●猛暑の日々~某フィクサードの会話~ 「あんちゃーん!」 「どうした弟よッ」 「寒いよー!」 「寒いなッ」 「世間じゃ夏だってよ!」 「猛暑だなッ」 「クソが! 俺達は年がら年中寒いっつーのによォ!」 「寒いな! ホンット寒いなッ!」 「あんちゃーん! 何とかしてよー!」 「良し良し!! このしもやけジョニーとアーティファクト『ツンドラで過ごす冬休み』にかかれば有象無象は朝飯前のチンカラホイだッ。具体的に言うとアーティファクトと私とお前の魔力を使って儀式を行い超局地的に北国並の真冬状態にするぞッ」 「流石あんちゃん! そこに痺れる憧れるゥ!!」 ●ブリーフィングルームは常時クーラー全開です 「……というのを観測致しまして」 と、事務椅子をくるんと回し皆へと向いたのは『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。 その背後モニターには――一面の銀世界。雪が降り、湖は凍り付き、雪化粧の木々が揺れる。 要約すれば、フィクサードがアーティファクトと魔導儀式によって、超局地的で一時的ながらも真冬状態にしてしまったのだと言う。 何故か。『夏だから冬っぽい事して遊ぼうぜ』と思い付いたから。 「……フィクサードの名は『しもやけジョニー』と『かじかみテリー』。何度かリベリスタの皆々様と接触した事のある兄弟でございます。 話が出来ないサイコパスだとか血も涙もない鬼畜外道だとかそういう類ではないのでそこんとこはご安心を。寧ろ、対立目的さえなければ敵意を剥きだすような事もありませんしね――お互いに。 今回の件について、本人達に悪意や害意は皆無らしいのですが……」 苦笑。だが、観測したものをそのままスルーする訳にもいかず。ならばどうするか。 「一応、現場に赴いて……心配なら結界を張るなりして、『これはフィクサードが変な事をしないよう監視しているんだ!(キリッ』っていう名目の下に銀世界をエンジョイしちゃえばいいんじゃないですか?」 割となげやりじゃねーか。 「あ、当然ムチャクチャ寒いので夏服のまま行かないで下さいね!」 ……しかし、この暑い日に銀世界か。まぁ、悪くないかもしれない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月09日(木)22:47 |
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●夏だ! 雪だ! 銀世界だ! 「夏に一面の銀世界とは……何とも風流なものでございますね……」 そう呟いたシエルを始め、皆の眼前に広がっていたのは一面の銀世界であった。そして犯人のフィクサードといえばキャッキャと雪で戯れている。悪気なんて皆無の様で。 「自然への影響が心配ですが……其れはアーク処理班にフォローをお願いするとして……」 余程酷い事にならない限りは、警戒しつつも温かく見守ろう。 「ワオ! 一面の銀世界ってヤツね! ワタシ雪って見るのハジメテ!!」 「雪ー雪ー雪だるまー雪合戦はできるかなー? 夏に雪って面白いよねー」 「やったあああ銀世界だーやっぱりこの湿度高くてあっつい日本の夏より冬よね!」 そんなシエルの脇を、わぁいと駆け抜けていったのはシャルロッテに伊丹にエレオノーラ。 「何をするといっても特に思い浮かびませんが、せっかくの機会ですから楽しんでしまうのも良いかもしれません……が」 これだけ寒いと体調を崩す方もいそうですね、と三郎太はカマクラを造り始める。 「さてと……がんばりましょう、これもアークとしても勤め、です」 黙々、沙希も雪を集めてかまくら製作。まったく神秘の秘匿もあったもんじゃない。でも、良いわ――薄ら目を細めたのは、フィクサード監視を理由に己の欲望を満たしつつ依頼もこなせるから。 日本人のいうかまくらってものがあるらしいけど、どんな風に作るのかな?そう思っていたシャルロッテは2人の様子をじっと見る。 「まさか真夏に疑似体験をすることになるとは」 日本で冬を経験した事がないココジェタは驚きの表情で辺りを見渡している。フィクサードに感謝というのもおかしいかもしれないが、冬の予行練習といこう。そっと拾い上げる白い雪。覚えてゆこう、その色を、感触を、冷たさを。家で待つ妹の為に。きっと冬が待ち遠しくなるだろうから。 見上げる空からは粉雪が降り続ける。陽光にキラキラ輝きながら。目を細め――慣れぬ地で初めての気候を体験するのは、不安な事だとは思うが。 (それが少しでも和らぐのなら、それは我にとっても嬉しいことだ) そんな薄笑みを浮かべた瞬間であった。 そう、唐突に50人近いリベリスタが現れれば、フィクサード達も黙っちゃいない。 「お、お前等何なんだァー!?」 「アークか!? 待て、我々は無実だー!」 流石にこの人数にボコられたらシャレにならん。が、リベリスタ達は彼等がフィクサードとはいえ悪意が無い事を知っている。 「Hi,初めましテ! アナタたちがジョニーとテリー?」 フランクに話しかけたのは伊丹、えへへと笑ってこう言った。「お礼言いに来マシタ」と。 「ワタシ雪って見たことなかったカラ、すっごく嬉しいヨ! それにハジメテの雪が真夏の銀世界だなんて、とってもロマンチック! 二人にとってはオールシーズン真冬で大変カモしれないケド……えっと、でもワタシはすごく嬉しかったカラ、ありがとう!」 その裏表の無い笑顔にフィクサードは顔を見合わせた。どうやら彼等は自分達をボコりに来たのではないらしい。 「へへへ。あんちゃんスゲーだろ? まぁゆっくりしていけよ」 「何にしても今日は休戦だ、争う理由も無い」 「やぁ、ココジェタ・ユテという。そっちの名字は聞いていないな、何というんだ?」 「おっと悪ィがそいつァ企業秘密だぜ!」 「そうか、それはすまなかった。……暑さは慣れているが、日本の夏は湿気が多い。それに参っていたところだ。こうして珍しい方法で涼を取れるのはありがたい。礼を言うぞ」 「フン、この前の借りを返したとでも思い給え」 そっぽを向きつ、ジョニーが口にしたのは先日の出来事――六道の魔の手からリベリスタに救われた事。 「ところデその被ってるシロクマって、ホンモノ?」 と、伊丹がジョニーの被りモノを触りたそうにガン見なう。 