういう事もあったかも」
 遠く離れた国でも、同じ月を見上げていた。そう思うと、なぜか嬉しくなる。
「これからも、色んな所に引っ張っていくからな? 覚悟しといてくれよな。
 ……好きだよ、リセリア」
 今こうしてここにいる幸せ。これからも一緒に歩める幸せ。それを示すように猛は微笑んだ。ゆっくりとリセリアのほうに手を伸ばす。思わず返答に困ったリセリアだが、
「……ふふ。じゃあ、期待しています」
 猛の言葉に顔を赤らめながら、その手を取った。

「こういう時、大人なら月見酒といくんだろうが、オレたちゃまだ未成年だからな」
「また、大人になった時に……今度は大人っぽく、月見酒しようね……っ!」
 フツとあひるは三日月を見ながら、お茶を飲んでいた。月見酒ではなく月見茶。硝子の急須に、硝子の湯のみ。月の光が硝子に透ける。
「お茶にお月様が輝いて、とっても綺麗……!」
 あひるがお茶の水面に映る月を見ながら、その光景に手を叩く。お茶の香りも相まって、心地よい気分になる。
「お世話になってる人、大切な人に……いっぱい食べて欲しいんだ。えへへ……」
 あひるは買ってきた兎のお茶菓子を並べる。フツはまず形を愛でてから口に運んだ。
「ウム、かわいくてウマイ! よく見つけてくれたな」
「なでなで、嬉しいな……!」
 あひるの頭をわしゃわしゃと撫でるフツ。顔を赤らめて喜ぶあひる。フツは兎のお菓子を持ってあひるの口にもっていく。
「あひるにも兎の和菓子を食べさせてやろう」
 少し戸惑った後であひるは口を開いてお菓子を食べる。甘い感覚はけして和菓子の甘さだけではなかった。
「フツにもあひるが……食べさせてあげるっ」
 お返しとばかりにあひるもお菓子をフツの口に近づける。驚いた後でぱくっ、と食べるフツ。
 三日月のお茶会は、甘い味になりそうだ。


「ふわ……」
 トラックの運転席で眠っていた御龍が伸びをする。
 視界には宴の光。それももう、終わりが近づいているようだ。
「……ん」
 呆然と月を眺めていたエリスを連れて、一人また一人と帰路につく。

 さぁ、方舟に帰ろう。明日はきっといいことがある。
 こんなにも月が綺麗だから――
 

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 誕生日の祝辞、ありがとうございます。
 白紙以外は全て書ききったと思います。忘れてる方がいたらごめんなさい。

 なんだか九条は酒ばっか飲んでる気がします。ちくしょうよこせー、と思いながら書いていました。
 でもまぁ、九条ほど飲めないので実際にもらったらリプレイがかけなかったり。ああジレンマ。
 よーし、今日は飲むぞー。

 戦いに勤しむ皆様の心の清涼剤になれば幸いです。
 それではまた、三高平で。