●ぷるぷるる 酷い、酷い死臭だった。腐敗臭だった。 ずりずりずるずるずるるるる。 脳はあるのか、思想はあるのか不明だが、それは一心不乱に休みなく前進を続けていた。 ●インザ異世界 「ふーん ふーん ふんじんばくはつ おまえのばんめしふんじんばくはつー」 「いじょうなし。たぶん」 気儘に鼻歌を歌う『いとうさん』伊藤 サン(BNE004012)に、遠くを見つつ一つ頷く『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)。そこへ現れた『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)は顎に手を添え、周囲を眺め渡しつつ一つ呟いた。 「巨獣が出たようですが、こちらにもでしょうかね……」 斯くして、その呟きは半ば的中する。 「忌み子……」 集めたリベリスタを前に、フュリエ族長シェルンが口にしたのはその一言。 忌み子。狂った世界樹が産み落とした危険な生物――曰く、バイデンもこの生物に属するらしい。あくまでも『彼女らの言い分』を是とするなら、ではあるが。 兎角、警戒に当たっていた とシェルン曰く、その忌み子なる存在が接近中であるという。 それは死体を吸収し少しずつ巨大化しているという危険な生物。 「皆様にはこれの討伐に当たって頂きたいのですが……」 が。それから続いたのは、柳眉を寄せる異世界の麗人が懸念している事。 「今までとは、何かが少し違う……例えるならば『変異しつつある』のです。まるで『何か』を予期しているかの様に」 変異しつつある理由も、『何か』が何かなのも、現時点では分からない。 世界樹のバランスがいよいよ崩れ初めているから? 単純原初に近いが故に何かしらの異変を感じ取っているから? 否、今は思考に耽る時ではない。往かねばならない。 お気を付けて――そんなシェルンの言葉を耳に、疑問を胸に、リベリスタ達は現場へと向かうのであった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月21日(金)23:38 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●荒れ果てた地で カンカン照り。正に、その言葉がピッタリな光景だった。ボトムチャンネルの夏の様な嫌な暑さは無いが、上空からジリジリと照りつけるその光には何かしら不穏な気配が感じられた。 揺らめく陽炎、生気の無い大地――その彼方には、こちらを目指して接近してくる不気味な影。 「スライムのようなもの、といえば近いような見た目だが」 取り込んだ死骸といいこの臭いといい、随分悪趣味なオプションがついているな。微かに漂ってくる死臭に顔を薄く顰め、『燻る灰』御津代 鉅(BNE001657)は影を纏う。 「とはいえ、こういうのはさくっと討伐されるのがお約束だし、あまり王道に外れず退治されてくれると有難いところだ」 そんな言葉に、だと良いんだけどねぇ、なんて『STYLE ZERO』伊吹 マコト(BNE003900)は苦笑を浮かべた。スライム。ゲームでよく見かけるスライムだったらもっとファンタジックな外見をしているんだが。 「……まぁ、実際に戦うとなったらマスコット的な敵よりはこっちの方がやりやすいか」 何にしても、徐々に巨大化しつつあるという事は早急に手を打たねばなるまい。防御の教義を皆に授け、風上から攻め入れる様に皆へ声をかける。それに頷きつ、香水を染みこませたマスクの下で『おとなこども』石動 麻衣(BNE003692)は息を吐いた。 