● 「……ということなんです。大丈夫なんでしょうか?」 『えぇ、ご安心下さい。私どもに任せていただければ、たちどころに解決ですわ』 小さな不動産会社の社長である男は、電話の向こうにいる若い女に向かって頭を下げる。 最近、「怪物が出る」と言われる土地を買い付けた。そして、そんなもの嘘だろうと思ってみると、言われた通り、本当に怪物と遭遇してしまった。今このタイミングで捨て値で売ってしまいたい所だが、それは噂を肯定するようなもの。だからと言って、リアルに怪物が出るような土地を何も言わずに普通に売るのも無理がある。 ほとほと困り果てていた所で、裏の繋がりから『アーク』と呼ばれる組織の存在を知る。そういった怪物退治の専門家と言うことだ。藁にもすがる思いで連絡を取ってみたのだ。胡散臭い所はあるが、『アーク』がいくつかの有名な事件に関わっていた話をされた以上、信じるしかあるまい。 『さて、それでは報酬の話なのですが……額はこのようになりますね』 「ば、バカな!? 法外だ!?」 女性の提示した額は、この土地を売って手に入るだろう利益とほとんど変わらない。こういうものの相場は分からないが、いくらなんでも無理がある。 「そうですか。残念です。ですが、社長。お宅の噂は聞いておりますわ。売れない土地を抱え込むよりは、どうにか処理をしてしまう方が、遥かにマシとも思いますが……?」 女の言葉に冷や汗をかく社長。たしかに、彼女の言う通りだ。このままだと都合が悪いのも事実。 社長は女の提案を受け入れる。 「ググ……足元を見おって。分かった、払おう。だが、絶対だぞ。絶対にあの化け物を追い払ってもらうぞ」 余裕の無い男に向かって、女は電話の向こうで艶然と笑う。 『えぇ、我々『アーク』と私――『リンクカレイド』真城イブ――の実力、必ずやあなた様のご希望に沿って見せますわ』 ● 「という訳で、フィクサード集団討伐の依頼よ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は微妙にむすっとした顔で集まったリベリスタ達に依頼の説明を開始した。 「彼らがやっていることは、エリューション退治やフィクサード討伐、このこと自体はリベリスタの行動。報酬を得ようとするのも、アークでないリベリスタだったら当然と思う。だけど、許せないのは彼らがアークの名を騙っていること」 イヴが機器を操作すると、そこには9人の男女の姿が映し出された。 集まったリベリスタ達は息を呑む。 その姿があまりにも自分達に似ていたからだ。 だが、何か違う。 「そう、あなた達を呼んだのはこれが理由。彼らは私やあなた達の格好をしている。どうやったのか、『アークのリベリスタ』として噂を聞きつけたのね。これを放置すると、あなた達にとってとても不幸なことになるわ」 噂で聞いただけだから、どこかキャラの解釈が歪んでいるのだろう。イヴを騙るリーダーの女性からして、背が高くてスタイルの良い成人女性と言う段階で、情報が歪んでいる。 この偽物集団がやっているのはアークの名を借りた詐欺。 曰く、アークを名乗って、弱いエリューション退治をして法外な値段を請求する。 曰く、アークを名乗って、弱小フィクサードを追っ払う。 曰く、アークを名乗って、弱小リベリスタから金を徴収する。 曰く、アークを名乗って、子供のお菓子を奪い取る。 やっていることはしょぼいが、正直続けられるとアークの沽券に関わる。 「彼らの実力は大したことない。あなた達だったら、負ける方が難しいわ。軽くぶっ飛ばして、二度とアークの名前を騙ろうなんて思わないようにしてあげて」 イヴの目には怒りが浮かんでいる。偽イヴの姿に思う所があるのだろう。 説明を終えたイヴは、質問が無いことを確認し、リベリスタ達を見渡す。 「……あなた達ならまず大丈夫だとは思うけど……一応。気を、付けてね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月08日(土)22:50 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 夜の街の中を合計で10人の男女が歩いていた。 男女比1:9なので、9人の女性と1人の男、と言った方が良いのかも知れない。 