●荒野に息づくもの ズシィン、と。音と共に大地が揺れる。 地震ではなかった。 そもそも此の世界に、地震があるのかは分からない。 揺れの原因は、荒野へと着地した巨大な蛇だった。 胴は大人2,3人が手を繋いで届くかどうかというくらいに太く、長さの方もその太さに相応しい。 皮膜のような多数の翼を持つ大蛇は、今まで飛ぶために使っていた十三の翼を揺らしながら辺りを見回した。 その巨大な目が、荒野の彼方……此の地と緑あふれる大地の境界近くに存在する何かを、捉える。 威嚇するような、空気が漏れるような音が……無数の牙が並ぶ大蛇の口から発された。 翼が再び大きく広げられ、空気を孕む。 巨大な蛇は空を泳ぐように体をくねらせながら、羽ばたきながら。 リベリスタたちが設営したアークの橋頭堡へと近付き始めた。 ●十三翼の大蛇 気付かぬうちに接近された訳ではない。 その大きさゆえに、離れているのに近くにいると錯覚しただけだ。 飛行しての警戒中に『それ』を発見し皆へと報告した天風・亘(ID:BNE001105)は、すぐにシェルンにも確認を取った。 「おそらく、十三翼の大蛇と呼んでいる存在だと思います」 話を聞いたフェリエ達の長、シェルンはリベリスタたちに向かって説明した。 「6対1余り……十三の翼を持った巨大な蛇の怪物ですので、そのように呼んでいるのです」 十三の翼を使って空を飛び、あるいは蛇のように地を這って荒れ果てた大地を彷徨う巨大な怪物は、見た目通り強暴で危険な存在のようである。 戦う時には着地し、獲物に咬みついたり呑み込もうとしたり、その巨大な体で体当たりしてきたりもするらしい。 翼をめちゃくちゃに振り回して周囲を薙ぎ払うように攻撃したりすることもあるようだ。 巨体から繰り出される攻撃は一撃一撃が強力。そして体を覆う鱗は弱い攻撃など弾いてしまうくらいの防御力を持っている。 この怪物は、現在アークが設営し増築中の橋頭堡に向かって接近しているようだ。 「……以上が、私の確認できた事象です」 あまり詳しく調査できずにすみませんと、シェルンは申し訳なさそうに口にした。 世界樹を通してラ・ル・カーナの様々な事柄を認識する事ができる彼女だが、現在認識できる事象は精度や明瞭性が以前と比べて劣っているようである。 「危険な怪物です。どうか、充分にお気を付けて」 シェルンは心配気な顔でそう言って、リベリスタたちに深々と頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月18日(水)22:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●異世界ラ・ル・カーナにて 「空飛ぶ十三翼の大蛇……ふふ、ファンタジーみたいでつい熱くなってしまいます」 『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)は少し興奮した様子でそう言ってから……でも、と気持ちを引き締めた。 「皆で作り上げた大切な橋頭堡には絶対に近づけさせませんよ」 相手は巨大で危険な存在、しかも能力がハッキリとは分からない。 油断は禁物だ。 「こ、こりゃ……立派な蛇ちゃん、だな……!」 (弟分が何かを見つけたと聞いて来てみりゃ……) 呟いてから、自分に渇を入れるように。 『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)は自身の頬をぺしぺしと叩いた。 (ま、まあいくら強そうでも弟分の前でカッコ悪いところは見せられない) 「なるべく素早く仕留めてやる。いくぜ!」 気合を入れるように掛け声をかける。 (六対一余りの翼を持つ大蛇て……ロマンて言うか、凶悪ていうか) 「こんなん関係なければカッコイイな、とかだったのかもしれないがね」 (神話には世界をとぐろで巻いた上に自分の尾をくわえる程の大蛇がいるていうけど、まあ、ある種似たようなものか) 遠目に大蛇を確認しながら、『冥滅騎』神城・涼(BNE001343)も呟いた。 (俺の右腕が、こう、疼く気がするけれども) 「アレだな。まあ、真面目にカッコ良く全力でぶっ倒してやるぜ!」 同じく気合を入れるように口にする。 「13の翼を持つ大蛇とは、流石に圧巻です」 『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)も感嘆した様子で口にした。 一方で、『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)はその巨大な姿を眺めながら首を傾げてみせる。 (ふむ、十三翼の大蛇とは――スッキリせんのぅ) 「中途半端な余りの翼は何じゃろう。垂直尾翼かぇ?」 瑠琵と同じように、京一もその翼の数に疑問を感じていた。 (どうでも良いことですが、何故、13という奇数なのでしょうね) 「……まあ、そんなことは些細なことでしょう」 考えたところで答えが見つかる訳ではない。 もし見つかるとしたら……それは戦いの最中だろうか? 「まずは敵を倒すことです」 京一の言葉に続けるように、瑠琵が口にした。 「折角じゃから皮剥いでカレーの具するのじゃ。流石のわらわもミミズ肉には食指が動かなくてのぅ」 大蛇を撃破して拠点の食糧事情を改善しようというのが瑠琵の考えである。 「所詮、この世は弱肉強食。尊い犠牲となるが良い!」 そう大蛇に告げながら、彼女は天元・七星公主を構える。 「でっかい敵だねぇ……!」 (こういうの見ると異世界に来たって実感できる気がするよ) 羽柴 双葉(BNE003837)も大蛇を眺めながら、素直な感想を口にした。 「日本じゃなくて良かったっすね」 巨体を眺めつつ、『持たざる者』伊吹 マコト(BNE003900)は色々と想像を巡らせてしまう。 「こんなデカい奴を相手にするなんて、向こうじゃ色々考えなくちゃいけないっすからね」 双葉の方はというと、唯々その大きさに、現実離れした存在感に圧倒されていた。 (こんなのと戦うなんて漫画みたい……なんて暢気な事言ってる場合でもない、かな?) 「きっちり落としてあげないとねっ」 気を引き締めるように口にして。 「オヤウカムイー? 羽の生えた蛇って言ってもケツアルコアトルは羽はいっぱいはないしねー」 オカルト研究会に所属している『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)は、近付いてくる大蛇を眺め自分の知識と照らし合わせたりしながら呟いた。 もしあの大蛇が橋頭堡に辿り着くような事になれば……被害がないという訳にはいかないだろう。 (バイデンのカチコミも近そうだし、せっかく作ったの壊されたくないからねー) 構えを取ると岬は、相棒たる黒のハルバードに呼びかけた。 「近付かれる前にきっちり落すぜ―、アンタレス!」 ●戦機、近付く 巨大な存在が接近してくるのを確認しながら、リベリスタたちは戦闘態勢を整える。 今回は幸いな事に、見通しの良い場所で、極めて巨大な存在が、ある程度一定の速度で接近してきたのだ。 タイミングを計るのはそれほど困難な事ではなかった。 亘が全身のギアを速度へと最適化し、双葉は詠唱によって魔力を高め増幅させる。 「様子見なんてしてる間にやられかねないしな」 涼も最初から自身のギアを、トップスピードへと切り換えた。 『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)は魔力を循環活性化させたのち、エネルギーを防御へと特化させ完全な防御態勢を整える。 「上から来るぞ! 気をつけろー!」 岬は大きな声で仲間たちに呼びかけながら、全身に破壊の闘気を漲らせた。 京一は先ず翼の加護を皆に使用し、続いて守護結界を張り巡らす。 瑠琵は式によって自身を援護させる為の鬼人を創り出し、木蓮は集中によって射撃の為の感覚を研ぎ澄ます。 