●悩みのある奴この指とまれぇいええええええあぁ! エビバディ、カモォン! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月10日(火)22:41 |
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●ファーストフード店『Rumor Rumor』にて 三高平かどっかに、客が『入らない』ことで有名なファーストフード店がある。 自動の上に油性ペンで『手動』と書かれたドアを引き開けると、店員と思しきコスチュームのナビ子がドヤ顔でこう言った。 「りゃっしゃっしぇー! ご注文は何にしゃっしょー」 あなたは全力で腹パンした。 「何やら、人生相談を受けられると聞きまして」 アルフォンソが穏やかな様子で注文カウンターに手を置いた。 やや近い距離で、目線を合わせる二人。 「そもそも、何故人生相談を始めようと思ったんですか。その切欠は?」 「私が世を幸福へと導くメシアだからです」 「……」 「そう言えって、カンペに書いてあったんで」 「カン……ペ……?」 意味の分からないことを言われ硬直するアルフォンソ。 彼を押しのけ、びゃくやがナビ子の前に身を乗り出した。 両手を顔の前で組む。 「告白します! 私は、みはるんの深春ちゃんの深春クェーサーの水着姿が見たいのです! ビキニがいいのです! スク水でも、色は何でも受け入れます、パレオひらひらで麦わら帽子でジャージは負って恥ずかしそうな深春ちゃん水着がどうしたら見れるでしょうか! ねーねーどうしたらいいの!?」 「はい、喋ってる間に用意してみました」 『深春ちゃんまいっちんぐ』と書かれた写真がカウンターに置かれた。 砂浜で膝を折り、貝殻ビキニを身に纏ったグラビアアイドル……の首から上だけを深春ちゃんに挿げ替えたものだった。 「こういうのじゃなくてぇぇぇぇぇっぇぇぇぇ!!」 「いいですか人の妄想とはこうして自己発電することで」 「いえーい、この指とーまったー」 ぴんと立てたナビ子の指をリンシードがしっかりと握りしめた。 そして曲げちゃいけない方向に体重をかける。 「そしてボキィ」 「めらみっ!」 悶絶するナビ子に『はい天使のいきー』とかふーふーしたげつつ。 「あのね、ナビ子さんみたいに明るくなるには、どうしたらいいですか?」 「額に『私を笑わせたら二千円』って書いたらいいよちくしょう!」 「ぐ、具体的にどうも……あ、結婚とかしないんですか?」 「できるように見えるかぁ!」 キシャーと言いながら襲い掛かろうとするナビ子。 その額に二本指を押し当て、悠里がどこか優雅な様子で現れた。 「い、いつからそこに……」 「僕、可愛くて愛しい恋人にして天使ことカルナに……最近コントロールされてる気がするんだよね」 「はい」 64のスケルトンマルチパットを差し出すナビ子。 首を振る悠里。 「最後まで聞いて。別に不満があるわけじゃないよ。ただ情けなくてさ、男としてビシッと決めたいんだ。あ、このことは秘密でね。嫌なんじゃないんだ、彼女をこの世界の誰よりも愛してるんだよ。可愛いしラブだし、でもここぞって時に主導権を握りたいんだ。どうしたらいい!?」 「金稼ぎなっ!」 ペッと床に唾を吐きながら言い捨てるナビ子。 「お、お金以外で」 「女はべらせな!」 「無茶言わないでよ!?」 「マジに答えると、無抵抗で主導権握りっぱなしにさせておいてここぞって時に理由も無く断固として主張すると、かえって従順になるよ」 「うっ、また具体的な……!」 「じゃ、次は僕の番だな!」 カウンターに腰掛けた(腰掛けた!)ユイトが、妙にフランクな調子でナビ子の前までずりずり移動してきた。 「ニンジャが見たいんだけど」 「…………」 「忍術とか、本当の姿とか見せて貰うにはどうしたらいいかな」 「…………」 「近所に忍者屋敷があるんだけど、きっといると思うんだ!」 「…………」 「でも忍ぶのが忍者だから、」 「…………」 「ねえ、何で黙ってるの?」 「いるよ」 「えっ」 「うしろうしろ」 「ええっ!?」 素早く振り返るユイト。 「だから後ろだって」 「えええっ!?」 自分を中心にぐるぐる高速回転を始めるユイトを前に、ナビ子はそっと「住民検索のフリーワードを『忍者』で検索」と書いたメモを置いておいた。 「やあ、初めましてナビ子さん」 ドアを潜り、亘が自然な足取りでカウンターまでやってきた。 「もう自分は限界なんだ。だから相談に乗ってくれるって聞いて全力で参加したんだよ。でね、悩みなんだけど……な、ない……んです。実はちゃんとした悩みが無いんです! なのにあなたと話したいってだけでここまで来ちゃいました! 