● 運が、足りなかっただけなんだ。 ちょっと見てくれが良くなかったり、タイミングを逃したり。 一番大事な時に、高いところから落ちてケガをしたり。 俺たちはみんな、そんな要領の悪いモノの集まりで。 だから、上の人間にまとめて捨てられちまった。 もう、あの華々しい表舞台に上がることはできない。 俺は仲間を誘って、ここを逃げ出すことにした。 ゴミみたいに腐って死んでいくなんて、まっぴらだったから。 どこか人の来ない山の中で、みんなで自由に暮らすんだ。 こんな俺たちだって、生きる権利くらいはあるだろう――? ● 「今回の任務は、E・ビースト五体の撃破です」 軽く挨拶を済ませた後、『運命オペレーター』天原 和泉(nBNE000024)はそう言って依頼の説明を始めた。 リベリスタ達が見守る中、正面モニターの表示が切り替わる。 スイカと桃、ブドウにグレープフルーツ、そしてマンゴー。 どう見ても巨大な果物である。いや、スイカは野菜かもしれないが。 リベリスタの一人が思わず和泉に視線を向けると、彼女は頷いて言葉を続けた。 「ご覧の通り、E・ビーストは革醒した果物です。 傷がついたり、熟しすぎてしまったことで廃棄された彼らは、近くの山に逃走して潜伏しています」 大きさが大きさなので、見つけるのはさほど苦労しないだろうが、近付く者には問答無用で攻撃を仕掛けてくることが予想される。 「知能はあまり高くありませんが、互いに連携して戦うこともあるようです。 個々の能力も決して低くはないので、戦術はしっかり組んでいく必要があるでしょう」 幸い、指定された時間に現場に向かえば、人通りを気にする必要はない。 日中のため、明るさの面でも戦闘に支障はないだろう。 「――現場の近くには、彼らが逃げてきたと思われる果物の直売所があります。 任務の後に、お土産を買って帰るのも良いかもしれませんね」 説明を終えると、和泉はリベリスタ達を見て微笑んだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:宮橋輝 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月29日(水)22:13 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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● 「――まあ、もったいないといえばもったいない話でしょうか」 山の中を進みながら、『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)がふと口を開いた。 今回の敵は、廃棄処分された果物のE・ビースト。『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)が、頭頂部から触覚のように伸びた二房の髪を悲しげに揺らす。 「果物好きなわたしとしましては、切ないですね」 特に好む柑橘系が含まれるとあっては、尚更のこと。『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)も「我輩も果物大好きなのダ」と同意を示した。 「形が悪かろうガ、傷があろうガ、少々傷んでいようガ、気にせず食べるのダ」 気分は、既に『果物食べ放題』である。 慎重に歩を進める『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が、注意深く周囲を見渡した。 「此処は彼らのテリトリー……不意打ちに最大限注意ですね……」 やがて、リベリスタ達は木々の向こうに巨大なスイカを発見する。一応は隠れようとしたのだろうが、サイズがサイズなので叶わなかったらしい。 