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【ラトニスの遺産】ぼくのアレキサンダー12世をさがしてください


 我輩は猫である。名前はある筈だが良く判らない。
 いやいやいや、ほら、ちゃんと名前もあるのだけど、何分我輩猫であるからして、同居人である所の人間が我輩をなんと呼んでいるのかがはっきり判別し辛いのである。
 まあ名前など判らなくてもかまわない。クロでもシロでも、1でも2でも、あの同居人が我輩に向かって呼びかけたなら其れが我輩の名前なのだろう。
 そうそう、1とか2。関係ないがなんと我輩、1から10までの数字を数えられるのである。いやいや、それどころか11と12の概念すら理解する天才猫。其れが我輩。
 無論我輩とて最初からこの様に天才だった訳ではない。いや天才の素養はあったのだろうが、思い返せば其れが開花したのはつい先日、見知らぬ人間に、今もこの首にぶら下がる鈴をつけられてからなのだ。
 ……あれ、じゃあこの鈴のせいなのだろうか?
 うーん。まあ、良い。故に我輩は天才なのである。
 見よ、この身から溢れ出す知性。どんな雌猫もメロメロであろう?
 我輩此れでもお年頃の天才紳士であるからして、美雌猫といちゃいちゃしたいのだ。
 しかし思えば少しばかり天才風をふかし過ぎたかも知れない。我輩、もう少しガツガツ行くべきだったのだろうか?
 うむ。途中まではデートしたり頭を使って餌を手に入れて食わせてやったりと良い感じだったのであるが、……ぶっちゃけフラレタ。
 良い毛並みの美猫だったのに、我輩一生の不覚。


 さて、ところで此処は何処だろう?


『ぼくのアレキサンダー12世をさがしてください』
 集まったリベリスタ達に『老兵』陽立・逆貫(nBNE000208)が差し出した紙には、一匹の猫の写真と共にそんな言葉が書かれていた。
「其れは先日の事なんだが。私は散策にある街まで遠出していてな。……其処の公園で泣きじゃくる一人の幼稚園児を見つけてしまったのだ」
 ああ、其れは放っておけないだろう。
 陽立・逆貫57歳。こう見えても子供好きである。
「周囲には他に大人も居らず、まあ私はこの通り車椅子だからな。子供に話しかけようとも行き成りの犯罪者扱いはされにくい。放っておく訳にもいかず宥めて話を聞きだしたのだが……」
 其処で先の迷い猫の話をされたのだろう。
 逆貫は一つ頷き、察して貰えるだろうとばかりに敢えて聞き出した話を飛ばす。
「私は此れでも失せ物探しは得意でな」
 逆貫に限らずフォーチュナは皆そうだろうが……、まさかこのおっさん、迷い猫探しにフォーチュナ能力を使ったのか。
「だが其処で一つの問題が発生したのだ」
 言葉と共に逆貫が差し出したのは、1つのアーティファクトの資料。



 資料
『Familiar spirits』
 とある付与術師が作成した使い魔を作る為の鈴型アーティファクト。ペットの首輪につけれる様に工夫されている。
 このアーティファクトを装着された動物は擬似的な革醒状態になりいわばフェーズ0の擬似E・ビーストとして人間並の知能を得、尚且つ身体能力も強化される。
 アーティファクトが外された場合はこの擬似的な革醒状態は解除され、知能も失われてしまう。
 このアーティファクトは付与術師が自らのペットである猫を使い魔とする為に作られたものだが、一つの大きな欠点がある。
 其の欠点とは、擬似的な革醒状態が数日続いた場合にはフェーズが進行してフェーズ1となり本当のE・ビーストと化してしまう事。



「そう、このアーティファクトを装着した状態の猫『アレキサンダー12世』を私は見てしまったのだよ」
 逆貫の眉間に深い皺が刻まれる。
「『Familiar spirits』は動物好きの付与術師ラトニスが作成した物だが、欠点に気付いた彼はこの失敗作を封印した。けれどその死後に彼の失敗作が大量に流出する事件が起きてな。その時に失われた物の一つだろう」
 賢いペットやペットとの意思疎通は一部の動物好きの夢だろうが、せめて後始末くらいはきちんとしておいて欲しかった。
 要するに今回の任務は……、
「諸君等への依頼はこの猫が本当のE・ビーストに成る前に捕まえてアーティファクトを回収、もしくは破壊し、猫を子供に返す事だ。無論生かした状態で」
 やっぱり猫探し。
 しかも三高平以外の街でとなれば、あまり派手な能力は使いづらい。
「出現しそうなポイントはある程度だが私が絞っている。……うむ。猫の知能は高く、普段とは別の意味で面倒臭い任務になるだろうが宜しく頼む。私は、子供の泣き顔は好かんのだよ」




