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夜空のフルカラー

●来訪者
 そのアザーバイドの名は『煌』(こう)と言う。
 チャンネルからチャンネルへ、群を成して飛び渡る粒子の様な虫の様な光の様な存在。
 彼らは生き物なのか、意思はあるのか、旅の目的は何なのか、その生態は一切が不明だが、唯一分かっている事が『異空間から異空間へ飛び渡る』なのである。
 彼らは一切の害を与えない。触れれば溶けてしまう程の脆弱な存在。
 彼らの体は不思議な光で出来ており、群を成して飛ぶ姿は宛ら虹色の天の川が空を緩やかに流れる様で――時を忘れる程に美しいという。
 また、運良く目撃できた者には幸せが訪れるらしい……

●夜に虹がでますぞ
 と、『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)は言った。
「先程説明しました『煌』が、深夜に三高平の上空を渡ります。彼らは『異空間を渡る力』を持ちますのでブレイクゲートの必要はありませんぞ。短時間なので崩界影響の心配もございません」
 全くの無害なのだと彼は言う。
 楽しみ方は人それぞれ。
 外に出て眺めるも良し、側を飛ぶも良し、自宅の窓から見るも良し、恋人と一時を過ごすも良し、バイト帰りにふと空を見上げても良し、エトセトラエトセトラ。
 それにしても夜に虹とは、中々に趣のあるモノである。
 そう言えば、最後に虹を見たのはいつだったか――


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ガンマ  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月23日(日)22:46
●目標
 煌の成す景色を楽しもう

●登場
アザーバイド『煌』
 光の様な虫の様な粒子の様な不思議な存在。意思等があるか不明。無害。物凄~く奇麗。でも捕まえたりしちゃ駄目です。

NPC達
 メルクリィと蝮原と元フィクサードのかじかみテリー(参考・拙作『絶対零度と氷点下――』シリーズ)
 アーク本部で煌を眺めています。絡みはご自由に!

●場所
 三高平市内。市内なら何処でも良いです(アーク本部、自宅、コーポ、公園etc)
 特に指定がなければアーク本部で見たという事になります。
 時間帯は深夜

●STより
 こんにちはガンマです。
 虹を見つけるとなんだかラッキーって気持ちになります。
 よろしくお願い致します。

参加NPC
名古屋・T・メルクリィ (nBNE000209)
 
参加NPC
蝮原 咬兵 (nBNE000020)


■メイン参加者 29人■
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
デュランダル
梶・リュクターン・五月(BNE000267)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
クロスイージス
ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)
クロスイージス
白石 明奈(BNE000717)
スターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
ナイトクリーク
アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)
デュランダル
遠野 御龍(BNE000865)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
ソードミラージュ
ルア・ホワイト(BNE001372)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
クリミナルスタア
坂本 瀬恋(BNE002749)
プロアデプト
エリエリ・L・裁谷(BNE003177)
インヤンマスター
小雪・綺沙羅(BNE003284)
レイザータクト
ミリィ・トムソン(BNE003772)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
レイザータクト
テテロ ミミルノ(BNE003881)
ナイトクリーク
ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)
スターサジタリー
砕軌 紅瑠(BNE003981)
レイザータクト
神葬 陸駆(BNE004022)
マグメイガス
匂坂・羽衣(BNE004023)
デュランダル
狭間 逸平(BNE004050)
   

