● 「おい、知ってるか?」 「んあ、何をよ?」 「駅前のカレー屋あっただろ。あそこの店主倒れて入院したらしいぜ」 「あー、あのやたらカレー好きの人の良いおっさんか」 「そうそう、んで店主の息子があの店売りに出すんだってよ」 「へぇ、まあ駅前の一等地だもんな。そら売るわ」 「次何が出来るかねえ。出来れば食い物屋が入ってくれたらありがたいんだけど」 「……そうだなあ、まあ、あのカレー屋ぶっちゃけ別に美味くなかったもんな。不味い訳でもないけど、なんつーか、ふつー?」 「あぁ、うん。ふつーだったな。近いから便利だったけど、……次の店は美味いと良いなぁ」 「ランチメニューがあってそこそこ美味くて、ちょっと安かったら最高だよな」 「そういや一寸遠いんだけどよ。駅の向こう側の商店街にラーメン屋あるんだ」 「えー、あったっけ?」 「いや、出来たの最近。其処が結構美味いらしいぜ」 ……………… ● 「さて、諸君等はカレーライスは好きだろうか?」 集まったリベリスタ達に問い掛けるは、『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)。 カレー、明治時代に伝来した洋食の一つであり、今では日本の国民食とも言われる程に広まっている。 インドや其の周辺国家で食べられていた香辛料を多用する料理がイギリスに伝わり、イギリスから日本へと伝わるにいたってなんとほぼ世界を一周しているのだ。 其の度に改良が重ねられ、一口にカレーと言っても様々な種類、食べ方が存在する。 「もし諸君等がカレーが好きなら、この資料を手に取ると良い。今回はカレーによるカレーの為の、カレーで人の人生を救う任務だ」 事件の概要を記載した資料(※要約済み) 情熱は人一倍だが、特に記憶に残るわけでもない平均的なカレーを振舞っていたカレー屋の主人が病に倒れ、入院した。 主人には一人息子が居るのだが、年を重ねてから出来た子故に甘やかされて育った彼に店を継ぐ意思は無く、寧ろ働きたくないで御座るとのたまって動こうとはしない。何せ店の土地を売れば左団扇なのだ。 主人の意思とは無関係に取り壊される事が決定したカレー屋だが、なんと主人の店舗への想い入れと無念から生まれたE・フォース『カレー屋さんの精霊』が現れ、カレー屋と一体化して頑強に抵抗を開始した。 「E・フォース:『カレー屋さんの精霊』は店舗に完全に乗り移りっていて通常の手段でこっそり倒すのはほぼ不可能だ。店舗を寄り代にしている為、店舗を破壊すれば消えるだろう事から、周囲の住民を全て立ち退かせて大規模な破壊作戦を展開するならばどうとでもなるが、……其れは最悪の時の手段となる」 つまり正面からの殴り合い以外に何とかする方法があると言う事なのだろう。 「通常の手段ではこのE・フォースを打倒するのは非常に難しいが、それ以外にこのE・フォースを倒し元の店舗に戻す手段が2つある」 逆貫が新たに机の上に差し出したのは2枚の資料。 「一つ目は、この店の寸胴鍋と冷蔵庫を使ってカレーを作り、入院中のカレー屋の主人と其の息子の心を揺さぶるカレーを食わせる事」 一つ目の解決法。 カレー屋の寸胴鍋と冷蔵庫の材料を使って入院中のカレー屋の主人と其の息子に、彼等の気持ちを揺さぶる(カレー屋の店主が自分のカレーより遥かに美味いカレーに、自分が店を続ける事の意味の無さを悟るとか、息子がカレーに目覚めてあとを継ぐ事を決める様な)カレーを食わせればこのカレー屋の意思は消え、ただの店舗に戻る。 ちなみにこの店舗の冷蔵庫にはカレーに出来る材料ならはほぼ何でも揃っているが、欲しい物をイメージしないと冷蔵庫はあかず、欲しい物をイメージしてあけると、其の材料が中から(例:牛肉が欲しい時は超強い牛)飛び出て襲い掛かってくる。(冷蔵庫も店舗の一部な為E・フォースに操られて能力を付与されている為こうなる) 「2つ目は、このカレー屋店主の息子を説得し、共に店を開いてある程度の、そう、E・フォースが満足する程度の成果を出す事だ」 2つ目の解決方法。 