「それにしてもこの世界にはまだまだ不可思議なことが多いようです」 「ただの臭気ならば、不快感を我慢すれば済む事だが……毒分を含むのならば、研究せぬわけには行くまい」 顎に手を宛がい、応える様に言葉を発したのは『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)。学徒達にとっては興味惹かれる現象らしい、その目に浮かぶは知的好奇心。 「美しい世界がこのように穢れてしまうのは悲しい事です」 手術用手袋をキュッと装着。前を見澄ます『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)はマスクの下の口を引き結び、翼の加護を皆に授けた。 危険なぜりぃは手早く退治――全力で参ります、と。 増してくる臭気。 呻き声の様なものも聞こえる。 誰もの顔に多少の差はあれど、走るは警戒。緊張。銘々に武器を構え、気を研ぎ澄ませる。 再び訪れる事になるとは。死気を運ぶ乾き風に黒曜色の髪を靡かせ、『刃の猫』梶・リュクターン・五月(BNE000267)は表情に微かな憂いを滲ませる。前回は戦士の誇りを。今回はその成れの果てか。漂う悪臭。酷い臭いだが、これも戦士の成れの果て。 「生物の行く果てがコレだと言うならば倒すしかなかろう。この様な姿、戦士も望んでない」 黒猫は紫水晶の輝きを放つ愛刀:紫花石を抜き放つと共に戦気を纏う。 そうだ、倒すしかない。それが戦士達への、せめてもの酬いというものだろう。『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)はガスマスクの下で、異様な生物の異様な姿に「グロテスクだな……」と顔を顰めていたが。醜い物に対する嫌悪感だけではない。 「死んでいったバイデンも巨獣も、これじゃ浮かばれないだろう」 防御のオーラをその身に纏い、愛用の金属盾:侠気の鉄を構えた。 その直後、どるるん、と巨大チェーンソーにエンジンがかかる。 「死臭とか、臭すぎるし……バイデンや巨獣の死体とか、見たくないし……」 回るラディカル・エンジンの駆動音の下、ガスマスクの中で『紅玉の白鷲』蘭・羽音(BNE001477)は独り言つ。うねうね、ネバネバ、そういったものが嫌いだ。トラウマだ。見るのも嫌だ。せり上がる嫌悪感と嘔吐感を嚥下し、白頭鷲の見事な足を一歩。然し思いっきり武器が振り回せる場所なのは有難い。『異変』とやらについては良く分からないが、自分のやる事は一つ。 「……頑張ろう、ね」 駆動音、フルスロットル。 一斉に地を蹴った。 ●異様な大地で 只管に嫌悪感を催す、その一言に尽きる外見だった。 デッドゼリー。巨大なゼリー状の半透明ボディの中には、腐って崩れて半ば消化された様々な死体――バイデン、巨獣。中にはゼリーから突き出している死体もあり、それがドロドロと腐った血肉を垂れ流す様は顔を顰めずにはいられない。何より、その酷い悪臭だ。 されどそれに怖けず、オーウェンは炸裂脚甲「LaplaseRage」のブースターを吹かせて行動を開始する。印を切り、放つのは呪印の鎖。それは奇怪な呻き声を上げて這いずって来る化物を幾重にも雁字搦めに閉じ込めた――かと思いきや、それは暴れるが如く体を震わせて束縛を振り払う。同時に、まるで駄々っ子の様にバイデン達の武器が突き出た触腕を出鱈目に振り回した。力尽くに空気を切り、地面に当たれば轟音を立てて砂煙を巻き上げ、触れた物をズタズタに切り裂く。 「これだけの巨体……そう簡単には止まらんか……!」 