● 「イザークが! 赤き4人が! バイデンが誇る戦士達が! 苦戦を強いられ、或いは破れた敵との戦う機会が巡ってくるぞ!」 湧き上がる衝動を抑えきれぬかの様に、『槌』のグラングラディアが両腕を広げて咆え哮る。 その顔に浮かぶは紛れもなく歓喜。 「俺は直ぐに出る! こんな機会に戦わぬバイデンなどいようものか!」 彼が宣言したのは、実力を認め合い、絆を交わした、そう、ボトムチャンネルの言葉で言うなら親友に対して。 時には素手で殴り合う事で実力やその絆を確かめ合い、時には共に手強く巨大な獣を刈り取る、信頼の置ける大事な親友。 その彼が、グラングラディアと同じく即座に出撃を決めたのは当然の流れと言えるだろう。 戦わぬバイデンなど居ないのだから。 けれど、其の大事な親友の言葉を聞いたグラングラディアは僅かに眉根を寄せて考え込む。 「俺はこの前、2人で狩った巨獣の肉の、一番良い所を喰った」 彼は親友の目を見詰め、無念そうに唸りを上げる。 「……故にこの戦いでの誉れはお前に譲ろう。俺はお前の為に敵を集める!」 返事を聞こうともせず、戦の準備の為に歩き出すグラングラディア。 判りきった返事などしなくて良い。聞く必要も無い。 戦いの誉れに喜ばぬバイデンなど居る筈が無いのだから。良い思いをするのは交互に。親友と交わした約束だ。 そして、最後にふと、 「そう言えば異世界の戦士には獣混じりが居ると聞く。巨獣とどっちが旨いのか……。味が、楽しみだ」 口内に溢れる唾液をゴクリと飲み干し、呟く。 ● 拠点設営を順調に続け、日々警戒を怠らないリベリスタ達。 その甲斐もあってかこれまでは『完全世界』においても大きな問題は発生してはおらず、フュリエの保護や治安の維持等にも効果が上がっていたのだが、その平穏はこの日突然に破られた 見晴らしの良い荒野に多数の戦力を伏せる事は難しい。いや、『彼等』は最初からこそこそと隠れる心算もないのだろう。憤怒と渇きの荒野の彼方、地平線より巨獣を引き連れたバイデンの集団が近付いてきたのをリベリスタ達の警戒班が発見したのだ。その規模はこれまでの小競り合い等とは全く違う。 明らかにこれは総攻撃だ。 折しも時間は3つの月が地を見下ろす夜間。 敵襲の接近を知らせる警報音が鳴り響く中、迫り来るバイデンの遊撃により撹乱・攻撃する為の部隊が出撃していく。 ● 迎撃に出て来た手強い異世界の戦士、リベリスタ達を隙間無い防陣を敷いてガッチリと受け止めたグラングラディアの顔に凶悪な笑みが浮かぶ。 歓喜と、戦いへの、暴力への期待に彩られた凶悪な笑みを。 「来い! 異世界の戦士ども! この『槌』のグラングラディアを食い破れるものなら食い破ってみせろ!」 装甲の様な外皮を纏う、トリケラトプスに似た巨獣に跨ったグラングラディアは大きく槌を振り回し、咆哮を上げる。 絶対の自信は自分の実力と、 「だが貴様等に、友の攻めに耐え切るだけの実力があればの話だがな!」 同じ位に信じる親友の実力故に。 其の直後に、リベリスタ達の背後からあがる鬨の声 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:らると | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月30日(月)00:05 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「方位、仰角、微修正。……発射」 前回、前々回の着弾点からこの発射台の凡その狙いのつけ方を把握した『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)が本命の一撃を放つ。 使用した経験など無いであろう大型兵器を、それでも僅かな操作で実用レベルに把握できるのは、流石はボトムチャンネルではその立ち回りと速度や命中力でフィクサード達に散々嫌がられた彼女ならではであろう。 