「勿論、本もn」 「えぇ、貴方達の寒さを自分がこの雪合戦とソウルで熱くさせてみせましょう! いざ尋常に勝負です!」 「うぉおおお来いよぉぉお」 「oh,ユキガッセン? 面白そう! ワタシも混ぜテ!」 テリーと亘が大雪合戦。それに飛び込んで行く伊丹。あんちゃんも来いよと言われたので、溜息の後にジョニーも参加。 「猛暑からの脱出……涼し……さぶっ……」 一方、銀世界の中で綺沙羅は寒さに震えていた。あの茹だる様な暑さに比べればマシだが、寒いもんは寒い。動かないと凍える。 「くそっ……」 舌打ち一つ、キッと見据える先には雪合戦でワイワイしているフィクサードとアークの面々。 「夏の銀世界――なんというか新鮮で面白いですね! ふふ、全力で遊びましょう!!」 「面白ェ! 喰らえ多重残影雪投剣!」 「圧倒的速度と死角からの攻撃に耐えられますか!」 速さと回避を活かし、同じエンジェ×ソドミラの亘とテリーが空中で凄まじい攻防を繰り広げている。雪玉なのに剛速球&変化球。互いに猛スピード。 綺沙羅は何だかいらっときた。混ざって来よう。そうしよう。全力で雪玉ぶつけてやる。鬼人使って命中底上げして確実に当ててやる。 「遊びでスキル使うとか大人げない? 大丈夫、キサは子供だから」 遊びでも全力投球。ぎゅぎゅっと雪を堅く纏めて。 「喰らえ! 非リア兄弟……!!」 銀世界に雪が飛び交う。 そんな中、あぁ、楽しいなぁ、二人も楽しいかな。亘は笑顔。遊びたい、もっと楽しく。 ど派手にやるなら徹底的に、真剣に、全力で遊び倒す! 「夏の最中に雪遊びとは豪勢です。早速雪だるまでも作りましょう」 「ぼっちです。寒いです。でも、暑いのは嫌いなので寒い方が好きです。でも、寒いと眠くなります。ぼっちです……」 延々、黙々、常の無表情のままで、同じ様な形状・サイズの雪だるまを幾つも幾つも大量に造り続けるうさぎの傍ら、ぼっち竜一は一人雪祭りと言う名の雪だるま制作に勤しんでいる。 「私、暑いのって嫌いなのよ。汗かくし、何より子供達が一番はしゃぐ季節だし……私、子供って嫌いなのよね」 だから、それに準じて夏も嫌いなのよ――こじりの吐く毒交じりの溜息も今は純白になる気温。見渡す雪原。ほぅ、と再度吐く息も先と変わらず真っ白い。 「やっぱり冬よね。身が引き締まる位が丁度良いわ」 と、隅っこの方でモル雪像製作で暇潰し開始。 その彼方、凍った湖では凛子がスケートを楽しんでいた。真夏の雪は珍しい。それに趣があるとは言われるが、 「ここまでになると趣も何もありませんね」 苦笑。だが、楽しい時間にはなるだろう。 「フィクサードは倒します! って言いたいところですけれど」 セラフィーナは苦笑を浮かべた。楽しげな声。はしゃぐ仲間とフィクサード。どうやら悪い人じゃないようだし、今日はこの銀世界で遊んじゃおう。 「夏に銀世界っていいよね。なんというか、冬に暖房でぬくぬくしながらアイスを食べるみたいな」 そう云う彼女の手にはスノボ。立つ位置は斜面の天辺。 「スノボーは初めてですけど……スキーと同じようなものですよね?」 でやぁ。ウワァ。ごろんごろん。 やはり最初からは上手くいかないか……雪玉塗れで起き上がろうとしたそこへ、差し出される手が一つ。シャルロッテだった。 「貴方もスノボーを?」 「ん~、ダンボールそりって雪でつかえるのかな? ぐしゃぐしゃになりそうだけどどうなんだろう?」 言いながら見せたのは、一枚の段ボール。 まぁ、旅は道連れ世は情け。一緒に滑ろう。 「雪ダナースノボーだースキーだー」 急斜面ではリュミエールが、面接着・ハイバランサーを用いた超絶かつ最速テクニックで滑りまくっていた。 「雪国育ちダシナー」 ウィンタースポーツはまかせろーばりばりー。 その別所。 「さて、この周辺は妾の領域だ」 黒いウェアの完全スノボ装備、その名はシェリー。ゴーグルを取り付け緩やかな動作で滑り出すのは――普通だったら滑り禁止になっていそうな危険コース。 されど魔女は流るような技と派手な滑りで華麗に滑る。 「妾は木の板で、コースのない雪山を下ったことがあるのだ。この程度造作も無い」 宙返りは当たり前、腰を捻ってムーンサルト。 滑る、滑る。 「段々と昔の無茶な滑り方を思い出してきたわ」 言いつつ、放つのはフレアバースト、その爆風を利用して高く飛んだかと思いきや、空中で更に一条の稲妻を奔らせて派手な演出を。 「黒衣を纏い暗闇に紛れて滑るのを好む妾の事を、一族は皆『黒い迅雷』と呼んでいたものだ」 雪の上、銀の髪を靡かせる。 エキサイトの一方、沙希はかまくらを完成させて。神棚も飾っちゃって。風通しが良い様にと小窓も作っちゃって。カセットコンロ使い、次に作るのは鍋焼きうどん。真夏に鍋焼きうどんが食べたかったのだ。 はふ、と熱々の鍋焼きうどんを頬張って、日本酒で一杯。あぁ、最高だ。因みにこれに満足したら帰る心算。 アークへの報告?抜かり無い、書いてある。 『色々あったけれど、大雑把にいえば異常ありませんでした』 我ながら完璧。ふふ、ロクデナシに多くを求めてはいけないのよ。 『皆さまが各々に銀世界を楽しめるようにかげながらフォローさせて頂く』という役目を果たす心算、シエルは防寒具を着込んで上空から見回りを行っていた。 そんな中、目に留まったのは。 「寒い、のう……」 三高平のモーセこと小五郎じーじである。常日頃からぷるぷるしてるじーじだが、今日ばかりはぶるぶるしてると表現すべきか。ぶるぶるしながら皆を見ている。 「元気、じゃのう……」 「あの、大丈夫ですか?」 「おかげさまで、ひ孫が生まれましてのう……ふぉ、ふぉ。ばーさんや、こうしてると懐かしいのう……。結婚してから、何年じゃったろうか……」 うん、懐かしいのう……そんなじーじは横を見ているのだが、そこには誰もいない。 「ばーさんや、朝ごはんはまだじゃったかのう……?」 おじいちゃん、朝ご飯ならもう食べたでしょ。 因みにじーじのばーさんは天国でバカンス中。つまりは故人。 つまり…… 「お、おじいさん……!」 「おぉ、ふぇいと使用……はて、ふぇいとってなんじゃったろうか……?」 「おじいさん……!?」 「寒い、のう……。ああ……ばーさんや、そんなとこにおったのじゃな……」 じーじは何も無い所へふらふらと。ずっとじっとしたからちょっとヤバい。