● 『後ろ髪を引かれる』そんな言葉がある。 未練が残る、その場を離れ難い心残りがある、そんな気持ちを表した言葉だ。 今、一人の女性も其の気持ちを味わっていた。 彼氏との逢瀬だったのか、気の合う仲間達との飲み会の帰りか、それとも最近流行のインターネットでのオフ会とやらが楽しかったのかも知れない。 まあ何でも良いのだ。其の女性は所詮ただの脇役に過ぎない。事情などどうでも良い。 奇抜な容姿をしている訳でも、特別な力があるわけでも無い、ただの物語の序章の犠牲者。 一つだけ特徴があるとすれば、其の女性は美しく長い髪の持ち主だった。 女性は休日の夜道を歩く。楽しかった今日一日を反芻しながら、再び明日からやってくる鬱陶しい現実に目をそむけ、そう、まさに後ろ髪を惹かれる思いで帰路を行く。 でもだからって、まさかこんな事になるなんて。 「きゃっ!?」 不意に、髪を後ろに引かれて女性の首が反る。グキリと、嫌な音を立てる首。突然の事に小さな悲鳴を上げて仰け反る彼女。 正確には後ろ髪を引かれたのではなく、後ろ髪が固定された状態に気付かず前に進んでしまっただけなのだが、突然の衝撃にパニックに陥った彼女がそんな事に思い至ろう筈も無い。 それでも何とか首を捻り、横目で背後を確認した女性の視界に飛び込んで来たのは、彼女の髪を口にくわえ、もしょりもしょりと食む男の姿。 ただ先端を噛んで弄んでいるのではない。彼女の髪の長さから考えれば、もう10cm程は男の喉の奥へと消えている。 恐怖に悲鳴を上げようとした女性の口を、男の手が覆う。後ろから羽交い絞めにされ、身動きを封じられた彼女。だが悲鳴を封じただけでそれ以上の危害を、男は女性に加えない。 身体をまさぐって楽しむ訳でもなく、首を絞めて殺す訳でもなく、ただ羽交い絞めにしたまま、男は女性の後ろ髪をもしゃり、もしゃりと喰い続ける。 ……やがて、後には理性を失い放心したままの、すっかり後頭部が禿げ上がってしまった女性が、夜道に放置されていた。無論、後頭部の地肌も丹念に嘗め回された後に。 とはいえ、人間は髪の毛を食える様には出来ていない。無理に異物を詰め込んだ身体は拒絶反応を示し、えづきを覚える。 随分離れた別の路上で、男は一人道路に向かって口を大きく開ける。 うぇぇ、と口から毛玉が吐き出されていく。 まるでまるでまるで無意味な、凶行の後に。食事ではなく、ただの趣味の捕食を終えて、そして吐く。 あははははは。食べるのは楽しい。怯える様が最高だ。綺麗な髪を台無しにしたい。食えたもんじゃないが、美味しい。吐くのは気持ち良い。AHA。逝きそうだ。 ● 「さて諸君。諸君等は後ろ髪を引かれるような思いをした事があるかね? 私には良くある。私はどうにも未練がましい」 集まったリベリスタ達を前に、『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)が口を開く。 「けれど私は其れで良いと思うのだよ。未練を残せる程、其処には何かが在ったのなら。未練がましい人間は、未練を感じる程に、何かへ強く執着できる人間なのだ」 益体も無い言葉を連ねながら、逆貫は纏めた資料をリベリスタ達に差し出す。 「だがな、無論後ろ髪を引かれるとの言葉は比喩表現であり実現されても誰も得はせん。其の資料を読んで欲しい。今回の任務は其の資料に書かれた気狂い、<黄泉ヶ辻>のフィクサード退治だ」 日本の暗部であるフィクサード主流七派が一つ、<黄泉ヶ辻>。閉鎖性の強い其の組織のメンバーはどれも此れも癖が強く、気狂い揃いだ。 時には過激派<裏野部>以上に凶暴で、策略の<恐山>以上に意表を突く。 「今回のフィクサードは、夜道を歩く髪の長い女性の後ろ髪を喰らう。其処に全くの意味は無い。なにを考えてそんな事をするのかは知らないが、非常に迷惑な手合いだ。