●再び異郷へ ラ・ル・カーナでの戦いはアークの敗北に終わった。 橋頭堡は陥落し、ボトム・チャンネルへの撤退を余儀なくされた。 だが、一度の敗戦で黙ってくすぶっているようなリベリスタたちではない。 即座に再進撃を行うことを提言する者たちの数に、戦略司令室は早々に反攻作戦を決定した。 とはいえ、防衛戦よりもさらに難易度が高くなる攻勢戦である。 時村沙織は、今回の作戦を成功させるために、追加戦力の投入を決定した。 それは『塔の魔女』アシュレイである。彼女は危険なラ・ル・カーナで生き延びられるだけの戦闘能力と、万華鏡に頼らずとも発揮される高い予知能力を持つ。 彼女に『借り』を作ることになってしまうのは避けたいところではあったが、他に選択肢はなかった。 ●加速する巨獣 ラ・ル・カーナ太陽に照らされた荒野を駆けるのは、巨大な狼であった。 「この前逃げ帰ったと思ったら、すぐに戻って来るとは命知らずな奴らだな! まったく面倒な話だ!」 狼の背に乗ったバイデンの1人が、牙をむき出しにして笑う。 数人のバイデンを乗せていてもなお、狼は重みを感じさせない動きを見せていた。 「ずいぶん嬉しそうじゃないか、ヴィンドール」 「そりゃあそうだ! 骨のある連中と戦えるんだからな!」 ヴィンドールという名前らしい、リーダー格と思しきバイデンは巨大な棍棒を天へ突き上げて高らかに叫んだ。 「楽しみだ! 俺とこの『つむじ風』に追いつけるやつがいるかどうか!」 リベリスタたちとバイデンの戦いはすでに始まっていた。 彼らは敵の側面をつくべく、巨狼を走らせる。 ●進撃するアーク 再びラ・ル・カーナに姿を見せたリベリスタたちに、バイデンは橋頭堡にこもって戦おうとはしなかった。防戦を考えるよりも、その膂力で敵を薙ぎ倒すほうが早いと見たのだろう。 「……こちらにとってはありがたい話ですね。厳しい攻城戦をせずにすみました」 淡々と呟くように告げたのは『ファントム・オブ・アーク』塀無虹乃(nBNE000222)だった。 「ですが、向こうもただの馬鹿ではないようです」 フォーチュナは戦闘能力を持たない。 それでもなお、何名かのフォーチュナが仲間たちの制止を振り切って今回ラ・ル・カーナを訪れていた。虹乃もその1人である。 誰が何を言おうとも彼女は表情を変えずにただ『自分も行く』と告げるばかりだった。 限定的ではあるものの、万華鏡なしでもフォーチュナは予知能力を発揮することができる。 「こちらの側面をつこうとしている敵もいるようです。お手数ですが、対処をお願いします」 彼女が予知したのは、高速で移動する巨大な狼の背に乗ったバイデンの群れ。 6体ものバイデンを背に乗せてなお、その移動速度は驚異的なレベルにあるらしい。 「どうにかして足を止め、撃破しなければ厄介なことになりそうです」 高速移動による巨獣の突撃は、まともに受ければただではすまないだろう。 また、針のような毛の生えた尻尾を振り回して範囲攻撃したり、咆哮を上げて全体の気力と体力を削ってくることもあるようだった。 残念ながらバイデンたちについて詳細なことはわからないようだが、攻撃力に長けた強敵であることはすでにリベリスタたちにもわかっている。 戦場の後方に虹乃を下がらせて、リベリスタたちは敵の迎撃に向かった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:青葉桂都 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月22日(水)23:47 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●神速の挑戦 移動する巨大な狼、『つむじ風』をただ1人で迎え撃つ男がいた。 仲間たちを離れ、一歩早く敵に接近するために。 