●荒野の会話 進撃する。 リベリスタが、バイデンが。各々の目的と意思と戦意を持ってぶつかろうとする。 負けられぬ闘いだ。だからこそリベリスタ達の士気は高い。 「クハハッ! いいぞ、それでこそ、それでこそ闘争の相手に成ると言うモノだ!」 されどそれはバイデン達にとっても格好の燃料だ。 リベリスタの士気が高ければ高いほど彼らの戦意も比例する勢いで跳ね上がる。戦闘狂いであるが故に血が滾り、本能が呼び起こされる。 ――いいぞもっとだ。もっと叫べ。もっと来い。 それでこそ“闘い”が感じられるのだと、前回監視塔を襲撃したバイデン、ボルギレルドは思考する。 そこへ、 「……ふ――む……」 「おいおいどうしたポトガルよ。先程からテンションが低いぞ」 仮面を付けたバイデンであるポトガルが吐息を。 掌で弄るは前回の闘いでリベリスタの一人から投げつけられた煙草だ。遊ぶように、指と指の間に挟んで回せば、キャッチ。これを何度か繰り返している。……暇なのだろうか? 「まぁいい。それよりどうだ? これからもう一度奴らと闘う事に成る訳だが……どうなると思う?」 問われた。故に答えを返す。 単純明快に己が感じる事は、 「分か――らん」 「ほう? “勝つ”とは言わんのか?」 「貴様――こそ“勝てるか?”とは聞かん――のか?」 それは愚問だろう、とボルギレルドは言う。 バイデンにとって闘争は全て。そして勝利は求める物では無く、闘争の先にある手に入れるべき物だ。 名誉の為に。あるいは当たり前だからこそ。 「しかし奴――らは強い。下手をすれば負けるや――もしれん」 「随分と後ろ向きな考えだな? お前らしくも、いや、そもそもバイデンらしく無い」 「否否。だからこ――そ滾るとも。互角な相――手はこちらとして――も望む所だ」 リベリスタ達の力は前回の闘いである程度把握している。闘争の相手としては不足ない。 だが、だからこそ前回は残念だった。足場の限界によって撤退せざるを得ない状況へと成り目的は果たせたものの……戦闘そのものは半端に終わる。 あのまま続いていたらどうだったろうか? 押し切ったか、あるいはこちらが押し切られたか。 想像に意味は無く。決着は現実で付けるしかない。故に、 「今度こ――そ決着を付けようではないか……不完全燃焼は御免――だ」 「クハハッ! ああ、勿論、勿論だ! 中途半端ではない、確実な勝利を今度こそ得ようぞ!」 高らかにボルギレルドが笑い飛ばす。 ああそうだ。今度は途中で終わる様な要素は無い。最後まで最後まで戦おう。 死力を尽くして、どちらが上か確かめる為に。 「……で、お前はさっきからソレを回してホントに何をしとるのだ」 「…………いや、これの使い方が分か――らん……」 初めて見る煙草を前にどう使えば良いのか全く分かっていないらしいポトガル。さっきからテンション低めの理由はソレか。 頭を抱えて必死に思考するも答えは出ず。されど闘争の準備は完了していた。 さぁ開戦である。 ●一直線 優位が確実な防衛戦をリベリスタ達は捨てた。 いや、捨てたと言うは確実ではない。選んだのだ。仲間を救う事を。 故に確実な勝機無くとも再びラ・ル・カーナの地に踏み込んだ。アシュレイの手すら借りて、勝利を掴みに。 そしてこの場で諸君らが行うは実に簡単な事だ。 ――正面から突撃し勝利を得る。 この場に戦略的な策は無い。 ただぶつかり、ぶち破り、前へと進む。 防衛戦を行う気が無い野戦へと応じたバイデンの突撃思考をさらに上回る突撃を見せるのだ。 それと、乱戦になる。途中でバイデンの援軍が現れる可能性もあるだろう。充分に気を付けて欲しい。 どちらが勝つのか。どちらが負けるのか。勝者も敗者も片方のみ。 されど望むはただ一つ。 障害など、全て跳ね除け打ち勝て諸君! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月22日(水)23:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●リベンジ 空がある。 昼だ。以前の闘いは夜であり、月が三つ浮いていたが今回は違う。 晴れ晴れとした空模様――その下を、 「バイデンの戦士ボルギレルド――」 声を発しながら『不屈』神谷 要(BNE002861)が駆けた。 