襲った相手の命を奪うのは主義に反するらしいが、奴が何がしたいのかはさっぱり判らん」 フィクサード:『ぼうぼう』某・某(なにがし・なにがし) 黄泉ヶ辻に所属するフィクサード。毛を操る毛むくじゃらの小男で、女性の後ろ髪を食べるのが趣味。 全身の体毛を操るアーティファクトと、食った他人の毛に思念を混ぜてE・フォースを作り出すアーティファクトを所持。 攻撃手段は全身の体毛を硬質化してフルに伸ばす事で物遠全失血の攻撃や、伸びた髪を首に巻きつけ物遠複、麻痺非殺の攻撃を行う。その他にもいくつかの攻撃バリエーションがあるらしいが詳細は不明。 またブラジリアン柔術に似た体術の心得もあるらしく、一対一での近接戦闘は割と危険。彼の近接攻撃を受けると、ダメージは無いが髪を食われてE・フォースの材料にされる。(喰うのに1ターン、吐き出して生み出すのに1ターン) ぼうぼの(初期段階では×3) 某の吐き出した毛玉で作られたE・フォース。30cmほどの大きさ。移動方法は浮遊。 衝撃を吸収し、物理攻撃に対して高い防御性能を発揮する。 主に忠実でよく庇う。自分のHPを削っての毛針攻撃を行う事もある。 「フィクサードは休日夜の時間帯に、駅からの道に現れる。囮を使って誘き寄せても良いし、彼が狙いそうな対象を先に発見して尾行しても良い。其の辺りの手段は諸君に任せるが、一般人に出来るだけ被害が出ないようにしてもらいたい」 言葉を一度切った逆貫は、リベリスタ達一人一人をじっと見詰め溜息を吐く。 「私は、そうだな。私は、諸君等の髪の無事を祈ろう。それではよろしく頼む」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:らると | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月03日(月)22:44 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 「お! ハゲおるやんけ! はげちからーせーはげーちらかーせー」 「はげちらかすうおおおおむしるううう」 「ハゲ!!!!!!! シャンプーしてゴッソリぬけおちろ!!! あなたの髪の毛ありますか~うおおおおおあってもなくても毟るううううううロッテです」 お前等虐めイクナイ。 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)の頭に草(w←こんなの)を生やすと言わんばかりに、煽り、哂い、笑うのはA『Gloria』霧島 俊介(BNE000082)、B『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)、C『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)の3人だ。マジ酷い。 「ころす。ぶっころす」 竜一が殺意を撒き散らす度に、3人が笑う。 「まっすぐいってぶっころす。右ストレートでぶっころす。ぜったいにころす」 無表情で呟く竜一にも、俊介や壱也、それにロッテが全く怯まないのは気心知れた仲間だからであろうが、任務説明を終えたばかりの逆貫はドンビキである。 とは言え、竜一が怒りを向けるのは3人に対してだけではない。 今回の敵、『ぼうぼう』某・某は竜一にとって許されざる相手なのだ。竜一の身体を嘗て無い怒りが駆け巡る。 許されない暴挙だ。世界が許しても、運命が愛しても、竜一はこのような輩を決して許さない。 「この罪深き存在に、裁きの鉄槌を! この世の全ての、髪を大事にしない者たちへ俺は立ち向かう。それがアークのリベリスタだ!」 一緒にすんな。 