「……行くぞ」 本隊に向かって走る狼を見つけて、彼はトップスピードで走り出す。 鱗のように金属を組み合わせた銀色の篭手から魔力のナイフを引き抜いた。 「ヴィンドール、なにかいるぞ!」 「気にするな! たとえなにがいようと、突破するだけだ」 喜色を浮かべたバイデンのリーダーが狼の背を撫でた。 「つむじ風の駆手! 神速の二つ名を持つこの俺が相手だ。追いついて見せろ」 静かな声で、『神速』司馬鷲祐(BNE000288)はバイデンに挑んでいた。 移動する巨狼の背で一瞬バイデンはあっけにとられた顔をしていた。 「はっははははは! 聞いたか、お前ら! 聞いたか、つむじ風! 俺たちは追われる側ではなく追う側だったらしいぞ!」 哄笑を背に、鷲祐は毒牙をそなえた脚で走り出す。 「よかろう、神速! 挑まれて背を見せたとあってはプリンスに申し訳が立たん!」 高めの背を持つ鷲祐よりも、さらに長い四足が彼を追い始めた。 鷲祐の仲間たちは、ラ・ル・カーナの荒野でにおける激戦から少し離れた場所で待ち受けていた。 「速さを活かした側面攻撃とはやってくれる」 鷲祐と追いかけっこする敵を待ちうけながら、『仁狼』武蔵・吾郎(BNE002461)は呟く。 狼面の巨漢は一見鈍重な印象を受けるがソードミラージュである彼はけして遅くない。もっとも、残念ながら今近づいてきているはずの敵には及ばないだろうが。 「やたら速度に優れた上、バイデンを6体も背中に乗せられる狼ですか。相手にするのはなかなかに骨が折れる気がしますが、放置するわけにもいきません」 凛とした女性の手には白鳥の羽を模した剣。『戦士』水無瀬・佳恋(BNE003740)は敵がいつ来ても迎え撃てる態勢を整える。 「理解しがたい種だね、バイデンってのはさ。脳筋かと思えば側面を狙う理知的な面もある……。ま、ここを通すわけには行かないし、止めさせてもらうよ」 『持たざる者』伊吹マコト(BNE003900)はくわえタバコのまま頭を振った。 「『追いつけるやつがいるか!』って『ここにいるぞー!』って斬られるフラグだよねー」 体よりも大きい邪悪な見た目のハルバードを手にして、『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)は言った。 彼女自身は並の速度しか持たない。けれど、この場にいる仲間たちの中に、敵に追いつけるものがいることはけして疑っていなかった。 実際、速度自慢の敵に対するだけあって、速度自慢のリベリスタが集まっている。 「流石に速い人が多いねー。私もちょっと負けてらんないよ。頑張らなきゃね」 羽柴双葉(BNE003837)もかなりのスピードを誇っているが、それでもなおこの場では3番手だ。 「敵も神速を名乗る獣だもの。私じゃ太刀打ちできないけど……アークの神速ならどうかしら」 「決まってる。うち等に追いつけねーモノ何て無いのだと今から証明してやるっすよ」 リリィ・アルトリューゼ・シェフィールド(BNE003631)の言葉に応じるのは、『LowGear』フラウ・リード(BNE003909)だ。 「そうだね。逆に、あの人が追いつけないなら、アークでも追いつける者はおそらくいないさー」 「司馬先輩なら勝てるっすよ。神速の名は安くない。ワンコロ風情が気安く名乗って良い名じゃねーんすよ!」 巨狼の姿が、リベリスタたちが待ち受ける場所に近づいてきた。 ●高速の襲撃 鷲祐は背に敵の息遣いを感じていた。 速度にすべてをつぎ込んだと言っても過言ではない彼のトップスピードで、ようやく互角の追いかけっこに持ち込める敵。 フォーチュナの予測がなければ、見つけたときにはもう手遅れになっていたことだろう。 敵は巨大な狼だが、鷲祐も世界最大と言われるコモドオオトカゲのビーストハーフだ。スケールでは負けていない。 とはいえ脚の長さの違いはいかんともしがい。 限界速度からの急激な方向転換で敵を揺さぶり、追いつかれるのをどうにか防ぐ。