● 夜空には星が輝き、聞こえるのは潮騒の声。 昼間の太陽も鳴りを潜め、涼しい風が吹いている。 南の島に夜が訪れる。 だが、まだまだ宵の口。 今日が終わったわけではない。 さぁ、お楽しみはこれからだ。 ● 「あぁ、あんたか。ちょうど良かった、このチラシ持って行ってくれ」 アーク本部を訪れたリベリスタに『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)が話しかけてくる。手に握られているチラシには、「バーベキューパーティーの誘い」と書かれている。 そう、今年もやって来た、アークの福利厚生の一環である。 時村家の保有する南の島でのバカンス。 今年はその中のイベントの一つとして、夜にバーベキューパーテイーを行うことになった。今はその参加者を募集しているのだとか。 浜辺を占拠してのバーベキューパーティー。ある意味、贅沢なイベントと言える。 また、食べるのが苦手でも、浜辺でわいわい言いながら花火を遊ぶのは悪くないだろう。 「という感じだそうだ。良かったら参加してくれ」 以前よりスムーズになったものの、まだ棒読みが目立つ守生。 よくよく見ると、手にカンペを持っている。 彼の修行はまだまだ続く。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月09日(日)22:16 |
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● 「いえーい! バーベキュー!」 すっかり暗くなった浜辺だが、リベリスタ達の勢いは留まることを知らない。 夕方から始まったバーベキューパーティーは、簡単な片づけをクッションとして、さらなる盛り上がりを見せていた。 「ユーリ、肉ばかり食べてはいけないぞ。夏栖斗も野菜を食べるんだ」 【肉と野菜】のメンバーは早速始めている。和気藹々と、肉の奪い合いを見せている。 最初は普段見せないレンの茶目っ気に驚いていた夏栖斗と悠里だが、安心すると同時に肉に手を伸ばす。そして、そこに今まで状況を静観していた陸駆が動き出す(バーベキューのことを知らなかった、とも言う)。 「レンに肉奪われた!? だったら、陸駆の分をもらうぞ」 「みっ、御厨夏栖斗! 貴様! 人の肉を!」 「陸駆くん、野菜も食べなよ。ほれほれ」 陸駆が油断をしていると、肉は修羅達に奪われている。代わりに渡されたのは緑の悪魔。 「断固拒否なのだ! ピーマンなんぞ悪魔の野菜だ!」 「あのな、陸駆、アークは弱肉強食なんだ。そして今は焼肉定食なんだ。肉は戦いでこそ得られるんだ、覚えておくといいのだ」 修羅界の掟を語る夏栖斗。だが陸駆の天使は他にいた」 「陸駆は肉をたくさん食べて大きくなるんだ」 「レン・カークランド……! 貴様はいいやつなのだ!」 感動の涙を流す陸駆。 「悠里!そのカルビは譲らん! お前は焼きかぼちゃを食してろ! 色似てるじゃん!!」 「うるさい! 最後のカルビは僕のものだ! 色は関係ないだろ! 炭食ってろ!」 その後ろでは修羅達は相も変わらず戦いを繰り広げるのだった。 「みんな、バイデンとの戦いお疲れ様なの。今日はジャンジャン食べよう!」 そうやって男ども(ルビ:バカども)がはしゃぐ一方で、女子グループ【なのはな荘】ではルーメリアが乾杯の音頭を取っていた。 「タダ飯よりおいしい物はありませんね。今日の内に食い溜めておかないと……」 串焼きが焼き上がるや否や、ヘクスは怒涛の勢いで肉を口に運んでいく。誰だって肉は好きだ。 「あ、ルーメリアはバイデンお疲れ様でした。色々ご心配をおかけしました」 一息つくと、ルーメリアに頭を下げるヘクス。こうしてみんな揃って食事を囲むことが出来るのも、生きて帰ることが出来たればこそである。 「ううん、気にしなくても大丈夫なの。そうだ、マーガレット、マーガレット!」 「ん、どうしたの?」 呼びかけられて手を止めるマーガレット。 