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博物館魔法戦

●魔術書“ヘパイストスの召使い”
 黒いローブの男が、燃え広がる炎を前にして高笑いを浮かべている。炎に照らされたその顔は、邪悪な者特有の陰湿な暗さがこびり付いており、彼の本質――フィクサードであることを表していた。その手には炎、そして現在進行形に燃え上がっている屋敷から奪い取った奇妙な本。この本は魔術書と呼ばれるものであり、つまりはアーティファクトである。それを手に入れるの為に、彼はこの屋敷を襲ったのだ。
「ハハハ、ハハハ! ようやく手に入れたぞ!」
 黒ローブのフィクサードは手の炎を消し、人の顔を羊皮紙で再現したような表紙に目を落とす。禍々しいその表紙には、見慣れぬ言語の文字らしきものも踊っている。一個の生命体のような印象を与える表紙を前に、男は歓喜に震えていた。これこそが、探し求めていた“本物”だ。
「ど、どれ。さっそく中身を拝見させてもらおう……」
 彼は恐る恐るページをめくり、未知の言葉、未知の文体で書かれている中身をゆっくりと読み進めていく。本を読むのに明かりは必要であるが、それについては十分だ。これだけ炎が燃え広がっているのだから。
「ヘパイストスの召使い」
 それが、この魔術書のタイトル。なぜ、未知の言語で書かれているそれが分かったのかといえば、男の頭の中に直感に近い確信が浮かんだからだ。それは何故か。
「おお、読める。読めるぞ!」
 この魔術書は、その未知の言語を解読する力をこの男に与えたのである。それだけではない、魔術書は男に更なる力を与える。
「火吹き山の怒りよ、この指先に宿りて獄炎となり、ドラゴンの吐息の如き、炎の矢を顕現せん。フレア・アロー……!」
 興奮しながら、魔術書に書かれていた術式を腕の中で組み上げて、さっそくその力を試した。彼自身が持っていた炎の力はアーティファクトによって増強され、その結果として生み出された獄炎の矢は、炎ごと屋敷を貫き、屋敷を完全に崩壊させた。
 素晴らしい威力だと実感を得ながら、男はその場から離れ始める。次に行くべき場所も、魔術書が教えてくる。
「おお、分かった! 分かったぞ! お前の言うとおりに動こう!」
 魔術書の意のままに、黒いローブのフィクサードは動く。彼は不思議とそれが心地良いものだと思えたし、自然な行動だと感じる。
「魔法名“パンドラ061”。ヘパイストスの召使いの、下巻を回収する」
 そして、心の中に湧き上がる衝動に従いそう名乗った。この瞬間から彼はパンドラ061となったのである。
 そんな彼の顔には、邪悪さは消えていた。代わりに、機械のように動くギョロリとした眼がある。

●魔法を納めるミュージアム
 アーティファクトに心を魅入られ、そのアーティファクトに心を乗っ取られたフィクサードの姿を見ながら、リベリスタたちは集合をかけた『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の言葉を待った。
「今回は、“ヘパイストスの召使い下巻”と呼ばれるアーティファクトの回収と防衛が任務。場所は校外にある博物館。普段は展示物として置かれているから、アークもこれの入手のために交渉をしていたの。そのままなら時間だけの問題だったんだけど、事情が変わった。このフィクサード、“パンドラ061”が狙っているの」
 モニターは変わり、博物館の内部を映し出した。ドーム状の展示室には、円を描くようにして展示物が並べられており、その中央にはここに世界各国の魔術関係のものを集めたことを示すプレートが置かれている。どれも眉唾なものばかりだが、その円の一角に“ヘパイストスの召使い”下巻が置かれている。それはやはり羊皮紙で表紙が作られており、禍々しいという言葉が似合う。
「万華鏡システムの力で、夜中に襲撃されることが分かった。あなたたちには、このヘパイストスの召使い下巻を守りながら、パンドラ061を倒し、彼の持つヘパイストスの召使い上巻を回収して欲しい」
 モニターには更にデータが追加される。予想される襲撃の日、“たまたま当直だったためにフィクサード殺されてしまう予定”の警備員のデータだ。筋肉質で中背、豪快な性格で酒好き、賭けごとが好きで同じぐらい巨乳が好きな独身中年男性。彼を何とか巻き込まないように戦いの場を整えねばならないようだ。とはいえ、ちょっと細かいデータな気もする。
「パンドラ061は、フレア・アローという独自のスキルを使うよ。命中には難があるけど、強力な遠距離攻撃。本来なら、それほどの威力を持たないんだけど、アーティファクトの力によって増強されているの。油断しないようにね」
 どうやら、敵は人を殺すという結果を導く魔術師らしい。その魔術を打ち破り、生命ある未来を導くのはリベリスタの仕事だろう。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:nozoki  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年05月29日(日)23:26
 魔法の詠唱は心の奥底を揺さぶる不思議な言葉。
 効能は人によって様々ですが、少なくとも私は震えます。そんなnozokiです。