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:らると  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年08月24日(金)23:03
 猫:アレキサンダー12世。我輩は天才猫である。子猫じゃないけどまだ若い猫。ノルウェージャンフォレストキャット。人間の言葉は理解出来ないため、意思疎通は困難。性格は疑り深く臆病。
 攻撃能力は爪。ダメージ0だがクリティカルすると顔に引っかき痕が残る。


 飼い主:正太郎。幼稚園児の男の子。猫の名前は彼と彼の父親の趣味。




 出現ポイント
 A・寂れた寺(朝) B・公園(昼) C・商店街(夕) D・駅前(夜)



 お好みのポイントを選んでください。

 戦いとかは無いです。
 逆貫もついて来ますが、車椅子だし動きは遅いのであまり役には立ちません。
 これ以上の予知も意味が特に無いです。
 ゆるゆると、気楽にドタバタ遊んでください。
 
参加NPC
陽立・逆貫 (nBNE000208)
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
クロスイージス
ステイシー・スペイシー(BNE001776)
ソードミラージュ
エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)
プロアデプト
ロッテ・バックハウス(BNE002454)
ダークナイト
カイン・ブラッドストーン(BNE003445)
ダークナイト
高橋 禅次郎(BNE003527)
ダークナイト
スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)
レイザータクト
恋宮寺 ゐろは(BNE003809)


 付与術師ラトニス。彼が最初に其の猫を飼い始めた事に深い意味は無い。
 昔黒猫は幸運のシンボルとして尊ばれた。『黒猫が横切ると不幸が訪れる』と言われるのは、幸運のシンボルである黒猫が横切って行ってしまう事で、幸運が逃げると思われたからなのだ。
 けれどやがてその『黒猫が横切ると不幸が訪れる』だけが拡大され、何時しか黒猫は不幸のシンボルとして忌み嫌われる事となる。
 少し捻くれ者だったラトニスは、知人に聞かされたその奇怪な経緯を気に入ったが故に、気まぐれに黒猫を手元に置いてみたくなったのだ。
 それから十数年の間、ラトニスはこの気まぐれで手に入れた、気まぐれでままならぬ同居人に振り回され続ける事になる。
 そして其の十数年は、彼の人生の中で最も幸せな時間だった。ラトニスがこの期間の間に作成したのは、其の殆どが動物の為のアーティファクトである。
 そして其の最初の一つが、この『Familiar spirits』。ペットを使い魔にする為の道具とされているが、このアーティファクトの効果に動物に意思を強制する類の物は無い。ただ、人と同じ知恵を、ラトニスは自分のペットに与えたかっただけなのだから。
 夕陽が山に沈む様を椅子に座って眺めるのを日課としたラトニスは、膝の上で興味無さげに眠る友人に、自分と同じ物を見て同じ事を感じて貰いたかった。
 其の想いは人としての傲慢だ。あるがままの友人の在り方を、歪めてしまう傲慢さ。
 だからこそ、このアーティファクトは其の傲慢さを嘲笑うかの様な欠陥を持ってしまったのだろう。
 ラトニスがこのアーティファクトを破棄しなかったのは、自戒以外にももう一つ、思い入れが深すぎたが為である。

 …………ゆっくりと瞳を開いた『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)は、己が手の中の鈴、Familiar spiritsを見て微笑む。
 さあ、教えてあげよう。彼女に視線を送る仲間達に。少し偏屈で不器用で、だけど心温かい付与術師がこの鈴に込めた想いを。
 今も暢気にリベリスタの一人『蒙昧主義のケファ』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)に抱えられ、差し出される『Manque』スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)の指をかぷかぷ噛んでいるアレキサンダー12世からこの鈴を回収した際の苦労とドタバタを思い返しながら。


