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<福利厚生>南の島、夕暮れのビーチパーティ


 八月も下旬、巷では子供達が宿題に追われる頃だが、夏はまだまだ終わらない。

 青い空。エメラルドグリーンの海。白い砂浜。
 南の島が、リベリスタ達を待っている。

 ――ああ、福利厚生って素晴らしい。


「南の島でバーベキューをしないか」
 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達に、『どうしようもない男』奥地 数史(nBNE000224)は開口一番にそう告げた。
「ここのところ、何かと慌しかったからな。
 時村室長の計らいで、南の島で皆を労おうということらしい。
 ……まあ、福利厚生ってやつだ」
 確かに、最近は色々なことがありすぎた。
 つい先日も、異世界『ラ・ル・カーナ』における戦いが一段落したばかり。
 ボトム・チャンネルでもフィクサード主流七派の動きがあちこちで見られたりと、気の休まる暇がない。
「リベリスタといっても、たまには命の洗濯も必要だろう。
 こういう時くらい楽しんだって、バチは当たらないさ」
 数史はそう言って笑うと、説明を始めた。
「とりあえず、夕方から夜にかけて、砂浜でバーベキューを楽しむ流れだな。
 沖縄とかじゃ、こういうのビーチパーティって言ったりするらしいけど」
 基本的な食材や飲み物、バーベキューに必要な道具などはアークが準備してくれている。
 もちろん、持ち込みも歓迎だ。
「わかってるとは思うけど、後片付けとかはちゃんとやろうな。
 ――あと、未成年は飲酒喫煙禁止。……俺は飲むけどね、今回」
 黒翼のフォーチュナは小声で付け加えると、顔を上げてリベリスタ達を見た。
「そんなわけで、良かったら皆でどうだ?」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:宮橋輝  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月02日(日)22:36
 宮橋輝(みやはし・ひかる)と申します。

●概要
 南の島の砂浜で、海を眺めつつバーベキューをします。
 バーベキューは夕方から開始。終わる頃には星が見られるかもしれません。

【追記】
 KSKSTの『<福利厚生>真夏の夜の夢~浜辺は僕らのパーティーホール~』と同一の会場です。
 当シナリオでは夕方~星が見え始める頃くらいまでの描写になります。
 夜をメインに楽しまれる方は『真夏の夜の夢~』へどうぞ。

 一般的な食材や飲み物(ソフトドリンクや酒類)、バーベキューに必要な道具などはアークの経費で準備されています。
 特殊な食材や酒などを希望される場合は、持ち込みということでプレイングに記載をお願いします。
 (あまりに無茶なものでなければ採用します)

●参加形式
【1:個人参加】
 初見の人も交え、大勢でバーベキューを楽しむコース。
 個人のプレイングを見て、会話や行動がかみ合う場合はリプレイ上で複数人を絡ませる可能性があります。
 他キャラクターとの絡みを希望しない方は、プレイングの最後に【×】とご記入下さい。

【2:ペアorグループ参加】
 仲間内、あるいはペアの絡みをメインにしたい方々のコース。
 ペア参加の場合、お相手の名前を『時村沙織 (nBNE000500)』という形で名前とIDをご記入ください。
 グループ参加の場合は【グループ名】をプレイング冒頭にご記入いただければ、全員の名前とIDの記載は不要です。
 (グループ全員の記載が必要です。記載が無い場合は迷子になる可能性があります)

●推奨行動
 ・浜辺でバーベキューを楽しむ
 ・飲んで食べて騒ぐ

 メインはあくまでもバーベキューですが、波打ち際で水遊びとか、酔った勢いで海にダイブとかは度が過ぎなければOKです。
 (行動を一場面に絞る方が描写は濃くなります)

【禁止行為】
 ・未成年(実年齢)の飲酒・喫煙。
 ・公序良俗に反する行動、他の方に対する迷惑行為。

●描写人数
 可能な限り全員を描写します。
 (白紙プレイングや、上記の禁止行為については描写できません)

●NPC
 奥地 数史(nBNE000224)が参加しています。
 普段は禁酒していますが、今回ばかりは飲む気満々です。意外なことにザル。
 基本は【1】で隅っこに混ざっていますが、お声掛け頂いた場合は【2】にも喜んで伺います。
 面識の有無に関わらず何らかの反応は返しますので、話し相手にでもどうぞ。
 (NPCに話しかける場合は、フルネームやIDの記載は不要です)

 ※お声掛けがない場合、原則として描写は行いません。

●備考
 ・このシナリオはイベントシナリオです。
 ・参加料金は50LPです。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
参加NPC
奥地 数史 (nBNE000224)
 