要するに竜一君は、将来髪が心配らしい。風呂で頭を洗う時、ふと手についた泡を見ると髪が沢山混じっていたのか、排水溝の掃除に絶望したのか、何が彼の心を荒ませるのかは定かでないが、竜一の不安と恐怖は怒りの炎に転化され天をも焦がす。 「皆、誤解してるよ。お兄ちゃんふさふさだよ?」 場の空気に抗議したのは、竜一の妹の『猟奇的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)。 ちらりと恋のライバル(笑)である『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)に視線を向け、竜一を庇うように虎美は一歩進み出る。 「ちゃんとお風呂で確認してるy」 お黙り。 果たしてふさふさなのは上か下かどっちなのか。 如何でも良いけど、早く任務に行っておくれ。 ● さて、やって来ました夜の町。 日は沈み、月明かりはあれど既に町は闇の支配下だ。 駅から家路を往く人々。疲れと闇に対する恐れに身を縮め、只管に早足で歩いていく獲物達。 けれども黄泉ヶ辻のフィクサード、某・某は悩んでいた。 無防備に歩く獲物に、某は内心溜息を吐く。 何故、自分はこんなのを襲わないといけないんだろう。 彼が視線を注ぐ獲物は、ステルスでE・能力者である事を隠して一般人に成りすました竜一。 己の髪は大事であれど、虎美やユーヌが襲われるよりはずっとマシであると自らの髪を餌に某を誘い出すべく哀しき囮役を担ったのだ。 けれど、竜一は一般男性に比べてもやや背が高く、尚且つ精悍な体形である。一応ウィッグをつけて髪を長く見せ、モンローウォークで色気を演出しているのだが……、寧ろすげぇ気持ち悪い。完全に女装をしているわけで無いのが救いだが、……本当に何でこんなの襲わないといけないんだ? 運命の悪戯か、他に獲物となりそうな一般人は居ない。 某の趣味は女性の後ろ髪を食べる事で、こんな妙なのを襲う趣味は無いのだから、本来ならスルーしても良いのだけど、……しかし其れをすると何だか話が進まない気がするのだ。 ちきしょう。 挑まなければならない運命は常に理不尽で過酷だが仕方ない。だって黄泉ヶ辻だし。 自ら茨の変態道を歩む事を選んで生きてきたのだ。此れ位の理不尽は常に他人に押し付けてきた。しっぺ返しも止む得まい。 竜一の背後にスッ、と闇から湧き出す様に毛むくじゃらの男が現れる。だが同時に周囲から叩き付けられた複数の殺気に、某は其れが自らを誘い出す為の罠だと気付く。いやまあ元から判ってたけど。 「女の子の毛はね、命なんだよ。それをむしゃむしゃするような男、モテないんだからね!」 現れたリベリスタの一人、壱也がはしばぶれーどと名付けた自らの愛剣を某に向ける。 でも其の言葉は竜一の髪の毛を生贄にしようとしていた壱也が言えた義理じゃないと思う。 其れに元々毛むくじゃらだと中々もてないので今更じゃないかな。 「ちっす! アークだっぜ、後は言わなくてもわか……」 勿論、俊介に今更言われなくても、アークの名前を聞いただけで、それ以前にこの囲まれた状況だけで何が起きているのかは判る。故に一々口上に付き合う必要も無い。 あちらこちらに向かい伸びた某の髪が、俊介やロッテの首に巻き付いて強烈に締め付けていく。同じく壱也も首にこその締め付けは避け得たものの、腕に確りと巻き付き、肉を切り裂き食い込む髪に表情を苦痛に歪める。 リベリスタ達の緩みに浸け込むように、或いは咎めるように繰り出された某の攻撃は、けれども全てのリベリスタを捉えた訳ではなかった。 するりと、本人曰くそれなりな回避を活かして髪の乱舞を掻い潜り、某の懐へと潜りこんだ『トランシェ』十凪・創太(BNE000002)が雷気を放つ。