冷静な顔のマーガレットに対して、ルーメリアの表情はどこか恥ずかしげだ。 「え、えーと、その……この前はアリガト……お陰で勝てたの」 「礼を言われることでもないよ。多少アドバイスしたけど、勝てたのはルーメリアの努力の結果、でしょ?」 そんなことかと事も無げに手をひらひらさせるマーガレットへ、目を合わせないようにして小包を差し出すルーメリア。 「た、誕生日近いよね?ほら、これ……あげる……誕生日プレゼントなの!」 ここでようやくマーガレットは驚きの表情を浮かべる。 「気を使わなくてもいいけど……ありがと。……食べる?」 照れ臭そうに受け取ると、焼き上がった串を差し出す。お礼代わりなのか照れ隠しなのか。 「カレー出来上がったよー」 そんな所へ小梢はマイペースに手作りのカレーをよそった皿を差し出す。 「やっぱりそんなことだろうと思ったよ」 横では肉を運んで通りがかった守生が苦笑を浮かべている。小梢はこのためにわざわざ自分で器具を持ち込んでいた。 「まあ変と言われようが私は気にしない、カレーが食べたいんだから。もりぞーさんも食べる?」 「あ、モリゾーさんも食べてる? もっと食べないと逞しい男になれないよ?」 「程々にな。ま、今日はみんなのお疲れ様会だ。まだまだあるから、気にせず食っていってくれ」 肉を置いてカレーを受け取ると、別の机に向かう守生。 その後ろではまたきゃいきゃいと肉を焼く賑やかな声が聞こえていた。 そうやって、大所帯で騒ぐ面子がいる一方で、友人同士静かな会話を楽しむ組もあった。 翔太も優希も、それ程食べるペースが速い方ではない。だから、のんびり肉を焼きながら会話を楽しんでいた。 「その浴衣似合ってるよな。優希らしく動きやすく、何よりかっこいいしよ。スタイリッシュに決めているのがまた良い」 「この浴衣の良さが解るとは、流石は翔太であるな。この浴衣は雅を備えつつ機動力も保たれている。生地にも拘り特注品で……」 「隙あり! へへ、焼いてくれてサンキューっと」 前言撤回。 優希が自慢の浴衣について語る隙を突いて、素早く肉を奪っていく翔太。その速さはまさしくソードミラージュの面目躍如である。 「く、肉を全て持っていくな! 俺にも寄越せー!」 こうして始まる争奪戦。 だが、こんなじゃれ合いを楽しむことが出来るのも、この大事な親友と出会うことが出来たからだ。 肉の奪い合いの中で、2人は確かにこの最高の友人と出会えた喜びを分かち合っていた。 「先輩っ! たくさん取ってきましたよ~、食べましょうっ!」 男同士で友情を育むものがいれば、その一方で愛を語らう恋人たちがいるのは自然の道理だ。 サンキュ、と簡単なお礼を言ったモノマは、壱也が持ってきた肉を焼き始める。 水着の都合もあって壱也のペースが遅い分、肉の減りはゆっくりだ。だが、それにも増して、ピーマンは一向に減らない。 「このまま残すとピーマン農家のおっちゃんがきっと悲しむのだ、ほら」 気付いたモノマはピーマンを食べ始め、壱也にも勧める。ピーマンに負けじと苦い顔を浮かべる壱也。 「ほら、あーん」 「は、わわ……ご、ごめんなさい……うう、食べます。あ、あーん……うう~に、苦い」 モノマに口元までピーマンを持って来てもらい、壱也は顔を顰めながら食べる。 「後はデザートのアイスなのだ」 「あ、アイス! はいっ! 食べます! アイスも……あ、あーんしてくださいっ」 恋人に食べさせてもらうのがいたく気に入った様子の壱也。 何と言うか、ご馳走様でやんした。 「自家製の醤油タレ! 味噌タレ! ねぎ塩タレ! 牛! 豚! 鳥! 余分な脂を落とし、香ばしく炭火で焼き上げた肉たち! 次に野菜もバランス良く! 煌めけ、俺のハイバランサー!」 冴の前に勢いよく並べられる肉に野菜。彼女の好物が分からないので、豆鉄砲理論で並べられる限り並べてみた。 竜一の手際に隙は無い。 テンション高い竜一とは打って変わって、淡々と目の前の食材を口に運ぶ冴。 