「食べ物の怨みは恐ろしいって聞くけど……うん、それはちょっと違うか」 スイカに大きな亀裂が入っているのを認め、『骸』黄桜 魅零(BNE003845)が呟く。彼らは皆、傷や熟れすぎが原因で捨てられたのだ。 「どんなに形が違っても、中身は全てトロピカル果実。 って訳でおまえらは包囲されているー、速やかに食べてやるから出てきなさいな」 魅零の声を聞き、木の陰からひそひそと囁くような音が響く。ややあって、スイカの周囲に桃と葡萄、マンゴーにグレープフルーツが姿を現した。 そのラインナップを見て、『足らずの』晦 烏(BNE002858)が一人ごちる。 「バリエーション豊富と言うか、統一性が無いと言うべきなのか……」 農家の努力に思いを馳せながら紫煙をくゆらせ、好物の梨が含まれていないことに安堵する。 「神秘ってやっぱスゲェ。こんなもんまでエリューションになるたぁなぁ」 感心したように頷く『バトルアジテーター』朱鴉・詩人(BNE003814)に、山岳迷彩のバトルスーツを身に纏った『銃火の猟犬』リーゼロット・グランシール(BNE001266)が答えた。 「変化前の食物ならそこそこアークの任務で頂きますが、 変化後のものを相手にするのは珍しいパターンの気がしますね」 愛用のパイルシューター“Garmfang(猟犬の牙)”を携え、「まぁ、いつも通り鉛弾を撃ち込むだけですが」と果物達を見据える。 彼らのE・ビーストという分類に違和感をおぼえて考え込んでいた詩人も、「ま、いいでしょ」と気持ちを切り替えた。 「あらゆる意味で美味しくいただきまっす」 距離を詰めるリベリスタを見て、果物達は咄嗟に身構える。その姿から、『生きようとする意志』を感じ取った『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)が、柳眉を僅かに顰めた。 「成程、彼ら……にはっきりした形の自我があるのなら、 廃棄され、ただ朽ちる事をよしとはしません……か」 何とも、ある意味やり難い相手だ。 彼女の声を聞いた『閃拳』義桜 葛葉(BNE003637)が、果物達を真っ直ぐに見る。 「――いや、確かにそうだ」 運が悪かったという一言で納得できる者など、そう多く居る筈もない。 それはきっと、人であっても同じことだろう。 「義桜葛葉、推して参る……!」 堂々たる名乗りを上げ、葛葉は果物達へと駆けた。 ● 果物達のギリギリ射程外に立った詩人が、防御動作の共有で全員の守りを固める。まばらに生えた木の一本に身を隠したリーゼロットが、精神を研ぎ澄ませて動体視力を強化した。 「可哀想だガお前達ハ……吾輩に美味しく食べられる運命なのダ!」 グレープフルーツに突貫したカイが、全身のエネルギーを防御に特化させる。それを見咎めた桃が、彼の背後に果肉の爆弾を炸裂させた。 「うーん、こんなに良い香りのする戦闘って初めてかも」 熟れた桃の匂いを胸いっぱいに吸い込みつつ、魅零がマンゴーのブロックに回る。 「悪くはないね、とてもフルーティーな雰囲気」 微笑みとともに、彼女は暗黒の瘴気で果物達を狙い撃った。 白と青を基調にした上着に身を包んだ葛葉が、桃に肉迫する。 「先ずは、お前を叩かせて貰うぞ!」 破壊の『気』を込めた正拳が桃を捉え、その動きを封じた。 周囲に存在する神秘を取り込んで自らの力を高めるシエルが、果物達の距離を慎重に測る。 「果物達は連携されるとの由……庇い合うかもしれません」 初動を見る限り、高度な陣形を組む知能は無いようだが、油断は禁物だ。 葡萄を抑えるべく前に立ったユーディスが、自らの身長に匹敵するそれを見詰める。 「……等身大の果物というものも、実際に見てみると何ともいえないものがありますね」 彼女はそう言って、あらゆる攻撃を跳ね返す防御のオーラを纏った。葡萄が房を大きく揺らし、果実を弾丸の如く飛ばして前衛達を攻撃する。 