そして、人気の無い空き地の手前で止まると、長身の女性が地図を広げて仲間達に説明を始めた。 「作戦は以上よ。相手は危険なエリューション、いざとなったら逃げることは忘れないで」 「はーい、頑張りまーす(ぴこぴこ)」 「じゃ、行きましょう。……きゃう!?」 「ガトリングさん、気を付けるにゃん」 「ぷはぁ、ほらほら、イブちゃんが固っ苦しいからよ。もっと肩の力抜いていきましょ?」 「エナーシアさん、いつも何もない所で転んじゃうよね。やっぱりアーク1のドジっ子の称号は伊達じゃないですよ。でもほら、そのおかげでボク達の仕事も上手く行くわけだし、気にしないで。うっかりすると噂を聞いて和尚さんがやって来ちゃうかもしれないけど、エナーシアさんが悪いわけじゃないから(たゆんたゆん)」 「そろそろ静かにした方が良い。聞こえる……崩れゆく世界と共に奏でられる、悲しい魔狼(フェンリル)の慟哭が……」 「安心して下さい。『群体筆頭』アノニマスの倫理決闘専用チェーンソーの前には、奴ら等敵ではないことを教えて差し上げましょう」 「はにゃーん(たゆんたゆん)」 転んだ仲間を助け起こすリベリスタ(?)。イブに軽くセクハラかまそうとしていた眼帯・隻腕の女性(アラサ―)は総スルーを食らって、どことなく寂しげだ。ちなみに、たゆんたゆん言っているのは、2人の少女の胸にたわわに実った、年に似合わぬ大きな果実。全年齢なのでちゃんと隠れています。全年齢なのでちゃんと隠れています。大事なことなので2回言いました。 微妙に壊れた気配が漂い始めた。ほんのちょっと前まで漂っていた伝奇的な空気は既に雲散霧消している。と言うか、警察に通報されない方がおかしなレベルである。どーしてこーなった。 ともあれ、噂の連中はこうして戦いの場へと向かっていくのだった。 ● 「俺の偽物、ねぇ。偽物が出るほど名前が売れた、と喜ぶべきなのかね」 『群体筆頭』阿野・弐升(BNE001158)は帽子を目深に被って、イヴから受け取ったフィクサードの写真を見渡す。商売柄『壊れた』連中と言うのは、いくつも見てきた。この連中も壊れてはいるわけだが、見ていて悲しくなる位別の方向に壊れている。なんにせよ、言えることはただ1つだ。 「群体筆頭は一人でよろしい。とりあえず凹ませる」 「ボク達の偽物が現れるなんて。まったく、神父様にボクが悪い子になったなんて思われたらどうしてくれるの!?」 伊達メガネの下で怒りを露わにする『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)。彼女の内心が穏やかでないのも当然のことと言える。アークで名声を得ることで、自分を救ってくれた大事な神父様に会えるかもしれない。しかし、そこでこんな連中と勘違いされた日には、死んでも死にきれない。 対して、『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)はそれ程気にしていなかった。 「なんか私達のふりして悪い事するって手口がこすいよね。まあ、真似される程にはアークも名前が売れてきて、影響力が出てきたって考えられるのかなあ」 「でも、偽者がどういう感じなのか楽しみだ。偽者が面白い感じだといいな」 「んー、私の偽者ってくらいだから、きっと超クールで大人びた魅力溢れる頭脳派って感じかなあ?」 『刹那たる護人』ラシャ・セシリア・アーノルド(BNE000576)とウェスティアは割と状況を楽しんでいる部類に入るだろう。偽物に遭遇する機会等、そうそうあるものではない。まぁ、ラシャのようにどこかで他人ごとと思っているというのもあるだろうが。 ウェスティアの言葉に対して誰も返事をしないのは、戦いの前の緊張ゆえか、スルーしたからか。まぁ、お察しくださいの世界ではある。 「まだ生きている辺り、運が良いのか小物すぎたのか。面白半分で殺しに来る奴など掃いて捨てるほど居るのにな」 ウェスティアの言う通り、1年前なら考えられない話ではある。厳かな歪夜十三使徒第七位『The Living Mystery』ジャック・ザ・リッパーの撃破、現代に目覚めた『鬼道』邁進の阻止、日本の闇部『主流7派』との激闘、いずれも国内の神秘業界にあっては目覚ましい業績である。