●三つ月の夜、続き行く者共 周辺警戒に当たっていたリベリスタ達は、あまりにも際立つ群集を発見してしまった――否、発見せざるを得なかった。 憤怒と渇きの荒野の中、空には三つの月が浮かび、此処『ラ・ル・カーナ』は夜が更けたというのに。 群集が引き連れまたがる巨獣達は荒れた大地を駆けて行く。 今宵の黒に負けじとばかりに、群集の赤き肌はさらに赫赫と燃えているように見えた。 朱く、赤く、緋く、紅い。 今までに起きた小規模な争い等と決定的に違うのは、何にしても群集の数だ。大群――と表しても過言でない。 程なくして、群集は足を止めた。巨獣も揃ってその場に留まる。極めて無駄のない動きであった。 奴等が向くその先に在るのは無論、リベリスタ達の拠点である『ラ・ル・カーナ橋頭堡』だ。 それ等を確認し、光景を目の当たりにした警戒班一同は直感し、すぐさま拠点へ引き返した。 ――――早く皆に知らせなければ。『バイデン』達が、侵攻を開始する前に! ●三つ月の夜、密めかぬ者共 リベリスタ対バイデンの、激しい闘争の最中。 派手に戦い合う拠点外周を、或る部隊は騒ぎに紛れて運良く突破してしまった。 引き連れていた巨獣を囮とし、拠点内部へと足を踏み入れるのは六人。 その部隊の中で、先頭に立つのは二人のバイデンであった。 『へへっ、上手く侵入できたな! けど俺としちゃあ、もっと外で暴れてやりたかったんだが』 トップの一人が、凡人では解読できない言語を用いてニヤリと微笑む。人間やフュリエよりも巨大な体躯であるが、部隊内の仲間と比べると一番小柄だ。 然れど、立派に引き締まった屈強な身体は、己がバイデン族の一員である事を確りと誇示している。 『……気を抜くなヴァロン。この奥に、我らが求める強者が潜んでいるやもしれん』 小柄なバイデンの隣。険しい顔を崩さず、仲間への注意も峻厳に。もう一人のトップは、拠点内を用心深く見回す。 両手で握り構える――その武器の形状はまるで、偶然にも最下層(ボトム・チャンネル)に存在する大太刀のよう。 二人の後ろにつくバイデン達も、棍棒、槍……と、様々な得物を所持し、いつでも強者へ戦いを挑めるように、備えは万全であった。 『分ーってるっての! たく、かてぇなあホロジィは。もっと楽しもうぜ? せっかくの好機じゃねえか』 手甲を装備した両拳を突き合わせ、ヴァロンと呼ばれた小柄のバイデンは逸る闘争心をむき出す。 ヴァロンだけでない。彼と対照的に感情を表さぬホロジィも、他の四人のバイデンも、気持ちは同じ。 長耳でも、巨獣でも無い。 今彼らの心を満たすのは唯一つ――未知の強者、リベリスタ達との戦いだけなのだ。 そして、バイデン達がたどり着いた先に、大きな扉が一つ。 かけられた室名札には『兵舎』とハッキリ記載されている。 この戦いによって負傷した強者――リベリスタが、この中に居るかも分からない。 然し、日本語――ましてや、異世界の言語など読める訳が無かった。 『――諸君、推して参るぞ!』 『おうよ! 俺ら戦士の力、ヤツらに叩き込んでやらァ!!』 荒々しき二人の雄叫びを合図に、赤の群れは猛進する。 彼らのこの突撃を、襲撃を、止められるリベリスタは――――果たして、何処に? |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:明合ナオタロウ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月28日(土)23:18 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●強者達の『対峙』 バイデン達による、大規模な夜襲。その強烈な力により、遂には『ラ・ル・カーナ橋頭堡』の防御が突破されてしまった今。 その軍勢の一部隊がさらに内部へと進まんとするその先、兵舎の扉を護るように……否、まさしく護る為に立ち塞がるのは、八人のリベリスタ達であった。 「者共ごきげん麗しゅう! ちょっと遊んでいかない? 僕らなら、それなりに楽しめると思うよ」 常套句である挨拶は勿論、この場でも高らかに。