●状況開始 『ラ・ル・カーナ橋頭堡』での敗北。 バイデン達の威圧に屈したリベリスタ等は仲間を囚われ、流れる血を砂で無理やり止血して、荒野の砂を齧り、足を引き摺り、泥を被って、ボトム・チャンネルまで撤退した。 敗戦から数日。 しかし、黙ってそれで引き下がる程、リベリスタ達は大人しく無かった。 戦略司令室で検討される今後の方針。 その検討を強力に揺るがしたものは、他でもないリベリスタ達の意志――『即座にラ・ル・カーナに進撃するべし』という強硬論である。 これに対して、戦略司令室室長の時村 沙織が半ば呆れながらも、予想していたかのように追加戦力の采配を振る。 本来ならば避けたい『借り』を代価に『塔の魔女』アシュレイが出撃する。フォーチュナー達が出撃する。 ここにアークの総意が決された。 『あのクソ巨人どもの首根っこを押さえつけて地べたに叩きつけながらぶん殴ってやれ』 アークは、あの荒野に巨人の死体で"垣"を作れと言っている。 信心深き者は十字を切れと言っている。 徳の高き者は仏に念仏を唱和せよと言っている。 八百万のゴッドに祈る者は、戦いの神に祈るのを忘れるなと言っている。 不信徳者や、糞食らえと思う者がいるならば、敵に唾吐けば良い、と言っている。 巨人どもに砂を舐めさせよ、と言っている。 流れる血を砂で無理やり止血させ、荒野の砂を齧らせ、足引き摺らせ、泥を浴びせよ、と言っている。 そして、囚われた仲間を取り戻せと言っている―― 不届きな蛮族に知らしめねばならない時。 武器を持つ敵同士が出会えば、殺し合いの他には何もない。 進撃の時。復讐の刻。 鬨の声を上げ、憤怒と嘆きの荒野を血に染める復讐戦の時が幕を開ける。 ●風車の後継 かつてラ・ル・カーナ橋頭堡の防衛戦にて"アヴァラ"というバイデンが現れた。 通称『隻腕』。 その個体は、極限にまで鍛え抜いた片腕に、百戦で練磨したような巨鉈を携え、しかし軽々と風車のように振り回した重騎兵であった。 駆る巨獣はグバルグバン。 攻撃性能や頑強さはヘビーライナスに劣るが、最大の武器はその重量と機動力。 巨鉈の風車を乗せた超重生物は、防衛時に罠地帯を突破し、防御を崩し、クロスイージスを引き摺り、水堀りの中でようやく果てた破壊の塊の如きものであった。 開戦と同時に"新たな風車"が躍り出る。 吹き出した鉄砲水の如き気魄の最先鋒。 黒々とした巨鉈と交差する赤い巨鉈は、辻斬りの様に命を刈り去るバイデン達の切り込み隊。 立ったまま水堀りで果てたアヴァラの、その誉れ高き巨鉈を継いだ若きバイデンが先頭を務める。後ろには命知らずどもが続く。 先駆けこそ兵(つわもの)の花。 ヘビーライナス部隊に先駆けて、一番槍がごとき風車。 「俺は『ラガル』! アヴァラの意志を預かる者よ!」 風車の後継が、その標を高らかに掲げた。 真っ向勝負。一陣の風が眼前に迫る。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Celloskii | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月20日(月)22:58 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●歪んだ楽園の果ての先 -Lost World- 鼻孔の奥に、乾いた土埃が貼りついた。 肌に触れる空気は、生暖かいとも冷たいともつかない。 空気を伝う暑苦しい気魄が、背筋やうなじの辺りをちりちりと焼く。時折に後方から吹く風。かすかに混じる森林の匂いが、束の間に暑苦しさを忘却させる。 耳に戦場の音色が戻ってくる。 やがて戦いの高揚が胸裏に起こり、鼻孔の不愉快さも、何処かへ運びさってしまうだろう。 運ぶ果ては何処か。 煮え滾る様な赤い荒野に、煮え切らない空模様。その境界が曖昧になる所へ、去るのだろうか。 裏に見える、草原と森林。