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異世界のもさもさ。或いは、管狐……。

●もさもさしたもの
 林の奥に突如として開いたディメンションホールから、そいつらは飛び出してきた。
 真白い毛におおわれた、細長い生き物。見ようによっては、フェレットかなにかに見えなくもない。
 もさもさとした柔らかそうな毛玉……。それが、100体ほどディメンションホールから飛び出してきたのだ。群体として行動する習性があるのだろう、もさもさたちは、一糸乱れぬ動きで林の中を駆け回る。
 そんなもさもさたちを追って、蒼い毛を逆立たせた巨大な狼が飛び出してきた。
 狼の毛からはバチバチと紫電が迸っている。
 狼、なのだろうか? 少なくとも、外見上は狼に近い。
 しかし、見ての通り電気を纏っているし、口も体の半分ほどまで裂けているように見える。
 ディメンションホールから飛び出してきた狼は、林に差し込む太陽光を浴び、眩しそうに目を細めた。
 それから、ゆっくりともさもさたちを追って走り始める……。
 今日は、狩りをするには、丁度いい日だ。

●管狐
「アザーバイド(管狐)と、それを追って現れたアザーバイド(雷獣)をなんとかしてきて欲しい」
 モニターに映るもさもさたちを見つめながら、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がそう言った。
「もさもさたちの方が管狐。失せ物を探したり、人を探したり、誰かを少しだけ操ったりという能力に長けたアザーバイド。ただし、貧弱で群れで行動しないと生きていけない。今回は、雷獣に追い回されてこちらの世界に迷い込んだみたい」
 モニターに映るのは、100を超えるもさもさの大群。地面を毛玉が走りまわる光景というのは、なんというかそういうおもちゃを見ているようでもある。
「そして、それを追っているのは雷獣。見ての通り、雷を纏った狼。現在は暴走状態にあるみたい。普段はもう少し温厚だそうだけど、雷の浴び過ぎかも……」
 早い話がオーバーフロー。許容量を超えた雷を吸収したせいで、こうして管狐たちを追いまわしているのだそうだ。
「一瞬だけど、身体を雷にして瞬間移動が可能。後は、電気をつかった攻撃に要注意」
 今回のミッションはアザーバイドをなんとかすること。
 つまり……。
「倒してしまってもいいし、元の世界に送り返してもいい……。やり方は任せるから、お願いね。比較的頭がいいみたいで、こちらの言葉は通じるようだから」
 そう言ってイヴは、リベリスタ達を送り出す。
「あと、ディメンションホールがまだ残っているから、消しておいてね」




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年07月21日(土)22:51
こんにちは病み月です。
今回は、アザーバイドをなんとかする依頼になります。
やり方はお任せします。討伐しても、送り返すのでも結構です。
では、以下情報。

●場所
林。時間帯は昼間。木々が乱立しているせいで視界と行動に多少の支障が発生することが考えられる。林内では管狐と雷獣が駆け回っているようだ。

●敵
アザーバイド(雷獣)×1
雷を纏った蒼い狼。口が大きく、身体の半分ほどまで裂けている。
現在、雷を吸収しすぎて暴走状態にあるようだ。
電気を吸収する性質がある。吸収した電気は蓄積し、攻撃に使用することが可能。
雷を放出する攻撃の際は、蓄積した雷を使用することになる。
本来は、もう少し温厚な正確をしている。とはいえ、肉食獣ではあるが……。
【瞬間移動】→体を電気に分解し、数メートル程度の瞬間移動を可能にする。
【放電】→神遠複[ショック]
 雷を大量に放つ攻撃。
【雷牙】→物近単[呪縛]
 雷を纏った牙で喰らいつく攻撃。
【突撃】→神遠貫[感電]
 体を雷に換えて突撃する攻撃。金属に反応し、方向転換することも可能。
【雷撃砲】→神遠範[雷陣][圧倒]
 口を限界まで開いて、紫電を大量に放出する。金属などに反応し、ある程度拡散することもある。