いかなる機動も効果があるのは一瞬のみ。けれどその一瞬が生死を分けている。 それは、異世界でも変わらない事実。鷲祐と巨狼に唯一共通する、大地との協奏だ。 時間を稼ぎ、さらに味方の居場所まで敵をひきつけるというのは簡単なことではない。 (「あと少し……!」) 仲間からはもう鷲祐や敵の姿は見えていることだろう。だが、鷲祐の側に仲間の姿を確かめる余裕などない。 しかも、巨狼の咆哮は移動しながらも鷲祐の体力を削っていた。 「お前は何故駆ける?」 方向転換の一瞬、見えたバイデンに向けて問いかける。 「そこに大地があるからだ。駆けるべき場所があるから駆け、倒すべき敵がいるから戦う! 小難しいことなど知るものか!」 「俺の速さは、終わりなく全てを斬り開く為!」 味方の射程圏内へ飛び込む。その一瞬に、突撃してきた巨狼の牙が鷲祐の体を引っ掛けた。 彼と互角の速度が乗った牙は彼の肉体と身に着けていたアクセサリを千切り飛ばす。 荒野に二度、三度と転がった鷲祐は気力を振り絞って大地を蹴り、再び駆ける。 岬は巨狼の真正面に立つ。 「やはり仲間がいたか」 巨大な棍棒を構えたバイデンが狼の背に立った。 「へー、気づいてたのに、ここまで来たんだー?」 「その男が、口先だけではなかったからな。言っておくが、付き合うのはここまでだ!」 敵は阿呆だが、待ち伏せを何度も受けてくれるほどではない。 鷲祐も岬とともに正面に立ちはだかり、守りを固める。 フラウが横から巨狼に飛びついた。 双葉とリリィの白い肌から流れた血が鎖となって狼とバイデンに襲い掛かる。本来ならば時間のかかる攻撃だが、待ち伏せならば初撃にも使える。 「ここがあなた達の終着点。レクイエムと共に眠りなさい!」 しかし呪縛はバイデンたちには効いたものの、巨狼は鎖を引きちぎる。 吾郎の巨体が宙を舞い、遠距離から突進攻撃をしかける。 「まあ、一回付き合ってくれれば十分さー」 幼い少女が爆発的な気を放ったのを見て、バイデンが歓喜の声を上げた。 「一・撃・必・殺! 逝ってこい大霊界ー!」 黒い炎を模したハルバードを薙ぎ払う。それは巨狼を後退させ、鎖に呪縛されたバイデンたちがその勢いで背中から飛び出す。 背中に乗っている敵を落としてしまえば、敵は足を止める以外になくなる。 そして、デュランダルである岬には、速度はなくとも巨獣をも吹き飛ばすパワーならあった。 「残念、全員はすっとばせなかったかー」 ヴィンドールともう1体がまだ残っているのを見て、岬はアンタレスを構え直す。 マコトの指示で守りを固めながら、佳恋も前脚を狙って刃を振り切る。 「速度が遅い者なりの意地も、ありますからっ」 かすめただけの刃だが、つむじ風の脚から血の飛沫が飛び散った。 次の瞬間、接近していた全員を狼の尻尾が薙ぎ払う。 追いかけっこの段階でひどく負傷していた鷲祐はもはや倒れる寸前だったが、残念ながら今回は回復役がいない。マコトの指示によって効率化された防御が命綱だった。 高い攻撃力を誇る敵にダメージレースを挑むよりないのだ。 フラウは2度に渡って吹き飛んだ狼に、高いバランス感覚を発揮して必死にしがみつく。 「ハハッ、確かに掴んでやったっすよ? テメーご自慢のつむじ風に!」 「いい挑発だ。敬意を込めて叩き潰してやろう!」 風を打ち砕く棍棒がフラウに襲いかかる。 かわせはしない。けれど、フラウにも倒れられない理由はある。 仲間たちが巨狼の体力を削る音が聞こえてきた。鷲祐もまだぎりぎりのところで戦っている。 「先輩の前で無様晒す訳にはいかないっすからね」 狼の背を蹴り、彼女はヴィンドールへと突撃をしかけた。 ダメージを与えるつもりではない。狙いは、敵を突き落とすこと。 バイデンの巨体に対して14歳の少女の体はいかにも小さかったが、その分フラウには鷲祐に次ぐスピードがあった。 