■メイン参加者 37人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
ナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
ソードミラージュ
リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
覇界闘士
鈴宮・慧架(BNE000666)
スターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
クロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
デュランダル
遠野 御龍(BNE000865)
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
覇界闘士
レイ・マクガイア(BNE001078)
ソードミラージュ
出田 与作(BNE001111)
デュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
ナイトクリーク
三輪 大和(BNE002273)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)

エリス・トワイニング(BNE002382)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
覇界闘士
李 腕鍛(BNE002775)
マグメイガス
ラヴィアン・リファール(BNE002787)
スターサジタリー
ユウ・バスタード(BNE003137)
スターサジタリー
黒須 櫂(BNE003252)
覇界闘士
クルト・ノイン(BNE003299)
クロスイージス
日野原 M 祥子(BNE003389)
ダークナイト
アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)
ダークナイト
高橋 禅次郎(BNE003527)
ホーリーメイガス
綿谷 光介(BNE003658)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
レイザータクト
波多野 のぞみ(BNE003834)
インヤンマスター
璃鋼 塔矢(BNE003926)
クリミナルスタア
藤倉 隆明(BNE003933)
ホーリーメイガス
麗月 瑠輝斗(BNE003967)
   


 エメラルドグリーンの海が、夕陽の色に染まっていく。
 波が穏やかに打ち寄せる砂浜は、肉の焼ける香ばしい匂いで満たされていた。
「ぬおおお! 私はまるで人間水力発電所だーっ!」
 網の上で焼かれる肉汁たっぷりの肉と、程よく焦げ目のついた野菜を前に、ベルカが激しく垂涎する。
 いかんいかんと口の端を拭う彼女の傍らで、義弘が良く冷えたビールをサーバーから注いだ。
「夏といえばビール! さあ、ビール飲むぞ!」
 バーベキューを肴に、大勢で楽しみながら飲む酒はまた格別だろう。
 もちろん、未成年や酒が飲めないメンバーにソフトドリンクを手渡すのは忘れない。
 義弘からビールのジョッキを受け取ったクルトが、飲み物が行き渡ったのを見て乾杯の声を上げた。
「――Ein Prosit!」
 島の熱気に火照った体に、冷たいビールが沁み渡る。
 仲間達の箸が先を争って肉に伸びるのを見て、大和が空いた場所に肉を並べた。
「たくさん食べそうな人が多いですし、どんどん焼いていきましょう」
 熱感知で焼き加減を見ながら、食べ頃になった順に振舞っていく。
 少しばかり、火の通り過ぎで固くなった肉があってもご愛嬌。人の好みはそれぞれだ。
「よーし。肉しっかり食べるぞー!」
 バーベキューが始まる前は手伝いに奔走していた疾風も、じっくり腰を据えて肉を味わう構え。
 そこに、大和が焼きたての肉を差し出した。
「これは……いい感じに焼けました」
 満足げな彼女の言葉通り、その肉は絶妙の焼き加減で。
 疾風は上機嫌で、ビールを喉に流し込んだ。
「肉にはやっぱりコレだよなあ。夏の島で飲むビールは格別だな」
 何かと慌しかった近況を思い、「色々と大変だったよねえ」などと声をかけつつバーベキューと酒を楽しむ。
 自分の焼いた肉が次々と皆の腹に収まるのを眺め、大和が微笑みを浮かべた。
 作ったものを、こうやって誰かに食べてもらえるのは嬉しい。
「飲んでばかりいないで、焼く方を手伝いに回るとしよう」
 肉の消費量に危機感をおぼえたクルトが、トングを手にする。
 既にビールのジョッキを空けていたが、彼の手つきはまったく危なげがない。レアとミディアムの中間を目指し、こまめに肉をひっくり返していく。
「ひゃっはぁー! 肉だぁ! 酒だぁ!」
 酒を豪快にかっ喰らいながら肉のみを狙い撃つ御龍を見て、杯を傾ける塔矢が「ちゃんと野菜もクエ」と彼女を嗜めた。
「野菜は嫌いだから食べないかなぁ……ほら、あたし狼だしねぇ」
「体が資本、苦手だっつってもくいやがれ」 
 事も無げに言い切る御龍に、さらに食い下がる塔矢。
「まぁ生肉食べるってわけじゃないからいいでしょ。いやぁうまいなぁー」
 どこ吹く風といった様子で、御龍はひたすら肉を咀嚼する。
 見かねたクルトが、横から助け舟を出した。
 御龍の皿に、焼いた野菜をこっそり投入。困り顔でクルトを見る彼女に、彼は大きく頷いた。
「うん、いいから野菜も食べなさい」