だがそんなユーヌとて、この発射台でつけれる狙いは大雑把なものが精々だ。 ボトムチャンネルで用いられる兵器の様な正確性は元より望むべくも無いが、弾である岩も不均一で飛ばす度に違う癖が出てしまう。 そんな正確性に乏しい兵器を仲間の居る戦場に向けて使用する事は、非常な勇気を必要とする。 双眼鏡で発射された岩の行方を追い、何よりも先ず仲間に命中しなかった事に安堵の息を漏らす。 けれど其の安堵を表情には出さない。声にも滲ませない。 「……発射」 淡々と、アクセスファンタズムの向こうに居る仲間達に発射タイミングのみを知らせ、ユーヌは岩を発射する。 其の為に、出撃していく仲間達を見送って砦に残ったのだから。 怯える為じゃない。泣き言を言う為でもない。ましてや戦場に居る仲間達の気を余計な事で煩わす為でもない。 戦場への距離を考えれば、そう、もう駆けつけることは不可能だ。 仲間達と肩を並べ、危険を共有する事を許さぬ距離と言う名の壁。 彼女は唯、心を殺して役割に殉じる事を己に強いる。 そして再び、岩が空へと放たれた。 天より降り来る岩を見据え、このバイデン部隊のリーダー、『槌』のグラングラディアは己が駆る巨獣の背に仁王立ちとなる。 振り被られる槌。バイデンの特徴である異常に肥大した前腕が、更に其の太さを増す。 激突の瞬間、響き渡る咆哮と、槌と岩がぶつかり合う轟音。 砕けた岩が無数の飛礫となって戦場に降り注いだ。 『勇士よ! 勇士よ! 見たか! 見えるか! 貴様の岩は砕いたぞ! まだ見ぬ異世界の勇士よ! 貴様は勇士だ。この大きさの岩を此れだけの距離投げれる者はバイデンにも居ない。嗚呼、心が躍る!』 そんな無茶をすればグラングラディアとて無傷では済まないのだが、それでも彼は力の解放に、まだ見ぬ強敵の存在に喜びを歌う。 だが其の歌を理解出来たのは、タワー・オブ・バベルにてあらゆる言語を理解し、話せる『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)のみ。 無論この岩を放ったユーヌは決してグラングラディアの想像の様に膂力で岩を投げてる訳ではないのだが、氷璃には其の勘違いを笑い飛ばす事が出来ない。 『だが勇士よ。貴様は愚かだ。何故其れだけの力を前に出て活かさない。砦に篭る貴様の臆病な愚かさが、貴様の哀れな尖兵達を殺すのだ!』 誤解に満ちたグラングラディアの言葉は、だがはっきりと彼がこの場のリベリスタ達との戦いに未だ余裕を抱く事を示していた。 広げた氷璃の両腕から黒鎖が出現する。彼女自身の血で具現化させた其れは、氷璃の命を吸いながらも濁流の様に戦場に放たれる。 高速詠唱から瞬時に放たれる葬操曲・黒。恐らくこの場に居るバイデン達は見た事も想像した事も無いであろう理に拠って為される其の技を、けれども彼等は己が駆る巨獣に前足を跳ね上げさせ、一瞬後ろ足で立たせる事で其の身を壁として防ぐ。 そう、バイデン達は己が傷を負っていなければ其の身を盾として巨獣を庇い、己が大きな傷を負ったならば自己再生の時間を防御力に優れた巨獣達に庇わせる事で稼ぎ出す戦術を取るのだ。 バイデンと巨獣、主と従、其の連携の前に、リベリスタ達の想定が崩されている。 グラングラディアを集中的に狙いたいと言う腹積もりはあるのだが、彼等の壁は厚く目論見は阻まれてしまう。 砦から発射される岩は、グラングラディアは兎も角、他のバイデン、巨獣には大きな脅威と成り得たが、けれども次第に乱戦になりつつある今、いかに発射のタイミングを知らせようと仲間を巻き込まずに放つ事はもう難しい。 ボトムチャンネルの希望。世界に、運命に愛されたリベリスタ達。 けれども彼らを愛してくれる世界は、遠く彼方。 そう、此処は異界の地。この地にとって彼等は異物。 その異界の地で、リベリスタ達の行く末に暗雲が立ち込める。 ● とは言えバイデン達もまた、未知の技を使うリベリスタ達相手に攻め切れないでいるのもまた事実。 