諸共につむじ風の背から落ちて地面を転がり、敵よりも一瞬早く立ち上がる。 「巨狼を止めるのが無理なら、駆り手を抑えればイイじゃねーっすか!」 「小細工を! その細腕でいつまで抑えられるか試してやる!」 意地でも倒れはしない。少なくとも、つむじ風が倒れるまでは。 両の手に構えた魔力のナイフで、フラウはしっかりと守りを固めた。 双葉は仲間を巻き込まないように、なるべく背のほうを狙って火球を放った。 主を失った巨獣は、周囲にいる者たちすべてを倒そうかという勢いで暴れまわっている。 暴れる敵の脚に、鷲祐が毒牙を目にも留まらぬ速度で突き立てる。 激しい咆哮が響き渡った。 重傷を負っても止まらなかった神速が、とうとう倒れ伏す。 双葉もその咆哮によって強い衝撃を受けていた。無傷なのは、呪いの弾で遠距離から狙撃しているマコトだけだ。 倒れた青年の体を乗り越えて、吾郎の巨体が狼を翻弄する。その隙に、岬の禍々しいハルバードと、羽を思わす佳恋の剣が突き刺さった。 落下した バイデンたちは後方にいた彼女や双葉、マコトを狙って回り込もうとしている。巨獣の強さへの信頼もあろうが、単に尻尾による攻撃に巻き込まれないようにする意図もあるのだろう。 岬や武蔵がブロックを試みているが、つむじ風と相対しながらでは遅らせるのが精一杯。もっとも、時間を稼いでくれるだけで後衛にとっては心強い。 全員がかりの攻撃力を受けても巨獣はなかなか倒れる様子がない。 「けど、効いてないはず、ないわ!」 鷲祐を倒した巨獣は、次いで岬を狙っている。闇雲に狙っているのではなく、幼いながらもっとも攻撃力の高い彼女を脅威と察しているのだ。 そして、それはつむじ風が無敵ではない証拠でもあった。 突進を受けた岬が膝をつく。 「ボクは負けず嫌いなんだよー。風に撫でられたぐらいで寝てなんか居られんさー」 傷だらけで、荒い息を吐きながらも、少女は愛嬌のある笑顔を浮かべている。 彼女の心配をしている時間は双葉にはなかった。 バイデンが後衛に肉迫してくる。 瞬間、双葉はマナを体内に循環させる。 増幅した魔力によって練り上げた魔炎を、つむじ風の鼻面に叩きつける。 「狼だし火とかにびっくりしてくれるといいんだけど……」 期待したような効果はなかったものの、炎上した敵が怒りの声を上げたのを、棍棒に薙ぎ払われながら双葉は確かに聞いた。 ●勝利の撤退 リリィは血を流していた。 打撃による傷は派手な出血はないものの、体力は確実に削られている。 その傷から少しずつ滴る血が漆黒の鎖を形作っていく。 大方の仲間が落とされた時点で、狼の背に残ったバイデンも飛び降りていた。戦いながら狼の背に戻り、突破するのは無理と判断したのだろう。 黒鎖による呪縛は、残念ながらつむじ風には無効なようだ。しかし、バイデンたちには有効だ。全部は無理でも、何体かは止められる。 自己回復の能力があっても、動けなければ使いようもないのは理の当然である。もっとも、巨狼の反対側で戦う敵のリーダーは視界に入らず、狙えなかったが。 ツインテールにまとめた赤毛がわずかに揺れる。体が震えているのが武者震いではないことは、彼女自身にもわかっていた。 「……絶対に、負けないんだからっ!」 速度を極めていても、魔術師である彼女は打たれ強くはないし、身のこなしがそこまで優れているわけではない。 リリィをこの場に立たせているのは、自分が出なければ皆が苦しむのだという思い。それを許せないという矜持であった。 もう幾度目かわからない突撃が、岬の小さな体――といってもリリィとそれほど変わらないが――を吹き飛ばす。 「……!」 その瞬間、願った奇跡は起こらなかった。 バイデンの棍棒がリリィの肩口に叩きつけられる。意志力だけでどうにかまだ彼女は立ち続ける。 「せめてつむじ風だけでも倒さないと……!」 奇跡が応えてくれなくとも。高速の詠唱で今しがたついた傷から黒鎖を放つ。