初対面かもしれないけど超ラブラブなんですだからお茶でも飲みながら」 「オッケーじゃあ次の人の相談乗ってあげて」 「ナウくヤングな世間話でもって、エ?」 「えびばでなやみそーだーん☆」 ずだんとカウンターに足を乗っけて(マナー違反)葬識がスライドインしてきた。 「アークに屠殺場とかないかなぁ? こう、殺していいフィクサードつめちゃいました的な! 葬ちゃんはずかしーい!」 「え、ええと……あのお……」 「っていうかさー、アークって殺したくなるような人多くて大変なんだよね」 「助けてー! 誰か助けてェー!」 「ちょっとこっちで一緒に離そー。恋する殺人鬼葬ちゃんとかって、ラノベとかにして売ろー」 客席へずりずり連行される亘。 それをシェイク片手に見送っていると、ラシャが丁寧な様子で歩み寄ってきた。 「就職できると聞いて来ました」 そして、これまた丁寧な様子で履歴書を差し出してきた。 手に取って読んでみるナビ子。 「ふむ、資格はAT普通免許に簿記二級ね」 「はい、特技は前衛で戦えるけど疾風居合切りもできることで、趣味はコーヒー飲みながらゲームや読書をしてごろごろすることです。外交的な回避性能には自信があります」 「へぇ、学生時代とかは?」 「シナリオに顔さだないのに無料イベントには毎回出て行きました。正社員で福利厚生しっかりしてて週休二日を希望します!」 「うん、わかった。ここにアクセスしてね」 ナビ子は『https://bne.chocolop.net/st/accept/』と書かれたメモを差し出した。 「次のかたー」 「え、待って。ウソでしょこれ正社員なの!? 福利厚生しっかりしてるの!? 週休二日制なの!?」 「全ては自分次第……ですよ」 「魔法の言葉なんか聞きたくない! 楽をして暮らしたいんだ私はぁ!」 「連れて行けぃ」 俺様ちゃんと一緒に屠殺場つくろーよーとニヤニヤする葬識に足を引っ張られ、ラシャは客席へと消えて行った。 それを『あれ、さっきもこんなシーンあったな』という顔をして見送っていると、カウンターにスポーツドリンクのペットボトルが置かれた。 「宜しくお願いします。同志ナビ子」 視線を向けると、そこには朴訥としたベルカの顔があった。 「自分の相談というのはほかでもありません。フラッシュバンと私自身の問題についてです。効果も抜群でミリタリープレイにも持って来いですが、結構使いどころが難しく……出番が無いのはどうも寂しい! もっと使いどころは無い物か!」 「うん……」 深く頷くナビ子。一度咳払いしたあと、真面目な顔で資料を開いた。 「富山県の介護職は人員不足だけど資格には敏感でね、就職先に困ったまずこの視覚ってくらい……」 「それは前の人の相談では?」 「……」 ぱたんと本を閉じるナビ子。 「何か喋るたびに語尾を『バン』にしてどかどか爆発させればいいバン」 「もう一回遊べるバン!?」 「フルコンボだバン!」 ありがとう今度試してみるバンと言いながら(フラバン片手に)店を出ていくベルカ。 ナビ子は笑顔で見送ってから、カウンターの端に佇むくろはへと向き直った。 「待たせましたね、相談を聞きましょうか」 「はい……姉が、馬鹿なんです」 重々しく口を開いたくろはは、そう呟いて目頭を押さえた。 「どうにも欲望に忠実過ぎて……馬鹿の馬鹿みたいな馬鹿騒ぎの相手も馬鹿馬鹿しいくらいで、このまま健やかに育てて良いものか……どう思いますか?」 「さっき出て言ったベルカさんと半日くらい一緒にいさせてあげな」 「…………はい」 くろはは、親を老人ホームに入れる主婦みたいな顔をして、こっくりと頷いたのだった。 ●某事件の真相に迫るためにあるような崖にて 岸壁を打ちつける波の音。 海鳥の声。 そして頬を叩くような強い風。 ナビ子はロングコートの襟を立て、あなたへと振り返った。 「とりあえずここから全員投げ落とせば犯人分かるんじゃないかな」 あなたはナビ子に鼻フックをかけた。(そして投げた) ごつごつとした岩場を踏み、ラヴィアンがナビ子へと詰め寄って来た。 「俺の趣味、カードゲームなんだよ。カードを当てて、選び抜いたデッキ作って大会で勝利を飾る。これが今一番の楽しみだぜ。だけど最近レアカード当たらなくってさ。何か、レアをあてる方法知らないか?」 「……フ、簡単なこと」 「ほんとか!?」 「前金で5万頂きます。必ずレアカードを一枚あなたに持ってきましょう。成功報酬は更に10万。いかがです?」 「ナビ子……」 「いいんですよ、お礼は。報酬さえもらえれば」 「カード屋で買うつもりだろ」 「…………」 そっぽを向いたナビ子に、ラヴィアンが回り込む。 