●23:05 某県国道にて 「ねぇねぇ。こういう噂って知ってる?」 夜も更けた深夜の高速道路。車の助手席で、少女はそう話しかけた。隣で運転する大学生程度の男に向かって親しげに話しかけるその声色は、それほど見るものもない深夜の移動にひとつの華やぎを与えようというように楽しげで、また少し得意げでもある。 「あのね、こういう夜中の人気の少ない道でさ。たまに出るらしいのよ」 「出るって、何がだよ」 運転席の男はややだるそうに答えた。自分の愛車の助手席に座る女の噂話好きはよくよく知っている。それに付き合うのも毎度のこととはいえ、出所の知れないような下らないヨタの域を出ないような下らないものだらけのその話を聞くのは、何度も何度も重なるとやや辟易としてくるものである。 とはいえ、他に何か暇つぶしの手段があると言うわけでもなし。彼は話半分に彼女の話を聞くことにした。 「ふふ。あのね……出るのよ」 「だから、何が」 「もー、鈍いね。こんな夜中に出るって言ったら決まってるじゃないの」 「だから聞いてんだよ。ワンパターンなんだから、たまにゃ少しは捻りの入った話でもしてみろってんだ」 「むぅ」 「……で、何が出るんだって?」 「あのね……オバケ」 やっぱりか、と彼はため息を吐いた。彼女の噂話のレパートリーは、こっちの方に偏ることが実に多い。もういい加減にしてほしいと思うのだが、話を始めさせてしまったのは自分だ。最後まで付き合おうと腹を括ると、その先を促した。 「この国道ね。この間まで有名な暴走族の縄張りだったのね。毎日毎日、暴走にケンカにひどかったらしいんだけど……」 「今時ゾクかよ……」 「聞いてってばもぉーー!!」 「はいはい」 「それで……その暴走族だけど、ある日突然この道で溜まるの、やめちゃったんだって。何でだと思う?」 「なんでだよ」 「出たんだって。オバケ。ちょうどそいつらも、今日みたいな満月の夜に集団で走ってたみたいなんだけど、そしたら、中世の騎士みたいな、馬に乗って槍持ったのが何騎も……そんなのに追い回されてさ。馬なのにバイク追い越すくらい速くて、追い抜き様に槍で、ぶすぅって……! 何人も死んじゃってさ。そんなことがあってから、皆怖がって近づかなくなったんだって」 「……お前、頭大丈夫」 「なんでよー!!」 むきー! と怒る彼女だが、男の目線は至って冷ややか。彼の反応は無理もないだろう、あまりにもチープすぎる。 「大体、こんな日本の国道で騎士だなんだって、説得力無さ過ぎて怖く、も……」 「ど、どしたの?」 「……た」 突然変わった男の様子を不審に思った少女がその顔を見ると、先程まで怪談を鼻で笑っていた男の顔は青ざめ、アクセルを限界までベタ踏みすると狂ったように加速を始めた。 「出た!! 後ろ、後ろっ!!」 からかっているのかと半笑いで――何だかんだ、彼女も信じていたわけではなかったのだ――振り返った少女の顔もまた、恐怖に引き攣った。 夜闇に溶けて消えてしまいそうな漆黒の鎧を着込み、同じく鎧を着込んだ黒い巨馬に跨り、その右手にはランス、左手には丸盾を持った屈強な全身鎧の騎士が、蹄の音も高らかに、フルスピードの自動車に追い縋って来たのだ。 『イザ……イザ、尋常ニ……』 割れた鐘のような声を鎧の奥から響かせながら逃げる男女の車に追い付くと、その騎士はランスを悠々と掲げると振り下ろす。その穂先はボンネットを貫きエンジンに突き刺さり、その車は為す術もなく爆発、炎上。 それすら何程のことでも無かったと言う様に、騎士は馬蹄を返すと走り去る。去っていく騎士に付き従うようにさらに2騎、影が現れると共に消えた。 ● 「……こんな感じ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)は、映像を消すと、リベリスタ達に向き直った。 