●暴虐には暴虐を 気弱な、どこにでもいるような中学生の少年がいた。背が低く、体も細いことから、彼はもやしというあだ名を持っていた。そこを素行の悪いクラスメイトに目を付けられたのが、すべての始まり。 それは、どこにでもあるようないじめ。彼はクラスメイトや上級生に囲まれて、学生生活を陰湿に過ごしていた。 今日も彼は人目のないところで、殴られ、蹴られ、口汚く罵られている。 「ゆるっ、許してください……。もうやめてください……」 そう懇願する彼は許しを乞うような表情を浮かべながら、マグマのように煮えくりかえる心を必至に抑えていた。 (力があれば……。自分も暴力ができるぐらいの、力があれば) そんな彼に、囁く声があった。 「お前には力がある。だから、俺を、俺たちを解放しろ」 彼は周りを見渡す。だが、その声の主は見つからず、ニヤついた不良の表情があるばかりだ。 「奪え、壊せ。この世は暴力がすべてを支配する。その支配の力をおまえは手に入れる」 声は自分の内から聞こえてきていた。少年はそれに気付き、自分がおかしくなったのかと思う。実際、体と心の痛みでおかしくなりそうであったのは事実だ。それどころか、いっそのことおかしくなれば、楽になるのかもしれないと心は訴えた。 だから、おかしくなりそうなその声に懇願することに決めた。 「全部、壊せ! 奪え!」 やけになった言葉が口の中から湧き出ていく。そうした声は不良たちにクエスチョンマークを浮かべさせ、世界を歪める。歪んだ世界は応え、声として叫ぶ。 「ヒャッハーッ!!」 そして現れるのは、エリューション化という現象によって形作られる存在こと、エリューション・フォース。人の想いが形になった存在である。 そのエリューション・フォースは天を衝くようなモヒカンと、金属の肩パット、そして筋肉だらけの肉体を持っていた。少年の心にあった暴力への衝動がそのまま形になったような姿だ。 そして逆襲。エリューションとして顕現した暴力にとって、ただの不良など敵ではなかった。 「……よ、よし! やれ!」 暴虐と無法の徒は、彼の心の高まりに応じて増えていく。世界が歪み、モヒカンがまた一人現れては、次々に不良を蹴散らしては捕獲していった。 「よ、よし。やれ!」 その声には陽気が乗り、彼は調子にのる。しかし、 「ヒャッハー! こっちにも弱いヤツが居るぜえーッ!」 「弱者は罪だァ! ヒャア!」 彼自身の心から生まれたエリューション・フォースは彼までも捕らえて運び始めた。彼の心に弱者を、いじめられている自分自身を許せないという気持ちがあったからだろう。 モヒカンのエリューション・フォースが向かう先は、街校外にある小山。 なぜそこへ向かうかといえば、そこで残酷な処刑を行うつもりだからだ。 「ヒャヒャヒャヒャッ! 楽しいショーが待ってるぜェ!」 空を衝くモヒカンは、弱肉強食の象徴。弱者であるならば、創造主だって許さない。 ●無法者を叩きのめせ 複雑な表情を浮かべていたリベリスタたちは、ひとりの少女に注目した。先ほどまでモニターに集中していて気付かなかったが、何やら動いている様子だからだ。 頭の上に持って行った手でモヒカンの形を表現しながら、その少女――『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は本題を進めた。 「今回の敵は、フェーズ一のエリューション・フォースが八体。数の上では互角、だけど……一体一体はそれほど強くない。かといって、連携を取れるほど協調性もない」 バッサリと両断する。武器も大型バイクやら火炎放射やらボウガンやらと、多彩ではあるが有効に使えるかどうかは疑問のようで、そこまで気を付けなくてもいいらしい。 「ただ、怪しい拳法を使うリーダーには気をつけて。ちょっと強敵」 しゅ、しゅ。と可愛らしく手を伸ばす。拳法のつもりのようだ。 「それと、気絶した人が五人ほど捕らえられて、大きな大砲の中に砲弾がわりに入れられている。