 ブリーフィングを終えて約一時間後、先遣として出発したリベリスタ2名と逆貫が電車に揺られてやって来たのはある街の商店街。
 既に太陽は西の果てに半分ほど沈み、赤々とした夕陽が商店街を朱に染めている。
 人通りが少ない訳ではないのだが、夕焼けと幾つかの下りたシャッターが相俟って何故か何処か物寂しさを感じさせる……のだが、
「逆貫んとキャッキャウフフできると聞いたわぁん♪」
 違います。猫探しに来たんです。
「え、違うのぉ? それじゃあ、逆貫んと美少女とにゃんこのキャッキャウフフを見るために頑張るわよぉん♪」
 はしゃぐ『肉混じりのメタルフィリア』ステイシー・スペイシー(BNE001776)はそんな商店街の寂しさを打ち砕くテンションで逆貫に絡む。
「ねー? 両手に花でぇ、どんな気持ちぃ?」
 にやにやしながら顔を近づけてくるステイシー。
 何だろう、殴りたい。でも殴っても罵倒しても喜ぶだけだと、既に電車の中で充分理解させられた逆貫は彼女の顔を両手で掴み、思いきり良く捻る。
 ぐきり。
 割と容赦ない逆貫の報復が炸裂し、のたうつステイシー。だが其れでも彼女は嬉しそうな笑みを絶やしていない。一体どうすればこの鉄肉女にダメージを与えられるのか。
「たまにはこうして散策してみるというのも、楽しいものですね」
 二人のやり取りに一つ苦笑いを溢したスペードが逆貫の車椅子を押して歩き始める。
 最初は一度一度二人のやり取りに心配したり、仲裁したりと振り回された彼女だったが、やがて此れはこう言う物だと諦めたのだろう。
 在る店舗でアレキサンダー12世へと贈る為の首輪と鈴を購入するスペード。
 ゆっくり、ゆっくりと、三人は商店街を端から端まで行き、猫を探す。
 食べ物屋の近くを重点的に、ステイシーの透視をも駆使して念入りに。

 けれど一軒の店の屋根の上から、猫は地上を、周囲の人間とは雰囲気を異にする三人の人間が何かを探す様子を不思議そうに見下ろし、夕陽に向かって一声鳴くとその場を後にする。
 うにゃー。


「ねこ探し……だと……っ。これはリベリスタの仕事か? だいいち、俺達は忙しいんだ。いーびーすとになられても困るが、すぐに向かってとっとと終わらせよう。き……キングカズ?」
 そんな訳で俺達は夜の駅前に来たのだった。by『リベリスタ見習い』高橋 禅次郎(BNE003527)。
 何だか掘られそうな前振りをしつつ夜の駅前から辺りを見回す禅次郎。キングカズ違う。アレキサンダー12世。
 ところで如何でも良い事かもしれないが、其の格好(尻尾付きの黒の全身タイツ+猫耳)は恥ずかしくないのだろうか?
「対象の気持になるのは捜査の基本だにゃ。幻視があれば一般人には普通の格好に見えるはず、大丈夫問題無いにゃ」
 問題ないんだ……。
「うむ。捜査の為なら委細問題ないである。アームチェア・ディテクティブではない我等は、足で稼ぐのが一番であるな」
 禅次郎に向かって力強く頷く『黒太子』カイン・ブラッドストーン(BNE003445)。
 しまった。このペア突っ込み不在じゃないか。
「付与術師ラトニスも、このような結果を望んで作ったわけでもあるまい。誰も幸せになれないことなど望んでおるまい。ならばこそ我がその小さき幸せを救い上げよう!」
 言ってる事は、とても格好良い。格好は良いのだけど……、
「活目せよ! 咽びなく猫を眼に捕らえろ、我が無形の狂気を内包せし魔眼(千里眼)!」
 何か心に来る物がある。
 とは言え全てを見通すカインの千里眼と、禅次郎の超直観が合わされば探し物が逃れる術は無い。
 ちなみに良くある誤解なのだが、超直観は視界に入った物を心に留め置く、捨て目が利く力であり、直感能力に優れるようになる物では無いので注意が必要だ。
 彼等が見つけたのは、優美な長い毛を持つ猫の姿。カインのいう所のモフモフ猫である。
 左右に分かれて挟み討つ様に近寄ってくる禅次郎とカインを視界の端に捉え、大きく欠伸をするアレキサンダー12世。一見暢気な風にも見えるが、よくよく観察してみれば、耳はピンと立たせ、尻尾も盛んに振っている。
 どうやらお猫様は若干ご機嫌斜めのご様子だ。
 カインの差し出す牛乳、猫缶、猫じゃらし、更には禅次郎必殺のシ○バ(ちょっとお高いカリカリ。お猫様がやたらと喰い付く)は充分にアレキサンダー12世の興味を惹いたのだが、鈴を取ろうと伸ばした手は煩わしげに其の肉球ぷにぷにの掌で押し返される。
 牛乳、猫缶、シ○バは平らげ、尚且つ猫じゃらしは猫離れした尋常でない反応速度で掴み取るアレキサンダー12世。
 ぶっちゃけまだ此処で捕まるわけにはいかないのだ。だってまだ後4人、残ってる。
 数々の貢物に、満足した様子は見せて一定の手応えは感じさせた物の、食べる物を食べてしまえばもう用は無いとばかりにダッシュで逃げていく。
 闇夜に紛れられてしまえば千里眼でも追うは難しい。せめて明かりが充分は昼間であれば、カインの能力を妨げるものは何も無かったのだが、兎に角初日の探索は此処までだ。
 うにゃうにゃ。


