● 理想、と言うのは誰しも持つものだ。 自分への理想。環境への理想。友人への理想。そして、恋人への理想。 しかし、それが完全に叶えられる事など、極稀。 多くの人間はそれを素直に受け入れ、手に入れた幸福を甘受する。 しかし。 世の中には、それでは満足出来ない人種も、少なからず存在するのだ。 女は、美しい少年が好きだった。 瞳は丸く、髪は艶やかで、色は白く少し線は細い。 物静かで勉強熱心。しかし、親しい相手には笑顔を見せながら、無邪気に会話を楽しむ。 教養豊か、そして、何より、自分だけを慕ってくれる。 そんな、少年が欲しかった。 女は探した。けれど、女の理想に当てはまる少年など、何処にも居ない。 女は考えた。考えて考えて、そうして、ふと、閃いてしまったのだ。 ――居ないなら、初めからつくればいいじゃない。 ● 「どーも。今日の『運命』は割と強烈かも。宜しくねー」 手をひらつかせて。常のように手製の資料を差し出した『導唄』月隠・響希(nBNE000225)は話を始めた。 「今回の相手は、三尋木所属フィクサード、佐伯・結華率いる総勢6名。現場は、佐伯の隠れ家。 あんたらにお願いしたいのは、こいつらから、8人の男の子を無事な状態で奪還する事よ。……あ、因みに今回は、よく似た依頼を世恋も予知してるわ」 可愛い後輩の名前を告げる時だけ少し、表情を緩めて。 長い爪がモニターを叩く。表示された邸宅と、8人の子供の顔写真を示して、フォーチュナは言葉を続けた。 「全員、3~5歳程度の男の子。一般家庭から攫われた子ばかり。革醒してる子も居る。勿論、両親は探してるわ。 でもまぁ、その辺は要領のいい三尋木だよね。一度もばれる事無く、子供達全員を手中に収めてる。あ、因みに子供達には、病気だとか嘘の説明してるみたい。 ……で、佐伯の目的なんだけどね。自分好みの少年を、作る事なのよ。見た目も、中身も、もう全て。 1から自分で教えて、覚えさせて、幼い内からもう完璧に、自分だけの理想の男の子を作ろうとしてる。……本の読み過ぎって笑いたくなる話よね」 悪趣味だわ。そう言外に込めたフォーチュナはひとつ、溜息をついて話を進める。 「因みに、好みに育たなかった子は、全部売り払うつもりみたいね。……子供好きなパトロンなんて、腐る程居るんでしょうし。 まぁ、内容についてはそんな感じ。家の場所は分かってるから、あんたらには即効、地下室へと入ってもらう。 ……ルートとか、障害については心配ないわ。あたしがばっちり確保してある。指示に従ってくれればいい。で、地下室にはフィクサードが6人がいるから……手っ取り早く倒して、子供達の居場所を聞き出して。 あ、広さとか、光源とかは心配しないで良いわ。地下だし、一般人も来ない。 後は……そうね、敵情報。まず、佐伯はメタルフレーム×ダークナイト。中々の実力者。命中と速度に優れている。残りについては、こっちの資料参照で。……まぁ、少数精鋭、って奴かなぁ」 以上。そう話を切ったフォーチュナが、ゆっくり立ち上がる。 「……理想に懸想しすぎて、戻って来れなくなっちゃうんじゃ世話無いわよね。……理解出来なくは、無いけれど」 気をつけて行ってきてね。そんな言葉と共に手を振って、彼女はそのまま部屋を後にした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:麻子 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月02日(木)23:21 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「ん~、三箇所くらい見えないねぇ」 千里を見通す瞳が、すぅっと細まる。『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)は肩越しに仲間を見遣って、わざとらしく溜息を漏らした。 思い通りの少年を作るなんて。あーやだやだ、ままならないからこそ、人は美しいのに。 肩を竦める。見通せぬなら倒して聞き出すのみ。その横で同じく、熱源を探す『花縡の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)も、軽く首を振って見せた。 「想い寄せるは逆さ咲く若紫……ね」 その表情は険しい。子供を浚い好みに育て上げる。大事に思う息子が居る身としては、異を唱えたい手段だ。 ちらり、目配せ。