息子を説得してこの店を開き、其処で店が満足のする成果を出せたなら、店の意思は消えてただの店舗に戻る。 この場合は寧ろ店舗は協力的で、冷蔵庫をあけても材料は襲ってこず、何らか要請があれば其れが可能なことならば協力してくれる(照明等)。 ただし魔眼やテンプテーション等の非戦スキルを使っての成果は一切認めない。 「理解出来ただろうか? 諸君の選択とカレーが二人の人生を左右するだろう。とは言え気楽に挑んでくれて構わない。この長い説明に付き合ってくれたのならば、諸君等はきっとカレーが好きなのだろう。カレー好きならばッカレー屋さんの精霊や彼等と分かり合えるだろう。では、諸君の健闘を祈る」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:らると | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月07日(金)22:36 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「はぁ? お前等なんなのうっぜぇな。あの店使いたいなら金出して買えよ」 店を開いて欲しいと説得に現れたリベリスタ達に対し、善過・小太郎は不快感を露わにして言い捨てる。 対して怖くも無い平凡な顔を精一杯に怒らせて、リベリスタ達を、特に『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)を威嚇する小太郎を見て『もう本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)はある事に気付く。 まあ行き成り現れた年下の男、それも10代の少年に人生を語られたらイラっとするのは判らなくも無い。けれど明らかにこの反応は過剰である。 彼女自身が働きたくないナマモノである小梢は、其れが故に小太郎が実は父親の店を得る事に罪悪感を抱えてる事を見抜く。 世間は働きたくないナマモノ達がまるで何も考えていない愚者であるかのように扱うが、実際は違う。 ナマモノ達もそれなりに、如何すれば働かずに済むかを、少しでも労力を節約できるかを、頭をめぐらせてだらだらしながら考えているのだ。 同類であるとまでは言わないが、其の生態に共通項がある小梢は小太郎をある程度理解出来た。 とは言え如何するべきか。ニートに勤労意欲を説いた所で逆効果である。さっきみたいに逆切れされるか、彼等の大好きなキーワードである『今更』を連呼されるだけだ。 非常に面倒くさい。出来れば放っておきたい所だが、……それは駄目だ。小太郎自身の人生がどうなろうと、まあ小梢の知った事ではないし、駅前の一等地と言う資産もあるのだからどうにでもなるのだろうが、彼がやらねばカレー屋が一つ潰れてしまう。其れは非常に看過し難い。 よし、説得しよう。コンマ何秒で此処までの思考をまとめ、小梢が一歩前に出ようとしたその時、けれどもそのコンマ何秒分悩まずに小太郎の前に出た者が居た。 「カレー、美味しいわよね。源兵島こじりよ」 行き成り前に進み出て、目を合わせて名乗る『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)に小太郎が気圧されたように一歩下がる。 小太郎は別にカレーがそんなに好きではない。小太郎にとってのカレーとは、父の作るあの平均点カレーであり、別に美味しくない、ありふれた、身近すぎて逆に食べる気にもならない代物なのだが、其れを言わせぬ迫力がこじりの瞳にはあった。 「私、キーマが好き」 小太郎が下がった分、こじりは一歩前に出る。 キーマカレー、挽肉を用いて作るカレーの一つ。