竜一は食べる事無く、冴が食べている様子を楽しそうに眺めている。あふれるお兄ちゃん属性である。 「ありがとうございました」 食べ終えた後に手を合わせて一礼する冴。だが、今一つリアクションが薄いため、彼女の好物は掴めない。 そこで、竜一は思い切って聞いてみた。 「で、結局、冴たんって何が好物なの?」 「毒物が入っていなければ特に問題はありません」 一通り肉を配り、一息つく守生。すると、そこにジースがやって来た。 「ほら、取り皿持って」 「お、おう」 「とりあえず、焼けてそうなの乗せていくからなっ!」 守生が何かを言うよりも早く、ちゃっちゃと山盛りで肉を乗っけていくジース。 「ちょっと待て! こんなに食えるか!」 「そんなだから、簡単に怪我するんだろ? しっかり食えよ」 抗議する守生に笑顔で答えるジース。これも彼なりの優しさだ。 「モリゾーは俺達の目なんだ。強くなって貰わなきゃ困るぜ。その代り俺達が剣になり盾になる。……頼りにしてるぜ!」 そう言ってジースは守生の頭をわしゃわしゃ撫でる。 「年変わらないんだから、そんな扱いするなって言ってるだろ!」 いつものように叫ぶ守生の背中で、花火が上がった。 ● セラフィーナが打ち上げたロケット花火が、夜空に大輪の花を咲かせる。日本に来て間も無い彼女にとっては、何もかもが新鮮な体験だ。 「うわぁ、綺麗ですね! たーまやー!」 「かーぎやー。ええ、綺麗ね」 はしゃぐセラフィーナの横で静かに微笑むのは糾華だ。 迫力あるロケット花火が終わったら、今度手に取るのは小型の花火。 色とりどりの光が煌めく中、語られるのは思い出話。 今の戦い、ここに至るまでの戦い、そしてその中で散って行った、糾華の親友であり、セラフィーナの姉である少女の話。 「貴女のお姉さんとはとてもおかしな友情を築きあげてきたと思うわ。それも私のとても大事な思い出」 だが、2人はそこに囚われはしない。 「次は貴女と一緒にステキな思い出を作って行きましょう。楽しみにしているわ」 「よーし、私もこれからいっぱい楽しんで、たくさん思い出を作ります!」 「うおっ、こりゃすげぇ……わわわ! こっち来た来た!」 「うわぁ、来るな。ひゃあ!」 暗闇に弧を描いて駆け回るねずみ花火。 木蓮と亘は必死に逃げ回る。 龍治は酒を片手にそんな2人の姿を眺めて目を細める。 木蓮から弟分を紹介すると言われたのだが、あそこまで仲の良い弟はそうはいない。 「龍治―!」 「ん?」 遠くから木蓮が呼びかける。目をやると、そこには彼女と弟分が作った大きなハートマーク。 思わず吹き出してしまう龍治。 しかし、姉弟の攻撃はまだ終わらない。 「ごほん、ど、どうしたんだ?」 「記念に1枚撮ろうぜっ。な、な、いいだろ?」 「いや、俺は写真は苦手なんだが……」 「ダメですか?」 上目づかいに見上げてくる2人。明らかに確信犯だ。 確信犯なのは分かっているが……龍治に抗う術は無かった。結局視線をそらしながら写真を写すこととなる。 シャッターが切られる瞬間、どーんと花火が打ち上げられる。 3人と、夜空に浮かぶモルの姿を写した写真。 それはかけがえの無い思い出となるのだろう。 パチパチ モニカと慧架、2人の少女の顔を火花が照らす。派手な花火は必要ない。 そこに青と白、それぞれに可愛らしい浴衣を着て、他愛ないおしゃべりが出来ればそれで十分だ。 「花火の色ってどうやってこんなに綺麗に出来るのでしょうね。職人さんは凄いなと思います。モニカさんはどうですか?」 「普段がハニコでドンパチやってるだけに、こういう大人しい火花が散るのは中々に新鮮ですね」 モニカの感想に慧架はくすりと笑う。 こういう感想が出てくるのも神秘の住人ならでは。慧架自身、業炎撃で火をつけようかと言う考えが頭をよぎった位だ。 「直ぐ消えちゃうのが寂しいけど、消えてしまうからこそ儚くて綺麗なのかもしれませんね」 肉とカレーで一杯になった腹を落ち着かせるため、外を歩いていた守生を京子が呼び止める。 