●誰にでも出来る簡単なお仕事です。 「仕事としては、すごく簡単。だけど、多分すごくつらい」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、しばらく目を閉じていた。 これからリベリスタが受ける苦しみを、わずかでもわが身に受けようと天に祈るかのように。 これからリベリスタを過酷な現場に送り出す自分に罰を請うように。 やがて、ゆっくり目を開けると、ぺこりと頭を下げた。 「お願い。あなた達にしか頼めない」 苦しそうに訴える高校生、マジエンジェル。 だが、断る。なんて、言えるわけがなかった。 ●お仕事内容は風船を膨らませて、穏便に破裂させることです。 「エリューションは、風船」 モニターにまだ膨らまされる前の風船が映し出される。 赤い風船、白い風船。 リベリスタのうちの何人かは顔をしかめる。 いやな存在を思い起こしたからだ。 矢印が風船の吹き込み口部分を差し、「ここが危険」とイヴが手書きでキャプションをつける。 「エレメント。特殊能力は持ってないけど、エリューションである以上、一般人が接触すると革醒現象を促すことになる。人が呼気を吹き込んで膨らませて遊んでいたりすると、接触時間に応じて加速度的にその人物にエリューション化の危険が及ぶ」 かといって、膨らませずにそのまま放置しても、フェイズが上がる。 世間に出してしまいさえすれば、どう転んでも遅かれ早かれエリューション事件が起こる、時限爆弾のような悪意。 「ちなみに存在としては非常に弱い。リベリスタなら呼気で問題なく破裂させられる。それが一番と判断した」 うわー、リベリスタの肺活量、すごーい。 「幸い、現在とある問屋さんの在庫の一部。たった今、全部買い占めてきた。みんなが独占できる。よかったね」 わーい、やったー。 「とにかく、普通の人がふくらませたら危険。エリューションを増やす訳には行かない。それと、気になることがある」 来るんじゃなかったと顔にありありと描いてあるリベリスタを叱咤するように、イヴがまじめなことを言い始めた。 「意図的な悪意を感じる。負担を減らそうと、水素とかヘリウムとか注入してみたんだけど」 あ、一応考えてくれてるんだ。 「爆発した」 あ、やっぱり。 アークが稼動してから、この手の依頼は定期的に発生していた。 子供向けの菓子や玩具に潜んだ、ごく弱いエリューション。 万華鏡でなければ見つけられないほどのささやかな悪意。 ジャックが世間の連続殺人鬼予備軍に呼びかけたのに誤作動を起こして暴れた『魔女』によって、潜在的にエリューションの影響下にある女性が多数いることが発覚する。 そして、機会と用途に応じての人攫い『楽団』。 肉の壁にされる子供『パレード』 契約書に従い、家族を生贄にして、非道に手を染める魔女『ハッグ』 リベリスタ達は、幾度となく、そのたくらみを阻止してきた。 この春に、「楽団」を壊滅させたアークのリベリスタにとって、この「ささやかな悪意」に触れるのは、久しぶりのことだった。 「楽団」は、彼らの実行部隊に過ぎない。 アークの目の届かないところで、「ささやかな悪意」の根源、契約魔術師カスパールと錬金術師メアリがうごめいている。 「調べてみたら、風船のゴムが魔法で何らかの加工がされてるみたい。おそらくアーティファクトによるものだろうけど、風船自体は現物ではないから対応できない」 変な周到さが癪に障る。 「実験した研究員はリベリスタだったから大事には至らなかった。けど、どうやらズルはできない仕様。膨らましてる最中に張り出つついても大爆発。とにかく人が膨らませて割るしかない」 エリューションの芽が小さいうちに積むのが肝要。 「場所はアークのブリーフィングルームのひとつ、万が一の爆発にも対応できるようにしたから安心して」 風船膨らませろってことですね。 脳貧血起こしそうです。 「大丈夫。酸素ボンベ吸い放題」 ぶっちゃけ、1440個破裂させきるまでは帰れません。 逆に言えば、それ以上は絶対出来ないのがわかっているのだけが救いなのだ。 「戦闘にはならない。ばかばかしいと思うのもわかる。ストレスがたまると思う。でも大事な仕事」 イヴは、もう一度頭を下げた。 「お願い」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月22日(水)22:16 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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● 「どんな依頼も葬操曲と天使の歌で頑張る私参上! 