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☆<福利厚生>洞窟探検GO!

●いぇあ!
 南の島――昨年も訪れた人物は多いであろう、アークの福利厚生場所の一つである。
 青い海に青い空。
 正しく“南の島”であり、自然溢れるそこは遊ぶに事欠かない地と言えよう。そんな場所にて、
「ふーむ……あぁどうしてこう夏は暑いのだ……」
『ただの詐欺師』睦蔵・八雲(nBNE000203)が島を散策していた。
 手入れして無い長き髪を珍しくも後ろで一本に結んで、暑い暑いと呟きながら影場を移動している。
 水着に着替えれば良いのかもしれないが、泳ぐのは非常に面倒くさい。何せ髪が重い。切れよと思うかもしれないが、それは嫌だ。長髪が良い。
 まぁそんな駄目な思考をしながらも暑いのは嫌なのでどこか避暑出来る場は無いかと探しているのだが、
「そう簡単に見つかる訳も無く、か。まぁ最悪でも船の室内があるが……
 エアコンの効いた室内など折角の南の島に来た意味が無い」
 そう、無いのだ。木の影などあまり避暑にはならない。
 となれば困り果てる。なんだ泳ぐしかないのか。いや別に髪の事はともかくとすれば泳いでも構わないのだが……どうせならもっとこう、何か、そう。別の楽しみは無いモノか――
「……むっ?」
 その時だ。八雲の視線の先、森の中にて“ソレ”を見つけたのは。
 初めはただの違和感だった。何かおかしい。そんな程度の疑問を抱いて近寄って見れば。
「これは……ほう、面白そうではないか」
 大量の木に視界を遮られ、多くの草で自然の隠蔽が成されていた地。
 そこに存在していたのは――冷たい風が遥か奥から吹いて来る、洞窟だった。

●探検だ――!
「……と、言う訳でだな。洞窟探検に行ってみないかね?」
 お前は何を言っているんだ。
「何。心配せずとも宜しい。室長には連絡してあるし、内部に特に危険が無い事は確認済みだ。
 ちょっとした避暑程度にどうかね。一人で行くには広すぎるしツマランのだよ」
 ……避暑ね。
「うむ。あぁ、そうそう。あのような場所に大人数で行くは行動しにくいし情緒に欠ける。
 故に誘う人数は少数の予定だ……ま、気が向いたら来てくれたまえ。
 なぁに大丈夫だ。私が保証する。危険は絶対に無いとも! 安心してくれたまえハハハ!」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:茶零四  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月07日(金)22:51
 茶零四です。
 さぁ洞窟探検――行ってみませんか?
 なお当シナリオは少々特殊ですので【ピンナップについて】に目を通して頂ければと思います。

■ピンナップについて
 当シナリオは『ピンナップシナリオ(β版)』です。リプレイ返却後、その内容に沿う形で
 担当の『つとう』VCにより参加者+NPC全員の登場する大きなピンナップが作成されます。
 ピンナップの納品時期はリプレイ返却後一ヶ月程が目安になります。
 ※バストアップが無いキャラクターは描写されませんのでご注意下さい。

■洞窟
 南の島に存在していた洞窟。
 どのくらいの規模があるのかは不明ですが、グループで行動できる程度には広く、
 エリューションやアザーバイド、危険な生物の類は確認されていません。うん。
 全体的に薄暗く、ほとんど明かりが無いので八雲がライトを所持しています。うん。
 ……ただし……(下記参照)

■内部(基本、PL視点情報です)
・第一段階:
 初っ端から深めの縦穴に落ちます。
 八雲「危険は無い(キリッ」
 …………と言ってましたが、えっと、まぁ、うん。
 しかも落ちた直後には縦穴が崩落し、事実上入口からの脱出が不可能になります。
 さ・ら・に何故かAFなどの外部連絡が可能な電子機器が通じなくなります! わぁ不思議だなぁ!
 生き残る為に、出口を目指しましょう! 出口があるのかこの時点では不明ですが!