「モリゾーさんも一緒にどうですか? 線香花火、綺麗ですよ?」 「本当だな。じゃ、俺も」 線香花火を持ってくると、守生も京子に倣って火を点ける。 そして、しばらく2人で火花を眺めている内に、京子は守生の顔をキッと睨みつける。 「ところでモリゾーさん! 表情まだまだ堅いですよ、折角皆で集まってワイワイ楽しんでいるのですからもっと笑いましょうよ!」 「仕方ないだろ、生まれつきなんだから」 一層ムスッとした顔になる守生。 だが、京子は止まらない。 「いつ、誰が居なくなるかも知れないこんな世の中です。私はモリゾーさんの笑顔も見たいですよ!」 線香花火は激しく火花を散らした後に儚く落ちる。いつまでも輝きたいと思いながら、いつまで光ることが出来るか分からないのがこの世界だ。 守生は京子の言葉に笑顔を作……ろうとして失敗。来年もこうして南の島で遊べることを祈って、攻め手の答えを返す。 「……努力する」 ● 外で静かに過ごすものがいる一方で、バーベキュー会場は一層の盛り上がりを見せていた。 「さて、焼きますか! 俺は肉も好きですが、こう言う時のたまねぎに目が無くて」 そのテーブルは、会場の中でも一際異彩を放っていた。 ライフセイバー、暗黒街のマフィア(10歳児)、ギャル。 元々統一性の薄いリベリスタ組織だが、全く持って何の集団だか分からない。 「おい犬吠埼、ボサっとするな。どんどん焼けどんどん。何、食べるのはオレの担当だ、任せてもらおう」 「アタシ、さも当然の如く肉好きみたいに連れて来られたけど、正直そんな好きじゃないっつか……。まあいいや、野菜食べよ」 せっせと守は食材を焼き、肉を福松が、野菜をゐろはが食べる。ある意味理想的な図式が出来上がった。 しかし、生態系は徐々に崩れていく。野菜が増えてきたのだ 「……ッチ。あ犬吠埼サン。鉄串貸して、長いの」 「これで良いですか?」 「そうそれ」 ゐろはは福松がこっそり自分の皿に乗せてきた野菜を串刺しにする。そして、福松の口を掴み、そこへ野菜を突きつける。 「うぼあー!?」 「刺さない刺さない、全然刺さない。大人しく口開けてくれたら全然刺したりとかしないし。」いーから開けろっつってんだよ!!」 みんなも肉と野菜はバランスよく食べましょう。 「肉だぁ! 酒だぁ! 呑んで食べるぞぉ~! カンパーイぃ!」 カンッとジョッキをぶつける良い音が会場に響く。 そう、今は夜。そして、バーベキュー。大人たちは酒を楽しむ時間だ。いや、酒を楽しまなくてはいけない。 「若者なだからもっと食べるとよいだろう」 乾杯を終えると、焼き上がったものをウラジミールが配っていく。 飲み物はビールだけではない。快が持ってきた日本酒も、焼いた肉に合う逸品だ。 そして、それらを受け取るエナーシアは何故か水着姿。 「肉だ! お酒だ! エナーシアさんの水着だ!」 「新田さんに水着姿を強いられているのです!」 「入賞を果したのだから自信を持っていいと思う」 策にはめられたとも言うが、酒が入っているのでみんなのテンションは否が応にも盛り上がる。これも大人の特権だ。 「しかし、満天の星空のもとバーベキューってぇのも乙だねぇ」 御龍がビールを片手に夜空を見上げる。 「そういえば去年の福利厚生の時は私一人だったのよね。随分と賑やかになったものだわ」 酒の魔力か、感傷に浸る大人達。 「アレ? 随分静かにしてるけどどうしたんだ?」 そんな所に肉を追加しに守生がやって来る。 「何、大したことではない。お疲れ様だな。沢山食べるといいだろう」 やって来た守生にオレンジジュースと山盛りの肉を渡すウラジミール。 食えるかなと言う顔をしながら受け取ると、礼を言ってその場を立ち去ろうとする。 「あ、ちょっと待ってくれ」 その時、快が呼び止める。 「まあ、今更言うことじゃないかもしれないけどさ。モリゾーは何処に居たって、俺達の戦友だよ」 バイデンと戦った際の話だ。守生のコンプレックスに気付いたから、快は素直な気持ちを伝えた。 