それに火をつけて、空に飛ばすつもりみたい」 なんという残酷な処刑方法だ! それに、人を花火の弾のように扱うなんて……! リベリスタたちの心にも、ムクムクと怒りの力が湧いてくる。それを見て、真白イヴは頷きながら、さらに続けた。 「場所は夜の小山。開けた場所だから、障害はそんなにないよ」 以上で情報は終わる。真白イヴは聞いてくれてありがとう、と小さくお辞儀をしてから、ちょこんと椅子に座る。 聞き終わったリベリスタたちは無法者を倒すべく気合いを入れた。ある者は心の中で、ある者は叫ぶようにして、気合いの言葉を表す。 モヒカンのエリューション・フォースたちに悲鳴をあげさせてやろう、と。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月10日(金)23:18 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●世紀末にウェルカム! 薄暗い工場の中で、下品な笑い声が響く。その品性の欠片もないような笑い声は、その声の主がどんな存在であるかを端的に表していた。 「ヒャッハーッ! 弱さは罪だー!」 声の主はモヒカンの男、のように見えるエリューション・フォース。 「さあ、発射の準備オッケーだぜぇ! 新記録は出るかなぁ?」 大砲を前に、舌なめずりをするエリューション・フォースことモヒカンたち。その大砲の中には、気絶した少年たちが砲弾代わりに積まれている。このまま発射されれば、空を舞った後、地面にたたき落とされてしまうだろう。なんという、残虐な行為だ。 「ヒャッハーッ!」 「ヒャッハーッ!」 鳴き声を上げ、共鳴するモヒカンたち。彼らは大砲に火を付けようと、ゆっくりと火炎放射機を構える……。 嗚呼! 少年たちを救うものはいないのか! 「ああ、弱いというのは罪だな」 「そうだそうだ!」 「雑魚共が雁首そろえてワラワラして弱い者を虐げているぜぇ~」 「そうだそうだ! ……あれ?」 いや、いる! その声の主、『おっぱい天使』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)と『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)と、その仲間である八人の戦士たちだ! 彼女らを一瞬仲間かと勘違いしたモヒカンたちが、間抜け面で一斉に顔を向ける。 「ちげぇー! 俺たちの仲間にこんなおっぱいはいねぇ!」 「こっちのモヒカンもおっぱいがありやがる! 女だぁーッ!」 モヒカンたちはしばらくその体を見てから、ようやく違和感に気付いた。この者たちは自分たちに刃向おうとしている。モヒカンパンクで仲間かと思った奴も敵だ。 「で、でもいい女じゃねぇかぁ……」 しかし、それに気付いて最初に言葉は……嗚呼、小物臭。 「はっ……。何者だてめぇら!」 一足遅れて、モヒカンたちは名乗りを強要した。少しだけ怯えているそれを見て、待っていましたと歩を進める者たちがいる。 「泣いている……。地球(テラ)が泣いている。その悲しみをここに止めよう。第四惑星の守護者! ワタシがキャプテン・ガガーリンだ!」 宇宙服に身を包んだ、オールバックに髭のナイスガイ……『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(BNE002315)の背には、蒼く輝く地球が見えた! いや、これは彼のオーラ、気迫の形だ! あまりにも大きなものを背負う彼の雰囲気が、その光景をモヒカンたちに錯覚させたのである。 「で、でかい……。それに、なんて広い……!」 思わず感想を漏らすモヒカン。しかし、これで引いたら悪役がすたる。モヒカンたちは何とか威勢を取り戻しながら、合言葉を呟いた。 「ヒャッハーッ! 地球がなんだー! 俺たちゃ無敵のモヒカン様だぜぇー!」 「ならば、俺は死神。弱者を虐げる無法者共に名乗る名は、それで十分だ!」 そう叫んだのは『まごころ暴走便』安西 郷(BNE002360)だ。