オーウェンの体を掠める暴力、真横の地面を大きく穿った土煙と肌を切り裂いた凶器に顔を顰めて咳き込んだ。暴れるそれに叩き付けられた鉅も全身から鮮血を噴き出し勢い良く吹っ飛ばされて地面に叩き付けられる。 デッドゼリーは鈍重。されど、その代わりにそれは絵に描いた様な『馬鹿力』。まるでこの不毛な荒れ地に満ち満ちた憤怒を、不完全なる世界の綻びを代弁するかの様に。 「……何なんだ、一体」 最後衛にて視野を広げたマコトにはその『違和感』が誰よりも感じていた。不気味だ――眉根を寄せつ、レールガンαを構える。電源供給用の蓄電器のずしりとした重み、手に吸い付く銃身の重み。武器を持って居る。戦場に於いてこれほど頼りになる物は無い。狙う。撃ち放つは、呪いの電撃弾。戦場を一直線に駆ける稲妻。 斯くして、同刻に重なったのは落雷だった。五月が叩き下ろしたギガクラッシュがデッドゼリーの触腕を一本、叩ッ斬る。その雷撃は少女の白い肌すら焦がすが、彼女は欠片も物怖じする気配を見せずに紫花石を構える。他が為に。守る為に。溢れる毒ガスに薄紅の口唇から鮮血を流し、紫丁香花を戦場に咲かせつつ。振り払われる一撃を受け流す。 理性のタガが外れた様な奇獣――何か妙な予兆が合ってこの様な行為をしているのか。少女には分からない。分からないが、『倒さねばならない』事は分かる。倒すしか、ない。 「ここで喰いとめねば、誰かが傷つくのだ……オレは護るためには貪欲だ」 幸せをくれる皆を守る事が彼女の仕事であり、アイデンティティ。 戦士の成れの果て、生物の果て、この全ての為に五月は紫刃に自らをも焼く稲妻を乗せる。 「このような姿、冒涜だろう? 戦士よ、もう良いのだ。安らかに眠れ」 異形に沈んだ戦士に紫花石を突き立て、雷を爆発させる。 飛び散るゼリーの欠片。それが義弘の頬に付着する。どろり。生温かい。今すぐ拭いたい気持ちを堪えて、魔を打ち破る光を放った。清い輝きは仲間を苛む危機を遍く壊し去る。 「まだ始まったばかりだ、気を引き締めていくぞ!」 気を配らねば。振り下ろされる鞭の様な轟撃を侠気の鉄で真っ向から受け止める。ドズンと衝撃。されど歯を食い縛り、地面を踏み締め。 「おぉおおおおああああッ!!」 膂力を漲らせ、跳ね退けた。フーッと噛み締めた歯列から息を吐き、異形の眼前に立ち塞がる。これしき。あの『暴食』に比べれば、可愛いものだ。メイスを振り上げ、叩き下ろす。魔落の鉄槌。 ぼぢゃん。 鈍くも柔く、どろどろ、嫌な、嫌な感触だ。ゼリーに閉じ込められたバイデンの腐乱死体と目が合った。様な気がした。ぐちゃり。 「……っ、」 気味が、悪くて。 羽音はラディカル・エンジンを握り締める。ばるばるばるばるぎょぉおおおおおん。エンジン全開。後退も温存も無い。ありったけの力を込めて叩き下ろすのは破滅的な轟打、デッドオアアライブ。その刃には最早『アライブ』の文字は無い。回転する刃がゼリーをズタズタに引き千切る。飛び散る。端正な顔に体に掛かる。くらり。あまりもの嫌悪感に脳味噌が揺れる感覚を覚えた、刹那。 「あう、っ!?」 鈍い衝撃が羽音の胴を強かに撃ち抜いた。薙ぎ払われる触腕に吹っ飛ばされたのだと、理解したのは3秒後。 「支えます」 吹っ飛ばされた羽音を空中で受け止めた凛子の声。まだ引くわけには参りませんから、と羽音を下ろしつ唱えるは聖神の慈愛を現す呪文。吹き抜ける癒しの風がリベリスタ達の傷を強力に、優しく、癒し去る。鷲少女の役目が叩ッ斬る事ならば、戦女医の役目は癒す事。生死の境界に立ち、命と向き合う者。 さぁ、思いっ切り前に進むと良い。