「被害が出る前に、ちゃんと対処しませんと」 後方で指揮を執る京一が仲間達に小さな翼を与えた直後、風上から敵を射程内に収めた烏が厳然たる意志を秘めた光で果物達を灼いた。 スイカが、種の連射で葛葉を撃つ。彼らはどうやら、自分達に直接攻撃を加える者――中でも前衛を優先して狙っているらしい。かえって好都合と、スイカの前に立ち塞がったななせが自らの身で後衛への射線を遮った。 グレープフルーツが酸味の強い汁を撒き散らし、マンゴーの呪いが一帯を覆う。 目を塞がれ、強烈な痒みに苛まれるリベリスタ達を見て、シエルが聖神の息吹を呼び起こした。 「後衛の方々は木の陰に……」 癒しの力を仲間達に届けつつ、少しでも被害を減らすべく助言を行う。京一がすかさず神の光を輝かせ、払いきれなかった状態異常を瞬く間に消し去った。 回復役の支援に支えられ、リベリスタ達はまず桃に集中攻撃を仕掛ける。 「さって、何処をどう刻めば美味しく頂けるかにゃーん?」 戦場全体に視野を広げた詩人が、使い古した解剖用メスを構えて桃に狙いを定めた。射程外から投擲されたメスが、魔弾となって桃を貫く。リーゼロットが、そこに“Garmfang”の銃口を向けた。 「アークの敵を潰し、アークに利益を」 次々に撃ち出された杭の弾丸が、恐ろしいまでの正確さで果物達を襲う。大きくよろめいた桃に向かって、葛葉が口を開いた。 「お前達の意見は正しい。だが、俺はお前達を殺さねばならん」 リベリスタは世界の守護者であり、全てを救う正義の味方にはなり得ない。 崩界を招くものは、例外なく滅さなければならぬ。 「恨むが良い──そして、この名を忘れるな」 彼の拳が桃を打った瞬間、熟れきった果肉が内側から勢い良く爆ぜた。 仲間を倒されて浮き足立つ果物達を抑えつつ、リベリスタ達は攻撃の手をスイカへと転じる。魅零が自らの痛みを呪いに変えてスイカを撃つと、ユーディスの放つ十字の光が葡萄を貫いた。 怒り狂った葡萄が、眼前のユーディスに房ごと体当たりを食らわせる。彼女が混乱を免れたことを確認したカイが、自らブロックするグレープフルーツに魔力杖の一撃を叩き込んだ。 攻撃の合間にスイカを覗き見て、その甘さと歯ごたえを思い浮かべる。 「西瓜はやっぱり踊り食いが一番なのダ~」 戦闘中も、果物への愛を語ることは忘れない彼であった。 ななせと二人でスイカをブロックする烏が、他の果物からの射線を遮るべく目の前の巨体を壁にする。彼はそこから、神気閃光で全ての敵を焼き払った。 辛うじて直撃を避けたスイカが、大きく口を開けてななせに食らいつく。全身を丸ごと押し潰さんとする威力にギリギリ耐えた彼女は、シエルの天使の息で体勢を立て直すと“Feldwebel des Stahles(鋼の軍曹)”と銘打たれた巨大なハンマーを振りかぶった。 「全力全開スイカ割りーっ!」 渾身の一撃が、巨大なスイカを真正面から叩き割る。 「これはまた豪勢なスイカ割り、と言ったところでしょうか」 赤い果肉を撒き散らして地に崩れ落ちたスイカを眺め、リーゼロットが言った。 ● グレープフルーツが自らの身を必死に絞り、リベリスタ達の目を狙って汁を飛ばす。 「あ~良い香りなのダ~! 気分もリフレッシュ~!」 しかし、眼前のカイにはまったくもって堪えていない。微妙に怯んだグレープフルーツを援護するように、マンゴーが痒みを引き起こす呪いで一帯を包んだ。 度を越えた痒みが、強烈な痛みとなってリベリスタ達の身を蝕む。 「この程度の痛み……貴方達の心の痛みに比べれば……」 眉を寄せ、苦痛に耐えるシエル。前進した詩人が、邪を退ける光で状態異常を纏めて消し去った。 「サポートこそ我が本領。さ、存分にやっちゃってくださいな」 「ありがとうございます……」 詩人に礼を述べた後、シエルが詠唱を響かせる。具現化した聖なる神の息吹が、リベリスタ達の失われた体力を取り戻した。 仲間を立て続けに失い、恐慌をきたした葡萄が果実の弾丸を乱射する。 