●勝利条件
 “ヘパイストスの召使い下巻”を守りながら、フィクサード“パンドラ061”を倒し、彼が持つ“ヘパイストスの召使い上巻”を回収する。

●舞台
 真夜中の博物館内です。人気はないため、下記の警備員とフィクサード以外の人目は結界を張れば問題ないでしょう。
 また電源は生きているため、電気を付けば照明は問題ありません。
 魔術書ヘパイストスの召使いが置かれている部屋の広さはそこそこあるため、後衛が若干前衛に近くなる以外の制約はありません。

●フィクサード“パンドラ061”
 魔術書を持つ黒いローブの男です。魔法や魔術というものに惹かれており、それを行使することに悦びを覚えるタイプであり、そして厄介なことに人の迷惑を顧みない性格をしています。
 フレア・アローという炎の矢を放つ独自のスキルを使います。このスキルはアーティファクトによって威力が増強されています。

●アーティファクト
 不気味な魔術書、“ヘパイストスの召使い”です。上巻と下巻のふたつが存在します。
 上巻と下巻が揃ってしまった時、何が起こるのかは誰にも分かりません。

●警備員の中年男性
 仕事への熱意がそこそこあるため、もし結界が張られていても中に入って来てしまう独身中年男性です。
 彼を巻き込まないためには、何らかの方法で気をそらさせるか、動けなくする必要があります。
 無類の酒好き、賭けごと好き、巨乳好きです。

 ところで、一部の方は昔のノートの奥底に魔法の詠唱が眠っていたりしますよね。
 ……いえ、他意はないです。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
桔梗・エルム・十文字(BNE001542)
クロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
ナイトクリーク
御津代 鉅(BNE001657)
ホーリーメイガス
秋月・瞳(BNE001876)
マグメイガス
イーゼリット・イシュター(BNE001996)
スターサジタリー
エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)
ホーリーメイガス
ゼルマ・フォン・ハルトマン(BNE002425)
プロアデプト
アシュレイ・セルマ・オールストレーム(BNE002429)

●男って単純だ
 男は、いつものように警備室のモニターを見ていた。
 モニターに指差し確認をして「今日も異常なし」と呟くのは彼の日課になっていた。
 夜の博物館を一人で守る、という仕事は男の予想以上に大変で、常に人手が足りずに忙しい。しかし、忙しいということはやりがいもあるということで、男はこの仕事が好きであった。
 そんな男は今日も見回りするかと意気込むが、そこで出鼻を挫くように機械的な呼び鈴の音が鳴る。それはピンポーン、ピンポーンと連打され、焦燥感を感じさせた。
 どうやら、異常なしとはいかないようである。男はモニターの画面を切り替えて、その姿を見た。
 男はそれを見た瞬間、ドキリとした。そこには外国人らしい美人の女性がふたり、それも彼の好みにマッチする、スタイルの良い女性が並んでいるではないか。モニター越しによく見ると、そのふたりは揃って、困ったような表情を浮かべている。男は、助けてあげたい、と思った。……それが、リベリスタたちの作戦とも知らずに。
 その外国人らしい女性ふたり組の片方はお嬢様のようなドレスに身を包んだ『生き人形』アシュレイ・セルマ・オールストレーム(BNE002429)。もう片方は長い銀の髪に、どこか人を射抜くような眼光を持つ『エーデルワイス』エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)である。
「夜分遅くに申し訳ありません。実は私たち……博物館を見学したくてここまで来たのです。でも、夜になっちゃったの」
「どこも宿がいっぱいで、困っているんだ」
 エルフリーデとアシュレイが用意していたセリフを演目のように披露していく。エルフリーデの貴族然とした凛とした立ち振る舞いは未知の国でも負けないようにしている女性に見え、アシュレイの虚ろな目は戸惑っている女性のようにも見える。実際、男にはそう見えた。だから、男は鼻息を抑えながら、あくまでも冷静にと自分に言い聞かせながら、彼女たちを招き入れたのである。
 だけど、女性ふたりの後からひとりの男性が来ているのを見て、男は少し落胆した。彼女たちに言わせれば、連れであるという。
 そうやって三人目として博物館に入った『寝る寝る寝るね』内薙・智夫(BNE001581)は、ちょっと複雑な表情をしていた。男として、共感……できるような、できないような。