風船なんてまとめてぶっ飛……え、そういうお仕事じゃない?」 『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)、絨毯爆撃、良くない。 「訓練されたリベリスタ? 違うね! 全てを制すは愛! 愛音は愛を伝道するLOVEリスタを名乗るものでございます! ゲシュタルトなんて寝首掻いてやるからかかってこいよでございます」 『愛の一文字』一万吉・愛音(BNE003975)、ゲシュタルトの寝首をかいたら本末転倒。 ● 「……じゃあ私は甘い物を食べてるから、皆は風船割るのを頑張って!」 ウェスティアは空気を読み損なった。 (あれ、皆の目が冷たい……) リベリスタ、思い知れ。 ここが、こここそが、ある意味もっとも過酷な戦場だ。 「鬼軍曹とら、今回の訓示☆」 『白詰草の花冠』月杜・とら(BNE002285)は、拳を振り上げた。 「お前ら耳の穴かっぽじって、よ~く聞け!いいか、ノルマは一人風船120個だ!わかったらグズグズするなっ!配置につけ、このウジ虫ども!!」 『クロスイージスに似た何か』内薙・智夫(BNE001581)が床にペタンコ座りして、その辺に合った紙に筆算している。 「風船の数は1440個なので1人当たり120個がノルマになってるらしいけど、なんだか12個くらい割ってリタイヤしそうな人が4人いる気がする」 訓練されたリベリスタの勘ていうか、経験則。 何かからの毒電波のように智夫の筆算は続く。 「つまり(1440-12*4)/8が成り立つ気がするわけで……計算してみると、生き残った1人につき172個がノルマになるみたい」 ミラクル・ナイチンゲールボールペンをしまいながら、智夫は爽やかに笑った。 「うん、無理」 きれいな笑顔してるだろ? こいつもう逃げることしか考えてないんだぜ? 「敵前逃亡は、蜂の巣」 『猟奇的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)は今回もマジだ。 「『ささやかな悪意』なんて、久しぶりだね……!」 虎美のいつになく低い声が響く。 「お兄ちゃん、どいて。こ(以下略)」と同じイントネーションだと思ってもらえれば間違いない。 「ささやかっていうレベルじゃない気もするけど、ほんと胸の悪くなる奴らだね。たまにはまじめに仕事するよっ。あいつらの悪だくみは阻止してやりたいからね」 過去数度、虎美はこの風船をばら撒いている組織と交戦したことがある。 その実行部隊「楽団」を潰していなければ、この風船はやつらが手ずからどこかのイベント会場で子供の手に握らせていたかもしれない。 命のやり取りはない。 しかし、この風船割りが、子供が爆発する事態を防ぐのだ。 「ごめんなさい。ハイ、ちゃんとします。すみませんでした」 ウェスティアは、風船を手に取った。 表立った命のやり取りはない。 知らない人が見たら、何遊んでんの? とか言われそうだ。 でも、大事なリベリスタのお仕事なのだ。 ● 「つらい作業もある種の予行演習だと思えば乗り切れるはず。直接してもらった経験はなくても頬とかおでこにしてもらった時の感触を思い出して完璧に再現して見せる」 虎美。ファーストキスは、ゴムの味。 「地味な仕事だが、甘くみてはいけない。一般人に革醒現象を起こさせる訳にはいかない。覚悟は出来ているか?自分は出来ている」 『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)、 肺活量的意味で。 ● ぷふ~、ひゅるるる。 ぷふ~、ひゅるるる~。 『おかしけいさぽーとじょし!』テテロ ミーノ(BNE000011)は、ちょっと不幸だった。 手にした風船には、欠陥品だったのだ。 空気を吹き込んでも吹き込んでも膨らまない。 しかし、放置することも出来ない。フェイズが上がってしまう。 ミーノはがんばった。指で穴をふさぎながらがんばった。 そして、ようやく割れたとき、少女は酸欠というヘブンに旅立ったのだ。 「私が、私達がリベリスタだ!」 (無理やりにでもテンション高くしないと色んな意味で身が持たないとも言う) 正義の味方である疾風は自らを鼓舞する手段を知っていた。 「折角だから、赤い風船を選ぶぞ!」 面白いくらいに膨らむ。