●アークにて
 雲一つ無い夜空。それを揺蕩うのは、まるで散りばめた星で作った虹であった。川の様に揺らめいて、沢山の輝きを放って、『煌』は空を泳いでゆく。
「わぁ! すごいのです! 夜空に光の架け橋なのです!」
 大きな目を輝かせ、そあらは歓声を上げた。素敵な景色だ。本当なら愛する室長と眺めたかったが、彼も仕事。仕方ない。それでもぷぅと頬を膨らませる。待ってようかとも思った。でも、この素敵な光景で幸せが訪れるのなら。彼の分も、自分が見よう。
(次はさおりんとゆっくり見れるといいなぁ)
 だってあたしはさおりんと一緒に幸せになりたいのですもの。
 空を見上げる。
「なるほどな。こういうアザーバイトなら悪くねぇ」
 アークに来て早々いい物が見れた、と逸平は一人のんびり。我が物顔で暴れるアザーバイドはいけ好かないが、こういうのなら歓迎する。
「奇麗」
 触れると消えてしまう程脆弱な存在じゃなければもっと近くまで見に行くのに、と綺沙羅は息を吐き、思う。彼等はどこから来てどこへと渡っていくのだろう、と。彼等の旅路に終わりは無いのか。世代を交替しながら一定周期で渡りを行い続けるのだろうか。
(彼等の行く先には何があるのか……)
 興味は尽きず、知的好奇心の儘に深淵を覗き、解析を試みる。そんな最中、ふと思い出す。虹の麓には宝物が眠ってる、そんな噂。
(でも、一体何が眠ってるのだろう……)
 見上げる先に答えはあるか。
 ミリィはボーっと空の虹を見る。
「……綺麗」
 自然と零れる言葉。ふと、傍に居る咬兵を見上げてみる。直後に目が合った。
「どうした」
「いえ……同じように見惚れているのかな……って。珍しい蝮原さんが見れるかな……って、思っただけですよ」
 思った事は正直に。「そうか」と返事。視線は空へ。いつもは眠っている時間。故に、うつらうつらと眠たげに。
「眠いか?」
 なら寝たらどうだ、そんな物言いの咬兵にミリィは首を振る。
「幸せが、訪れるんですよね? なら、幸せのお願いをしてみても、いいですよね」
 いいんじゃねぇか。頭に手を置かれつ言われた言葉に少女は静かに指を組む。『異世界に出来た友達を、彼らの世界を、助けられますように』と。

\これから毎日虹を見ようぜ!/

 派手にやるじゃねぇか。戯言は兎も角とベルカは息を吐く。
「虹、か」
 最後に見たのはいつだったか。そう言えば、本当に忘れてしまっていた。この空はどこまでも続いていると言うのに――故郷で見る虹と三高平で見る虹はまた違って感じられる。況してや、アザーバイドでもある夜の虹ともなれば。
(つまりは、共に見る仲間の存在は大きい物だと言う事でありますね)
 そう結論を下し、視線を仲間へと移す。お馴染みのメカフォーチュナ。
「同志ティバストロフ」
「おや、ベルカ様こんばんは」
「今光る虹を捕まえるのはダメらしいので、貴方の肩のアレを代わりに捕まえるのでありますぞー」
 ドヤッと手に持つ磨き布。真空管をきゅこきゅこ。いつもありがとうございますねともふもふされた。尻尾ぱたぱた。覗き込むそあらもソワソワ。
「メリクリィさんの肩のもピカピカ光るのです? ピカピカみたら幸せおとずれるです?」
「訪れますぞ、多分」
 それに「多分かよ」と内心で息を吐いた、咬兵に。片手を振ったのは瀬恋。
「うーっす、マムシのオッサン」
「よう坂本」
 お前も見に来たのか。まぁそんな感じ。軽い遣り取りもそこそこに、瀬恋は空の虹を見る。
「こりゃすげぇ。見事なもんだねぇ」
 思わず漏れる感嘆。息を吐き、独り言つ。
「これ見りゃ幸せになれるって話を信じるほど純情じゃあねぇけど……」
 こいつを見ることが出来た事が良い事って奴なんじゃあねぇかい?なんて。ガラじゃない事を口にしたりはしないけど。

「ふぅ~むぅ。蛍みたいなもんなのかねぇ?」
 まぁきれいだからぁいいやぁと御龍は缶ビールを呷る。昔から奇麗なものは愛でる対象だ。美味い酒に良い景色、それのなんと素晴らしい事!
「あ、メルクリィさんも飲むぅ?」
「いえ、私はあまりお酒が強くないので」
「そぉかい? いやぁ元気になってよかったよぉ」
 一口、見上げる空の光。
「ひょっとしたらこれもあの子の魂の一つなのかもしれないねぇ」
「そうかも、しれませんね」
 しみじみ、と。
 そんな傍らで、エリスは煌の写真を取る。写真に残したらきっと素敵な景色だからと、それを見る仲間達もフィルムに収めていた。が、レンズ越しのメルクリィにシャッターを押す事は無い。その輝きに何かを感じているかもしれない――空を見上げるその姿は、残さないように。大切な人との思い出に浸っているだろうから。