彼の逆立てられた髪型は、モヒカンよりも高く衝いている! そしてその眼鏡の奥に秘められたのは、悪を許さぬ怒りの炎だ! 「……わらわの名前でござるですか? 今から倒れ行く悪党に名乗る名前は無いでござるですのよ!!!!」 続いて、『サムライガール』一番合戦 姫乃(BNE002163)も大太刀を大上段に構えて決める。太刀の動きに合わせるように、ポニーテールがふわりと舞って、彼女の子供っぽいかわいらしさを表す。だけれど、今彼女の顔にあるのは、怒りだ。怒りの炎は、彼女にも宿っている。 「「貴様らに明日を生きる資格は無い(でござるです)!」」 「いちかませひめの……参るでござるです!!!!!」 怒りを目に宿すふたりの息は合い、名乗りは完璧に決まる。 「言われなくても生きてやるぜー! やっちまえーッ!!」 「さあ始めよう。美しい地球を世界の終わりまで残す為に」 それぞれの武器を構え、戦闘態勢で向かってきたモヒカンたちの姿を見ながら、ガガーリンの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。地球はあんなにも美しいのに、世界(の一部)はこんなにも世紀末。 ●世紀の対決! リベリスタVSモヒカン! リベリスタたちはまず、火炎放射機を持ったモヒカンに殺到した。というのも、火炎放射機によって大砲に引火してしまったらたまったものではないからである。 「ヒャッハー! 燃えろー!!」 だが、モヒカンも自衛のために全力を尽くす。火炎放射機から放たれる炎をばら撒いて、その強襲を阻止しようとしたのだ。 「は。おいガキ、これが貴様の思う暴力か、貴様の想像の限界か? つまらんぞ。非常に矮小で陳腐で度し難い。今からこの高貴かつ偉大なこの儂が本物の暴力を見せてやる。これこそが、蹂躙すると云うことじゃ」 楽しそうな表情を浮かべながら、放たれた炎を無傷で突破したのは、『火炎の魔人<イフリート>』アレクサンドル・ヴェルバ(BNE000125)だ。もちろん、つまらないと言った彼が楽しそうにしているのは、これから蹂躙を始めるからだ。 「尊く貴き儂が許す。悉く燃え散るが良い」 炎を目くらましにモヒカンに近付いて、業炎撃を腹に力強く叩き込む。派手な音を立てながら、モヒカンは吹き飛んで燃え始める。しかも、ただ燃えているのではない。 「ああ、俺のモヒカンが燃えている! ひええええ、お助けぇ!!」 「頭が高い、貴様ら……」 「貴様、誰の許しを得て生きている……?」 追撃に、シルフィアの1$シュートが決まる! 炎を使って攻撃していたくせに炎に怯えたモヒカンは、銃撃を受けてゆっくりと倒れる。 「汚物は清掃じゃ……。ふん、不味い」 そこに、アレクサンドルが首に食らいつく。頭を焼かれたモヒカンはその牙によって体中の血が抜かれ、何も言えずに消滅する。 「しかしまあ、現代日本においてこれ程の短時間の間に重火器類を調達する手際はなかなか侮れませんな。まあ、案外それらも暴力衝動を具現化したエリューション・フォースの一部だったりするのやもしれませんがね。ともあれ、理不尽な暴力は圧倒的な暴力を以って征して差し上げましょう」 冷静に分析しつつ、それまで集中していた、『静かなる鉄腕』鬼ヶ島 正道(BNE000681)が動く。火炎放射機を持っている残り一体に向けて動いたのだ。 「ひっ」 その筋肉隆々の体は、スーツの上からでもよく分かる。その圧倒的な体格差に恐れをなしたモヒカンが、火炎放射機を無茶苦茶に放って正道を止めようとする。が、こちらもやはり止まらない。火炎放射機の威力は体を焼くには至らず、スーツだけを燃やすに留まったのだ。 スーツが脱げたことによって、見えてくる大胸筋、背筋、上腕二頭筋。そして、機械化された右腕。これを見て、恐れないモヒカンはいない。 「鐘が鳴るなり法隆寺というのもありましたな……。ふむ」 その動揺を見破り、正道はアデプトアクションで狙った。モヒカンの釣鐘を。 「コーーーーン」 一撃必殺。