世界レベルで見ても、決して無視出来ないだけの名声を収めてつつあるのが、現在のアークなのだ。 そして、名声があるということは、良くも悪くも人を集めるということ。今回相手にするフィクサードは、その名声の良い点しか見ていないのだろう。だが、『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)に言わせれば、それは愚か極まりない。 アークのやって来たことを考えると、恨みを持っている連中など掃いて捨てるほどいる。アークのリベリスタを倒すことで名声を得ようとするものだって少なくない。それを差し置いて、アークの持つ「神の目」に発見されたのだ。これを幸運と言わずして、何を幸運と言おうか。 「まぁ、新手の自殺志願は勝手だが、私の真似というのは気に入らない」 よくよく見ると、表情をそれ程見せないユーヌの顔に、うっすら怒りが見て取れる。それを考えると、「六道より質の悪い」――彼女の言だ――アークを敵に回すことそのものが不幸の始まりだったと言える。 と、その時物音がする。どうやら偽物がやって来たようだ。 リベリスタ達は空地へやって来た連中に目を向ける。 そして、それぞれ微妙な想いと共に、表情を変える。 なんだ、アレは。 もちろん、イヴから話は聞いていた。 だが、話に聞くのと実際に目にするのとでは、格段に威力に差があった。 想像していただきたい。自分の偽物が現れたと聞いて、向かった先に中二病病棟としか評しようの無いコスプレ集団がいたら、あなたはどうするだろうか? 殺人を犯してしまっても神様は許してくれる気がする。 フィクサードの情報収集力が本質を捉えていて、実際にアークのリベリスタ達がそんな衣装をしているだけだという可能性は否定しきれないが、この際そんなことはどうでも良い。重要なことではないのだから。 「着きましたよ、皆さ……きゃう!」 空き地にやって来たフィクサード集団の1人が何も無い所で転んだのを見て、『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)の表情が歪む。 「私はアークのリベリスタではなく自営業の一般人なのだけど……」 自分に言い聞かせるように、冷静さを保つように。 「まあその程度の情報収集力の相手なのよね。だから私の偽者が正しいイメージのクールビューティで出来る大人の女な感じじゃなくてドジっ娘が出てきたとしても……」 しかし、胸にこみ上げてくる怒りを収めることは出来ない。 「うぎぎ……やはり絶対に許せないのだわ、あのバランス芸人!」 エナーシアが怒りをぶつける相手は、某有名フィクサード。あんなアーク1のドジっ娘なんて風評をばら撒くのは、奴以外考えられないからだ。可能であれば今すぐあの眼鏡をかけて澄ましたドヤ顔に弾丸をぶち込んでやりたい。 (ちょっと何で数珠なんか持ってるのボク教会育ちでお寺育ちじゃないよ。それに背格好は確かに似てるけどその胸のスイカは何なの嫌味? 嫌味なの? それにボクはこんなお喋りじゃないよ。こういうのをマシンガントークって言うの? 大体喋るだけで胸がたゆんたゆんて何? それもう笑うしかないよ、あははって。そんな訳無い、すごくムカつくって言うかムカつく通り越して殺意が沸いてきたよ! 殺せないのが残念だよ) アンジェリカも変装用のケープの下で怒り心頭だ。 この際、エナーシアやアンジェリカの偽物について、どこまで情報収集の精度が高かったかは置いておくことにする。 (ふむ、普通の少女(アクマ)か? どこで聞き間違えたか知らないが、要らない括弧だ) ユーヌは自分の偽物を睨む。典型的中二病、と言った風情の姿をしている。 (なんか中二病っぽくて似ても似つかない姿だし。ある意味面白いが) (私の偽者は……うーん、ゴス服着てるあの子だよね……) ウェスティアは自分の偽物を観察していた。いるのは幼い雰囲気のフライエンジェ。装備もマグメイガス風なので、おそらく間違いないだろう。 (なんか私をそのまま幼くしただけの感じだね。それ以外は……なんていうか、普通に可愛いしこう面白みが……) ウェスティアの評する通り、再現度は比較的高い方だろう。