ドアを力一杯押し開けて。地下室に飛び込んだ『Lost Ray』椎名 影時(BNE003088)は冷ややかに目を細めて、ナイフを振って見せる。 「こんにちは、アークです。あとは言わなくても判るよね」 その手から伸びる呪縛の糸。一体どれだけの少年が犠牲になったのか。過ぎった感情にも、少女は表情ひとつ変えない。だって、自分には何の関係もないことだ。 女の周囲に、闇が踊る。影時の横を通り抜けたのは、灰色の影。大斧携えたデュランダルと対峙した『fib or grief』坂本 ミカサ(BNE000314)は周囲一体に神秘の妨害を張り巡らせる。 「……口があればソレは必要無いだろ」 性癖の問題なら別に口を出す事ではないけれど。電灯の灯りに鈍く煌く紫が、女へと向けられる。 そう、だから本来ならば自分の範囲外の話。興味なんて無い。但し。 「奪うなら奪われる痛みも知らなければフェアじゃない」 教えてあげるよ。吐き出した言葉に色は無い。けれど、常より少しだけ温度の下がった視線を感じているのか居ないのか。女は楽しげに笑い声を上げた。 このショタコンめ。口内で毒づいて、『名無し』氏名 姓(BNE002967)は入口前へと陣取る。背に庇うは唯一の癒し手。冷静に周囲を見渡して、その目は脅威を探る。 「悪い事をしたら、お仕置きされるもの、そうだろう?」 常の夢見がちな少女の表情は影を潜め、あるのは怜悧な美しさ。『微睡みの眠り姫』氷雨・那雪(BNE000463)が位置取るのは戦線の中程。 捕らえ切れる全て。狙いをつけて即座に戦場にばら撒かれた気糸が、徹底的に相手の弱点を嬲る。 自分の能力を、仲間は信頼してくれている。それが解っているからこそ、その技はより冴える。信頼とは、応えるものだ。 「御機嫌ようリベリスタ。折角のご来訪嬉しいけれど、出来ればお帰り願えるかしら」 此処は言うなれば二条院。愛しい愛しい紫を、育て上げる為の柔らかな檻。其処に部外者など全く以って必要ない。 そんな彼女の台詞に応える様に。練り上げられた魔力が、荒れ狂う雷撃となって戦場を焼き払った。。 巻き込まれたのは全員。しかし、姓は確りとその身で遥紀を庇う。その尽力に応える様に、遥紀は即座に清廉な吐息を呼び寄せる。 夫は、決して理想の男性ではなかった。記憶の中で笑う影を追って、『永御前』一条・永(BNE000821)は思う。 幼い頃から粗野で、大人になれば大酒を飲み。日本男児には程遠かった。けれど筋は通す人だった。そして何より。 自分を、心から愛してくれていたのだ。 子供ももう還暦近く。立派に家を守ってくれている。いろいろな人に助けられ、生き抜いた人生。育てた宝物。 自分を、支えてくれたもの。永は知っている。それが尊いもので有る事を。振るった薙刀が、クロスイージスを跳ね飛ばす。 「一度、本気で恋をしてごらんなさい。理想を越えたものが、そこにございます」 それは、諦めでも妥協でも無い。時に理想を超えるもの。己を支え続けるもの。与え合い享受しあうもの。そう。 愛、だ。 歳を重ねているからこそ。深く、重みを持つ言葉に、しかし女は緩やかに首を振る。 「恋をしたわ。けれど、傷つくばかり。……私の理想通りなら、そんな事は有り得ないのに」 だから作る。全て最初から。見た目も中身も自分好みに。美しく優しく、清らかに。 そう、陶酔し切った瞳を細めた彼女を興味なさげに見ながら生命力を侵食する漆黒を撒き散らした葬識が肩を竦めれば、『無何有』ジョン・ドー(BNE002836)が厳然たる閃光を放つ。 源氏物語の様に子供を養育する。まさにそれを実践する彼女だが、それは看過出来ない事だ。だからこそ助けに来た。 そんな彼の思いなど知らぬ様に、戦闘は激化していく。 ● きっちりと分けられた役割。特に、前衛となるであろうデュランダル、クロスイージスを徹底的に押さえに回ったリベリスタの作戦は、見事に敵の動きを抑え込んでいた。 そして。此方が敵を押さえ込めていると言う事は、敵の後衛を守る者は居ないと言う事になる。 「……理解出来ないな」 趣味は人それぞれだけれど。全身から溢れた気糸が、無防備な癒し手と魔術師を執拗に叩く。弱点を突くそれが傷の癒えぬ呪いを齎せば、狙い通りの展開に那雪の唇に笑みが浮かんだ。 立て続く様に。気配を感じた仲間が身を引けば、吹き荒れたのは暴風。振るった薙刀がまさしく、前衛全てを薙ぎ払う。 桜の紋を握り締める。一族の誇りとも言うべきそれを、即座に構え直す。その目前で、猛攻に晒され続けたクロスイージスが、その身を地に伏せた。 