●ターゲット
アザーバイド(管狐)×100
100体で1つの群れを形成する狐のようなアザーバイド。真っ白でもさもさした毛を持っている。
群れで意思を共有することが出来るのか、一糸乱れぬ行動が特徴。
物を探したり、拾ってきたりする習性があるようだが……。
尚、もさもさしている割にはその毛はひんやりしていて気温ちいい。


以上になります。
では、よろしくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
ソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
ナイトクリーク
アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)
マグメイガス
風見 七花(BNE003013)
レイザータクト
ミリィ・トムソン(BNE003772)
ナイトクリーク
月野木・晴(BNE003873)
覇界闘士
ヘキサ・ティリテス(BNE003891)
レイザータクト
伊吹 マコト(BNE003900)

●疾走するもさもさ
 ガサガサと小気味のいい音を立てながら、林を駆けるのは真白い毛玉の群れであった。名を、管狐と言う。別の世界からこちらへ迷い込んできたアザ―バイドと呼ばれる類の生き物だ。
 顔も脚も、胴体すらも今一判別のつかない見た目だが、どうやらしっかりと脚はあるようで、落ち葉や小枝、小石を跳ねあげながら毛玉の群れは走りまわる。
 合わせて、100匹ほどであろうか……。
 皆一様に、足並みそろえ一目散に、右へ左へと一糸乱れぬ動きで管狐たちは逃げ回っているのだ。
 そう……逃走中、である。
 管狐の背後から、蒼い稲光が追ってくる。否、稲光ではない。それは、雷を纏った狼のようだ。
 雷電を纏い、蒼い毛を逆立たせ、その身の半分もある大きな口から雷音のような鳴き声を迸らせ、獣は管狐を追う。見た目は狼のようではあるが、この獣もまたアザ―バイド。名を雷獣という。
 木々の隙間を、稲光のごとき軌道で駆け抜け、鋭い爪を管狐の最後尾へと振り下ろした。このまま、獣の爪が毛玉に触れれば、手触りのよさそうなもさもさした毛は、一瞬で消し炭と化すであろう。
 しかし……。
「ちょーっとまったー!! タイムタイム!!」
 溌剌とした声と共に、雷獣と管狐の間に漆黒の刃が突き刺さり、両者の間を分けた。それは、禍々しいまでに黒い大鎌である。
 大鎌を振り下ろした少年『紺碧』月野木・晴(BNE003873)は、笑顔と共に戦場へと降り立った。

