● 拠点設営と周囲警戒により、拠点は整いつつある。 『完全世界』でも大きな問題は発生してはおらず、フュリエの保護や治安の維持等にも効果が上がっていた。 何事も順調だと思われていた。だが、それは総攻撃の報によって儚くも崩れ去ることになる。 憤怒と渇きの荒野の彼方、地平線より巨獣を引き連れたバイデンの集団が近付いてきたのをリベリスタ達の警戒班が発見したのだ。その規模はこれまでの小競り合い等とは全く違う。統制の取れた動きを見せる彼等はアークの拠点より暫くの位置で足を止め、此方の様子を伺っている。 拠点をひともみで潰そうという魂胆か。明らかに総攻撃を伺わせる雰囲気にリベリスタ達の気持ちも様々だ。 意思疎通は難しく、説得に応じようにも好戦的な彼らが停戦を呑むことはまず無い。 加えて陥落すればボトム・チャンネルにバイデンや巨獣がなだれ込むことになり得る。それだけは防がなくては。 『ラ・ル・カーナ橋頭堡』はそれを防ぐための砦。陥落はもちろんのこと、エリューションの一匹すら入れるわけも行かない。 だが、この時はこうも簡単に破られるとは思いもしなかった――。 ● 夜の帳を打ち砕くように、地の底から響くかのような破砕音が拠点を揺らす。 「なんだ!?」 真っ先に気づいたのは、遅れてこちらの世界に来た『ブレイズ・オブ・ジャスティス』焔藤 鉄平(nBNE000010)だ。 この世界にきて来て日が浅く、馴れないながらも周辺警戒を行なう最中のバイデン襲来という逆境。橋頭堡の中で鉄平の心は静かに、そして激しく燃え上がっていた。 「この下は地下牢か! 一緒に付いてきてくれ」 その呼びかけと共に、数人のリベリスタが地下へと駆けていく。 ここ数日、地震に似た妙な振動がこの拠点から響いていた。この不思議な現象に『マギカ・マキナ』トビオ・アルティメット(ID:BNE002841)が地面に伏せて警戒していたが、まさかこれが現実のものになるとは。 だが、源 カイ(ID:BNE000446)のように地下からの襲撃を予期していた者も居た。故に、問題を解決すれば被害は最小限に食い止めることが出来そうだ。 地下牢の壁に空いた大きな穴は事態の深刻さを物語るも、元凶は既に移動し終えた様子。 だが、その元凶の姿を見た者達は、口をそろえてこういう。 『もぐらだ』『つぶらな瞳をしたもぐらだった』と。 彼らはそのまま地下牢に穴を開けた元凶を追って穴に飛び込んでいく。 「このままだと橋頭堡が沈んでしまう、俺達も急ごう」 鉄平はそのまま穴に飛び込もうとしたが、待ち構えていた4体のバイデンがそれを許さなかった。 傷だらけの赤い身体に剛直なツノ、戦いの狂気に飲まれていやらしく歪んだ顔。 仮にこのバイデン達と意思疎通が出来る者がいたら、きっと彼らは『楽しませろ』と言っているのだろう。 彼らは数でこそ劣るものの、力では明らかに引けを取らない――いや、それすらも怪しい。 少数精鋭だからこそ、このバイデン共は油断ならない。 「ココから先へは一歩も通さないぜ、行くぞ皆!」 鉄平が狂気を振り払うかのように激を飛ばす。もぐらの追跡は地下牢にいた別のリベリスタがやってくれる。俺達は俺達で、やらなければならないことがある。 此処から先へは通さない。一歩たりとも、上には登らせない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:カッツェ | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月28日(土)23:27 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●ブリズンデスマッチ、場外攻撃OK 大穴の開いた地下牢。 鉄格子を背に、4人のリベリスタと4人のバイデンが相対する。 懐中電灯によって照らし出される薄暗い部屋の中は、非常にピリピリとしている。 先に大穴へと潜ったリベリスタ達は今頃、大穴の中でもぐらと戯れているだろう。 しかしこちらは屈強なバイデンと血を交えた戯れをしなければならない。 『グオォォォォ……』『グルルルルル……』 周囲から響くうなりは、捕虜となったバイデンが発する悔恨の声か。 