・第二段階:
 迷路の様に道が枝分かれしています。非常に気温が低く、水着などだと肌寒いかも。
 壁が様々な“節理”(岩の割れ目)で構成されており、
 実在するフィンガル洞窟の様な六角形の中群に似ている物もあります。
 理由は不明。何にせよ幻想的。でもそれに見とれてると間違いなく仲間とはぐれます。
 行き止まりも多数ありますが、しらみつぶしに探せば第三段階の場所にて合流できるでしょう。

・第三段階:
 だだっ広い空間。
 鍾乳洞の様に成っており、多くの石柱が立ち並んでいます。
 超・超・超多数の蝙蝠や蜘蛛が住んでおり、いきなり襲いかかってくる事もあるでしょう。数は暴力。
 とは言え覚醒していない唯の生物ですので、逃げ切るは容易いです。
 水着や服の内側に入られたりする事の無い様に気を付けて下さい。

・第四段階:
 あちこちから水滴が垂れている、やたら水の多い、しかし天井の低い空間。
 雨水か地下水か不明ですが非常に水が透き通っていて綺麗です。
 第五段階へと続く場所へは泳がないといけません。天井が低いので、呼吸するのも一苦労。
 ……なお、この水中。“何か”います。
 魚? エリューション? アザーバイド?
 よく分かりませんがやたら“ぬるりっ”とした何かが居るっぽいです。足とか触ってきます。
 正体不明ですが、一応、一応無害です。
 背筋ひんやり。幽霊かも。

・第五段階:
 水場を抜けた先、行き止まりがあります。
 そこにあるのはメキシコにあるようなクリスタル洞窟――の小規模版。
 多くの水晶で構成されているその場は正に絶景。
 ラストを締めくくるに相応しい場と言えるでしょう。
 さらに上を見上げれば少々高さはありますが、出口が見えます。声が誰かに届けば良いなぁ。

 そしてラストハプニング。第四段階方面から水が浸入してきます。
 どうやらどこぞから海水が大量に雪崩れ込んできているようです!
 数分と立たずにここは水没するでしょう! さぁ、皆さん生き残る為に凌ぎましょう!

■NPC
 睦蔵・八雲(nBNE000203)が同行しています。
 アロハシャツに水着サーフパンツを着て、軽装です。ライトの類などを所持しており準備は万端。
 ……の筈だったんですが崩落と同時に多くの道具を紛失します。殴っていいよ!
参加NPC
睦蔵・八雲 (nBNE000203)
 


■メイン参加者 6人■
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
デュランダル
真雁 光(BNE002532)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
デュランダル
ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)
ホーリーメイガス
ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)
ナイトクリーク
篠崎 エレン(BNE003269)