●猛る雷獣
 月野木の影が、人型をとったまま地面から起きあがる。自身の影を使役する技によるものだろう。そんな月野木の背後から、続々とリベリスタ達が姿を現した。
 グルル、と雷獣が唸る。管狐たちは、なにが起きたのか判別つかないでいるのだろう、その場で集まって、オロオロと小刻みに動いていた。
 雷獣や管狐のいた世界には、恐らく人という生き物は存在しないのであろう。見たことのない生物相手では、警戒するのが動物の常と言う物だ。
「管狐さんですね? こちらは私たちに任せて、隠れていて貰えませんか?」
 そっとその場にしゃがみこみ、『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)が管狐に語りかける。
「もふもふ可愛らしいですね。もしかしたら、恐ろしい外見ではありますが、雷獣の方もすばらしいもふもふ具合なのでは……。ともあれ、お仕事です」
 右手に嵌めたグローブを、きゅっと嵌め直しながら風見 七花(BNE003013)が管狐に向き直る。期待と不安に満ちた視線の先では、雷獣がバチバチと雷光を迸らせ、威嚇していた。これでは、いかに雷獣の毛の、手触りが良かろうと触れることもままなるまい。
 チラ、と風見が管狐に視線をやる。管狐たちは、ジリジリと後退している最中のようだ。こちらに対する警戒を、完全に解いたわけではないが、しかし、一応敵意はないと判断してくれたということだろうか?  
 或いは、ただ単純に雷獣から距離を置きたいだけかもしれない。
 なにはともあれ、戦場から離れてくれさえすれば、それでいいのだ。
 ほっと、ミリィが溜め息を吐く。
 次の瞬間、雷獣が飛んだ。バチ、っと雷光を撒き散らし次の瞬間には数メートルほども前に移動していた。そのまま、地に足つかぬままミリィ目がけ突っ込んできた。その様は、まるでレールガンのようでもある。ミリィの背後には、管狐が集まっている。纏めて雷の餌食とするつもりだろうか。
 管狐たちを守ろうと、ミリィがフライパンを手に立ち上がる。電気を纏った雷獣を、自身の方へと誘導するつもりなのだろう。次の瞬間にも襲い来るであろうショックに備え、ミリィがぎゅうと目を瞑る。
 しかし……。
「ボクたちは……戦うつもりはないんだ」
 なんて、囁くような声。ミリィが目を開けると、そこにはミリィ同様にフライパンを両手で持って雷獣の突撃を受け止めた『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)の姿があった。
 雷に耐性のある彼女は、自ら雷獣と管狐の間に割り入ってそれを阻んだのだ。
「電気を吸収しすぎて暴走って、酔っ払いかなんかか……」
 雷獣の突撃を、アンジェリカが身体を張って受け止めている間に『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)は、その真後ろへと回り込んでいた。素早い動きをする雷獣を、逃がさないためである。
 須賀に続き、更に背後にもう一人。
「実力足りてないのは若手るっすから」
 なんて、苦笑いを浮かべつつも、地面にワイヤーを通した高枝切り鋏を突き刺したのは『持たざる者』伊吹 マコト(BNE003900)だ。
「小細工で挑ませて貰うっすよ……」
 冷や汗を垂らしながらも、伊吹が笑う。いつの間にやら、雷獣の周り、林の至る所に金属性のフライパンやら鋏やらがワイヤーで繋がれ張り巡らされていた。これにて準備は完了、と言ったところか。過充電による暴走状態で、ひどく視野が狭くなっている雷獣は、自分が既に罠の中にいることに気付いていなかった。
 バックステップで、アンジェリカから距離をとる雷獣。口を大きく開き、吠える。
 そんな雷獣に向け、跳びかかる影が一つ。
「ほーら! 獲物のウサギはこっちだぜ?」
 雷獣の真正面に降り立ち、不敵にも挑発してみせたのは『デンジャラス・ラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891)だ。地面にスコップを突き刺し、再び跳ねあがる。
 次の瞬間、ガツン、と硬質な音が響いた。