牢に鍵をかけられ、リベリスタなりの丁重な扱いを受けてきたバイデン達。彼らは今、うなりを上げながら鉄格子越しにこれから始まる戦いを見守っている。 「アイツら、まるで戦いしかわからないみたいだ」 剣呑とした雰囲気に『ブレイズ・オブ・ジャスティス』焔藤 鉄平 (nBNE000010)が周囲を見渡す。 これは余興か? 否、れっきとした戦いだ。 勝てば平穏、負ければ今まで捕らえてきたバイデン達。最悪、橋頭堡そのものを失う。 言葉は通じないことも、ボトム・チャンネルではまず考えにくい光景だ。 「ヒーローになるチャンスだぞ、しっかり頑張ってこいよ」 鉄平の背中を押す『ピンポイント』廬原 碧衣(BNE002820)。青のパンクロリ系ファッションが、灰色の地下ではより映える。 「……そうだな、引っ込んでいるなんて柄でもないな!」 「そうそう。アークが誇る正義の、えーっと、えーっと……鉄壁さんだったっけ?」 「ま、合ってはいるかなぁ?」 『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)の冗談にも鉄平は笑みを浮かべて返す。 すぐに立ち直るのもまた彼の特徴であれば、皆を守る拳となり盾でもある。それが彼の目指すヒーロー像の一つだ。 既に他のリベリスタは外に出ている。鉄格子の前であれこれ考え事をしているのはもう一人いる。 「余り待たせるのは何方にも悪いわよ?」 『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)は諭しながらもこの光景にきな臭いものを感じる。 恐怖ではない。興味が彼女の胸を躍らせ、そわそわとした虚ろな気が傍から見てもにじみでている。 仲間をあえて閉じ込め、侵入経路を遮断する。 危険だが賭けるに値する、信頼がなければ成し得ない命がけの作戦を彼らは選んだ。 「主らの力、あてにさせて貰う。頼んだぞ」 ガシャン、と重たい音が地下に響く。たてがみを生やした好老人 『老いて尚盛ん』更科・権太(BNE003201)が牢屋に施錠した瞬間だ。 「4人同士でお見合い対応ですね、ぐるぐさん初めてだから優しくして欲しいです」 「お見合いぃ!? ハッ、やるこたぁ決まってんだろ!!」 『Trompe-l'œil』歪 ぐるぐ(BNE000001)が茶化すように言葉をかけるごとに、苛立ちが広がる。『消せない炎』宮部乃宮 火車(BNE001845)の昂ぶりが呼応し、激しく燃え上がる。 「そんな訳でごはんにする? お風呂にする? それとも――」 『つ・ぶ・し・合・い・だ!!』 呼応がハモる。膨れ上がったバイデンの殺気が、この瞬間炸裂する。 咆哮と武器を抜く音、競り合う音がブロック造りの地下牢に激しく響きあう。 情けも容赦も今はいらない、牢の中で果てるのはどちらだろうか? ●堅守 この先を行けばさらなる苦境が待っている。 なら、どうするか。 決まっている、この牢屋というリングから通さなければいい。 「ふぁいとっ、きどーりょくかくほするのっ!」 『おかしけいさぽーとじょし!』テテロ ミーノ(BNE000011)がリベリスタに翼を授け、それぞれが魔陣を展開し、超演算を繰り出し、各々に身を固め始める。 だがバイデンにそんな物はない。スコップに酷似した武器を薙ぎ、初撃を叩きこむ! 「今は殴る間ではないな」 対する『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)の防御は早かった。 戦闘狂の彼とはいえ、バイデンとの力量差を考えて防御を固めたのが功を奏したようだ。 「なるほど、確かに強い。その闘いの狂気、いかほどの物か私にも見せてくれ」 その一方で聖なる十字架を掲げていた鉄平の身体は、スコップの直撃を受けて吹き飛ばされていた。 「ぐあっ!?」 戦隊物を思わせる赤主体のメタルボディは鉄格子にぶつかり、衝撃音と共に止まる。 すぐに立ち上がるも、ぶつかった跡がしっかりと残っている。 「すごいおとだったの~」 鉄格子とぶつかり合う音に、ミーノは思わず頭と耳を抑えて屈む。 