●三高平にて
 ゆらゆら、揺れるのは五月の黒い猫耳と羽衣の白い羽。
「ねえ、お空の星がみんな零れてきてしまったみたいね」
 儚いもの、遠いものも。手に入れられないから焦がれるのだと羽衣は夜虹へ手を伸ばす。
「触れられないからこそ綺麗なのだろうか」
 見つめるだけにしよう、我慢だ。黒猫は尻尾をくねらせる。きっと触れる事も叶わないから。
「ふわりとしていて、まるでういの羽の様だ」
「めいのお耳もふわふわよ?」
 くつりと笑う。二人の目には光の粒子。蛍とは違った優しい輝き。
「うい、ほら、煌が一杯いて、まるで光のシャワーだ」
「ふわふわって降って来るの、綺麗」
 夜に昇る虹。その上を歩いてみたいが、五月には羽が無かった。それが残念だと耳を垂れる、友人の様子を見。
「……めい、虹に乗りたいのかしら。羽衣なら出来る?」
「! 見たい、君ともっと空を見たい」
「まかせて。羽衣が、めいを虹の中に連れて行ってあげる」
 手を繋ごう。ふわりと飛ぼう。もっと高く。煌を壊してしまわぬ様に。
「虹を、煌を見れる事が幸せだ、なあ、とっても幸せだな」
「嗚呼、素敵ね。全部覚えてみんなにお話したい」
 二人のすぐ傍を煌が揺蕩う。想い出を一杯作ろう、友達に語ろう、この幸せな時間を。幸せだ。笑いあえる事も。今という瞬間が。
「ね、めい。もっとお散歩しましょう!」
「うん、もっと想い出を作るのだ」
「めいが笑ってくれたらもっと、しあわせね。羽衣も、誰かをしあわせに出来るのね」
 握る手。握り返す手。
「オレ、ういが大好きだぞ」
「羽衣も、めいが大好きよ。お友達もみんな大事」
「勿論皆好きだ! オレはういやオレの王子様を守るためにもっと強くなる」
「羽衣も、めいを支えられる様にがんばるの」
 約束しよう、小指を結んで。

 輝く空の下。

「あー、そういえばメルクリィさんが言ってたっけ。なんか綺麗な景色が見えるって」
 三高平団地の自宅、一人飲みをしていた悠里が『妙に外が明るいな』と見遣ってみれば。
「これは……すごいなぁ……」
 お猪口をベランダに持ちだして飲みを続行しながら見上げた空は、思わず息が漏れる程に美しく。無害なアザーバイドがボトムにて綺麗な光景を見せるのは偶にあるが、ここまで大規模なのは初めてだ。
「うーん。カルナを誘って見に行けばよかったなぁ……」
 次を注ぎつつ独り言つ。一瞬、部屋で寝ている同居人の事を思い出したが寝ているのを起こすのも悪いだろう、最近は頑張っていて疲れも溜まっているだろうし。
 吐息を一つ。見上げる空。少し酔いが意識を解しているからか、なんとなくか。
「お疲れ様。ありがとう」
 この景色を見せてくれた異界の住人に、そんなお礼を言ってみた。

『外が凄いなう』
『空がやべぇ』
 自室のベッドでごろごろしながらケータイを弄っていた明奈の目に映ったのは共通の話題。なんだか豪い騒ぎだ。何事か、と窓から空を見上げてみれば。
「すっげー! 何これ! なんだこれ!」
 夜中なのについ大声が出てしまう程には壮麗たる光景。夜の虹。
「おい兄貴見てみろよ!」
 ばたばた、急いで駆けて一般人の兄の部屋のドアを開け、寝ている彼を叩き起こす。煩いだの眠たげな声をする兄に「起きろ」と布団を剥ぎつ、思い出す――そういえば、自分が革醒するきっかけになったエリューションは虹の形をしていた。もしかしたらこの煌と似た何かだったんだろうか?
「虹の根本には宝物が埋まってるって言うじゃない。煌の世界には宝物がいっぱいだったりしてね?
 ……なんだよーたまには乙女っぽいこと言ったっていいじゃんかー」
 自分だってまだ乙女だ、ピッチピチなのだ。見上げる夜虹が彼女の瞳に映り込む。