鐘が鳴ったような音と断末魔は、この混沌とした戦場に、僅かな静寂を与えた。南無阿弥陀仏。 「まあ、世の中なんとかなるもんでございます」 体に付いた火を手で消しながら、正道は眼鏡をかけ直す。モヒカンたちには、その冷静な顔が悪魔のようにも思えた。 ドラム缶が蹴り倒され、派手な音が工場内に響く。 「お前たちだらしねぇなぁ! 俺がやってやる!」 火炎放射機組がやられたのを見て、モヒカンのリーダー格が立ち上がったのだ。 リーダー格はリベリスタたちを見据えながら、全身をまるでハムスターのように丸めた! この構えは一体!? 「洩流洩流(もるもる)真拳!」 洩流洩流真拳。古代中国の三国時代、鼠に兵糧を奪われた武将が悔しさのあまりその動きを真似て作ったこの拳法は、限界まで体を丸めることで全身をひとつのバネに変え、使用者に大きな跳躍力を与える古代暗殺拳のひとつだ。また、非常に可愛らしい動きを再現したこの拳法と似ているエリューションによって、アーク本部に大打撃が与えられたのは記憶に新しい。 「ならば、無敵の嗚呼駆(あーく)真拳でお相手しよう!」 対して立ち向かう『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)が操るのは嗚呼駆真拳! それは、三高平大学に通うメタルフレームの彼が、講義の合間(留年中なので空いたコマが多い)に考えたまったく新しい拳法である! 彼自身が持つ機械の力を生かし、徹底したダメージコントロールを目指したその拳法は、仲間を守ることに特化している! 「来いよ、デブ野郎! 十字烈光破!」 「ぬぅ……。この可愛らしさに戸惑わぬとは! それに俺をデブ野郎だとぉ~!!」 独自の台詞と共に放たれたジャスティスキャノンをまともに受けたことによって、リーダー格は快を強敵と認める。こいつを倒さねば、先には進めぬ! と思ったのだろう。 「エリューションに今日を生きる資格は無い!」 いつもと快のキャラが違うのは仕様です。 火炎放射機のモヒカンがやられたことにより、リベリスタたちはそれぞれ違うモヒカンを目標にしながら、戦いを続けた。「頭が高い、貴様ら一体誰の許可を得て生きておる!!」 「泣け!喚け! そして……死ぬがいい!」 アレクサンドルがボウガンのモヒカンを蹴り飛ばし、もう片方のボウガン使いのモヒカンと纏まったところに、シルフィアと同時にフレアバーストを放つ。大火球となったそれは、慎重に大砲を外しながら、モヒカンだけを燃やし尽くす。 「ぽぽぽぽ~ん」 それによって、モヒカンのうち一体が弾けて飛んだ。 「モヒカン諸君、荒廃した世紀末は未来にあらず! 思い知るがいい……これが美しい地球の、怒りだ!」 大砲を、そして地球を背負ったガガーリンのジャスティスキャノンが弱ったモヒカンを撃ち貫く。 「がいぁっ!」 「うむ、美しい断末魔だ」 モヒカンとリベリスタでは、背負っているものが違う。しかし、その断末魔の瞬間だけは、通じ合えた。……ガガーリンはそう思い、涙した。 大型のバイクに乗ったモヒカンたちが、ブォンブォンと鳴らしながら、郷と姫乃を取り囲む。バイクに乗ったことで興奮しているのか、モヒカンたちの口元は先ほどからずっと舌が出ずっぱりで、下品な笑い声も止まることがない。 「ヒャッハー! お前たちは囲まれたぜぇ~!」 「そのぐらいの騎馬突撃、このいちかませひめのには、通じないのでござるですぅ!!」 取り囲んだモヒカンたちに姫乃は自ら飛び込んでいく。鎧に包まれているとはいえ、正面から大型バイクに立ち向かうのは無謀! しかし、その状況から姫乃は敵を倒した! バイクを操るモヒカンを、メガクラッシュで見事に吹き飛ばしたのである! 「バイクはともだちぃ!」 上がる断末魔! 一体撃破だ! だが、姫乃自身もただでは済まなかった。モヒカンだけを倒したところで、突撃したバイクの勢いはそのままであり、その小さな体にバイクが直撃してしまった! 「く、くぅ……! 鎧がなければ即死だったでござるです!」 