「ほら屈まない」 『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)は目を逸らさず、鉄平を遮蔽にチェインライトニングをすかさず打ち込み返す。 強烈な一打とはならなかったが、バイデンの眼を後衛に向けることはできた。 「あいつ、私らを飛ばして牢を飛ばすつもりだわ」 エナーシアの超直観が即座に狙いを見抜く。確かにこうすればリベリスタを攻撃しながら、邪魔な鉄格子を破壊することができる。加えて彼らを追い込むことも可能だ。 「ガァッ!」 スコップから繰り出される一突きが風を裂き、刃となってエナーシアと権太を穿つ。 「あやつ、良い突きをしておるわ!」 「感心している場合じゃないわ。このデスマッチ、場外攻撃有りなんだから」 疾風居合い斬りを彷彿させるが出血はない。代わりに一撃がひたすらに重く、鉄格子はさらに軋む。 「碧衣さん、攻撃お願い!」 「直撃させれば良いだけの話だろ……なら、余裕だよ!」 碧衣の神気閃光が鉄格子を抜け、全てのバイデンを捉える。 精鋭たるバイデンはめったなことでは動じず、傷に対しても鈍感。まず状態異常が通じないのが普通である。 だが、彼女は違う。 「グオォッ!?」「ガアァ!?」 超頭脳演算による完璧な出力調整を行った碧衣は『普通』から大きく逸脱した命中率を得ている。その一撃は、不運でも見舞われない限り外れることはないだろう。 「ウェスティア!」 聖なる光はその場に居たバイデン達の身体を尽く打ち砕き、隙を生み出す。 その隙を見計らい、ウェスティアが動く。 「後は任せて、みんな行くよ!」 ウェスティアの声と共に射線が開き、牢に大量の『黒』が流れ込む。 「!!??」 彼女の傷口から溢れる血を媒介とした黒の濁流が、ショック状態のバイデン達を捕らえ、苛み、そして鎮めていく。 罹れば一溜りもなく、バイデンを縛る血の束縛は……流れが消えてもまだ残ったままだ。 「決まった、超ラッキー!!!」 後衛の奮闘によって体力を削られていくバイデン達だが、まだ戦意を失うことない。 前衛。そして牢の外にいる後衛にも攻撃を仕掛け、戦力は尚も拮抗を続ける。 ●殴打 殴打というものには加減が存在する。 軽く叩くものから、一般人を平然と殺傷せしめるものまで様々。 だが、この戦いの殴打はまさに先に上げた例の極を往く。 「野球やろうぜー。お前ボールな!」 ぐるぐの放った鳩尾突き(ボーク)がバイデンに刺さる。 先の挑発によってすっかり臨戦態勢でいたバイデンの身体が崩れる。野球なら一発退場で間違いない。 「ファックなボールですねー!」 当然一撃で止まるわけがない。さらに一撃を叩きこむ容赦のなさは見ている方も背筋が寒くなる。 「グ、グガッ」 その、連撃によってバイデンは思わずスコップを地面に落としてしまう。 「接近してる方としてはスコップ無い方がこわいよねぇえ!?」 攻撃力ではスコップを持った方が上回るが、爆発力では断然素手のほうが高い。 特に凄まじい威力を誇るバイデンの猛撃を食らえば、ぐるぐどころか一番固いエナーシアの防御を以てしても一撃で絶命ものだ。 「エナーシア、交代頼む!」 「OK、鉄平さん」 即座に交代し、ハニーコムガトリングで4体をまんべんなく狙う。 蜂の巣を啄いたかのような騒音が地下に響き、銃弾がバイデン達を射ぬくも、持ち前の硬さと超再生によってすぐに癒されてしまう。 「通るには通るけどモロともしないわね。一撃は重いほうがいいわ」 殴り合いはまさに熾烈。 殺すか殺されるかの修羅場。 「ぶん殴れれば何でも良いぞぉ!? ムシャクシャしてっからよぉぉっ!」 炎を纏った火車の腕が、激しくバイデンに叩きつけられる。 燃え上がる紅が、バイデンの朱に混じり黒煙が上がる。 「グオアァ!」 「上等だぁ、戦うだけが目的のクソったれな動物がぁ!」 肉が焼ける匂いなど慣れたもの。さらにもう一撃、業炎撃を叩きつける。 バイデンもスコップの一薙ぎを以て返答すれば、火車の身体は激しく鉄格子に叩きつけられ、鉄格子はさらに歪む。 「あぁ良い感じだな? テメェらみてぇなのが居りゃあ そりゃあ暇することもねぇ!」 流れ出る火車の血と怒りは収まらず、痛みを吐き捨てながら金剛陣で体制を立て直す。 