もしかして:幻覚 「そ、そちらには何も御座いませんよおじいさん……!」 取り敢えず急いで聖神の息吹。AFから魔法瓶を取り出して暖かい飲物も手渡して。 「ぃぇ~ぃ……」 取り敢えずダブルピースをするじーじ。じーじ死なないで>< 「皆さまがひとときの銀世界を存分に楽しむことが出来ますように……」 シエルは心の底から祈ったのであった。 「ふふ……出来た」 薄笑みを浮かべたこじりの眼前には、完成したモル雪像。 一歩離れ、満足気にモルを眺め―― 一気呵成に叩き潰す! 「さて……次は何を作ろうかしら」 破壊と創造は表裏一体。この世は不条理と、不平等と、不公平で埋め尽くされているわ。 「思ったのだけれど、雪原でも涼しいのは最初だけで何かしている内に暑くなってくるわよね」 まあ、それでも冬は好きなのだけれど。再度雪を集め出す。 その様子や、他の皆の様子を見。 「…みんな楽しそうだな…うふ、うふふふふ」 いいもん、ぼっちには慣れてるもん。竜一は独り寂しく雪遊び。■ーヌちゃん誘えばよかったのに。それか妹さん。 「いいもん! イヴたん雪像作るもん。かわいいのつくるもん。で、ちゅっちゅするもん。うひ、うひひひ! さ、さみしくなんかないやい!」 咳をしても一人 ―――尾崎放哉 「……うわああん! 蝮ー! あそんでええ! メルクリィでもいいや! 割らせてえええ!」 「断る」 「割るのは断りますが、遊んで欲しいならそう言って下されば良かったのに!」 ∩<|´w`|>∩ <それじゃ私とかまくらでも造りますか ワイワイと。その一方でうさぎはふぅと満足気に息を吐き、自分の周囲を見渡した。大量の同じ様な雪だるまが織り成すシュールだかホラーだかよくわからない一角。なんということでしょう。 「……で、何で私はこんな無意味に不気味な絵面を作っているのですか?」 こっちが訊きたいです。 「うん。流石にノープランで来過ぎましたね」 まあ良いか、皆が雪遊びしてるのを眺めるのもオツな物だろう。と、そのまま大量の雪だるま達と一緒にジーっと見つめるのは雪合戦の白熱した様相。 「……うん、良い景色だ。鑑賞するに足る絵です。フィクサードとリベリスタが、仲良く、一緒に……」 独り言つ。その言葉に返ってくるのは、遠く遠い賑やかな笑い声。それだけ。 はは、と笑む声を漏らすも、表情は常のまま。無表情のまま。 ●かまくラブ この真夏に涼しそうな企画とは良いアイデア……と思ってたのは最初の3分だけだった。 「着込んできたのに、さ、寒い」 ぷるぷると未明は身震いしつつ手にはーっと息を吐きかけた。 「お前さんは寒いのが苦手であろう。……手が冷える故、見ているかね?」 そんな恋人の様子に苦笑を浮かべつ、オーウェンはかまくら造りに取り掛かる。「いいえ、手伝うわ」と返した未明は予め持ってきた七輪に炭を起こして適当な石も入れた後、動く事で暖を取ろうと試みる。でも寒い。 くしゃみをしつつ、寒いと呟きつつ、それでもオーウェンと外壁を厚めにしたかまくらを造り上げ。早々に中へ。 ようやっと一段落。暖かいのは身体を動かしたからか、かまくらの中にいるからか、七輪が傍にあるからか、それとも二人で寄り添っているからか。 と、オーウェンの冷えた手が未明の首筋に触れて。 「冷た っ……ちょっと、」 「ん、黙っているだけでは面白くもあるまい?」 悪びれない薄笑みを浮かべつ、彼は溜息を吐いた彼女へ己のコートを掛けてあげた。 「……こうすれば、少しはマシになるだろう?」 その言葉と肩のぬくもりに未明は小さく笑みを浮かべ、七輪から石を取り出し、布で包んで温石を作り。 「カイロみたいに懐に入れると温かいわよ」 こう、と懐に入れて見せて、漸く人心地。 暖かい。 夏に暖かさを求めるなんて変な話だけれども。 なんて、のんびり。 序でに、と未明は冷凍庫から発掘した餅(正月の余り物)も焼いて、熱々のそれを半分に割り、火傷しそうになりながらはいどうぞ。 「ホントはお雑煮とかできれば良いんだけど、流石にねぇ」 今度の正月、作ったの食べてみる?頬張りつつ、二人で過ごす緩やかな時間。 ●熱海プラス~三高平海峡冬景色~ 真空管の憎いアンチクショウが言ってました。 『あ、当然ムチャクチャ寒いので夏服のまま行かないで下さいね!』 「って、フリじゃなかったの!? 押すなよ、絶対に押すなよ的な! だまされたよ!」 氷点下の寒風が容赦なく舞姫に突き刺さる。震えが全く止まらない。 「ふおおおおおおお、ガチで寒いっ! 真夏のサマーは、わたしのないすばでーに釘付けだよパッションと信じて、水着で着たのに!! ぱんつしか着替え持ってきてないよ!」 戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫。ブラジャー及び帰りの服はどうするのです。 「ひゃっほう☆ 雪合戦に雪だるま、かまくらも作り放題だー☆」 それはさて置き真夏に銀世界で超ご機嫌、ホップステップでルンタッタな終――の目の前に、雪に塗れし名状し難い水着少女が!\突然の舞姫/ 「で、何で舞りゅんは1人罰ゲームやってんの??」 「騙された……∩<|´w`|>∩に……」 「あー、まあ、別の意味で注目は集めてるみたいだけどね……」 「ほふうう、お、おわるくくくくん、かまくらつくってててて うひょう、歯の根が合わないいい」 「じゃ、張り切って頑張るよ! おニューのスコップが火を吹くぜ☆」 テッテテー(石造りのスコップ) 「このスコップおもーい><」 「やばいよ、蝮さんなら正直複雑なんて言いながら冬眠しちゃうよ!? ハリーハリーハリーハリー!!」 「はいは~い、よいせ、よいせっと☆」 Now loading……(DAの高さを生かして高速かまくら制作中) 「ふー……。舞りゅんだいじょうb」 「ああ……、国子さんが手招きしてる……そっちは暖かそうだね」 「って天国にお呼ばれ中!!? 羨ましs……じゃなくて、急ぐから気を確かに! コートも貸してあげるから天国から帰還してプリーズ!!」 「花を愛する好青年のJさんによろしく……」 「逝かないでーーー!!」 結論:寒い所では服を着ようね! ●らぶあんどぴーすなのです 「フィクサードの悪戯でこの有様か……結界を張って連中を……」 「ほら、ランディ、マフラー! 