鼓舞する様に羽音の背中をぽんと押せば、頷いた彼女はチェーンソーを唸らせて勢い良く突撃を敢行する。立ち向かった。 飛び往くのはマコトが放つ呪いの弾丸と、オーウェンの鋭い気糸。ゼリーの肉を穿ち、抉る。 「全く……酷い臭いだ!」 風上へ、マコトは極力そう立ち回っているとはいえ、それでも臭うもんは臭う。割と苛々する。その八つ当たりをする様に、青年は再度レールガンの銃口を向けた。 その、直後。 ぶるりと震えたデッドゼリーの体内から勢い良く発射されたのはバイデン達が嘗て振るっていた大振りで武骨な武器。弾丸の様に飛び、掠めた者の身体を容赦なく切り裂き、薙ぎ払い、射貫く。飛び散る鮮血。乾いた大地に赤色が染み込む。強烈な攻撃だった。夥しい血を散らして、麻衣と鉅が自らの血沼に沈む。 未だだ。額から垂れる血で視界の半分を赤くしながら義弘は地面をぐっと踏み締める。 「倒れるかよ……根性見せてやろうぜ。死を食らう化け物にな!」 張り上げる声、掲げる侠気の鉄。放つブレイクイービルは彼の、仲間の酷い出血を立ち所に塞ぎ止める。 五月は頬の血を手の甲で拭い、刃を構えた。守る事には貪欲である。そして、勝利にも尚貪欲となろう。 「――オレはその為に剣を振るう」 踏み込み、詰める間合い。振るう紫花石。また一つの触腕がボドリと千切れてドロドロに溶け消えた。蠢く声、めいたもの。残った武器付きの触腕を振り回す。 「大丈夫……?」 羽音は倒れた二人を後ろまで運んでいた。デッドゼリーの近くで倒れるのは危険な気がしたからだ――大切な仲間を、あれに吸収させるものか。 異形の巨大な腕から繰り出される攻撃は脅威そのものだが、それを行う異形の身体は損傷が大きくなっていた。 あと少しか――そう、誰しもが思った刹那。 前衛の者を殴り飛ばしたデッドゼリーがぶるりと蠢き、這い寄る。不穏な。何か不穏な――その『異変』の予兆に気付いたのは、多人数が用心深く観察していた為か。 「来るよ、っ……!」 羽音が声を張り上げた、直後。ずどん。リベリスタ達の全身に叩きつけられたのは凄まじい衝撃と、轟音と、爆炎。吹き飛ばす。薙ぎ倒す。土煙。視界が意識が混濁する。倒れているのか立っているのか。異形自身の身をも焼くが、それに見合う凶火力。 「皆さん、ご無事ですか」 地面に伏せ頭を手で護り、衝撃に耐える体勢を取っていた凛子は濛々とした視界を見渡し仲間の無事を確認する。その白衣は砂煙に酷く汚れていた。詠唱と共に目を細めた視界、晴れる硝煙の中には蹌踉めきながらも立ち上がる仲間達の影。その姿を確認するや、軍医は聖なる癒しの風を戦場に巻き起こした。 傷が癒え、立ち上がる力を得たオーウェンは眉根を寄せる。物質透過を試みたが、本来戦闘の為ではない技能を戦闘で便利に使い過ぎる事は出来ない。少々物質透過を過信し過ぎたか。一つ咳き込み身構える。 「もう一発くるっすよ!!」 砂埃で汚れた隈のある顔をそのままに、防御態勢を取ったマコトが声を張り上げる。危機に陥った故の行動か、デッドゼリーが次に取った行動も爆発だった。逃げる程の知能は無いがありったけ暴れる心算はあるらしい。再び爆風という名の暴力が皆に襲い掛かる。視界が赤く染まる。しかしをれを塗り替えるのは義弘のブレイクイービルに、凛子の聖神の息吹だ。 「安心しろ、何度でも支えてやるさ!」 侠気の鉄を構えた義弘は運命を燃やしながらも不敵に笑んだ。喰らい付く。ただ敵の眼前へ、突き進め。 「遠くからこそ見える物、ってのも有るっすからね」 やれやれこの奇麗な顔が台無しだ……なんてね。心の中で冗句を吐いて、マコトは電磁砲から呪いの稲妻を発射する。