「楽しませろぉ? テメェ等十分愉快だぞコラぁ……こっちは今、それどころじゃねえんだよ!」 彼は今、とても気が立っていた。 「一気に圧すぞい。走れ雷光! 我が敵に雷の裁きを与えよ!」 「この一撃が、救いとならんことを」 権太の雷光と『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)の蒼き光弾が螺旋を描き、弾け、バイデンを貫く。 「はぅぁっ。えとえと……てんしのうたっ!!」 「私もやったほうがよさそうね」 ミーノが慌てつつ地下牢に歌を響かせ、傷を癒していく。 ウェスティアもやや遅らせて輪唱する。 バイデンの攻撃力もさることながら、流血が想像以上に体力の消耗を加速させる。 状態異常も最初のうちこそ効果はあったが、次第に攻撃から回復にシフトしたことで神気閃光によるショックだけが常になりつつあった。 「そろそろ更新しないと……」 演算更新中は攻撃できそうになければ、バイデンの状態異常に対する復帰力も侮れない。 「すっげぇヤバイですね、ボコボコなのに中々倒れてくれないですよ」 「交代だ! 持ってくれよ、俺の無限機関!」 「フォローしあって行きましょう! 熱き血潮を燃やせ! 気合だ!」 すかさずぐるぐと鉄平がポジションを交代し、対処に当たる。長期戦によりエネルギーも徐々に尽きかけている。 戦場の拮抗は泥沼化しつつ、バイデンの手によって破られようとしていた。 ●『破』 力任せに投げられたスコップが、音を立ててミーノに向かう。 「ミーノさん、伏せて!」 「それには及ばん!」 その間に権太が飛び込み、鉄格子を貫通したスコップは彼の背に深く刺さる。 「間一髪、じゃな」 フェイトがなければ即死、あるいは一生抱えるほどの致命傷。 運命の加護を削り、権太はどっこらせいと起き上がる。 「儂とてリベリスタじゃ、舐めるでない!」 その気概はまだ若獅子のまま。まだまだ長生きできそうだ。 バイデンの豪腕が前衛の2人を捉え、そのまま穴の開いた鉄格子に直撃する。 「しまった!」 エナーシアが叩きつけられ、牢はその機能を放棄し鉄格子は無残に破れる。 そこにジビリスがダメ押しで突っ込み、廊下に投げ出される。 「ついにやったわね」 「してやられましたね……フフフ」 ジビリスの開いた穴にはいった鉄平がぐるぐがはいり、エナーシアは廊下に迫るバイデンの足をすかさず撃ちぬく。 「超再生があっても、傷は残るものでしょう?」 足は止まった。が、さらに吹き飛ばされ続ければ、自ずと廊下での戦いを強いられる。それはリベリスタにとって不利に違いない。 このまま敗れてしまうのか。 否、彼らはまだ十分戦える! 「まだだ!」 もはやどれが本来の色かわからない。赤と黒が混じった傷だらけの鉄平が、スコップの一突きを身体で受け止め、フェイトを燃やす。 「言ったはずだ、ここから先へは通さないと!」 スコップの柄を握り潰し、ギガントスマッシュを載せてバイデンの顔面へと叩き返す。 「グォ……」 まず、1体のバイデンが地面に吸い込まれるかのように倒れる。 「あと3体!」 「このままどんどんこうげきしておっけー! まだまだこれから、だよっ」 「勿論、戦いはこれから本番だ」 「いざとなったら私が引き付けるが、それまでは任せたぞ」 ミーノが、碧衣が各々にエネルギーを分け与え、ジビリスもフェイトで立ち上がる。 ジビリスの目も、明らかにコレまでの冷静さを失い、戦闘への狂気が満ち溢れている。 地に落ちたスコップはいつの間にか踏み砕かれ、残ったのはあと一本。 だが、素手だからこそ油断はできない。まだ奴らには切り札があるのだから。 「ここからが、闘争の、本番であろう!」 「バイデンらしいわね、その考え」 接近からの豪腕なぎ払いを、エナーシアは『部分遮蔽』と名付けた盾で受け止める。 それでもダメージは大きい……が、あえて吹き飛ばされた前衛の穴にジビリスが飛び込む! 声々が響く。野蛮で、思慮もなく、闘争本能以外の何者もない声々が響く。 『潰せ! 潰せ!! 潰せ!!!』 「潰されて逝ってろぉぉおっ!!!」 『殺せ! 殺せ!! 殺せ!!!』 「舐めるなよ、この蛮族がぁぁ――!!!」 