しかし、自分の偽物がどんな姿で現れるか興味津々だった彼女にしてみれば物足りなさを感じる。 と、その時、とある一点を眺めて彼女の動きが止まった。 (あ……あ……あーーーーーーー!) みるみるウェスティアの表情が変わって行く。 (あほ毛が2本ある!?) そこかい。 しかし、ウェスティアはマジだ。本気と書いてマジだ。 (あほ毛は私のアイデンティティだ!) そうだったの? と言うか、それならフィクサードの情報収集能力を褒めてあげても良いような気もする。 (それを本物の私より多く持っているなんて許せない……!) さいですか。 まぁ、ヒートアップしているのはウェスティアに限った話ではない。 作戦上、まだ大人しくしているだけで、みんな内心では怒りを蓄えている。 そんな中、明らかに『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)だけは明白に状況を楽しんでいた。 「うわっ!? 京子さんの偽物、超えろいよ! 魅惑のワガママボディだよ! アシュレイさん級だよ! 水着が紐だよ!!」 キャラ崩壊を恐れずに興奮する舞姫。そこにさらなるガソリンが投下される。 「はにゃーん」 「ピンクの猫ビスハが、「はにゃーん」って言ってるよ! これはもはや、本物以上に本物かもしれないです! その者 ピンクの髪をまといて えっちっちの野に 降り立つべし。古き言い伝えはまことであった。ありがとう、ウィルモフ・ペリーシュ。ありがとう、ピンクは淫乱」 「可憐で乙女な所は私の特徴を掴んでいますが、それでも全然違います。淫乱なんかじゃありません。あと猫じゃなくてチーターですから」 自分の偽物を眺めながら、冷静にツッコミを入れる『さくらふぶき』桜田・京子(BNE003066)。ついでに言っておくと、厳かな歪夜十三使徒第一位『黒い太陽』ウィルモフ・ペリーシュだってそんなことは言っていない。 「そんなことより、アレ見て下さい。戦場ヶ原先輩の偽者、アークで広まった舞姫像そのままじゃないですか」 「え? 本当?」 するとそこにはしばらく仲間からハブられた挙句、一升瓶を抱えて眠ってしまった女性が1人。 さっきまで服で隠していた右手もだらしなく飛び出てしまっている。 「あれ、わたしの偽物だけ、なんか浮いてますね。あはは、はーい、二人組を作ってー、って言われたら、確実に一人残る系だね……。お昼ごはんは、きっと教室の片隅でひっそりだね……」 徐々に舞姫のテンションが落ち込んでいく。 「ん、そうだね。見事な再現度だね、あはは……」 かくんと首が落ちる。 「わたし、森に帰る……。暗くて湿った腐葉土の中で、だんごむしたちと静かに暮らすんだ……」 「待ちなさい」 そうして、舞姫が森のおともだちと土地改良に勤しもうとした所を、フィクサードの1人――偽イヴだ――が呼び止める。 目には警戒の色。 少なくとも、最低限エリューション能力者をそれと見抜くだけの才覚はあったらしい。 彼女にとってはとても不幸なことに。 ● 「あなた達もエリューション能力者ね。こんな所で何をしているのかしら?」 確信があるからなのだろうが、いきなりド直球の質問をぶつけてくる偽イヴ。もちろん、あえて手の内を晒すやり方だってあるだろう。しかし、リベリスタ達は確信した。こいつらはガチの素人だ。 「私達は特務機関アークのものだにゃん。逆らうとためにならないにゃん」 こたつの中から偽ラシャが詰問してくる。 「ためにならないわん!」 偽イヴに肘で突っつかれて語尾を修正する偽ラシャ。 (いや、わんでもなくて……。何だろう、無理なキャラ付けが過積載過ぎて、見ていて悲しくなってくる) マフラーの色が違っている位なら笑って済ますことも出来た。だが、ここまで行くと微妙な気分になってくる。 もっとも、そうは言いながらも他人の偽物を見て「いいぞもっとやれ」と楽しんではいるわけだが。 「もしや、貴方はアークに其の人ありと言われた群体筆頭アノニマスですか!」 そして、偽物達からの質問は華麗にスルーして、弐升はチェーンソーを持った青年に近寄ると、親しげに手を握る。 「聞いていますよ、フィクサードやアザーバイド相手の丁々発止の活躍を。いやー、俺達はここのエリューションを退治しに来たんですが、お会いできるなんて光栄です」 わざとらしい位の笑顔で相手をほめちぎる弐升。