「半分は懐入れるつもりだろ?」 「…………」 さらにそっぽを向くナビ子。 更に回り込むラビアン。 そして待ち伏せしていたルーメリア。 「いえーいこんにちわナビ子さんぴーすぴーす、そして目潰し!」 「ざらきっ!」 目がぁぁぁぁとか言いながら仰け反るナビ子にふーふーしたげつつ、ルーメリアは勝手に相談に入った。 「あのね、ルメのマンションの住人がみんなカレーしか食べないの。そろそろインドブレイカーとか呼んだらいいのかな」 「う、うおお……」 「あとね、世界のみんな、全部救おうって言うのは、間違ってるかな? ……あ、ううん、いいのごめん、変な質問しちゃったね」 「間違ってない、やればいいよ」 「えっ?」 驚きに目を開き、ルーメリアは顔を上げた。 ナビ子が優しげに彼女を見下ろしている。 「インドブレイカー、呼びなよ」 「そっちじゃなくて!」 「ナビ子よ……」 シェリーがポテチもぐもぐしながら呼びかけてくる。さっきからそこに居たらしい。 「食欲が制限できなくて困っている。まともな食事をとってこなかった反動なのか……何か言い方法はないか?」 「そこのルメ子さんちに住めば嫌でもカレーばっか出てくるよ」 「嫌でもってどういうこと!?」 「ふむ、食欲を刺激しつつしかし飽きると……そしてゆくゆくはインドの食文化に習えと?」 「ポジティブに読み取ってる!?」 「あ、こんなトコにいたんですか! 探しましたよナビ子さーん!」 チャイカがてってけ崖を走ってくる。 そして妙な古本を掲げて見せた。 「こないだ貰った浅漬けいい感じでしたよ。こちらも今度何かお譲りしますねー」 「いえいえどーもーこちらこそー」 適当な社交辞令を言い合いつつ、本題に入るチャイカ。 「あのですね、こないだ変な本拾っちゃいまして。うっかりラテン語読めたせいでコズミック且つホラーな存在を感知するようになっちゃったんですよ。そりゃもういあいあでてけり・りでSUN値がりがりでちょっと聞いてますか宇宙的恐怖はすぐそこまで来てるんですよああ窓に窓に!」 「ルメ子さんちに住めばいいよ」 「うちを何だと思ってるの!?」 「おじゃましまーす!」 「こないでね!?」 福神漬けあげるのでーとか交渉を始めたチャイカをよそに、ナビ子は一人崖を離れ歩いていく。 すると、道のわきに宗一がぽつんと佇んでいた。 軽く会釈をかわす。 「あー、なんだ、その……」 「いいですよ、分かってます」 「ほ、ほんとか?」 「大剣使いで売ってきたのに他の大剣キャラに押されてなんかフツーに見えちゃってるって悩みですよね」 「いや、違うんだけど。って言うか売ってないけど」 「じゃあ目が悪いとか」 「適当に振り分けるな! そうじゃなくてだな、まあ、とある依頼で自分の気持ちに気づいたんだよ。発露せざるをえなかったというか……しかも困ったことにそのことを相手が知っちまってな。これからどう接して行けばいいか」 「焼き払えぃ!」 「話聞いてたか!? なあ!」 「もしくは墓まで持ち逃げしろぃ!」 「デッド・オア・デッドだと!? それだったら言っちゃった方がまだいいだろ!」 「まあ待ちたまえ。そこに居る人の話を……聞いてからにしないか?」 ニヒルな顔で宗一の背後を見つめるナビ子。 宗一ははっとして振り返った。 「ええっと、その……」 そこにはレイラインがいた。 「…………」 「その、以前の依頼で敵対していたフィクサードにこ、告白されての……それ以来どうも調子が狂うんじゃ。胸がどきどきして止まらなくなるし、熱まで出てきて! しかも深手を負ってその後の行方がまだ知れんしモヤモヤするのじゃ。名前は……テリーという」 「そっか……良かったね、両想いじゃないか!」 宗一とレイラインを交互に見てドヤ顔で笑うナビ子。 「いや、話聞いてたのか? わらわは別に……」 「ほらテリーもスパっと決めたいって言ってるし」 「俺はテリーじゃねえ!」 「もういいじゃんツイッターとかで呟けよー」 「飲み会のノリか!」 「『テリー探してるなう』とかいって」 「飲み会のノリかァ!!」 などとがやがややっていると。 「フッ」 モニカの拳がナビ子の腹に突き刺さった。 目と口を前回まで開き唾を散らすナビ子。 その衝撃たるや凄まじくナビ子の背中から拳が突きでて見えるかという程であった。決してピッコロ大魔王戦のオマージュではない。 「すみません。あまりにムカつく顔なのでつい」 「フッ」 そんなモニカに彩花の腹パンが炸裂。 無表情のままどさりと転倒したモニカ(の顔)に布を被せ、彩花はゆっくりと振り返った。 「相談、いいですか」 「……どうぞ」 燃え尽きる直前のジョーみたいな顔をしつつコクコク頷くナビ子。 