「見た感じだと、E・ゴーレム。なんだけど、何かちょっと、変な感じ。この映像は直接出会っちゃった悪い例だけど、それ以外にも噂が広まってる」 まるで、都市伝説。と憂鬱そうにイヴは言う。 「数は3体。馬に乗った状態の機動力は洒落にならないわ……ゴーレムといえば、日本にはツクモガミって言葉があるのよね。この鎧達の来歴も、そんな感じなのかしら」 ふと真面目な顔で呟くイヴ。何かあるのかと身構えるリベリスタ達だったが 「……私のうさぎも動き出さないかしら」 至極真面目に両手で自分のうさぎを掲げてじっと見る彼女に、何とも言えない表情を返すのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕陽 紅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月08日(水)21:57 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 暗い暗い夜の帳が降りる、人気もない国道。 月も見えない曇った街を、ぴょんかぴょん、と跳ねて回るひとつの影があった。 「やー、月が出てないのは残念だなぁ。うーん、鎧騎士に騎馬、騎士ってより武士道だけど、なんかかっちょいい!」 影の名前は『素兎』天月・光(ID:BNE000490)。微かに照らす街灯の光に映っては消えて、忙しなく何かを仕掛けて回っている。 「でも、黒なんて。鎧の色からして、もう私が勝ってるね。残念なことに」 ふふんと何故だか少し偉そうに言うのは、夜闇にあって尚まぶしい気がする黄金の鎧を纏う『イエローナイト』百舌鳥 付喪 (ID:BNE002443)だ。騎士とか私と被ってるし、ちょっととっちめてやろうとそんな気分。本職魔法使いなんだけどね。 「かっちょいいかはともかく……騎士鎧の付喪神、納得は出来るね。でも、なんでこんなところを駆け回っているんだろう」 四条・理央(ID:BNE000319)が電信柱の影に座り込んで思案する。右手を振ると、かんらからんと乾いた音が応えた。 「何故かは兎も角、彼らにとっては真剣勝負のつもりらしいけど……迷惑な話よね」 道を挟んで溜息を吐く『薄明』東雲 未明(ID:BNE000340)もまた、左手を振り振り何かを確認する。かんらからんと響いて溶けた。 「これが最後のひと勝負。そしてサヨナラと行きましょ」 「おしゃべりはそこまでにしておけ」 リベリスタ達の声を遮ったのは、先程まで双眼鏡を覗いていた男、『誰が為の力』新城・拓真(ID:BNE000644)だ。彼はいつの間にか取り出していた携帯電話から耳を離すと、 双眼鏡を再び覗いた。 遠くから迫ってくるのは二つの眼光。否、その光は人工のものだ。源 カイ(ID:BNE000446)の駆る無骨なジープの双眼が揺らめきながら次第に近づく。そして次第に近づくのは規則的で疎らな硬いスタッカート。トップギアの駆動音にかき消されるどころか、むしろその音は否応なしにこちらの不安を煽るような規則性を主張する。 やがて距離が近付き、ジープのすぐ後ろを走るものの正体が見える。それは馬で、それは騎士。3騎の黒い鎧が揺らめく緑の体の残滓を撒きながら、次第に距離を詰める。焦るように、さらにぐん、と速度を上げるジープ、それを追う騎士。 不意にジープがブレーキを踏む。甲高い音を立てて黒い軌跡を路面に残しながらジープはターンした。急な方向転換に咄嗟に戸惑い、それでも騎士の面目躍如か、二騎は咄嗟に追う。しかし一騎は止まれない。ハルバードを持った騎士がぐん、とその上体を後方に引かれる。背中を地面にしたたかに打ち付けるハルバード。