青々とした空模様が合わさってグラデーションを描く所へ、行くのだろうか。 雲の裏かもしれない。 底ともつかない。…… ――弾丸の音が、引き裂いた。 『仁狼』武蔵・吾郎(BNE002461)が出る。 吾郎の脇より、すり抜け抜けた弾丸が飛び去り、一番槍となって一番槍の肩を削ぐ。 止まらぬグバルグバン。眼前に迫る指揮官、ラガル。 吾郎が進路を転進し、側面より剣を振り下ろした。 「降りて来いよラガル、誉ある戦士なら戦うよなぁ!」 バイデンが戦士ならば、受けると胸裏に馳せる。 一吹きする風が停滞した様な時間を作り、その間にラガルと目が合う。合って次が動く。 「『リベリスタ』! お前が我らを受ける者か!」 吾郎の眼前に赤い巨鉈が現れて、剣は防がれた。 防がれたが、吾郎はこれを押し込もうとせず、翻るように飛び退く。 飛び退いて間もなく、ぱちり、と光の様なものがジグザグ模様を描いてラガルに突き刺さった。 「戦闘に飢えてるなら、素通りせずに相手をしてもらいたいんだがな!」 雪白 音羽(BNE000194)が放った電光が、吾郎に視線を運んでいたラガルの、その横っ面を思いっきり殴りつける。 音羽が笑い、ラガルを見る。ラガルがニヤりとして音羽を見る。 交差する視線は一瞬。一瞬だが退屈な一分より余程長い。 グバルグバンが猛スピードで詰めて来ている、来ているが距離に時間が、恐ろしく長く感じる。 「イザークめ、アヴァラよ。最前線にはこれ程の愉悦があったか」 『ぴゅあで可憐』マリル・フロート(BNE001309)は、硝煙を吹き消す間も惜しんで次弾を装填する。 「あの時の片腕の無いバイデンは『アヴァラ』っていう名前だったですかぁ」 マリルが思い出すものは、黒い巨鉈の本来の所有者。 「敵ながらすごい相手だったのですぅ」 くるりと魔銃を一回転させてアーリースナイプを発射する。 肩を削ぐ程度であったものを、今度こそ当てる。 飛翔する弾丸がラガルの胸を穿つ。 マリルの忍び声が届く距離ではない、だが初撃の弾丸を誰が放ったかをラガルは理解した様子だった。 「良いぞ、リベリスタ! 中でもお前達だ。お前達が俺と戦うに値する!」 グバルグバンの土煙がついに目と鼻の先まで近づく。 ラガルは後続の者共へ「お前らは先に行け」と指示を出す。俺が全て貪り尽くすとばかりに、ギラリと目が輝く。 「一番槍の優秀な若い兵ね……」 『最弱者』七院 凍(BNE003030)が、次に視線を周囲に運ぶ。皆は準備を終えている。 無理せずボクはボクの仕事をするだけ、カッコいいのは皆に任せる、と胸裏に流す。 流して前衛にでる。得物の赤い大斧を構える。 「……ま、ボクとは対照的だ」 ラガルの大笑いが間近。凍の全身を衝撃が貫いた。 全身が軋む。節々が悲鳴を上げる。視界が霞んで、盾にした大斧とグバルグバンの境界が歪む。 『みんなっがんばろーねっ!!』 戦闘前に『くまびすはこぶしけいっ!!』テテロ ミミルノ(BNE003881)が言った一声が、脳裏に流れる。強力なサポーターの戦闘指揮とディフェンサードクトリンが、視界を引き戻す。 戻った視界で周囲を見る。 後ろに誰も居ない。巻き込まれた者がいないのは幸いだった。 「さて」 最初の突進を止めた。口までこみ上げた物を嚥下して、口角から流れたものを拭う。 凍が仕掛けたハイアンドロウが起爆する。 起爆するのと同時に、凍の口角から流れたものと同じ色の影が、横から生ずる。 生じた者は『狂獣』シャルラッハ・グルート。 「全てを蹂躙し尽くすまで、心行くまで徹底的に殺し合おうよ!」 携えた赤いチェーンソーをラガルに振り下ろす。途端に眼前、黒い平面が滑りこんでくる。 チェーンソーが黒い平面へと食い込んだ。齧りつき、唸り声が鳴る。獣の咆哮の如き声に、火花が踊る。 「お前は良いな! リベリスタ! 存分に殺し殺され尽くしても飽き足らぬ!」 嗚呼、求めていた戦場が此処にある、とシャルラッハの血が騒ぐ。 辺り一面に充満する血の匂い。響き渡る剣戟の音。 