彩花はお行儀よく適当な岩に腰掛けると、自らの胸の内を語り始めた。 「相次ぐ政治問題、底の見えない不況、ジャック事件を筆頭とした神秘界隈事件の実社会への悪影響。そうした諸々の問題から私達の会社も決して楽とは言えない状況なんです。大きめの企業なんじゃないかって? こんな状況でも左団扇でいられるのなんて時村グループぐらいなものです。そうそう、時村といえば最近室長に妙に絡ま――」 ●居酒屋『のんべえ』にて 「すり替えておいたのサッ!」 テッテテーッテテッ! 謎のミュージックを背に、ナビ子が居酒屋の扉を開けた。 居酒屋って言ってもテーブルが二つくらいしかない近隣住民御用達みたいな所だったが、今日はナビ子から誘いを受けた何人かの大人たちが酒を片手にテーブルについていた。 飲んでいるのかどうかはわからんが、少なくとも場は出来上がっていた。 「こんにちは、そあらです。今ジョッキで……」 「おいやめろ見た目的に犯罪臭い!」 「オレンジジュースだよな、今オレンジジュース飲んでるんだよな、そうだと言え!」 「純白ぴゅあな22歳の恋する乙女なのです」 「ほら見なさい、22歳って自己申告キタ! 合法キター!」 「それはそうと、あたしのとても大好きな人が、あちこちに粉をかけまくるのです。本人は面白がってるだけっぽいですけど、あたしははらはらしてしまうのです。かといってそれが彼の生き方でもあるのですからあまり口出すのも違うなあって思ってもやもやしちゃうのです。将来は彼と結婚して幸せな家庭をきづかいたいんですけど、うまくいくかしら。やきもち焼き過ぎて彼に嫌われないようにするにはどうしたらいいかしら」 「ふーん、郷ちんどう思う?」 「ソニックファンレタアアアアアァァアアアア!!」 「だめだコイツ酔いつぶれてる! 使えん!」 「ちょっと軒先に放り出しておいてくれませんか」 「ほほう、それじゃわしが……」 「そこの狐系AV男優を取り押さえろォー!」 軽く乱闘騒ぎになりかけた所で、なんかマニアックな拘束のされ方をした仁太が(天井からぶら下がりつつ)ナビ子に問いかけてきた。 「なあナビ子ちゃん、わっしに似合った職業教えてほしいぜよ。中卒ニートやったし特に資格もあらへん。パソコンとかも使えんからかなり狭くなるぜよ」 「そっか……はい」 『https://bne.chocolop.net/st/accept/』と書かれたメモをつき出すナビ子。 「あのぉ、わっしパソコンとか使えんのやけど」 「じゃあ汁男優」 「お前このサイトが何歳対象だと思ってんだ!」 「全年齢ですけどぉー!?」 「開き直るんじゃねえ!」 「ソニックラブレタアアアアァアアアアアア!!」 「おいまだ郷放り出してなかったのか!」 「縛っとけ! 縄で縛っとけ」 「どれわっしが」 「狐野郎どうやって自分解きやがったあああああ!!」 乱闘騒ぎが更に悪化する中、ティアリアがワイングラス片手にナビ子の隣に腰掛けた。 「お、どしたーん」 「交通整理、終えて来たわ。のろけるカップルには腹パン入れておいたから」 「それそあらちゃんの事じゃないよね!? あの子酷い目に合ってないよね!?」 「それより相談なんだけど……ねえ、鉄球レアドロップしそうなフィクサードって知らない?」 「んー……」 マッコリとビールを混ぜ合わせた謎の酒をテーブルに下し、ナビ子は天井を見上げた。 ぽつぽつと続けるティアリア。 「アーティファクトな鉄球でもいいわ。そういうの持ってたフィクサードがいたら教えて欲しいんだけど」 「あっ、魔剣・筋肉美漢(マッスル)の元所持者で筋肉猛っていうフィクサードがいてね、ダンベルがアーティファクトの」 「今の話は無かったことにして頂戴。はい次の方」 近くを車いすで通りがかった佐助が、ティアリアに引っ張り込まれるようにナビ子の前に固定された。 「おっと……随分と騒がしいから出ようと思ったのだけれど。お酒もあまり飲まないしね」 「へー、じゃあアレしましょうよアレ、お悩み相なんとか」 「あと一文字言えればよかったのにね」 「ほらほら」 「相談ねえ、うーん……あ、そうだ。最近ね、私を忍者と間違えてる子が周りをうろちょろしてるんだよ。別に悪い子じゃないんだけど、話が通じないと言うか」 「ふうん、ちょべりば?」 「ああ、うん、ナビ子もきっとアレだよね、話が通じない系の人種だよね。分かってたよ……」 「うんうん、タケノコ族?」 そっと佐助の後ろに回り、車椅子を押し始めるナビ子。 「それは分かってたけど、ナビ子と話したらユイトと少しは通じあると思えるかなと」 「はいはい、モダンボーイ?」 