 最初の乾杯の後、諸々の雑用を済ませて戻った数史を、快が手招きする。
「アーク経費で仕入れた銘酒の数々をご覧に入れますよ」
 肉にも海鮮にも合う強めの日本酒は、自信を持って薦める無濾過生原酒。
 ワインも、赤を始めとして各種取り揃え。
 そして、バーベキューに欠かせないビールはサーバーで。
「おお、さすが新田酒店」
 目を見張る数史に、「好きなの飲んでよ」と快。
「奥地さんと飲むのは今日だけがチャンスなんだろ! なら、ぱーっとやろう!」
 悠里が、ビールのジョッキを手渡した。
「普段は禁酒してるらしいけど、今日ぐらいは楽しんじゃっていいよね! かんぱーい!」
 改めて乾杯し、ビールを一口。
「……やばい、旨い」
 生き返ったように息をつく数史に、串を手に肉や野菜を仕込む優希が声をかけた。
「奥地はこの度はお疲れ様であったな。
 今日は遠慮なく食い疲れを癒すといい。何が良いだろうか?」
「あ、じゃあ一本お願いしていいかな」
「了解した」
 早くも空になったジョッキにビールを注ぎ、悠里が「ラ・ル・カーナではお世話になりました」と頭を下げる。
「俺は何もしてないけどな。ノコノコ出てった挙句にドジ踏んで倒れただけで」
 頭を掻く数史の顔を、エプロン姿で働く櫂が覗き込んだ。
「ケガはもういいの? ……助けに行けなかった私が言えた義理でもないけど」
「おかげさまで生きてるよ。気にするなって」
 やり取りを眺めていた翔太が、やや呆れ顔で口を開く。
「そりゃまぁ、無茶な作戦に付き合ってもらって感謝してっけどよ……
 どうしようもねぇ奴だな、たく」
「自分でもそう思う」
「――まぁ、数史らしくて良いのかな」
 肩を竦めるフォーチュナに翔太が言葉を返した時、彼の姿を認めた壱也が手を振った。
「あ、しょーたんだ! おーい!」
 てててと駆け寄り、両手で自分の皿を差し出す。
「食べてるー? わたしにもお肉ちょーだいっ」
 翔太が取ってやった肉をぱくりと平らげ、壱也は愛嬌のある笑みを浮かべた。
「えへへ、おいしいね! お肉!!」
 そんな微笑ましい様子を横目に、慧架が用意された肉類に視線を向ける。
「部位ってどれだけ種類あるんでしょうかね?」
 良い肉が揃っているのだから、下味やタレにもしっかり拘りたい。
「皆、沢山食べるかな? きっと一杯食べるでしょうし焼いちゃいましょう」
 そう言ってトングを手にする慧架に、ひたすら肉を焼き続けるフツが「あ、オレは食べてるんで大丈夫ッスヨ」と仏の笑みで答えた。
 言葉とは裏腹に、彼はここまで一切れも肉を口にしていない。
 何とも徳の高い行いに見えるが、実のところ『最初からハイペースで食べるやつは、他の人からの不興を買いかねん』という思惑あってのことである。
(肉を焼くことで憎まれずに済む。オレは憎侶じゃなくて僧侶だからな!)
 でも、これはこれで立派かもしれない。
 フツの働きぶりに圧倒されていた慧架だったが、ふと我に返ると、
「私も食べないと無くなっちゃいますね、いけないいけない」
 と箸を手に取った。