射程外に逃れるのが間に合わなかった詩人が、直撃を受けて大きくよろめいた。運命を削って自らの膝を支えた彼に、仲間から回復が飛ぶ。 リベリスタ達は足並みを乱すことなく、順当に一体ずつ攻撃を集中させていった。 リーゼロットが杭の弾丸を連射して三体の果物を同時に撃ち貫き、木の幹で遮蔽を確保した烏が意志の光でさらにダメージを重ねる。 「しかし、なんだな。食べるものは美味しく頂きたいものだよな、全くもって」 烏の呟きを聞き、呪符を手にした京一が口を開いた。 「農家の人たちも手間隙かけて育てたものですので、 やはり、捨てるにあたっては悲しかったことでしょうね」 彼の手を離れた符が鴉の式神となり、鋭い嘴で葡萄を突付く。素早く後退した詩人が、赤黒い染みの残る白衣を翻しながらメスを構えた。 「果物にメスとか理科の実験かよ! でもレモンがねぇな! ……あ、グレープフルーツでもいいんだっけ?」 早口でまくし立てるように投じられたメスが、先のお返しとばかりに葡萄を屠る。房から離れた果実が、ばらばらと地面に転がった。 残るは、二体。ユーディスは葛葉と連携し、敵の退路を塞ぐ形でマンゴーに接近する。 (万が一でも、逃がす訳には行きませんから) 破邪の力を纏った槍が、マンゴーを深く貫いた。木の陰から飛び出し、二体の果物を射線上に捉えた烏が、愛用の村田式散弾銃“二四式・改”を構える。放たれた散弾が、果物の脆い部分を次々に撃ち抜いた。 グレープフルーツを抑えるカイの様子を見て、まだ大丈夫と判断したななせが、マンゴーに迫る。 オーラを纏った鋼のハンマーが、黄色い果実を強かに打った。 四人の前衛に囲まれ、慌てたマンゴーが無数の真空刃を生み出す。 (己の感覚を限界まで活用し、敵の攻撃を凌ぎ切れ……!) 鉤爪に覆われた両手でガードを固めた葛葉が、至近距離から繰り出された斬撃の嵐を鋭い体捌きで弾く。その隣で、全身を血に染めた魅零が己の運命を燃やして遠のきかけた意識を繋いだ。自らの生命力を代償にして戦う彼女は、他のメンバーよりも消耗が激しい。 仲間達のダメージを見て取ったカイが、癒しの福音を響かせて全員の傷を塞いだ。艶やかな果汁を滴らせるマンゴーの切り口を見て、彼は思わず垂涎する。 「熟れきったのをピューレ状にして絶品ソース!」 果物好きにとっては、本当に色々な意味で堪らない戦いだ。 仲間達が集中攻撃を加えていく中、魅零が両手に構えた大振りの太刀に苦痛の呪いを纏う。 彼女は太刀を一閃させてマンゴーに止めを刺すと、切り取った果肉を受け止めて口に運んだ。 熟れたマンゴーの甘味が、全身に沁み渡る。 「いひひ、美味しいねぇ。でもちょっと量がねー」 太っちゃう、と、魅零は悪戯っぽく笑った。 ただ一体残されたグレープフルーツが、逃げ道を探して右往左往する。 しかしカイにブロックされている上、駆けつけた前衛達に包囲されて動けない。 「逃せないのです……ごめんなさい……」 御神木の枝から作られた杖“楽園乃小枝”を携えたシエルが、聖神の息吹で仲間達に癒しをもたらしながらグレープフルーツに詫びる。 「E・ビーストでなければ、自由にさせてあげたかったなぁ……」 追い詰められた柑橘類を哀れに思ってか、ななせが輝くオーラの鎚で一撃を加えながら呟いた。 最後の抵抗とばかり、カイに巻きついたグレープフルーツが彼の全身を絞り上げる。 京一がブレイクイービルでカイを解放すると、リベリスタ達は一気に畳み掛けた。 葛葉の魔氷拳で凍りついたところに、魅零が苦痛の太刀を振るう。 「貴方達は運が良いわ。 運命に抗って、こうやってリベリスタを前にして、黄桜に食べられる!!」 誰にも顧みられずゴミとして燃やされるより、よほど上等な最期の筈。 「食べられることに感謝して、その生きる望みは捨てちゃいなさい」 魅零の声と同時に、リーゼロットの放った杭の弾丸がグレープフルーツを正確に射抜いた。 