「さっきから全然関係ない相槌を打っていないかい? それと、何故徐々にお店の出口に近づいてるのか……落ち着け、頼むから、頼むから」 「はいはい、文明開化?」 がらっと居酒屋の扉を開く。 するとそこには、ユイトが諸手をあげて待機していた。 「おおっ、ホントにここにいたのか! なあ佐助、お酒入ってることだしさ、アレやってみないか、アレ。ニのつく……アレだよ」 「…………」 恨めしそうな顔で振り返る佐助に、ナビ子は笑顔で頷いた。 「お幸せに!」 「どういう意味だ!?」 ぴしゃりと扉を閉めるナビ子。 その背中に冷たいジョッキが押し当てられた。 「ひゃだるこっ!」 「ナビ子ちゃんよろしくーう」 若干テンションのズレた御龍がジョッキを掲げてくる。 いえーいと言いながら自分のグラスを打ち当てるナビ子。 「いやぁー相談ってほどじゃないんだけどぉ、昨今の運送業界が厳しくてさ。やれ飾りは駄目だの荷物は制限しろだの頭がいたくてねぇ。なかなか社員増えないし、トラック転がせる社員はあたし含めてぇ二人でねぇ。しかももう一人はぁ土木担当のダンプ屋だから実質あたし一人で寂しいもんだよぉ。どうだろうねえ、社員増やすには」 「コレとかどうスか」 亀甲縛りで逆さ吊りにされてる郷を割り箸でつついて見せた。 「……実務経験はぁ?」 「あるある。社持ちー」 「運種はぁ?」 「ダンプに2トンにターレットまで行ける筈。マスドラ持ってるし」 「ふぅーん……」 ジョッキ片手に郷をじっくりと観察し始める御龍。 などとやっていると、エーデルワイスがとっくりを全力投球しながらテーブルの上に飛び乗った(マナー違反)。 「これよりぃー! 第一回○○○○(さおりん)襲撃計画を開始しまぁーす! これで全員共犯者☆ ってことでハイテとリーディングで相談ね、裏切ったら即腹パンだから! ついでにジャンアントスイングで海にダイブするわ! まずあなたはクリームパイ用意して……」 「フッ」 ティアリアの腹パンがエーデルワイスに炸裂した。 「よしよくやった! そいつを放りだせ!」 「ほう、わっし……はやめておくぜよ」 「狐よく我慢した!」 「食指動かないだけだろこいつ!」 「そんな事はどうでもいいや。ほら、ボクって超絶美系というか超絶的に可愛いじゃん?知らない?知れ。ぶっちゃけ天使だしさ。男の1人でも言い寄ってきても良い気がするんだけど1人も良いよって来ないわけ。それっておかしいと思うよね? ボクはちょっと男子になでなでよしよしとかおじさまにぎゅうぎゅうしてもらいたいだけなんだよ? その先もするって言うのなら10時以降ならいくらでも付き合ってあげるし! あ、それで相談なんだけど男を自然に悩殺出来る方法ってないかな?若づくりは十分出来てると思うしさ。ボクなでていいよ? 推奨するよ。ほら! ほら!」 「お前どこから沸いてきた! っていうか誰だ!」 「ボク? 平等・愛だけど、愛は平等じゃないと思うんだよね」 「名前がややっこしい!」 「もう一軒遊べるバン!」 「「ギャアアアアアアアアアア!!」」 突如投げ込まれたフラッシュバンに、一同は思わずひっくりかえったのだった。 ●旅館『べらんめえ』にて とある温泉旅館には、二十人程度が一度に泊まれる大部屋がある。普段は『遮音性なにそれ』ってくらい適当に襖で仕切っているだけの安い宿だが、大勢でわいわい泊まりたい時には重宝する。 そんなお部屋の扉を、ナビ子が何かの変身ポーズでがらっと開けた。 「朝までダラダラー?」 「「相談かーい!!」」 既に布団がぎっしり敷かれた和室にはリベリスタ達が思い思いの様子でごろごろしている。 その中の一人。夏栖斗が浴衣を肌蹴に肌蹴させつつ転がって来た。 「おっすナビ子。僕は16歳男子です。彼女が超かわいくてたまりません。部屋に招待されたら手錠がデフォなんですけどそんな可愛い彼女がいることを自慢しに来ました! え、ナビ子に相談したところで何もないじゃないですかやだー、でもどうせ三歩あるいたら忘れちゃうでしょ? 知ってる僕超知ってるだから自慢だけしてナビ子を苦虫噛み潰したような顔にしたいじゃんそう言えばナビ子って雄雌どっちなんすごくなやんでるんだよねあとなんで今僕窓からロープで吊るされてんのねえ下して! お願い下してやっぱ下さないでもっとして!」 「キモいので押し入れに閉じ込めときましょうか……」 「しょうしましょうか……」 うんうんを頷き合い、抵抗する夏栖斗を布団で簀巻きにして押し入れにしまい込んだ。 そんな混沌を余所に、マイクを持って並ぶ舞姫と京子。 「ピンクは」 「淫乱っ!」 どうでもいいがここ宴会場なんと違うのか。 