防寒着でばっちりガードしないとね」 ヤル気MAX、禍々しい笑顔でグレイヴディガーを取り出しかけた赤い墓掘りことランディ――に、きゃっきゃとはしゃぐニニギアがまきまきーっとマフラーを巻き付けているという光景。 「うわぁ、ほんとに涼し……寒っ! 銀世界! 寒い! といえば、お餅! お汁粉! 鍋! あったかいものをおいしく食べられる!」 すてきだわ、涎をじゅるりと拭ったその瞬間。ニニギアの顔面にばふーんと雪合戦の流れ弾が。 「うぐっ、あうっ」 ぶしゃぁ。雪の中にノックダウン。 「ニニー? 大丈夫かー!?」 「あぁぁ 雪玉飛んできて、お餅焼くどころじゃないのです」 ランディにズボッと雪の中から救出されたニニギアは雪玉だらけになりながらも、楽しげな笑顔。 「楽しいか?」 「もちろん!」 「そだな、暑いの苦手だものな」 雪を払ってやるのも兼ねて、彼はその大きな手で彼女の頭を撫でてやり。ニニギアは羽をぱたぱたさせて雪を払いつつ、 「やはりかまくらは必須ね」 「よーしそれじゃあザクザク作るぞ」 「おー!」 二人で一緒によっせよっせ。雪玉を転がして、集めて、協力製作。 「俺がかまくらを作っていくからニニは中で餅の準備を頼んだぜ」 「任せて! 美味しいの作るわっ」 幾許。ランディはニニギアの周りをペタペタと雪の壁で囲って、ニニギアは一生懸命お餅の準備に勤しんでいる。「ニニ、ほら、ニニに最後の天井の仕上げやって欲しいんだ」 「了解、こっちは任せて!」 ぱたぱた。羽音。 そして、遂に完成。 「ふふー、出来たな……重厚な壁、見通せる銃眼、天井にはニニの仕上げたミニ雪だるま」 「さすがランディ、ぱわふる! 見事なかまくら! 銃眼までばっちり!」 何故にそんな戦闘用かまくらなのかはさて置き。お餅も焼けた。美味しく食べよう。熱々を一口。 「おいしい! 幸せ!」 「ん、美味いな」 皆もどうぞ。リベリスタ、フィクサードにもお裾分け。 そうして一頻りはしゃいだ後は、かまくらの中で二人一緒に隣合わせ。温かいものを食べたし動き回ったし、さっきよりは寒くないけれども。冷えたらいけないから。折角寒いから。 「ランディをホカホカに暖めちゃうのです」 「おう、温い温い。ありがとな」 ぎゅーぎゅーくっつくニニギアを、ランディはぎゅっと全身で抱く様に包んで。 (ん? なんか忘れてる様な……) まぁいっか。 共に居る時間を大切に、分かち合う。 ●ゲレンデは燃えているか 腕組をして、雪の上。鷲祐は鋭い眼差しで一転を睨み据えたまま、集中に集中を重ねていた。 ターゲットはかじかみテリー。 タイミングは――今ッ! 「――神速斬断『竜握正座』ッ!!」 要はソニックエッジ的な素手で遊んでいたテリーを強制的に正座。 「う、うぉっ 何だと思ったらてめぇ『アークの神速』の――」 「貴様、手を出したそうだな」 「へ?」 「……で、どの程度の覚悟なんだ?」 言いつつ、鷲祐自身もテリーの前で正座。トカゲ脚だから大丈夫。変温動物の特性も備えてある。後でホリメ呼ぶけど。 「あれでもアークのリベリスタ。しかも色々と長く深い過去を抱えて生きてきている。求められるものは自ずと重く硬くなる。……貴様に、運命の寵愛を超える覚悟があるか!?」 「ば、馬鹿にすんなよッ、俺の気持ちはそんな軽々しいモンじゃねぇやい!! 運命だろうがエベレストだろうが惚れた女の為にゃクールに乗り越えるのが男ってモンだろうが!!」 思わず張り上げた声。それに鷲祐は――ふっと笑い。立ち上がって踵を返して。 なら、往けよ。 そう背中で語る。が、テリーは一向に立ちあがらない。 「やべ、足痺れた……麻痺った……くそっ、これが『アークの神速』の力か……!」 ●銀世界はほっとです 「何をしているのですか、あなた達は……」 悠月の口から思わず漏れたのはそんな一言だった。あの後姿を消してから如何しているのかと思っていたが。 「流石にこれは気付きます。……だから如何、と『私は』言いませんけれど……まあ、お二人共元気な様で何よりです」 「あぁ、お陰さまでな。そちらも元気そうでなにより――それから、アレだ。礼を言う。恩は忘れん」 「どう致しまして。まぁ、程々になさいませ」 苦笑しつつジョニーに一言。テリーはお取り込み中だろうから。 そして視線を横の拓真へ軽く向ければ、 「リベリスタ、新城拓真。……羽を伸ばさせて貰っている」 「あぁ、今日ぐらいノンビリするが良い」 挨拶も済めば、喧騒から外れた所で二人きり。 静かな粉雪が二人を包む。 「良かったのか? もう少し話をしても、俺は構わなかったが」 拓真の言葉に、良いんです、と悠月は首を振った。実害は一応なさそうだし……尤も、気候を変える程の儀式魔術を扱えるとは思わなかったけれど。 「……そうか、ならば良いのだが」 笑みを浮かべ、二人で見るのは真夏の冬景色。一面の銀世界。 「しかし……こうも普段と季節感が変わると、妙に違和感を感じるな」 「真夏と真冬ですからね。珍しい体験なのは確かです」 数時間前までは誰もが暑い暑いとへばっていたのに。身体が感じる寒さに、少し首を傾げながらも、薄笑みのまま拓真は悠月の肩に手を回して。 「だが、そう悪い物でもないか」 言下、その細い身体を腕の中へ。零の距離は暖かい。 「……気兼ねなく、君をこうして抱く事が出来る」 互いの呼吸、互いの鼓動、互いの体温。寄せられ、重なる唇は一層温かく感じた。狂おしい程に。 「……冷えていると、触れて温もりを強く……感じますね」 口唇を離した寸の間の距離、はにかみ混じりの彼女の言葉にその頬を撫でて。 「愛しているよ、悠月。……これからも、ずっと」 「お側に。愛しています、拓真さん」 雪の上に映る影が離れる事は、ない。 ●る。 「冬、ルカきらいなのよ、だって寒いもの」 そう言ってメルクリィの前に現れたルカルカの姿は、いつも通り。超薄着。 「……ちょ」 メルクリィ唖然。そんな彼の真空管にペタペタ、羊はマイペースに手を伸ばし雪を張り付けてゆく。呆気にとらて、思わず素っ頓狂な質問が口から出てしまった。 「冬毛は!?」 「ルカにそんな毛生えないわ――ねぇ、見て、てばさきのね、ゆきだるま」 ね?かわいい?そうやって見上げた先には丸めた雪玉をのせられた真空管。 言いたい事は沢山あるが。一先ずは。 「……えぇ、可愛らしいです。