● 彼らは怒っていた。 理由は、いたってシンプルである。暑いからだ。 夏である以上、暑いのは当たり前なのだが。 人の手で本来の生息地を離れることを余儀なくされた彼らには、この国の風土など関係なかった。 ――とにかく暑い。暑すぎる。 せっかく自由の身になったというのに、それを楽しむ心の余裕もない。 彼らの怒りが頂点に達しかけた時、前方に大きな湖が見えた。 天の助けとばかり、彼らは湖に駆ける。 これだけの大きさの湖だ。 水面を凍らせれば、少しは涼むことができるだろう。 顔を見合わせた彼らは、全員でありったけの冷気を解放する。 目の前で、湖がたちまち厚い氷に閉ざされていった。 ● 「山奥の湖にいるE・ビーストたちを、倒してきてほしいの」 空調がきいたブリーフィングルームで、『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタ達にそう告げた。 直後、撃破対象となる三体のE・ビーストが、正面のモニターに映し出される。 ホッキョクグマとキングペンギン、ゴマフアザラシ――動物園から逃げ出したのだろうか、と思えるラインナップである。いずれも、かなり巨大化しているようだ。 北極圏に住むホッキョクグマと南半球にしかいないキングペンギンが一緒にいるとか、どう見ても成獣としか思えないゴマフアザラシがふわふわの白い産毛に覆われているとか、色々と突っ込み所は満載だが、神秘のやることなので深く追求しない方が良いだろう。 「みんな寒い地域の動物だから、この暑さでかなり気が立ってる。 少しでも涼しくなろうとした結果、湖を丸ごと凍らせてその上に居座ってるというわけ」 湖はかなり大きく、長射程の攻撃をもってしても湖の外からE・ビーストたちを狙い撃つことはできない。つまり、どうあっても氷の上で戦わなければならないということだ。 空を飛べるか、よほどバランス感覚が優れているなら別だが、そうでなければ相応の対策をしていかなければ厳しいだろう。 「見た目は割とかわいいけど、どれも強力なE・ビーストだから気をつけてね」 イヴはモニターに映る動物たちに視線を向けた後、リベリスタ達に向き直って言った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:宮橋輝 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月25日(土)22:48 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 一面凍りついた湖が、真夏の太陽を照り返して輝いていた。 「……暑いぞ! 我々はー、この暑さにー、断固として抗議するー!」 眼前に広がる涼しげな光景と気温のギャップに、『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)が堪らず叫ぶ。シベリア生まれの彼女に、この暑さはきつい。 「まったく太陽め……ちょっと地軸が傾いたからと大はしゃぎしおって!」 拳を握って息巻くも、次の瞬間には犬の如く舌を出してしまう。 「本当に暑いですね」 額の汗を拭う『のんびりや』イスタルテ・セイジ(BNE002937)の隣で、『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)が湖の中央、氷上で涼む三体のE・ビーストを見た。 「夏が暑いのは動物も一緒なんだね」 「この暑さですし、凶暴になっちゃうのは理解出来る気がします……」 二人のやりとりを横目に、『Save The World』アルフレッド・ナイツ(BNE004007)が「……ふむ」と難しい顔になる。 「確かにこの暑さには辟易するものがありましたが、それで湖を丸ごと凍らせるとは」 「ただでさえ、暑くて大変なのに、余計なことしないでほしいよね?」 