「久々のバーベキュー☆ お肉美味しい、玉ねぎあまーい☆」
 良く焼けた具材に舌鼓を打つ終に、夏栖斗が答える。
「コーンとか野菜も甘くてオイシイんだぜ。良い肉は塩かけるだけでも十分なほどおいしいしな」
 ピーマンやニンニクをホイルで包みながら、彼は櫂に声をかけた。
「おーい、櫂も久しぶりだな、しっかり食ってる?」
 自分の飲食を後回しに皆の世話をする彼女に、焼いた肉や野菜を手渡す。
 その時、竜一の声が響いた。
「数史のおっちゃんも肉食え! 肉! ただでさえ、くたびれた感じなんだから!」
「お前さん酷いこと言うね、否定できんけど」
 思わず情けない顔をする数史の肩を、ばしばしと叩きつつ。
「元気出してこうぜ! でなきゃ、俺が肉という肉を食い尽くしてやるぜ!
 一人焼肉の猛者と呼ばれたこの俺が!」
 言うが早いが、肉を猛スピードで食い始める竜一。
「――うお、僕まだ肉くってねっつの!
 おい! りゅーちゃん、肉ばっかくうなよ」
 慌てた夏栖斗が抗議の声を上げると同時に、悠里が竜一の皿に野菜を放り込んだ。
「はいはい。バランスよく食べようね」
 若いっていいなぁと酒杯を傾ける数史に、ベルカが敬礼する。
「同志奥地、この様な素晴らしい集まりに感謝します!」
 主催者の一人である黒髪黒翼のフォーチュナは、その言葉に「楽しんでもらえれば何より」と笑った。
 のぞみが、ベルカの前で甲斐甲斐しく肉や野菜を焼いていく。
 彼女は成人しているが、酒は一滴も口にしていなかった。
(私も、まだまだここだと新参者ですので)
 このバーベキューパーティが、色々な人と触れ合うコミュニケーションの一環になればと思う。
「ああ、こっちの肉もあっちの野菜も捨て難い……」
 箸を手に視線を迷わせるベルカに、のぞみが「早くしないと焦げちゃいますよ」と笑いかける。
「ええい、両方とも頂きだーっ!」
 意を決したベルカは、思い切って肉と野菜を一度に頬張り――
「あっづうううう!!」
 ――当然のように舌を火傷した。
 口から煙を吐く勢いでダウンするベルカに、祥子が横からウーロン茶のグラスを差し出す。
「大丈夫? はい、これ飲んで」
 彼女の前に置かれた網の上には、醤油を塗ったとうもろこしが所狭しと並んでいた。
 そろそろ食べ頃かと一本を取り上げ、熱々のうちにかぶりつく。
「焼きトウモロコシ下さい!!」
 香ばしい匂いを嗅ぎつけてやってきた終に、祥子は「火傷に気をつけてね」と焼きもろこしを手渡した。

「じゅ、順調にお肉が減っていくのです……」
 皆の食欲を目の当たりにして、光介が感嘆の声を上げる。
 しかし、バーベキューは決して肉ばかりが華ではない。魚介類だって、立派に主役たりえるのだ。
「アサリのバター焼きは……フライパンで作りたいところですね……」
 久し振りのバーベキューに、胸を躍らせながら。
 サザエを焼く網の横に鉄板を置いたシエルが、首を小さく傾げて調理の手順を思案する。
 傍らでは、光介が車エビの香味焼きに挑戦していた。
 背に切れ込みを入れてワタを除いた車エビを串に刺し、塩をふって網の上へ。
 数分経ったら裏返して、みじん切りにしたローズマリーとパセリ、オリーブ油に黒胡椒を散らし――。
「焼けました! おつまみに車エビはいかがですか?」
 光介の声に、リベリスタ達から歓声が上がる。
「ごく簡単な一品ですが、ぜひ召し上がってくださいませ」
 時を同じくして、シエルの料理も完成した。
「サザエの壺焼きは……仕上げのお醤油を数滴たらす……この瞬間が何とも」
 至福の表情を浮かべつつ、彼女はサザエの壷焼きやアサリのバター焼き、アワビのステーキを皆に振舞っていく。
 もちろん、自分と恋人の分を残しておくのも忘れない。
「アワビ様、踊り焼きにして……ごめんなさい……ごめんなさい……」
 美味しくいただいてしまう前に、シエルはアワビにしっかりと両手を合わせた。


 大勢で賑わう者達がいれば、少人数ならではの楽しみ方をする者達もいるわけで。

「はいぱすぺしゃるばーびQハンター、ミーノさんじょうっ!」
 やる気満々のミーノの隣で、リュミエールは人々でごった返す砂浜を見渡す。
「大人数モワルクハナイダロウガ、争奪戦ッテメンドウナンダヨナ」
「あっ、あそこのはかんぺきにやけてるのっ!!」
 食べ頃のエリアを目ざとく発見したミーノが、彼女の腕を強く引いた。
「ばーびQ、ミーノにもちょーだい?」
 目を輝かせるミーノに、リュミエールが苦笑する。
「よそ様のご迷惑になってはイケナイって習わなかったのカ?」
 そう言いつつ、ミーノの頬に飛んだタレを拭ってやったり、野菜も食べろと嗜めたり。
 片時も目が離せないと言えばそれまでだが――。

「あっちはやきそばがかんせい!!」
「紅しょうがと青海苔抜きカ……」
 とか、
「そっちはやきもろこしがいいやけぐあいなの~っ」
「ほら、醤油バターダ」
 ――などなど。
 なかなかどうして、甲斐甲斐しい世話ぶりである。