吸血種の証である牙をニヤリと覗かせ、『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)は獣のトンファーを打ち鳴らす。 「どうも、こんにちは……まさか、誇りあるバイデンが、負傷者を狙ったりしませんよね?」 ガンガン、と響く黒鋼の音に続き、バイデンに向けて最下層(ボトム・チャンネル)の言葉を投げるのは『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)。 通じない事はもとより承知している。ここから先は通しませんよ……と、すぐに得物の刃を奴等へと向けた。 『ああン? 何なんだアイツら……!』 『待て、ヴァロン。早まるな』 リベリスタ達を無視して扉へと向かおうとするヴァロンを、ホロジィは制する。 言語の不通は在れど、彼等のこの言動が自分達への挑発であるかもしれないと考えたのだ。 「クスクス……お呼びで無いのに、よくもまぁズカズカと入り込んでくるものです」 状況を理解できないヴァロンに対して指を差しながら、『銃火の猟犬』リーゼロット・グランシール(BNE001266)は落ち着いた様子で口元を緩める。 彼女の嘲りに刺激され苛立ちながらも、ヴァロンは相棒に応じて引き下がった。 「けどま、怪我して休んでる連中もいるんだ。ここを行かせる訳にはいかねぇよ」 被ったカウボーイハットの奥から微笑を浮かばせて、『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)は神秘を内包せしナイフを構えた。 敵ではあるが、バイデンも知性を持った種族。愛をもって話せばニュアンスは相手へと伝わるだろう。さっきのように。 「ああ、此処まで襲ってくるならば迎え撃つまでだ。必ず食い止めてみせる……!」 クールな風貌、緩みの無い口調――然れど、その奥に秘めるは覇界闘士らしい、熱く燃えゆく精神。 吹雪の言葉に頷き、『リグレット・レイン』斬原 龍雨(BNE003879)は静かながらも意志を固くした。 煩わしさを抑えながらも、ホロジィは何とか冷静にその場の状況を考えた。 自分達の目的は、異世界から現れたという未知の強者との闘争。そして――目の前にはフュリエでない、未知の存在。これまた見たこともない不可思議な武器をその手に備えている。 つまり。 『おい、止めんなよホロジィ! せっかくあの先に強ェ奴がいるかもしれねぇってのに』 『阿呆。もう目の前に八人もいるであろう』 『……あ』 ――バイデン達にとっては、扉を突破する手間が省けたというもの。 ホロジィを含めた五人のバイデンは既にこの結論へ至れていたが、闘いしか頭に無かったヴァロンは、今になってやっと気づけた模様である。 奴等の会話の内容を掴めず、身を構えるリベリスタ達。 「大丈夫ですにゃー。アレ、ただの漫才」 そんな彼等の警戒を解いたのは『バトルアジテーター』朱鴉・詩人(BNE003814)。飄々とした態度はそのままに、奴等の矛先が兵舎でなく自分達へ確りと向いた事をリベリスタ達へ説明する。 メンバーの中で唯一、奴等と会話が出来る『タワー・オブ・バベル』を会得している彼は、バイデン達の間抜けなやり取りを理解し、けらけらと笑っていた。 そしてその裏で想う――今宵の真っ向勝負、煽り甲斐がありすぎてたまらない、と。 詩人とはまた正反対に、『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)は凛々しい姿勢を崩さぬまま思考する。 「――此処は決して通さない。負傷者は護りきってみせましょう」 万が一、自分達を退けてしまえば、奴等はきっと目前の兵舎を襲撃するだろう。 決意を宿すその瞳は、誇り高き蒼薔薇の如く。 (言葉が通じなくとも構いませぬ。示すべきは、意地と覚悟と闘志なれば) 先祖から伝わる薙刀『桜』を構え、『永御前』一条・永(BNE000821)は凛と、戦の申し子達を見据える。 ――刮目せよ。汝等が前に立つは、南北朝の動乱より六百年戦い続けた武門が末。 