 ふたりの女性の願いもあって、男は展示室近くの倉庫まで来ていた。アシュレイは話の流れを制御し、男の趣味がギャンブルであることを引き出すと、ここぞとばかりに喜んで、挑発するように豊満な体を見せつけながら、用意していた台詞で耳を撫でる。
「おじさんを気に入ってしまってね。どうだろう、一つ私と勝負といかないか? チップは良いお酒、それと私」
「ちょうどお酒を持っていたんだよ。やってみない?」
 先ほどまで眠っていたようにぼうっとしていた智夫が、アシュレイの言葉に合わせて高級そうなラベルが貼られたワインやビールを取り出して見せる。量も質も十分な品だ。
「私も、弱いですけど」
 エルフリーデも続く。
 男は迷った。仕事は中途半端なままだし、しかし彼らの誘いに乗りたいという部分もある。なんといっても質も量もある。
 男はしばし迷った後、誘いに乗った。……そう、質も量も。と、胸元を見ながら。

 アシュレイの超直観と瞬間記憶が活かされた試合運びによって、男はこれまでにないぐらいボロ勝ちをした。そして、男はエルフリーデの酌で浴びるように酒を飲んで、限界を迎えて倒れてしまった。つまりは、酔い潰された。
「ごめんね、警備員さん。でも、大丈夫。僕たちが、何事もなかったようにするから」
 一般人である彼を巻き込まない為の作戦とはいえ、経験の浅い智夫はポーカーフェイスになりきれず、何度も謝りながら男の体をロープで縛っていった。そんな性格だけに、作戦が失敗して殴って気絶させることにならなくてよかったと、内心ホッとしている。
「……これくらいのお詫びはしないとね」
 潰れた男の体に自身の胸を押し当てつつ、エルフリーデは介抱する。それが功を制したのか、男からは安らかな寝息が聞こえてきた。
「男って単純だ」
 ため息。
 智夫の強結界が張り巡らされた博物館内に、仲間たちの足音が聞こえてくる。「異常アリ」はこれからだ。

●禍々しい、守るべきもの
 世界の魔術展示室。各国から集められた魔法書や怪しげなアイテムによって作られた異質な空間。そこに、リベリスタたちは集っている。
(……巨乳好き……鍛え抜いた大胸筋が好きなおじさん……。きっと、仕事熱心が高じて筋肉ラヴになったんだね……)
 天然なセリフを心の中に浮かべながら、『インフィ二ティ・ビート』桔梗・エルム・十文字は小さく頷いてひとり納得していた。
 警備員への対応は作戦通りに成功。そして、急いで魔術書の元に向かった十文字たちは、襲撃に備えるグループだ。
(……魔導書。わたしとは対極に位置するようなアイテムだね。狂った思想の果て、あんな歪んだアーティファクトがわたしを砕ける道理はない)
 十文字は背後にある魔術書を改めて見返す。アーティファクトに分類される、禍々しい表紙を持つ魔術書の下巻。機械化の影響によって体中が変色してしまい、現実感すら遠くなった十文字には、神秘的なそれが遥か遠いどこかからもたらされた物のような気もする。
「魔術書に操られるとはなんとも情けない魔道士じゃのぅ」
 パチパチパチ、とリズムよく博物館の電源を入れながら、『傲然たる癒し』ゼルマ・フォン・ハルトマン(BNE002425)はスタイルのよさ故に着崩れてきた着物を電源を入れていない方の手で直す。どこか余裕たっぷりな態度であるが、守るべき魔術書の周辺に目を配っているところを見るに、彼女なりに思うところがあるようである。
「道具に使われるとは情けないフィクサードだな。まあ、弱いからこそ力を求めたんだろうが本末転倒だ。……こんな力があっても邪魔なだけなのにな」
 己の力を省みるように、『ナイトビジョン』秋月・瞳(BNE001876)の機械化された頭部が揺らめく。力の使い方はそれぞれであろうが、その果てが破壊や暴力を使うフィクサード……しかもアーティファクトに操られているようでは、弱いとしか言いようがない。それは力だけではない、心もまた。
 それにしても、と瞳は特徴的な頭部を回して守るべきアーティファクトを見る。相変わらず禍々しい表紙をしていて、いかにも呪われそうだ。少し気になる。
「ヘパイストスの召使い、ね。すごく興味深い」
 こちらの『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)も気になっているのは同じ。元々読書好きで、インドア派だけに、こうした珍しい本というものとは相性がよいタイプである。
「でも。魅入られるようなものは、ちょっと、ね。あまり打ち勝つ自信はないから」
 顔に影を落として、自嘲する。明らかにやばそうな代物だということは眼に見えているし、それ以上に陰気な自分がそういうものと相性が悪いこともわかる。
「やれやれ……厄介事が多過ぎる」
 そして、魔術書と聞いて頭を抱えているのは『燻る灰』御津代 鉅(BNE001657)だ。この頭の痛みには、これから戦う敵が自信満々に行った魔法の詠唱にも原因があるのだろう。彼も若い頃色々あったのだ。
「……ふー」
 鉅は頭を抱えたままではいけないと、タバコを吸って落ち着こうと、懐からタバコを一本。吸おうと咥えたところで、博物館内は禁煙の文字を見つけて口元からタバコを離した。その瞬間。炎の矢が鉅の目の前を通り過ぎて、タバコに火が付いた。……敵が持つ独自のスキルということだろう。詠唱がなくても使えるのだな、と鉅は思う。鉅のサングラスの奥に光る瞳は、ゆっくりと歩いてきた黒いローブの男と、火気厳禁の文字を見つける。
「やれやれ、だ」
 鉅はその言葉を改めて口の中で転がしながら、ぐしゃり、と手の中で火の付いたタバコを潰す。何にせよ、やりにくい戦いだ。