「ナビえもーん、京子さんが淫乱すぎて困るんだよう」 「ちょっと、私のどこが淫乱なのよ! それ相談することじゃ……」 「見て下さいよこのピンクさ! まったく桃色吐息だよ! このままじゃ京子さんが『いんらんなむすめねこ』になっちゃうよ! わたしの可愛い子猫ちゃんをかえしてーってのが今回の相談なのさトム。オーマイガッ、どうするんだよ! まかせてくれよ、ジョン! このクリーナーを使えばどんな淫猥な色素も因果地平の彼方にスペスラナウェイさ! おいおいびっくりだよ、淫乱ピンクが純白のマイエンジェルじゃないか! HA-HAHAHA!」 「…………」 なにがしかの液体で全身を白くべっちょりされた京子は、ぷるぷるしながら銃を引き抜いた。 肩を叩きながら『HA-HAHA!』とウザイアメリカ通販番組のモノマネを続ける舞姫。 京子は銃をコッキングすると、あたりかまわず乱射し始めた。 「ええいお前らもピンクにしてやるぅー!」 「暴れ出したぞこいつ!」 「放り出せ!」 「焼き払え!」 「紐で吊るせ!」 「ナース服を着せろ!」 「ビデオカメラ持って来い!」 「お前ら全員ぶっ殺すッッッッ!」 乱闘を始めた連中を窓から放り出し、野外の温泉に池ポチャさせる一同。 ナビ子はその様子をモナカ片手にぼーっと見ていたが、その足元に俊介が転がって来た。 「相談だぜ!」 ビッとポージングする俊介。 「あのな、嫁が可愛過ぎるんだけどどうしたらいいかな。っていうか嫁の誕生日さえ忘れてた彼氏なんだけど俺大丈夫かな。嫌われてないかな。っていうか鳥足ってかわいいよな最高だよな、ナビ子さんはどないなヤツが好きなん? なんなら俺に掘れても良いんだぜ? あ、でもごめん俺彼女いるからごめんな! その気持ちは嬉しいぜ、もっと惚れてくれていいんだぜ! でさ、俺の嫁可愛過ぎるんだけどどうしたらいいかなそして何故俺ロープで窓からつるされてんのかな下して下の温泉ぐつぐつしてるからヤバいからちょっと聞いてるー!?」 「これでよし、と」 ナビ子は窓の淵にロープをくくりつけ、満足げに頷いた。 そして、淵によりかかるようにして月を見上げる。 「ナビ子さん」 「ほいほーい」 とん、と横に並んだミリィに、ナビ子は適当な返事をした。 「あの、ですね……」 言いにくいのではなく、どこか自らの内側を探るように語り始めるミリィ。 「私に足りないものって……なんでしょう」 「というと」 「はい、色んなリベリスタさんがいますけれど……私と彼等で、違うものがあるのかなって」 「うん、それはね……」 空を見上げるナビ子。 同じくミリィ。 夜空に浮かんだ蓬莱惟の幻影が、どこか悲しげに語り始めた。 「最近、張り合いがないんだ。騎士として、剣を担う者として……プリン属性を解放したりチワワに魅了されたり空腹に耐えたり劇画調になったりした。騎士の本分は他にあれど、剣の腕を競う相手がいなくなってしまった……平穏の乱れを願うなど騎士としての不徳だ。要するに、信じて送り出して貰った性別不詳騎士が六道の変態魔剣にドハマリして真面目顔いい加減人生を送っているなんて、どうなんだろうな?」 「…………」 よく見たら、上の階からつるされた惟本人だった。 フレンドリーに笑い、惟を指差すナビ子。 「こういう所、じゃないかな」 「な、なんとも言えないこの感じ……」 「もういっそそのままでいいんじゃないかって思うよね……」 星の輝きを語り合うように、二人はにっこりと笑い合った。 そこへ枕片手にやってくるドーラ。 「ナビ子さん、私の耳……」 「うん?」 「私狐のビスハなんですけど、耳を見せるの抵抗あるんですよね。最近は虎耳の人に帽子取られそうになるし、どうやったら帽子守れますかね。あ、でもその虎娘、生意気ですが可愛いんですよ? 耳をいじると向きになったりして、あの耳を引っ張りたくてうずうずしてくるんですよ。どう思います! あの耳弄るべきですよね! 引っ張るべきですよね! アレッ!? なんで縛られてるんですかそして窓から下されてるんですか先客! 先客がいるんですけど! この人どうしたらいいんですか!」 「俺に、惚れてもいいんだぜ!」 「タスケテー!」 ナビ子は浴衣の懐から扇子を取り出し、優雅に自らを仰いだ。 「今日も、静かな夜だなあ……」 「そうだな。虫の声ついでに、オレの話も聞いてもらえるか?」 「どーぞ」 ちらりと横目で見られ、零は気恥ずかしげに微笑んだ。 「まあ、改めて言うのも気恥ずかしいんだけどな。好きな子が、いるんだ。なんか今は、そこにいるのが当たり前っていう状態で、軽くだけど好きって言ったりしてるから、逆に改まって告白する勇気がわかない状態なんだよ。何かアドバイスを貰って先への活力にできたらなーなんて思ってる。ナビ子さんは存在自体が面白いし、どんな回答でもありがたく受け止めるさ。