これなら割られる心配はなさs「へくちっ」……」 溜息と苦笑。真っ赤な鼻を擦って、ルカルカは両手を彼へと差し出して。 「寒いの。てばさき、だっこ。温めて」 「そのつもりです――はい、おいで」 脱いだコート(勿論ノースリーブだが)を被せて抱っこして、誰かが造ったかまくらの中。座りこんで、ぎゅーっと抱き締める。ヒンヤリしている。 「今度からは防寒具の類をちゃんと着けて下さいね?」 「ん、でも、寒くてもこれがルカだもの。いつだってルカはルカ。揺らぎないの」 だからね、と。抱っこしてくれるその機械の手に、自分の手を重ねて。 「ルカ、かわらないの。かわらないでずっと、てばさきすきなのよ。 ……てばさき、機械の身体なのにあったかいの」 大きな手、好き 抱っこされるの、すごくすき 「寒いけどだいすきなてばさきがあっためてくれるの。すごく贅沢ね」 「……フフ、私も。私の事を好きでいて下さるルカルカ様をこうやって暖められて、とても贅沢で、とても幸せです」 でも、過ぎりかけた一抹の不安をぐっと押し殺して。ある日彼女は、何処か遠い遠い、手も声も届かない所に往ってしまうのではなかろうか――抱き締める手に力が込もる。 「これからも、かわらずに、宜しくお願い致しますね。私もルカルカ様が大好きですぞ」 「うん、しってる」 ●あったかさまー 「夏とは思えない完全な銀世界だな。アーティファクトってのには相変わらず驚かされるぜ」 「もう真夏なのに……すごい」 猛とリセリアの眼前に広がるのは、 悪戯というには過ぎた規模の効果、光景。一応人の迷惑になってはいないそうなのだが、 (ここの動植物にはいい迷惑なのだろうけど) リセリアは心中で溜息一つ。それでも、季節外れの銀世界には思わず感嘆の息も漏れようものだ。 一面が、白い――ぐるりと見渡した末、彼女の横に立つ猛は凍った湖へ徐に視線を投げかけていた。 「……そういや、あの時から結構経つんだな」 「あの時?」 「や、こっちの話」 なんでもないよと手を振り苦笑する猛。そんな様子に小首を傾げるも、同じく凍った湖へ視線を向けるリセリア。 「随分経ったといえば、皆で遊園地に行ったのがもう8ヶ月も前。早いようで、色々ありましたね――」 彼女の言葉に、そうだな、と頷く彼の脳内。そうだ、早いものだ……彼女に好きだと言った時の事を思い出す。 思えば我ながらいきなりだった。 後悔はないが、彼女の胸中を考えると思わず苦笑が漏れてしまう。その様子に、彼女は再び眉を擡げるのだ。 そんな彼女の、蒼紫の目を見。 「……リセリア、実は受け取って欲しい物があってさ」 優しく語りかける言葉と共に差し出すのは、小さな包み。彼女の瞳が驚きに見開かれる。 「これって……」 いいんですか?受け取ったそれと彼とを見比べれば、はにかみつつも猛は頷く。促す様に。それに従い包みを開ければ――ふわり、藍色のリボンがそこにあった。 「何時も苦労させてるからな、プレゼント」 「……苦労は、お互い様です。でも」 ありがとう、と笑顔を浮かべて。 いや、こっちこそ何時もありがとうな、と彼も笑顔だった。 ●あったかスノウ 「寒いのは苦手と仰っていたのに、ご一緒下さって有難うございます」 いつもの服装の上に防寒着を1枚、そんなリリに対し腕鍛はモッコモコに着膨れて。 「リリ殿の故郷はいつもこれぐらい寒いのでござるか?」 「故郷の冬はだいぶ寒いですから、お越しになる時は冬以外がいいと思います」 「……ご家族にあいさつに行く時の難易度が別方向に跳ね上がったでござる」 小さな呟き。それにすこし驚いた様子を見せ、リリは彼の顔を横から僅かに覗き込む。 「故郷へお越しに?」 「あ、なんでもないでござるよ。こちらの話でござる。それより、ほら、雪ウサギを一緒に作るでござる」 そうして、二人で雪を掬いあげる。掌で形作ってゆく。 ひんやりした、温度。 「故郷では小さい頃、時折雪遊びをしていました。懐かしいです」 昔から、あまり手先が器用ではないのですが、と彼に顔を向け苦笑。その手の中には小さな兎。 「夏にみられるものではないでござるが、ある意味風流でござるな」 傍らに置かれる白ウサギ。葉っぱの耳。 と、リリの手が不意に腕鍛の手を包んだ。 「大丈夫ですか? 冷たい……」 両手で包んで暖める。じわり、伝わる体温。重なる手に視線を注ぎつ、リリは徐に言葉を続ける。 「……貴方と出会ってから、笑う事が随分と増えました。 貴方が辛くなった時は、私が支えになります。貴方がそうして下さったように」 「ありがとうでござる。辛くなったらでござるか……じゃ、その時お願いするでござるよ」 具体的には今?なんて、包まれた両手をぎゅっと握り返す。 今ですか?と、手を包まれるままに彼の目を見返す。 「す、すっごく寒いでござるから……」 「わ、分かりました」 お返しをしたかったのに、また私の方が支えて頂いているような……そんな思いを胸に、されど両の手は暖かい。 とても、とても、暖かい。 ●実際複雑 「夏だと思ったら冬だったでござる!!!」 容赦のない寒風に虎鐡は尻尾の先まで震えていた。避暑と言っても流石に限度があるだろう。 「いや、最初は夏の暑さよりも寒さの方がいいと思ったのでござる! でもこれはこれで中々きついでござぁ……」 ガタガタ、ブルブル、視線の先にはカマクラでノーンビリと葉巻を吹かしている咬兵の姿が。 「咬兵! 拙者寒いでござる!! 何か体を温める為に一緒に運動するのを手伝えでござるううう!」 「……何で俺が手伝わなくちゃならねぇんだ」 「ホラ、折角なんで雪合戦とか雪上喧嘩デスマッチとかもしくはかまくら作ってその中で一献するとか……とりあえず何か動いてないと死にそうでござる!」 「そこで死に物狂いでスクワットでもすりゃ必然的に温まると思うぜ」 動く気ゼロ。そんな様子にぶーたれる。 「何で……何で咬兵は平然としてられるのでござるか……? これが極道パワーって奴なのでござるか……?」 なんて絶望しつつもスクワット開始。腹立つから咬兵の目の前で。 「何故俺の目の前で……。あれだ、根性が足りねぇんだよ鬼蔭」 等と言いつつも、蛇のビスハ故か。寒いのは苦手な咬兵なのである(眠くなる) と、その時。「へくちっ」と響いたのはアンジェリカのくしゃみだった。 