●さぁ冒険に行k(崩落)
 皆さん夏における南の島。いかがお過ごしでしょうか。
 私達は今現在涼しげな洞窟を探検しに来ておりましてその結果現在進行形で、
「ハッハッハ――落ちてるな」
「危険は無いッ(キリッ って言ったの誰だと思ってるんだコラァ――!
 危険はなかったんじゃないのか――!」
 ――地盤の緩い場所を踏み抜いて落ちていた。
 ひび割れた穴は瞬く間に広がり数多のリベリスタを呑みこんで行く。その中で緩いコメントを残す八雲に『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)がツッコミ入れながらも着地点を模索。パーカーを風に靡かせつつ、遥か下を見据えて動きを見せれば、
「っ、落ちる!?」
「え――ちょっと、なんでこんな……きゃっ!?」
『黒猫』篠崎 エレン(BNE003269)に『慈愛と背徳の女教師』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)も崩落に巻き込まれる。
 しかしそれはそれ。彼女らもリベリスタなればすぐさま反応して体を動かす。特にティアリアは身を捻って落下の軌道を変更し“最も安全であろう地点”の真上へと移動すれば、
 直後。
「っと。なんとか着地ごふぅ?!」
「もう、何なのよ一体……
 八雲。どういう事なのこれは……ってあら? 気絶してるわ?」
 先に降りた八雲を踏み潰す形で無事着地した。下敷きになった男は死んでるが、まぁ問題ないだろう。
「……全く。一体どこの何がどう安全なのかたっっぷりと問い詰めたい所だけど……
 今はそれよりも現状把握の方が大事そう、ね」
「睦蔵と一緒の時点で嫌な予感はしてたが、お約束にもこんな事になるとはな
 予想して然るべき事態だったと言えばそれまでだが……ま、起きてしまったのは仕方ないか」
 溜息をつくエレンに続いて、『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)が落ちてきた上を見据えながら言葉を紡ぐ。
 どうやら雪崩式に落ちてきた石だか土だかが途中で詰まる形で崩落は止まったようだ。生き埋めになるのは免れた様である……ものの、脱出が難しくなってしまったのは変わらない。どうしてこうなった。
「フフフ! しーかーしですね! こんな事もあろうかとボクはフル装備ですとも!
 洞窟と言えばダンジョンの基本にして基礎ッ! きっと最深部には獄炎吹き出すドラゴンとか待ちかまえてるですよ! 腕が鳴りますね――さぁ、今こそ英雄譚を刻みに行くのです!」
 そんな中、落下制御を用いて『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)が余裕と共に地に降り立った。彼女は不測の事態にも臆さず、むしろやる気だ。
 ドラゴンがいるなら討ち果たさんとする勢いである。剣も鎧も装備して本気だ。
「むっつりーにめ、こんな縦穴に落ちるとは調査不足ではないかやれやれ。
 奥に続いている穴に落ちたのは幸いだが……さてどこに続いているのやら」
 そして睦蔵を愛しょ……愛称(?)で呼ぶ『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)。
 彼はサーフパンツにシャツを羽織って軽装だ。いくらかアクセを身につけてはいるものの、それすら簡素な物で動きやすさを優先している。
「ほら。何時まで死んでいるのだむっつりーに――早く出口を探すぞ。貴様も手伝え」
「ま……待て……その呼び名は一体どこの誰から……」
「さぁ? なんでそんな風に呼ばれる様になったんだっけかなぁ?
 いやぁ まったくもって だれが そんなこと いいだしのか ふしぎだなー ははは。
 そんな事より持ち物の確認でもすっか」
 虫の様に倒れ伏す八雲に翔太が追撃仕掛ければ、彼は優希と共に行動を。
 とにもかくにも現在の状況を確認せねば動けない。何か役に立つ道具は無いかと皆で出し合ってみれば、寒さを凌げそうないくらかの服に懐中電灯。それからたいまつやロープなどの小道具が複数、と言った所だった。
「……万全とは言えず、絵に描いた様な困った状況、ってとこかしら。
 愚痴っても仕方ないし、まずは洞窟の中を探索するわよ。……外にちゃんと通じてれば良いのだけど」
「大丈夫! 大丈夫でありますよ! ダンジョン攻略は現地調達が常なるかな!
 宝箱を見つけモンスターを経験値稼ぎついでに薙ぎ倒せばきっと道は拓けるのです!」
 額に手を当て、どうしてこうなった、とばかりに困り顔のエレンだが、対に成るかのように光はハイテンション全開である。
 開始早々より訪れたハプニング――さて、七名の旅やどうなる事か。