 糾華の自宅。照明は落とし、ベランダに寄せたテーブルを囲むのは糾華とリンシード。
 唯一の光源であるキャンドルの柔い光に彼女らのお気に入りのカップが照らされ、立ち上る紅茶の暖かい香りが二人を包む。
「あ、」
 空をボンヤリ眺めていたリンシードが煌の到来に短く声を発し空を指差した。子供の様に空を見ていたリンシードから、糾華は静かに視線を空へ。
「……綺麗」
 自然と零れ落ちる、言葉。夜空を翔ける夜の虹。来訪者が魅せる一夜の奇蹟。
「綺麗ですね……まるで、おねーさまみたいです……
 儚げで、ふわふわしてて……このアザーバイド達は、どこへいくんでしょうかね……」
 次の世界でも、こうやって、見る人を和ませてるんでしょうか。大きな目に星を映すリンシードの言葉に、「そうね」と浅く頷いて。
「この綺麗という気持があらゆる世界でも共有できるのであれば、とても素敵なことよね」
 彼らはその確認の為に旅してるのよ、白銀の髪を靡かせてベランダへ一歩――それを引き止める様に、リンシードの手が糾華の袖をぎゅっと掴んだ。
「……リンシード?」
「おねーさまは、私を置いて……どこかに飛び去ったりは、しませんよね……?」
 微かに震えた声。少しの静寂の後、糾華の手が少女の長い髪を撫でる。
「どこにも行かないとは約束できない。これからも戦いは続き、激戦になっていくのでしょう」
 でも、もし私が貴女の光なのだとしたら。合わされる視線、薄鮮紅の口唇に微かな笑みを湛える。
「消えたとしても貴女の中でずっと灯り続けるわ。必ず、ね?」
「そばで……私を照らすように……ずっと、輝いていて欲しい、です……」
 そこまで言って、「我侭、ですかね」とリンシードは首を垂れる。すみません、と口にすれば、謝る必要は無い、と握られる手。暖かい手。灯火の様に。
 この灯りを消させはしない――絶対に。

 りんりん、鈴虫の音色がユーヌの鼓膜を撫でる。窓から吹き込む夜風が、自室で読書をしている少女の黒い髪を揺らす。
「ん……」
 じっと集中して読み終えた本を脇に積み、ぐっと伸びを一つ。一日中座りっぱなしで固くなった体を解す。息を吐いて時計を見れば「もうこんな時間か」と呟きが漏れる程の時刻だった。本に夢中ですっかり時間を忘れていたらしい。
(寝るか、もう一冊読むか……)
 だがその前にお茶のお代わりだ、立ち上がって――視界の端に映ったモノにふと、誘われる様に窓の外へ視線を動かしてみれば。嗚呼、そういえば今日だったのか。
「なるほど、」
 綺麗だな。という素直な感想。夜の虹。時を忘れるというのも頷ける。片手にカップをぷらぷら、さて、このまま眺めようかお茶か。下したのは「まぁ良いか」という結論。
 逃してもそれはそれ。お茶を煎れてからゆっくり眺めよう。

「こんばんは……良ければ外の空気吸いながら夜の虹を眺めませんか……?」
 そんな紅瑠の誘いに、メルクリィは快く頷いてくれた。
 並んで座る公園のベンチ。
「図書館の時は有難うでした……。なんとか夏を過ごせました……まだ暑いですけどね」
「冬は機械化部が冷えますぞ、お気を付けて」
 気を付けます、と浮かべる笑み。空を見上げる。光の河。凄く奇麗だ。思わず見惚れてしまう。
「星を見るのは好きだけど……それとは全然違う景色ですね……」
 皆で集まって輝いてる煌。それはなんだかアークの人々と似て――そこまで呟き、何意味不明な事を、と頭を掻きつつ俯いた。
「いいじゃないですか、素敵です」
 そうですかね、とはにかんで。視線が合ったので頭を下げた。
「ご一緒して下さり有難うございました!」
 こちらこそ。そんな声に紅瑠は胸に願いを抱く。またご一緒できますように。そして……彼に幸せが訪れますように。