うんうんと頷く『歪な純白』紫野崎・結名(BNE002720)に続き、『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)が口を開いた。 「こう茹だる様な日が続くと、気持ちわからなくもないのですが。 やはり捨て置くわけには参りませんね」 E・ビーストと化した動物達を討つのが、今回の任務。 (いけません、しっかりしないと) イスタルテは気を取り直すと、全員に小さな翼を与える。 翼を持たぬメンバーも足場の対策はしてきているが、氷上の戦いとなれば断然この方が動きやすい。 リベリスタ達は足並みを揃え、凍った湖に歩を進めた。 「おっきなふわふわもこもこすべすべですか~。 エリューションでなければ~、思う存分手触りを堪能している所ですね~」 背の白い翼を羽ばたかせ、ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)が間延びした口調で言う。氷上に寝そべる大きな動物達――白熊とペンギン、アザラシを見て、セラフィーナが思わず目元を和ませた。 「だるそうにしてる動物も可愛いなあ。もふもふしたい」 倒さなければいけないと理解してはいるが、それでも動物園に来たような錯覚を覚える。『ビタースイート ビースト』五十嵐 真独楽(BNE000967)が、満面の笑みを浮かべた。 「まこ、動物園大スキ!」 明るく言った直後、僅かに身を震わせる。 「まあ……こんな寒い動物園とは思わなかったけど」 湖の外側とはうって変わって、氷上の気温は低い。首にマフラーを巻く真独楽のやや後方で、『薄明』東雲 未明(BNE000340)が黒いコートの襟元をかき合わせていた。 「……寒いの嫌い」 接近するリベリスタに気付き、動物達が立ち上がる。結名が、小さく首を傾げた。 (しろくまさんや、ぺんぎんさんや、あざらしさんのお肉って美味しいのかな……?) そもそも食用になるか不明だが、倒せば珍味として売れるかもしれないという考えがふと浮かんだ。 「よーし、がんばろー♪」 別の方向に気合を入れつつ、体内の魔力を活性化させる。 仲間達が一斉に自らの力を高めていく中、ベルカが防御動作の共有で全員の守りを固めた。 射撃手としての感覚を研ぎ澄ませた『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)が、両手に二丁の銃を構えて動物達を見据える。 「――いつも通り、『お祈り』を始めましょう」 つぶらな瞳に心痛まぬわけではないが、人に害をなす神秘と戦うことこそ彼女の信仰。 「倒すしか手段が無いのが、彼らにも申し訳なくありますが。 世界を護るため……微力を尽くさせて頂きます」 鎧の上に纏ったローブを靡かせ、アルフレッドが剣を抜き放つ。 「我が名はアルフレッド・ナイツ。世界を護る為、いざ!」 騎士たる青年の名乗りとともに、リベリスタ達の戦いが幕を開けた。 ● 「天使姉妹の……何女かな? えーと、セラフィーナいきます!」 全身を速度に最適化したセラフィーナが、白熊に向かって全力で羽ばたく。 「あなたのお相手は私達ですよ~」 彼女とともに白熊の抑えを担当するユーフォリアが、翼を広げて空中に立ち塞がった。白い翼の女性達が氷上を舞う様は、確かに天使の姉妹を連想させる。 続いて、真独楽がペンギンに駆けた。 敵の範囲攻撃に備えて自らの位置を調整しつつ、白熊やアザラシを横目に見る。 「シロクマさんもペンギンさんもアザラシさんも、やっぱすっごくカワイイ!」 真独楽が歓声を上げた瞬間、腹ばいになったペンギンが氷の上を滑って突っ込んできた。 後方に跳んで直撃を避けたところに、凍てつく冷気が襲う。氷に封じられた真独楽を、カルナが聖神の息吹で救った。 