開戦後即座に使用された『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)の翼の加護を受けて低空を飛び回りながら戦うリベリスタ達。 ボトムチャンネルでの能力者同士の戦闘では割と見かける光景だが、バイデン達にとっては翼の無い生き物が宙を舞うと言うのはそれだけで驚くに値するのだ。バイデン達は巨獣に跨り高さもある為、低空飛行程度ではそう易々と抜かれはしないが、それでも闘いの勝手は当然常とは異なってくる。 「招かれざるお客様には早々にお帰り願おうか」 視界を真っ白に染める閃光。『ピンポイント』廬原 碧衣(BNE002820)が放った神気閃光は、バイデンを庇った巨獣達に確実に衝撃を与え、その動きを鈍らせた。 もっともバイデン達からしてみれば、客、つまり余所者は寧ろリベリスタ達の方なのだが、碧衣とは違い、彼等にとってリベリスタ達は喜んで招くべき客(好敵手)だ。 宙を切り裂き飛ぶ蹴撃が、庇った巨獣を貫き其の背のバイデンにもダメージを与える。 「こっちのが面白いぜ?」 碧衣に狙いを定めかけたバイデンを挑発するは、先の蹴撃、虚空を放った『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)。 まあボトムチャンネルの言語を解せず文化を同じくもしないバイデンに其の挑発は無意味だが、けれども碧衣と夏栖斗を、特に2人が手に持つ武器を見比べた其のバイデン、長槍を携えたケルグは、より歯応えがありそうに見える夏栖斗に向かって巨獣を接近させる。 頭上で器用にクルクルと回され、裂帛の気合と共に突き出されるはケルグが自ら仕留めた巨獣の長大な骨から削りだせし長槍。 ザクリと宙を舞う夏栖斗の脇腹の肉を長槍が抉った。舞う血飛沫に、ケルグの唇が笑みに歪む。 決して浅くは無い傷。けれど、夏栖斗は怯まない。其の顔には寧ろ敵を引き付けたことによる達成感が浮かんでいる。 何故なら、彼は大も小も、そして仲間達も、全てを救う事を夢見る、夢見がちなヒーロだから。 夏栖斗は自分が傷付く事は恐れない。其れは彼の強さであり、弱さ。 彼は自分の痛みには強いけれど、だが他人の痛みに弱く、脆い。 だが無論バイデン達にそんな彼の弱さが理解できる筈もなく、寧ろ真っ当な闘いを好むバイデンは夏栖斗にとって相性の良い相手であろう。 そして最もバイデン達に衝撃を与えたのが、レイチェルが夏栖斗に施した浄化の鎧と、更に乱戦で傷付いた仲間達を纏めて癒す『Gloria』霧島 俊介(BNE000082)の天使の歌。 既にリベリスタ達との戦闘経験がある同族から話は聞いていた。けれど目の当りにすれば其の驚きは矢張り大きい。 バイデン達とて自己再生での回復能力は持っており、特にこの部隊のバイデン達は其れに秀でた者達の集まりであるのだが……、それでもレイチェルと俊介、ホーリーメイガス二人掛かりで行われる他者への回復の力は驚愕を禁じえない。 何故あの傷が一瞬で塞がるんだ? ありえぬ光景に眼を疑うは夏栖斗を傷つけた張本人、長槍のケルグ。 だが、しかし、けれど、それでも、バイデン達は揺るがない。崩れない。 見慣れぬ数々の未知、異界の技はどれも脅威だ。 だからといってバイデン達の行動に変わりは無い。もう少し正確に言えば、変わりようが無いのだ。 手札を多く持つ者であれば、未知の力の前に惑い、どの手札を切るか迷うかも知れぬ。 されどバイデン達に出来る事は最初から極々限られている。そして其れだけを延々と鍛え、振るう事に喜びを見出す彼等が迷う事などありはしない。 口さがなく言うならば、彼等は脳筋なのだ。其の単純さは、そう、時には弱さともなるだろうが、この局面に限って言うならば最大の強みだ。 例えば彼等がグラングラディアの指示通りに動いて戦う兵士なら、彼等の言葉を解する氷璃の前に其の作戦は見抜かれただろう。 だが彼等は兵士では無く、一人一人が己が意思で、迷う事無く戦う戦士達。 互いに殴りあう事で、或いは狩りを共にする事で、理解し練られた連携。 氷璃は驚嘆を禁じえない。