「アークがリベリスタ、奥州一条家永時流三十代目、一条永! 往くは阿修羅道、武をもって罷り通る!」 可憐なる女学生のような容姿とは相極まった、力強き名乗り。その覇気が伝わったか、狂戦士達の闘志はさらに燃え上がる。 『……喜んで、受けて立つ。貴様等が異界の猛者であるならば、その知られざる力――我らに篤と見せるが良い』 『その代わり、俺らも本気でいくだけだがな! 覚悟は良いよな、お前らァ!』 ヴァロンの声に合わせ、後方のバイデン達が猛々しく吼える。 ――あまりにも曲がり無き、真正面からの激突は今、始まった。 ●対峙する『強さ』 リンシードの目の前には、彼女の何倍もの体格を有するバイデン。 大口を開いて笑い、両手に握られた無骨な斧を振り上げ――愛らしい姿の少女へと、一気に振り下ろされる。 「威力、ありそうですよね、その斧……。ですが、当たらなければ、意味は無いです……」 然し、柔らかな淡青色の長髪が揺れる隙も無く、リンシードは敏速な動きで斧の一撃を軽々と避けてしまう。 バイデンが遅いのではない……彼女が圧倒的に疾すぎるのだ。 既に全身の速度をさらに引き上げたリンシードの能力は、敵のスピードを軽く上回っている。 そんな彼女の剣から繰り出された光の刺突は連続して、バイデンの身体へ刻まれてゆく。 「おいおい、その程度か? じゃ、俺からのお返しだ!」 同じく、持ち前のスピードを駆使して敵を見事に翻弄してゆくのは吹雪。 腕が、ナイフが、肉眼でハッキリと見えない程の速力で、ソニックエッジによる反撃が始まった。 この中にいる連中より、俺達とやった方が楽しいだろう?――身振り手振りで、棍使いのバイデンへ挑発しながら。 そして、鞭を得意とする狂戦士と龍雨は対峙する。 「言葉ではなく拳で語れか……面白い」 漆黒の刃が完備された、朱塗りの手甲――『閃刃・空牙』で覆われた両掌を強く握り、攻防自在の構えをとった。 直後、ビシッと激しく打ちつけられる鞭の攻撃は、他のバイデン達の力より劣ってはいるものの――それにより発生した痺れは行動を制限させる。 ダメージと麻痺を受けながらも龍雨は怯まず、その鋭き両眼でバイデンをキッと睨みつける。 今、この場には理屈などいらない。彼女は、真っ直ぐに立ち向かうのだ。 『グアアァッ!』 その時、鞭使いのバイデンが低く呻く。直撃したのは、何発もの銃弾。 先程の嘲笑から一変。その顔はただ、無。歯車のように淡々と、歪み無く、リーゼロットが敵全体へと散弾したのだ。 「銃弾なら、幾らでもご馳走しますよ」 その銃の名は『Garmfang』――猟犬の牙は獲物を精密に捕らえ、逃しはしない。小型軽量化されたパイルシューターから、無数の杭の弾丸が乱れ撃たれる。 『ウォオオオオオッ!!』 後方からの奇襲に負けじと、槍を振るうバイデン。矛を交えるは武士の後裔。 「体格の差は歴然なれど――脆弱なるこの身をもって、精強なる敵を討ち果たしてこその武」 哮る敵を目の前にしても動じず、楚々でありながら身構えは毅然と。 永御前の薙刀には、激しき雷気。学生服を翻し、振るわれる一撃はバイデンを薙ぎ払った。 「此処が何処であろうとも、其処が戦場であるならば、私が成すべきは唯一つ」 この場を焦土にさせぬ為――覚悟は疾うに、出来ている。 リベリスタとバイデンによる内部での闘争は、さらに荒々しさを増すばかり。 ●その強さの名は『憤怒』 一方で――バイデン部隊のトップを抑えるのは、二人の戦士。 「ちびっちゃいの、強いんだろ? やり合おうぜ?」 「『そこのドチビ、戦おうぜー。つってますよん』」 『……ほぉう』 自分の背丈にコンプレックスがあるのか、それはさて置き。 数々の挑発の結果か――戦場の勢いが増すと同時に、ヴァロンもブチ切れ寸前であったのだ。 バイデンは憤怒の狂戦士。その部隊の中でもヴァロンは一番子供っぽく、単純で――バイデン以上にバイデンらしい奴と称しても過言ではないであろう。 だからこそ、特に怒りは大きな力となり……過ぎた挑発は扉から気を逸らすだけに留まらず、火に油を注ぐ結果にさえ至ってしまっている。 