振るわれたバスタードソードからの放電が周囲を覆う髪を焼き、創太のギガクラッシュが慌てて避ける某を掠める。 黄泉ヶ辻の異常性の多様さに、どういう経緯でこの道に至る事になったのか、僅かに某への好奇心を刺激されていた創太だったが、……けれど、駄目だ。 攻撃を避ける時に此方を見、一瞬見えた某の目は、完全に自分を、自分の髪の毛を餌としてみている捕食者の目だった。言語を同じくする生き物同士、語り合うことは不可能ではないのかも知れないが、それを可能とする時は創太の頭から毛が全て喰われて消えた後だろう。 創太の唇に浮かぶは苦笑い。言語は通じても言葉は通じなさそうな相手に、創太は刃を返して次撃に備える。 不意に周囲の空気が書き変わっていく。仲間達へ翼の加護を付与し終わった『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)が、次は自身を中心に人避けの強結界を展開し始めたのだ。 強結界に包まれた、つまりは獲物が遠ざかる感覚に、ぎろりと体毛に覆われた某の視線がフツへ、……正確には見事なまでに禿げ上がったフツの頭部へと注がれる。鬱陶しげに、邪魔臭げに、殺意を込めて。 だが其の視線を、フツは全く気にしない。毛を持たぬ者に某が容赦しない事は事前に目を通した資料で把握しているが、そもそも今までフツが相手をしてきた敵の中で此方に容赦して来た者が果たしてどれだけ居たと言うのか。 命を狙われる事など、或いは命を狙ってのやり取りなど、彼にとっては今更だ。覚悟は常に出来ている。奪う覚悟も、奪われる覚悟も。 きっと仮に某の命をフツが奪ったとしても、彼は顔色を変えずに言うだろう。 『いいんだ、恨み言だって構わねえ。オレがお前を殺したんだから』 肩の重みが少し増す事に、何も思わぬ訳では無いけれど。 ● とは言え戦いのゴングは音を響かせたばかりである。天秤はリベリスタにも、某にも、未だどちらにも傾いていない。 響く銃声は、背を向け無防備だった竜一を押し倒し、某の一撃より救った虎美の放つスターライトキャノン。 押し倒した竜一の肌のぬくもりに浸りたい気持ちはあれど、今やるべきはフィクサードの排除。兄や自分の髪の毛の為にも、此処でそれを投げ出す訳には行かない。 2丁の銃から飛び出す強力な光弾が貫いたのは、何時の間にか現れて主を守ろうとしていた毛玉、『ぼうぼの』。 物理攻撃ならば衝撃を吸収する事で被害を軽減できる毛玉も、光弾での特殊な攻撃は痛手らしい。 よろけた毛玉達に次はユーヌの魔力を秘めた毒舌、アッパーユアハートが飛ぶ。毛の塊に果たして耳があるのかどうかは甚だ疑問だが、ユーヌの言葉は毛玉達を怒りに陥れて注意を彼女に引き付ける。 護衛排除による某への集中攻撃状態を作り出すこと。それがユーヌの目的だ。 けれど、悲劇は其の時起きた。 「オイ、馬鹿、待て、止めろ!」 叫び、もがけど、某の絡む腕が動きを封じる。ともすれば恋人同士のいちゃつきにも似た密着状態。創太のキューティクルな前髪に口を近づける某の様も、歪んだ見方をすれば恋人の悪戯に見えなくも無い。まあどっちも男だけど。 大口を開けた某の乱杭歯が、もしゃり、もしゃりと創太の前髪を食み出す。 髪をコーティングしている砂糖も、某の表情を僅かに歪めさせたに過ぎない。 ぶちぃ、もしゃり、もしゃり、ごくり。 「ぎゃあああああああっ!!! テメェ何しやがるこの前髪染め直すの大変なんだぞ!?」 創太の盛大な抗議も某には届かない。言語は通じても、意思の疎通はなされない。 気にも留めぬ某の口が、再び創太に近付いていく。そもそもたった一口で終るわけが無いのだ。 「やめろ! 返せ! 必死に毎晩キューティクルケアしてる俺様の髪を返せえええええ!!」 ぶちぃ。 チャームポイント死亡と言う大きな犠牲。其れでも前髪だけですんだのは僥倖なのだ。 