●神秘やべぇ
 彼らは奥へと歩を進める。
 地下だと言うのに完全な暗闇では無い。どこからか薄く光が漏れ込んで来ているのだろうか――薄暗い印象だ。
 やがて、たいまつと懐中電灯でさらに照らして進めば“ソレ”が目に映る。
「うぉぉぉお! これこそ洞窟! これこそ天然ダンジョン!
 宝箱! 宝箱は何処に!」
「光ー落ち着けー。光源持ってるとは言え、走ってると転ぶぞー
 後そっちはあからさまに行き止まりな気が」
 ――幾重の形を持つ節理群である。
 光の血が騒ぐのも無理は無い。正にファンタジーの域、天然ダンジョンたる自然物と言えよう。
 現実として有名なのは六角柱状の節理を持つフィンガル洞窟と言うのがある。マグマなどの超高温が冷却された際や地殻変動が起こった際に発生するのが節理であるが、ここにあるのは稀有中の稀有。不規則に、しかし形自体は綺麗に、数多の角度を持つ節理で構成されていた。神秘凄い。
 とは言えパーカーを着こんだディートリッヒの言う様に走っては危ない。たいまつがあるとは言え薄暗いのに変わりは無くそこまで広い訳では無いので――あ、行き止まりの壁にぶつかった。
「それにしても寒いわね……AFの中に服持ってたから助かったけれど。
 ほら八雲。貴方もしっかり歩きなさい。何をぐったりしてるの」
「ま、待ちたまえティアリア! 私は先程のダメージがまだ抜けてな、というか何故追撃とばかりに腹を殴ってくる! あ、止めろくださいお願いします!」
 その少し後方。暗視を活用して暗い道をティアリアは見つめている。
 地下に潜り込んだため夏の暑さが一変。人によっては寒さを感じる程に成った為か、彼女は赤と黒の二色で構成された水着の上からバトルドレスを軽く着こんでいた。
 そして道中にて八雲を殴っては蹴り殴っては蹴り、結論:ボコボコ にしつつ彼女らは進んでいる。助けて。
「……私は感情で力を振るうのはあまり好きじゃない」
 思った時だ。呟く声はエレンで、八雲がHELPの視線を向ければ、
 腹パン来た。
 ぐふぇ! とか言う苦悶の声に確かな手応えを彼女は感じて。
「――さ、それじゃあ行くぞ。早い所出口を見つけないとな」
「は、腹パンを風の様に流した?! ていうか今のは死人に鞭打ちという奴では」
「うるさいな。安全だとか言った分は今のでチャラにするから。
 それに大丈夫だ。喋れるならまだ遠いよ――黄泉は」
 黄泉!? と驚く声が聞こえるが知らない。それより、とエレンは周囲を見渡し、
「ここの景色は不思議だな……これで半遭難じゃなければ存分に楽しめるんだけど、ね。
 本当にどうしてこうなったんだか」
 八雲が何か言いたそうだったので睨んで黙らせた。次いで視線はそのまま壁の節理へと向けつつ、煙草に火を突ければ煙が流れる――自身の後方へと、だ。
 ならば出口は前の方からだろうか。過信は出来ないが目安にはなるだろうと思考すれば。
「ふぅ、こっちは行き止まりだったか……空気の流れとか見てんだが中々先に進めないな」
「仕方あるまい。こういうのは虱潰しに捜さねば成果は出ない物だ。
 が、恐らくこの地帯の終わりも近いぞ。何やら音の響きが違う地点が聞こえるからな」
 翔太に優希だ。普段より友として信頼のある二人は共に行動し出口を模索しており、特に優希は集音装置を活用して探していた。
 その結果足音の響きが異なる点を発見している。奥からだ。恐らく迷路の様になっているこことは違い、広い空間があるのではないかと思われる。唐突のハプニングにも冷静に対処できていたのは信頼できる者が傍に居た為。
「――二人でいればどんな困難でも乗り越えて行けるさ」
「あぁ。無論だ翔太。二人共にいるならば、如何なる道をも踏破出来るだろう。
 俺は、お前を信じている」
 言った傍からだ。節理群の終着点にして出口が見つかる。
 慎重に光を照らしながら進む彼らが見たのは、数多くの石柱が並ぶ鍾乳洞地点にして、
 視界の半分を埋め尽くさんとする――蜘蛛と蝙蝠の大群だった。