まあ、アイデンティティが揺らぎまくって困るというか何故オレはロープで窓から吊るされてるんだろうか?」 「俺に掘れても……あ、ごめん間違えた」 俊介が恥ずかしげに顔をそむけた。 反対側を見る。 「あ、どーも」 「お、おお……」 ドーラと目が合った。 「聞いてたか?」 「……戦場で怯える事は、決して恥じる事ではありませんよ?」 「聞いてたんだな。うん」 「まあ、色々あると思いますけど、頑張ってください」 「……ああ。そうだな。いいタイミング、探してみるよ」 微笑み合うドーラと零。 そしてナビ子は、窓辺でだらーっと寝そべっていた。 「あずきバー、うめえ」 ●ファミリーレストラン『このやろう』にて 眩しい朝焼けが目に染みる。 目を擦りながら起き上がるとあなたの前に温かいコーヒーが置かれた。 「おはよ、待たせちゃったね。お話しよっか」 口角をちょいっと上げるナビ子。 あなたはコーヒーを一口飲み、レモン汁が大量に入っていたことを知った。 ナビ子に頭から浴びせた。 「ナビ子は27歳であったか、信じられんな。まあいい、指に掴みかかってやるから全力で避け――」 「ばぎくろすっ!」 優希の握った指が、曲がっちゃいけない方向に再度曲がった。 ドリンクバーをとってきた翔太が慌てて駆け寄る。 「なにやってんだ優希! 大丈夫かナビ子、治療するか!? 生憎メロンソーダとコーヒーしかないが……!」 「いえ、わりとすぐ戻るんで」 悶絶しながらも何故か冷静に受け答えするナビ子。 翔太は落ち着いて席に着いた。 「んー、本当は相談する内容決めてないんだが……どうする優希」 「分からん。決めてくれ」 「……現在MGKが腐界に染まりつつあるようなんだけど」 「そうだな。あれは困る。熱い友情がなんでも恋愛に変換されてしまってな」 静かにコーヒーをすする優希。 「翔太と俺は親友だ。親友と言うものは腐界とは無縁のもの。そもそもは――」 「そういうことだ! ナビ子、腐界化を防ぐにはどうしたらいいか三行でまとめてくれ!」 「塩分。糖分。脂肪分」 「余分三兄弟じゃなくてだなっ」 「じゃあ焼き払えぃ!」 指を抑えてぷるぷるしつつ、ナビ子が涙目で言った。 「人道的な、平和的解決を頼む。でなければそのポニーテールを引っ張る」 「はあ、火を放ったらいいんじゃないスかねえ」 「せいっ!」 「あううっ!」 髪を引っ張られたナビ子が、顎をぐいんと上にあげた。 店の角っこの、天井に近い辺りにブラウン管テレビが設置されている。 「ピンクは淫乱! なんていって、相変わらず舞姫様は私たちの想像の斜め上を行きますね……あ、あらっ!? ここはどこ!? 舞姫様と涼子様は!? 皆さんどこにいらっしゃるんです!? ねえ皆様ったら!」 謎の挙動をするシエルが映っていたので、究理はテレビを消した。っていうかどこにつながってんだこのテレビ。 「で、何のハナシだっけ」 「よくぞ聞いてくれたナビ子よ。私の身近にドーラという狐がいてだな、あの狐がよく私の耳を引っ張るのだ! いつかあの狐に『きゃー究理さん素敵ー』なんて憧憬の眼差しを受けるくらいの威風が欲しいんだ! どうすれば……どうすれば立派な猛虎になれるのだろうか!」 「そらならCP1で」 「スキル以外でだ!」 「じゃあ直接相手したらいいよ。ほら上に居るし」 「上って……」 包帯だらけの指をさされ究理は頭上を見上げた。 ドーラがロープでぶら下がっていた。 「きゃー究理さん素敵ー。その耳引っ張らせて下さい!」 「来るなあああああああ!!」 嫌だーと言いながらダッシュで逃げる究理。 すると、すとんとナビ子の背後に竜一が座った。椅子越しに背中合わせである。 「ね、ナビ子さん! ナビ子さんと仲良くなるにはどうしたらいいですか! セクハラしたいんですが、どこまでならOKですか!? っていうのは置いといて、要するに恋の相談ね。恋人が可愛過ぎて可愛過ぎてどうすればいいでしょうか、彼女がなかなか甘えべたでたまにしか甘えてくれないのです。もちろんそう言う所も可愛いのですけれども? だいたいこっちから甘えに行くわけだしね。例えば『にゃーん』って抱付に行けば、抱き返してナデナデしてくれるのです」 「虎美は?」 「虎美は……」 ハッとして顔を上げる竜一。 背中越しに座っているのは誰だ? 振り返ろうとした瞬間、背もたれを乗り越えて虎美の両手が彼の両頬を掴んだ。 立ち上がるな、動くな、とでも言うようにだ。 「『にゃーん』」 「…………」 「お悩み相談。どうしたらお兄ちゃんと結婚できますか。お兄ちゃんをゲットするには時村財閥の力で戸籍弄るしかない? 記憶飛ぶまでスタンガン食らわす? 