 やがて、二人は焼きおにぎりが並んだ網の前で立ち止まり。
「……ウマソウダナ」
 雛に餌を与える親鳥の如く、ミーノの口におにぎりを運んでやるリュミエール。
「ほふ~たくさんおすそわけしてもらったの~」
 ミーノはすっかりお腹いっぱいになったらしく、満たされた表情で可愛い欠伸を一つ。
 砂浜に並んで腰掛けると、彼女はリュミエールに寄りかかって小さな寝息を立て始めた。


「さあいくぞ、うさぎ!」
「よーし、じゃあ食べましょうか風斗さん」
 肉を焼き始めるうさぎの前で、気合を込めて箸を取る風斗。この時のために、朝食から抜いてきたのだ。
「抑えていた獣性を、今、解き放つ時!!」
 その台詞、酷い誤解招きそうですが良いんですか風斗さんや。

「うまい……うまい……」
 さすがアーク、食い溜めに値する良い肉だ。
 感涙する風斗に、うさぎが「夏こそ肉ですね!」と答える。
「あ、でもちゃんと野菜も食べなきゃ駄目ですからね?」
 肉ばかり食べる彼に、うさぎは有無を言わさず野菜を押し付けた。
「本当にうまいものを食べた時って、どうして涙が溢れてくるんだろうなあ……」
 しみじみと呟く風斗を、じっと眺めて。
「……私には正直、貴方の事が良く分かりません」
 消え入りそうな声で、うさぎは独り言のような呟きを漏らす。
「お人よしなのは良く分かります。凄く、良く分かります。
 でも……それが何故なのかが分かりません。
 だから時々、不安には、なるんですよ……?」
 風斗が、ふと顔を上げた。
「ん? うさぎ、何か言ったか?」
「……何も言ってませんよ?」
 怪訝な表情になりかけた時、彼はうさぎの皿が空なのに気付く。
「ほら、お前も食え! これなんかうまいぞ!」
 食べ頃の肉を、風斗はうさぎの皿に移してやった。
「……」
 再度の呟きは、やはり彼の耳に届かない。
 どうして、どうして――この男は、こんなにも優しいのだろう。


 皿に、二人分のバーベキューを載せて。
 海と夕陽を眺めながら、ささやかな乾杯。
「こうやって外で頂くのも楽しいですね。海に沈む夕陽もすごく綺麗です」
 普段あまり酒を飲まないためか、それとも夕陽に照らされたためか。リリの白い肌は、ほのかに紅い。
「夕陽よりリリ殿の方が綺麗でござるよ……とか言えたらかっこいいんでござろうが、
 キャラではないでござるな」
 にははは、といつもの笑みで、腕鍛は「どっちも綺麗でござるよ」と言葉を続ける。
 バーベキューを冷ましていたリリが、腕鍛にそっと串を差し出した。
「あの……あーん、して下さい……」
 躊躇いながらも、酒に背中を押されて。先日の、流しそうめんのお返し。
 腕鍛も、照れながら「あーん」と口を開ける。
 肉を頬張る彼を見て、リリが囁いた。
「夏の短い間に、貴方との思い出が沢山出来ました。一つ一つが、とても大切な宝物です」
 楽しい夏が終わってしまうのが、少し寂しいけれど――
 僅かに目を伏せたリリの顔を、腕鍛が覗き込む。
「なら、秋も冬も春も同じように短いなと感じてもらえるように、
 色んな所に行って、色んな思い出を作ろうでござる。
 そうすれば、あっという間に夏に戻ってこれるでござるよ」
 リリは視線を合わせると、迷わず頷いた。
「貴方と一緒なら、夏が終わっても寂しくありません」
 秋も冬も春も、来年の夏も――ずっと、同じ季節を共に。
 二人が迎える初めての秋は、もうすぐ。


 レイと与作は喧騒から離れ、夕陽が沈みゆく海を前に並んで座っていた。
「もう二十を過ぎたのに未だに独り身……
 一緒に酒を飲む同僚が居るだけましなのでしょうかね」
 そう言って缶ビールを傾けるレイの表情は、既に正体を無くしかけている。
「焦っても良くないとは思うけどねえ」
 対する与作は、ウーロン茶を片手に相槌を打っていた。
 介抱が必要になった時のことを考え、今回は素面である。傍らには、万一のためのエチケット袋。