馬は警戒するようにその歩を止める。それを顧みることなく追う二人の騎士が、方向転換したばかりのジープに追いすがろうとする。 「今だっ!」 理央と未明が同時にぐんと腕を引く。カララララ! と滑車が音を立てると、ツヴァイハンダーを持つ騎士の馬が後ろ足を取られてつんのめる。更にマンホールに布で蓋をしただけの簡素な落とし穴に前足が嵌まり込んだ。 いくらエリューションと言えど、姿は馬。立ち上がれずに馬はもがき、ツヴァイハンダー持ちの騎士は前につんのめり派手な摩擦音と共に火花を散らせて落馬した。 「やれやれ……半分成功、と言ったところですか? さあ、これ以上の犠牲者が出ないうちに破壊しましょう」 ジープから降りたカイがダガーに手を触れて呟く。ジープのヘッドライトが照らすのは、未だ騎上で威容を誇るランスの姿だ。 ただでさえ悪い視界を少しでも良くするべく、リベリスタ達は用意していた照明を一気に照らす。ゆっくりと立ち上がるツヴァイハンダーとハルバード。白昼のように照らされた夜の道に、その時、かつん、かつんと靴音が鳴り響いた。 彼女は夜を駆ける都市伝説と名乗る。しかし都市伝説にも礼儀はあると彼女は言う。今宵は己の縄張りだ、ただでは返さない。そんな昏い笑顔が、白い闇に浮かび上がった。 「さあ始めるデスヨ。深夜の縄張り争いデス」 『……尋常ニ、勝負サレヨ』 開戦の狼煙は、『飛常識』歪崎 行方(ID:BNE001422)の打ち鳴らす刃の音だった。 ● 火花が散った。 「騎士道原則ひとっつ! 騎士はいかなる場合も女子供にー、なんてねっ☆」 茶目っ気たっぷりにウィンクしながら、光が人参ソードでランスの騎士に打ちかかる。残影剣だ。その高速はまるで何人もの光が同時に攻撃を仕掛けているように見える。盾で受け流すランスは、しかし騎馬故に素早い光に対し攻めあぐねている。そんなランスをカバーしようと踏み出すハルバード持ちが、不意にその得物を掲げる。振り下ろされた大きなナニカ、莫大な威力に受けきったハルバードの足元がひび割れる。正体は桐の一撃。爆砕戦気を発動し、ギガクラッシュを打ち下ろす、その一撃だが剣の形は何故か平べったいまんぼう型。 「騎士の方、私のお相手を願えますか?落胆はさせないつもりですが?」 そんな大剣で脱力させながらも、桐自身は飄々としている。受けきられると見るや、とんとん、と後ろに下がって光と背中を預けあった。互いに協力し、この二騎を押さえ込もうとする腹だ。苦戦する主人の下に駆ける騎馬も、光と桐の連携に阻まれそれを許されない。 「アッチはいい感じにやってくれてるデスネ。さぁさぁ、コッチは真正面からデスヨ! 騎士たるあなた達はどうデスカ!」 きしきし笑って爆砕戦気、輝くオーラを纏った行方がツヴァイハンダーに襲い掛かる。ガンガンギンギン、音を立てては削り落とすような鬼気迫る両手の肉切り包丁が騎士を襲う。それを打ち落として斬りかかるツヴァイハンダーの一撃は服をわずかに掠めるも懐に飛び込むような突撃は長物の武器に十分な威力を与えなかった。一歩大きく跳び退り再度突撃しようとする、その動きが不意にぎちりと一瞬止まった。 「生憎と騎士ではないので、手段は選びませんよ」 カイが後ろから気糸で腕を締め上げて動きを制し、しかし力ずくでそのつながりは断ち切られる。その間にフリーとなったツヴァイハンダーの馬の元へ奔る二人のリベリスタ。 「リベリスタ、新城拓真……お相手する。騎士よ、此処がそちらの終着点だ」 「お相手よろしくね、騎士さん達」 爆砕戦気を纏いメガクラッシュ、次いで未明のオーララッシュ。二人は罠にかかり未だ動けぬ騎馬へと向かった。轟音と共に馬鎧がひしゃげ、原形を留めぬ程に歪むと緑の炎は霧散した。 馬の一騎が消滅するのを見たハルバードは、一際大きく得物を突き、そして薙ぐ。