 公園の電灯、煌の光は二つの影を照らす。

「こういう神秘なら幾ら起こっても嬉しいですね……とても綺麗です」
「あぁ、眺めながら一杯やりたくなるね」
 妹と一緒だから飲まないけど、とロアンはリリへと微笑んだ。真面目な妹の前ではいい兄で。釣られる様にリリも薄笑む。
「リリと一緒に出かけるのなんて何十年ぶりかな」
「久し振りに兄様とご一緒出来てとても嬉しいです」
 本当に何十年ぶりだろうか。視線を煌に移し、リリは兄へ語りかける。
「兄様が革醒されたと聞いて驚きました……」
「やっと君と並び立てる身になったけど、リベリスタの戦いって見た目よりずっと厳しいんだね……無茶していないか心配だよ」
「はい、戦いは厳しいですが、それでも素晴らしい方々のおかげで何とかやれています。……私も兄様が心配です」
 どうかお身体は大事になさって下さい。そんな健気な言葉に、ロアンは久し振りに甘やかしたい欲が出て。ふわりと頭を撫でる。妹は嫌がりはしない、寧ろどこか嬉しそうで。
 少し背が伸びたかな。あと何だか綺麗になった。そう思い、兄は冷やかす様に訊いてみる。
「好きな人でも出来た?」
「好きな方……ですか? はい、実は……その」
「えっ出来たの!?」
 まさかの答えにロアンは目を見開いた。妹は恥ずかしげに頬を赤らめている。ははぁ、あのリリが。これは驚いた。嬉しい様な、寂しい様な。
「折角君に追い付けたのに、また遠くなっちゃうのか……」
「遠く? 何故ですか? 私は離れたりしませんよ。リベリスタになってこちらに来られたと聞いた時、とても心配になりましたが、実を言うと来て下さった事が少しだけ嬉しくて……」
 二人で歩き、見上げる虹。幸せが訪れるという光。
(どうか兄様や、大切な方々に幸せがありますように)
(大切な妹にどうか幸あれ)

●アークにて
「折角のこの綺麗な景色なんだから一献どうでござるか?」
 日本酒を手に、虎鐡は咬兵へ呼びかけてみる。綺麗な景色をつまみと言うのも中々オツだろう。「仕方ねぇな」と言いながらも無頼はなんだかんだで快諾してくれた。
「ほほーこれはなんと……すごいでござるなー」
 一献傾けつ、眺める光景。その最中に「そう言えば」と咬兵の方を見る。「何だ」と蛇の目が振り返る。
「ふと聞きたくなったんでござるが……身を固めないのでござるか?」
「あ? 何だ藪から棒に」
「いや、だって極道だってやっぱ子供欲しい人は欲しいでござろうし、そろそろ咬兵もいい年だと思うでござるしな……まぁ、拙者咬兵のタイプの女性なんて分からないでござるけどな!」
「……」
 杯を置き、一つ溜息。
「欲しいもんっつーのは得てして手に入らねぇもんばっかなんだよ」
 そうか、と虎鐡は頷く。これ以上の詮索はしない、無理に訊くのもなんだ。そんなことより酒だ、と空の杯を示されたので、静かに注いでゆく。満たされた杯に、映るは煌。

 一緒に飛ぶのも乙だが、偶には地に足をつけゆっくりと。夜空を流れる美しい虹を眺めつつ、亘はそっとメルクリィの隣に歩み寄った。
「こんばんは名古屋さん。今日は素敵な夜ですね」
「あ、どーもですぞ亘様」
 色々あった。ゆっくり話すのは三ヶ月ぶり位か。等、他愛も無い可愛。流れいく虹を眺めながら。
「そういえばこの煌を見れると幸せになれるそうで」
「らしいですね」
 尤も噂ですが。そう笑むメルクリィに差し出すのは、青い羽。もっと幸せになってほしい彼の為。
「あ、自分のではないですよ? ルリビタキという鳥の羽根です」
「いいんですか?」
「えぇ――ふふ、貴方が少しでももっと幸せでいれますように、です」
「ありがとうございます、ね」
 貴方にも幸せが訪れますように。