そしてそれはバイデンも望む事だった。押し込まれたらば押しこむ、迫り合い。 「これが心狂わせて望みに望み続けた戦いよ!」 「シャルもだよ!」 ラガルの対応に出たリベリスタ達より、間を開けた後方。 アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)は、攻勢の戦術を張り巡らせていた。他のリベリスタ達がいる後ろへ突入せんとするバイデンを見る。その一対。 アルフォンソが軽く手を振る。得物のナイフを持たざる手で、指を振るともつかないゆるやかな動きで―― 「では、粛々。作戦通りに」 ――過ぎ去ったバイデンの付近が爆発する。神秘の閃光弾。 直撃したバイデンはその乗騎ごと動きを止める、痙攣しながらも乗騎の踵を返す。 「ミミルノしゅつじんっ!」 ミミルノは、防御の戦術を張り巡らせつつ、全体の流れの動向を担当していた。 「アッパユアハーっ!」 ぐっと握った拳を空に高らかにする。 踵を返したバイデンの乗騎が、ミミルノへと向かわんと、乗騎の痙攣をそのままに前足を宙に泳がせる。 「とおくからすこしくらいこうげきされてもぶくともしないのっ」 攫われた人は帰ってきたが、バイデンをこのままにしていれば、底の世界にやってくる。 「へいわをまもるためにはいまここでバイデンをこらしめないといけないの~!!」 広い視界。凍の様子を見れば凄い被害だと唾の塊を飲む。 怖さと勇気がせめぎ合う。 せめぎ合う中に、アルフォンソが動きを止めたバイデンの他、もう一対のバイデンが踵を返した。 ミミルノしか見えていなかったバイデン兵の一対に、重厚な砲弾が突き刺さる。 「……この武器を持った事にこんなに後悔する日が来るとは思わなかったよ」 『持たざる者』伊吹 マコト(BNE003900)は、最も遠方に行く者に狙いを定めていた。 定めていたが、追加は一対までと考えていたが故に、アルフォンソがフラッシュバンを当てた者を刺す。 得物のレールガンに再装填を行いながら、後退の体勢に入り考えた。 「うーん、どうしたものだろうね。もう一対」 三対。時間差で来るであろう突撃は、デジャブを覚える状況だった。 この場には罠も水堀も、発射台も無い。 ●宴とは盤上の謀りか、巨大なる炎か -Tactics in crimzon- バイデン兵の一騎が、ミミルノを伴って突入した。 貫通のラインを警戒していた為か、誰一人進路上には立っていない。他の被害は大きくない。 「ミミたちの……だいすきなむこうのせかいに……バイデンがきちゃうのっ」 直撃を受けていたミミルノの状態は芳しくない。 そして凍も同じだった。 「完全にタイミングを逸した」 一定の余力が残っている内は、ブラックジャックにハイアンドロウを連発する予定だった。その一定の余力を突撃が奪っていった。まだ始まったばかりで、これはひどい。と考える。 立ち上がって斧を構え、構えた所で、凍は気がついた。 「もう一騎……?」 「手こずっているようだな、ラガル!」 ラガルを呼ぶ声が鳴る。 シャルラッハと切り結びながら、ラガルは横へ目を送る。 「グラルド。俺は行けと言った筈だ!」 「ザルツァも来る」 「……チッ」 その前に全て平らげてしまえば良い、と言葉を続けて、改めてシャルラッハを見る。 「よそ見なんてしていると、その素っ首が飛んじゃうよ!」 シャルラッハの眼前で、違いないとラガルが笑った。 戦略室長と行動を共にしている深春・クェーサーからのオーダーは、ラガルの撃破。 追加オーダーは、部下を可能な限り撃破すること。去った者は後続の部隊が対処する事だろう。 そこは良い。 一人を倒す事に、八人が割かれているこのオーダー。 他のオーダーでは、両手の指ほどの数を全て倒せというものもある。 他は最悪無視してもよいとも来ている。ならば、意味することは一つだった。 「アヴァラは果てた! 果てたが死なぬ! お前等は俺の獲物だ!」 緋色の風車が回る。古き血で黒々とした風車が廻る。 