キーマとはヒンドゥスターニー語「細切れ肉」または「ひき肉」を意味し、其の名前から連想される通りの見た目をした料理だ。 「私、ドライも好き」 もう一歩下がり、もう一歩前に出る。そもそも幾多の修羅場を潜り抜けて来たこじりと、ぬくぬくと父親の庇護の元生きてきた小太郎では胆力、迫力、其れ等に雲泥の差があるのだ。 ドライカレー、此れもカレーの種類の一つだが大雑把に分けて3つのタイプがあり、どれもがドライカレーと呼ばれる。 一つ目はキーマと良く似た挽肉のカレーだがキーマよりもずっと汁気の少ない物。キーマと良く混同されるし、そもそもの区別が難しい。 二つ目は謂わばカレーチャーハンだ。カレーっぽいチャーハンで特に言うべき事も無い。 そして三つ目は二つ目によく似ているが、こちらは生米から調理するピラフタイプ。そもそもチャーハンとピラフの違いも確り皆が認識してるとは言い難いので、此方も然程大きな違いは無い。 ドライカレー、日本独自のカレーである。多分こじりが好きだというのは一つ目のタイプの物だろう。 「私、スープカレーも好き」 逃げ場を失う小太郎。そもそも小太郎は女の子の扱いが得意ではないのである。どちらかと言えば、仕事もせずに自らの趣味に没頭するタイプの為、女の子とは縁遠く生きて来たと言っても良い。 スープカレー、其の名の通りスープ状のカレーで、これも日本独自の物。 身体を温めながら水分摂取を可能とするので、特に寒い地方で好まれて食されている。 「わかった。わかった。わかったからもう止めてくれ。良いよ。お前らの好きにすれば良い……」 こじりの圧力外交に耐え切れずに根を上げる小太郎。彼氏の夏栖斗の正攻法が通じぬ相手は、彼女のこじりに弱い事が多い。良いペアである。 折れた小太郎を見下ろして小梢は頷く。 力技にも程があるが、望むべくも無い結果だ。なにより、自分は一切働かずに事が済んだのだから。 「……あれ? 鍵が開いてる」 店舗の勝手口が何の抵抗もなく開いた事に、鍵の閉め忘れを疑う小太郎。 けれど事実は違う。この店舗が、……正確には店舗に取り付いたE・フォース『カレー屋さんの精霊』が小太郎の来訪に自ら鍵を開けただけの事。 小太郎自身が如何思っていようと、この店は、そして店主は、彼が此処へやって来る事を望んでいたのだ。 一歩踏み込めば照明が勝手に点き、店内を照らし出す。無論此れも自動照明等ではない。 一般人である小太郎はそんな事を疑う余地も無く、少し思い出深げに店内を見回している。 昔はただ純粋に父が喜び誉めてくれるのが嬉しくて手伝いに入り浸ったものだが、果たして何時から自分は此処に出入りしなくなったのだろう? ……其れでは此処からが、リベリスタ達が過ごすカレー屋の一日の始まりだ。 ● さて、何時もの事ではあるのだが、リベリスタと言うのは実に変人揃いで一筋縄ではいかない。 「竜兄……ッ」 『合縁奇縁』結城 ケガハエル 竜一(BNE000210)の為すがままに、服を脱がされ脱がされバニースーツを着せられて行く『日常の中の非日常』杉原・友哉(BNE002761)。 友哉のそれっぽい台詞はその男達の絡みに生唾を飲み込み息を荒くする腐女……じゃない、『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)へのサービスだ。 「杉原くん、あとで写真撮らせて!」 ただの女装ではなくバニーガールである。網タイツである。ほぼ全て脱いでからじゃないと着れないアレである。……濃厚である。だがげに恐ろしきは、そんなバニーガール姿が似合ってしまう友哉の顔立ち。壱也の気持ちも少し理解できなくもない。 しかしなんだろう。彼等は小太郎に変な性癖を植え付けるために来たのだろうか。 「民族衣装って、コスプレみたいよね」 サリーの布地をひらひらと翻し、こじりがくるりと回る。こちらは普通に可愛らしい。 「わあ、こじりさんかわいい!こじたんと呼んじゃうレベル」 壱也が歓声を上げる位に、可愛らしい。