 アイツ来ねぇかなぁ。テリーはそわそわ。そんな彼に瀬恋が「おひさしさん」と声をかけ。
「あれ? お前……」
「坂本瀬恋だ。あのニーサンを成り行きで助けたはいいけど一度も顔を見せた事はなかったからね」
 ま、アタシはあんときゃあみっともなくオネンネしてただけだけどね……思いだして快いものではない、息を吐く。それはさて置き、瀬恋の顔に浮かぶはニヤニヤ笑い。ガスマスクを覗き込む。
「ただの甘ったれのブラコンだと思ってたけど女の為にアークに来たんだって? やるじゃねぇか」
「う、うるせぇなぁ! 俺ァ退くのが嫌いなんだよ」
 ケッとそっぽを向く彼の背を、「そうかいそうかい」と瀬恋は愉快そうにバンバン叩いた。

 よかったら一緒に見ませんか、アンジェリカは咬兵にそう訊ねれば「構わねぇよ」と返事が返ってきた。
 斯くして、夜空を覆う光の群れを見て。その美しさに息を飲んだ。
「おい」
 咬兵の声。「涙でてんぞ」と。そう言われて初めてアンジェリカは自分が涙を流している事に気が付いた。
「どうしてか解らないけど、あれを見てると心が揺さぶられるんだ……。本当に美しい物は、心を揺さぶるんだね……」
 美しい物を美しいと感じる事ができる、それが嬉しくて。涙を零しながら、咬兵へと淡く笑んだ。
「今日この時、一緒にいてくれてありがとう」
「そいつぁどうも」
 頭に置かれる武骨な手。その感触もまた嬉しくって。空を見上げる。
(美しい物を見せてくれてありがとう)
 煌へ心の中で礼を述べ、自然と唇で紡ぐのは美しい歌――あの空に、側にいる人に、全ての物に感謝を込めて。あの空に負けない美しい歌。

「メルクリィさーん!」
「ルア様ー♪」
 いつもの様に突撃どっかーん!むぎゅぎゅっと抱きつけば、いつもの様にメルクリィはルアを高い高いしてくれる。それから肩車をして貰って、いつもより近くなった空に輝くのは星と虹だった。
「メルクリィさん、見てみてっ! すごいのっ! とってもきれい!」
「えぇ、正に絶景ですな」
 思わず手を伸ばして、届かない輝きをもっと近くで見たくって。ぽいっと靴を脱いでは彼の肩に立ち上がる。
「お、落ちないで下さいね!」
「大丈夫っ」
 こういう時のハイバランサー。両手をいーっぱい広げて、視界一杯の奇麗な光に嬉しくなって、
「メルクリィさん! 回ってまわってー!」
「絶対に落ちないで下さいねー!」
 いきますぞーとその場でくるくる。ぐるぐる。回る、廻る。
「はわわっ!」
 ぐらぐらこけそうになるのも楽しくって、「えへへ、びっくりしたの!」ときゃっきゃとはしゃいでしがみ付く。幸せだ、だって、こんなに奇麗なものを大好きな人と見れるんだもの。自然と綻ぶ表情、虹の下で楽しげな声が響く――

●幸せセカイ
 絶好の機会!ガチガチに緊張しながらも意気込むレイラインを、付添いのエリエリはそっと見守っている。
(若い二人の邪魔を……若い? わかく……ない……)
 とにかく二人を邪魔せず、よいこで。
 斯くして。
「て、テリー!」「レレレレイライン!」
 誘いは、同時。ハッとして、でも、先に切り出したのはレイライン。
「えと……煌を観に行かんかえ?」
「き、奇遇だな俺もそう言おうと思って」
 夢にまで見た初デート、というものだろう。
 手を握って来たのはテリー。所謂カップル繋ぎ。エリエリはそんな二人をにこにこ見守りつ、ゆっくり歩いて三高平湖へ。
「のうテリー、おぬし今はどの辺りに住んでるのじゃ?」
「その辺のアパートだよ」
「何でガスマスクしてるのじゃ?」
「ダークでフリーなフィクサードだったからな、顔とか本名が色々ばれるのは不都合なのさ。今となっちゃ必要ないんだが、慣れなくってよォ」
 苦笑する。そんな彼へ、今度はエリエリが質問を。
「じっさいの所おじいちゃん呼びは可哀想ですから……なんて呼んでほしいです?」
「テリーで良いぜ、皆そう呼ぶし」