「――ねえ、出田さん?」
 レイは体を傾け、育ての親のような年上の同僚に寄りかかる。
「本当は、彼氏でも連れてきて安心させたいんですが。
 ……今年も、難しいみたいです。ごめんなさい」
 別に謝る必要は無いよ、と、与作は彼女の顔を見た。
「俺としてはね、君が君らしくあってくれれば……
 ……あと、幸せで居てくれれば、ね。それで充分だよ。わがままかな?」
 穏やかな笑みを向けられ、レイは海鳥が鳴く空に視線を移す。
 本来ここに居たはずの、『もう一人の同僚』の姿が脳裏に浮かんだ。
「彼は今頃、どうしているのでしょうか」
 戻らぬ同僚を想い、与作も空を見上げる。
 彼もまた、きっと――自分と同じように、彼女の幸福を願っている筈だ。
 それをレイに告げた後、与作は紅に染まる空を眺めて目を細める。
「……ああ、綺麗な空だ。夏の夕暮れ……か」
 夏の終わりを告げる空はどこまでも高く、そして、遠い。


 初めての南の島。初めてのバーベキュー。
 知らない人ばかりの環境に緊張しつつも、瑠輝斗は肉や野菜をもくもくと口に運ぶ。
 ふと顔を上げれば、視線の先には黒髪黒翼のフォーチュナの姿。
 勇気を振り絞って立ち上がり、近くに置いてあった酒瓶を手に歩み寄る。
「こ、こんばんは……」
 酒瓶を抱えた瑠輝斗に、「子供が飲んだらダメだぞ」と数史。
「わ、私じゃなくて……その……奥地さんに……」
 しょぼんと俯く彼女を見て、数史は途端に慌てた。
「……え、あ、その、勘違いしてごめん……!」
 十二歳女子にひたすら平謝りの三十二歳男(独身)。
「えと……色々と、お疲れ様……でした」
 改めて差し出された瑠輝斗の酒を、数史は恭しく受け取り。
「ありがとう」
 笑って礼を言う彼を前に、瑠輝斗は自分の黒翼で恥らうように顔を覆った。

「数史さん食べてる、飲んでるー?」
 グラスを傾ける数史のもとに、終とラヴィアン、ユウが訪れる。
「よう、奥地のおっさん。怪我は大丈夫か?」
 ラヴィアンの言葉に、数史は軽く手を動かして答えた。
「平気平気。というか俺より皆のが重傷だったろ」
「オレ達は慣れてるけど、フォーチュナさんは普段あんな大怪我しないから……」
「気にするなって。俺こそ、皆の足引っ張って悪い。
 ――守ってくれて、ありがとな」
 申し訳なさそうな終に、笑って礼を返す数史。
「色々ありましたけど、素直に喜んどきましょう。
 どうしようもない人がホントにどうしようもなくなっちゃったら、つまらないですし」
 ユウが、愛嬌のある笑みを浮かべて数史を見た。
「私、いつかその無精ひげを剃り倒してやりたいと思ってるんですから」
「微妙に俺のヒゲを敵視してませんか貴女」
 思わず顎を撫でる数史に、ラヴィアンがジュースの入ったグラスを掲げる。
「ま、お互い生きてて何よりだぜ。無事生還したことに乾杯!」
 終とユウも加わり、乾杯の音が響いた。
「さあ、ぐぐっと飲んで飲んで☆」
 注がれた酒を一息に飲み干す数史を見て、終が手を叩く。
「きゃー数史さん良い飲みっぷり。お酌のし甲斐がある~」
「禁酒キャラだった割にイケるクチなんですねー」
 リバウンドが怖くて肉が食えるか、とばかり口をもぐもぐ動かしていたユウが、傍らの酒瓶を手に取った。
「一献いかがですか? 美人の酌ならお代わり上等ですよねー♪」
 いただきます、とグラスを差し出す数史に、「これは素面のうちに」とユウが言う。
「ありがとうございました。貴方の『目』のおかげです」
 その言葉に、彼も改まった様子で答えた。
「どういたしまして。少しでも役に立てたのなら幸いだ」
 バーベキューをつつきながらジュースを飲んでいたラヴィアンが、ふと口を開く。
「あの戦いで思ったんだけどさ、奥地のおっさんも何か武術とか覚えたりしねーの?
 未来予知が使えれば結構いけると思うんだよ」
「圧倒的に力が足りないからなあ。役に立つかどうか」
 首を捻る数史に、彼女は塔の魔女や斧装備のフォーチュナの名前を挙げ。
「俺も一緒に修行してやるから。目指せアーク最強と行こうぜ!」
 そう言ってハッパをかけると、ラヴィアンは「そろそろ俺は別の場所に行くわ」と立ち上がった。
「前の戦い、サポートありがとな。これからも頼りにしてるぜ!」
 手を大きく振って走り去る彼女に、「こちらこそだ」と手を振り返す数史。
 終が、「オレ達もっと強くなるよ☆」と笑った。