彼氏ー、彼氏もなんか言えよう。あとモゲロよう。 他人の格好に目を輝かせる壱也とて、既にバニーガールの姿に着替えは終っている。うさ耳の可愛らしさが、彼女の愛嬌を引き立て非常にチャーミングだ。……が、まあ胸が足りない。詰め物をしないと胸からべロっと前に垂れて丸見えになってしまいかねない気がするくらい、ぜんぜんむねがたりてn。 彼女へ体形へのコメントは死亡フラグな気がするので次へ行こう。 小梢、そして彼女と友哉と共にダリィーズと言う働きたくない駄目人間カレー愛好同盟を構成する11歳の幼女『第28話:あつはなつい』宮部・香夏子(BNE003035)もバニーガール姿への変貌を遂げている。 客引きの前にカレーを所望すると言わんばかりのダリィーズの面々に、力強く頷いたのは竜一。 カレースパイスとしては欠かせないガラムマサラに、シナモン、クローブ、ナツメグ、胡椒、クミン、ベイリーフ、カルダモン、メース、ターメリック、サフラン等を加えて基本となるスパイスを作成していく。ちなみに各スパイスの詳しい解説は省かせてもらいます。知りたい人はググレ。 けれど、だ。何か足りない。一味足りない。其の足りない何かが判らずにケガハエル 竜一は頭をかきむしる。いかん、悩みすぎると毛根が死ぬ。 しかしそんな竜一に差し込む一筋の光。 「竜一師匠さん!」 師匠と仰ぐ竜一の危機に、頑張れとは口に出さずとも心の全てを瞳に込めてエールを送る香夏子。 「そうだ!!!! 香夏子!カレー鍋に入るんだ! これで、幼女のダシでカレーにまろやかさが……!」 はい、アウトー。ふっ、と店内が暗くなり竜一の姿が掻き消えた。 グキッ、ガス、ドス、ゴス、ゴキュ、ボキッ、ぐちゃ。 何やら凄惨な音が店内に響き、次の瞬間、竜一は店舗の裏のゴミ箱の中にずたぼろの姿でゴミ袋に詰められて現れる。 いかに油断していたとは言え、熟練のデュランダルたる竜一を一瞬で屠るカレー屋さんの精霊の恐ろしさに、服を脱ぎかけて鍋に入ろうとしていた香夏子がそっと服を着なおす。 食べ物で遊んじゃいけません。 ちきしょう。駄目だ。カオスだ。もう全部カットして行き成り〆に入っちゃ駄目だろうか。 駄目ですね。何より未だ、『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)さんが出ていない。 けれども、そうだ、そのウラジミールこそが、今小太郎の前に立ちはだかる最大の難敵だったのだ。 「竜一殿は脱落か。……祖国ではシチューやボルシチほどメジャーではないが自分は若い頃に海での仕事を行った際に、海軍でカレーを作ったりもした経験もある。安心して任せるといい」 ……今、海軍とか言ったよこの人。まさかの軍人かよ。触ると触った手が切れそうな位に怖い見た目だと思ったら、見た目通りに中身も怖いのかよ。 竜一が行き成り消えた不自然さにも気付かぬ程に心底びびる小太郎。だがウラジミールはそんな小太郎に表情を緩ませ、丁寧に自分の作業を手伝って欲しいと申し出る。 ウラジミールには、小太郎の人生を左右する心算は無い。回り道をしようと、道に迷おうと、其れは彼自身の人生だ。 「自分の人生だから、自分で決めれば良いだろう。だが、それもできないなら手近な事をやってみるのも悪くはあるまい?」 玉葱を指先でくるりと回し、まな板の上に置いて笑むウラジミール。 一先ず、この瞬間だけでも楽しく共に調理が出来るようにと。怖いと思ってた人が優しかったら凄く良い人に見えるマジック。 ● 「ね、こういう特典も有難いっしょ? 哀れなのもいるけど」 夏栖斗、ウラジミール、小太郎の三人で作り上げたカレーを大騒ぎしながら食べる女性陣、またの名をカレーガールを見ながら、夏栖斗が小太郎を肘で突く。 ちなみに誰が哀れなのかは定かでないが、小梢以外は基本皆胸そんなに豊かじゃないよね。普通に女性陣に混ぜられた友哉が一番平らです。 