「貴方の相手はこの私、神谷要が努めさせて頂きます。御覚悟を」 剣を向け、己が身を防御に特化させる。 負けない。負けてなるものか。以前の様な遅れは二度と取る訳にはいかぬと、彼女は往く。 「ほほう、何人か見た事のある奴がいるな」 「ええ。また貴方達に会う事が出来た事……とても嬉しく思います。実に幸運ですね」 だから、と『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)は言葉を繋げる。 「さぁ思う存分戦りあいましょう。 今度は中断も無い……絶対に逃しませんよ」 「クハハッ! それはこちらの台詞だリベリスタァ! 互いに、死力を尽くそうではないかッ!」 以前。監視塔における防衛戦と違い、唐突な戦闘続行不能になる様な状況はもう無い。 あるとすればそれはどちらかの敗北が確定した時のみ、だ。 「監視塔……壊された事は悔しかったですよ」 言うは『さくらふぶき』桜田 京子(BNE003066)。 彼女もまた、監視塔での闘いに参加していた一人である。彼女は、でも、と前置きし、 「誰も死なせませんでした。 それが私達の戦果であり――誇りですよ。勝てなかったのは些細なことですよ」 「それは我らバイデンの価値とは大きく異なるなァ?」 「でしょうね。だからこそ言いましょう。 ……この戦いには絶対に負けませんよ!」 一喝する。 誰かを救う事、そして生き残る事に間違いは無いと証明する為に。 彼女は彼女の矜持を持って突き進む。 「ま、私は以前の闘いについては関与してませんが……決着を付けるべきなのは同意ですね」 雪白 桐(BNE000185)が肉体の制限を外して向かうはポトガル。 攻撃を集中させる相手として単体戦に特化している奴を狙うつもりだろう。 ――即座の撃破が求められる相手である。 「負け戦など許されない。 あぁ……これ以上悔いを味わうなんてのは御免だ」 「お前らうざいんだよ。仲間拉致るわ、無駄に血気盛んだわ。反吐が出るぜ……」 さらに『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)に『Gloria』霧島 俊介(BNE000082)の二人が後衛に位置しながら強化を施す。 その口から漏れるはバイデンに対する戦意と憎悪だ。 リベンジを果たさせろと。 お前らの様な思考は理解できないからと。 それぞれの理由を掲げて彼らはバイデンと対峙する。 「さ、て」 さらに戦闘の準備は万全たる仮面付きバイデンの眼前に置いて。 「せっかく言葉も通じるようになったことじゃ……名乗ろう わしは迷子。四辻迷子じゃ」 「――ポトガルと言――う」 『紫煙白影』四辻 迷子(BNE003063)がポトガルへと言を放てば、彼もまた返答する。 短い言葉。されどそれで十分だ。 互いに望むは会話に非ず。拳と拳を交えた闘争である故に。 「どうも、うちは依代椿や、よろしくなぁ」 続けて『レッドシグナル』依代 椿(BNE000728)もポトガルへ名を告げる。 そのまま術符を利用して子鬼を召喚すれば、煙草を一本。 取り出し、彼女にしては珍しくも火を点け、煙を吹かせば、 「――」 「……ん? なんや、自分は煙草吸わへんの?」 「そもそ――もソレを吸う文化が――無い」 ポトガルが興味を示した様だ。 リベリスタ達の世界には当然ある物でもここは異世界。そもそも“煙草”があるかどうかすら疑わしい。 「そっか。なら……後で私達が勝った後に、使い方教えたるわ」 「ほ――う。面白い。是非勝っ――て御教授願いたいもの――」 瞬間、踏み出して、 「――だッ!」 ポトガルが拳を打ち出し、戦闘の始まりを告げた。 ●集中攻撃 戦況はすぐさま二つに分かれる形と成った。 ボルギレルドを要が抑え、他全てのメンバーは、 「まずは貴様からだ、悪く思うなよ」 ――ポトガルへと向かう。 後衛としての位置から櫻霞が放つは気糸だ。 各個撃破。言うは易しだが、実際に出来るかどうかは別であり果たせねば負ける。 「なればこそ、果たしてみせましょう」 櫻霞の気糸を防がんと動いたポトガルの動きにレイチェルが視線を合わせた。 ただの視線では無い。殺意と神秘を伴う射抜く視線であり、ソレには縛る能があるのだ。 