叫ぶように全身を震わせる果物を見て、ユーディスが槍を構える。 「是非も無し、です」 せめて――苦しみが長引かぬよう、一思いに。 曇りなく鮮烈に輝く彼女の槍が、最期まで抗い続けた果物達に終わりを告げた。 ● 「……ところで、このエリューションは食えるんでしょうか」 倒した果物達を前に、詩人が呟く。 魅零が口にしていた以上、味は問題なかったのだろうが……残骸と成り果てた今となっては厳しいかもしれない。 シエルが必死に無事な部分を探すものの、満遍なく土に塗れてしまっている。 「E・ビーストとはいえ……捨てられ討伐されるだけなんて……」 悲しげに首を横に振る彼女の隣で、カイが強く拳を握った。 彼によると、廃棄されている食料は世界で生産される穀物の半分以上で、中でも果物の廃棄率が最も高い――ということらしい。 「もったいなイ。目が潰れて死んでしまうのダ!」 力説するカイの提案で、果物達は土に還すことになった。 元の畑に運んでやるのは人目もあって難しいため、地続きと思われる山の中に埋めてやる。 「みんな来年、美味しく実るのダ」 リベリスタ達はしばし、果物達のために祈った。 埋葬(?)を終え、リベリスタ達は近隣の直売所に足を運んだ。 所狭しと並んだ果物を見て、ななせが歓声を上げる。 「持てるだけ買って帰りたいですっ」 さっそく柑橘類に目をやる彼女の傍らで、詩人が葡萄を手に取った。 「帰ってから食後のデザートとして美味しく頂くのです」 上機嫌で会計を済ませた彼を見て、果物を眺めていたリーゼロットが微かに表情を綻ばせる。 「こういう所のモノって、気持ちがこもっている感じがしますよね」 値段も手頃だ。自分も何か買って帰るとしよう。 「誰かへの土産かい?」 果物籠を手にした烏が、真剣に果物を選ぶ京一に声をかける。 「ええ、家族に。晦さんは?」 振り返った京一に、烏は「ああ、これは奥地君にお見舞い」と、先日の戦いで負傷した黒翼のフォーチュナの名を口にした。 「大分、傷も良くなってはいるだろうけれど――」 そう言った時、直売所の販売員と交渉する仲間達の姿が視界に映る。 「あの……痛んだ果物があれば……売って頂けませんか?」 孤児院の子供達のために購入したスイカを手に、シエルが遠慮がちに言った。多少傷があっても、ジャムやジュレにすれば美味しく食べられるだろう。 彼女の横から、魅零も口を開く。 「全部買うから安くしてよ。今日中に食べれば問題無いでしょ?」 始めは渋い顔をしていた販売員だったが、葛葉の粘り強い口添えの甲斐あって、とうとう折れた。 葛葉は丁重に礼を述べると、見繕ってもらった正規の商品と併せて訳あり果物の会計を済ませる。 格安で入手した戦利品を手に、魅零がにんまりと笑った。 「そうね、これは黄桜のお姫様と一緒に食べようかしら」 一部始終を見守っていた烏が、販売員に歩み寄る。 「見てくれの悪いものとかは、ドライフルーツやジャムにして収入源の一つにすると良いと思うぜ」 同じ悲劇を繰り返さないための、ささやかなアドバイス。 買い物を済ませたリベリスタ達は、直売所のすぐ隣にある休憩所で休むことにした。 テーブルの上に並んだ、買ったばかりの果物達を――ユーディスは思わず、しみじみと眺めてしまう。 「いひひ、貴方達はエリューション化なんてさせないからね?」 魅零が果物の一つを突付くと、ユーディスは凛と整った面に微笑を浮かべる。 「気を取り直して皆で食べましょう。きっと、美味しいのでしょうから」 自分用に買った梨を器用に剥きながら、烏がしみじみと口を開いた。 「食に感謝を、これは忘れちゃいけない大事なことだな――」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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