もし此れが戦闘中で無かったなら、創太の毛は全て食われていただろうから。創太を救ったのは前衛として出てきた竜一の一撃。 喰われ吐き出された創太の前髪の成れの果てが、敵として嘗ての主の前に立ちはだかる。 優れた癒し手である俊介とて、食われた髪までは戻せない。 失うばかりの、哀しい、哀しい戦いは続く。 ……やがて、ついに竜一が禿げた。喰われた様は濃いので略すが、前衛とはかくも危険なポジションである。 「あぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあっ」 哀しみの慟哭が響く。割と心が死ぬ。戦闘不能だ。 なのに、それなのに、竜一は倒れる事を強く拒否する。 「倒れるわけにはいかない……。ここで戦列から抜けるわけには! 髪だけに!」 もうお前はつるっつるだよ。 燃やされる運命。世界の寵愛。炎の様に強い竜一の意思が、己が毛根を酷使する。 奇跡の如く、竜一が力を込める度に、にょき、にょき、と毛が頭皮から芽吹いていく。 「俺の自己再生は、髪にも効くはずだ! 俺は、俺(の毛根)を、信じ抜く!」 無茶苦茶いうとる……。 やめて! もう君の毛根は限界だ! そんな無茶をしたらもう二度と生えてこないぞ! 「男には、やらなきゃいけない時がある。其れが今だ! 世界の薄毛に悩む者たちよ! 俺に力を貸してくれ!」 竜一の魂の叫びに怯む某。今まで数え切れないほどの髪を食べて来たが、こんなにしぶとい毛根は、そしてこんなに食べる事に罪悪感を感じる髪の持ち主は始めてだ。今までは罪悪感など、髪を食べる際の単なるスパイスに過ぎなかったと言うのに……。 そして竜一の復活に某が気を取られた間隙を突き、壱也のはしばぶれーどがいとも容易く某を地に叩き伏せた。 「…………え?」 ● ぶちぃ。某の長い体毛を掴み、ロッテが力任せに引き千切る。 声にならない悲鳴が辺りに響く。仲間達ですら直視することを躊躇う、とても凄惨な光景。 「つるつるになぁれ」 ぶちぶちぃ! ロッテの次は壱也が。 まるで餅を突く時の突き手と捏ね手を思わせるリズミカルな連携で、ロッテと壱也は次々に某の体毛を毟っていく。 彼女達の何が酷いかと言えば、彼女達がターゲットにしているのが『髪の毛』ではなく体毛全てだと言う事。 全裸に剥かれた某の、身体を隠す体毛が徐々に減っていく。……やだ、えっち。 「女性の敵! 許すまじ某!! 全てツルンツルンにするですぅ~!」 無邪気な其の口調が尚更恐怖を煽る。 女性陣の恐ろしさに抱き合って震える創太と俊介。最初は二人と一緒にはしゃいでいた俊介だったが、流石の彼も此れは引く。 某を襲う運命は過酷で、手強く、そして残酷だった。だがまあ仕方ない。黄泉ヶ辻だし仕方ない。 「毟った毛を竜一様にプレゼントするのですぅ! カツラにしても、いいよ……ぽっ」 マジ怖い。 一方、そんな陰惨な光景に目を背けて耳を塞ぎ、酷使した毛根を只管に心配する竜一に、2つの頭を隠す為の帽子が差し出される。 一つは恋人であるユーヌから、そしてもう一つは妹である虎美から。 如何に奇跡的に毛が生えたとは言え、全てが元通りと言うわけでは決して無いのだ。 普通なら恋人からの気遣いを優先しがちな場面だろうが、虎美の竜一への愛情の深さは恐らくユーヌに引けを取らない。そればかりか虎美は非常に嫉妬深……もっとはっきり言うとヤンデレなので、此処で対処を間違う事は割と危険だ。 傷心の竜一を襲う新たな試練。リア充はもげて禿げてくたばれば良いのに。 どんな髪も何れは抜ける。盛者必衰。髪を持たぬ、髪に拘らぬフツの目に彼等の行いは如何映るのか。 「諸行無常。南無阿弥陀仏……」 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|