教えてナビ子! 結婚までは出来なくても、ゲットする方法でもいいよ、募集中! 勿論お仕置きする準備もばっちりだから変なことしちゃだめだよ――お兄ちゃん?」 虎美の前髪が、竜一の額にかかった。 一人オムライスに『かどわかせ』とケチャップで書きつつ、ナビ子は店員に『あっちのSM趣味な兄弟に』と皿をつき出した。 左右にすとんと座る快とマコト。 「俺ね、ナビ子さん普通にしてれば結構可愛いと思うんだよ。まあナビ子さんが来てくれたおかげで和泉さんが酷い依頼の説明しないでよくなったことはほっとしてるしナビ子さんありがとうって言いたいけどね、黒板消し落とされたり苦渋の想いで夜食のコンビーフ食べたり花粉症になったり山芋のむずむずで身をよじって艶っぽい声出したり、あーこれもう一度見たいかも。っていうか和泉さんの浴衣可愛いよね、一緒に花火大会逝ったことあるけどあの時も可愛かったなあ。あ、うん、解決した。和泉さんのためにナビ子さんはそのままでいてください」 「ちょっと聞いてほしいんっすよ。最近会社で無視されるんっす、まるで来んじゃねーよ邪魔だよ帰れよって言われてるみたいに。いくら気に食わなくても無視は無いんじゃないっすかね。酷い話っすよ。あ、誰かって? 自動ドアです自動ドア、マジな話っすよあいつ下でヘッドバンギングしないと開けてくれないんすよ。この前なんて鳩は通したのに俺だけ締め出しやがるんですよ。悪意があるとしか思えないっすよ。どうにかならないっすかね」 二人が一気に話しきった所で、ナビ子は飲んでいたクリームソーダをずずずーっと音を立てて飲み干した。 そして、おもむろに小石を取り出し、テーブルに置いた。 「いいですか、この小石を10万で買うと運気が上昇し」 「アフタヌーンネタで誤魔化すな!」 「ふむ……」 無駄に真面目な顔で小石をひっこめるナビ子。 隣でカメラを起動していたエリスが、珍しげにナビ子の横顔を見た。 どうでもいいが、ここまでわざわざついて来て貫徹で記録しているらしい。大したものである。 「じゃあこの婚姻届にサインと判子を」 「聞いて、なかったなら……素直にそう、言っていいよ」 エリスに囁きかけられ、ナビ子はテーブルに手をついた。 「『そもそも、何故人生相談を』の辺りから聞いてませんでした」 「最初っから!?」 「まあ、それはそれでいいけど」 全く良くないが。 綾香がどことなく艶っぽい足取りでテーブルの淵に腰掛ける。 「私、『あえて穿かない』派なんですけど……皆全然覗き見てくれなくて」 言いながら脚を組む綾香。 身体をゆーっくりと傾け始める快とマコト。 「奇抜だからいいかなと思ったんですが、このままだと死に設定になりそうなんです。どうやって活かしたらいいんでしょう」 ババロアをスプーンでぷにぷに突きつつ、振り返るナビ子。 「エリスさんちょっと撮影してあげて」 「それは……ちょっと……」 「うん、わかった。語尾に『今穿いてません』ってつけて喋れば、立派なエアブレイカーに進化できるんじゃないかな今穿いてません」 「ほ、本当だ。緊迫したシーンが台無しになる!」 「まあいっそ……」 テーブルから立ち上がり、清々しそうに背伸びするナビ子。 「『今全裸です』の語尾に勝るものはないですけどね」 逆光を浴びるその姿が、良い事言ってる雰囲気で誤魔化そうとしてる感バリバリだった。 ファミレスを出るナビ子。 ポケットに入れた携帯から『セーガターサンシロッ』という着信音が漏れ出す。 耳に当てると、光からのダイレクト通話だった。 『空飛ぶナビ子を仲間にするにはあとどのくらい伝説の装備が必要ですか?』 「百個」 ぶちっと電源を切るナビ子。 今日の趣味の時間はこれで終わりか。 随分遊んだものだ。 などと思いつつ、ふらつく身体で家路を歩く。 その頭上を、セラフィーナがぶんわかぶんわか飛んでいく。 「あっ、ナビ子さーん! 神秘を創り出すってなんかすごく素敵な響きだとおもいませんか? というわけで私アーティファクト作ってみたいんです」 「ラボ行ってきな」 「そう言わずに。ナビ子さんならとっても素敵なアーティファクトのアイデアを出してくれると思うんです。なんかこう、常人には想像もつかないようなアーティファクトのアイデア、ないですかね」 「…………」 無言かつ無表情で、ナビ子はクマのついた目を擦った。 顔を上げる。 「人生相談をいい加減に受けつけるアーティファクトとか、どうですかね」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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