「貴方の動きは以前に存分と見せて貰いました……逃しませんよ」 「ク――ッ!」 上手くタイミングが合ったか。 攻と防に速、それぞれに制限を掛ける一撃は仮面の身に纏わりつき、離れない。そこへ、 「闘争の果てに何があるのか、存分にやりあいましょう?」 桐が跳び込んだ。 足を肩幅と同等に開き、姿勢は前のめり。攻撃に全力を注ぐが故だろう。 構える大剣を両手で握り締め、右の腰からスイングする様に薙げば、前進する力と振り抜く力が合わさり乗る。 直撃した。 「ほ、ほ、ほ。まだまだ終わらんぞえ?」 迷子も接近する。声はポトガルの近場から。 椿と同様に、煙草にマッチで火をつけ、そのままマッチをポトガルへと投げ渡し、 「しっかり持っておれよ? 力尽くで奪ってやる」 「貴様この状況――でよくもまぁ無茶ぶりを」 無視して彼女は蹴りを叩き込んでやった。 直後、脚の裏を小さな痛みが駆け抜ける。 反射の力だろう。恐らく先に攻撃した櫻霞やレイチェル、桐にも同じ痛みが伝わっている筈だ。 が、別に構わない。ポトガルに直に殴られるよりは遥かにダメージは少なく、承知の上でもある。それに、 「そんなダメージなんざなぁ……俺がいくらでも癒せるんだよ!」 俊介がいる。彼が唱えるは癒しの力だ。 高位存在を読み取り微風として具現化させれば、範囲内の味方の傷が癒えていく。威力も非常に高く、受けた反射によるダメージなどほぼ問題としない勢いである。 「ここからもう一丁行くで――!」 駄目押しとばかりにさらに椿が続いた。 引き金を絞り上げて放つは魔力を込められた銃弾。ポトガルは右腕を撓らせて銃弾を弾くも、ダメージは抜けきらない。 一方で、 「で、我の相手は貴様一人か?」 「ええ今暫く私一人に集中して頂きますよ」 「断る」 言葉も終わらぬ内からボルギレルドは要を薙いだ。 邪魔だと。一人を相手するのも悪くは無いが、それではポトガルが“羨ましすぎて”仕方ない。 だからそこをどけ。お前一人では満足できぬとハンマーを横に振るい、 「――!」 しかし要は受け止めた。 盾を片手にハンマーの衝撃を弱め、 直後にハンマーが振り抜かれる方に自分から跳ぶ。 それでも来る強烈な勢いに姿勢が崩れ、吹き飛ばされれば右肩から地面に落下して。 「ほう」 されどまだ諦めない。 右肩が地面に付くと同時に空中で回転し、姿勢を再度整えれば足から着地する。 そして即座に前進すれば位置は再びボルギレルドの眼前だ。中々の執念に思わず敵ながら感心する。 「貴方を抑えるのが私の役目です。そう簡単に突破できると思わないで頂きたいですね」 「成程ォ? 確かに易々と行けそうにはないか」 だが、 「我一人なら、の話だがな」 言うなり来た――増援だ。 リベリスタ達の背後から四体、槍を持ったバイデン達が向かって来ている。 「ッ、来ましたか……でも!」 ポトガルに銃弾を撃ち込んでいた京子は、増援達を視界に捉えれば瞬時に行動した。 「負けられないんですよ、誰かが死ぬ運命を変える為にも!」 穿つ。 引き金を絞り上げる速度を上げ、全ての敵に銃弾を叩き込むのだ。 手間取っている暇は無い。早々に薙ぎ倒し、前へ、前へ進まなければならない。 「俺の命、くれてやるさ……有難く受け取れ! 全て蝕む闇の力だ! たっぷりと味わって行け!」 櫻霞がその生命力の一部を犠牲にして放つは瘴気。暗黒の塊である。 背後より接近するバイデン一行を砕かんと、呑み込んだ。悲痛な叫びが闇の中より響き渡る。 「今です、一気に仕掛けましょう!」 「ばらまいていこか! 来て早々なんやけど、覚悟しいや!」 さらにレイチェルと椿が増援を潰さんと畳みかける。 レイチェルは闇の反対たる光で包み、椿は強力な呪いを付与せんと銃弾を放ち、一気に殲滅せんとばかりに。 ああ、だから。だからこその一瞬。 大方の意識が後方に向いた。だから、 だから、“届いた”。 「勝機――あれり」 ポトガル声が響くと同時、奴の拳が、 後衛で回復役に徹していた――俊介の首元に叩き込まれた。 ●凌げ 真実、一瞬の事だった。 増援に対処する為に後衛の意識が後ろを向いたその時に、ボルギレルドはポトガル側前衛を薙ぎ払ったのだ。 その回復能力から厄介たる俊介を潰す為に。 だからポトガルも意図を察し、直ぐ動いた。