●対魔法戦
 リベリスタたちは一斉に武器を構えて、それぞれ事前に決めておいたフォーメーションを組んでいく。
 それに対して、いかにも魔法使いといった格好の男は、動きにくそうなローブ姿でありながら素早く動き始める。これも魔術書の力だろうか?
「回収任務に障害発生。即座に排除を開始する」
 まるで自分に言い聞かせるような言葉を機械的に紡ぎながら、魔法使いは口の中で高速に詠唱を開始する。それはとても早口で、魔法使いの彼こと魔法名パンドラ061の指先に炎が素早く灯った。
「地に落ちる星座。天に登る雨。風は地中に潜り、日は夜に瞬く。炎はそこに。フレア・アロー」
 しかもリベリスタたちが事前に知ったものと、詠唱の内容が違う。より深くまで魔術書の力が浸透したのか、それとも趣味か。ともかく、炎の矢を見たリベリスタたちはそれよりも早く動き出した。
「おやおや、よいのか? そこから火を放てばぬしの大事な大事な魔道書が燃えてしまうのではないかえ?」
 まずは、下巻の魔術書を背にしてゼルマがニヤつきながら確かめる。
「排除……、排除……、排除……!!」
 しかし、背にした魔術書も気にしないようにパンドラ061は動いた。指先をゆっくりとゼルマに向けて、発射したのである。
「避けて」
「この気配は、危な――」
 十文字とイーゼリットの声も届かぬ一瞬で、矢はゼルマの体を貫いて、膝を付かせた。
「……この程度の魔術師に負けたとあっては鋼鉄魔女の名折れよ」
 金属繊維をきしませて、フェイトを使い立ち上がる。下巻は素早く回収したので無事だが、魔術書を背にするという作戦は失敗のようだ。天使の息を自身に使いながら、長髪を振り回し、鋭い眼つきで相手を見つめ直す。
「見ておくがいい。これが力の正しい使い方だ」
 その力の危険性を認識しながら、瞳も天使の息を重ねて、ゼルマの体勢を立て直させた。パンドラ061の心の中まで届くよう、瞳にメッセージを載せて。
「黒さん、あんたはその本に操られているんだ。自分自身の力を見せてよ」
 智夫も合わせる。黒さんとはパンドラ061のことだ。番号でも呼びたくないという彼の心が、そういう愛称を作った。
 しかしメッセージは届かず、パンドラ061は再び指先に炎を纏わせて、詠唱を始めた。
「ハントは鮮やかに、かつ正確に」
 そうはさせるかと、1$シュートをエルフリーデのライフルは撃ち出す。撃ち出された一撃は魔術書を狙っていたが……彼は自らの身で庇うようにして、その攻撃を受けた。それほどまでに大事なのか。いや、違う。彼は――。
「黒さん……」
「我紡ぐは四条の魔奏――」
 敵に詠唱を追える暇を与えまいと、イーゼリットは魔曲・四重奏を紡ぎ、四色の連撃を黒いローブに向けて叩き込む。
 しかし、パンドラ061はそれをマントで受けきると、詠唱を完了させた。指先の炎が矢となって、再びリベリスタに襲いかかる!
「わたしは機械、わたしは鋼、誰もわたしを砕けない」
 その矢表に、自己暗示をかけつつ、両手を交差させなから防御姿勢に変えた十文字が立つ。交差した手の両手は地に刺したバスタードソードをしっかりと握り、両足は地の力を借りる為にしっかりと固定する。そしてなによりも気合いを入れた。金と赤のオッドアイに、静かな炎が宿る。