けれど。敵も押されてばかりではない。癒し手が放つ閃光が、魔術師の齎す鮮血の黒鎖が、その身を焼き、呪いを与える。 癒し手を、そして、ダメージディーラー足りうる那雪を庇い続ける姓と影時の疲労の色は濃い。けれど、彼らはそれでも、その膝を折らない。 「理想の少年、見つかりそうですか? この雌豚」 口内に溜まった血液を吐き出す。那雪を確りと背後に庇う少女の視線に、女はうっすら浮かべた笑みを以って応じた。 答えないのか。興味なさげに、けれど残念と肩を竦めた影時は握ったナイフを真っ直ぐに女へ向けた。 「無いから作るって凄く素敵な考えだけど」 それ、アーク的にはすごくアウトみたい。淡々と告げる。そう、誰がなんと思おうと。彼女の望みが何処にあろうと。看過出来ないならそれらは自分にとっては何の意味も持たない。 挑発する様に。その瞳が細まる。唇に微かな嘲笑が浮かんだ。 「だから、さっさと倒れちゃってください」 ジョンの閃光が、辺りを焼く。それをちらりと見遣って、葬識は前へと進み出た。 首斬り鋏が軋みを上げる。未だ足りない。この鋏は、この身は、求めるだけの血を、殺戮を、得ていない。 紅の瞳が、いつもの様に薄ら笑う。 「自分に逆らわないだなんて、それはもう人じゃないよね。ただの狗だ。そんなの量産して楽しい?」 放り投げる問い掛け。けれど答えなんて求めていなかった。まあ、どうでもいいか。呟く様に漏れた言葉。 瞳孔の開いた、瞳が嗤う。怒りは無かった。嫌悪も。同情も。あるのは純然たる殺意のみ。 「殺させてよ、殺し合おうよ」 衝動は止められない。開放された殺意は肌を焼く様で。女の表情がほんの少しだけ引き攣ったのが見えた。嗚呼、悪くない顔だ。 滲み出した暗黒。己さえ削る殺意の衝動。一気に伸びて、敵の命を侵食する。 マグメイガスの膝が崩れる。もっともっと。この程度じゃ満足出来ない。完全に目の据わった彼を一瞥して。 ミカサは紫色の爪を振るう。伸びるのは、弱点を打つ気の糸。漆黒の髪が散った。外したのではなく、そこを狙われたのだ、と気づいた女が、驚いた様にミカサを見遣る。 「なぁに、お兄さん。女の命をこんな風にするの?」 そんなおどけた台詞に浮かぶのは、微かな呆れ。佐伯は女だ。何処まで行っても、母にはなれない。子を奪われた親の悲しみなど、到底理解も出来ないのだ。 だから、ミカサは狙う。その髪を。次は顔を撃つつもりだった。革醒者だ、傷なんて残らないだろう。それでも、痛みくらいは分かるだろうから。 レンズ越し。光の差さない黒が、女を見据える。 「ねえ。奪った挙句、自分好みに改造するのは楽しかった?」 表情が無い。けれど、無さ過ぎるが故に鋭利に尖った声が、投げかけられる。その後ろでは、那雪の放った気糸が遂に、ホーリーメイガスの膝を折っていた。 明らかに劣勢。女の顔に、微かな焦りが浮かぶ。その表情を見て取っても、ミカサの声色は変わらなかった。 「自己満足の為に全てを踏み躙る楽しさを俺にも教えてよ、――その身を以てさ」 寒気を、覚えた。劣勢に。向けられる言葉に。女が数歩、足を引く。逃げるのか、一歩踏み出しかけた姓はしかし、明らかに今までと違う『何か』の気配にその足を止めた。 それを感じていたのは、姓だけではない。影時が、遥紀が咄嗟に身構える。 甘ったるいにおいがした、と思った時には身体が動いていた。影時が那雪を、姓が遥紀をその身で庇う。どろり、濁る思考は誰のものだろうか。 リベリスタは幸運にも、その身に行動不能の呪いを受ける事が無かった。だからこそ、遥紀は癒し続ける事のみに、尽力していたのだ。 けれど。呪いは決してそれだけではない。無効の力を持つ者も、影響を受けないだけで、その身に受けた呪いは蓄積する。 癒しがあったからこそ目立たなかったそれが、甘ったるくおぞましい呪いによって力を得る。その身を、一気に蝕む。 目が回った。庇われた那雪が、かわした永が即座に攻勢に転じるも、魅了の呪いを受けた仲間が牙を向く。 既に一度運命を差し出し、少なからず傷ついていたジョンの全身から、気糸が迸る。歪んだ愛。その力に囚われた彼の全力が、傷の重い影時を、姓を、そして、無防備な遥紀を撃ち抜く。 膝が、折れた。けれど運命を燃やした。姓が何とか立ち上がる横で、影時もまた、己の流した紅に沈もうとする。 駄目だ、と思った。折れない。此処で倒れる訳にはいかない。粘り強く立ち上がって、身体が悲鳴を上げても構わない。 運命を手繰り寄せた。倒れようとした事を、無かった事に。