「こ、こんにちは……」 歯の根の合わぬ挨拶をしたのは、この寒いのに何故か水着姿のアンジェリカ。絶句する咬兵。 「何やってんだ、お前……」 「こんな格好だけどフィクサードの力なんかに負けないよ……」 つまり強がり。暖かいお茶を彼に振舞い、自分でも飲みつつ。一息吐いても無茶苦茶寒い。だが、負けるものか。 「滑る所、見ててね……」 すっとサーフボードを手に持つや、駆けて行くのは小高く雪が積もった所。つまりサーフボードをスノボ代わりに雪上サーフィン。面接着とハイバランサー。 滑る、滑る。 更に滑る。 吹き付ける風に凍り付きそうになりながらも、最高のパフォーマンス。 「ど、どうだった……?」 降りたち問うた。しかしそこで視界暗転――ぱたり。寒過ぎた。 「……ったく、馬鹿野郎が。おい鬼蔭」 「何でござるか!(絶賛スクワット中」 「脱げ」 「任せるでごz えっ?」 「二度も言わせんな」 「ちょ、白昼堂々そんな」 「何勘違いしてんだ阿呆……!」 そんなこんなで虎鐡の上着でアンジェリカを包んで。 ふ、と少女が目を覚ましたそこには、溜息を吐いた無頼の姿が。 「……気持ちは分かった。だが、次ァこんな事すんなよ」 わかった……そう頷いたアンジェリカは茹蛸みたいに顔を赤くして、それからもごもごとお礼を呟いた。 (拙者にもお礼を言って欲しいでござるよっ……!) 絶賛スクワット中。 ●ふりだむ 「これはまた……」 「フィクサードが居ると言う事で足を運んでは見たものの……」 ユーディスと葛葉は同時に息を吐いた。 銀世界。冷えてるし、雪は降っているし積もっているし、湖は凍っている。ここだけ真冬だなんて。 そして、その光景を現出させたというフィクサードはといえば―― 「雪合戦……」 満喫している。リベリスタ共々。彼らはそれがしたかったのだろうか。ユーディスは茫然。葛葉は苦笑交じりに頬を掻く。 「アレらに対しては拳を振るう気も起きんな……そちらは?」 「……軽く眩暈を覚えたのでどうしようかと」 そう返すだけである意味精一杯。予想通りの返事に葛葉の苦笑が深まった。 「実際にあれを見ると、戦意なんてものは……まあ、維持できませんね……あの様子を見る限り、大丈夫だとは思いますが」 「どう動くにしても理由が必要な者とそうでない者もいる……万が一何かがあっては困るしな、彼らを監視しつつ少し羽を伸ばすとしよう」 そうですね、とユーディスもつられるように苦笑して吐息を一つ。傍らで葛葉はぐっと伸びをした。冷えた空気が肺に深と浸み渡る。 「此処までの銀世界というのは、俺にとっては珍しい。場所が場所なら雪も積もろう物だが……」 白い輝く雪を目を細めつつ。吐く息は白い。ユーディスは掌で降る雪を受け止めれば、それは立ち所に溶けてしまった。 交わすのは他愛ない会話。 「まあ、これはこれで悪くは無い……かな?」 「何事もなければそれで良かろうさ」 ●ですぞ! 「メルクリィさーん!!」 「ルア様~♪」 突撃★どっかーん!むぎゅっと抱きつけば、いつもの様に機械の腕が高い高いをしてくれる。 「今度は成功!」 「おめでとうございますぞ!」 きりっと言い張るルアを肩車、ぐんと高くなった視点にはしゃぎつつ――彼が空色のマフラーとミトンの手袋を着けている事に気が付いた。自分が贈ったものだ。何だか嬉しくって、思わずむぎゅっ! 「ありがとうなのっ!」 「こちらこそ。とても暖かいですぞ」 寒いのは大変だけれども、辛い事だけではない。 メルクリィの肩の上、銀世界の散歩をしつつ。ルアは徐に手を伸ばした。 小さな手の上にふわりと落ちる、白い雪。 彼女の体温ですぐに溶けてしまったけれど。 「メルクリィさんの機械部分は冷たいね」 「はは、夏場はヒンヤリしていて心地良いんですけどねぇ」 「大きくなる前は機械も小さかったの?」 「そうですよ。ルア様だって小さな頃は小さかったでしょう?」 ちょっとおかしな物言いだけれど、それもそうだねと微笑んだ。 それから、彼の肩に自分の手を乗せる。ヒンヤリするけれど、じわじわ、暖かくなる。機械だけれど、彼は生きているから。 「メルクリィさんは寒いと、関節が動かなくなったりするの?」 「そう云う事はありませんが、寒いとそもそも動く事が億劫に……まぁ、オーバーヒートしてしまう夏よりはウンと過しや易いですねぇ」 冬は布団から起き上がる時が一番大変ですよね、なんて会話。 それからルアは彼の肩からひらりと跳躍を試みて、 ズボッ! 深い雪に腰まではまってしまった。 「えぇぇぇ!?」 「ちょっ ルア様ー!?」 「……うーにー! 抜けないぃい! びえーー! メルクリィさん、助けてぇ!」 ばたばた、えぐえぐ、へるぷみー。 「だ、大丈夫ですか!! 今助けますからっっ」 慌て急いで機械の手がルアを身体を掴む。そのままズボッと引き上げる。が、雪が溶けてびしょ濡れだ…… 「あんなに深い所があるなんて……くしゅんっ……、ぇちゅんっ」 「あぁ、今度からは気を付けて下さいね? ちょっとあっちのかまくらであったまりましょう」 メルクリィの袖なし外套に包まれて、それ急げ。ぴゅー。 ●ゆきやこんこ 「これって活かそうと思えば何か有益な事も出来そうなもんだけど……しそうにないねあの兄弟」 「真夏の日本で雪とか正気ですか。凄いや神秘」 オリヱと存人の視線の先。楽しそ~なフィクサード兄弟。 「常時寒いのは其れは其れで可哀想ですが、今ばかりは羨ましい。まあ其のお零れに預かれるのだから良しとしましょう」 「そうね、まァ楽しければそれで充分か!」 と、気儘に伸びをする傍らのオリヱに。存人は表情を変えずに問う。 「一応長袖とか手袋とか耳当てとか持ってきたのですが、どこから着ればいいのk 寒い」 吹き抜ける風は容赦のない温度。髪にも雪が薄ら積もる。 「ああうん存人それ全部着けた方がいいと思うよ、暑さにも寒さにも弱そうだし。っていうか寒いねコレ、酷暑から極寒マジ寒い。馬鹿じゃなくても夏風邪ひく……」 「オリヱは寒いのと暑いのどちらが苦手……どちらも平気そうですね、何となく」 其れとも室内仕事だから案外弱かったりしますか。ごそごそ防寒具を装備しながらの存人の言葉に、オリヱは「ん?」と彼へ振り返り。 「暑さにも寒さにもそこそこ強いけど、もちろん人類に快適な温度が大好きだよ俺も。今回はこれ楽しみに来た訳だけどね」 「俺はエアコンのある室内が好きです。