この苛立ちは、拳でぶつけなければ絶対に晴れやしない。 「『ところでバイデンの皆さん、あんたらが攻めようとしてるのは負傷者収容所です』」 戦士として、それはどうかと思うのよ。『誇り』ないのん? ――フラッシュバン、神秘を孕む閃光弾を投擲しながら、能力によって伝えた詩人の言葉が、彼等の理性を崩す決め手となった。 『ふざけるな。小癪な挑発で刺激する貴様等に、誇りを説かれる筋合いは毛頭無い!』 静かに憤るはホロジィ。部隊の中で一番の理性を保っていても、やはり彼もバイデン。短気で且つ攻撃的な性格は、他の者達と同じ。 ――それ以上の爆発を起こさんとする小さき相棒の凶暴さと比べれば、どうしても劣ってしまうが。 『こちとら、ダテに先陣切ってる訳じゃあねェんだよ……調子に乗るなァア!!』 咆吼に限りなく近い言葉と同時に、ヴァロンの周囲で強烈な覇弾が幾つも炸裂する。 視覚が潰されてしまう程に、刺激の強い、赤、赤……狂戦士の肌の色、滾る血の色。誇りの、色。 噴火に飲み込まれるは夏栖斗、詩人――そしてその周辺のユーディスと……彼女と対立するホロジィでさえも。 『……ッ!? ……あの、阿呆め』 衝撃によってまた理性を呼び戻し、やれやれ、と溜め息を吐くホロジィ。 耐久力はこの場の中でも優れているからか、少々痛む程度で済んでいる様子。 寧ろ、痛手を負ってしまったのはリベリスタ側……ビリビリと感じるこの違和感は、若しや麻痺か。 「おぉー……盛り上がってきましたにょー」 運命を削り身を起こしながら眼鏡をクイッとかけ直し、密かに微笑む詩人。フュリエには存在し得ない感情、野蛮なる怒りがあれ程までに影響するとは。何とも面白い。 満ち広がる煙の中、理性など有りもしない小柄なバイデンの腹に叩き込まれる土砕掌――夏栖斗だ。同時に投げかけるのは、挑発で無く、問い。 「オマエの強さってのは、『奪う』事だけだってのか?」 『んだァ……? いい加減、黙りやがれ!』 幸か不幸か。言葉さえも失ってしまうほど、まだヴァロンは狂ってはいない。 また馬鹿にするつもりか、と抑えきれぬ怒りのままにぶつける、言葉と拳。 己の体が痺れていない事を確認したユーディスは、身構え直してホロジィへとさらに飛び込んでいった。 「では、挑発は抜きで――口で語らずとも、剣を交えて語れば良いのですから」 この調子で言葉を投げると、さらに状況は悪化する可能性もある――懸念した彼女は、加減無しの全力であるリーガルブレードで赤き肌を斬り裂かんと剣を振り下ろす。 先程は怒りを露わにしたホロジィであったが、短絡的な性格も共通しているのか――今はもう落ち着きながらも、闘いを嬉しんでいた。 ――嗚呼、強い。強すぎる。知らぬ光、知らぬ得物。それらを操るは知らぬ種族。何とも興味深く……最高だ。 『貴様等のその力の源とは――一体、何だというのだ!』 ホロジィは狂鬼の如く強者達を断ち斬り、攻撃に耐え立ち上がる彼等の目を見詰める。闘争本能に塗れたバイデンとも、いつも自分達を見て怯えるフュリエのものともまったく違う……なんらかの信念を秘めた、強き瞳だ。 この場にいる八人のリベリスタだけでない。いまもなお戦う、大勢のリベリスタ達もだ。 ラ・ル・カーナ橋頭堡を『守る』為に――決して譲れぬ想いを宿して。 (……成程。根本から、我らと違うということか) 己の大太刀を通じて、ホロジィは彼等の強さを感覚的に理解しかけていた。 「吹けよ春嵐! 舞えよ桜花!」 咲いて散る春の花――『桜』の如く在るべし。声の主は永。戦鬼烈風陣の合図が耳に届き、範囲内にいたリベリスタ達は離れゆく。 巻き起こる旋風は大きく、バイデン達を巻き込み……遂に残るは、トップの二人だけだ。 「アークの敵を排し、アークに利益を」 行動を阻害する為に、リーゼロットが狙うはヴァロンの目。スコープを用いて、硬貨さえ撃ち抜く程に精密な射撃が彼を襲わんとする。 『ジャマ……邪魔だァァアアアアア!!』 奇跡的に防御に成功したヴァロンの叫びに合わせ、ホロジィが放った覇斬が猟犬を襲う。 一度は倒れたが、彼女はアークのリベリスタ。