範囲を薙ぎ払う攻撃を警戒して散開すると、アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)は効率的攻撃動作を共有するネットワークを造り上げ、戦況を分析し主導権を握るための分析力や判断能力を強化した。 マコトも味方の回復範囲に注意しつつ散開し、こちらは防御の為のネットワークを構築する。 続いて戦場全体を把握する為の認識能力を、視野を、強化拡大させた。 戦闘態勢を整えたリベリスタたちに向かって、大蛇は十三の翼を羽ばたかせながら接近してくる。 近付くだけで風音が聞こえ、空気が不自然な流れを作った。 最初はアークの橋頭堡を目指していたその存在は、その途中で獲物を……リベリスタたちを発見する。 「おい、そこの翼の付いた蛇! ここまで来といてずっと狙う側でいられると思うなよ!」 大蛇から見えやすい位置にと移動しながら木蓮は挑発するように声をかけた。 一方岬はアンタレスを振るって生みだした真空の刃を、大蛇に向かって叩き込む。 「壁に行くより此方来て遊ぼうぜ―」 届きはしなかったものの、大蛇は応じるかのように威嚇の音を発し、羽ばたきを止め滑空するように高度を落とした。 橋頭堡に向かわれた場合の事を色々と考えていた木蓮は、内心で安堵の息をもらす。 こうなれば、橋頭堡への被害は心配しなくて良いだろう。 後はただ、戦うだけである。 着地と同時に大きな音が響き、地面が激しく揺れ土ぼこりが舞いあがった。 そして、戦いが始まった。 ●戦いの始まり 亘は高速で蛇の正面ギリギリまで接近すると、大きく羽ばたき高度をあげてみせた。 一瞬でも敵の気を自分へと引ければ上等、そんな心算である。 自分は風だ、ここが異世界でも関係ない。 風は何処にでも吹き、そして誰よりも自由で誰よりも速く! 「さぁ、異世界の大蛇よ。自分についてこれますか?」 大蛇が彼の動きに気を取られた次の瞬間、低く駆けた涼がすれ違いざまに無数の斬撃を叩き込んだ。 「いっくよー!」 続くように双葉は属性の異なる魔術を組み上げ、四色の魔光を創り出す。 放たれた光は大蛇を直撃し、その巨体を傷付けながら不浄の力を注ぎ込んだ。 まだ回復は不要と判断したカイは、全身の膂力を籠めた一撃を翼に向けて放つ。 その攻撃の直後、大蛇が動いた。 鋭い牙が無数に生えた口が亘に向けられ、全ての翼が狂ったように、辺りを薙ぎ払うように振り回される。 すさまじい勢いで閉じられる危険な顎から亘は何とか逃れ、涼も嵐のような翼の群を機敏な動きで回避した。 岬はその翼の嵐が薙ぎ払った空間を意識し、ギリギリ当たらないくらいの距離に位置を取ると、再び黒のハルバードで真空波を放つ。 京一は確認するように、多重展開させた呪印で束縛を試みてみた。 恐らくは直撃しているらしいのだが、大蛇の動きは変わらぬように見える。 巨大さ故か、あるいは何らかの耐性によってか、そういった能力を持っているのかもしれない。 続いて動いた瑠琵は前衛として大蛇の正面に立つと、符術で式神のカラスを作りだした。 直撃を受けた大蛇は式の力も受けたらしく、怒りに燃えた巨大な瞳を瑠琵へと向け、唸るような威嚇音を発する。 木蓮は回復の範囲外へ出ないように注意しつつ、仲間との間に距離を取るようにして散開した。 30口径の半自動小銃に魔力を注ぐ。 力の付与によって貫通力を増した銃弾は大蛇を傷付け、その身から止まらぬ血を流させた。 アルフォンソは神秘の力によって閃光弾を作り出し、大蛇へと投擲する。 光は大蛇にショックを与え動きを鈍らせはしたものの、こちらも能動的な動きを封じるには至らなかった。 マコトは大蛇の様子を観察しつつ、レールガンの照準を大蛇へと合わせた。 集中し、敵の動きはある程度把握している。 「堅い鱗持ってるとか言われてる奴に、真っ向勝負で向かうほど……・」 弾丸も詰め、確認した。後は…… 「……真っ当な性格してなくってね」 放たれた弾丸が大蛇へと命中し、その巨体を傷つける。 それでも……リベリスタたちの攻撃を受けつつも大蛇は怯む様子もなく、さらに興奮した様子で。 大地を揺らしながら、威嚇音を発した。 ●未知なる巨獣 翼の動き、敵の視線、尻尾の先…敵の攻撃に関係しそうな部分の動きを、マコトは超直観を活かして観察する。 そして入手した情報はドクトリンを応用して皆へと展開する。 「ま、経験で劣るのは分かってるし、力に頼らない貢献をね……君も何か気付いた事有ったら教えてね」 言い終えてから、視線に気付いて。 「……独り言っす。気にしないでいいっすよ」 弁明するように口にして、マコトは観察しながらの戦いを続行する。 瑠琵も式の鴉で大蛇を牽制しながら、巨獣の攻撃の癖や体捌き、威嚇音などを観察していた。 とくに引き付けに成功した時は、攻撃は考えず防御に専念して、耐え凌ぐ事を第一に戦闘を行っていく。 そして体当たりや薙ぎ払いを行いそうと気付いた時は、仲間たちに注意を促す。 大蛇はその巨体に相応しい攻撃力を持っていた。 直撃ではなく体の一部をかすめるような攻撃を受けただけで、半身をもぎ取られるような衝撃があったのだ。 今回のメンバーの中では決して耐久力に劣る訳でない瑠琵でそれである。 直撃を受ければ半数近くの者が、一撃で倒される可能性が……ある。 もっとも、その直撃というのは……ある程度の回避能力さえ備えていれば、簡単に受ける事はなさそうだった。 牙による咬み付きや体当たりは直線的だし、翼による薙ぎ払いも翼の付け根を支点に横に薙いだり円状に振り回したりするだけである。 もちろんその速さはかなりの物だったが、フェイント的なものは殆んどなかった。 彼女が攻撃を受けたのも、これまでで一撃だけである。 偶然による部分も大きかった。 とはいえもちろん油断など誰もしない。 亘も注意深く大蛇の動きを……全体的なもの以外にも、十三本目の翼などに注意しながら戦闘を続けていた。 確認するように翼に攻撃も仕掛けてみたが、普通に攻撃を行った時と特に違いは見られない。 仲間たちと連絡を取り合い、情報を共有し、連携しての戦いを行ってはいるものの……大蛇の体力に今のところ底は見えなかった。 タフな上に、異常からの回復も早いように思われる。 それでも、異常を完全に無効化するという訳ではなさそうだった。 毒や出血等も少しずつではあっても、大蛇の体力を確実に減らしているようである。 その体力を、完全に断つために。 亘は可能な限り蛇の上で戦闘し、敵の撹乱を行い続けた。 相手の動きを予測しながら、低空で翼を羽ばたかす。 体勢を崩さぬように意識しつつ、大蛇の体を蹴って方向転換を行う等その巨体を足場に自身の位置を調整して。 風のような刃から繰り出された光の飛沫を散らす無数の斬撃が、大蛇を切り裂く。 涼も高速の連続斬撃から、急に速度を変えるようにして幻惑する動きで大蛇へと斬り付けた。 動から静、緩急のついた攻撃が大蛇を翻弄する。 もっともダメージそのものに関しては、大蛇は気にした様子もなかった。 その姿にリベリスタたちは……戦いの長期化を、確信した。 ●限界を超えて 「いっけー!」 双葉が放ったマジックミサイルが大蛇を直撃する。 (耐久力高そうだし、長期戦の事を考えるとこっちのほうがいいよね) 燃費というものを意識しそう判断した双葉は、攻撃時も味方の攻撃を避けた時を狙う等、連携を意識して戦っていた。 動き等も出来るだけ派手に、敵の目を引くようにと意識する。 そのまま少しでも橋頭堡とは別の方角に、大蛇を引き離せたら……そう考えての事である。 そこまでは出来ずとも、意識を自分たちの側に向けさせられれば。 「こっちこっち! 鬼さんこちらー!」 もちろん回復の範囲からは外れないように、そしてなるべく危険がないようにと意識して。 掠るような一撃だったとしても、恐らく自分は耐え切れない。 緊張しつつも臆さずに、彼女は後衛として戦い続ける。 瑠琵と交代するように前進した岬は、そのままアンタレスを振るって真空の刃で攻撃し続けた。 接近しても使う能力は変わらない。 此の技なら、たぶんアークで一番という自負もあった。使った回数も、威力も。 彼女はそのままアンタレスを振るって、できるだけ片側の翼を狙い続ける。 薙ぎ払いが少しでも避けやすくなるようにと考えて。 