それでも、姫乃は立ち上がる。誇り高き武士として、モヒカンには負けられない。 「俺も……負けてらんねぇな!」 同じように、バイクの前に郷が立つ。彼のピアスがきらりと光り、その存在をアピールする。 「ヒャッハーッ! 俺は同じようにはいかねぇぜぇ!」 その姿を見たモヒカンは、力を使ってバイクを跳び上がらせた! なんという力任せなテクニック! ただのモヒカンではない、エリューション・フォースである証明だ! 「激流を制するのは静流……。ほあたっ!」 だが、そのまま落ちてきたところに、郷の幻影剣が直撃する。ただの直撃ではない、敵の勢いを力に変えたテクニカルな一撃だ! さらに、そこに駄目押しのソニックエッジも飛んでいき、その体とバイクを切り裂いた! 「おまえはもう死んでる」 「ひ、ひでぇ!」 決め台詞とともにバイクは爆発し、モヒカンの姿は消える。これで、残りのモヒカンは僅かだ。 正道のアデプトアクションが、素手のモヒカンのひとりを貫く。 「こんなところでございますね」 「ちん! げん! さい!」 モヒカンは地面に叩きつけるように打ち捨てられ、そのまま消滅する。 「弱者は罪なんだよなぁ~。じゃあ罰を与えないとなぁ~。そんな貴様らにはこいつで決まりだぜぇ~」 それを見て、女性らしさの欠片もないように、ベロを出しながら杏は台詞を回す。モヒカン対モヒカンの戦いは、どちらが舐められるかどうかで決まる。のだとしたら、杏は確実に舐めに来ている。ベロ出してるし。 同時に電流を体に流していき、大砲に引火しないよう、慎重によく狙ってから……、 「ひゃっはぁ~、チェインライトニングだぁ~」 派手に電流を飛ばして、モヒカンを痺れさせた。 「おへそとっちゃらめぇ~!」 骨が見えるほどに電流を流されたモヒカンは、プスプスと焦げて倒れた。 「ひゃっはぁ~、弱いぜぇ~」 これでは、どちらが悪役か分かったものではない。 ●決着、そして少年たちの未来は そして、最後にはリーダー格のモヒカンひとりが残った。 「貴様が親玉か、あまりの醜さに目が腐るわ!」 洩流洩流真拳によるトリッキーな動きはリベリスタたちを惑わせたが、不吉に対して耐性を持つ正道や、嗚呼駆剛体術という名のハイディフェンサーに身を固めた快の前には通じなかった。 「嗚呼駆超重撃! おあたぁっ!」 モヒカンの攻撃を受け切った快の、集中力を研ぎ澄ませたヘビースマッシュがモヒカンを吹き飛ばしていく。飛ばす先は空の彼方、夜空の向こう側である。 「り、り、りべりすたっ!」 「お、新記録」 快は空を見上げて、その体が断末魔と共に消滅していくのを確認する。これで、戦いは終わりだ。つまり……、 「「お前はもう、死んでいる」」 少年たちはリベリスタの手によって無事大砲の中から解放され、元の暮らしへと戻っていった。その際、快がギャングに襲われたのだと説明をし、神秘は隠されることになった。 「本当に必要な強さは、暴力なんかじゃない。ここ。ハートだぜ。大丈夫、このピンチを生き残れた君なら、できるよ。胸張っていこうぜ」 快は親指で、自分の胸を突く。その気持が少年に通じたのか、少年は頷いた。 「……誇れ少年、今の貴様は4人の命を救った強き者じゃ」 説明と同時に、アレクサンドルと正道によって気付けられた少年の目には、少しだけど何かに立ち向かう強さがあった。 「少年達、今日のことは忘れて明日からの日常を送りたまえ。世紀末はまだまだ未来なのだよ」 ガガーリンは少年たちの未来に、これから変わるかもしれない未来を想像する。 これからの地球を守っていくのは、彼らだ。彼らの心に何かが芽生えたのなら、きっと地球の未来もよいものになる。 青く輝く未来の地球を想像し、ガガーリンは涙した。 彼らが作る次の世紀末はすばらしいだろう。きっと。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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