けど別に外が嫌いと言う訳でもなし」 と言う訳で、雪を手に掬いあげる。サラサラで白い、冷たい。 この黄金の指先で、とオリヱはリアル雪兎の制作開始、存人は小さな雪だるまを。雪合戦をする程に体力というかアグレッシブさはない。黙々。というか、雪だるまと言うか、目だるま。お目目。(●)的な。たくさん。 「可愛い兎もいいんだけどさーこの時期南天とか無いしさー」 そして目だるまの横に並べられるのは、オリヱが造ったリアルサイズで無駄に精巧な雪うさぎ。 「あ、存人の目だるまも超かわいい」 「オリヱは何を、……え、何で雪でこれ出来るんですか俺には分からない」 「え? そうね、秘訣は愛かなー。何への愛かは俺もわかんないな!」 「愛……ですか」 よしちょっと頑張ってみよう。悴む手で、楽しい工作。 ●正に冷夏 「夏とは思えない寒さですね」 ホットランチボックスからおにぎりと鮭、卵などのオーソドックなお弁当と温かい麦茶を広げ、一服している凛子はほぅと息を吐いた。 一方、かまくらの中。 「馬鹿兄ィによると『あえて無駄なことをする』っていうのが贅沢なんだってー」 折角だからブルジョワに。というわけで岬はTVゲームを取り出して。 「てれってー♪エキサイトバイクーしかもディスクシステムで対戦できるやつだよー 25年くらい前のだから稼働すんのはかなりレアー馬鹿兄ィんとこから持ってきてやったぜーブルジョアー」 いえーい。そんなこんなでテリーを指差し。 「ひゃっはー、テリー対戦しようぜーあんちゃんはいいやー」 「お! アンタレスの岬じゃねーか。オーケィ受けて立つ!」 「……私はスルーか!?」 「あんちゃんは添えるだけー」 あんちゃんはカマクラの外でショボンとお山座り。 かまくらの中、こたつの中、ほこほこしながらレッツエキサイト。 「……ちょ え ちょっと待っ ジャンプ台しかないぜ!?」 「え、コースがジャンプ台で埋まってるってー? コースエディット出来るからねー誰だってそーする、ボクだってそーするー」 「はわわわわ あ あんちゃーーーん!!(断末魔」 「やはー、ジャンプの着地で転倒する奴は……『不運』(ハードラック)と『踊』(ダンス)っちまったんだよー」 「楽しそうだなァ」 外のあんちゃんぼっちなう。 その目の前にふらりと現れたのは千景、ステルスを使用しつつ夏服で。 「あぁ……こんな所で人に会えるなんて……僕、もう寒くて駄目かと……どうか……どうか、マスクだけでも頂けないでしょうか……?」 「だが断る」 「ダメかー……でも……」 幻想纏いより防寒服を取り出し着つつ、開けた間の後。突如熱血化。 「俺は! 必ず君達のマスクを剥がして笑顔にする――天国にいる『あかぎれビリー』と約束したんだ!」 …… 「ほら、良い所だよ。感動して外す場面だろ?」 「なにこの脱がせ魔……イヤラシイ事する気だな? エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」 「……頑固な人類は絶滅したと聞いていたが、この日本に残っていたとはな……」 踵を返して歩き出す。フィクサードの素顔が見たかった。動機?山が有ったら登る、マスクが有ったら剥がす、みたいな。 「これだけいっぱい着てるんっすから、一枚くらい……!」 そう言って更に現れたのは千幸、滅多にない機会だから存分に涼もう!そう思っていた時代が彼女にもありました。勢いだけでシャツと短パンで来てしまいました。 「寒いっす……今自分、後悔の塊っす……」 「でも断る」 「……あ。申し遅れました、自分軍鶏月千幸っていうっす!」 「しもやけジョニーだ」 「これ、皆が思ってるでしょうが……夏には羨ましいアーティファクトっす。一日レンタルとかやってくれないっすかね、自分めちゃくちゃ頑張ってレンタル代稼ぐんっすけど!」 「しかし断る」 「あああ、それはそうともう寒くて力が入らない……ま、まー、真夏に凍えるなんてレアな体験っすよね! これも経験へっぶしッ!」 「服ならそこで売ってるぞ?」 「え?」 千幸が振り返った、そこに―― 「何でも屋『JaneDoeOfAllTrades』は誰でもWelcome! 冬物一式、取り揃えてるのだけど如何かしら?」 防寒用品がずらりと並んだ露店が一つ。手招きするエナーシア。 なにせ一面の銀世界なのだからちゃんとした防寒は必要。しかし、この猛暑の中その防寒用品を現場まで持って行くなんて明らかに暑い―― そこに商機があると思わないかしら? そう直感したエナーシア。何でも屋の仕事として臨時で手伝う事がある為、三高平内の商店にはそれなりに顔が利くのである。なので仕入れのミス等で倉庫の肥やしになってる防寒用品を格安で買い付け、現場までトラックで運んで露店を設営←今ここ (商品の値段というのは需要と配給で決まるのだから少しくらい吹っ掛けても問題ないわよね) さてさてジョニテリ特需、張り切って売り切ると致しましょうか。ニッコリ営業スマイル。したたかである。 「夏に雪というのは面白みがありますねー」 こちらは出店2、慧架の鈴宮紅茶館。雪で遊んで冷えた人の為に、紅茶やシチュー、甘酒や汁物や鍋などもご提供。出来る限り皆のニーズに答えれるよう、料理や食材は出来るだけ備えている。 何か『紅茶』館っぽくないが、気にするな! そんな一方。 久嶺は外れで一人、考え込んでいた。 考え込んでいた。 考え込んでいた。 ずっと考え込んでいた。 なのでどんどん雪が積もって、雪だるまからツインテだけ飛び出してる状態に。 「……えぇと、そのツインテはひょっとして久嶺様? どうなさったので?」 メルクリィの声にようやっと雪を振り落とし、溜息一つ。 「色々あったし、頭を冷やして考えを纏めようかなって思ったんだけど。逆に凍っちゃったみたいだわ……」 溜息。白い息。視線を俯けたまま、訥々と。 「お姉様がね、どうしても……友達を助けるって。危険な事から遠ざけたいアタシは諭して、諦めるようにすべきなのだけど、口が勝手に、一緒に行くって言っちゃったのよね……」 いつのまにかアイツまで、欠かせないモノになってた? 辿り着く思想に「そんなことあるはずが」と頭を振る。アタシはお姉様のためだけに生きるべきなんだから! 「……まぁ、負けっぱなしも趣味じゃないし。