 そうしている内に辿り着いて、見上げる空。思わず言葉を忘れてしまう程の、景色。
「……綺麗」
 呟いたレイライン。そうだな、とテリーは肩を抱く。
「お前の方が綺rげふんげふん」
「ん? どうしたのじゃ」
「なんでもねー……です」
「そうか。のうテリー、折角じゃし」
 提案する。もっと近くで観てみたい、と。仕方ねーなぁ、そんな返事だけれども、満更ではないようで。お姫様抱っこ。掴まってろよと声。翼のはためく音。距離は零。互いの心音も聞こえそうで、恥ずかしいけれど。
「ふふ……これは幸せじゃのう」
「俺も。幸せだ、レイライン」
 虹を隠す二人の影。でも、同じ位輝いている。
(らぶここにあり)
 地上から二人を、煌を眺めるエリエリ。目を細める。レイラインは彼女には悪い事をしたかな、と視線をやってみれば……ニヤニヤ。おや。何でだろう。
(さて、二人の会話の一部始終をICレコーダーでこっそり録音しといたので、後でみんなの前で再生するのです!)
 歪み無い邪悪ロリであった。
 そしてレイラインのにゃぎゃーが響くのは、また別のお話。

●幸せセカイの裏でたやすく行われるえげつない行為
「ぼっちです!」
 竜一君以下略です。何度やられようとリア充撲滅委員会の名の下に、彼は諦める訳にはいかないのだ!
「これ以上、三高平の風紀を乱させるわけには! 俺が、俺だけが! 風紀の守護神なんだ!」
 しゅっしゅ腹パン素振り。もう誰も頼れない!もう何も怖くない!なら、自分自身でやってみせるしかないじゃないか!
「俺はもう、真の意味でぼっちじゃないのかもしれない……けれど! ぼっちの悲しみを忘れたわけじゃない!」

 わんふぉーおーる!おーるふぉーわん!
 一人はみんなのために、みんなは一人のために!
 ぼっちで悲しみに泣く人々のために!
 竜一は立ち上がるのだ!

「ハッ――この気配……! 砂糖空間の気配!」
 ぴきーんと疼く俺の邪気眼。その先には――和気藹々とカップル繋ぎなんかして歩いているレイラインとテリーが!しょうこりもなく!
「滅殺! 激殺! 瞬殺!」
 悲しみを纏いし粛清の拳(要は腹パン)がテリーへと……

 そして時は遡る。

「綺麗だな」
 本部でのアルバイトの帰り道、すっかり遅くなってしまったその時間、偶々通りかかった湖にて快が足を止めたのは、空に光る虹が泳いでいたから。
(もし、いのちの輝きが目に見えるのならば)
 あんな風に綺麗に光って――そして、消えていってしまうのだろうか。等と思い、ふと思い出すのは異世界で消えてしまった羊のあの子。
(あの子の魂の輝きも、あそこにあるのかな)
 目を細めたその直後、遠くから聞こえてきたのは話声。どうやらレイラインとテリーだ。仲が良さそうで結構な事じゃないか。微笑ましい光景に、邪魔しては悪いかなと踵を返しかけるが。
「ハッ――この気配……! テリーさんに対して不埒な事を考えたり腹パンをしようとしている竜一とかの気配!」
 ぴきーんと疼く俺の不沈艦。その先には――悲しみを纏いし粛清の拳(要は腹パン)をテリーにかまそうとしている竜一が!
「あいつめ、性懲りも無く……!」
 見過ごせない。守護神()的に考えて。

 舞い降りろセ●ール神!

 ブワッサァアア!
 デデーン!

\突然のウラジミールさん/

 ダブル不沈艦だ!