 肉、肉、肉。とにかく肉。何はなくとも肉である。
「うひょおお! カルビ、ロースにハラミにトモサンカク!
 ミスジにヘレにイチボにランプにカイノミ!」
 リミッターを解除したかのように肉を喰らい続ける竜一の隣で、禅次郎が夢中になって肉を口に運んでいた。
「うん、うまい肉だ。いかにも肉って肉だ」
 そう言って、彼は肉を食う。ただ、ひたすらに。
 頭の中が『肉』の文字で埋め尽くされ、今ここで誰かに掴みかかられようものならアームロックを極める勢いである。
「バーベキューはね、誰にも邪魔されず――」
「おいやめろそれ以上言うな」
 どこかで聞いたような台詞を口にする禅次郎の皿に、竜一が山盛りの野菜を投入した。

 予想通りというか、肉の奪い合いになりつつある様子を見て。
 アルトリアが悟ったように声を上げる。
「所詮この世は弱肉強食、待っていても与えられることは少ない。
 自ら勝ち取ったものこそ強者の権利がある!」
 この大所帯では、ただ待っていても良い食材は回ってくるまい。
 ならば、自ら取りに行くまでだ。
 しっかり焼けた肉を選んで皿に取り、冷めないうちに腹に収めていく。
 その細身の体のどこに入っているのか、と疑問に思うほどの良い食べっぷりである。
「ああ、余った食材は全部頂くから遠慮なく焼いてくれて構わないぞ」
 そんなアルトリアの言葉を聞き、これまで焼くことに専念していたフツが顔を上げた。
 しばらく経てば、スタートから飛ばしていた連中がペースを落とすものと考えていたが……。
 息切れするのを待っていたら、もしかすると食いっぱぐれるのではあるまいか。
 危機感をおぼえた彼は、ここで初めて自分の肉を焼き始めた。
(……慌てるなよ。かわいいオレのストマックちゃん。
 今すぐ肉汁たっぷりのを喰らわせてやるからな)
 空腹を訴える胃を宥めつつ、慎重に丁寧に肉を焼き――そして、ついに口に運ぶ。
 待ちに待った肉は、まさに極楽の味だった。

「やっぱ、みんなでわいわい食べるバーベキューって最高に美味い」
 満面の笑みを向ける夏栖斗に、悠里がビールのジョッキを持ち上げる。
「暑い夏にバーベキューを汗かきながら食べて、喉が渇いた時に飲むビールの美味さと来たら!」
 快が、悠里やクルト、義弘らに次々と酒を注いで回った。
「――悠里もクルトさんも、祭さんも飲め! 食え!」
 そんな快の背中に、夏栖斗が「相棒! まだ呑んでるん?」と声をかける。
「この福利厚生でお前休肝日とかあったん?」
「休肝日? 休暇が終わったらだ!」
 アークの守護神は、清々しいまでの笑顔で迷わず言い放った。
「今日のお薦めはなんだ!?」
 ちょうど酒が切れたらしい隆明が、新田酒店を頼ってやって来る。
 見繕ってもらった一本を手に、彼は再び酒盛り組に飛び込んでいった。
「飲んでるかオイィイ!!」
 酔っ払い全開で絡んでいく隆明の手から、竜一が酒瓶をひったくる。
「酒飲むやつはどんどん飲め飲め! 俺が注いでやる!」
 ちなみに竜一は未成年なのでウーロン茶である。脂肪分とか分解するアレだ。
 これで先の暴食がチャラになるとはちょっと考え難いが、健康に気を遣うのは良いことである。
「タダ酒! タダ飯! いいねバーベキュー!」
 上機嫌で隆明が叫んだ時、そこに混ざった壱也が両手を上げた。
「酒! 酒だああああああああああああ……」
 嘘です。まだ飲めません。
「未成年はダメだぞ!」
「来年になったら飲めるもん……! それまでがまーん!」
 ジュースのグラスを片手に、手当たり次第に乾杯。
「いえーい!! 飲んでるー?」
 酔っ払いに負けないテンションだが、間違いなく素面である。
 夜には大好きな先輩と合流する予定なので、晩御飯を食べる余裕も残しておかないといけない。
 これが終われば、明日からダイエットを考えないといけないかもしれないが……
 今は、楽しい時間をもう少し満喫しよう。