もふもふすべすべの動物達は確かに可愛いが、あの巨体から繰り出される攻撃は脅威だ。 後衛に立ったベルカが、攻撃の効率動作を共有して全体の戦闘力を瞬時に向上させる。 「うおおお、周りが涼しいから何だか効果も高まってる気がするぞー!」 氷の上ですっかり元気を取り戻した彼女を、アザラシがつぶらな瞳でじっと見詰めた。 白い産毛に覆われたゴマフアザラシの愛らしさに抗いきれず、虜になってしまう。 「今の私にはこのくらいしか出来ませんが……」 カルナを守るが如く彼女の前に立ったアルフレッドが、すかさず動いた。 「清浄なる光、穢れ祓え!」 邪を退ける輝きが戦場を包み、ベルカの心を取り戻す。 「惑わされては、なりません……!」 リリが、聖別された二丁の銃をアザラシに向けて引金を絞った。蒼き軌跡を描く魔弾が、立て続けに胴を穿つ。 後足で立ち上がった白熊の一撃を、セラフィーナが紙一重でかわした。 「通さないよ。キミの相手は私。ね、遊ぼう?」 姉が遺した霊刀“東雲”を構え、流れるような動きで華麗な突きを入れる。 光の飛沫が散ると同時に、刃の切っ先が白熊の片目を貫いた。 白熊がセラフィーナの術中に陥ったのを見て、ユーフォリアが集中を高める。 巨体の動物達を完全にブロックするには、どうしても前衛の数が足りない。せめて、最優先目標であるアザラシを倒すまでは、白熊の後衛接敵を何としても阻む必要がある。 状態異常で白熊とペンギンの動きを可能な限り封じ、それが叶わない時は白熊を吹き飛ばして後衛から遠ざける――というのがリベリスタ達の戦術だった。 真独楽が、すばしっこいペンギンを煌くオーラの糸で絡め取る。 それを見たアザラシが、癒しを秘めた冷気でペンギンと白熊の状態異常を消し去った。 「やはり、アザラシの回復は厄介ですね……」 漂う冷気から眼鏡のレンズを無意識に庇いつつ、イスタルテが厳然たる意志を秘めた光で動物達を灼く。 リベリスタ達がアザラシに攻撃を集中していく中、未明が眼前に広がるふわふわの白い産毛を見て僅かに眉を寄せた。 「――それにしても、少しくらいモフらせてくれればいいのに!」 思わず本音を口にしつつ、全身の闘気を爆発させる。破滅の斬撃がアザラシを捉えた瞬間、ベルカが閃光弾を投じてペンギンとアザラシを封じた。 「アザラシさんをお肉にしちゃうよー」 結名が、誘導性の真空刃を生み出してアザラシを狙い撃つ。 緩やかに弧を描いた神秘の刃が、アザラシの大きな背を切り裂いて止めを刺した。 ● 順当に一体目を撃破したリベリスタ達は、続いて白熊を狙う。 「気持ちは分かんないでもないよね。確かに今年、ぐったりしちゃうほど暑いもん」 猛り狂う白熊に接近した真独楽が、両手の鉤爪を鋭く振るった。 「――でもまこ、夏も大好き! 海やプールで泳いでも楽しいし、山でキャンプだって楽しいし、夏フェスもあるし!」 音速を纏った爪が、巨体を覆う分厚い毛皮を抉る。 辛くも麻痺を逃れた白熊に向けて、ユーフォリアがしなやかな肢体を宙に舞わせた。 「ここからは攻め攻めですよ~」 空中で方向を変え、真正面から白熊を強襲する。彼女の指先で、二個のチャクラムが踊った。 ゆったりとした口調とは裏腹に神速を極めた斬撃が、白熊を錯乱状態に陥らせる。 ベルカが、スパイク型銃剣を取り付けたモシン・ナガンM1891/30――亡き同胞の遺品たる“один/два”を両手で構えた。 前衛三名が白熊に接敵している以上、味方を巻き込まずに閃光弾を投じることは難しい。 ならば、銃の力をもって敵を撃つまで――。 ベルカの意志が魔力の弾丸となって白熊を貫き、その身を呪いで蝕む。いよいよ混乱を極めた白熊が、狂ったように咆哮した。 己をがんじがらめに縛るオーラの糸を力任せに引き千切ったペンギンが、大きく息を吸い込む。 全てを凍てつかせる冷気が、リベリスタ達に激しく吹きつけた。 