そもそも偽物達は称賛を受けたくてこんなことをやっているような連中。効果は覿面で、相好を崩す。 「中々見どころのある連中じゃない。そうね、ここで会ったのも何かの縁。お金を払ってもらえれば、協力してあげても良いわよ。もっとも、いらないって言うなら、余計な怪我を負って帰ることになっちゃったりするかもね」 偽イヴの言葉にリベリスタ達の動きが止まる。 この女は自分達の格好でこんなくだらない真似をやっていたのか。 その辺のチンピラだってやらないような安い恫喝。 リベリスタ達の怒りに点火するには十分なものだった。 「それじゃあ、お願いしちゃいましょうか。お金は三高平まで払いに行けばいいでしょうか?」 張り付いた笑顔で話しかけるエナーシア。 「いえ、後で口座を教えるからそこに……」 「あらあらあら、私達も三高平の方から来た者なんですよ。だから、大丈夫です」 今度は偽イヴ含めたフィクサード達が凍り付く番だった。 神秘界隈で多少の知識を持っていれば、アークの拠点が三高平にあることを調べるのは難しくない。そして、偽物達は本物と遭遇するのを避けるために、その程度の調査を行う程度の知恵は持っていた。 だから、分かってしまった。 「ゴミ袋は忘れたから、自発的にゴミ箱に入って貰うか。優しく放り込まれるよりマシだろう?」 ユーヌの手を凍気が覆う。 「まぁ、生ゴミかリサイクルか選ぶ権利はやろう。お仲間ぐらい見分けは付くだろう?」 「そうそう、それとここにはいない人、本物のイヴさんからの伝言です」 アンジェリカのラジカセのスイッチを入れる。そこから発せられた絶対零度の言葉は、戦闘開始の合図であり、フィクサード達への死刑宣告だった。 ● 「戦場ヶ原先輩が引き、私が押す。私が三高平へ来る前から私達は一緒に居ました。2人の信頼も連携も偽者が真似できるものではありません」 「信頼……、連携……? そうでした……。わたしはぼっちだけど、ここには仲間がいる。だから、まだ戦える!」 京子の言葉に子供のように喜ぶ舞姫。2人の足元には水着のビーストハーフ(猫)と、つけていただけの眼帯が外れた女性が転がっている。 結論から言うと偽物達の実力はどうしようもなく低かった訳で。 もし誰かが全員を巻き込むつもりで範囲攻撃を使っていれば、その時点で勝敗は決していただろう。 なので、結局なすすべも無く彼らは捕まった。速度の問題もあって、誰1人抵抗らしい抵抗が出来なかったのである。 「『イヴちゃんぺろぺろ』とか言ってる人達の中に投げ込めば反省するのかなあ。他にも仲間いるみたいだし、2度としないよう反省させないと」 さらっとろくでもないことを言うラシャ。どんな罰ゲームだ、それは。 偽ウェスティアはアホ毛を切られ、偽アンジェリカは胸を踏まれている。どんだけ怒っていたのかと。 「それじゃあ、そろそろ戻りましょうか」 仲間の言葉に頷くと、リベリスタ達はそれぞれに自分の偽物(偽イヴ含む)を引っ立てて、アーク本部へと帰還するのだった。 ● ちなみに、偽物達の仲間が今後も再犯を行ったかと言うと、そんなことも無かった。 リベリスタ達が自分の偽物を退治していた頃、偽物達の仲間は別の場所でフィクサード相手のカツアゲを行っていた。 「てめぇ……ジャック事件でその名を知られた『バランス感の男』を知らんってのか? あぁん!?」 彼らが演じていたのは、アークだけではなかった。有名なリベリスタ・フィクサードの情報を集め、それなりに幅広く対応出来るようにしていたのだ。 だが、今日の獲物の手ごたえは悪い。 「君らが恐山派の……ねぇ」 曖昧な態度で接する男を前に、偽イヴの仲間である巨漢の男は怒りを露わにして叫ぶ。 「おい、聴いとんのか、このメガネ! この仙堂様を舐めたら、痛い目見んぞ!」 恐山派フィクサードを名乗る巨漢を前に、眼鏡の青年――『バランス感覚の男』千堂・遼一(nBNE000601)――は内心ポツリと呟いた。 (バランス悪いなぁ) |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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