 酔っ払い達に混ざり、仲間の背を叩きながら談笑していた祥子は、少し落ち着いた頃に立ち上がり、数史のもとに向かった。
「よ、お疲れ」
「お疲れさまです」
 酒を注ぎつつ、彼女はぽつりと口を開く。
「あたしは、結局異世界には行かなかったから」
 フォーチュナの身で戦場に赴き、負傷した数史に対しては、申し訳ないような、少し羨ましいような――複雑な思いがあった。
 祥子に礼を言った後、彼は言葉を返す。
「ボトム・チャンネルに残るのも、大事な役目だよ」
 フォーチュナだって全員が行ったわけじゃないしな、と数史。
 夜の部に備えて余力を残しつつ、ビール片手に肉を食べていた悠里が「そういえば」と口を開いた。
「なんで禁酒してるの? 成人病か何かなの?」
 ――地味に容赦がない。
「家計の事情ってやつだよ。飲み出すと止まらないから」
 苦笑して答える数史に、快が言った。
「今は今日だけの特別だけどさ。
 いつか、普通に仕事帰りに奥地さんと飲みにいけるような、そんな日が来るといいな」
「そうだな。……来年には何とかなるだろ、たぶん」
 グラスを傾けつつ、沈む夕陽を遠く眺める。
 彼の傍らに、櫂がストローを挿したジュースのグラスと皿を置いた。
 子供用の皿に、柔らかめに焼かれた肉とソーセージ、野菜が並んでいる。
 思わず櫂の顔を見る数史に、彼女は「これはあの子の分」と言った。
「お盆は過ぎちゃったし、ガラでもないけど。家族サービスしてあげれば?」
 彼の中に生きる、最愛の『家族』に――。
「そうさせてもらうよ。……ありがとう」
 数史は櫂に礼を述べると、僅かに表情を歪めて視線を伏せた。


 バーベキューに賑わう砂浜を、翔太と優希は連れ立って歩く。
 折角来たのだ、自分達の焼いたものばかりではなく、皆の串も味わいたい。
「なぁ、あっちのも美味そうじゃね?」
 翔太が振り返ると、ジュースとお茶の缶を手にした優希が難しい顔で考え込んでいた。
「……数年後にはどうなっているだろうか」
 優希の呟きに、翔太は「んー……数年後か」と首を傾げる。
「きっと、あまり変わってないと思うよ」
 人は、もしかしたら入れ替わっているかもしれないけれど――
 根底にあるものは、決して変わりはしない。
「そのためには、優希の力は今後も必要だ」

 親友の言葉を聞き、優希も決意を新たにする。
 思い描く理想の未来のために、この平和を維持していこう。
 ――翔太となら、必ずやれる筈だ。

「これからも宜しく頼むぞ」
 手渡されたジュースの缶を手に、「こちらこそだ」と翔太が答える。
 優希が、お茶の缶を開けながら親友を見た。
「数年後には、酒でも酌み交わしながらバーベキューを楽しもう」
「ふ、そうだな」
 夕陽をバックに、乾杯の音が響く。
 数年後も――再び、この地で。


 陽がすっかり沈み、星が瞬き始める頃。
 リベリスタ達は、続く夜の部に備えていったん片付けを始めた。
 このままバーベキューを楽しむメンバーも多いが、だからこそ場は整えておきたい。
「立つ鳥後を濁さずって言うしね」
 手際良く片付けを終えた疾風は、そう言って軽く伸びをした。

 シエルが、優しい微笑を湛えて空を見上げる。
 同行した皆に、この島と砂浜に、命を捧げてくれた食べ物たちに――。
 溢れる感謝の気持ちが、彼女の胸中を満たしていた。


 数々の明かりが灯った砂浜の熱気は、当分の間冷めそうにない。
 まだまだ、夜は始まったばかりだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
数史「皆のおかげで久し振りに旨い酒が飲めたよ、ありがとな。
    ……とはいえ、調子に乗って少しばかり飲み過ぎたか。
    あとはモリゾーにお願いして、俺は少し酔い醒ましてくるわ。
    引き続き参加の皆は楽しんでくれな」

 バーベキューパーティ、夕方の部担当でした。
 多くの方から数史へのお声掛けを頂いてびっくりしつつ。
 構って頂いたり、お気遣い頂いたり、本当にありがとうございます。

 この夕暮れの一時を、楽しく過ごしていただけたのであれば幸いです。
 ご参加いただいた皆様と、ご協力いただいたKSKSTには心より感謝を。
 ありがとうございました!