開いた穴が塞がる前に突破し、 「潰――す!」 声が脳髄に響き渡る。 ポトガルは一気に仕留めに掛るつもりだ。時間を掛けては直ぐに壁が出来てしまうだろうから。 もう一撃叩き込まれようとするその刹那に、 彼は思考する。 己には何を成せるのかと。 何をしにここに来たのかと。 ……あぁ、そうだ。 “追い詰め”に来たのだ。 仲間を連れ去り、野蛮な程に血気盛んなバイデン達に思い知らせてやるために。 だから、 「カ――ヒュッ……!」 こんな所で倒れる訳にはいかない。 掠れているが、呼吸は出来る。 口の奥から漏れだす血を強引に飲み下して、 躱した。 首元へと向かうその掌底を、身を退いて躱したのだ。 そしてさらに詩を綴る。再び仲間の身を癒す、詠唱を。 「ッ、おい、俺の回復最高だろう? お前等の攻撃、ほとんど無かったことにできるぜ!?」 つまり、 「――俺が居る限り、リベリスタが負けるとかありえねえってこったよ!」 それは嘘でもあり真実でもある。 先程からの息吹は乱発出来るモノではない。何度となく使い続ければ限界などそう遠くは無いだろう。 しかしそれでも良い。何発使えるかはバイデン達には分からないのだから。 “使えるかもしれない”それさえ思わせておけば――最低限囮になれる故に。 「貴――様」 「おおっと、これ以上は許さんぞえ?」 「止めます」 ポトガルが改めて追撃に入ろうと――すれば吹き飛ばされた迷子と桐が復帰する。 一度開けた穴が塞がった。されど、諦めるにはまだ早いのはバイデンもリベリスタも同様である。 後衛を潰そうとするポトガルに、それを止めるリベリスタ。 どちらが先に倒れるかの殴り合いだ。 「ゼ、ェアァアア!」 絞りだす様な叫びと共にポトガルが手刀を繰り出した。 それは桐の脇へと突き刺さり、視界を揺らがせる。 止まらない。 拳を握って振るう先は迷子へと。彼女の目にも赤き拳がしかと映る。 覚えている。この動きは、以前にもこの目で捉えた事がある。 が、覚えていても身体が違う。能力が違う。 故に再現は無理で、それに伴うカウンターも無理で、だけれど動きは記憶している。 だから、 「――ぉぉお!」 「ヌ、ォッ!?」 相手の拳を拳で撃ち抜いた。 双方に激痛が走る。高速の打撃に合わせた高速の打撃は接触し、肉を剥いで、骨を砕く。 カウンターでは無い。痛み分けに近い形で、それでも、 共に拳が潰れた。 「ク、ハハ! お主の戦い方は奴に似ておる……! 似ておるのう!」 迷子は叫ぶ。戦っていると昂ぶると。だから、 「あぁ愛しい程に、狂おしい程に――こうまで心を揺らしてくれるとはな! 感謝するぞ! この邂逅に!」 奴とは一体誰の事なのか。 彼女の記憶の内の誰かなのか。さてそれを知るのは迷子のみだが、今は動かねばならない。 ポトガルは既に逆の拳を握りしめている。動かねば瞬時に叩き込まれてしまうだろう。 だから動く。腰を落とせば体の重心が自然と後方へと傾いて、 そのまま跳んだ。 拳が空を切る。 ワンテンポ遅れて風が薙ぐも、威力は無い。 代わりに発生するは攻撃直後の硬直だ。それを見逃さず踏み込む影がある。 「行きます……死んだら負けですね? バイデン」 桐だ。 彼は地を蹴り、往く。 大剣を右肩に担ぐ様に携えて、振るわれた拳の内側へと、往く。 相手が体勢を立て直そうと後方へ跳ぶのが見えた。誰が逃がすか。往く。 右脚支点。 体を開いて、 振りかぶれば、 「と、ど、けぇ――!」 ――躊躇無くぶち込んだ。 ●意地がある 血が舞った。 ポトガルの左肩から右腰へと、袈裟切りの形で刃が食い込む。 その強靭な肉体が、遂に崩れたのだ。 「ォ、グァ――!」 大剣と、後方へ逃げた勢いが積み重なり、そのまま背中から荒野へと倒れ込む。 軽く上半身がバウンド。されど立ちあがる事は無く、大の字で地上へと倒れ伏せば、 「ポトガル……まさか、貴様が!?」 「余所見はいけませんよ、貴方の相手は私だと言った筈です……!」 ボルギレルドに動揺が走った。見逃さず、要が剣に光を纏わせ振るう。 無防備な顎に叩き込んでやった。 「お、のれぇい! 邪魔だぞ、どけッ!」 されど一人で相手していた要の体力はもはや限界。 数度に渡る打撃に耐えた物の、地形の悪化と防御にとうとうミスが生じて薙ぎ払われる。 