その足が確りと地を踏み締める。 何でこんなに躍起になるのか、なんて。自分にとっては当然の事だった。だって。 「これでも家族が好きだから、帰してあげたいんだ」 誰一人、残らず。額から流れた血で、髪が張り付く。それでもナイフを構え直した。 子供は何処。売り飛ばした子供も、全員だ。そう問う瞳に、女はほんの少しだけ驚いた様に目を見開いて、笑った。 「倒せたら、教えてあげる」 そんな女の返答を耳にしながら。姓もまた、残ったデュランダルへと、問う。 「お金の為? 命あっての物種でしょ。投降をお薦めするよ」 投げられた言葉に、表情は変わらない。ただ真っ直ぐに構えられた大斧がが牙を剥く前に、遥紀は遥か高位の癒しの一端を戦場へと拡散させた。 ● 「もう無理だ、投降した方が良い」 後方から。言葉を投げたのは遥紀。残りは二人。癒しを失った時点で、彼らの負けは見えている。 けれど、そんな言葉にも女は笑うだけだった。首を振った。ミカサの爪が、影時のナイフが、容赦なくクロスイージスの体力を削り取る。 「ねえ、ねえ貴方達、きっと城戸の所にも行っているんでしょう? 彼はどうなったのかしら。死んで、しまったのかしら」 笑い声と共に。行動を起こさない女へも、姓の、永の攻撃が飛ぶ。けれど、それでも彼女は、動かなかった。 ジョンの閃光が、何とか居合い切りで遥紀に攻撃を届かせたデュランダルを地に沈める。満身創痍。深い傷に呻いた女はしかし何とか、葬識の放った瘴気に蝕まれた身体を、支え直した。 恐らくは、これで最後。震える手が、抱えていた魔本を開いた。べったりと、ページ全体を濡らす血。それは呪いだ。おぞましい、己の痛みを全て注いだ死のまじない。 掲げたそれが、禍々しく煌いた。撃ち抜く相手は、無防備な癒し手。 「嗚呼、……一夜だけなら、あいしてあげてもよかったんだけれど」 彼はきっとそれをのぞまなかったでしょうね。漏れた呟きの行方は、何処だっただろうか。放たれた呪詛が、遥紀の運命を容易く、削り取った。 リベリスタの空気が、一瞬凍る。満身創痍の相手とは言え、癒し手を失って戦う事になるのかと、思った直後。 ぐらり、と。魔本を抱えた身体が、地面へと沈む。続けて、かしゃん、と。血の中に沈んだのは最後まで口を割らなかった、少年達の居場所に続く銀の鍵。 「……、この上の、天窓の付いた部屋よ」 掠れた声が、ポツリと漏れた。リベリスタが一斉に其方に向かい出す中で。 己の命の限界を感じる女はそうっと、瞼を伏せる。短き時を咲く者達。彼らは永遠に少年ではいられない。 理想は叶わない。愛は続かない。永遠は無い。けれど。欲しかったのだ。傷つかない、肌触りのいい理想の、ひとが。 溜息が漏れた。微かに、睫が震えて。女の意識はそのまま完全に、闇の中へ溶けていった。 鍵を開けた先は、柔らかな日差しの差し込む場所だった。 嗚呼やっぱり。ミカサは思わず、溜息を漏らす。己の目的しか見えない彼女でも、子供を思う気持ちはあったのだろうか。 今となっては分からないそれ。首を振った。きっと、それ以上は考えるべきでは、無い事だ。 程好く保った室温。大量の絵本。本。玩具。冷蔵庫。テレビ。子供が欲しがるものを全て詰め込んだ部屋の中で。 漂う血の匂いを。響く物音を。怯えながら聞いていたのだろう少年達は、見知らぬ顔に更に怯え切った顔で後ずさった。 「落ち着け。君達を傷つけたりはしないよ」 そっと近寄って。那雪は優しく、怯える少年の髪を撫でてやる。 その横では姓が、資料で確りと覚えた少年達の名を呼びながら、笑顔で言葉を並べていく。 「ママが帰っておいでって。ママとあのお姉さんの言う事どっち聞くの?」 子供たちが、顔を見合わせる。 ママにうつっちゃいけない病気なんだ、と。悲しそうに呟く少年の頭を、那雪を同じように撫でてやって。それは嘘だ、と姓は笑う。 「ね、外で遊びたくない? ……一緒に遊ぼうか?」 差し出すボール。躊躇いがちに、顔を見合わせあう少年達も、外に出ると言う欲求には勝てなかったのだろう。 その小さな手が、姓の手を、ボールを、確りと握った。 酷く静かになった家。地下に眠る、歪んでしまったあいのなれのはて。 懸想し続けた少年達は、彼女の結末を知らぬまま、それぞれの家へと帰っていった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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