幸いというべきか、今のところ大蛇は橋頭堡の方角に興味を示すことなく、ひたすらリベリスタたちを攻撃し続けていた。 一撃一撃がただの力任せでありながら、直撃すれば文字通り必殺となる攻撃。 その攻撃が掠め傷を負った仲間を、京一はカイと協力して癒していく。 戦況を確認し、皆に状況の報告や指示等を出しながら、使用した能力の持続時間にも注意をして、彼は戦闘を継続していた。 もっとも守りの方はマコトに任せられたので、時を意識するのは翼の加護の方だけで済む。 続く木蓮は攻撃を続けながら機を窺い、チャンスがあれば大蛇の翼を狙撃していた。 そして大蛇が亘を追いかけるようにして頭部を下げた瞬間……その動きを推測し、魔弾で巨大な眼球を狙い撃つ。 直撃はしなかったものの傷付いた大蛇は怒るような咆哮を発し、木蓮の方へと視線を向けた。 巨大な生き物の前進は、数人で妨げる事は不可能だった。 鋭い牙の生えた口が、木蓮の眼前で大きく開かれる。 完全には回避し切れず、牙の一部によって彼女は半身を抉られるような深い傷を負った。 即座に瑠琵が癒しの符を打ち、傷付いた彼女を回復させる。 周囲を巻き込むように振るわれた翼による薙ぎ払いに巻き込まれかけた双葉を、アルフォンソが庇う。 危険な場面は幾度となくあったが、リベリスタたちは何とか窮地を脱し続けた。 そして、彼ら彼女らの力が限界に近付き始めた頃……大蛇の体力にも限界が見え始めた。 飛び立つかのように大きく翼を広げた大蛇に、幾人かがそれを阻止すべく襲いかかる。 岬は大蛇の背に飛び乗ると、下に叩き落とすようにエネルギーを籠めたアンタレスを叩き込んだ。 瑠琵も能力を活用して大蛇の体を足場にして動き、鴉の符で式を打つ。 それでも飛び立とうとする大蛇の翼へと亘が銀の刀身から斬撃を放った。 限界に近付いた涼も、寧ろそれを力に変えて真紅の刃を振るう。 「……マジでぶっ倒してやるぜ!」 撃退できればと考えていた者もいたが、こうなるともう総力戦だった。 大蛇は狂ったように翼を振り回し、鋭い牙でリベリスタたちを引き裂き磨り潰そうとする。 その攻撃を受け、残骸のように為りかけながらもリベリスタたちは運命の加護を以て戦い続けた。 作戦も何もないような、只々、泥沼のような戦いが続き……そして、終わる。 まるで猛獣にでも襲われたかのような、残骸となった大蛇の傍らで。 2人は倒れながらも息をしていて、6人は満身創痍ながらも立っていて。 こうして一体の怪物はリベリスタたちの手によって、文字通り死闘の末に打ち倒された。 ●そして、橋頭堡へ 京一は心配げに皆の状態を確認した。 彼自身の傷も決して軽くはないが、直接大蛇に取り付き無茶をした者たちに比べれば重くはない。 「怪物とはいえ自然の生き物だ、罪はないのにスマンな……」 木蓮は倒れた大蛇が眠れるようにと祈りを捧げる。 「数分の出来事だったっすけど、殺し殺されってのは結構疲れるっすね……」 これから慣れて行かなくちゃいけないっすけど。 そう言ってから、マコトは思い出したように確認した。 「……ところで、死体どうするっすかね」 「……埋めてあげたいけど、無理かな?」 おっかなびっくりという様子で大蛇の姿を近くで見ていた双葉がそう言った直後。 「鱗や骨は資材、肉は食料、骨の髄まで余さず使うのじゃ」 「蛇って鶏肉みたいな味すんだってねー、体で奢れ―」 酷い傷を感じさせない態度で、瑠琵と岬が容赦なく発言した。 実際にどのようにするか……兎角、どうするにしても、この人数では如何にもしようがない。 拠点に戻って話してみようという結論を出して、リベリスタたちは帰還の途についた。 視線の先には、何事もなく無事な……アークの橋頭堡が映る。 彼ら彼女らの、此の世界での居場所は……揺らぐことなく、頼もしく……荒野の中に聳え立っていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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