アルフレッドが回復の軸を担うカルナを咄嗟に庇い、彼女の代わりに冷気を受けて全身の動きを封じられる。 すかさずカルナが詠唱を響かせ、聖なる神の息吹を呼び起こして彼の身を癒した。 「大丈夫ですか?」 自分を気遣う彼女の声を聞き、アルフレッドが口を開く。 「この身は盾……神に仕えし乙女を護る為ならば、幾らでもこの身を捧げましょう」 恭しく言葉を返す彼に、カルナも「ありがとうございます」と礼を述べた。 「ブレイクフィアーは私が。皆さんは攻撃をお願いします」 戦況をぐるりと見回したイスタルテが、全員に声掛けしつつ邪を払う光を輝かせる。 リベリスタ達を縛る氷が、瞬く間に砕けて消えた。 直後、リリが二丁の愛銃――「十戒」と「Dies irae」を構え直し、蒼き魔弾を白熊に叩き込む。 肉体の枷を外した未明が、ロングコートの裾をはためかせて白熊に迫った。裂帛の気合とともに振り下ろされた剣が、巨体に深い傷を刻む。 今なら戦況に余裕があるだろうと判断した結名が、エネミースキャンで二体の動物達を分析した。 「シロクマさんには、状態異常は効きやすいと思います。 ペンギンさんは動きが速いし、そのぶん回避力も高いみたい」 得られた情報を全員に伝えた瞬間、白熊が激しい吹雪を巻き起こした。 仲間であるはずのペンギンをも巻き込み、視界を白一色に染める勢いで氷雪を叩きつける。 「可愛くても、もふもふでも……エリューションは倒しちゃうんだから!」 風の流れる方向に飛んで直撃を逃れたセラフィーナが、愛刀を構えて白熊に再び肉迫した。 「アクセル全開!」 極限まで高められた身体能力のギアを活かし、さらに加速する。 獣の反射神経で咄嗟に反応した白熊にフェイントを交えつつ、セラフィーナは光の飛沫を散らす刺突を繰り出した。 間髪入れず、真独楽が白熊の懐に飛び込む。 「――誰だってヤなモノはヤだから、夏の楽しさを分かってなんていわないよ?」 白熊と真っ直ぐ目を合わせ、真独楽は「でも」と続けた。 「すぐ秋になって、冬になるのに……どぉしてもーちょっとガマンできないかなっ!」 両手の鉤爪が、風を切って唸る。音速を超えた連撃が、白熊の巨体を氷上に沈めた。 ● 仲間を相次いで倒されたペンギンの顔が、一瞬、悲しみに沈んだように見えた。 ペンギンはリベリスタ達を睨むと、深く息を吸って凄まじい冷気を撃ち出す。 全てを氷に封じる不可視の衝撃の前に、アルフレッドが揺らいだ。 「まだまだ……立ち続ける限り守るのが騎士の定め」 誇りを胸に、己の運命を燃やして崩れかけた膝を支える。 続いて、巨大な氷柱が結名の頭上に落ちた。彼女もまた、運命の恩寵でその場に踏み止まる。 散開していたおかげで、他に巻き込まれた者はいなかったのが幸いだろうか。 十字架を頂いた権杖(ジェーズル)を胸の前に掲げたカルナが、祈りを込めて詠唱を響かせる。 彼女の願いにより顕現した癒しの息吹が、リベリスタ達を抱くように優しく包み込んだ。冷気で負った凍傷が、たちどころに癒えていく。 なおも仲間を蝕み続ける氷を、アルフレッドが神々しい光を放って消し去った。 運命を差し出そうとも、そう長い間はもつまいが―― (――それで良い。今の私にはこのくらいしか出来ないのだから) 倒れるその瞬間まで、全力を尽くして皆を守り続けるのみだ。 命の危険を感じ取ったためか、ただ一体取り残されたペンギンの動きは一段と素早く、リベリスタ達の攻撃もなかなか有効打に至らない。 しかし、前衛達でペンギンを囲んでしまえば、回復の厚いこのメンバーにとって致命的な脅威にもなりえなかった。混乱や氷結を確実に解除し、全員の体力に気を配りつつ、ペンギンの隙を窺う。 「お仕事だもんね。かわいそうだけど倒さないと」 つやつやすべすべの大きな翼をばたつかせるペンギンを見て、セラフィーナが自分に言い聞かせるように呟いた。側面に回り込み、死角から鋭く突きを入れる。