「良く耐えてくれていた――後は任せろ!」 直後。 「穿て不可視の糸よ……! 風穴を開けろ!」 櫻霞がボルギレルドに狙いを定めて気糸を放つ。 それは増援を殲滅したと言う事だろう。――攻撃が再び前面へと集中する。 「私とは随分相性が良いみたいですね……全力でお相手します」 「護られホリメ、て訳じゃないんだぜ俺も……!」 崩しに耐性のある桐が距離を詰め、精神を振り絞り俊介もまた強烈な光を放つ。 「私にも意地があります。……今度こそ、逃しませんよ」 レイチェルがボルギレルドを囲むように気糸を展開。 絡みつき、動きを縛る。 ――今度こそ、だ。 前進する力が止まる。 動けず、ほぼ全てのリベリスタの攻撃が集中すれば再生能力を遥かに上回るは必然で。 「後ろはうちが止めるわ! もう一体も通さんからな!」 さらに増援も椿が止める。 最も早かった者達は駆逐され、椿の符で構築した鳥達がさらなるバイデンを阻み続ける。 椿の防御を超えるだけの増援が来る時間も無い。ならばもう終わりだろうか。 ……いや、 そうだとしても意地がある。 バイデンとして、戦士として。 このままでは終われぬ。 「勝利をォォォ」 拘束を強引にぶち破り、ハンマーを握りしめ、 「我がァ、剛にて掴まんッッ!」 地表に叩きつければ“全体”を薙いだ。 衝撃が地を伝い、地割れが入る程の衝撃を放てば、地形が砕けてリベリスタ達を襲う。 人が落ちる程の裂け目では無いものの、範囲・威力ともに強烈である。今まで使用を控えていたのは自身にも多大な負担が掛る為だ。とは言えこの段階に至ってまで出し惜しみしても仕方ない。 勝利を掴む為に、自爆覚悟で撃ち放つ。 されど、 「私達は……もう負けません! ここに来れなかった仲間の分まで……勝つんです!」 リベリスタ達は凌いだ。凌ぎ、きった。 比較的後衛の被害が少なかった事が幸いだったか。京子は叫び、銃を構える。 一手、何かもう一手あれば、あるいはリベリスタ達がミスをすれば逆転の目もあるだろうが、 「足りぬ、か……無――」 念、と言おうとして止めた。 ……違う。いやいや、違うぞ。 何が無念か。敗北。敗北したからだ。しかし闘争は、闘争はどうだった。 互する者達と全力で戦えて、闘い抜けて。 「……あぁ……」 正しく、 「満足だ……ッ!」 巨体が今、京子の銃弾を額に受け――地に倒れ伏した。 ●煙草の味 闘いは終わった。 趨勢が決まったのを感じ取ったのか、増援も来ない。 勝利を得たのだ。 「終わった、か……やれやれ、もう立つんじゃねーぞマジで」 首元を抑えつつ俊介が呟く先は――倒れているポトガルだ。 生きている。弱々しいながら、まだ息があるのだ。 「なんや生きてるんか。……なら最期に煙草、教えたろか」 「……頼も――うか」 「ん。何、簡単やで。まずこっち側口に咥えてやな……そうそう。んで、反対側に火ィ点けて出てくる煙吸い込む嗜好品なんよ。味はどうや、美味いか?」 「……遠回しに言ってクソ不味いな。なんだこれは」 「それが煙草という物じゃて。わしなんかは過去の闘いを思い出す時に吸う事にしている」 言うは迷子だ。己が煙草に火を再度点け近寄り、 「なぁ」 お前は、 「満足したか?」 「存分に」 ポトガルは即答した。 ならば良し、と彼女は告げて。 「バイデン……流石、一筋縄じゃいかない奴らだったな。 これが俺達を一度退けた種族の脅威――と言う奴か」 櫻霞もまたポケットから煙草を取り出し、火を点ける。 闘いを思い返す様に息を吸って、 「ま、勝利すればこそだが……割と楽しかったぞ。バイデン」 言葉と共に、煙を吐き出した。 「有難う――私も楽しかった」 己が届かぬ“化物”に惹かれるレイチェルの言うその言葉にはどんな意味が詰まっていたのか。 さてはていずれにせよ。 「……ああ」 息を吸って、 「これが敗北――と煙草の味――か」 ゆっくり吐けば、 「……苦いな」 仮面の奥の瞼が閉じた。 煙が天へと昇って消えて。 命もまた一つ消えて行く。 それでも喧騒は、まだ止まない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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