しかし。 「何だ思ったより楽に膨らむ……どこまで膨らむんだ。」 すでに風船の中に疾風が押し込めそうな程度には大きくなっている。 (これ、割れたら、結構怖いんじゃ……フィクサードの巧妙な罠か!?) ほんのりといやあな感じは、一連のブービートラップに共通するものだ。 「赤はおっきいから膨らますの大変だし、白は一生懸命ふーふーしても全然膨らまないし。しかも割れたときびっくりするし、地味に痛いし。何これ? 誰が作ったの?」 ウェスティアの声も低くなる。 こうして、『ささやかな悪意』へのヘイトを持つリベリスタがまた一人。 気付けの甘い物を食べながら、検索。 「ふむふむ、ほっぺたに空気溜めて最初に一気に吹き込むと後は伸ばすだけで楽になるんだね。で、こういう情報は皆で共有したほうがいいよね!」 リベリスタの風船膨らませ技能にボーナスが付いた。パパーン! 「お兄ちゃんちゅっちゅぺろぺろ」 風船をしゃぶりながら、息を吹き込む虎美マジ怖い。 (これをちゃんとこなしたらちゃんとキスしてくれるってやったお兄ちゃん大好き愛してるうふふ嘘ついたらひどいんだからね☆あははは) 現実のお兄さんの健やかな日々をお祈りしております。 「愛音は赤い風船専門で膨らませるのでございます! 理由は女の子だからでございます!」 戦隊物だとオトコノコの色。と言う無粋なリベリスタはいなかった。 (風船を膨らませる時、だいたい「ふー」とか「ふっ!」ってやるものでございます。 だが、この愛音、愛無き道は歩まぬのでございます) 「あいっ!」 皆が、愛音を振り返る。 特に意図のない視線が痛い。 なんでもないと首を振ると、みんな自分の作業に戻っていく。 (なんとしても、「あいっ」の掛け声で空気を入れるのでございますよ!) 家訓です。 「あっ……」 (……口が離れてしまうのでございます。考えてみたら当たり前じゃねーか) 口調と人格の統一を要求する! やり直し。 (LOVEで行きましょう。LOで勢いつけてVEで膨らませる。完璧でございます) シミュレーション完了。 「LO」 ちく。ぼんっ! (……牙! 牙が風船に刺さった!) 破裂ではなかった。爆発だ。 ほとんど膨らませてなくて幸いだった。 (顔痛ええええ!) でなければ、駆け出しの愛音の対神秘防御力では、顔がなくなっていた。 ● 「今夏はゴーグルとマスクが大活躍だね。もしかすると、僕より活躍してるんじゃないかなぁ 」 智夫、爆発物よけにゴーグルとマスク着用。そのまま膨らませられたら、勇者。 「ふふふふふふふっふふhhhhhh! 今こそメタルフレームの肺活量を生かす時! 風船共よ、膨らまして割ってくれようZO♪」 『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)、風船に誓う血の掟。 ● 「白い風船は硬いな。氷嚢かと思うほど」 『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)は、白い風船煮息を吹き込む。 「しかしこうして風船を膨らませてると、子供の頃に妹達にせがまれて、懸命に膨らませたのを思い出すよ」 あの日、カレーじゃなくてシチュー作ってたら、啓示を受けることもなく、別の人生を歩いていたかもしれない。 「風船膨らませ続けると、耳の後ろのちょっと窪んだところが痛くならない? オレはすでに痛い」 軽い笑いが起きて、場が和む。 基本的にこういうムードメーカーは大事だ。 (あー、なんか目がチカチカしてきた。けどこの白いのを割ればちょうど1ダース……。やったー、割れたー! あっ……) 義衛郎の意識、ブラックアウト。 エーデルワイスの手の中に、白い風船。 智夫の手にも白い風船。 「ふう、ふう、白い風船ってなかなか膨らまないよ。人の息の量には限界があるわけで、げほっ、げふん」 ちょっと涙目で咳き込む智夫。 息を吹き込むのに疲れて、大きく肩で息をする。 かわいいだろう? こいつの正装、紋付袴なんだぜ? 「うごごごご、めちゃくちゃ硬いですね、女性の力じゃ伸ばせない~」 エーデルワイスもがんばっているが、なかなか伸びない。 ちなみに、リベリスタの膂力に性別差はない。 顔を見合わせる二人。 このままじゃ、無理。 (先にヘリウムで肺を膨らませて一気に流し込めば膨らまないかな?) 智夫は、自分の荷物をあさり始めた。 ヘリウムボンベ。アヒルのイラストがご愛嬌。 (アー、セッシャ、ズルシヨウナンテ思ッテイナイデゴザルヨ) 小声は確かにアヒル声。