 迸った炎の矢は十文字に直撃。後方まで吹き飛ばすが、十文字は足元を砕きながらも踏ん張った。その勢いで様々な展示物が吹き飛びそうになるが、十文字も展示物も無事であった。
「言ったでしょう? 誰もわたしを砕けないって」
 機械のような顔に、薄い笑みが浮かぶ。ニヤリと。
「たとえ人気がなかろうと壊されていい理由にならんからな」
 身を呈して展示物を守ったのは瞳だ。これが正しい力だと、見せつけるように。
「走狗に用はない、それを寄越せ」
 反撃に回ったのはアシュレイだ。魔術書を興味深く見つめた後に、挑発するように唇を膨らませてから、ピンポイントで狙った。
 攻撃はパンドラ061の右膝に直撃し、右足が下がる。怒りと痛みが混じり合った表情が、パンドラ061に浮かぶ。許すまい、と恨み言のような声も聞こえた。
「そいつは、お前にとって過ぎた玩具だ」
 そこに、ずっとパンドラ061へと近寄っていた鉅が飛び込んだ。そしてタバコ一つ分の至近距離で放たれたギャロッププレイの気糸は、パンドラ061の体に絡んで動きを止めた。
「……ドクンドクンとは鳴らないけれど。わたしの鼓動は続いている。そう、まだ続いている」
 体勢を立て直した十文字が心に手を当てながら、地を踵で弾き、飛び出すと同時にバスタードソードを振り上げる。そして動きを止めたパンドラ061へと振り下ろされるは、メガクラッシュだ。
「もう一曲。いかがかしら?」
 そこにイーゼリットは魔曲・四重奏が再び襲う。ふたつのスキルによって吹き飛んだパンドラ061の体は、戦いの決着へと辿りつく。
「黒さん。本当の名前を教えてよ。パンドラなんとか、っていう名前じゃなくてさ」
 この戦いを締めくくる最後の一撃となったのは、心優しいヘビースマッシュ。智夫のロングソードは、彼の闇を力強く引き裂いた。
「俺の……。俺の、名前……は、――」
 先細りの声が、名を告げる。その顔に、機械じみた顔は消えていて、爽やかな表情が浮かんでいた。
 届いていなかったと思われたリベリスタたちのメッセージは、彼の頭に届いていたのである。
「……オッケー。その名前、覚えた」
 カチャリ、とロングソードが鳴って勝利を知らせた。
 パンドラ061だった男の手から、今回の元凶とも言える魔術書が零れ落ちる。これは十文字が剣の埃を払うようにして振り上げて弾き、手元にキャッチした。
 最後の仕上げ。禍々しい下巻を興味深げに眺めながら、ゼルマは手元の下巻を回収する。
 これで、戦いは終わり。リベリスタたちの勝利だ。
 パンドラ061という魔法使いはここに潰え、リベリスタの手元には二冊の魔術書。派手に散らかしてしまったが、後はアークに任せておけばいいだろう。
 リベリスタたちは倒れている男を背負い、その場から素早く逃げ出す。すべてが終わるには、まだ早い。だから、走り抜ける。ちゃんと自分の足で、大地を蹴って。
 足音が、博物館を駆け抜ける。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 そんなわけで、魔法戦は終わりました。ですが、詠唱のストックはまだまだありますよ! 特にノートの奥に書かれた禁断の……。
 それはともかく、皆様お疲れさまでした。
 相談がうまく纏まっていたようで、チームプレイと連携ができていましたね。お見事でした。

 ということで。お送りしたのは魔法もメカもアクションも、何でも好きなnozokiでした。