かつて鬼の王を貫いた夜明けの刃が、ペンギンを捉えた。 舞い散る光に幻惑されるペンギンに向けて、ベルカがモシン・ナガンM1891/30の銃口を向ける。 彼女にとって、暑さから逃れたい一心で湖を凍らせた動物達は他人とは思えない。 「思わず同志と呼びたくなるが、残念ながら敵なのでな…… せめてヒンヤリしたまま逝くが良い!」 放たれた弾丸がペンギンの腹を撃ち抜き、内に秘めた呪いで心身をがんじがらめに縛り付けた。 好機とばかりに、リベリスタ達が一気に畳み掛ける。 「まこの夏への情熱は負けない!」 淀みなく振るわれる真独楽の鉤爪が、音速の刃となってペンギンを襲った。 続いて、ユーフォリアが両手で操るチャクラムを高速で回転させる。 「このまま押し切るのですよ~」 二つの円刃が対をなし、多角的な軌跡を描いてペンギンに激しく喰らいついた。 追い撃ちとばかり、結名が神秘の真空刃を投じる。充分な集中から放たれた一撃は、ペンギンを過たずに切り裂いた。 背の翼を軽く羽ばたかせて低空飛行を維持するイスタルテが、すかさず狙いを定める。 「回復される前に叩いてしまいましょう」 全てを厳然と焼き尽くす聖なる光が戦場を包み、氷上の戦いに決着をつけた。 ● ペンギンが、大きな音を立てて氷の上に倒れこむ。 動物達の亡骸を眺めると、彼らの巨体が改めて目についた。 「倒した後には、正しいサイズに戻ったりしないものでしょうか……」 カルナが思わず呟いたものの、大きさが変化する兆しはない。 ここまで巨大化していなければ、もっと可愛らしく見えたかもしれないが。 あちこち傷ついてはいたが、動物達の体はもふもふすべすべふわふわな感触を辛うじて保っていた。 「あーん、戦闘入る前に、写メとっとけばよかったかなぁ……失敗したかもぉ」 未だ生前の面影を残す亡骸を目の当たりにして、真独楽が天を仰ぎながら嘆く。 ナイフを手にした結名が、白熊の前にそっと舞い降りた。 「お肉にしたら売れるよね、たぶん」 白熊を解体すべく、おもむろにナイフを突き立てようとして――周囲に全力で止められる。 仕留めた獲物を食べるという考え方は、それはそれで間違ってはいないのだろうが……まあ、何しろ元が革醒した動物の肉だ。増殖性革醒現象の心配がないとしても、みだりに売りさばいて良いものではないだろう。 何はともあれ、無事に任務完了である。 リベリスタ達は、帰る前にしばし涼んでいくことにした。 湖の氷が溶けるまでには、もうしばらく時間の猶予がある。 せっかくここまで来たのだから、少しくらいは楽しまねば損というものだろう。 素早くスリングショットの水着に着替えたユーフォリアが、氷の上に寝転ぶ。 「ひえひえで気持ち良いですよ~」 彼女に手招きされ、セラフィーナも氷の上に立った。 照りつける日差しの熱さと、足元から伝わるひやりとした冷たさの対比が心地良い。 「折角ですし私も」 鎧を脱いだアルフレッドが、素足で湖面に触れる。 ふと顔を上げれば、一面に広がる氷の湖が鏡のように太陽を映していた。 「綺麗ですね……」 背の翼を操り、少し高みからそれを眺めるイスタルテが、思わず呟きを漏らす。 真夏に、このように冬を思わせる幻想的な光景を楽しむことができたのは、ある意味で幸運だったかもしれない。 やがて、足元の氷が少しずつ緩み始める。 これ以上は危険だと判断したリベリスタ達は、再び翼の加護を得て湖の外に移動を始めた。 「ああ、また暑くなるのだろうな……ああ……」 じりじりと上がっていく気温を感じつつ、ベルカが舌を出す。 「時間よとまれー、おまえはすずしいー」 彼女の切実な叫びが、魔法の解けかけた湖に響いた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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