●ゾワゾワくる
「……ッ、何これは! 地下にこれ程大量の洞穴生物が存在しているなんて……!」
 エレンが見据える先。節理群地帯と違いそれなりに広々とした空間だ。
 奥へと通じる道も遠目に見えれば移動も容易い。しかし眼前に広がるは蜘蛛と蝙蝠の大群。ゴキかお前らは。
 虫が苦手な物が見れば卒倒しそうな光景だが今更戻る訳にはいかない。なれば判断と行動は迅速に。
 ――駆け抜けた。
 蜘蛛のいない地を蹴り、跳ぶ様に抜けて行く。唐突の乱入者に蝙蝠達が驚き、反射的に襲いかかるも、
「八雲――今こそ貴方の出番よ、囮になりなさいッ!」
 ティアリアが八雲を突き飛ばし、
「俺が囮になろうかと思ったが、むっつりーに……お前の雄姿は忘れない!
 さぁ今の内逃げるぞ! 走れ走れ――!」
「き、君達そういう連携は戦闘中だけにしたまえ――!」
「安心しろ今が戦時だッ! それにお前なら耐えれると信じているぞ!」
「その信じているは翔太のと比べてニュアンスが違うではないか――!」
 蜘蛛の大群の真っ最中に倒れ込んだ上を翔太が踏みつけ、往く。虫が潰れた様な音が聞こえたが知らん。
 次いで優希も同じ様に踏みつけ、蝙蝠を避ける為に上着を円の形に振りまわしながら奥へと。信じるのは大事だ。うん。信頼にも種類があるが。
「ええい、こんな数相手にしてられるか。無視してさっさと移動しねぇとな……!」
 ディートリッヒだ。少数ならまだしもこんな鬱陶しい数を相手など冗談では無い。
 後ろを見ずに走り抜けばさらなる奥へと通じる道へ。しかし、そこへと至った瞬間に足が止まる。
「なんだこりゃあ……池、いや、海水でも溜まりこんでるのか? 地底湖って感じだな」
 景色が一変。生物の気配は皆無たる水場へと到着したのだ。
 水自体は透き通っており綺麗だが、何故か入るのが躊躇われる。
 リベリスタとしての勘だろうか。ここには入らぬ方が良いと、そんな気がするが。
「ぜぇあああ! くらえボクのたいまつチェインライトニング(物理)!
 あれ、皆さん何を立ち止まって?! ほら早く前へ退却を! ハリーハリー!」
 後方からおぞましい数の蜘蛛と蝙蝠が近付いて来ている。
 光がたいまつと剣を振るって応戦中であるとは言え猶予は少ない。ならば迷っている暇は無いか。
「仕方ない、不安はあるが泳いで渡るか……優希! 俺は先行するからお前は後ろを頼む!」
「心得た。何がいるか分からん、気をつけろ!」
 まず飛び込んだのは翔太だ。最後尾を優希に任せる形で、他の者も次々と水中へと潜り込んで行く。
「あ、あれ!? 今度は水中戦でありますか!?
 くッ、これでは鎧を着たままでは溺れて……格納してから行くのです!」
 服を着ていた者も邪魔になるが故に脱がざるを得ない。
 完全な軽装と成りて息継ぎも忘れずにすれば徐々に前へと進めて。
「なんとかなりそうね……天井低くて水の中じゃ蝙蝠も蜘蛛も追ってこれないし、これなら――ッ!?」
 その時だ。ティアリアは脚を“何か”を感じた。
 確かだ。水流の類では無い、確実に何かに触れられた感触である。
 で、あるとするならば――と。彼女は後ろに居た八雲を睨みつけて、
「八雲、いくら緊急事態だからってやっていい事とやってはいけない事が世の中にはあってね……とりあえずビンタでいいかしら」
「ま、待て待て! よく分からんが冤罪だ冤罪! たまには人を信じたまえ!」
 信じられなかったのでビンタした。
 日頃の行いは大事である。信頼と言うのは日々の積み重なりの結晶であればこそ。
「むむむむむ!? 何か、何かいるでありますよ!? まさかこれは俗に言うEX:精神トラップ……!?
 せ、せすじを撫でられたのです! おのれ卑劣な! 姿をあらわすです――!」
「……気の所為に決まってる。気の所為に決まってる。気の所為に……」
 被害は広がる。光は出てこい、倒してやるとばかりに息巻いて。エレンは自己暗示を掛けるかのように呟いている。人間は精神の生き物。気の所為だと思えば気の所為になるのだ!
 しかし狙われるのが女性中心なのは何故だ。神秘か。なら仕方ない。
「主、って奴なのかねぇ。よくわかんねぇが……敵対の意思は無いみたいだし――
 ま、あんまり刺激せずに行こうか」
 ゆっくりと泳ぎ進め、やがて岸へと這い上がるディートリッヒ。
 道中にて現れた“主”が何者であるかは分からない。ひょっとすると気の所為であるかもしれないし、はたまた幽霊か何かであったのかもしれない。何にせよ皆が無事で一息ついた所で、
「む、全員上がれたか……? 1、2、3、4、5、6、7……8人、と。
 よし皆いるな!」
 優希がメンバーの数を再確認した。
 八人。うむ、一人たりとも迷わずに辿りつけた様だ。
「…………ん?」
 なんか今おかしかった気がする。再確認。七人いる。うん、問題ない。
「…………気の所為だな!」
 こういう折、“幽霊”が混じっていたら人数が一人増えているのはよくあるオチである。
 主の正体なんぞや――さてはて、世の中不思議な事が多い物である。