単純であるが故に、彼等は強く、そして厄介なのだ。 「邪魔、しないでっ……」 グラングラディアへの道を阻むバイデンに対し、『紅玉の白鷲』蘭・羽音(BNE001477)の全身のエネルギーを込めたチェーンソー、ラディカルエンジンでメガクラッシュを放つ。……けれど、ガキリと其の一撃はバイデンの、アウドの掲げる斧で受け止められ、噛み合い火花を散らした。 高速回転するラディカルエンジンの刃は巨獣の骨で作られた斧を削り取って抉れ込むが、だがアウドは己が武器の破損も恐れず更に武器を持つ手に力を込め、羽音の身体を押し返していく。 アウドが間近に迫った羽音の身体に注ぐ視線に混じるは、戦いへの興奮と紛れも無い食欲。 手強い獣を狩り、其の肉を喰らうは喜び。異世界から来た獣混じりを巨獣と同列に扱うかはバイデン達の中でも是非が出るかも知れないが、彼等のリーダーであるグラングラディアはこの獣混じりを喰らう事を楽しみにしているのだ。ならば自分も喰ってみても何ら問題は無いだろう。 自分に向けられる敵意や戦意とは違った異質な感情に、羽音の背中を怖気が走る。 殺意でもなく、肉欲でもなく、あろう事か食欲を向けられて恐怖が走らぬ筈が無い。 しかし其れでも、 「おいでよ。狩られる前に、狩ってあげる……」 言葉が通じぬは承知の上で、羽音は武器を持つ手に力を込める。隣を抜け、バイデンのリーダー、グラングラディアへと向かう仲間、『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)の邪魔をさせまいと、自らの肉体を敢えて誇示して。 ● ズン、と轟音が響く。 低空を突っ込んで来た壱也に対し、グラングラディアの駆る巨獣は前足を跳ね上げて前身を浮かし、上からの踏み付けを敢行したのだ。 だがまともに受ければ挽肉になるであろうその攻撃を、身を捻って掠めるだけに留めた壱也が巨獣の影から飛び出し、グラングラディアに其の刃を振り下ろす。 音を立て、ぶつかり合う刃と槌。 掠めただけとは言え、質量が余りに違う巨獣一撃は壱也の身体の奥底に深刻なダメージを刻んでいる。 なのに、そんな身でありながら、一撃を受け止めた己の手に痺れを走らせる壱也に対し、グラングラディアの顔に野太い笑みが浮かぶ。 「あんたを倒すのはわたし!」 壱也の言葉や、親指を下に向ける仕草の意味はわからねど、向けられる強烈な戦意はどんな言葉や仕草よりも明確に彼の身に届く。 強者が、戦意を向けて来る。この状況で迷うバイデンは恐らく居ないだろう。 どのバイデンもがそうするであろう様に、グラングラディアもまた天に向かって己が武器を掲げ、咆哮をあげる。 否、正確には壱也には咆哮にしか聞こえなかっただけで、彼が、グラングラディアが行ったのは本気の闘争の前に行う名乗り。 唯の名乗りが、けれども大気を震わせる。 ましてやリミットオフで肉体の限界を取り払った粉砕者壱也と、飛来する岩をも砕くグラングラディアが互いの攻撃をぶつけ合えば、其の音の振動は花火の如く腹の底へとしみこんで行く。 無論二人も唯無策に、或いは無心に攻撃をぶつけ合って居るわけではない。壱也はグラングラディアを巨獣の背から叩き落す為にメガクラッシュを攻撃手段として選んでいたし、グラングラディアも己が駆る巨獣に其の攻撃を防がせている。 流石の壱也も、この巨大な巨獣が相手ではほんの僅かに後ろに押し込むのが精一杯だ。 僅かに浄化の鎧で付与された反射がグラングラディアの身体を傷つけはするが、そんな物は彼の自己再生の前にはあってなきが如しダメージでしかない。 けれどグラングラディアを卑怯とは到底言えまい。彼等の演目は一対一の決闘ではなく、戦争のワンシーンなのだから。 壱也とてレイチェルと俊介、二人からの回復を受ける身である。だが恐るべしは、その二人からの回復支援を受け、更にはリミットオフの反動を上回るだけの自己再生能力すら有する壱也の身に、回復を上回ってダメージを蓄積していくグラングラディアの攻撃力。 ……だが二人の闘争に、リベリスタ達とバイデンの闘いに決着がつく前に、彼等の背後で行われていたもう一つの闘いが終る。 リベリスタ達はバイデンと巨獣の連携を崩せず、そしてバイデン達もリベリスタの厚い回復支援を打ち崩せぬままに、時間切れは訪れた。 ● 最初に其れに気付いたのは、仲間を壁に使う事で巧妙に立ち回って神気閃光を落とし続けていた碧衣だ。 超直観を持ち、全体を抜け目無く見渡す事で己の立ち位置を確保し続けていた彼女だけに、異変に気付くのもまた早かったのだろう。 時間切れにより勝利の女神が微笑んだのは、……バイデン達にだ。 「後ろが破られた!」 警告の声をあげるや否や、牽制の為の神気閃光を後ろから突撃してくるバイデン達に落とす碧衣。 更に真っ白に焼けた視界の中へと、氷璃が高速で構築した多重魔方陣から放つ、先の白を塗り潰していく黒き閃光、堕天落としを放つ。 碧衣と同じく超直観を持つからこそ、先手を打って放てた一撃。 けれど氷璃が嘗てクレイジーマリアから写し取った、他者を石化する脅威の技を持ってしても、足を止めれたのは僅かに二体のバイデンのみ。 残る三体、あちら側のリーダーであるヴェルディードを含んだバイデン達が、一斉にリベリスタへと襲い掛かり混乱を生む、そして、そう、戦士でもあり、狩人でもあるバイデンがリベリスタに、獲物に生まれた其の隙を見逃す筈も無く、グラングラディアが率いる、彼自身を含めた全てのバイデン達が、巨獣による突進を敢行し……、リベリスタ達の戦列を崩壊させた。 潰走するリベリスタ達を、しかしバイデン達は黙って逃がしはしない。 彼等が狙うは、矢張り羽音だ。 逃げる彼女の背後に、巨獣の駆ける足音が迫る。 「羽音!」 振り返った俊介が、恋人の名を呼び手を差し出す。 だが、駄目だ。直ぐ背中に迫った敵の気配。もし自分があの手を取れば、きっと敵は俊介をも標的に定めるだろう。 あの手を取ればどれだけ心が勇気付けられるかは、痛いほどに判っているのだけれど……。 ほんの僅かに、駆ける羽音の足が鈍りかけた其の時だ。 彼女の背を強く突き飛ばした者が居る。差し出された俊介の腕の、其の中へとおさまる様に。 「俊介の彼女でうちのハニーの親友だからな、守らねぇと二人に殺される」 少しおどけた様な態度で、羽音の退路を守るのは夏栖斗。迫る巨獣とバイデンを、業火に包まれた彼の利き腕、焔腕が薙ぎ払う。 一瞬緩む、バイデン達の追撃の手。 「そうじゃなくても守るけど」 逃げる俊介と羽音に気を遣わせまいと、顔に笑みを浮かべる夏栖斗の隣には、メガクラッシュを叩き込んで突撃してきた巨獣を受け止め、僅かなりとも押し返した壱也の姿も其処にある。 「まだまだやるよ! おいでよ、バイデン!」 剣を掲げ、あげる気勢。 無論二人きりで全ての敵を抑えきる事が出来る筈は無いけれど、二人を越えて更に迫るバイデン達の眼前に、不意打ちの様に砦から飛来した岩が突き刺さる。 「もう一度、急いで!」 アクセスファンタズムに叫ぶは、空を飛ぶレイチェル。其の声に通信の先に居るユーヌが応じ、再び砦から空に目掛けて岩が放たれた。 すっかり頭から消え去っていた砦からの射撃の再開に、バイデン達も咄嗟に足を止めてしまう。 其処へ畳み掛けるように突き刺さったのは、白と黒の閃光。すなわち、碧衣の神気閃光と氷璃の堕天落としだ。 そして空へとあがった岩は、今度は勢いを増しながらこちらに向かって落ちてくる。 窮鼠猫を噛む。リベリスタ達の必死の反撃が稼ぎ出したのは、逃げ切るための時間。 既に戦場となった砦に、それでも逃げ込む彼等。 だが其の中に、夏栖斗と壱也、殿となって敵を引き付けた、敵の群れに飲み込まれた、二人の姿は何処にも見当たらない。 あちらこちらであがるバイデン達の鬨の声が、リベリスタ達の心を打ちのめす。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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