 先ほどまでヘキサの居た場所で、雷獣の顎が閉じた音だ。牙と牙が打ちあって、電気を散らす。
「簡単に狩られはしねーけどなっ!!」
 一気に後ろへ下がって、ヘキサが雷獣に声をかける。真紅の脚甲を打ち鳴らし、雷獣を誘う。
 一方、その頃『プリムヴェール』二階堂 櫻子(BNE000438)は、猫のような瞳を爛々と輝かせ、管狐を見送っていた。ジリジリと後退を続けていた管狐たちは、やっとのことで戦場からそれなりの距離を置くことに成功したのである。撤退に時間がかかったのは、いつ自分達に火の子が降りかかるか、という恐怖心によるものだ。どうやら、二階堂たちに敵意はないと判断したのだろう、キイキイと小さな鳴き声をあげ、ぷるぷると震える管狐。それを見て、二階堂が息を飲む。
「はうっ! 100匹のもさもさ狐さん! 可愛いですの~」
 戦闘中だというのに、雷獣から視線を切ってそんなことを宣う二階堂であった。
 そんな彼女の背後で、轟音と共に閃光が迸った。落雷か、というような大音量と地面の揺れ。事実、それは雷であった。雷獣が、辺り構わず放電したのである。
 爆竹か、或いは花火のようなものだ。避雷針代わりの金属を張り巡らせておいたおかげで、放たれた雷電の大半はあちこちに散らすことに成功するが、それでも被害は0ではない。
 まず、木が数本、割れて倒れた。半ば炭と化しているのが見てとれる。
 それから、ドサ、っという重い音をたてて風見とヘキサが地面に伏した。二階堂は眼を見開いて、戦場を見やる。漂っていた煙が晴れて、姿を現したのは猛り狂う雷獣であった。
「愛らしいもさもさ狐さんの為にもがんばります!」
 瞬時に、自分の役割を判断し、二階堂は戦場に舞い戻る。一人、狐を見送っていたのが幸いしたのか、彼女は今のところ無傷であった。ショック状態で動けないでいる2人に近寄る二階堂。
 回復役の彼女を護る為、須賀が傍に駆けよってきて腰に帯びていた刀を抜いた。油断なく、切っ先を雷獣に向ける。此処に来てリベリスタ側、始めて雷獣に対し、攻撃の意思を見せたことになる。
「傷つける気は、ないんだがね」
 雷獣が、その身をグっと地面に沈めてすぐにでも動ける姿勢をとる。視線を倒れたヘキサと風見、それから二階堂に向いている。
「癒しを届けましょう……」
 二階堂が呟いた。淡い光の粒子が、ヘキサと風見を包み込む。それを見て、雷獣が跳んだ。電気の弾ける音と共に、一気に前へ。
 風を切って、落ち葉を焼きながら雷獣が駆ける。矢のような……とでも形容しようか。それは真っすぐ、かつ、迅速な突進であった。しかし、猛る雷獣の進路に飛び込んでくる人影が2つ。
 アンジェリカと伊吹である。それぞれの武器を構え、雷獣の突進を受け止めた。
「ここは君のいた世界とは違う場所なんだよ……。このまま此処に居たら、ボク達は君を殺さないといけなくなる。元の世界に返してあげたいんだ!」
「別に貴方を殺したいわけじゃないっす。大人しく引いてくれるなら、それ以上の要求はないっすから」
 だから、これ以上暴れないでくれ。
 そう願いを込めて、通じているのかも分からない言葉を紡ぎ、気持ちをぶつける。グルル、と雷獣が唸りをあげる。未だその目に、平常の色は浮かんでいない。
 アンジェリカのブラックコードが雷獣の脚に絡みついた。牙を受け止めるのは、伊吹の剣だ。ここから先には行かせない、とばかりに、2人は雷獣を押さえ、押し返そうとする。
 ズル、と雷獣の脚が滑った。一瞬、雷獣の顔に焦りの色が浮かんだように見える。
 しかし、次の瞬間雷獣は、対躯の半分を占める口を広げ、雷獣は咆哮と共に大量の電撃を放った。閃光、轟音、電撃の嵐だ。勢いに押され、アンジェリカと伊吹は地に転がる。意識はあるようだが、上手く動けないでいるようだ。腕を伸ばすものの、雷獣には届かない。
「来るぞ……」
 と、須賀が言う。
 その時、雷獣の視線の隅で何かが動いた。それは、先ほど倒れた木の影に紛れて蠢いている。
 にやり、と……。
 雷獣が笑った気がした。木の影に居たのは、逃げた筈の管狐たちだ。100匹で固まって、何かを持ち上げようとしている。
「あれは……フライパン!?」
