● 「それで?」 「いやあ……何というかっスね」 頭ぽりぽり。 腰に手を当て、何やらぷんすかとしているのは狐耳と狐の尻尾の少女、東屋あい。 正面で正座している狸耳に狸の尻尾の東屋まいに、どうにも反省の色はない。 「いや、こうなるとは思ってなかったッスよ! それはあいちゃんだって同じでしょ?!」 「それはまあ……そうですが」 二人が会話をしているのは、とある小学校。 彼女らが幼少時代を学び、笑い、泣き、そして卒業していったその学び舎は、長い年月の末に晴れてその役目を終えた。 もはや訪れる者のないその学校は、このままただ静かに朽ちていくのを待つのみ。そのはず、だったが…… 「だからって、これはあなたの責任ですからね」 「えっ!?」 ぷんすかぷんすか。 予め言うが、東屋あいは別に怒っているのではない。 ただ、いざと言う時に『私はこの件など与り知らぬことです』と言い張る為のアピールにすぎないわけだ。 とはいえ、色々と双子の姉(その差1分30秒)に頭の上がらないまいにそれを崩せるわけもなく。ただただ、正座の憂き目なのである。 閑話休題。 二人がいるのは、既に廃校となり、役目を終えたはずの学舎の前である。 「はあ。まあ良いです。寛大な私は許してあげましょう」 「あれぇ、何か……」 「それで?」 異論は差し挟ませぬ。 主に保身のために。 「現状を完結に説明しなさいな」 「小学校、総結界化ッスね♪」 「なんたる……」 こればかりは、二人そろって笑いあって、そして肩を落とすのだった。 先だって、彼女らの思い出作りの為に、この学校の七不思議の調査が行われたのだ。 本来の危惧に沿ってD・ホールは破壊されたのだが……その余波は、未だますます健在。どころか、折角眠っていた怪異が、呼び覚まされてしまったのである。 それも、調査に協力したリベリスタの思念をトレースする形を取って。 「でもッスね。でもッスね! これはチャンスッスよ!」 「なにが?」 「予定とは少し違うッスけど、これもひとつの思い出作り! 去り行く校舎に、ボク達の手で引導を渡すんスよ!」 「またもう、あなたは」 「あいちゃん! 勿論手伝ってくれるッスよね?!」 「何にも反省してませんね」 「勿論みなさんも!!」 そこでぐるりと、まいは向き直った。 ずらりとならんだリベリスタ。 さて、エリューション災害となれば放ってもおけない。 アークの手により派遣されたリベリスタ達は、事情を知るものも初めて知った者も含めて、溜息を吐くやら目を輝かすやら。 なぜなら。 「これからボク達は、七不思議にひとつひとつ引導を渡していかなければならないんス」 「数は文字通り七つ……で、済めばいいんですけどねえ」 「最初の怪談は……“校庭を徘徊する武者”の話ッス」 「どうやら、その昔この地に落ち延びた数人の武者が未だに校庭を徘徊しているらしく。彼は落人狩りに遭い首を失ったのですが、それを今でも探しています。そして、遭遇した人間にこう聞いてくるのです。 ――首塚知らぬか。首塚知らぬか。知らねばよこせ、首よこせ。 その時に場所を答えられないと、首を落とされる、とか。 まあ、皆さんならそう簡単に死ぬわけもありませんが」 でも相手はエリューション、いやさあえて怪異と言いましょうか。 ただ平穏無事とは行かないでしょうねえ。 「どうか、協力してくださいッス!」 「供養と思って。なにとぞ。あと妹のためにも、なにとぞ」 なむ、なむ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕陽 紅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月12日(日)22:30 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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