狂気じみた興奮が地下牢を埋め尽くす。全てが等しく、修羅と化す。 そのような中で戦う彼らを止めることなど、愚の骨頂。 「まだだ! 倒れるとしても前のめりだっ!!」 乱打を3発ももらった火車がフェイトを削る。倒れるにはまだ早い。 まだやれることはある。あるからこそひたすらに業炎撃を叩き込み続ける。 「!!!!!」 バイデンが一際大きな咆哮を上げる。 バイデンの言語を理解していればきっと『魅せてやる、雑魚ども』とでも発したのだろう。 2体のバイデンが体を捻り、全身の筋肉を一点に集中させる。 「気をつけて、猛撃が来るわよ」 どう転ぼうとこれが、決定的な一打となる。 エナーシアが警告し、バウンティショットでさらなる相打ちをかける。 「おいおい良いのかよ? チャンスにしか見えねぇぜ!!」 殴る。殴って燃やして、知らしめる。 「ぶっ潰れろぉ! オレのこの、業炎撃でぇ!!」 バイデンに尚も食らいつく火車。炎が両者を包んで激しく燃え上がり、一塊の炎と化す。 フェイトを一度燃やしたぐるぐも同じく、拳を溜めて気合を込める。 「そういうのはこっちにもありますからね。15回、ぶっ転がしてやりますよ」 かつて豪快だった快男児の繰り出した、浪漫以外の何者でもなかった拳を繰り出すために、今は構える! 「祝福をくれてあげるわ」 エナーシアが古傷に祝福、もとい銃弾を的確に撃ちこむ。 それでもバイデンは倒れない。倒れるほどの傷を追っても尚もそうさせるのは、力を振るうためか。 その時は来た。火車に、ぐるぐに、壮絶な一撃が叩き込まれる! 「この、豪快で、最高にイッてる。この、拳で!!」 バイデンの一撃とスキルの反動が、フェイトという綱一本で持ちこたえているぐるぐを揺さぶる。 視界は白み、かろうじて最後に見えたのは……バイデンが仰け反り、吹き飛ぶ姿だった。 もはや誰が倒れたか解らない程の乱闘だった。 火車も、ぐるぐも、鉄平も既に燃やしたフェイトを再び燃やすことも叶わず倒れていく。 バイデンも同じだ。一撃に耐えられず、命の炎すら燃やし尽くしたためか動くものはいない。 火車に猛撃を放ったバイデンもまた、火に巻かれながら燃え落ち、絶命する。 これで、あと1体。 「…………」 前衛は私を残し、皆倒れた。 倒れてもエナーシアと後衛に控える一同が倒してくれる。 だが、ヤツは渡せない。 逃がさない、逃がしてなるものか! 「ここで、死んで往けェ!」 決死か、それとも狂気の一撃か。 叩きつけられた鉄槌は瀕死のバイデンを叩き潰し、その本能ごと魂を打ち砕く。 「……フ」 握っていた武器が、大穴へと堕ちていく。 「ハハハハハ、ハハハハハッ!!」 血生臭くても、これが勝敗を決める最後の一撃であることには間違いなかった。 ●結 そのあとが大変だった。 「あかくてやばんなのがまたくるまえに、なおすのっ」 一行はバイデンの撃退の報もそこそこに、急いで鉄板やベニヤ板や釘などを持って地下牢へと向かう。 「派手にやった分、片付けも大変だわ」 穴の埋め立てに死んだバイデンの片付け、牢屋の清掃に鉄格子の応急処置。 勿論、最前線で戦った4人を地上に引き上げ、適切な処置もしなければならない。 動けるリベリスタと、非戦闘員を借りだしての第二ラウンドが始まった。 しかし、既に穴の中には何者かが潜っていた。 「待った! 穴埋めはもうちょっとまっとくれ」 早速皆が穴を埋めようとした瞬間、穴の中から聞こえたのは権太の声。 危うく彼がひと足早い仏様にならずに済んだのに安堵しつつ、数分後引き上げられたのはバイデンの持っていたスコップ……を持った彼の姿だった。 「スマンなお主達。改めて作業を始めよう」 こうして地下牢の大穴は仮ではあるが防がれ、壊れた鉄格子にも鉄板が留められた。 本格的な埋め立てまでは警戒を強めることで、当面の安全は確保されるだろう。 バイデンの武器は研究ラボに送られ、きっと今後の役に立つはずだ。 武器として。そして、多分道具として――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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