斬突戈を一つでまかなう武器が桐の大剣を打ち払い後退させるも、光とスイッチすることで馬へ行かせない。代わりにフリーになったランスが馬を疾らせ、距離を取った。全身から立ち昇る莫大な力の量が見て取れるような突撃の姿勢。 「やばっ……みんな来るよっ?!」 光の警告に振り向くリベリスタ達。視線の先には高く嘶く黒い塊。そして 『勝負……我ト……!!』 その突撃は黒い光のようだった。そんなものが存在し得るはずがないと言うのに、それでもそう見えるような稲妻のチャージがアスファルトを踏みしだいてツヴァイハンダーの相手をしていたリベリスタ達へと奔る。行方は辛うじて避けたものの、敵を縛り付けていたカイと、騎馬を撃破し今まさにツヴァイハンダーに踊りかかろうとしていた拓真と未明を跳ね飛ばす。穂先こそ避けようとも騎兵の突進力、阻むには不十分な体制、二人は膝を付く。オートキュアーを己にかけていたカイはいち早くそのショックから立ち直り、拓真と未明にもオートキュアーを付与した。 「やっぱり、アイツはフリーにしちゃダメだね……」 理央が唇を噛みながら印を結ぶと守護結界を唱える。リベリスタ達の体を不可視の領域が覆い、防御力を堅固にした。 「ふん。ではまずは、埒を明けようか」 その状況を変える為に。戦闘が始まって間もなくマナバーストを唱え、己の魔力を高めていた付喪が不敵に笑う。 「派手に、燃えなっ!!」 金色の騎士が腕を振ると、高温の舌がツヴァイハンダーとランスを舐める。フレアバーストの魔炎が騎士を舐り、蹂躙し、そして目を眩ませた。状況を修正し、光と桐のコンビはランスとツヴァイハンダーを押さえにかかる。ハイスピード、ギアを一つ高く入れて更なる高速で飛び込み残影剣、光速の素兎の隙を桐が地を砕くようなメガクラッシュで補う。ツヴァイハンダーの左腕が攻撃を剣で受けたその反動でひしゃげ、緑の炎が溶けて落ちる。 しかし一方で、チャージの為にリベリスタの陣営が乱れた、その隙にハルバードが再び騎乗する。一閃二閃、ハルバードを振り回すと腰だめに構えて突撃してくる。なぎ払うような広角のチャージ、回避するや行方が再びの突撃、ぎゃんぎゃんぎんぎん刃が喚くような、出鱈目にすら見える連撃の雨。鎧が凹んで欠けて、足を止める。そこに付喪のマジックミサイルが行方の背中越しに飛来し、直撃する。轟音と共に大穴が空き、緑の炎がぱっぱっ、とハルバードの背中に抜けて爆ぜた。付喪に穂先を向けるハルバードに 「剣を交えてる相手以外に意識を向けるのは失礼だと思わない?」 未明が喰らい付く。オーララッシュ、馬の足ががくんと沈む。 「今、動きが止まったよ!」 エネミースキャンを使った理央が叫ぶ。馬に乗ったハルバード、その後ろにすっと降り立つ影。こきゅ、と短い音がする。カイが面接着の能力を活かし危なげなく馬の尻の上に立ち、ギャロッププレイ――今度こそ、騎馬の動きが止まる。 それでも抗おうとハルバードを縦横に振るい、目の前の敵、拓真に攻撃を仕掛ける。斧槍の柄の一撃が、先刻のチャージで傷めたあばらを更に打ち据える。ごりり、厭な感触を感じ、それでも迷わず拓真は踏み込んだ。 「元より無傷で終わるとは思っていない…! 返しだ、貰って行け!」 一撃。メガクラッシュ。死中に活を見出した一撃にハルバードは防御も間に合わず、冑を二つに割られ、鎧は醜く傷められ、そして緑の幽体は霧と消えた。残された馬も一斉攻撃を受けて敢え無く霧と散る。 「よぉーし! こっちももっとゴリっと行っちゃおう!」 光が元気に檄を飛ばし、ギアもフルスロットル。行方がツヴァイハンダーに飛び掛り、乱れに乱れて打つ。がつがつがつ、それを一刀で断ち切るかのようなツヴァイハンダーの豪腕により腕をざっくり抉られるが、理央がすかさず回復。