ヘリウム、肺に充填確認。 「しかし、柔らかくすればいいだけなのDEATH! ライターくださーい」 エーデルワイスのおねだりに、アーク職員は、首を横に振った。 物理的素材への介入は爆発への第一歩。 それは誰も実験してなかったけど、危ない気がする。 でもやる。 こっそりやるのが、智夫クオリティ。 (息ヲ吹キコ――) 堂々やるのが、エーデルワイスクオリティ。 「レッツ☆マジカル・ファイヤー♪ とりあえず熱してみよう♪ これで柔らかくなる……筈」 ちゅどっ! どっ! 白い風船は、次々と、非常に局地的に爆発した。 硬くて白いゴムが、痛烈にエーデルワイスの頬に命中。 智夫の顔面全体を満遍なく強打。 普通の子供だったら、頭部は今頃ミートソースだ。 「ささやかな悪意」、許しまじ。 エーデルワイスは無言で赤い風船を手に取った。 智夫も赤風船を手に取った。 息を吹き込む。ぷー………。 「わあ、凄く膨らますの簡単だぁ。これならすぐ終わりそう……って、息を吹き込んでも割れないよ」 「うーむ、膨らみ過ぎてものすっごく邪魔ですよねぇ、この赤い奴」 割れる気配がない。 先に膨らませ始めた疾風の赤い風船はアドバルーンの域に達した。 それ、割れるの? ホントに割れるの? (面倒だし、画鋲――) 智夫、手荷物ごそごそ。 「……こうなったら冷やしてみよう♪ 液体窒素くださーい」 ぶんぶんぶんっ! アーク職員は、強化プラスティック盾を構えながら涙目で首を横に振った。 物理的素材への介入は爆発えの第一歩だもん! 誰も実験してなかったけど、すごく危ない気がするもん! でも、やる。 こそこそやるのが、以下同文。 (せーの、ぷす) どうどうやるのが、以下同文。 「レッツ☆ロジカル・フリーズ♪ これで凍らせて呼気を吹きこめばパリーンと逝く……筈」 ちゅどっ! どっ! それなりに膨らんでいた赤い風船の氷結して粉砕された赤いゴムが、以下同文――ではなく、ブリーフィングルーム全体に拡散する! ラテックス・ブリザード・フォース。効果、リベリスタは非常に痛い思いをする。 更に。 膨らんでいた風船に刺さって割れる。 連鎖爆発。 メディーック! 雨宮 千景(BNE003997)、華麗に登場。 「待たせたな! 一吹きで千の風船を破裂させたこの俺が来たからにはもう安心さ! 堅い風船だって僕に掛かればこうさ。破裂させればいいんだろ?」 え~、あ~、うん。 鮮やかな手つきで市販の白風船を膨らませ、針でつついて爆発……。 (『うわ~! やめろ~っ! 部屋がぶっとぶぅ~!!』) そんな驚愕の声を待ち望んだ時期もありました。って、え? すでに室内は阿鼻叫喚。 体を張った爆裂芸二連発更に拡散芸の前では、ちとインパクトがぬるかった。 初めからいてタイミングを狙うべきだった。次回に期待! リベリスタの怪我は、とらが高位存在を拝み倒して回復させてもらいました。 ● 「婚約者の墓参りに行った帰りにアークの社員食堂からお盆休みで人が足りないと要請されてヘルプに行ったらいつの間にかここにいた。何言ってるか分からねーと思うが――」 『灼熱ビーチサイドバニーマニア』如月・達哉(BNE001662)、お盆はリベリスタも帰省するから。 「カップ麺、パンプキンヌガー、手作り和風幕の内、イチゴショートケーキ4号サイズ、恵方巻、キャベツ料理、おいしゅうございました」 とら、簡単な仕事で摂取した食事、転じてとらを構成する脂肪の何パーセントか。 ● (ヌガーと恵方巻はリタイヤ早かったからまだしも、ケーキはヤヴァイ! アークの個人データでは、まだ一応体格「華奢」の体裁を保ってるけど。他でも色々……) とらちゃん。 キミの年頃は、人生で一番ぴちぴちぷりぷり、はちきれんばかりが正常なんだから、体型なんて気にしなくっていいんだよ。 ――なんて言っても、左から右に受け流しちゃうのもこのくらいの年頃の女の子なんだよね。 フラッシュバックする過去の記憶。 『太って飛べなくなっても知らないから』 『とらが嫌いな魔女みたいに、胸がおっきくなっちゃうかもよ?』 あああ、いやだ。 あんな乳はいやだ。 頼まれたってごめんだあああっ! 「あ”っ――!! やってやるゥ、風船ダイエットォ!!☆」 「ブレスダイエットって懐かしいのです。久々にやって綺麗になってさおりんとデートするのです」 『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)は、頭くらくらさせながら、エクササイズに勤しんでいる。 