 コキャッ。
 テーレッテー

※具体的に言うと、こんな事もあろうかと周辺警戒に当たっていた少佐マジ少佐が竜一の行く手をサルダート・ラドーニで防ぎ、その隙を突いた快は後ろから竜一に近付いて首をコキャっとへし折って悪行を防ぎました。やったね!

●ひつじうた
「なかなかに美しいアザーバイドだ!」
 天才だから美しいものに造詣が深いのだと陸駆は絶景に一つ頷く。そして、ふと視線を戻してみれば――正確には『何故か視線が引き寄せられた』――その先には、機械フォーチュナの姿が。
 直接会うのは初めてで、その凶相やらが何だか怖くって。物陰からちらちら眺めていたが、ハッと何かに呼ばれた様にメルクリィが陸駆へと向いた。
「……あ。どうなさいました? おいでなさい」
 笑顔で手招きされて、おずおず。近付いてみる。そうだ、ちゃんと挨拶せねば。
「た、」
 彼に、言わないと。

「――ただいま」

 どうして、そんな言葉が出たのだろう。
「え……?」
「ん? 違う、こんばんはだ。こんなミスしたことないのに」
 何故だろう。
 何故こんなにも懐かしい気持ちでいっぱいになるんだろう。
「あ、あれ」
 涙が止め処なく零れ落ちる。分からない、どうしてこんなに気持ちになるんだろう。

 逢いたかった、と。
 やっと逢えた、と。

 嬉しくて、嬉しくて。

「だ、大丈夫ですか……?」
「すまない、わけがわからないだろう、僕も天才だというのになにがなんだかわからないのだ」
 溢れる涙をそのままに、陸駆はポケットから『記憶』を取り出した。
「貴様にも触ってほしい。よくわからないけど、貴様にも見せたかった」
 手渡す記憶。それは、今ではもう観測できないとある羊の記憶。
「……あぁ」
 受け取ったそれを、メルクリィは抱き締めた。
「もう、貴方は本っ当に心配かけてばっかり……! 今までどこほっつき歩いてたんですか!」
 ぎゅっと、ぎゅっと。もう、彼女が何処にもいかない様に。もう、消えてしまわぬ様に。
 そして、言うのだ。涙を流しながら。それでも笑顔を浮かべながら。ずっとずっと言いたかった言葉を。

「おかえりなさい、ルカルカ様……!」

 逢いたかった。
 やっと逢えた。

 ただいま。おかえり。

 泣き崩れる、それでも幸せそうな彼の頭を、陸駆はそっと撫でていた。
 それを見守るのは、煌の群。

●またいつの日か
 そして煌の輝きが薄れてゆく。彼らの異界渡りも終わりが近い。
「ぺかっ」と、そんな中で歌うのはミミルノだった。

 め「り」くりぃのかたのらんぷ?ぺかっ
 よるのくらやみのなかでぺかっ
 ぶりーふぃんぐるーむでぺかっ
 ごはんをたべてるときもぺかっ
 いつでもぺかっ

「めりくりぃはりべりすたのいくさきをてらすあかり」
 嬉しい時も、悲しい時も。怒ってる時も、泣いてる時も。
 いつでもぺかっと光ってリベリスタの行く先を示してくれる。
「めりくりぃはそのやくめができるきちょーなそんざい。これからもいろんなことがあって、たのしいこともつらいこともあっても、みんなであるいていこーね」
 そのときもぺかってみちをてらしてね。涙を流す彼の頬を拭って。
「ミミルノだけじゃなくて、これはみんなとのやくそく。みんながだいすきなめりくりぃとりべりすたとの、ぜったいやぶっちゃいけない、やくそく」
 笑顔で差し出す小指。頷いて、機械の小指が絡められた。
「えぇ、勿論! 約束ですぞ。これからも、宜しくお願い致しますね」

 そして、虹は消えてゆく。命に始まりと終わりがある様に。
「また見れるかな?」そんなルアの呟きと、りんりんと鳴く鈴虫の声。



『了』

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
メルクリィ:
「お疲れ様です皆々様、また彼等を見れると良いですな」
咬兵:
「ご苦労さん」

 だそうです、お疲れ様でした。
 虹はいつ見てもいいものです。

 ご参加ありがとうございました!