「……ありがとう。じゃ、俺はまだ回る所あるから」 そう言って去って行く守生は、何処か照れ臭そうだった。 そんな守生の背中をつんつんと突っつく影があった。 「モリゾーと遊びにきたよっ! えへへ、夏、楽しんでる? 怪我とかダイジョブだった?」 「真独楽か。まぁな。そっちも楽しんでるみたいで何よりだ」 頭を撫でてくる真独楽に答える守生。 「そだ! 大親友の杏、紹介するねっ!」 「あぁ、カラオケ大会の時の……」 「ああ、高城守生君。カラオケ大会の時に司会してた人ね」 後ろで杏は手をひらひらさせている。 「そんなに堅くならなくても良いわよ、楽にして頂戴。貴方達みたいなのがいるからあたし達もくいっぱぐれなくて済んでるんだから、感謝してるくらいだわ」 バイデン戦の時の暴走の話をされて、身を小さくする守生。穴があったら入りたい位だ。 「えへへ、それじゃ一緒に食べよ?」 準備は万端。いつでも行ける。 「杏はやっぱりイカが好きなのかな? はい、あーん」 「イカは大好きよ。ビールの一番のお友達よね、あーん」 幸せそうな2人の姿。 それを見て、守生はアークに来て良かった、と思った。 次第に宴もたけなわと言った時間になって来た。そこで、うさぎは意を決して風斗を花火に誘おうとする。 「さて風斗さん、バーベキューは充分堪能しましたし次は他の事をですね」 ちょっと照れながら、それでも想いをこめて。 「……つまり、ええと、良かったら一緒に花火でも……え?」 「ほら、うさぎ、箸が止まってるぞ。お前も食わないと……ウプッ」 目の前で何かに取り憑かれでもしたかのように肉を食らい続ける風斗の姿。もう十分すぎる程食べているはずなのに、ペースが落ちこそしているが、彼の箸は止まらない。 「くそっ、負けてたまるかっ!! ここに取り出したるは大根! 行け、浄化する大地の守護者、大根おろしー!」 大根おろしのさっぱりした風味で食欲を取り戻す風斗。うさぎはぽかんと口を開けてしまう。もはや、ムードもへったくれも無い。何でこんな状況でのん気に肉など食っていられるのか。何でそんなにアホなの、と聞きたくなる。 「全く、前後不覚になったら手篭めにすんぞ、この馬鹿タレは……」 抑えたつもりの言葉がぽろっと漏れる。 「ひゃれ? にゃんか、言った?(もごもご)」 「いーえ。何も言ってません!」 既に時間は夜。 だが、まだ宵の口だ。 「さあ! ここからは! 夜、すなわちアダルティタイム。野菜の時間だ!!」 夕方からバベっている(訳:バーベキューをしている)ベルカとしては、そろそろ胃に優しいものを食べたい頃合いだ。 「そっちの玉ねぎ、いただくわね」 片付けに奔走していたのぞみは、ようやく食事のターン。 エリスも倣って、野菜を食べる。 そんなリベリスタ達を綺沙羅は遠巻きに眺めていた。賑やかな空気は嫌いではないが、あの輪の中に自分がいる姿はどうにも想像できない。 すると、そこにフツが声を掛ける。 「ウッス、お前さんも1人で食べてんのかい。オレもそうなんだが、よかったらあっちでみんなと一緒に食べねえ?」 「大丈夫、もう十分食べたから」 嘘ではない。人と一緒に食べる気が無いのも事実だが。 そんな綺沙羅にフツは笑みを浮かべてジュースを差し出す。 「そっか。それじゃあ、ほら。これ持って行きな」 人それぞれに事情があるのだ。それを無理に聞かないのもフツの優しさ。 「ありがとう……」 「オレが買ったわけじゃねえからな。気にすんな!」 そう言って、フツはまた別の仲間に声を掛けに行く。 まだ、パーティーは終わっていないのだから。 明日になればまた新たな戦いが始まるのだろう。 今宵の宴も一夜の夢。 それでも、リベリスタ達はまた明日を生きるために、今日を楽しむのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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