●らめえええ! 水没らめえええ!
 クリスタル洞窟、と言うモノを知っているだろうか。
 メキシコ北部に存在する巨大結晶で埋め尽くされた洞窟であり、数トン単位のクリスタルが大量に転がっている場である。
 人が小さく見える程の大きさを持つクリスタルは希少であり、数十万年がかりでようやく作り上げられる。それの小規模版がここにも転がっており非常に綺麗なのだが――
「なんと、なんと言う事でしょうか! あれほど苦労して辿りついて来た場所が匠の手により今まさに水没せんとしてます! と言うかドラゴンは!? 最下層での十万文字に及ぶラストバトルは――!?」
 そんな事気にとめている場合ではない事態が発生していた。
 水没。光の絶叫通りの状況である。
 先の地点が天井近くまで水があったのは今なお浸水していたからか。とりあえずまずい。
「ホント、最後の最後まで景色を楽しむ余裕すらないのかしら。
 ……上から脱出出来そうね。八雲、翼の加護とか持ってないの?」
「ハハハ――無いッ!」
 ドヤ顔がうざかったのでとりあえずティアリアは八雲を殴り倒した。
 水が迫る。さてどうしたものかと真面目に思案すれば、
「優希、ロープ貸してくれ! 先に結びながら登って行く!」
「分かった。翔太、宜しく頼む!
 なるべく急いだ方が良いかもしれん……流れ込んでくる音が早い……!」
 壁を翔太が垂直登る。
 面接着持ちの彼にとってみれば壁など足場と変わらない。結集したロープを複数地点にて結び、固定すれば強度を確保。上から垂らして脱出の糸と成す。
 一方で優希は水の音を耳に捉えつつ、全員の避難誘導を受け持っていた。想像以上のペースで流れ込んでくる水流に危機を抱きながらも焦りはしない。いざとなれば競り上がってくる水そのものも利用せんとも考えて。
「チィ――睦蔵め、脱出した後はおごりで飲まして貰うからな!」
「おおそれは良い考えだな。むっつりーに、俺はコーラで良いぞ?」
「そうだな俺も優希に習ってなんか飲み物でも奢って貰おうか。勿論良いよなむっつりーに?」
「いやぁ、そのぅ、何と言いますか、当方におきましても予想外の事態だった故この度はどうか御容赦を――」
「ハハハおーい優希。むっつりーにだけ落とせー」
「了解ー」
「喜んで全員分奢らせて頂きますッ!」
 僅かな出っ張りに指の神経を集中させ、ロッククライミング形式で脱出するディートリッヒが零した言葉に皆が賛同。
 責任は取れと言う話である。安全(笑)と言ったのは誰だ! とりあえず優希は八雲を髪の毛だけ引っ掴んで脱出中だ。
「……はぁ、まぁこれも良い経験にはなった、か。洋酒飲みたい……」
 先んじて登り切ったエレンが溜息一つで煙草を取り出す。
 咥えて火を付ければ煙が上り。周囲を見渡せば――木々の先、少し離れた所に客船が目に映る。
 存外に、拠点からそう遠くは無かったようだと、そんな感想を抱けば喉が洋酒を求めて渇く。
 未だ日差しが熱い。とんだ避暑になったものだ。
 しかしまぁ何はともあれ一夏の冒険はこれにて仕舞い。
 全て海に沈み、あの光景に二度は無く。
 故にこの冒険。他者に共有できぬその仔細を知り得る者は――この場の七名のみである。
「ドラゴンは?!」
 いませんッ!

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 南の島、その一夏の探検。
 ハプニングの連続、どうでしたでしょうか?
 お疲れ様でした。でもドラゴンは流石に居ない!

 睦蔵ェ……想像以上にボコボコにされました。仕方ないね!
 ともあれ楽しんでいただけたなら幸いです。
 それでは、御参加有難うございました!