それは周囲にいたバイデンたちを縛りながら、つむじ風に直撃した。 武蔵は佳恋とともに、巨狼の前に立ちはだかっていた。 敵は早い。 佳恋はもちろんのこと、武蔵よりもはるかに早い。わかってはいたが、相対してみて、さらにそれを実感していた。 佳恋の剣がつむじ風を切り裂く。 体力の限界はもう超えている。 それでも、巨体に見合わないスピードで敵を翻弄しながら武蔵は弱点を狙う。 「例え速さで負けてもそれだけで決まるとは限らないぜ!」 力が欲しかった。だから鍛錬を続けてきた。 それは、こんな一瞬のためだ。 魔力剣が傷ついた表皮を切り裂く。間髪いれずに、その奥へと刃を突き込んだ。 今までとは種類の違う咆哮をつむじ風があげ、轟音を上げて大地へ倒れこむ。 その向こうには険しい目をしたヴィンドールと倒れたフラウの姿があった。 「……意地を通したか」 苦々しげな言葉はフラウにかけられたものだろう。 「つむじ風がいなけりゃ側面を突く前に迎撃準備が整うがどうする」 「……認めよう。お前の言うとおり、無理をして進む意味はない」 大地を踏みしめる強い音が武蔵の耳に届く。 「……だが俺の血はそんな理屈では収まらん!」 棍棒を振り上げ、つむじ風の巨体を跳び越えて、ヴィンドールが武蔵へ襲いかかってきた。 マコトは巨大な蓄電池につながったレールガンを構える。 動きは鈍るが、威力は高い武器だ。 突破するつもりなら気を引くつもりだったが、そうする必要はなさそうだ。 「……君達の、その闘争心は何なんだ。例えここを突破したとしても死ぬだけだって言うのに……」 敵のリーダーに向かって、問いかける。 「俺がここで死んでも、俺と戦った記憶は残るだろう! バイデンがただで死ぬ生き物でないことを貴様らの心に刻むのだ。それが最後には勝利につながる!」 「……なるほどね」 言葉で止めることは不可能だと、マコトは悟った。 レールガンの銃口を黒鎖に縛られたままのバイデンへと向け、引き金を引く。呪いの魔力がこもった弾丸が敵を貫いた。 別の1体へと、武蔵が高速で飛びかかり、佳恋が風の刃を放って打ち倒す。 けれど、ほとんど同時に別の敵が双葉の華奢な体を打ち倒していた。 佳恋はリリィを狙う敵との間に、強引に割って入った。 「お前の相手は私だ!」 彼女自身、つむじ風との戦いで浅からぬ傷を負っている。それでも、パワーファイターである分他の仲間たちよりは体力が残っていた。 高速詠唱が可能なリリィは立て続けに敵に不運と呪いをもたらし、呪縛する。とはいえ、彼女の力もそろそろ限界が近い。 敵の動きを止めて、短期決戦で各個撃破する。勝ち目があるとすればそれだけだ。 ヴィンドールの攻撃が武蔵を打ち倒す。武蔵がそれまで狙っていた敵をマコトの銃が撃ち抜く。流血で弱った敵を佳恋が切り裂く……。 もはや、戦いは完全な消耗戦であった。 敵がヴィンドールだけになる頃には佳恋もすでに満身創痍となっていた。 気合を入れると、敵の傷が徐々にふさがり始める。そこに、リリィが連続攻撃をしかけた。もう黒鎖を放つ力は彼女にはない。だが息もつかせぬ攻撃が敵の動きを縛る。 マコトの銃弾が呪いを与えて復帰を遅らせる。 「……易々と復帰してもらっちゃ、こちとら商売上がったりなんっすよ」 麻痺から逃れて回復されれば、もう勝ちの目はないだろう。 残った力で3人のリベリスタは攻撃を集中する。 「先日の敗戦、ここで返させていただきます!」 白鳥の羽を模した刃に、荒れ狂う闘気が宿る。 振り切ったその一撃を受けた瞬間、動けないはずのヴィンドールが確かに笑った。 満足げな笑みを浮かべたまま、バイデンは大地に倒れる。 勝利を喜ぶ力さえ、もうリベリスタたちには残っていなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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