試しに作ってみたカレーラーメンの汁が跳ねて服についたと騒いでは、それでも直ぐに笑う。 賑やかに、和やかに、時間は進む……が、振り返ってみればそれはまあ実際に店を開いてみるまでの僅かな間の猶予期間のような物だったのだろう。 素人三人で店の厨房を回さねばならないとなるならば、其処はもう戦場だ。 夏栖斗に関しては家が喫茶店と言う事もあり、完全な素人とは言いがたいが、其れでも畑違いには間違いない。 閑散としたままの店ならば素人三人でもどうにかなったろうが、カレーガール達の集客効果は彼等の予想を超えていた。 「わたしが客寄せしたら長蛇の列だよ!」 との壱也の言葉は大袈裟でも何でもなく事実だったらしい。 実際昼飯時にバニーガールだのサリーだのの可愛らしい少女達が客引きしてたらそりゃ行くよ。例え胸部が哀れであろうと、物珍しさも手伝って客は集まる。 只管やってくる客を捌く事に追われる夏栖斗、ウラジミール、小太郎の三人。 だがそんな中、小太郎が意外な健闘を見せたのだ。 普段から喫茶店で色々やってる夏栖斗が動けるのは判る。ウラジミールとて機敏に迷いなく、其の時其の時で最適な動きを取れる訓練を積んだ存在だ。 しかしただのニートである筈の小太郎の思わぬ頑張りに、 「君はこういう事に才能があるのではないかね?」 ウラジミールが世辞でなく賞賛を送る。 けれど事実は違うのだ。 首を振る小太郎が意外に動けた其の理由は、この店の配置が嘗て小学生、中学生だった頃に小太郎がこの店を手伝っていた時のままにされていた事にある。 何処に何があるのかを、薄らぼんやりと身体が覚えているのだ。 嵐の様な時間は瞬く間に過ぎていく。 次から次へと客が来れば、一心不乱に働く事を強いられる。 何時しか、店からエリューションの気配が消えている事にリベリスタ達は気付く。 最後の客が、間違いなくカレーガール効果ではあろうけども嬉しそうに帰った事に、 「どうよ、悪い気はしなくね?」 夏栖斗も嬉しそうに小太郎に尋ねる。 「いや……、割と、しんどい」 まあ、そりゃそうであろう。行き成りこんなに働いたら誰でもしんどい。 ただ、 「ただ、まああんた等の言う事も少しは判ったよ。店をどうするかは親父と相談するけれど……」 けれど? 「いや、あんた等明日どうすんの? 来るの?」 少しだるそうに、でもほんの僅かに期待を込めて、問う小太郎。 「えっ?」 「えっ?」 店を一度開いた以上、明日も客は来るだろう。今日だけ限定とは誰も口にしなかったのだから。 任務はもう終っているのだが、此処で終わりにして投げ出すのは、成る程どうにも中途半端だ。焚き付けるだけ焚き付けて其れでお終いは薄情が過ぎる。 結局リベリスタ達は店の店主が退院するまで、割と頻繁に店を手伝わされる事になるのだが、其れは蛇足になるので割愛しよう。 最後にウラジミールが朝から寝かしていたカレーが全員によそわれ、 「ふぅ……、どうやら働いてしまったようですね。あ、モチロン本気は出してないですよ! ホントですよ!」 香夏子が、 「む、このスパイス……何つかってるんだろう。今度自分で作る時の為に参考にしなきゃ」 小梢が、皆が笑顔になる。 鍋のカレーはどんどん量を減らしていく。 「そうね。美味しいわ。私はカレーが好きよ」 子供の頃はハンバーグカレーが好きだったというこじり。 「どの位カレーが好きかって? 御厨くんと付き合ってるのはインド人のクオーターだからと言う位よ」 あまりの発言に一斉にカレーにむせる面々。 そんな爆弾発言要りません……。 「嘘よ」 甘口カレー。もげれば良いのに。 けれど誰か、外のゴミ箱でもがく竜一君の事もそろそろ思い出してあげてください。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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