既にハルバードを相手にしていたうちの半分はランスを抑えている。 「月は出てないけど……一緒に踊ろ?」 幻影剣、陽炎の如く揺れる剣筋がツヴァイハンダーを責め立てる。鋭く疾く、手足を抉られ、どてっ腹に大穴を空けられ、まるでそこから魂が抜けたかのように、ツヴァイハンダーは動かなくなった。それを、有るのか無いのかも判らぬ瞳でランスが見つめる。 『戦サ……』 虚ろな響きでありながら、それはどこか満足げでもあった。 例えばの話をしよう。 戦の為に打たれ、鍛えられ、そしてその為に使われることもなく死蔵された武具があったとしたら。 道具に心があればどう思っただろう。 どうせ朽ちるならば、蔵の中でその生涯を終えたいと思うだろうか。 もっとも、この例えばをリベリスタ達が知ったのは、この依頼が終わった後であるが。 この時のリベリスタ達が目にしたのは、8人の敵を相手に、果敢にランスを掲げる黒い騎士の姿だった。 『尋常ニ……勝負』 「騎士たるもの、膝は屈せずただ剣を振るうのですね。私とて血を流し剣を振るう……その矜持、見せていただきました」 呟くなり桐は、全身に全力を篭め、大上段から渾身のギガクラッシュを撃ち放つ。ランスは盾で防ぐも、衝撃を殺しきれずに落馬した。桐が退避、直後の付喪のフレアバーストが黒い鎧達を真紅に染め上げる。拓真が傷身を押して放ったメガクラッシュを、しかし地に足をつけたランスは巧みに受け流す。先程の二体とは違う。理央の投げたチャクラムは騎馬の首を撫で切り、出来た鎧の隙間が未明のオーララッシュによって切り開かれ、砕かれる。騎馬がすべて沈んだ。 ソードエアリアル、超常の跳躍力で跳び、電柱を蹴って上空から強襲した未明の一撃が盾を両断する。ランスは役目を果たさなくなった盾を捨て両手でランスを掴むと、裂帛の勢いで薙ぎ払う。着地した未明は脇腹にモロに喰らい吹き飛ばされた。そんな彼女を避けるどころか、くぐるような低い大勢で突撃する風一陣。 もともと、ランスとは馬上での扱いに特化した槍である。 懐に入られれば、彼女に敵うべくもない。 「今晩の縄張り争い、ボクの勝ちで仕舞いデスネ?」 ぐにゃ、と笑う。行方は両手の包丁を楽しげに振り上げると、渾身のメガクラッシュ。ばつん、と何かが弾けるような断裂音と共に、ランスの両肩から腹に至るまで、深い裂傷を刻んだ。 膝を付くランス。それでも発条の切れかけた玩具のようにきちきち、といびつなシルエットでランスを地面に突き立てると 『良イ……戦サダッタ』 命のともし火が消えるように、緑の炎がふっとほどけた。 「全力でお相手した、最後の戦いに相応しい物だったかは……解らないがな」 「ふん、いい稼ぎだったよ。また来な」 拓真が深く溜息を付いて脇腹の痛みに顔を顰める横で、付喪は鎧の残骸を見下ろして、言い放つ。 「昔と違って騎士も今じゃ道を外したもの、ただの外道ってことだよ」 「外道でも騎士でも、人の噂も七十五日……コレも何れは忘れ去られる事でしょう」 肩を竦めて光が嘆息するのに応えるように、カイが何かの終わりを告げるように言った。 そして、都市伝説を名乗る少女はいつの間にか立ち去っていた。まるで、自らこそが本物の都市伝説であったのだと主張するかのように。 こうして噂となっていたエリューションは消滅した。相手が何者であったのだろうと、ひとつの事件はこうして終わったのである。 ちなみに。 その後、入れ替わるように、都市伝説に悪霊を倒す黄金の騎士の噂がどこかでちょっとだけ流されたとか流されなかったとか。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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