「頭くらくらしてきたです」 おめめくるんくるんのどりん、レア。 (酸素ボンベで復活…あっいい事思いついたです。酸素ボンベじゃなくてさおりんの人工呼吸で……やだ恥ずかしい、でもあたし頭いいのです) 酸素吸いすぎで頭飽和してる。遅すぎたんだ。 ぶふー。 とりあえず、達也は一個手に取った。 ぷー。ぷー。ぷー……っ。 ややあって、ぼむっ。 「意外としんどいな……あと任せた!」 なにをぅ!? 「僕はいつものように料理作ってみんなの活躍を生温かく見守ってるよ! GE☆DO☆Uだね。でも僕パティシエだから!」 テヘペロ! 「みんなのモチベを保つのも大事なお仕事!」 美味しいご飯作ってくれなさい。 しかし、そのテヘペロダブルサムズアップの分、殴らせろ! ややあって。 「ラルカーナ料理(ぽいの)、はっじめました~!!」 ラルカーナの大地を模したトマトドリアに、クノア粥的ハーブリゾット。 ムイムイのパフェ。味は苺によく似ている。が、でっかい。噛み応えが違うぜ。 「うめえ……」 ぼそぼそと呟くとら。 だって、食わなきゃストレスたまるもんストレスはダイエットの敵だもんチキンライスとチーズとトマトソースのカロリーなにそれおいしいのおかゆはローカロリーだし甘いものは別腹ですよ!? 「真似できそうなものがあればレシピとか気になるところだよね。レパートリーが増えるのはお兄ちゃんも喜ぶと思うしね」 虎美さん。その愛を、血のつながらない相手に注ぐ気にはなれんかね。 「知ってございましたか?世界は愛と生クリームと砂糖菓子で出来ているのでございます。甘い物があればこのように和気藹々とするでございましょう? それが証拠。愛と甘い物があれば世界なんてどうにでもなるのでございます」 愛音、ドルチェ・ヴィータの勧め。 よろしい。ならば、甘いものだ。 スイーツ! スイーツ! スイーツ! 砂糖とクリームありありで! ● 「うん、慣れてくると楽しいね」 「うん、全然数減らないのならば最終手段あるのみですね」 「モクヒョウヲセンターニイレテブレス」 「みんなは危ないから外に出ててねー」 「もういやだぁあぁぁ、ここから出してぇええ」 「ドッサイショウは最後までとっておいた!?」 「ドッサイしか設定してないよ!」 「ジョブがなんだか分からないよ!」 「楽しいね楽しいね楽し……………」 「モクヒョウヲセンターニイレテブレス」 「風船特攻、らめえ!?」 「なんか、変な機械が見える」 「あははっはhhhhっはははhhh!!」 「タノシイネタノシイネ」 「死んだ魚の目!?」 「死ね死ね死ね死ね! クソ風船!!」 「ボクは、もう、だめだ。後は任せるよ……」 「そんな、年まで変わって」 「千景君、風船に何か吸い取られてる!」 「ここで倒れたら、きっとさおりんがさおりんがさおr……」 「こねえよ!」 「あのファミレス、どっかで見た……」 「娘が百合趣味だろうがバニー着て写真さえ取らせてくれれば問題ない!」 「ダイジョウブワタシハショウキダヨ」 「はっ!! この大きさ……乳の魔女のアレくらいかも……」 「カクカク」 「スーパーでお買い物して帰るんだ」 「欠片一片起こさずにぶっ飛びやがれ!!滅びろクズが!!」 「今夜のお夕飯、楽しみに待っててね、お兄ちゃん!」 「誰だこんな風船作ったのは」 「あいつらだ」 「乳女ァ、許せないぃぃい!!」 「ついでにこの部屋も蜂の巣だぁぁぁっぁーーーー!!!」 「職員さんが笑顔だ!」 「そこどいて、風船壊せない!」 「なんか出てきたぞ。送風口から」 「なんだ、あれ。おまえもここの職員だろっ!?」 「市民課なんでわかんねえよ!」 「オキシジェーン!」 「嘘だーっ!!」 「巻き込まれた自分のツキのなさを恨むよ」 「ビジョンが分散して……」 静寂。 ● 「「「「市民にとって幸福は義務です」」」」 「辛くともやり遂げるでございます!」 「「「「市民は風船を頑張って全部割ります」」」」 「レンガはもう勘弁な!」 「「「「市民はとても幸せです」」」」 スーパーエンドレスリフレインリピート。 ● こうして、ささやかな悪意の権化である風船は全て粉砕された。 「請求は、時村沙織へ」 うん、無理。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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