 驚いたような声をあげたのは、ミリィであった。そんなミリィの元に、管狐が走り寄ってくる。背に担いだのは、焼け焦げたフライパンだ。先ほどの放電で、避雷針として使われたものである。
 まさか、とミリィは息を飲む。どうやら管狐、始めにアンジェリカやミリィがフライパンで雷獣を受け止めたのをみて、これこそ雷獣に対する対抗手段であると判断したらしい。それを、ミリィに届けるつもりなのだろう。失せ物、落し物を探し、拾い上げる習性による行動か、或いはせめて少しでもリベリスタたちの手助けをしようとしたのか。
 雷獣が、獲物を代える。狙いにく人間よりも、狙いやすい管狐。蒼い電気の軌跡を描き、雷獣が管狐に迫り寄る。顎を限界まで開き、牙からは紫電を迸らせる。そのまま、管狐に食いつこうとした、その瞬間。
「う……あぁ!!」
 雷獣と管狐の間に、ミリィが駆けこんできた。雷獣の牙が肩の脇腹に突き刺さった。身体に直接電流を流しこまれ、ミリィの身体が大きく跳ねる。
「目、を」
 ミリィが呻くように、そう言った。振るえる手が、雷獣の頭に伸びる。そっと雷獣に触れた指先に、電気が流れ、皮膚が焦げる匂いが辺りに漂った。
「目を、曇らせないで。いつもの貴方にもどって……。ここは、貴方の住む世界ではないの」
 それだけ言うと、ミリィの身体から力が抜けた。目を閉じ、首が倒れる。意識を失ったのだ。雷獣は、一瞬の躊躇を見せたものの、ミリィの身体を地面に吐き捨てた。
 鋭い瞳は、管狐に向く。そんな雷獣の頭上から、月野木が急降下。手にした大鎌を雷獣の眼前へと振り下ろした……。
 所が、一瞬のうちに月野木の視界から雷獣が消えた。あれ? と、目を丸くする月野木。
「後ろ! 瞬間移動です!」
 縫うようにして林を駆けながら風見が叫ぶ。その後ろから、須賀とヘキサも続いている。風見の声に従い、背後を振り向く月野木だが、遅い。電光石火の勢い、雷獣が跳び、大鎌をどこか遠くへ弾き飛ばす。
「あのですね! ぼくらの話を!」
 と、武器を失った月野木が説得にかかる雷獣は聞く耳持たないで、襲い掛かる。それを必死でかわしながらも、月野木は手を前に降参のポーズ。
「聞いてくださあうっち! 痛い! 痛い! ちょ、ごめんなさい!」
 牙が腕を掠めていく。いつの間にか、管狐の姿もない。代わりに、風見、ヘキサ、須賀の3人が戦場に復帰する。二階堂は、アンジェリカと伊吹の治療中のようだ。
「武器、とってきてください!」
 風見が叫ぶ。それに従って、月野木が後ろへ下がった。追撃をかける雷獣。しかし、間にヘキサが割って入る。脚甲で牙を受け止め、にやりと笑った。
「手加減いらねーよ、遠慮なくきやがれ! そんでスッキリしちまえっ!」
「緊急とはいえ、少々手荒い対応になってしまい申しわけない」
 続いて、伸ばされた雷獣の前脚を須賀の刀が受け止めた。
 2人の後ろで、風見が光の矢を作り、構える。
「このままでは、お互いにとってよくないことになります」
 そう言って、風見が光の矢を放つ。矢は、真っすぐに雷獣へと迫る。咄嗟に瞬間移動で背後へと下がる雷獣。警戒心が勝ったのか、雷獣は大きく後ろへと跳ねた。丁度、地面に転がったフライパンの真上に着地する。金属に引かれたのであろう。
 雷獣は、がばりとその巨大な口を限界まで開く。バチバチと、全身の電気が口腔内に集まっていく。一瞬ごとに、口の中に溜まる雷の、その光量が増していった。
 雷撃砲の発動準備である。その雷の量を見て、ぞっと顔色を蒼くする月野木。そんな彼の足元に、次々と管狐が集まって来た。
「お前ら……」
 管狐の背には、月野木のデスサイズ。どうやら、拾ってきてくれたらしい。愛用の大鎌を受け取り、月野木は頷く。一歩前に出て、鎌を大上段に構えた。
 同様に、須賀も前へ出る。
 次の瞬間、雷獣の口から馬鹿でかい雷の塊が撃ち出された。轟音、閃光、電気と熱気を振りまいて、林の木々をなぎ倒し、焼きつくしながら雷が迫る。
「おおおお!!」
 大上段から、月野木の大鎌が振り下ろされる。
「はっ!」
 風を切るような速度で、須賀の2刀が振り抜かれた。
 3つの刃と、大容量の雷が激突し、爆ぜる。
 ドン、と地面が抉れる音がした。
 