フェイトを犠牲に、その身を復活させた。 「そろそろ助力が必要ですか……?」 ユーディスと夏栖斗へ灰の眸を向け、リンシードが尋ねた。何故聞くのだろうと疑問に思った様子である彼等を察し、タイマンを楽しんでるように見えたので……と言葉を続ける。 何にせよ、まだ戦いは続く。加勢として、剣による光の飛沫――アル・シャンパーニュをホロジィへと炸裂させた。 彼女に続いて動くは龍雨。向かうは勿論、己と同じく拳で闘うヴァロンだ。 夏栖斗とアイコンタクトを仕合い、息の合った連携――二人の覇界闘士による業炎撃と土砕掌がぶち込まれる。 立て続けに受けるのは、吹雪によるソニックエッジ。この場は八対二……ヴァロンの体力が限界となるまで、あともう一息である。 「奪うことだけが強さじゃねえ。――『守る』ことだって、強さだっつーことを思い知れ!」 暴走し、奪う強さしか振り上げぬ鬼への、喝。拳を交え続けて身体はボロボロになりかけているが――拳や脚や、得物……そして心は頑なな鋼のまま。 虚空を切り裂く蹴撃は、トップ二人同時に与えられた。 『……知らねぇ、知らねェよ! 何なんだオマエらの力はよぉ!!』 続いてゆく闘争の中、思いのままに叫び、拳を振るい続けるヴァロン。 次々と繰り出されるリベリスタ達の攻撃の中――――小さな狂戦士にトドメを刺したのは、龍雨による大雪崩落。 「この拳が、私の渾身の一撃だ!!」 例え窮地に陥ろうとも絶対に折れず、諦めない彼女の強き想いは……ドサリ、と地に倒れた音と共に、果たされたのであった。 ●その強さの名は『守護』 『ゥ……グッ……』 何とか、息はある様子。それはヴァロンだけでなく、他のバイデンも同様に。 それを目で確認したホロジィは――宣言した。 『――諸君、撤退だ』 戦いを美徳とする奴等としては、あまりにも潔い。然し、それにも理由がある。 ぜえぜえ、と苦しい呼吸を続けながらも怒鳴り散らすヴァロンと、それに対して冷静に答えるホロジィ。 七人のリベリスタには、やはり言語は理解できない。だが――一つの可能性が浮かぶ。 (……まさか、護っているのか? ヴァロンを) 守る――というよりは、身を案じているのであろうか。分からない。バイデン達は確かに野蛮で、フュリエを襲撃し捕らえる危険な種族だ。 それでも――撤退するのは奴等なりの理由があるのだろう。それも仲間を放っておかずに、抱えてまでだ。 よろよろと立ち上がる、何人かのバイデン達。仲間を引き連れ、橋頭堡を後にする。 『――さらばだ』 相棒を抱えたホロジィの背中は、闇へと消えていった。 撤退する場合は深追いしない……何人かのリベリスタはそう決めていた為、追撃を行おうとはしなかった。 「呆けてる場合じゃ、ないな」 静かとなったこの空気を終わらせたのは、吹雪の一声。 そう、まだ来襲は全て終わった訳ではない。戦っている仲間達の援護しなければ――橋頭堡は危機のままだ。 リベリスタ達は頷き合い、それぞれの向かうべき場所へと走り去っていった。 ――――そう。負ける訳には、いかないのだ。 ●『赫』たる敗北 バイデンらしい雄々しき声も無く、巨大な赤の戦士はただ想う。 多少、無茶な暴走はやらかしてしまうが――今、己の背に抱える小さな少年も、立派な強者。それはホロジィも、認めている。 一つ、赤が欠けては『赫』たる力は成り立たない。 しかし、守ったつもりではないと彼は無理やり戒めた。もし守ったとするならば、そう――命でなく、相棒の『強さ』なのだと。 ――護る……その志、プリンス・バイデンや他の者共が理解し得るかは分からぬが。 バイデンに理屈は通じない。だからこそ彼は、誰に言うでもなく今宵、刻みつけた。 夜空に浮かぶ三つ月へと、狂う事無く戦士は告げる。嗚呼、我らの負けだ。 『異界の豪傑達よ。我はこの赫たるこの魂に刻み、諸君等を認めよう。守護を貫き続ける、その強さを!』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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