振る度に前衛の体力を大きく削る。 シャルラッハと斬り結び、そして第一戦目の軍配は、ラガルに上がった。 チェーンソーを押し込み、押し込んだだけでは飽き足りず、シャルラッハの体を巨鉈に伴ったまま吾郎へ叩きつけられる。 「リベリスタよ! まだやれるだろう! 来い!」 吾郎はシャルラッハを受け止めて後転する、跳躍して着地する。 重厚な一撃を受けた吾郎の"スイッチ"が入る。 この個体を後ろに通してしまえば、他の戦場に与える影響が計り知れない。 「来いだと? 挑むのはてめえだ、ラガル。てめえが来てみろ!」 「良いぞ! その赤き者も、お前も、すこぶる良い! ハッハッハッハッ!」 ラガルが、乗騎を伴って更に動く。 「赤き者じゃなくて、シャルラッハだよ!」 お返しとばかりに、続く鍔迫り合いの二戦目。 「さっきのは、ほんの挨拶代わりだよ」 「む……!?」 ケタケタと笑いながら、力の多くを込めた一撃が、ラガルの巨体を巨獣から引きずり下ろした。 「もう一つ突撃が来る」 凍が放った式神のシノ。シノを介して知覚する数はもう一対。 前衛はラガル対応で目が離せない。声で周知する。 「突撃ラインが三本……いや二か」 後衛の音羽が、振り返って視認する。 想定は一対までと考えていたが、考えを塗り替える。 「一箇所にまとめてくれ」 音羽の胸裏に、逆境とはこういった状況を指すのだと強く響いた。 マグメイガス、対集団相手に真価を発揮するダメージディーラーとして、最大限に働かねばならない所。 「一箇所にまとめてくれれば、何とかするぜ」 対ラガルに来た面々の最後尾から、力強い声が最前線へと届く。 「分かった。作戦通り挟撃する」 ハイスピードを伴って吾郎が動く。 「スターライトシュートが役に立ちそうですぅ」 粛々とラガルに攻撃を加えていたマリルが、耳をぴこぴこ動かしながらヤル気を出した。 ちょろちょろと動いて、ラガルと、そして突入してきたバイデン兵――グラルドを視界を入れる。 「あたしはアヴァラの戦いにいた一人なのですぅ! いざ勝負なのですぅ!」 流星の様な光が走り、両者へと降る。 「ほう、そうか。そういうことか!」 「ラガル! ここはオレが貰う!」 了承など待たずしてグラルドが動き、突撃の姿勢へと入る。 入るが、グラルドと乗騎の動きが止まり、踵を返す。 「アッパーユアハー」 一度、突撃を受けてふらふらになりながらも、ミミルノが自身に攻撃を寄せる。 「だいじょぶ、ぶくともしないのっ!」 こうしている間に、ラガルを倒してしまえば勝ち。 そして、一人に敵の攻撃が多く向く状況は、音羽にとっての好機も作る。 「良い位置だ。チェインライトニング!」 マコトが走りこんできた。 後方に砲を一発撃つ。時間差の一対が間近に迫る。 「誰かが、重傷覚悟で引き寄せるしかない」 ミミルノはその覚悟がある。マコトが身を伏せると、その一騎が突入してきた。 アルフォンソを伴って走り抜ける。 アルフォンソは自身の内臓がせり上がってくる様な感覚を覚えて、しかしただでやられる気は無かった。 「ここまで近づけば、当たるでしょう」 口角から流れて顎へと伝うものを拭う時間も惜しみ、放つフラッシュバン。 麻痺がここに残った最後のバイデン兵の動きを止めた。 ●交錯する風車と歯車。飾るは鉛の色。 -Barbarossa- 盤上の謀りをくべて燃え上がる炎は、より激しさを増す。 攻撃目標はラガルを最優先。巨獣すら捨て置く。 レイザータクト、一人目のブレインは防御を掌る。ただひたすらに耐える。 「まけない。ミミも、はいぱーさぽーたーとして」 胸裏には姉の顔が浮かぶ。対抗心とも尊敬の念ともつかない。 バイデン兵が暴れ狂い、一撃一撃を丹念にかわし、防ぎ。…… 二人目のブレインは攻撃を掌る。アルフォンソはこの様子を冷徹に見ていた。 「老猾、とは無縁と思いたいのですが、忍びないものです」 押しても押されてもいない現状。 ここでの最良の一手は、助けに向かう事では無く、ラガルに攻撃を集中すること。 