 次の日の早朝、ラジオ体操が似合いそうな寂れた寺に集まった二人のリベリスタ。
「はよーございまーす」
 おはようございます。
「なんか班分けて行動するらしいんだけど」
 そうですね。本当に何で班分けして全部まわるんだろう。
「えっとアタシはおじーちゃんと捜索ね。ヨロシクーおじーちゃん」
 この子良い子だなぁ。ちなみに彼女は『Le blanc diable』恋宮寺 ゐろは(BNE003809)17歳。ぱっと見女子プロレスラーな肉体派金髪ギャル。
 ゐろはの言葉に、
「ねこ探しなら何度か仕事でやってるから大丈夫。根拠はないけど大丈夫」
 おじーちゃんと呼ばれたもう一人のリベリスタ、エレオノーラ……年齢はゐろはの五倍近くが、一つ頷く。
 一見すれば可愛らしい細身の美少女にしか見えないエレオノーラだが、其の実体はむにゃむにゃ。詐欺にも程がある話なのだが、寧ろ其れが良いって人も居るらしいので世の中わからんもんである。
 さて、異色の二人組と言えどもリベリスタはリベリスタだ。やる事を忘れたりはしない。 
 ゐろはの感情探査で大雑把に居場所を絞り、エレオノーラの熱感知で更に特定する。
 そう、特定は出来たのだ。けれど其の場所こそが問題だった。
「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空……(以下略)」
 朝のお勤めに読経するこの寂れた寺の住職の傍らにちょこんと座り、ポクポクと上下する木魚ばいを視線で追うアレキサンダー12世の姿。探知できた感情は『好奇』。余程木魚のリズムに心惹かれたのであろうけど、割と手の出し様のない無敵空間に居座られている。
 住職の邪魔にならない様に、遠くからこっそりと猫じゃらしを振って猫を呼ぶエレオノーラ。
 エレオノーラの必死の念が届いたのだろうか、後ろを振り返った猫とエレオノーラの視線が絡み、ゐろはの探知するアレキサンダー12世の感情が変化する。『好奇』から『(笑)』へと。
「ンのクソ猫!!! オラ待てコラァー!!!!」
「フギャー!?」
「ゐろはちゃんストップ! 猫との対話は愛情よ!」
 クラウチングスタートのダッシュから突撃するゐろはと必死にしがみ付いて止めるエレオノーラ。ついでに全力で逃げ去るアレキサンダー12世。
 ゐろはが怒るのも無理は無い。猫の行動は邪気が無いと思えばこそ可愛くうつるが、高い知恵を持って悪意を見せるなら憎たらしいだけである。
 それに何より、アレキサンダー12世が馬鹿にしたのはゐろはで無く仲間のエレオノーラなのだ。馬鹿にされた当人の制止にも喧嘩っ早いゐろはは止まらない。
 しかし、
「喝!!!」
 住職の一喝が周囲の空気を凍らせた。そう、今、住職さん朝のお勤め中。
 2人が騒いだ事情は判らぬが、取り合えず叱る事に決めた住職さんの目は怖い。
 その後二人は読経に付き合わされた挙句に説法を受け、朝御飯をご馳走になってから解放されました。
 うみゃうみゃ。