どうせなら叩き潰しに行くとするわ!」 前を向いた。そう、アタシの名前は宮代・久嶺。いつまでも悩んでいるのはガラじゃない。 「はぁ、リベリスタ共は元気だなー」 岬とエキサイトバイクでエキサイトした後、ジョニーの横に座ったテリーは一つ溜息。 「愉快なフィクサードで結構なこった」 その背後、二人を見下ろしていたのは火車の睥睨。今回こそ実害が無いようだから何もしないが、一応警告と圧力を。 「まぁ……こんな感じの遊び程度のヤンチャなら 喜んで見過ごしてやるけどよ。 崩界に繋がるような事しやがったり、ややこしい事しだしたら解るよなぁ? 程度考えて遊べよ? フィクサード」 自分の『今まで』が壊される。それだけはもう、二度と許さない。 「改善の見込み無し ……っつーなら全力で燃やし尽くしてやるからな?」 「フン、我々は崩界だとかに興味は無い。それだけは言っておこう」 そうかよ、吐く息と共に応えてその場に座した。雪が降る。白い世界。それを見つつ、 「……ガスマスクの方だって色々あんだろ?」 「なっ ……い、色々って何だ」 「色々は色々だろが。ま、折角拾った命なんだ ちょっとは考えてみるんだな」 「……」 テリーは何も答えない。抱えた膝に顔を埋めてうごごごご。 「んで? お前等って放っておいても寒いんだろ? この辺真冬状態にして なんか良い事あったのか……?」 「なんか……夏に冬っぽい事って斬新じゃないか……」 「ああそう……冬には夏っぽい事でもしろよ」 「その時はまた遊びに来るが良い」 「考えとくわ」 ●ですぞー 寒くないんですか、と驚いたメルクリィの視線の先。常の着流し姿の源一郎。 「我は何時でも此の着流し故、思い入れがある品にて心休まる一時を。 さてメルクリィ、共に雪遊びでもせぬか」 「いいですねぇ、でもせめてマフラーぐらいはして下さいね」 と言う訳で、エナーシアの所からマフラーと防寒帽を購入して。一緒に雪だるま製作。源一郎は雪だるまでメルクリィを造り始める。 「顔は我が自信を持って描こう、今迄の交流で外形は頭にしかと焼き付いている」 さあ其の成果を今此処に示さん。 「之が我が想うメルクリィ也!」 \デスゾ/ П<|∽w∽|>П 腕を組み満足げに、源一郎は雪758を眺める。 「よくできているであろう自信作だ。台詞の板をこの日の為に用意しておいた。如何かメルクリィ、満足行く出来であると自負している」 ∩<|*´w`|>∩ <結構イケてるじゃないですか 「そうか、何より哉。では横に並ぶと良い、写真に撮る」 П<|∽w∽|>П ∩<|´w`|>∩ <おk 「では行くぞ。はい、……くしゅん」 ぱしゃっ。 ●ゲレンデの中心で■を叫ぶ 毛皮のコートと帽子。足元の雪を楽しみながら、エレオノーラは気儘に散策。 やっぱり冬は色々おしゃれできるし、美味しいものもたくさんあるから寒い方が好きだ。 「あと寒い方がお酒が美味しい気がするわ、夏でも楽しみ方はあるけれど」 そして顔を上げた先。 「テリーめ、無事なら連絡くらい寄越せなのじゃ! いや敵同士じゃけど! ……敵、なんじゃよな……なのに……好きって……はっ!? な、何を考えておるのじゃ!」 にゃぎゃっているレイライン。豪く可愛いコートで決めて、頭を抱えてうごごご。 「わらわは反省させに来ただけ、この動き難そうな服もあくまで防寒の為、一番可愛いくてお気に入りなのも偶然なのじゃ! しかしいざとなると何て言えば……ん、エレーナ?」 気が付いた時にはもう遅い。わっしと首根っこを掴まれて。 「ちょ、何を……」 「テリーに土下座させるんでしょ? え? 違うの?」 「いやちょっと待ってまだ心の準備がにゃぎゃー! って既に土下座されてるー!?」 あ……ありのまま今起こった事を以下略 「お、おう……レイラインじゃねーか」 土下座の目の前、そこはかとなく挙動不審なテリー。何故か正座。すぐ傍の距離。高鳴る心臓を、逸る気持ちをぐっと堪えて。 「えっと……ひ、久しぶりじゃな! ……この間の事なんじゃが……敵であるお主の気持ちに答える事は出来ぬ!」 「……」 テリーは黙した。だが、レイラインから視線を逸らす事は無かった。何かを言いかけようとする――その前に。 「じゃから、」 勇気を出して。息を吸い込んで。 「アークに来ないかえ? 仲間になら、わらわも素直な気持ちになれると思うのじゃ」 顔を背けながら、手を差し出した。 沈黙と言う、間。 一秒が何十秒にも感じる。 「馬鹿野郎」 震える、彼の拳。 「ッ―― 馬鹿野郎、今更退けるワケねーだろ!!」 掴んだその手。引き寄せ抱きしめ。 「あぁ、行ってやるよ何処にでも! アークだろーが裏野部だろーがバロックナイツだろーが、お前がいるなら行ってやる!!」 それは雪原中に響き渡った大声だった。心の底からの返事だった。 「何か弟さんに言わないの?」 見守るエレオノーラがジョニーに訊ねる。いいのだ、と彼は薄く笑んだ。 「テリーが自分の意思で決めた事だ、私に止める権利はあるまい。……寂しいが、兄離れしてくれてよかった」 兄はこれからもフィクサード、弟は今日からリベリスタ。祝福もするが、戦場で見えた時に本気で戦う覚悟もまた、心の中に。 ●ユキドケテ 体力が尽きるまで遊んで遊んで。そろそろ日も傾き始めた。 「久々に依頼以外で運動した……」 綺沙羅は座りこんで大きく息を吐く。1日だけとはいえ、暑さからも逃げだせたし満足。非リア兄弟に感謝。 「今日ハとっても楽しかったヨ! うーん、ワルイコトは良くないケド、こういうのはイツデモ大歓迎ネ!」 伊丹もフィクサード兄弟に礼を述べた――その目の前で、 「Exぼっちな鬱憤晴らし拳!」 「ひでぶ!」 「ばわ!」 竜一の腹パンがジョニテリに突き刺さる! 「手ごわい敵だった……もうちょっと時間がたったら寂しくて泣いていた」 夕陽の斜光、シリアスに決めながら。 そして2人が倒れた今、彼らの『魔法』は立ち所に解けていく。 つまり、夏になる。 そして誰もがこう叫んだ。 「…… 暑ッ!!!」 嗚呼、ひぐらしが鳴いて居る。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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