集中を重ねたそれは鋭く速く戦場を飛び、突き刺さるデッドゼリーに呪いを刻み付けた。 他の者も立ち上がり、走り出し、迅速な立て直しを図る。被害が予想以上に少なかったのは誰もが異形の爆発に備えていた所も大きいだろう。 「もうちょっと、だよ、頑張ろう」 「オレも、まだ戦えるのだ」 前線へ。黒猫は刀を構え、鷲は巨大なチェーンソーの駆動音を轟かせる。駆けて往く。襲い来る触腕と武器の乱舞を掠め、飛び超え、掻い潜り。 「絶対に、倒れられない」 ラディカル・エンジンの回る刃に乗せるは雷光。スパークする熱に肌が焼けようが痺れようが気にしない。振り上げる。逃しはしない。金の瞳が稲妻に輝く。 ――あたしの仕事は、ひたすらに斬ることだもの。 「……いくよっ、!」 強烈な横薙ぎ。迸る。引き千切る。 五月もそれに続かんと攻撃の隙を窺った。血も怪我も関係ない、守る為に刃を振るうのが黒猫の役目。 (でも、臭いのだ!) 我慢しているが、黒いお耳がぴん、とする。尻尾もぶわっと毛が膨れ、立ってしまう。マスクもさっきの爆発で飛んで行ってしまったのだ。 「くさいのだ……」 猛攻を防ぎながらついつい呟いてしまうレベルだった。つんと粘膜を突く刺激臭に涙が潤む。嗚呼、でも、我慢、我慢だ、勝つ為なのだ。己を鼓舞する。そうだ、勝ったら後でお友達に褒めて貰おう。頑張ったねって言って貰おう。頑張ったら、きっと「お疲れ!」って頭をなでなでしてくれる。だからあともう少し、頑張ろう。ふええん。 「さあ、紫花石。往こう、一閃するのだ」 込めるありったけの力。踏み込む間合い。零の距離。 「喰らえ、粉じん爆発、だぞ! 晩御飯どころか身体がだ!」 腹がはち切れる程喰わせてやる。そしていっその事全部どかん、だ。 悲鳴を上げる様に身を捩って蠢く異形が、物言わぬ腐肉の塊と化したのはその直後。 ●どうなるかーな 沈黙したデッドゼリーはドロリと蕩け、速やかにその原型を失ってゆく。ぐずぐずのペースト状。地面に染み込む。砕けた腐肉。 「お疲れ様……皆、大丈夫?」 得物のエンジンを止めた羽音はホッと息を吐き、皆を見渡した。誰も彼も疲弊の色が顔にある。特に耳も尻尾もへにょりと力を失った五月は顔が蒼い。前衛で奮闘した分、異形の肉片やら体液が。そんな少女に凛子は携帯酸素缶を渡し、 「ゆっくり深呼吸をして下さい」 「うむ……かたじけないのだ」 背中をさすさす。 「しかし、この異様な巨獣はいったいなんなんだ……族長さんが言ってるように、何かの前触れであるのかね」 メイスで軽く肩を叩きつ、義弘は今やただの臭い液体と化したデッドゼリーを見遣った。ガスマスクを装着してその傍にしゃがみ込んだマコトや、同じく異形を注視する凛子も首を捻るばかりである。 「早く解決できるといいのですが……」 気懸りを孕んだ凛子の呟き。その言葉に異を唱える者は、居なかった。 「長居は、危険だね……そろそろ、行こ?」 荒野のど真ん中に居るのは危険だろうと羽音の声に、リベリスタは撤退を始める。マコトは息を吐き、ヤレヤレと伸びを一つ。 「う、くっさ……この汚れた服もアークの経費で落ちるっすかね。全く、早く帰ってシャワーでも浴びたいっす」 振り返る荒野。灰色の世界。見上げる空ー― ――歪んだ世界樹。終わり始める、不完全世界<ラ・ル・カーナ>。 恐るべき『目』。恐るべき『変異』。 それらにリベリスタ達が気付き始めるのは――その間も無くとなる。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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