ゆるやかに手をかざし、斜め下へと指を振る。鋭き刃、チェイスカッターが生じてラガルを斬る。 「やはり」 アルフォンソがつけた傷が、再生する。血も止まる。 「なるほどな、だが――チェインライトニングッ!」 音羽が放った特大の電光がザルツァを、グラルドを、そしてラガルを焼く。「もう少しだ」と音羽が呟いた。 目が眩んだラガルが、地を揺らす一撃を放つ。凍がシャルラッハに代わってこれを受ける。 凍は言う。 「いかにバイデンが戦士って言っても甘いよね、ボクらが攻撃するまで余裕気取って無視して行こうってんだもん」 「何?」 「舐めプだよ。まあ強いのはわかった。でもそれがキミの敗因だよ、ラガル」 吾郎が巨獣を足場に跳躍する。 「ッ! 黒き者!?」 「俺は吾郎だ」 吾郎が剣を振りかぶる。 みぢりと、ラガルの黒い巨鉈持つ腕が肥大化する。 「それ、一度見てる」 マコトが滑りこむ様に、自身の身体、自身のレールガンを吾郎の盾とする。 三人目のブレインは全力攻撃対応。 全力の一撃が来る、来る、来る―― 「アヴァラ・ブレイカーッッッッッッ!」 マコトの目と口から夥しい出血が生じた。流血する。そして失血へ至る。衝撃が全身を砕く勢いで走り抜ける。 「あと一回しか無理」 振り切られたラガルの腕。マコトは宙に放り出される。 「なるほど、伊達に隊長はやってないわけだ……だけど、やっぱりこの程度か」 「お前!」 マコトの挑発にラガルの視線が浮く。 吾郎が懐に入る。いくつもの像が黒い影となり上に、下に、左に、右に、ラガルを襲う。 何度か斬った後に、黒い巨鉈と吾郎の剣がぶつかる。 「それでこそ誇りある戦士ってヤツだ!」 「その通りだ! 吾郎!」 赤い影が、吾郎の背後からゆるりと生じる。騒音を携えて―― ラガルがもう片手、赤い巨鉈でもって赤き影に応じようとすると、タンッと乾いた銃声が鳴った。 「負けられないのですぅ」 放った者はマリル。 滾る鼠魂を携えた弾丸が、赤い巨鉈に鉛色の弾が刺さり、大きな亀裂を作る。 「――青き者!」 「身体が火照って気持ちイイ……アンタも同じ気持ちなんじゃない?」 これが生きてる証。獣の如き咆哮を上げるチェーンソーが、赤い巨鉈を砕く。 「いっぱい感じていたいけど、でも残念だけどもう終わりだね」 するりと、チェーンソーがラガルの胸部を下っていった。 : : : 戦いは終わらない。終わらないが、少しの間があった。 「アヴァラは本当に強くて最後まで立っていたすっごい敵だったですぅ」 「フッ……古参に名を連ねる一角よ」 「どおりで……」 マリルとマコトにラガルは興味を示した。敵同士ながらも、共通する者を知るが故に。 微笑みを交わすには十分な時間であった。 どういう間柄かなど聞き出す時間はなく、次へと走る。 次へと走ったリベリスタ達の後方でラガルが吠える。 「アヴァラは果てた。俺も果てる。果てるが死なぬ!」 ラガルは高らかに笑い、黒い巨鉈を地面に突き立てた。 「更なる戦いの果てへと征くのみよ! さあ、我らはまだ居るぞ!」 ラガルは笑った。 喧騒にも紛れぬほどに大きく笑い、笑い果てて、そして聞こえなくなった。 「ミミも……おねえちゃん……」 ミミルノが膝を着き、ここに戦闘指揮が終わる。 防御のブレインが役目を完全に果たすと、巨人の影が地を暗くする。 「あと二対」 音羽が呟いて、そして悠然と闊歩する巨獣と、赤い巨人を見上げた。 「大分削ったんだが、中々しぶといぜ。もうひと頑張りだ」 「行けますか?」 「行くしか無いぜ」 アルフォンソが、強力に集中を重ねたチェイスカッターを放つと、チェインライトニングがその横を駆け抜けた。 逆風を、彼方へ運び去るが如くに。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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