 濛々と立ち込める煙が晴れる。陥没した地面の中心に立っていたのは、荒い息を吐く月野木と須賀の2人だった。げほ、っと焦げくさい咳を1つ。2人は膝に手を付いて、盛大なため息を吐いた。
 そんな彼らの真っ正面には、地面に倒れた雷獣の姿。その身体は、先ほどまでに比べ、半分以下ほどまで小さくなっていた。そんな雷獣の周りに、管狐が集まっている。
 それは、まるで雷獣のことを心配しているかのようで……。
「なんて、可愛らしい……」
 キイキイと鳴いて、雷獣を囲む管狐を、二階堂がうっとりとした目で見ていた。

●もさもさと雷獣
「お肉……食べます? え? 触らせてくれるんですか?」
 傷が深いのか、どこかグッタリとしたミリィが雷獣の口元に肉を運ぶ。雷獣は、それを咥え嬉しそうに咀嚼した。ミリィは現在、雷獣に寄りかかって、身体を休めている。首の周りには、2匹の管狐が巻き付いていた。
 そんなミリィを横目に、伊吹は両手で管狐をぽむぽむと突いていた。それから、ふむ、と顎に手をやる。
「枕とかによさそうっすね、これ」
 と、呟いた。ひんやりしていて、もさもさと手触りもよい。きっと枕にしたならよく眠れることだろう。
 同じように、ヘキサも管狐たちと戯れている。ペットフードを分け与えつつ、管狐を抱きしめる。
「うわー! モフモフだー! すげー! ひんやり気持ちぃー!」
 猫っ可愛がり、とでも言うのだろうか。これでもかと言うほど、撫でまわしていた。なんとなく、迷惑そうに見えなくもないが、一応の恩義を感じているのだろう。管狐たちは逃げることなく、されるがままになっていた。
「ねぇねぇかっこいいね! 雷って美味しい?」
 月野木は、雷獣に語りかけている。過剰に蓄積していた電気を放出した雷獣は、意識を失い倒れた。その後、管狐たちが運んで、現在ディメンションホールの傍で一時の休息を味わっている。意識を取り戻した雷獣は、どういうわけか酷く大人しかった。元々穏やかな性格なのだろう。雷獣と管狐、しばしの間、キイキイガオガオと獣同士なにやら話し合っていたが、どうやら仲直りできたようだ。
 管狐にしても、攻撃の意思が無い相手とは事を構えるつもりはなく、むしろ友好的な性格をしているらしい。なにはともあれ、喧嘩は終わり。大団円である。
「あ……痺れますね」
「本当だ。こんな手触りなんだね」
 風見とアンジェリカは、雷獣に抱きついていた。蒼い毛の手触りは、管狐に比べると決して良好とは言い難い。しかし、毛に蓄えられた微電流がまるでマッサージ機の振動のようで、狐とはまた別の意味でなかなかに気持ちよかった。
 その頃……。
「あ、私も出来れば管狐さんを触りたいのですゥ……。あ、ちょっとだけ触ってもいいですか?」
 数十匹のひんやりしたもさもさに包まれ、二階堂は夢の中にいた。幸せそうに緩みきった顔で、むにゃむにゃと寝ごとを紡ぐ。極楽極楽、とはこういうことであろうか……。
「それじゃあ、そろそろ送り返そう。これで、おしまいだ」
 ブレイクゲートの用意を整えた須賀が、そう宣言する。管狐と雷獣は、促されるままに続々とゲートを潜っていった。楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。
 最後の1匹が見えなくなるまで、8人はじっと獣たちの後姿を見送っていた……。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。依頼は成功です。
管狐、雷獣ともに無事、もとの世界に送り返すことに成功しました。
異世界の獣との交流、いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけたのなら、幸いです。

それでは、この辺りで失礼します。
縁があったら、また別の依頼でお会いしましょう。