 太陽は既に空高く上り、じりじりと地が焼ける正午。
 今回派遣されたリベリスタの最後の一組、雷音と『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)が公園へと姿を現す。
 ターゲットであるアレキサンダー12世は、暢気に公園のベンチの上に陣取り耳の後ろまで手でクシクシと顔を洗う。
 午後の天気予報は雨。恐らく此れがアレキサンダー12世を捕まえ得る最後の機会だ。
 他の仲間達も失敗時に備え、既に公園を取り囲むように包囲を成立させている。
「ここでいきなりの天才的作戦その1! 猫耳しっぽで、親近感を抱かせる! わたしも猫耳~! ぶにゃあ~!!」
「や! 敵意がないことを表しているのだぞ! ボ、ボクには似合わないかもしれないがっ!」
 うんうん。確か既に禅次郎さんもやってた気がするけど画期的だね! ロッテさん天才的だね! 親近感抱かれはしないと思うけど可愛いよ! まあ、うん。
 敵意は兎も角、其の格好は雷音さんの趣味ですね。似合うけど、やーい。ぷくく。
 もういっそアレである。スペードちゃんも、鉄肉女ことステイシーさんも、カインくんも、性別詐欺のエレオノーラさんも、ゐろはちゃんも、皆纏めて全員猫耳猫尻尾の仮装すれば良いのだ。きっと可愛い。指差して笑う。
 其れはさて置き、
「ウホホ~! ホホホイ! ウホンヌ?(アレキサンダー様を見つけ、お色気アピールをして欲しいのですぅ! できますね?)」
 動物会話で自分のペット、Sleepyにアレキサンダーを誘惑て欲しいと願うロッテ。何でゴリラ語なのか。
 とは言え、飼い主の奇矯な行動には既に慣れっこなのだろう。眠たげな目を開け、雑種系プリンセスSleepyは一つ大きな欠伸をする。
 飼い主の為である。気が乗らなくても動くのは構わない。けれど其の為には……、『わかってるんでしょ?』とばかりに尻尾を大きく一つ振り、ロッテを見上げるSleepy。
 労働には対価が必要なのだ。

 好物の煮干をせしめ、太い尻尾を揺らしながら歩き出すSleepy。其の尻尾の先端には、雷音がアレキサンダーの飼い主である正太郎より借り受けた可愛らしいハンカチが結び付けてある。
「にゃー」
「にゃー?」
 近寄るSleepyの不意の鳴き声に、一瞬腰を浮かして逃げそうになったアレキサンダー12世だったが、嗅ぎ慣れた匂いのハンカチに気付き(猫の嗅覚は人間の数万~数十万倍)、近寄り、彼女の横に並んで座る。
「「にゃー」」
 時間は12時40分。捕獲作戦発動から約20時間あまりを経て、アレキサンダー12世捕獲完了。
 うにゃーご。


「こんにちは、正太郎さん。アレキサンダー12世さん」
 正太郎宅へと移動し、飼い主である彼に猫を引き渡したリベリスタ達。
 幼稚園児の腕には重いだろうに、しっかとアレキサンダー12世を其の腕に抱える正太郎に、スペードが改めて挨拶する。
 アレキサンダー12世の首にはスペードが先日商店街で購入した首輪と鈴が。
 本当は雷音もアレキサンダーへの鈴を用意していたのだが、スペードが用意したプレゼントを見てこっそりとポケットの奥に隠してしまったのだ。照れ屋で気遣いが過ぎる事、それが彼女の長所で欠点。
 けれど、この場には良く見える目が一つ居る。そして仲間想いの優しい仲間達が。
 耳打ちされ、不意打ちで雷音を抱き締めるステイシー。突然の事にもがく彼女のポケットから、ゐろはが鈴を抜き取る。
「あ、これかわいーね」
 ゐろはの言葉に、羞恥で動きを止める雷音。
「うむ。もふもふ猫に合いそうであるな」
「…………、あ、そ、そうだな」
 カインの追い討ちに、アレキサンダー12世の毛並みを楽しんでいた禅次郎も我に返り同意する。
「すっごいもこもこもふもふね!」
 普段は割とクールなエレオノーラをも魅了する魅惑の毛並み。ノルウェージャンフォレストキャット。
 2つの鈴が首元に光るアレキサンダー12世。
「宜しければ、正太郎さん。この子のお名前を一緒に考えていただけません?」
 仲間達の優しさに目を細めて笑いながら、スペードは自分の連れてきた猫を正太郎に見せる。
 普段はそっけないけれど、落ち込んだ時はちょこんとそばに寄って慰めてくれる、優しい猫。
 ずっと『旦那様』と呼んでいたけれど、ちゃんとした名前をつけてあげたい。そんな彼女の願い。
 ちなみに正太郎宅のペットは雄は全てアレキサンダー○世であり、雌はクレオパトラ○世だ。12世は今の所一番年下のこの家の子。
 だから当然正太郎が名付けると当然……、
「あなたのお名前は、アレキサンダー13世です。いつも、ありがとう」
 笑顔で己の飼い猫を抱き締めるスペード。本人が良いなら、まあ、良いか。可愛いし。
 皆が笑う。猫と、猫と戯れる人々の前では、仏頂面の多い逆貫でさえもが笑顔だ。
 ほんの一時の幸せが此処にはある。





『我輩は猫である。名前はアレキサンダー12世。あそんでくれてありがとう』

 おしまい。にゃおにゃお。

■シナリオ結果■
大成功
■あとがき■
 君等かわいいな。





 お疲れ様でした。
 皆可愛かったのでこの結果です。